髙橋 洋一:経済学者、嘉悦大学教授 プロフィール
また出た「財政規律の緩み論」
18年度予算案が閣議決定されたが、メディアの論調は「(歳出が増え)財政規律が緩んでいる」「税収増頼みだ」といったものばかりだ。例えば、22日のNHK「時論公論」では、「来年度予算 求められる新たな財政規律」というタイトルで、財政規律のゆるみを問題にしている。
しかし本当に財政規律にゆるみが生じているのか。これを検証したい。
まず、予算の全体像を知るには、予算フレームを見るのがいい(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/02.pdf)。
これをみれば、18年度予算案は昨年度予算とほぼ同じものであることがわかる。
さらに中身を詳しく見るのは、概算をチェックするのがいい(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/03.pdf)。
ここには、各省別の予算概算がでている。全体の伸びが0.3%であるので、各省の予算でも、天皇ご譲位行事のある皇室58.6%を除くと、最大の伸びは内閣府1.7%、最低は経産省▲4.3%である。11省で増額、5省で減額である。
主要経費でみると、社会保障関係費4997億円増のほか、文教科学79億円増、防衛関係費660億円増、公共事業関係費26増億円、その他806億円増を、国債費▲2265億円などでカットして、全体で2581億円増、結果、0.3%の伸びにしている。
NHK「時論公論」では、日本の財政状況について、国の借金総額が883兆円(来年度末)になるから、財政規律を正すべきだとしている。相変わらず、バランスシートの考え方が抜け、資産を無視して借金だけをみていることに呆れてしまう。
12月22日放送のNHK「時事公論」より。かなり大げさな図を用いて、日本の借金の「深刻さ」を表現している
筆者は2年前の2015年12月28日に<「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… 財政再建は実質完了してしまう!>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)を書いている。そこでは、日銀を含んだ「統合政府」としてのバランスシートが国の財政状況を正しくみるためには必要であり、それをみれば、日本ではほぼ財政再建が終わっている状態で、健全な財政状況となっていることを示している。
なお、「統合政府」とは、財政・金融問題を考えるときに、政府と中央銀行を一体のものとして考えるやり方である。法的にも中央銀行はいわば「政府の子会社」であるが、一般企業においてグループ企業の業績・資産は連結決算で考えるのと同じで、政府と日銀の財政・資産は一体で視るべきだ、ということである。
もちろん、この考え方は中央銀行の独立性と矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内で、その達成のためにオペレーションを任されているという意味である。これも、グループ企業が営業の独立性を持っているのと同じ意味である。
これは国際的な見方なのだ
ところで今年3月14日、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授が来日して経済財政諮問会議に出席した。このときスティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張した(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/shiryo_01-2.pdf)。
これは、統合政府の考え方そのものである。これで、(なにかと日本では批判の的となるが)筆者の分析方法が、国際的には標準的なものであったことがわかっていただけるだろう。
日本の経済学者の中には、スティグリッツ教授が間違っていると息巻いている人もいるが、そうであれば、彼にもそのことを直接指摘して、公式に謝罪させてほしいものだ。もちろん、「統合政府」は、会計的な考え方であり、否定しようのないものなので、スティグリッツ教授が謝罪するはずないのだが。
こうして、バランスシートで見て財政状況を把握するのは常識であり、その右側だけの借金だけをみる方法が通用しないことが説明できる。ただ、それでも懐疑的な人は、来年3月に確定申告すればわかるはずだ。
税務署に「借金が多くて苦しいので、税金を払えない」という申告者を出したとしよう。その人の所得が一定以上であれば、資産負債の明細書を求めらる。そのとき、資産を過小に申告して、税務調査で「隠し資産」があることが判明したら大変なことになるのは分かるだろう。要するに、「借金が多い」というのは、すなわち財政状況が悪いということではないのだ。
なお、半ば冗談であるが、今の国税庁長官は森友学園事件の時、財務省理財局長として「資料がない」と言い張った佐川氏だ。彼に対して「資産負債の明細書資料がない、廃棄した」といったら、一体どうなるのだろうか。興味深いが、答えに窮するだろう。森友事件は、現場の税務調査官泣かせの事件だっただろう。
ちなみに、政府のバランスシートをはじめて作成したのは、20数年前の大蔵省に勤めていた筆者である。その当時は、以下の財政状況を客観的に把握するかを大蔵省内で議論しており、会計に詳しい筆者が政府のバランスシートを作成した。そのとき、バランスシートに着目した財政運営も行おうとして、理財局内に「資金企画室」という組織も作った。その初代室長は筆者だった。
この室の俗称英語名は「Asset and Liability Management Office」。まさに、バランスシート管理、という意味である。そうしたバランスシートを政府が作るのは、その当時から世界の潮流になっていたのだ。
そこで、筆者がいろいろな国を勉強して、日本でも政府のバランスシートをつくろうとなった。
そのためアメリカに出張にいくと、米財務省でも似たようなことを考えているということで、筆者は実際に作成するアメリカの担当者とかなり親しくなったものだ。
そのアメリカは、日本に先立って1995年版から政府のバランスシートを公表している(https://www.fiscal.treasury.gov/fsreports/rpt/finrep/fr/backissues.htm)。
日本でもほぼ同時期に作ったが、対外的には公表しないということで、部内利用になった。遅れること2005年、小泉政権のときに、2003年度版を正式に公表するようになった(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm)。
これは、筆者が経済財政諮問会議特命室時代に、いわゆる埋蔵金論争(資産負債改革、特別会計改革)を仕掛けていたときだ。
そのときから、財務省はこのバランスシートが積極的に取り上げられないように、マスコミにはほとんどその存在や意味を説明しなかった。筆者が財務省に対してバランスシートについて指摘すると、「公表済み」という。しかし、マスコミには説明(レクチャー)しないので、どこのマスコミもこのバランスシートについては報じないという状況が今でも続いている。
大きな財政問題にはならない
実は、海外投資家向けに日本国債の状況を説明するときには、バランスシートがしばしば用いられる(もっとも最近では英文資料も用意していないようだ。2009年度版英文資料は、財務省のサイト(http://www.mof.go.jp/english/budget/others/2011_03_english.pdf)にあるが、それ以降のものは見当たらない)。
そういえば、最近筆者のところに、しばしば海外投資家が訪れ、日本政府のバランスシートについて話をしてもらいたいという依頼を受けるが、先進国であれば、financial statementを用意するのは常識である。
もっとも、海外投資家は、日本の財政状況が悪くないことをよく理解している。筆者も、次の資料を使って説明することが多い。
筆者は2年前の2015年12月28日に<「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… 財政再建は実質完了してしまう!>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)を書いている。そこでは、日銀を含んだ「統合政府」としてのバランスシートが国の財政状況を正しくみるためには必要であり、それをみれば、日本ではほぼ財政再建が終わっている状態で、健全な財政状況となっていることを示している。
なお、「統合政府」とは、財政・金融問題を考えるときに、政府と中央銀行を一体のものとして考えるやり方である。法的にも中央銀行はいわば「政府の子会社」であるが、一般企業においてグループ企業の業績・資産は連結決算で考えるのと同じで、政府と日銀の財政・資産は一体で視るべきだ、ということである。
もちろん、この考え方は中央銀行の独立性と矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内で、その達成のためにオペレーションを任されているという意味である。これも、グループ企業が営業の独立性を持っているのと同じ意味である。
ところで今年3月14日、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授が来日して経済財政諮問会議に出席した。このときスティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張した(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/shiryo_01-2.pdf)。
これは、統合政府の考え方そのものである。これで、(なにかと日本では批判の的となるが)筆者の分析方法が、国際的には標準的なものであったことがわかっていただけるだろう。
日本の経済学者の中には、スティグリッツ教授が間違っていると息巻いている人もいるが、そうであれば、彼にもそのことを直接指摘して、公式に謝罪させてほしいものだ。もちろん、「統合政府」は、会計的な考え方であり、否定しようのないものなので、スティグリッツ教授が謝罪するはずないのだが。
こうして、バランスシートで見て財政状況を把握するのは常識であり、その右側だけの借金だけをみる方法が通用しないことが説明できる。ただ、それでも懐疑的な人は、来年3月に確定申告すればわかるはずだ。
税務署に「借金が多くて苦しいので、税金を払えない」という申告者を出したとしよう。その人の所得が一定以上であれば、資産負債の明細書を求めらる。そのとき、資産を過小に申告して、税務調査で「隠し資産」があることが判明したら大変なことになるのは分かるだろう。要するに、「借金が多い」というのは、すなわち財政状況が悪いということではないのだ。
なお、半ば冗談であるが、今の国税庁長官は森友学園事件の時、財務省理財局長として「資料がない」と言い張った佐川氏だ。彼に対して「資産負債の明細書資料がない、廃棄した」といったら、一体どうなるのだろうか。興味深いが、答えに窮するだろう。森友事件は、現場の税務調査官泣かせの事件だっただろう。
ちなみに、政府のバランスシートをはじめて作成したのは、20数年前の大蔵省に勤めていた筆者である。その当時は、以下の財政状況を客観的に把握するかを大蔵省内で議論しており、会計に詳しい筆者が政府のバランスシートを作成した。そのとき、バランスシートに着目した財政運営も行おうとして、理財局内に「資金企画室」という組織も作った。その初代室長は筆者だった。
この室の俗称英語名は「Asset and Liability Management Office」。まさに、バランスシート管理、という意味である。そうしたバランスシートを政府が作るのは、その当時から世界の潮流になっていたのだ。
そこで、筆者がいろいろな国を勉強して、日本でも政府のバランスシートをつくろうとなった。
そのためアメリカに出張にいくと、米財務省でも似たようなことを考えているということで、筆者は実際に作成するアメリカの担当者とかなり親しくなったものだ。
そのアメリカは、日本に先立って1995年版から政府のバランスシートを公表している(https://www.fiscal.treasury.gov/fsreports/rpt/finrep/fr/backissues.htm)。
日本でもほぼ同時期に作ったが、対外的には公表しないということで、部内利用になった。遅れること2005年、小泉政権のときに、2003年度版を正式に公表するようになった(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm)。
これは、筆者が経済財政諮問会議特命室時代に、いわゆる埋蔵金論争(資産負債改革、特別会計改革)を仕掛けていたときだ。
そのときから、財務省はこのバランスシートが積極的に取り上げられないように、マスコミにはほとんどその存在や意味を説明しなかった。筆者が財務省に対してバランスシートについて指摘すると、「公表済み」という。しかし、マスコミには説明(レクチャー)しないので、どこのマスコミもこのバランスシートについては報じないという状況が今でも続いている。
大きな財政問題にはならない
実は、海外投資家向けに日本国債の状況を説明するときには、バランスシートがしばしば用いられる(もっとも最近では英文資料も用意していないようだ。2009年度版英文資料は、財務省のサイト(http://www.mof.go.jp/english/budget/others/2011_03_english.pdf)にあるが、それ以降のものは見当たらない)。
そういえば、最近筆者のところに、しばしば海外投資家が訪れ、日本政府のバランスシートについて話をしてもらいたいという依頼を受けるが、先進国であれば、financial statementを用意するのは常識である。
もっとも、海外投資家は、日本の財政状況が悪くないことをよく理解している。筆者も、次の資料を使って説明することが多い。
日米は、同様のバランスシートを作成した経緯があるから、筆者には比較しやすい。そこで、日米比較をすると、ここ20年弱、アメリカの財政状況のほうが日本より一貫して悪いことが分かる。
逆にいえば、日本がアメリカの数字を上回るようになったら注意したほうがいい。もっとも、国には「徴税権」などの見えない資産があるので、少しぐらいネット債務額が大きくなっても、びくともしないのだが。それでも、一応の目安はアメリカの数字、と筆者は思っている。
中央銀行を含めないベースでGDP比20%程度、含めるベースではGDP比60%くらいの日米格差があるので、現状100~300兆円くらいの国債を発行したとしても、大きな財政問題にはならないと筆者は考えている。
NHKが指摘していたのは、高齢化による社会保障費増大の話だ。このままでは社会保障費が増える一方で、日本の財政は大変なことになるというものだ。しかし、社会保障は保険原理で運営されるので、それを徹底しておけば、かなりの問題は防げる。
「保険原理」から、将来収支は将来費用に見合うように設計される。それを短期間で支出と費用を見直することがまず必要だ。そうすれば自ずと、費用の徴収漏れ問題に行きつくはずだ。
実は世界の社会保障ではほとんど保険方式であるが、その徴収は税当局が行い、徴収の効率性を高めている。歳入庁が存在することが世界標準なのだ。日本でも歳入庁がないことによって、数兆円の徴収漏れがあることが指摘されているが、日本ではなぜ歳入庁をつくろうとしないのか、不思議である。
民主党政権時には「歳入庁の設立」を公約としたが、おそらく財務省の意向だろう、いつのまにか取り下げてしまった。そして、消費税を社会保障に充てるために消費増税する、といいだした。消費税は一般財源であり、社会保障目的税としている先進国はないのに、である。
政策の筋としては、歳入庁をつくって、社会保険料徴収の効率化をすすめることが第一歩のはずなのに、それを避けて社会保障の話をするのは世界標準とずれていて、違和感がありすぎる。
どうして、こうした基本的な話をNHKは報道しないのか、不思議でならない。筆者は、実はNHKのバランスシートもこの「珍問」のカギがあるとにらんでいる。
筆者は政府のバランスシートの話をよくするが、財務省が「資産」について語りたくないのは、資産とはつまり、天下りと直結している問題だからなのだ。借金返済のために、資産を売れ、となると、天下りに支障が出てしまう。
さて、そのなかでNHKのバランスシートをみると、ほとんど無借金経営状態であり、資産たっぷり。純資産8000億円の超優良組織であることが分かる(http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kessan/h28/pdf/renketu28.pdf)。
先日、本コラムで筆者は、NHK分割論を提案した(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53787)が、上手く分割すれば、8000億円も国庫収入が増えることになるかもしれない。これは、見方を変えれば潤沢な放送受信料収入をほとんど苦労なく得られるため、楽な運営をしてきたからだともいえる。この点を指摘されたくないから、NHKは国の「資産」についても触れたくないのではないか。
その点では、財務省と似ているかもしれない。となれば、極めて恣意的に言えば、財務省とNHKは、「資産については話をしない」という共犯関係にあるのかもしれない。「本当のこと」を知る機会を奪われているのだと考えると、ちょっとゾッとしてしまう。
【私の論評】経済回復のボトルネックと成り果てたNHKは財務省とともに廃棄せよ(゚д゚)!
財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!
図4 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、財務省の補正予算の組み方について掲載しました。
結論からいうと、財務省は経済環境などおかまいなしに、 概算要求を4%カットして当初予算を作るのですが、補正予算でカット分の予算をつけて、当初の概算要求と同じ水準にしているという実体があります。
なぜこのようなことになるかといえば、財務省の基本的な考え方として、国民経済など二の次にして、どのような場合でも、できるだけ予算を絞り込みたいという不思議な習性があります。
これは、財務省が国の「金庫番」である以上、仕方がないのかもしれないともいえますが、財政の健全化というのは建前であり、当初予算で絞り込めば、補正予算で復活させた時に、要求官庁がより恩を感じるようにしているだけなのです。
こんなことでは、日本経済が良くなるはずもありません。
そうして、この記事の元記事で高橋洋一氏は、以下のような予想をしています。
それでは今年度の場合、こうした戦略的な話ではなく、財務省は事務的にどの程度の補正予算とするつもりなのだろうか。ひょっとしたら、補正なしというのもあり得るが、それでは政治的にもたないだろう。そこで、財務省的には、どの程度なら、財政健全化に支障がない許容範囲かという、つまらない次元で考えるのだろう。
それは、安倍政権になってから、年々、補正予算の緊縮度合いが増していることから予想できる。
実は、最近15年度と16年度では、概算要求から当初予算で5%カットして、補正予算で3%増やすことになっており、概算要求の水準まで達していない。図4の補正で修正された予算と概算要求の比率を見ると、15年度と16年度は平均線を下回っている。
17年度は、概算要求と当初予算を比べると、これまでの経験則通りに4%カットだった。
補正予算後の予算総額が15年度と16年度並みの2%カット水準であればどうなるか。
17年度の概算要求は101.5兆円だったので、概算要求の2%カットだと99.5兆円。当初予算は97.5兆円だったので、補正予算は2兆円程度、総計でも100兆円を切るショボいものになる可能性がある。そうして、補正予算は実際どうなったのかといえば、今月6日に明らかになっています。以下にそれに関連したロイターの記事のリンクを掲載します。
17年度補正予算で歳出追加2.9兆円、ミサイル防衛費も=政府筋
政府は、2017年度補正予算案の追加歳出を2.9兆円とする方針を固めた。政策経費は2.7兆円となる。生産性向上や人づくりなどの経費と併せ、1兆円を超える公共事業を盛り込んだ。ミサイル防衛関連費用も計上し、北朝鮮情勢など喫緊の課題に対応する。複数の政府筋が明らかにした。2.9兆円ということで、高橋洋一氏の予測よりは、9000億円ほど多くなっていますが、これは、北朝鮮の脅威も現実的となり、防衛関連経費を増やさないと、国民の批判が高まり、政治的にもたなくなるとの財務省側の判断で、増やしたものと思います。
それにしても、高橋洋一氏は、現在の日本は8%増税などを要因とするデフレ・ギャップを
解消するためには、財政出動20兆円が必要としていると比較すると、わずか2.9兆円では本当に焼け石に水です。まさに財務省の思惑通りの補正予算になっていると見て良いです。
今年一度に20兆円ということではなくても、今年は10兆にして、来年も継続で10兆にするというのなら、まだわかりますが、2.9兆円では日本GDPはまだまだ低迷しそうです。
そうして、この記事では、最後に以下のような結論を掲載しました。
これでは、本来は日本経済を良くするのが仕事であるはずの財務省自体が、日本経済復活のボトルネックになっているとしかいいようがありません。こういう官庁に対しては、まずは内閣人事局において、徹底的に厳しい人事を実施すべきです。人事を軽く見るべきではありません。
平成26年5月30日、安倍総理は内閣人事局看板掛け及び職員への訓示を行った
人事は、いかなる組織においても、最大のコントロール手段です。その他の手段はどのようなものであれ、人事には及びません。いくら精緻な組織分析をしたとしても、それ自体がコントロール手段となるわけではありません。
役人たちを本当に政府の仕事に貢献させたいのであれば、本当に政府に貢献する人たちに報いなければならないです。それとは、反対に政府に貢献しない人たちには報いないようにしなければならないのです。省庁の組織としての精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まります。
かつてのように、国民や政府などには目もくれず、省益を最大限に重んじる人が昇進するようでは、政治主導など永遠に勝ち取ることはできません。
組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定です。それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを組織の全構成員に対して明らかにします。
“国民への貢献”を組織の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならないです。
致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日の高級官僚が選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。
そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら政府の下部組織としての価値観に基づいて行なわれるべきです。
高級官僚など、重要な地位を補充するにあたっては、政府の目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、政府全体のために働く意欲を重視し、報いなければならないのです。
それでも、ボトルネック状態が払拭できない場合は、財務省を分割するしかないでしょう。ただし、単純に分割すると、財務省は長い時間をかけても、他省庁を植民地にするという習性があるので、財務省を分割した上で、他省庁の下部組織にするという方式で分割すべきです。
もし、これを実施しなければ、旧財務省出身者がいずれかの官庁で、事務次官になり、この事務次官が分割された他省庁の旧財務省出身者と結託して、他省庁を時間をかけて植民化して、実質他省庁を支配し、結局旧財務省と同じようなグループを復活させることになります。
このような分割の仕方をすれば、旧財務省出身者は、どうあがいても、いずれの官庁においても事務次官にまで上り詰めることは不可能になり、政治に対して権力を振るうことは不可能になります。そうして、大蔵省のDNAは、財務省から新体制は受継がれなくなります。
そうして、官僚は本来の業務である、政府の目標設定に従い、専門家的立場から、それを実行するための手段を選び実行するという役割を果たすようになります。前川のような馬鹿で独善的な次官が生まれる余地はなくなります。
これで、財務省はすっかりこの世から消えることなります。そうして、全省庁の高級官僚は、左遷されたり、それどころか、自分の属する省庁がこの世から消えることを恐れ、政府の方針に従った仕事をするようになります。そうなれば、日本経済は大復活することになります。
せっかく、内閣人事局を設置したわけですから、安倍政権には少し時間をかけても、これを実行して頂きたいです。これが成功すれば、日本経済が大復活するだけではなく、日本の政治主導の夜明けとなり、良いことずくめです。そうして、公共放送であるはずのNHKにも、高橋洋一氏が指摘したように非常に問題があります。
ブログ冒頭の高橋洋一の記事に掲載されていた、NHKの平成28年度の決算をみると、当然のことながら、連結決算になっており、連結のBS(貸借対照表)も掲載されています。
NHKの業績をみるためには、当然のことながら、連結決算でみなければなりません。これは、過去の苦い経験から会計法がかわり、今では企業グループは連結決算を提出しなければなりません。特に、大企業では連結決算の提出が義務付けられています。
過去においては、グループ企業において、親会社の赤字が、巧妙に小会社に移転され、あたかも親会社の業績は良いように、決算書が偽造されていることがありました。だからこそ、会計法が改正されて連結決算をしてね、グルーブ企業全体の状況を把握できるようにしたのです。
そうして、連結決算でも、BSを見て、資産と負債の状況を把握しなけばなりません。負債だけ見て、借金が過大であるなどといえば、馬鹿といわれるだけです。資産の状況もみなければなりません。これは、法律で義務付けられていることです。
そうして、本来政府の業績をみるためにも、日銀と政府の連結、すなわち統合政府の決算書それも、PLとBSの両方をみなければなりません。特にBSで、負債だけではなく資産もみなければならないはずです。
しかし、NHKはそのようなことをしようともしません。これは、高橋洋一氏が指摘するように、意図して意識してやっていることなのでしょうか。
私は、そうとも限らないと思います。高橋洋一氏が指摘するように、潤沢な放送受信料収入をほとんど苦労なく得られるため、楽な運営をしてきたので、資産などに関しても、どんぶり勘定ができれば、支障はなく、ほとんど頭を使う必要がなかったので、BSを読めないのかもしれません。
いずれにしても、これは問題です。このようなNHKをそのまま運営させても、国民には全くメリットがありません。国民が、政府の業績を知るための財政の「本当のこと」を知る機会を結果として奪っているNHKには存在価値はありません。
NHKは解体して、国民の「本当のこと」を知る権利を尊重する、新たな公共放送を創設すべきです。
NHKの解体は、財務省の解体ほどには難しくないと思います。そうして、解体すればそのインパクトはかなり大きいと思います。いわゆる、放送業界にもかなりのインパクトを与えるものと思います。少なくとも財政に関して国民の知る権利を無視する放送局はなくなると思います。
経営学の大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。
長い航海を続けてきた船は、船底に付着した貝を洗い落とす。さもなければ、スピードは落ち、機動力は失われる。(『乱気流時代の経営』)
あらゆる製品、あらゆるサービス、あらゆるプロセスが、常時、見直されなければならない。多少の改善ではなく、根本からの見直しが必要です。
なぜなら、あらゆるものが、出来上がった途端に陳腐化を始めているからです。そして、明日を切り開くべき有能な人材がそこに縛り付けられるからであす。ドラッカー氏は、こうした陳腐化を防ぐためには、まず廃棄せよと言います。廃棄せずして、新しいことは始められないのです。
ところが、あまりにわずかの企業しか、昨日を切り捨てていません。そのため、あまりにわずかの企業しか、明日のために必要な人材を手にしていません。
自らが陳腐化させられることを防ぐには、自らのものはすべて自らが陳腐化するしかないのです。そのためには人材がいります。その人材はどこで手に入れるのでしょうか。外から探してくるのでは遅いです。
成長の基盤は変化します。企業にとっては、自らの強みを発揮できる成長分野を探し出し、もはや成果を期待できない分野から人材を引き揚げ、機会のあるところに移すことが必要となります
乱気流の時代においては、陳腐化が急速に進行する。したがって昨日を組織的に切り捨てるとともに、資源を体系的に集中することが、成長のための戦略の基本となる。(『乱気流時代の経営』)そうして、これは企業だけではなく、日本国にもあてはまることです。このようなことをしなければ、日本が成長することはないのです。
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