2017年12月2日土曜日

トランプ大統領 エルサレムをイスラエルの首都に 米報道―【私の論評】トランプ大統領の判断次第では、新たな紛争の火種に(゚д゚)!

トランプ大統領 エルサレムをイスラエルの首都に 米報道


アメリカのメディアは、トランプ大統領が、中東のエルサレムについて、来週にもイスラエルの首都として認めることを検討していると伝えました。仮に首都と認めればパレスチナやイスラム諸国が反発するのは確実で、トランプ大統領の判断が注目されます。

アメリカの複数のメディアは、1日、トランプ大統領がエルサレムを来週にもイスラエルの首都として認めることを検討していると伝えました。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があり、イスラエルは首都だと主張していますが、国際社会は認めていません。トランプ大統領は、去年の選挙中、イスラエルにあるアメリカ大使館を、テルアビブからエルサレムに移転すると公約に掲げていましたが、中東和平交渉への影響などを踏まえ、移転についての判断をことし6月、半年間先送りしました。

トランプ大統領は、今月再び、判断を迫られていて、メディアは「移転を再度先送りするかわりにエルサレムを首都と認め、イスラエル寄りの姿勢を示そうとしている」との見方を伝えています。

ホワイトハウスの当局者はNHKの取材に対し、「まだ判断は決まっていない」としていますが、一連の報道について、パレスチナ側は「和平交渉を台なしにするものだ」と早くも神経をとがらせています。仮に首都と認めれば、パレスチナやイスラム諸国が反発するのは確実で、トランプ大統領の判断が注目されます。

【私の論評】トランプ大統領の判断次第では、新たな紛争の火種に(゚д゚)!

イスラエル政府は今年7月14日、旧市街の近くで警官2人がアラブ系の男らに射殺された事件の後で金属探知機を設置。パレスチナ人との衝突が激化したのを受け、25日に「よりスマートな検査」に切り替える方針を示していました。

この問題で、同国政府は金属探知機を撤去する代わりに監視カメラを設置する動きをみせていました。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、立ち入り規制につながるあらゆる機器の撤去を求めたほか、現地のイスラム教指導者は聖地に行かず街頭で礼拝を行うよう示唆しました。
現状では、エルサレムの聖地への立ち入り問題が一応は収束していますが、イスラエルとパレスチナの対立構図は変わりません。底流には聖地をめぐる争いの歴史があるからです。

■占領問題に直結

聖地がある旧市街は、イスラエルが第3次中東戦争(1967年)で占領し、一方的に併合を宣言した東エルサレムに属します。


今回の対立は、パレスチナ人が自らの聖地に立ち入る権利を、「異教徒」であるイスラエルが制限しているとの不満が発端でした。パレスチナ側にとっては、「主権」や信教の自由、イスラエルによる占領などに直結する問題といえます。

旧市街のイスラム教の聖地は、ヨルダンの支出によって管理されているという複雑な事情もあります。

■ともに「首都」主張

アレアクサ・モスク
旧市街のイスラム教聖地「ハラム・シャリーフ」は、ユダヤ教でも「神殿の丘」と呼ばれ、聖地となっています。イスラム教では、預言者ムハンマドが昇天したとされる「岩のドーム」や「アルアクサ・モスク」がある第3の聖地です。

一方、ユダヤ教徒にとっては、紀元70年にローマ軍に破壊された神殿があった場所に当たります。隣接する「嘆きの壁」では信徒が日々、祈りをささげています。

5月22日、米国の現職大統領として初めて、エルサレム旧市街にある
ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪問したトランプ米大統領
エルサレムは紀元前 4000年頃に築かれたといわれますが、前 1000年頃ダビデ王により古代ユダヤ王国の聖都とされ、その後イエスの処刑と復活の地としてキリスト教の聖地となりました。

 638年にはアラブの支配下に入り、メッカ、メジナに次ぐイスラム教の第3の聖地となり、16世紀以降はオスマン帝国の支配のもと、城壁で囲まれた旧市内に集中する3宗教の聖地が保護され、宗教的共存の時代が続いきました。

東半の旧市街は 1948年から 1967年までヨルダンに属していましたが、六日戦争 (第3次中東戦争 ) 後の 1967年6月にイスラエルが占領、統一都市として管轄権を主張しましたが、ヨルダン、国際連合のいずれもがこれを承認していません 。

標高 800mのユダ山地上にあり、地中海性気候のため夏は暑く乾燥しますが、冬は雨が多いです。城壁に囲まれた旧市街には宗教史上の遺跡がきわめて多く、1981年ヨルダンの推薦で世界遺産の文化遺産に登録。新市街は 20世紀になって開けた近代都市で、官庁、ヘブライ大学などの文化機関が多く,伝統伝統的な旧市街と対照をなしています。人口 78万8100(2011)。

20世紀に入り、欧州などで迫害されたユダヤ人が入植を進め、1948年にはイスラエルが建国されました。

イスラエルが、建国直後の第1次中東戦争で獲得した西エルサレムに東エルサレムを合わせた全域を「不可分の永遠の首都」とするのに対し、パレスチナ自治政府は東エルサレムを「将来の独立国家の首都」と位置づけています。

このような過去の歴史を踏まえると、仮にトランプ氏がパレスチナをイスラエルの首都と認めれば、パレスチナやイスラム諸国が反発するのは確実で、トランプ大統領の判断次第で、新たな紛争を火種となることもあり得ます。

【関連記事】

0 件のコメント:

トランプ氏「シリアでトルコが鍵握る」、強力な軍隊保有―【私の論評】トランプ政権トルコのシリア介入許容:中東地政学の新たな局面

トランプ氏「シリアでトルコが鍵握る」、強力な軍隊保有 まとめ トランプ次期大統領は、アサド政権崩壊後のシリアでトルコが鍵を握るとの見解を示した。 トルコの軍事力は「戦争で疲弊していない」とし、エルドアン大統領との良好な関係を強調した。 米国はシリア東部に約900人の部隊を駐留させ...