2017年12月10日日曜日

財務省と総務省の「地方へのカネ」めぐる醜い争いが勃発中―【私の論評】抜本的税制改革が必要だ(゚д゚)!

財務省と総務省の「地方へのカネ」めぐる醜い争いが勃発中

国民はだれも得してませんよ

やめたい財務省、続けたい総務省

2018年度の予算編成に着手している財務省が、不況対策として設けられている地方交付税の「歳出特別枠」を廃止する方向で調整を始めた。

歳出特別枠とは、リーマン・ショック後停滞した地方経済への緊急経済対策。国が地方に配る地方交付税を特例的に上積みするもので、2016年度は4500億円を計上してきた。

財務省はこれを縮小または廃止する理由として、景気回復で地方自治体の財政が改善され、自治体の「貯蓄」に相当する基金の残高も増加傾向にあることを挙げている。

一方、財務省のこうした動きに神経質になっているのが、地方自治体を統べる総務省。総務省としては地方自治体の基金は守りたいが、財務省は地方交付税交付金を減額することによって少しでも多くのおカネを一般会計予算に回したい。

そのため両省の水面下での攻防が激しくなっているのだが、当の財務省も外国為替資金特別会計など、各種の特別会計でおカネを貯め込んでいるため、総務省を責める説得力がないといえばない。

また、総務省も地方自治体のためを考えているかのような振る舞いに見えるが、総務省から地方自治体への出向ポストも多く、実は自分たちのポスト維持の魂胆が透けて見える。つまり、財務省にしても総務省にしても、別に地方の住民のことを考えてこのさや当てを演じているわけではないのだ。

利権争いで硬直状態に

そもそも、地方へ税収をどう配分するかという問題は、どれだけ地方分権を進めるかにかかってくる。もし本格的に地方分権を進めていくとしたら、国と地方のベストな仕事量の配分はおよそ4:6といわれている。

当然、それに合わせて入ってくる税収も同様の割合になるべきなのだが、現状では地方税よりも国税のほうが圧倒的に多い。ちなみに2015年度の税収内訳では、国税が約60兆円なのに対し、地方税は約39兆円であった。

このギャップを適正化するためには国税を地方税に税源移譲することが必要になるが、自らの「利権」を失うことになる財務省がこれを拒んでいるのが現状だ。地方分権を掲げた小泉政権の時に税源移譲はほんの少しだけ進んだが、以降、その議論すら起こらなくなってしまったのにはこうした背景がある。

平成19年に行われ税源移譲
実は現行の制度でも、税源移譲を実施することは可能だ。国税と地方税のギャップを生んでいる原因のひとつになっているのは消費税で、いま国が6割、地方4割の取り分になっている。これを是正することで、税源移譲は大きく進む。

たとえば、地方交付税として地方にわざわざ国から配分するのではなく、消費税の取り分を国5割、地方5割にすれば手っ取り早い。だがそうすると、今度は地方交付税交付金の配分を所管している総務省が、自らの地方自治体に対する権限を失うとして反対するので、一向に話が進まない状態になっているのが現状だ。

加えて、財務省としても地方交付税交付金を過剰に減らしたくないという考えがある。もし中央から地方へ配分するおカネが減ってしまうと、財務省も財政に口出しできる部分が減るからだ。つまるところ、我々が見せられているのは、両省の虚しい利権争いにすぎないのだ。

『週刊現代』2017年12月16日号より

【私の論評】抜本的税制改革が必要だ(゚д゚)!

上の記事を理解するためには、まずは財務省と総務省の違いを知っておくべきです。あまり良いたとえではないかもしれませんが、内務省の延長のような省庁が総務省といえると思います。総務省は、行政間の調整役のような、地方行政、郵政、人事、通信、組織そのものを所管する機関ということができます。

財務省は前身の大蔵省が示すように、財政、通貨などを所管する機関です。

違いとしては、総務省が行政を管轄するので、地方行政の訴えや状態を伝える中央官庁へのパイプにもなっていますが、財務省は中央行政に関わる財政をあずかっていることです。

この差は大きいです。財務省からすれば、所管する期間が各々の会計でなんでも賄うべきという傾向になりますが、総務省からすれば、所管する機関がどうにもならないというならば、上の機関である総務省がどうにかしようとする傾向があります。

家計にたとえると、財務省は家計をあずかっている人間のようなものであり、家族が「小遣いあげて」と言うとまずは良い顔をしないというのと一緒です。

総務省は、家計をあずかってはいないものの、たとえば主婦のように家族間の調整役のような役割を担っていて、子供が「小遣いを上げて」というと、財務省などにかけあいそれをなんとか成就してやろうと動くというような感覚です。

このように、元々財務省と総務省は対立しやすい関係にあるわけです。

総務省は各地方自治体ごとに「基準財政需要額」というものを算出しており、それが各地方自治体へ交付される地方交付税交付金の算定に大きく影響を与えます。

この基準財政需要額が客観的・合理的に算定されていればまだ良いのですが、この算定を行っているのは、実は総務省官僚なのです。つまり彼らの思い通りに交付金の金額を決められるので、地方自治体は総務省官僚に逆らうことはできないのです。

竹中平蔵氏
かつて、竹中平蔵総務大臣時代、この前近代的な制度を客観的で透明性の高いものに改革しようとして、面積・人口基準という総務省官僚の裁量の余地のない「新型交付税交付金」に改められたことがありました。

しかし、これはわずか1年しかもたず、竹中大臣が辞めたあと、元の官僚裁量の制度に戻されました。官僚の力は恐ろしいものです。

かといって、財務省の言い分が全部正しいかといえばそうともいえず、では総務省が全部正しいかといえば、そうともいえません。この問題に関して言えば、根本的な解決は、橋下徹前大阪市長が主張した「消費税の地方税化」と「地方交付税交付金の廃止」が建設的な選択肢です。

以下に橋下氏の消費税の地方税化についてのツイートを掲載します。


そもそも所得税、法人税、消費税などは国税として国が国民から徴収し、それを地方自治体に配分するものです。しかし、よく考えるとこのシステム自体かなりおかしいです。ではいっそのこと、消費税をすべて地方税として、各地方自治体の財源とするほうが良いです。そうすれば総務省官僚の権限もなくなり、地方自治体も総務省の顔色を窺う必要はなくなります。

まず国の裁量で地方交付税交付金を決めるというシステムを抜本から改革することが、本当の「地方分権」を達成するための第一歩です。

このようなシステムの改変がない限り、財務省と総務省は、国民などそっちのけで、虚しい利権争いをこれからも続けることになります。

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