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2018年6月14日木曜日

日本に巣食う寄生虫を駆除する方法とは?『財務省を解体せよ!』で高橋洋一氏が指摘する「官僚とマスコミの利害関係」―【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!


高橋洋一・嘉悦大学教授の著書『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

高橋洋一・嘉悦大学教授の新作『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)は、題名からして剛速球だ。そしてそれはズドンと日本の本当の問題に気付いている人たちの心に響く。

 その昔、ある高名な評論家が、私に「日本を本当に支配しているのが誰かがわかった」とつぶやいたことがある。それは正確にいえば「誰」ではなく、組織であり、またそこに群がる人たちのことでもある。もちろんそれは財務省のことであった。

 最近の財務省のトップによるセクハラ疑惑とその辞任劇、そして理財局と近畿財務局という組織そのものが関与した文書改ざん問題、さらに今も懲りずに繰り返す「財政危機」というフェイク(嘘デタラメ)を利用した増税の宣伝工作。よく政治家の方が財務省よりも優位であり、財務省よりも政治家の責任が重く、財務省は悪くない、というデタラメな話がある。高橋氏の新著を読めば、財務省は歴代政権でさえも、消費増税や自分たちの政策を利用するひとつの道具でしかないことがよくわかるだろう。まさに財務省は日本国に巣食う最悪の寄生虫である。

 高橋氏によれば、財務省が増税を目指すのは自分達の利益になるからである。つまり予算編成権などでさらに権力をふるえる余地が生まれるからだ。この国民の血税を利用して、財務省官僚たちは、自らの虚飾に満ちた「権限」を強化していく。例えば、最近では、東京金融取引所のトップに旧大蔵省(現在の財務省)出身者が五代続いて就任する。完全なる「天下り」というか財務省の植民地である。しかもこの人物の経歴をみると日銀理事と金融庁幹部も歴任している。

東京金融取引所社長に木下信行氏 5代連続で大蔵OB

 90年代後半の大蔵省スキャンダルという不祥事で、当時の大蔵省は社会の批判を浴び、その権限から金融監督行政の権限を奪われ、それは金融庁となって財務省から「独立」した。また日本銀行も法律が改正され、これも政治つまりは財務省の権限から隔絶できるような地位を与えられた。しかし20年近く経過して金融庁、日本銀行ともに人事面を含めて財務省とのつながりは最強化され、再び植民地化している。

 ちなみに旧大蔵省、財務省ともにそこに務める人間の知的レベルをあまりにも世間は髙く評価しすぎである。偏差値や公務員試験での合格と、その後に官僚たちの行う行政のパフォーマンスはまったく因果関係はない。例えば財務省が主導する「財政危機」を理由にした緊縮増税路線が、日本を20年にも停滞させたのは自明である。まだこの単純な事実を理解できない人は、心の中に「小さな財務省」でも巣食っているのだろう。

■マスコミが財務省が擁護する理由とは?

 高橋氏の指摘にもあるが、日本のマスコミの「スクープ」のほとんどが官僚発のリークである。その意味で、マスコミと官僚たちは利害関係者である。特にいまのような時期では、「消費増税しても対策はばっちり」とか「消費増税しても景気はそんなに悪くならない」というマスコミと財務省のコラボが大展開中である。増税志向の政治家たち、とくにポスト安倍を狙う政治家たちもまたこのような増税脳とでもいうべきスタンスである。財政状況は、あくまでも民間の経済活動の結果でよくもわるくもなる。つまり我々が働くことで実現するのだ。財務省の目論見にしたがうのではない。この基本的なことさえも財務省は理解していない。その実例は高橋氏の著作に実に豊富だ。

 このような財務省の「おごり」をどうすべきか。高橋氏は長年、歳入庁を設置して、税金と年金など社会保険料の徴取を統合的に行う機関にすべきだと主張している。私も賛成だ。これにより国税庁という財務省の植民地であり、また税の調査権限という政治家さえも恐れる権力を財務省からとりあげることになる。ただし歳入庁には財務省に一年でもいた人は正規・非正規のポスト含めて一切ノータッチにすべきだろう。金融庁と日銀の経験がそれを教えている。また今回の文書改ざん問題をうけて、高橋氏は「公文書管理庁」の設置も提案している。それに日本銀行の目標を増税目的など財務省の思惑に左右されないように、雇用の最大化と物価の安定に寄与するよう改正すべきである。

 またこれは私見だが、トップがセクハラスキャンダルで辞任、そして組織の一部がまるごと関与した文書改ざんなど、財務省の体質は民間であればまさに「ブラック企業」そのものである。そんなところがぬけぬけと今年も国家公務員試験などで若い有能な人材を国家の権限として採用する。国民の厳しい視線をうけ、その体質改善も具体的でない今、今年の採用及びここしばらくの同省の採用は制限すべきである。それでは人材育成に弊害がでるという指摘があるだろう。なにを言っているのだろうか?「弊害」というペナルティを課すために行うべきなのだ。

それで仕事ができないなら、他の省庁の下部組織にでもなって人材を貸してもらえばいいだろう。だが、この財務省という「ブラック企業」は今日も健在で、「天下り」や増税指南に元気である。まさに国家の寄生虫そのものである。

経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣



上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。

【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!

財務省の所業は昔からひどいものがありますが、最近のものも掲載しておきます。

財務省は4日、『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する報告調査書』を公表しました。最近も企業の不祥事が相次いでおり、そういうときの対応として、危機管理ということが、叫ばれています。その鉄則は、早めに記者会見を開き、「第三者委員会を設けたのでその結論を待ちたい」として一種の時間稼ぎをすることです。しかし、財務省の対応はあまりにも遅すぎましたし、未だに不十分です。

最近では日本大学の「危険タックル問題」があり、大学の危機管理能力が問われたばかりです。問題の試合から1カ月近く経ってからようやく、第三者委員会を立ち上げたことについて、そのスピードが遅すぎるという非難が高まっていました。その間、記者会見も中途半端で、かえって火に油を注ぐ結果となりました。

財務省の場合は、第三者委委員会すら作っていません。前事務次官のセクハラ問題については、不徹底とはいえ弁護士事務所に依頼していました。今回の文書改竄問題では、そうしたこともなく、財務省名で調査報告書が作られたのみでした。これでは、外部に対する説得力は皆無です。

危機管理の観点では、第三者委の設置が遅くて非難された、日大と比べても、第三者委すら作らなかった財務省の有様はあまりにもお粗末です。

まともな組織なら、文書改竄が部内で分かった段階で第三者委を設置し、国会からの問い合わせと並行して第三者委による部内調査を行い、大阪地検が財務省関係者の不起訴処分を発表する日に合わせて中間報告を実施し、時機を見て最終報告をするくらいのことはするでしょう。

財務省の報告書の表紙

報告書の中身も疑問だらけです。例えば、7ページ目の注10に「未利用国有地の売払いは、公用・公共用の利用を優先する考え方を基本として、まず3カ月間、地方公共団体及び公益法人その他の事業者からの取得等要望の受付を行い、当該受付期間中に要望がない場合には、一般競争入札により売却することとされている」とありますが、公共用でも当初に一般競争入札しておけば、問題なしだったはずです。

25ページの注27は「本省理財局の国有財産審査室長は、『一元的な文書管理システム』において『文書5(特例承認)』の決裁文書の更新処理を行えば、元の決裁文書は上書き保存されて無くなるものと考えていたが、実際には、元々の文書もそのまま保存されていた」と書かれているのですが、これでは単に電子ファイルに関するる無知を晒しているだけです。

さらに、あれだけの文書改竄を行えば、たとえ刑法には問われなくとも、国家公務員法違反です。この場合、停職3月等ではなく懲戒免職相当です。そういう処分であれば、退職金は全て返納となり、国民もある程度納得したかもしれません。

そもそも、財務省は普段からリスクを意識して仕事をしているのでしょうか。おそらく、全く意識していなかったのでしょう。だからこそ、実際にリスクが生じたときに、手順も何もなく、慌てふためき、まともに対応できなかったのが実情なのでしょう。

民間企業等のリスクについて、経営学大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。

「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになる」(『創造する経営者』)

リスクには4つの種類がある。負うべきリスク、すなわち事業の本質に付随するリスク、負えるリスク、負えないリスク、負わないことによるリスクである。

ほとんどあらゆる産業に負うべきリスクがある。新薬には人体を傷つけるリスクがある。しかし、なおかつ製薬に携わるには負うべきリスクである。

多少の資金と労力を失うリスクは、負えるリスクです。失ったならば存続できないほどの資金がかかるのであれば、それは負えないリスクです。

事業に着手するに当たっては、成功を利用できるか、もたらされる機会を実現できるか、それとも誰かのために機会をつくるだけかを問わなければならない。

負わないことによるリスクの典型は、革新的な機会に伴うものである。その古典的な例が、第二次大戦直後のGEの原子力発電への進出である。専門家は原子力を経済的な電力源にできる可能性は低いと見ていた。しかしGEは発電機メーカーとして、万が一にも取り残されるというリスクを負うわけにはいかなかった。
「リスクの有無を行動の基盤としてはならない。リスクは行動に対する制約にすぎない」(『創造する経営者』)

ドラッカーが提唱した企業の4つのリスク

以上が、まともな民間企業のリスクについての考え方です。普段からこのように考えているからこそ、いざというときに特に「負うべきリスク」に関しては、リスク管理体制を普段から整え、迅速に対応できるようにしているのです。

さて、財務省の負うべきリスクとは何でしょうか。財務省や、マスコミ、経済学者が何をいおうが、それははっきりしています。それは財政政策に失敗することです。これこそが、財務省のリスクです。

ところが、当の財務省は財政政策の失敗をリスクとはみていません。過去20数年間財務省の財政政策は失敗続きでした。この度重なる失敗をしても、誰も責任をとったものはいません。

日銀も過去は金融引締め一辺倒で、失敗を繰り返してきましたが、2013年4月からは金融緩和策に転じて一部不十分なところがありながらも、現在まで継続しています。そのため、雇用状況はかなり良くなっています。しかし、財務省の場合は過去20数年間どころか、現在に至るまで、失敗続きです。

失敗の原因は明らかです。デフレの時期や、デフレからまだ完璧に抜けきっていない時期に、本来積極財政すべきところを増税等の緊縮財政を実行してきたことです。

そのため、日本経済は金融緩和の影響もあって、雇用は随分改善されそれによって若干経済にも良い影響を及ぼしている面もありますが、増税によって個人消費が落ち込み、未だに完璧にデフレから脱却しているとはいい難い状況ですし、GDPの伸び率は未だに韓国以下です。

これだけ失敗を続けてきたというのに、財務省の官僚は誰もマスコミや識者から非難されることもなく、また民間企業なら当然のごとく行われる、これらの失敗に対する降格、罷免、左遷、減給などの措置もありません。

病院や医師が患者の治療に何十年も失敗し続けてきたらどういうことなるでしょうか、病院は閉鎖され、医師は医師免許を剥奪されることもあり得ます。しかし、財務省はそうはなりませんでした。

これでは、財務省の官僚はリスクのことなど意識しなくなるのは当然のことです。リスクのことを意識せず、それに対する備えも何もしなければどういうことになるでしょうか。

民間企業でいえば、リスクを避けることにばかりとらわれ、リスクに向き合うことなく、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになってしまったのと同じです。

財務省の場合は本来のリスクに全く無頓着で気にもとめていなかったので、リスクというものに対する感受性やアンテナがすっかり失われしまったのです。

そのため、文書改ざんなどというリスクを平気でおかして、その挙句に、まともな対処もできず、佐川国税庁長官が自ら辞任ということになり、それでも未だリスクに対する備えがなく、次にはセクハラ問題で福田事務次官が自ら辞任ということになったのです。

まともにリスクを考えるような組織ならば、このようなことにはならなかったはすです。そもそも、このような問題など最初から起きなかったでしょう。

負うべきリスクについてまもに考えるどころか、それを無視して、憚らない財務省。民間企業の組織なら、とっくの昔に淘汰されてしまう組織です。それが淘汰されずに残ったため、今回のような不祥事が表面化してしまったのです。

このまま、財務省の組織がそのまま改革も改善もされないまま残れば、さらなる不祥事が起こり続けるでしょう。そうなる前に、ブログ冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するように、財務省は解体して、ただ解体しただけでは、長い年月をかけて他省庁を植民地化するという性癖があるので、他の省庁の下部組織とするべきです。

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