2017年12月21日木曜日

若者の交際キーワードから読み解く「若者のクリスマス離れ」の原因―【私の論評】なぜ日本では金融政策と社会は無縁であるかのような扱いなのか(゚д゚)!


神戸の世界一のクリスマスツリー
株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント(所在地:東京都新宿区、代表取締役:松田 武久)は、首都圏在住の18~79歳の男女3,000人を対象に実施した自主調査を用い、「若者のクリスマス離れ」について分析を行いました。

年々盛り上がりをみせるハロウィンに対し、近年、「若者のクリスマス離れ」が取りざたされ、クリスマスの勢いが弱まりつつあるそうです。若者たちのクリスマスへの関心が弱まっているのはなぜなのか。その要因について考えてみました。

■ 調査結果

・18~24歳の若者は、生活の意識として「自分だけの時間や空間を大事にしたい」が男女ともに6割を超え、他世代と比較して相対的に高い傾向にある。一方で、「色々な人達と積極的につきあい、つきあいの輪をどんどん広げたい」意識もあり、人とのつながりを大事にしたい意識もうかがえる。(図1)

図1 人とのzき合いに関する意識
・18~24歳はスマートフォンで多様なネットサービスを利用しているが、「SNS」「無料通話サービス」「動画投稿配信サイト」といった≪つながる≫≪共有する≫サービスの利用率が高い。

・情報関連の意識態度でも、「個人ネットワークの充実に努めている」「どこでも連絡や情報を受け取りたい」が約半数で、全体と比較して約20pt上回る。一方、他世代と比較して、「常時情報が送られてくるのは煩わしい」が相対的に低く、「いつでも誰かとつながっていないと不安を感じる」が相対的に高い傾向にあることからも、デジタル社会の中での人とのつながり意識も強く現れている。(図2)

図2 情報関連の意識態度(「そう思う」計の比率)
・どこでも情報を受け取りたい&いつでも誰かとつながっていないと不安な層は、「自分のスタイルが仲間から浮かないよう気を配る」「同性からどのように見られているか気になる」「友達に褒められる装いをしたい」がいずれも高めで、他者との同調や共感を意識している傾向がうかがえる。

■ R&D生活者インサイト

以上のように、18~24歳の若者について生活をする上での意識や行動を整理すると、

◇自分だけの時間や空間は大事だが、独りになりたいわけではない
自分一人の時間や空間を大事にしたい意識が高い一方、人とのつきあいについても意欲的である。

◇「ライトで広いつながり」をベースにした若者の交流
思春期あたりからスマートフォンが登場したことで、他の世代に比べ情報スキルも高く、且つ収集量も多い。加えてSNSの浸透が急速に進んだことで直接の知り合いでなくても趣味や嗜好などの共通点を通して広く、ライトに、気軽につながれる交流が増えてきている。

これまで「人との交流=特定の人と深く」というイメージだったものが上述のようなものへと変わってきていると思われる。

◇18~24歳の若者の交際のキーワードは「共感」?「同調」?
スマートフォンでいつでも、どこでも、誰とでもつながれる時代だからこそ、逆につながっていないことへの不安を感じる傾向が見受けられる。また、他者からの評価を意識し、他者に「いいね」をしてもらえないことに対する不安感を持つ者が多い傾向にある。生活には「自由さ」を求めているが、仲間同士の和を乱すことなく無難に楽しく過ごすことに重きをおいており、他者から非難を受けない許容範囲内での「自由」「自分らしさ」「楽しさ」を実践しているようにも感じられる。

◇若者に響くハロウィン/下降気味のクリスマス
当初の問題提起である、イベントの盛り上がりに明暗分かれる件については、18~24 歳の若者のそれぞれのイベントに対するイメージ(定義)として考えると、以下のような特徴として整理される。

・ハロウィン= その場にいる同じ目的の人とライトなつながりで楽しむ
≪場のイベント≫ に対し、
・クリスマス= 特定の親密な人と過ごして関係を深める
≪関係性のイベント≫ と分けられる。

現在の若者のつきあいの感覚からはクリスマスは遠く、逆に、その感覚に親和性のあるハロウィンの普及が本格化しつつあると考えられる。

■ 調査結果グラフ(一部抜粋)
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/146138/img_146138_2.png
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/146138/img_146138_3.png

調査結果の詳細は、無料ダウンロードレポート『若者のクリスマス離れは何が原因?』をご覧ください。
本リリースで取り上げた結果以外に、以下の内容を掲載しております。ぜひこちらもご覧ください。
(弊社ホームページよりダウンロードいただけます)
●生活に求めるイメージ
●友達(恋人)と過ごす時間を増やしたい意識
●自分ひとりで過ごす時間を増やしたい意識
●スマートフォンの所有率、利用しているサービス
●同性からどのように見られているか気になる意識
●自分のスタイルが仲間から浮かないよう気を配る意識
●友達にほめられる装いをしたい意識

今回、発表致しましたデータを含むR&D CORE(生活者総合ライフスタイル調査システム)2017単年の集計表を100,000円(税別)にて販売しております。(18~79才まで性年代別等基本分析軸での集計表アウトプット)
R&D CORE(生活者総合ライフスタイル調査システム)を利用した調査・分析:課題の洗い出しから分析アウトプットまで、R&Dスタッフがお手伝いします。

詳細は弊社ホームページ http://www.rad.co.jp/ をご覧ください。

■ CORE2017調査概要
調査名: CORE2017 マスター調査
調査地域: 首都圏40km圏(調査地点 200地点)
調査対象: 18~79歳男女個人
サンプル数: 有効回収 3000サンプル (人口構成比に合わせて、性×年代別を割付)
サンプリング手法: 住宅地図を用いたエリアサンプリングで抽出
調査手法: 訪問・郵送併用の自記入式留置調査
調査実施時期: 2016年10月(毎年1回10月実施)
※『CORE』は、株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメントの登録商標です。
※1982年から約30年、生活者理解のために毎年実施している自主調査です。

■ 会社概要
会社名: 株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント
所在地: 〒163-1424 東京都新宿区西新宿3-20-2
代表者: 代表取締役社長 松田 武久
資本金: 30,000千円
設立 : 1968年1月17日
URL: https://www.rad.co.jp
事業内容:マーケティング・リサーチの企画設計、実施及びコンサルテーション/経営・マーケティング活動の評価及びコンサルテーション

【私の論評】なぜ日本では金融政策と社会は無縁であるかのような扱いなのか(゚д゚)!

上の分析なかなか面白いものです。私自身は、若者のクリスマス離れは、もっと単純な背景によるものと思っています。

それは、大部分が過去の経済対策の失敗によるもの、特に金融政策 (雇用と密接に関係がある)の失敗によるものではないかと思っています。

以前このブログにも掲載したように、雇用と金融緩和とは密接に結びついています。これは昔からフリップス曲線として経験的に知られていることです。日本では、金融緩和により物価が2〜3%上昇すると、他には何もしなくても一夜にして雇用が数百万人創造されます。逆にいえば、物価が数%下がると、一夜にして雇用が数百万人失われます。

ハロウィーンに関しては、もともとクリスマスを祝うような人がハロウィーンに対しても親和的であって、ハロウィーンは日本で比較的最近祝われるようになったので、注目度が高いので目立っているだけだと思います。

今年も見られた渋谷でのハロウィーンの斬新な?衣装
それを裏付ける統計資料を以下に掲載します。

若者は高齢者より外出回数が少ない

11月21日、国土交通省が5年に1度実施している全国都市交通特性調査の2015年版の結果が発表されました。


その結果、20代の若者が1日に移動する平均の回数が、70代の高齢者を下回ったことが判明した。若者の外出は減少傾向、対して高齢者の外出は増加傾向にあり、2015年の調査で両者がついに逆転した形です。

若者の移動回数の減少は、日本だけではなくアメリカ・イギリスとも共通の傾向にあります。これは、英米では景気が回復傾向ではあるものの、日本と比較すると新卒採用という制度がない欧米では、若者が以前として就職弱者であるという現実があるのだと思います。一方で、高齢者の外出回数が逆転したのは日本だけです。

特に20代男性の休日の外出回数が減少

さらに男女別では、休日の20代男性の外出回数の減少が顕著でした。

20代男性が1日に移動する平均の回数は平日で1.91回、休日で1.24回。これは調査開始以来、最低となっています。初回調査が行われた1987年は平日が2.98回、休日が2.31回。休日の比較では30年間で47%も減少していました。


移動回数は、自宅にずっといた人が0回。自宅と目的地を往復すれば2回、その途中で立ち寄る場所が別にあれば3回とカウントされます。

家の外に一度でも出た割合を表す「外出率」でも、20代男性は平日が81.2%、休日が51.1%。平均して、休日のうち半分は、家から一度も出ていないことがわかった。

外出の目的別で比較すると、平日は男性の「業務目的」の外出が減少、休日は男性の「買物以外の私用」が大幅に減少しています。

背景に「非正規」労働者の増加?

調査では、関連情報としてインターネットやスマートフォンの普及が急速に進んでいることや、宅配便取り扱い数が増えていることなどを挙げています。平日に家でできる余暇が広がったことや、通信販売を利用する人が増えたことが推測されます。

また、就業形態別の調査で、年齢や平日・休日にかかわらず1日あたりの移動回数は、正規就業者、非正規就業者、非就業者の順に低くなっていることが明らかになっています。


20代の非正規就業者・非就業者の割合は53.5%にまで増加(92年は39%)しており、労働形態の変化との関連についても推測されます。

Twitterでは、以下のような反応が挙がっています。
「もう「貧困化」のことを「○○離れ」って言うのやめた方がよくね」
これに関しては、かなり実体をついたツイートだと思います。「若者の○○離れ」とは結局のところ、若者の貧困化や、しょう
「だって外出したらお金いるじゃん」
若者が貧困化していて、さらに将来に希望が持てなければ、まずはお金のかかることをやめようとするのは当然のことです。
「レジャー代一番最初に削るの当たり前」
若者が貧困化していれば、生活に必須なことにはお金を使っても、レジャー代を削るのは当然のことです。 ただし、「他者とつながっていたい」という願望はあるので、
「30年前のデータと比較されてもな。 1987年ってバブル真っ盛りじゃね?」
これに関しては、誤解があります。バブルの頃は、土地や株価の値上がりは顕著でしたが、 一般物価はさほど値上がりしていませんでした。にもかかわらず、日銀は金融引締めに転じました。これは大失敗でした。

その後も日銀は、基本的に引き締め気味の政策を繰り返しました。さらに、本来大規模に緩和すべきところを逆に引き締めをして、大失敗をしました。

これについては、以前のこのブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
「アラフォー世代は一生貧困を宿命づけられている」クロ現のアラフォークライシス特集にネット阿鼻叫喚 「泣けた」「救いが無くてテレビ消した」 ―【私の論評】対症療法、精神論は無意味!真の打開策はこれだ(゚д゚)!

この記事をご覧いただくと、日銀はバブル期の最後と、2006年3月と、リーマン・ショック時に大きな金融政策の間違いを繰り返しています。

金融緩和政策に失敗するということは、若者に対しても重大な悪影響を及ぼします。なぜなら、 上でも述べたように、日本では、金融緩和により物価が2〜3%上昇すると、他には何もしなくても一夜にして雇用が数百万人創造されます。逆にいえば、物価が数%下がると、一夜にして雇用が数百万人失われます。

そうして、雇用が悪化すると、一番先に悪影響を被るのは若者です。企業としては、雇用情勢が悪化したときには、まず最初に若年層の雇用をやめたり、若年層から解雇するからです。そうして、増税などの緊縮財政もそれに追い打ちをかけました。

デフレのときには、金融緩和と、積極財政を行いなるべくはやく、デフレから脱却するのが、経済対策の王道です。しかし、日本では、デフレであるにもかかわらず、

このような日銀の金融政策の失敗により、当時若者だったアラフォーから悪影響を被ることになりました。そうして、この調査がなされたのは2015年のことですから、その当時でも雇用情勢は回復していたのですが、今ほどではありませんでした。

そのため、若者のクリスマス離れがまだみられていたのでしょう。景気というものは不思議なものです、景気が良い時期が続くと、たとえ景気が悪くなっても、多くの人々がまだまだ景気の良い時代は続くとして、それ以前の生活様式を改めることはありません。逆に、景気が悪い時期が続くと、たとえ景気が良くなっても、多くの人々はまだ景気の悪い時代が続くとして、それ以前の生活様式をすぐに改めることはありません。

たとえば、あのバブルの象徴ともいわれる「ジュリアナ東京」はバブルが崩壊した後にできたものです。ジュリアナ東京は、バブル後に設立され、数年営業して閉店しました。

だから、雇用情勢が回復しても、すぐに「若者のクリスマス離れの終焉」はおきないかもしれません。しかし、雇用情勢がしばらく良い状態が続けば、「若者のクリスマス離れ」も終焉するかもしれません。

私は、いつも思うのですが、ブログ冒頭の記事のように社会分析をするにしても、その前後の経済分析も怠ってはならないと思います。経済をみないと、社会の本当の姿を知ることはできません。

今年の「クリスマス」はどうなるのでしょうか。雇用情勢が良くなったので、また若者にクリスマスが復活するかもしれまんし、あるいは来年か再来年あたりになるかもしれません。

あるいは、クリスマスではなく、ハロウィーンがさらに流行るかもしれません。あるは、もっと別なものが流行るのかもしれません。

いずれにせよ、「若者の○○離れ」の背後には、経済政策の良さ、悪さもあることを認識すべきです。それらも、みなければ、本質は見えてきません。

特に、日本では、金融政策と社会とは無縁のような扱いです。このようなことでは、社会の本質は見えません。

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