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2020年2月14日金曜日

米国「通貨安関税」の狙いは、中国を本気で追い詰めること 変動相場制の日本は対象外に ―【私の論評】米国の本気度を見誤れば、中国は自滅する(゚д゚)!

米国「通貨安関税」の狙いは、中国を本気で追い詰めること 変動相場制の日本は対象外に 
高橋洋一 日本の解き方

トランプ大統領

 米商務省は、自国通貨を割安に誘導する国からの輸入品に対し、相殺関税をかけるルールを決定したと発表した。中国などを牽制(けんせい)する狙いと報じられている。

 米国が中国製品に関税をかけた場合、その製品のドル建て価格が変わらなければ、米国内の価格が上昇する。その場合、関税を負担するのは米国の消費者になる。

 しかし、現実には、中国製品の米国内での価格はあまり上昇していない。中国製品のドル建て価格が低下しているからだ。これは、米国へ輸出している中国企業が輸出価格を下げたことと、中国人民元が安くなったことによるものだ。

 米中貿易戦争が報復関税により激化した2018年以降、人民元の対ドルレートは1割程度(平均的にはその半分)安くなり、米国による関税引き上げの一部を相殺している。

 ここで、中国は為替について、変動相場制でなく、管理制であることに留意する必要がある。

 変動相場制であるためには、内外の資本取引が自由化されていることが最低条件であるが、生産手段の国有を核心政策とする共産主義中国では、資本取引の自由化は国の根幹に触れるので、到底できない。これは、中国が共産党体制である限り、まともな為替自由化はあり得ないことを意味する。

 本コラムでは、この点が中国のアキレス腱(けん)となっていることを繰り返してきたが、今回の米国による通貨安関税は中国の弱点をしっかり把握していることを示している。

 もちろん標準的な為替理論では、変動相場制において為替は二国間の金融政策の差で決まる。つまり、一国が国内事情により金融緩和すると、当該国の通貨が増加し、他国通貨に比して相対的に増えるので、希少性が減り通貨が安くなる。

 米国も変動相場制であり、国内がデフレになれば金融緩和を行うだろう。その時にはドル安になる。だから、この標準理論を承知していないはずないので、「通貨安」の条件として、政府が為替介入に関与していることなどとともに、「独立した中央銀行の金融政策は通常、含まれない」と明確化した。

 なお、「通貨安」の基準として、特定通貨がドルや主要通貨で構成する通貨バスケット相場に対して安くなったこととしている。この新ルールは、4日に公布され、60日後に施行される予定だ。

 こうした措置は、制度的にも為替介入せざるを得ない中国が主たるターゲットであることは明らかだ。

 変動相場制である日本などが通貨安になっても、インフレ目標があらかじめ設定され、金融政策が独立したものとして行われた結果であれば、原則として相殺関税が課されることはないだろう。

 11月の大統領選を控えた今の時期に、体制のアキレス腱である為替まで踏み込んだ米国は、本気で中国を追い詰めるようだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米国の本気度を見誤れば、中国は自滅する(゚д゚)!

米国としては、中国が人民元を操作して元安になると、政治目的である対中貿易赤字の削減を達成できなくなります。となると、人民元操作をやめさせるような手段にでるかもしれない。それは、人民元の自由化です。


経済学の教科書では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるというものです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論をざっくりいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。

これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になりますが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄となっています。

もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要ですが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄します。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

現在、中国は公式上、管理変動制を採用していることになっていますが、中央銀行が公表する対ドルレートは日々の動きがほとんどなく、人民元は事実上ドルにペッグされています。ドルペッグ制( - せい)とは、自国の貨幣相場を米ドルと連動させるペッグ制(固定相場制)をさします。

資本取引が厳しく制限されているため、資本が即座に中国に流入したり流出したりできず、多くのアジア通貨が通貨危機の際に急激な切り下げを経験した時でさえ、対ドルで安定を維持していました。

しかし、中国が資本取引の自由化を進めるにしたがって資本移動が活発になり、現在の実質上のドルペッグ制を維持することが難しくなり、無理に維持しようとしても、内外の金利裁定取引により金融政策が大幅に制約されることになります。

実際、最近の中国は、国内の金融政策が大幅に制限されることになりました。現状の中国では金融緩和を実施すれば、投資効率の低下、資産負債比率の上昇という構造問題が深刻化することが見込まれているからです。債務の株式化も低調であるため、政府はリスクに配慮した慎重な金融政策をせざるを得ないのです。

このように、為替制度を選択する際、中国も他の国々と同様、為替の安定と独立した金融政策、更には自由な資本移動、この三つを同時に達成することはあり得ないという国際金融のトリレンマに制約されているのです(図)。

つまり、その3つの選択肢からどの2つを選ぶのか、言い換えればどれを放棄するのかという選択に直面しているのです。中国は自由な資本移動を放棄する形で独立した金融政策と為替の安定(固定レート)を選んでいるのですが、今後政策的に資本移動が自由化されてくると、独立した金融政策を維持するためには為替レートの安定をある程度犠牲にしなければならなくります。

日本のように完全なフロート制になることはないでしょうが、少しずつ変動の幅を広げていくということは十分あり得るのです。今回の米国の「通貨安関税」は、その誘引となるものと考えられます。

図 国際金融のトリレンマ


10年ほど前、中国では人民元改革と称して、変動相場制に移行すると思われた時期もあったのですが、結局資本移動の自由に立ち入ることはできませんでした。

人民元の自由化は、中国にとっては触れられたくないところです。しかも、それを誘発する人民元安は、中国にとっても資本流出の引き金になりかねないです。コレに関しては、トランプ政権が中国の弱点をついてくるのか、それとも、中国がその前に折れて、何らかの妥協策を打ち出すのか、なかなか興味深いところだったのですが、とうとう結論を出したようです。

その結論が、今回の通貨安関税です。これによって、米国は中国の人民元が変動相場制に移行しようが、しまいが米国にとってはどちらでも良い状況を作り出し、いずれ人民元を変動相場制に移行させる腹でしょう。

米国は、中国を本気で追い詰めその体制を根底から変えさせようとしているのです。それを実行しないなら、米国は「通貨安関税」をかけ続け、中国経済を弱体化させるということです。

北京市内の施設を視察し、マスク姿で手を振る中国の習近平国家主席(右手前)=10日

しかし、昨日のこのブログの記事にも掲載したように、習近平は経済に明るくないため、実質的に最悪かつ解決不能の景気悪化、人民元激安、株価暴落、不動産市場の崩壊という、目の前にある危機への認識が低いようです。たとえば、銀行倒産が中国経済に死活的な凶器となることを習近平は重視していないようです。

金融政策など国内経済も理解できない、習近平には、国際金融も理解できないようです。これでは、何をどうして良いかもわからず、崩壊の道を突っ走るしかないようです。

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2017年12月26日火曜日

「日本の借金1千兆円」を性懲りもなく煽る人たちの狙いと本音ちょっとは進歩する気がないのか―【私の論評】経済回復のボトルネックと成り果てたNHKは財務省とともに廃棄せよ(゚д゚)!

「日本の借金1千兆円」を性懲りもなく煽る人たちの狙いと本音ちょっとは進歩する気がないのか


髙橋 洋一:経済学者、嘉悦大学教授 プロフィール

また出た「財政規律の緩み論」

18年度予算案が閣議決定されたが、メディアの論調は「(歳出が増え)財政規律が緩んでいる」「税収増頼みだ」といったものばかりだ。例えば、22日のNHK「時論公論」では、「来年度予算 求められる新たな財政規律」というタイトルで、財政規律のゆるみを問題にしている。

しかし本当に財政規律にゆるみが生じているのか。これを検証したい。

まず、予算の全体像を知るには、予算フレームを見るのがいい(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/02.pdf)。

これをみれば、18年度予算案は昨年度予算とほぼ同じものであることがわかる。

さらに中身を詳しく見るのは、概算をチェックするのがいい(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/03.pdf)。

ここには、各省別の予算概算がでている。全体の伸びが0.3%であるので、各省の予算でも、天皇ご譲位行事のある皇室58.6%を除くと、最大の伸びは内閣府1.7%、最低は経産省▲4.3%である。11省で増額、5省で減額である。

主要経費でみると、社会保障関係費4997億円増のほか、文教科学79億円増、防衛関係費660億円増、公共事業関係費26増億円、その他806億円増を、国債費▲2265億円などでカットして、全体で2581億円増、結果、0.3%の伸びにしている。

NHK「時論公論」では、日本の財政状況について、国の借金総額が883兆円(来年度末)になるから、財政規律を正すべきだとしている。相変わらず、バランスシートの考え方が抜け、資産を無視して借金だけをみていることに呆れてしまう。

12月22日放送のNHK「時事公論」より。かなり大げさな図を用いて、日本の借金の「深刻さ」を表現している

筆者は2年前の2015年12月28日に<「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… 財政再建は実質完了してしまう!>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)を書いている。そこでは、日銀を含んだ「統合政府」としてのバランスシートが国の財政状況を正しくみるためには必要であり、それをみれば、日本ではほぼ財政再建が終わっている状態で、健全な財政状況となっていることを示している。

なお、「統合政府」とは、財政・金融問題を考えるときに、政府と中央銀行を一体のものとして考えるやり方である。法的にも中央銀行はいわば「政府の子会社」であるが、一般企業においてグループ企業の業績・資産は連結決算で考えるのと同じで、政府と日銀の財政・資産は一体で視るべきだ、ということである。

もちろん、この考え方は中央銀行の独立性と矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内で、その達成のためにオペレーションを任されているという意味である。これも、グループ企業が営業の独立性を持っているのと同じ意味である。

これは国際的な見方なのだ

ところで今年3月14日、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授が来日して経済財政諮問会議に出席した。このときスティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張した(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/shiryo_01-2.pdf)。

これは、統合政府の考え方そのものである。これで、(なにかと日本では批判の的となるが)筆者の分析方法が、国際的には標準的なものであったことがわかっていただけるだろう。

日本の経済学者の中には、スティグリッツ教授が間違っていると息巻いている人もいるが、そうであれば、彼にもそのことを直接指摘して、公式に謝罪させてほしいものだ。もちろん、「統合政府」は、会計的な考え方であり、否定しようのないものなので、スティグリッツ教授が謝罪するはずないのだが。

こうして、バランスシートで見て財政状況を把握するのは常識であり、その右側だけの借金だけをみる方法が通用しないことが説明できる。ただ、それでも懐疑的な人は、来年3月に確定申告すればわかるはずだ。

税務署に「借金が多くて苦しいので、税金を払えない」という申告者を出したとしよう。その人の所得が一定以上であれば、資産負債の明細書を求めらる。そのとき、資産を過小に申告して、税務調査で「隠し資産」があることが判明したら大変なことになるのは分かるだろう。要するに、「借金が多い」というのは、すなわち財政状況が悪いということではないのだ。

なお、半ば冗談であるが、今の国税庁長官は森友学園事件の時、財務省理財局長として「資料がない」と言い張った佐川氏だ。彼に対して「資産負債の明細書資料がない、廃棄した」といったら、一体どうなるのだろうか。興味深いが、答えに窮するだろう。森友事件は、現場の税務調査官泣かせの事件だっただろう。

ちなみに、政府のバランスシートをはじめて作成したのは、20数年前の大蔵省に勤めていた筆者である。その当時は、以下の財政状況を客観的に把握するかを大蔵省内で議論しており、会計に詳しい筆者が政府のバランスシートを作成した。そのとき、バランスシートに着目した財政運営も行おうとして、理財局内に「資金企画室」という組織も作った。その初代室長は筆者だった。

この室の俗称英語名は「Asset and Liability Management Office」。まさに、バランスシート管理、という意味である。そうしたバランスシートを政府が作るのは、その当時から世界の潮流になっていたのだ。

そこで、筆者がいろいろな国を勉強して、日本でも政府のバランスシートをつくろうとなった。

そのためアメリカに出張にいくと、米財務省でも似たようなことを考えているということで、筆者は実際に作成するアメリカの担当者とかなり親しくなったものだ。

そのアメリカは、日本に先立って1995年版から政府のバランスシートを公表している(https://www.fiscal.treasury.gov/fsreports/rpt/finrep/fr/backissues.htm)。

日本でもほぼ同時期に作ったが、対外的には公表しないということで、部内利用になった。遅れること2005年、小泉政権のときに、2003年度版を正式に公表するようになった(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm)。

これは、筆者が経済財政諮問会議特命室時代に、いわゆる埋蔵金論争(資産負債改革、特別会計改革)を仕掛けていたときだ。

そのときから、財務省はこのバランスシートが積極的に取り上げられないように、マスコミにはほとんどその存在や意味を説明しなかった。筆者が財務省に対してバランスシートについて指摘すると、「公表済み」という。しかし、マスコミには説明(レクチャー)しないので、どこのマスコミもこのバランスシートについては報じないという状況が今でも続いている。

大きな財政問題にはならない

実は、海外投資家向けに日本国債の状況を説明するときには、バランスシートがしばしば用いられる(もっとも最近では英文資料も用意していないようだ。2009年度版英文資料は、財務省のサイト(http://www.mof.go.jp/english/budget/others/2011_03_english.pdf)にあるが、それ以降のものは見当たらない)。

そういえば、最近筆者のところに、しばしば海外投資家が訪れ、日本政府のバランスシートについて話をしてもらいたいという依頼を受けるが、先進国であれば、financial statementを用意するのは常識である。

もっとも、海外投資家は、日本の財政状況が悪くないことをよく理解している。筆者も、次の資料を使って説明することが多い。



日米は、同様のバランスシートを作成した経緯があるから、筆者には比較しやすい。そこで、日米比較をすると、ここ20年弱、アメリカの財政状況のほうが日本より一貫して悪いことが分かる。

逆にいえば、日本がアメリカの数字を上回るようになったら注意したほうがいい。もっとも、国には「徴税権」などの見えない資産があるので、少しぐらいネット債務額が大きくなっても、びくともしないのだが。それでも、一応の目安はアメリカの数字、と筆者は思っている。

中央銀行を含めないベースでGDP比20%程度、含めるベースではGDP比60%くらいの日米格差があるので、現状100~300兆円くらいの国債を発行したとしても、大きな財政問題にはならないと筆者は考えている。

なぜNHKは報じないのか

NHKが指摘していたのは、高齢化による社会保障費増大の話だ。このままでは社会保障費が増える一方で、日本の財政は大変なことになるというものだ。しかし、社会保障は保険原理で運営されるので、それを徹底しておけば、かなりの問題は防げる。

「保険原理」から、将来収支は将来費用に見合うように設計される。それを短期間で支出と費用を見直することがまず必要だ。そうすれば自ずと、費用の徴収漏れ問題に行きつくはずだ。

実は世界の社会保障ではほとんど保険方式であるが、その徴収は税当局が行い、徴収の効率性を高めている。歳入庁が存在することが世界標準なのだ。日本でも歳入庁がないことによって、数兆円の徴収漏れがあることが指摘されているが、日本ではなぜ歳入庁をつくろうとしないのか、不思議である。

民主党政権時には「歳入庁の設立」を公約としたが、おそらく財務省の意向だろう、いつのまにか取り下げてしまった。そして、消費税を社会保障に充てるために消費増税する、といいだした。消費税は一般財源であり、社会保障目的税としている先進国はないのに、である。

政策の筋としては、歳入庁をつくって、社会保険料徴収の効率化をすすめることが第一歩のはずなのに、それを避けて社会保障の話をするのは世界標準とずれていて、違和感がありすぎる。

どうして、こうした基本的な話をNHKは報道しないのか、不思議でならない。筆者は、実はNHKのバランスシートもこの「珍問」のカギがあるとにらんでいる。

筆者は政府のバランスシートの話をよくするが、財務省が「資産」について語りたくないのは、資産とはつまり、天下りと直結している問題だからなのだ。借金返済のために、資産を売れ、となると、天下りに支障が出てしまう。

さて、そのなかでNHKのバランスシートをみると、ほとんど無借金経営状態であり、資産たっぷり。純資産8000億円の超優良組織であることが分かる(http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kessan/h28/pdf/renketu28.pdf)。

先日、本コラムで筆者は、NHK分割論を提案した(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53787)が、上手く分割すれば、8000億円も国庫収入が増えることになるかもしれない。これは、見方を変えれば潤沢な放送受信料収入をほとんど苦労なく得られるため、楽な運営をしてきたからだともいえる。この点を指摘されたくないから、NHKは国の「資産」についても触れたくないのではないか。

その点では、財務省と似ているかもしれない。となれば、極めて恣意的に言えば、財務省とNHKは、「資産については話をしない」という共犯関係にあるのかもしれない。「本当のこと」を知る機会を奪われているのだと考えると、ちょっとゾッとしてしまう。

【私の論評】経済回復のボトルネックと成り果てたNHKは財務省とともに廃棄せよ(゚д゚)!

「日本の借金1千兆円」を性懲りもなく煽る財務省については、このブログにも以前その悪い体質について掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!
図4

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、財務省の補正予算の組み方について掲載しました。

結論からいうと、財務省は経済環境などおかまいなしに、 概算要求を4%カットして当初予算を作るのですが、補正予算でカット分の予算をつけて、当初の概算要求と同じ水準にしているという実体があります。

なぜこのようなことになるかといえば、財務省の基本的な考え方として、国民経済など二の次にして、どのような場合でも、できるだけ予算を絞り込みたいという不思議な習性があります。

これは、財務省が国の「金庫番」である以上、仕方がないのかもしれないともいえますが、財政の健全化というのは建前であり、当初予算で絞り込めば、補正予算で復活させた時に、要求官庁がより恩を感じるようにしているだけなのです。

こんなことでは、日本経済が良くなるはずもありません。

そうして、この記事の元記事で高橋洋一氏は、以下のような予想をしています。
 それでは今年度の場合、こうした戦略的な話ではなく、財務省は事務的にどの程度の補正予算とするつもりなのだろうか。ひょっとしたら、補正なしというのもあり得るが、それでは政治的にもたないだろう。そこで、財務省的には、どの程度なら、財政健全化に支障がない許容範囲かという、つまらない次元で考えるのだろう。 
 それは、安倍政権になってから、年々、補正予算の緊縮度合いが増していることから予想できる。 
 実は、最近15年度と16年度では、概算要求から当初予算で5%カットして、補正予算で3%増やすことになっており、概算要求の水準まで達していない。図4の補正で修正された予算と概算要求の比率を見ると、15年度と16年度は平均線を下回っている。 
 17年度は、概算要求と当初予算を比べると、これまでの経験則通りに4%カットだった。 
 補正予算後の予算総額が15年度と16年度並みの2%カット水準であればどうなるか。 
 17年度の概算要求は101.5兆円だったので、概算要求の2%カットだと99.5兆円。当初予算は97.5兆円だったので、補正予算は2兆円程度、総計でも100兆円を切るショボいものになる可能性がある。
そうして、補正予算は実際どうなったのかといえば、今月6日に明らかになっています。以下にそれに関連したロイターの記事のリンクを掲載します。
17年度補正予算で歳出追加2.9兆円、ミサイル防衛費も=政府筋
政府は、2017年度補正予算案の追加歳出を2.9兆円とする方針を固めた。政策経費は2.7兆円となる。生産性向上や人づくりなどの経費と併せ、1兆円を超える公共事業を盛り込んだ。ミサイル防衛関連費用も計上し、北朝鮮情勢など喫緊の課題に対応する。複数の政府筋が明らかにした。 
2.9兆円ということで、高橋洋一氏の予測よりは、9000億円ほど多くなっていますが、これは、北朝鮮の脅威も現実的となり、防衛関連経費を増やさないと、国民の批判が高まり、政治的にもたなくなるとの財務省側の判断で、増やしたものと思います。

それにしても、高橋洋一氏は、現在の日本は8%増税などを要因とするデフレ・ギャップを
解消するためには、財政出動20兆円が必要としていると比較すると、わずか2.9兆円では本当に焼け石に水です。まさに財務省の思惑通りの補正予算になっていると見て良いです。

今年一度に20兆円ということではなくても、今年は10兆にして、来年も継続で10兆にするというのなら、まだわかりますが、2.9兆円では日本GDPはまだまだ低迷しそうです。

そうして、この記事では、最後に以下のような結論を掲載しました。
これでは、本来は日本経済を良くするのが仕事であるはずの財務省自体が、日本経済復活のボトルネックになっているとしかいいようがありません。こういう官庁に対しては、まずは内閣人事局において、徹底的に厳しい人事を実施すべきです。人事を軽く見るべきではありません。

平成26年5月30日、安倍総理は内閣人事局看板掛け及び職員への訓示を行った 

人事は、いかなる組織においても、最大のコントロール手段です。その他の手段はどのようなものであれ、人事には及びません。いくら精緻な組織分析をしたとしても、それ自体がコントロール手段となるわけではありません。

役人たちを本当に政府の仕事に貢献させたいのであれば、本当に政府に貢献する人たちに報いなければならないです。それとは、反対に政府に貢献しない人たちには報いないようにしなければならないのです。省庁の組織としての精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まります。

かつてのように、国民や政府などには目もくれず、省益を最大限に重んじる人が昇進するようでは、政治主導など永遠に勝ち取ることはできません。

組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定です。それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを組織の全構成員に対して明らかにします。 
“国民への貢献”を組織の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならないです。 
致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日の高級官僚が選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。 
そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら政府の下部組織としての価値観に基づいて行なわれるべきです。 
高級官僚など、重要な地位を補充するにあたっては、政府の目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、政府全体のために働く意欲を重視し、報いなければならないのです。 
それでも、ボトルネック状態が払拭できない場合は、財務省を分割するしかないでしょう。ただし、単純に分割すると、財務省は長い時間をかけても、他省庁を植民地にするという習性があるので、財務省を分割した上で、他省庁の下部組織にするという方式で分割すべきです。 
もし、これを実施しなければ、旧財務省出身者がいずれかの官庁で、事務次官になり、この事務次官が分割された他省庁の旧財務省出身者と結託して、他省庁を時間をかけて植民化して、実質他省庁を支配し、結局旧財務省と同じようなグループを復活させることになります。 
このような分割の仕方をすれば、旧財務省出身者は、どうあがいても、いずれの官庁においても事務次官にまで上り詰めることは不可能になり、政治に対して権力を振るうことは不可能になります。そうして、大蔵省のDNAは、財務省から新体制は受継がれなくなります。 
そうして、官僚は本来の業務である、政府の目標設定に従い、専門家的立場から、それを実行するための手段を選び実行するという役割を果たすようになります。前川のような馬鹿で独善的な次官が生まれる余地はなくなります。 
これで、財務省はすっかりこの世から消えることなります。そうして、全省庁の高級官僚は、左遷されたり、それどころか、自分の属する省庁がこの世から消えることを恐れ、政府の方針に従った仕事をするようになります。そうなれば、日本経済は大復活することになります。 
せっかく、内閣人事局を設置したわけですから、安倍政権には少し時間をかけても、これを実行して頂きたいです。これが成功すれば、日本経済が大復活するだけではなく、日本の政治主導の夜明けとなり、良いことずくめです。
そうして、公共放送であるはずのNHKにも、高橋洋一氏が指摘したように非常に問題があります。

ブログ冒頭の高橋洋一の記事に掲載されていた、NHKの平成28年度の決算をみると、当然のことながら、連結決算になっており、連結のBS(貸借対照表)も掲載されています。

NHKの業績をみるためには、当然のことながら、連結決算でみなければなりません。これは、過去の苦い経験から会計法がかわり、今では企業グループは連結決算を提出しなければなりません。特に、大企業では連結決算の提出が義務付けられています。

過去においては、グループ企業において、親会社の赤字が、巧妙に小会社に移転され、あたかも親会社の業績は良いように、決算書が偽造されていることがありました。だからこそ、会計法が改正されて連結決算をしてね、グルーブ企業全体の状況を把握できるようにしたのです。

そうして、連結決算でも、BSを見て、資産と負債の状況を把握しなけばなりません。負債だけ見て、借金が過大であるなどといえば、馬鹿といわれるだけです。資産の状況もみなければなりません。これは、法律で義務付けられていることです。

そうして、本来政府の業績をみるためにも、日銀と政府の連結、すなわち統合政府の決算書それも、PLとBSの両方をみなければなりません。特にBSで、負債だけではなく資産もみなければならないはずです。

しかし、NHKはそのようなことをしようともしません。これは、高橋洋一氏が指摘するように、意図して意識してやっていることなのでしょうか。

私は、そうとも限らないと思います。高橋洋一氏が指摘するように、潤沢な放送受信料収入をほとんど苦労なく得られるため、楽な運営をしてきたので、資産などに関しても、どんぶり勘定ができれば、支障はなく、ほとんど頭を使う必要がなかったので、BSを読めないのかもしれません。

いずれにしても、これは問題です。このようなNHKをそのまま運営させても、国民には全くメリットがありません。国民が、政府の業績を知るための財政の「本当のこと」を知る機会を結果として奪っているNHKには存在価値はありません。


NHKは解体して、国民の「本当のこと」を知る権利を尊重する、新たな公共放送を創設すべきです。

NHKの解体は、財務省の解体ほどには難しくないと思います。そうして、解体すればそのインパクトはかなり大きいと思います。いわゆる、放送業界にもかなりのインパクトを与えるものと思います。少なくとも財政に関して国民の知る権利を無視する放送局はなくなると思います。

経営学の大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。
長い航海を続けてきた船は、船底に付着した貝を洗い落とす。さもなければ、スピードは落ち、機動力は失われる。(『乱気流時代の経営』)
あらゆる製品、あらゆるサービス、あらゆるプロセスが、常時、見直されなければならない。多少の改善ではなく、根本からの見直しが必要です。
なぜなら、あらゆるものが、出来上がった途端に陳腐化を始めているからです。そして、明日を切り開くべき有能な人材がそこに縛り付けられるからであす。ドラッカー氏は、こうした陳腐化を防ぐためには、まず廃棄せよと言います。廃棄せずして、新しいことは始められないのです。
ところが、あまりにわずかの企業しか、昨日を切り捨てていません。そのため、あまりにわずかの企業しか、明日のために必要な人材を手にしていません。
自らが陳腐化させられることを防ぐには、自らのものはすべて自らが陳腐化するしかないのです。そのためには人材がいります。その人材はどこで手に入れるのでしょうか。外から探してくるのでは遅いです。
成長の基盤は変化します。企業にとっては、自らの強みを発揮できる成長分野を探し出し、もはや成果を期待できない分野から人材を引き揚げ、機会のあるところに移すことが必要となります
乱気流の時代においては、陳腐化が急速に進行する。したがって昨日を組織的に切り捨てるとともに、資源を体系的に集中することが、成長のための戦略の基本となる。(『乱気流時代の経営』)
そうして、これは企業だけではなく、日本国にもあてはまることです。このようなことをしなければ、日本が成長することはないのです。

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2017年11月28日火曜日

【スクープ最前線】12・18、米の北朝鮮攻撃Xデー警戒 各国緊張の極秘情報、世界最強ステルス戦闘機6機投入の狙い―【私の論評】今回は、米の北攻撃が始まってもおかしくない(゚д゚)!

【スクープ最前線】12・18、米の北朝鮮攻撃Xデー警戒 各国緊張の極秘情報、世界最強ステルス戦闘機6機投入の狙い

金正恩氏に迫るF22。トランプ大統領の狙いは
 朝鮮半島の緊張が続いている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、平和的解決を求めた中国の「特使」と会わずに“追い返した”ことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したのだ。北朝鮮による「核・ミサイル開発」の加速化と、各国の情報当局が警戒する「北朝鮮攻撃のXデーは、12月18日の新月の夜前後」という情報とは。ジャーナリストの加賀孝英氏の緊急リポート。

 驚かないでいただきたい。今、次の極秘情報が流れて、各国の情報当局関係者が極度に緊張している。

 《米国は、北朝鮮が平和的解決を拒否したと判断した。トランプ氏がついに『北朝鮮への予防的先制攻撃』(正恩氏斬首作戦)を決断し、作戦準備を命じた。第一候補のXデーは12月18日、新月の夜前後》

 旧知の米軍情報当局関係者は「この裏には、3つの重大な理由がある」と語った。以下の3つの情報だ。

 (1)米本土を攻撃できる北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星14」の開発が、年内にはほぼ完了する。米国には時間がない。

 (2)北朝鮮は10月中旬から、核弾頭の量産体制に入った。日本や韓国、米領グアムの米軍基地を狙う、中距離弾道ミサイル「ノドン」「火星12」に搭載可能になる。日本と韓国に潜入した工作員(日本約600人、韓国約5万人)の動向が異常だ。急激に活発化している。

 (3)北朝鮮への経済制裁が効いてきた。軍部は飢餓状態だ。正恩氏はクーデターを阻止するため、父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の命日である12月17日か、来年1月8日の正恩氏の誕生日前後に、日本海の北部か太平洋上で、核実験(水爆の可能性も)を強行、暴走する可能性がある。

 正恩氏は“狂気”に走っている。

 米韓両軍は12月4日から8日まで、朝鮮半島周辺で、史上最大規模の合同軍事演習「ビジラント・エース」を行い、戦闘機約230機が結集する。米軍からは、空軍や海軍、海兵隊などの兵士約1万2000人が参加する。

 ここに、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」6機と、同F35A「ライトニングII」が3、4機投入されるという。

 問題はF22だ。

 同機は「レーダーにまったく映らない。過去撃墜されたことが一度もない。敵を100%倒す」(防衛省関係者)と恐れられる、世界最強の戦闘機だ。F22が、朝鮮半島に6機も展開すれば初めてである。その狙いは何か。

 米軍関係者は「正恩氏に対する『白旗を上げろ! 米国は本気だ!』という最後通告だ。正恩氏は『F22に狙われたら命はない』と理解し、脅えて震えているはずだ」といい、続けた。

 「米軍は2005年、極秘作戦を強行した。F22の原型である世界初のステルス戦闘機F117『ナイトホーク』を、平壌(ピョンヤン)上空に侵入させ、正日氏の豪邸に目がけて、急降下を繰り返した。正日氏は手も足も出ず、死を覚悟して震えていたとされる。その絶対恐怖を息子が忘れるはずがない」

 重大な局面が迫っている。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】今回は、米の北攻撃が始まってもおかしくない(゚д゚)!

北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると発表したトランプ米大統領(20日、ホワイトハウス)
ブログ冒頭の記事では、ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した事実をあげています。しかし、その理由まではあげていません。これを知れば、北朝鮮問題は確かに重大な局面に迫っていることが理解できます。

アメリカのトランプ大統領は11月20日、ホワイトハウスで記者団に対し、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを決めたと発表しました。

なぜ再指定したのでしょうか。その理由を、トランプ大統領は11月8日、韓国の国会での演説の中で詳しく説明しています。北朝鮮を「監獄国家」と激しく非難、その実態についてこう言及したのです(以下、読売新聞11月9日付朝刊から引用)。

韓国国会で演説するトランプ大統領(右端)
この演説の詳細を知りたい方は、是非以下のリンクをご覧になって下さい。
https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12327005453.html
以下にこのトランプ大統領の演説の一部をピックアップしつつ、説明をします。

《北朝鮮の労働者たちは、耐え難い状況下で、へとへとになりながら何時間もほぼ無給で働いている。最近、すべての労働者が70日間連続での労働を命じられた。休みたいなら金を払わなければならない。》

かつて北朝鮮も「労働者の天国だ」と言われたことがありましたが、実際はとんでもないブラック国家なのです。

 国民もまた、劣悪な生活環境と飢えに苦しんでいます。

《北朝鮮の家族は、給排水もない家に暮らし、電気が来ている家は半分にも満たない。親たちは、息子や娘が強制労働に送られるのを免除してもらおうと教師に賄賂を贈る。1990年代には100万人以上が餓死した。今日も飢えによる死者が続いている。

 5歳未満の子供たちの約30%は、栄養失調による発育不良に苦しんでいる。北朝鮮政権は2012、13年に、その独裁者たちをたたえる記念碑や塔、像をこれまで以上に建造し、それに費やした費用は約2億ドルに上ったと見積もられる。これは、国民の生活改善に充てた予算の約半分に及ぶ。》


 栄養失調にあえぐ北朝鮮の子ども
一党独裁の共産主義国家である北朝鮮には労働組合を作る自由も言論の自由もありません。このため、こうした人権弾圧がまかり通っているのです。

北朝鮮の飢餓を理由に食糧支援を主張する「人権団体」もありますが、いくら日本や韓国を含む西側諸国が北朝鮮に援助をしようと、その援助は国民に届くことはありません。金正恩政権が続く限り、一部の特権階級以外は、飢餓に苦しむことになるからです。その仕組みをトランプはこう説明します。

《北朝鮮の経済の貧弱な成果の分け前は、ゆがんだ体制に対する見かけの忠誠心を尺度に分配される。残忍な独裁政権は、平等な市民を尊重するのとはまったくかけ離れたやり方で、国家への忠誠心といういい加減な指標で国民を値踏みし、点数をつけ、ランク付けする。

 最高の忠誠心を持つと評価された者は首都平壌に住める可能性がある。最低の評価を受けた者は飢える。ちっぽけな違反行為によって、たとえば、捨ててあった新聞に掲載された独裁者の写真に誤って染みを付けただけで、何十年にもわたって家族全員の社会的な地位が地に落ちることになる。》

北朝鮮は、金正恩「万歳」を叫ぶ政府幹部とその家族だけがまともな暮らしをすることができ、その他の大部分は飢餓に苦しむ、凄まじい「差別国家」なのです。

レイプ、拷問、処刑。9歳の子供も監獄に

北朝鮮では、金正恩政権を批判したり、金正恩の写真をずさんに扱った人、キリスト教の信仰を持った人は容赦なく「強制収容所」に送られます。しかも日本人を含む多くの外国人が、北朝鮮のスパイ活動のために拉致され、北朝鮮に拘束されています。

《北朝鮮では推定で約10万人が強制収容所で強制労働に従事させられ、日常的に拷問や飢餓、レイプ、殺人にさらされている。

 祖父が反逆罪に問われたために、ある9歳の男の子が10年間も監獄に入れられた事例が知られている。別の例では、ある生徒が金正恩(キムジョンウン)の伝記のほんの細かい一節を忘れただけで殴打された。

 兵士が外国人を拉致し、北朝鮮のスパイのための語学教師として従事させてきた。

 朝鮮戦争以前、キリスト教徒の拠点の一つだった地域では、キリスト教徒やほかの信仰を持つ人々は、今日、祈りをささげたり聖典を持っていたりしただけで、拘束され、拷問され、多くの場合、処刑されることさえある。》


日本人拉致被害者も大勢いることを忘れてはならない
この金正恩政権は同時に、女性の人権も平気で踏みにじる国でもあります。

《北朝鮮の女性は、民族的に劣等と見なされる赤ちゃんの中絶を強いられる。新生児は殺される。中国人の父親との間に生まれたある赤ちゃんは、バケツに入れて連れて行かれた。衛兵は、不純で生きる価値がないと言い放った。

 それなのに、中国は北朝鮮を支援する義務をなぜ感じるのだろうか。》

これほどひどい「監獄国家」の北朝鮮を懸命に支えてきたのが、中国なのです。訪中する日本の政治家は多いですが、北朝鮮の人権侵害に加担する中国の責任を正面から追及する人が少ないのは本当に残念なことです。

自由な朝鮮、アジアの平和のために

こうした人権弾圧を阻止するためトランプ政権は今回、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定し、さらなる経済制裁を科そうとしているわけです。
トランプはこう続けます。

《すべての責任ある国家が力を合わせて、北朝鮮の野蛮な体制を孤立させ、拒絶しなければならない。いかなる支援も供給も行ってはならない。受け入れてはならない。中国とロシアを含めたすべての国に対して、国連安全保障理事会の決議を完全に履行するよう求める。北朝鮮政権との外交関係を見直し、すべての貿易と技術協力の関係を断ち切るよう求める。》

経済制裁を主張しているが、トランプは話し合いを拒否しているわけではありません。

《朝鮮半島を空から見ると、南はまぶしく光り輝く国で、北には真っ暗な闇が広がっているのが分かる。我々は、輝き、繁栄し、平和な未来を望んでいる。だが、北朝鮮にとってのより明るい道程については、北朝鮮の指導者が脅しをやめ、核計画を解体してはじめて我々は話し合う用意がある。》

トランプは核開発を断念すれば、交渉する用意があると主張しています。その目的は「自由な朝鮮」の実現です。トランプは長い演説の最後をこう締めくくっています。

《我々はともに、自由な朝鮮、安全な(朝鮮)半島、家族の再会を強く望んでいる。南北が高速道路で結ばれ、親族が抱擁を交わし、核の悪夢が美しい平和への約束に取って代わることを夢見ている。

 その日が訪れるまで、我々は断固とした態度で警戒を続ける。北を注視し、朝鮮のすべての人々が自由に生きることができる日が来るよう祈るのだ。》

アジアの平和と北朝鮮国民の自由のため、金正恩政権には断固とした態度で核計画の放棄を求めると主張しているのが、トランプ大統領なのです。

そのトランプの方針に日本はどう対応するのでしょうか、金正恩政権による人権弾圧や核開発をこのまま放置するのでしょうか、拉致被害者をいかに救出するのでしょうか「監獄国家」北朝鮮の実態を踏まえた建設的な国会論戦を期待したいものです。

金正恩は、トランプ大統領が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことを軽く考えるべきではありません。なぜ指定したかといえば、それだけの要因があるからです。

この要因だけでも、すでに北朝鮮は米国から先制攻撃を受ける可能性はかなり高まりました。これにさらに、北がミサイルの発射実験や核実験を再度強行すれば、それは米国に対して先制攻撃をしかける大きな理由を与えることになります。米国としては、このような機会が訪れれば何らかの形で攻撃するだけです。

ブログ冒頭の記事を書いている加賀孝英氏は、どちらかというと、結構煽る方であり、昨年年末あたりでも、今にも米国による北朝鮮攻撃が始まるようなことを主張しました。それらは、ことごとく外れましたか、今回だけは当たる可能性が高まってきたと思います。12 月18日に本当に戦争が始まるかどうかは別にして、年末から年始のいずれかに起こっても何の不思議もありません。まずは、全核・ミサイル施設、当面韓国への脅威になりそうな部隊等に対するピンポイントの爆撃やミサイル攻撃が火蓋をきるでしょう。

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2017年5月16日火曜日

実は不動産会社だった? 日本郵政が野村不動産買収との報道、その狙いは―【私の論評】官製企業から再度完全民営化しなければこれかも失敗し続ける(゚д゚)!

実は不動産会社だった? 日本郵政が野村不動産買収との報道、その狙いは

日本郵政が不動産大手の野村不動産を買収するとの報道が出ています。郵便局が不動産会社を買収するというのはピンと来ませんが、どのような意図があるのでしょうか。


 各種報道によると同社は野村證券グループの不動産会社である野村不動産に対してTOB(公開買い付け)を実施する方向で検討を進めているそうです。野村不動産は大手デベロッパー5社に入る企業で、「プラウド」というブランド名でマンションを展開しているほか、オフィスビルの運用を行っています。

 郵便事業を営む会社が不動産会社を買収というのはあまりピンと来ませんが、郵便事業の半分は不動産業ともいえます。全国に郵便を届けるためには、各地にその拠点を備える必要があり、日本郵政は2万カ所の郵便局を所有しています。

 また同社はもともと国営の事業だったこともあり、逓信病院などの医療施設、かんぽの宿といった宿泊施設など、民間では考えられないような多数の不動産を抱えています。所有する土地の面積は東京ドーム5万5000個分にもなり、建物などを加えた固定資産の総額は3兆円に達します。

 同社はNTT以来の超大型銘柄として鳴り物入りで上場を果たしましたが、郵便事業は縮小が余儀なくされており、今後の成長シナリオを描く必要に迫られています。

 しかし、現実はそう簡単ではありません。2015年5月に6200億円もの巨費を投じて買収したオーストラリアの物流会社は、予定の業績を達成することができず、はやくも4000億円の損失が発生している状況です。海外事業で躓くということになると、選択肢は日本国内にある不動産の有効活用しかありませんが、日本郵政には不動産運用に関するノウハウはほとんどありません。野村不動産をわざわざ買収することにはこうした事情があると考えられます。

「プラウド」というブランド名でマンションを展開している野村不動
 野村不動産の株式を過半数取得するということになると、最低でも2000億円以上の資金が必要となりますが、15兆円以上の純資産を持つ日本郵政からすれば微々たるものでしょう。

 買収による増益効果についても、野村不動産の売上高が全額連結決算に反映されたとして数%という程度ですから、業績への影響は軽微です。重要なのは、野村不動産のノウハウを今後、どのように自社の不動産運用に活用できるのかというところに絞られてくるでしょう。

 日本郵政が野村不動産を買収すること自体は不自然ではありませんが、海外の物流会社を買収して損失を計上したかと思えば、今度は国内の不動産会社を買収するなど、収益拡大に向けて無軌道に会社を買い続けているという印象は否めません。経営陣の戦略性がより厳しく問われることになるでしょう。

【私の論評】官営企業から再度完全民営化しなければこれかも失敗し続ける(゚д゚)!

日本郵政については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本郵政 豪物流事業の業績悪化で巨額損失計上か―【私の論評】財務省御用達人材が、東芝、日本郵政を駄目にした(゚д゚)!
この記事では日本郵政の業績悪化の原因と思われるものについて掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にそれに関わる部分のみ掲載します。
日本郵政の社長は、元東芝の社長であった西室泰三氏です。東芝も西室氏のころから危なくなりました。日本郵便は事業や投資に関しては、官僚だけの素人集団です。これでは先行きかなり厳しいです。ちなみに西室氏が日本郵政社長になった当時の日経はかなり高く評価していましたが、どうしてそうなるのか理解できません。以下にその紙面を掲載します。
郵政民営化を簡単に振り返ると、小泉政権の時に民営化法成立し、民営化が実施されました。ところが、民主党政権になって民営化を否定し実質上「再国有化」されました。

郵政民営化のときには西川氏が本当に民間会社にするつもりで、大量の民間人を引き連れてきました。ところが、再国有化されると、西川氏とその仲間の多量の民間人は追いだされ、財務省御用達の西室氏だけがトップで来て、周りはほぼ官僚だけとなりました。これでは、海外投資業がうまくいくはずがありません。
以上のように、日本郵政の業績不振は、まずは西室氏の経営者としての能力が低いこと、さらには現在の日本郵政の幹部は西室氏を除いてすべて元官僚によって占められていることです。

さて先週末のニュースで意外性があったのは、この報道です。野村不動産ホールディングスの時価総額は約4000億円。この株式の一部あるいは全部を日本郵政が取得し、不動産開発事業を加速させる狙いがあります。

日本郵政は土地保有額の上場企業ランキングで6位に入っています(下のグラフをご覧になってください)。しかも、郵便局などの土地建物は、鉄道のターミナル駅近くにある場合が多く、都心の一等地の不動産を、有効活用できれば収益性を高めることができます。



有名な例では、東京駅の前に出来たJPタワーがあります。かつての東京中央郵便局を再開発し、大型商業施設として生まれ変わりました。また名古屋駅前にもJPタワー名古屋を開業し、博多でも同様の商業施設が博多駅前にオープンしています。

昨年、200兆円の資産を保有するゆうちょ銀行が、今後5年程度で、国内外の不動産や未公開企業などのオルタナティブ投資と呼ばれる資産に、最大6兆円を資産配分すると報道されました。ゆうちょ銀行の資産運用は金融資産が運用対象の中心で、その中でもリスクの低い国債が過半を占めていました。日銀がマイナス金利を導入したことで、運用利回りの低下が大きな経営課題になっています。

不動産開発や不動産投資事業は、日本郵政が従来手掛けてきた、郵便事業や金融資産を中心とした資産運用とは、異なるノウハウが必要です。社内で人材を育てていては間に合わないので、不動産会社を買収することで、新事業の経営ノウハウを一気に手に入れようということです。

日本郵政が保有する土地が、マンション開発などに活用されれば、住宅供給が増えて需給にとってはマイナスの影響が予想されます。一方で、JPタワーのような商業施設が駅前に開業すれば、その駅の周辺の開発が加速され、不動産価値の上昇というメリットが出るかもしれません。

今後不動産有効活用を検討する大手企業が追随する可能性もあり、国内不動産事業への注目が高まることは確実です。唐突な感じがした、今回の買収記事ですが、買収価格はともかく、有休不動産保有企業と不動産開発業者の組み合わせという点で、シナジーが期待できます。

買収額は数千億円規模といわれます。日本郵政は全国2万以上の郵便局をはじめ多くの不動産を保有していますが、不動産ビジネスのノウハウはなく、いわば宝の持ち腐れでした。今回の買収劇からは、不動産業を経営の柱に据えたいという意気込みが伝わってきます。

日本郵政も不動産開発には全く無関係だったというわけではく、2007年の民営化後、東京駅前の商業施設「KITTE(キッテ)など不動産開発を手掛けてきました。ただ、遊休地の活用など経営課題は多いです。

日本郵便初の商業施設「KITTE(キッテ)」
日本郵政は17年3月期に約400億円の最終赤字を見込んでいます。15年に買収したオーストラリアの物流大手トール社に絡み、4000億円以上の減損を計上するためです。こうしたマイナスイメージから脱却するため、成長性のある不動産ビジネスへの進出をブチ上げたのでしょう。

上でも掲載したように、西室氏は東芝時代に、米ウェスチングハウス社の買収に暗躍し、日本郵政では豪トール社買収を主導しました。両案件とも巨額損失につながっただけに、西室氏の責任を問う声大きいです

実は、野村不動産と東芝の関わりは深いのです。08年、野村不動産が東芝不動産(現NREG東芝不動産)の株式65%を取得し、子会社化しています。当時、西室氏は相談役でしたが、東芝社内への影響力は絶大でした。

NREG東芝不動産は、人気の商業施設として知られる「ラゾーナ川崎プラザ」(川崎市)を開発。隣は、東芝未来科学館の入る「ラゾーナ川崎東芝ビル」です。

ほぼ10年前に野村不動産グループとなった「東芝ビル」を、日本郵政が手に入れようとしている。そこかしこに東芝のドンのカゲがチラつきます。

とはいえ西室氏はすでに経営の第一線から退き、療養中だとされています。今回の日本郵政による野村不動産買収に口出しするとは思えません。しかし、本当はどうなのか外部からうかがい知ることはできません。

そうして、今後の不動産業界を考えると、不安がよぎります。

リーマンショック以降、不動産業界ではマンションの価格下落、ビルの空室率上昇、賃料の下落、不動産投資市場の低迷など暗いニュースが続いていました。しかし、ここ最近は、東京オリンピックの開催が5年後に迫ってることもあり、東京都心部の一部では活発に不動産取引が行われています。

一方、地域別にみると苦戦を強いられているエリアが存在するのも事実であり、都心部と地方の格差は拡大するばかりです。
また、一部の業者による「物件の囲い込み」の実態が明るみになったりと何かと世間を騒がせているのもこの業界ならではないでしょうか。オリンピックが開催する2020年までには、海外投資家が投資した東京都心部の収益物件が次々と売却される恐れもあるため、今以上に不動産市場の需要と供給のバランスが保てなくなる可能性も否定できません。

国立社会保障・人口問題研究所による推移において、市区町村別の数値が公表されるのは人口だけで、残念ながら世帯数は都道府県別にとどまります。2013年3月に公表された市区町村別人口推計を見ると、2040年の人口が現在の半数を割込むところも少なくないです。中には3分の1程度まで減少する町村もあるようです。


もちろん東京都でも、人口減少とは無縁でいられません。2040年の人口が2010年より増えると予測されているのは以下だけになります。

【東京都】
中央区、港区、新宿区、墨田区、江東区、練馬区、三鷹市、東村山市、稲城市の6区3市、それにもともとの人口が少ない御蔵島村だけです。
【大阪府】
大阪市の西区、天王寺区、鶴見区、北区の4区、大阪府下では田尻町のみが増加となっている。また、大阪市内には2割以上の人口減少が見込まれている区も多いようです。
【愛知県】
名古屋市で守山区と緑区だけが増加なのに対して、その周辺では安城市、大府市、高浜市、日進市、みよし市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、大治町、幸田町が増加すると予測されています。
いずれにせよ大都市圏でも大半の市区町村で人口の減少が避けられず、それに数年ずつ遅れながら世帯数の減少も進行していくことでしょう。人口および世帯数の減少は街の活気を奪い、不動産市場も次第に縮小していくことでしょう。現在もすでに住宅の数が充足し、逆に家余りが社会問題となっています。2014年7月に総務省が発表したデータによると、日本全国では820万戸空き家があり、空室率は13.5%まで上っているのです。

国内における人口の減少、それに続く世帯数の減少は、不動産業界のあり方も大きく変えることになります。

市場規模の縮小を見越して、一部の住宅メーカーはすでに海外の不動産市場へ参入を始めているほか、国内では住宅ストックの活用に軸足を移している例も多いです。

また、単身者世帯、高齢者世帯の割合の増加に合わせた商品企画も求められます。特に2020年からは、単身者世帯が最も多くなります。以下のグラフをご覧になって下さい。
今後単独世帯、夫婦のみ世帯が増加する見込み

2020年には大半の都道府県で単独世帯がもっとも多い家族類型に
間取りの変化だけでなく、留守の時間が長くなりがちな単身者世帯のセキュリティ対策、高齢者向けのバリアフリーなど普段の生活が快適に過ごせるような工夫も重要になるでしょう。さらに、顧客と長くお付き合いができる体制を作らなければ、需要が減退していく社会の中で生き残ることは困難です。

一棟マンション・アパートにはじまる収益物件をメインに扱う不動産会社であれば、「投資」という部分にフォーカスした、より高い知識が営業担当者に求められます。

投資家が求めているサービスを提供するためには、投資アドバイザーという立場から、不動産以外に資産全体の組み替えを含むポートフォーリオのアドバイス、実際の買収・売却請負、財務分析、資産評価などを行うほか、投資内容や投資先の分散、投資期間の設定などについて工夫し、助言することが要求されるようになるでしょう。

新築分譲を手掛ける不動産会社であれば、販売後のアフターサービスがますます重要になるでしょう。それも従来のような物件の定期点検や保証といった範囲にとどまらず、入居後の生活全般に対するフォローが欠かせなくなります。インテリアのアドバイスやリフォームの提案、さらに将来の売却、場合によっては子育て相談や生活相談まで、住まいに関するトータルサービスを提供することが求められます。

不動産仲介会社であれば、整備されつつある中古住宅流通市場の中で、他社より「優れたサービス」を考えることが重要です。契約時における的確な情報提供や物件調査のスキルアップはもちろんのこと、これまでのように「物件の引渡しが済んだらそれで終わり」というスタンスからは卒業しなければならなくなります。入居後の生活全般をトータル的にサポートする等、従来の不動産業からの脱却を目指すことも必要になるでしょう。

株式上場計画について記者会見する日本郵政の西室泰三社長(当時)=2014年12月26日

このように将来の不動産業界の変化を見通すことは、原子力産業の将来を見通せなかった、西室氏には到底無理なことです。そうして、現在日本郵政の幹部のほとんど占めている官僚出身者にも到底無理です。

さて、日本郵政の不動産事業はこれからどうなるかは、わかりませんが、まずは野村不動産買収に成功した場合、まずはどのような人事政策をとるかが鍵になると思います。

野村不動産の運営には、西室氏や官僚出身の幹部らは一切かかわらず、金や資産を差し出すことはしても、運営には一切口を挟まないという体制が築かれれば成功する見込みも少しはあります。

現在は、2016年4月1日付で、西室泰三日本郵政社長の病気による退任に伴い、ゆうちょ銀行の代表執行役社長職を退き(取締役としては留任)、後任の日本郵政取締役兼代表執行役社長に就任しています。

ただし、現状をみてみると、どうも疑問です。そもそも西室氏のように経営力に不安のある人物しかリーダーになれなかった日本郵政の体質にも問題があるといえるでしょう。実際のところ、本当に優秀な経営者であれば、政府が株式を保有しているために制約が多い会社に来ようとは思わないでしょう。

仮に一人あるいは数人の優秀な民間経営者が来たとしても、野村不動産を買収できたとしても、周りを元官僚で固められています。頭だけ民間に代えても、首の下は官営企業そのものです。

そうして、西川氏更迭のときに追放された民間人も悲惨な待遇を受けています。そのときは西川氏の尽力で救済された人も多いそうですが、これは彼にしかできない芸当でもあります。

この顛末をよく知っている経営者は、日本郵政のかじ取りに二の足を踏んでしまいます。民間から人を連れてくれば、このような憂き目にあうかもしれないということになれば、二の足を踏まざるを得なくなります。こうした何重もの制限がある日本郵政が赤字になるのは当然のことです。これからも、今のままでは、失敗することは目に見えています。

方法としては、もう一度完璧な民営化を目指すこと以外にはありません。

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