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2020年2月14日金曜日

米国「通貨安関税」の狙いは、中国を本気で追い詰めること 変動相場制の日本は対象外に ―【私の論評】米国の本気度を見誤れば、中国は自滅する(゚д゚)!

米国「通貨安関税」の狙いは、中国を本気で追い詰めること 変動相場制の日本は対象外に 
高橋洋一 日本の解き方

トランプ大統領

 米商務省は、自国通貨を割安に誘導する国からの輸入品に対し、相殺関税をかけるルールを決定したと発表した。中国などを牽制(けんせい)する狙いと報じられている。

 米国が中国製品に関税をかけた場合、その製品のドル建て価格が変わらなければ、米国内の価格が上昇する。その場合、関税を負担するのは米国の消費者になる。

 しかし、現実には、中国製品の米国内での価格はあまり上昇していない。中国製品のドル建て価格が低下しているからだ。これは、米国へ輸出している中国企業が輸出価格を下げたことと、中国人民元が安くなったことによるものだ。

 米中貿易戦争が報復関税により激化した2018年以降、人民元の対ドルレートは1割程度(平均的にはその半分)安くなり、米国による関税引き上げの一部を相殺している。

 ここで、中国は為替について、変動相場制でなく、管理制であることに留意する必要がある。

 変動相場制であるためには、内外の資本取引が自由化されていることが最低条件であるが、生産手段の国有を核心政策とする共産主義中国では、資本取引の自由化は国の根幹に触れるので、到底できない。これは、中国が共産党体制である限り、まともな為替自由化はあり得ないことを意味する。

 本コラムでは、この点が中国のアキレス腱(けん)となっていることを繰り返してきたが、今回の米国による通貨安関税は中国の弱点をしっかり把握していることを示している。

 もちろん標準的な為替理論では、変動相場制において為替は二国間の金融政策の差で決まる。つまり、一国が国内事情により金融緩和すると、当該国の通貨が増加し、他国通貨に比して相対的に増えるので、希少性が減り通貨が安くなる。

 米国も変動相場制であり、国内がデフレになれば金融緩和を行うだろう。その時にはドル安になる。だから、この標準理論を承知していないはずないので、「通貨安」の条件として、政府が為替介入に関与していることなどとともに、「独立した中央銀行の金融政策は通常、含まれない」と明確化した。

 なお、「通貨安」の基準として、特定通貨がドルや主要通貨で構成する通貨バスケット相場に対して安くなったこととしている。この新ルールは、4日に公布され、60日後に施行される予定だ。

 こうした措置は、制度的にも為替介入せざるを得ない中国が主たるターゲットであることは明らかだ。

 変動相場制である日本などが通貨安になっても、インフレ目標があらかじめ設定され、金融政策が独立したものとして行われた結果であれば、原則として相殺関税が課されることはないだろう。

 11月の大統領選を控えた今の時期に、体制のアキレス腱である為替まで踏み込んだ米国は、本気で中国を追い詰めるようだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米国の本気度を見誤れば、中国は自滅する(゚д゚)!

米国としては、中国が人民元を操作して元安になると、政治目的である対中貿易赤字の削減を達成できなくなります。となると、人民元操作をやめさせるような手段にでるかもしれない。それは、人民元の自由化です。


経済学の教科書では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるというものです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論をざっくりいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。

これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になりますが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄となっています。

もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要ですが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄します。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

現在、中国は公式上、管理変動制を採用していることになっていますが、中央銀行が公表する対ドルレートは日々の動きがほとんどなく、人民元は事実上ドルにペッグされています。ドルペッグ制( - せい)とは、自国の貨幣相場を米ドルと連動させるペッグ制(固定相場制)をさします。

資本取引が厳しく制限されているため、資本が即座に中国に流入したり流出したりできず、多くのアジア通貨が通貨危機の際に急激な切り下げを経験した時でさえ、対ドルで安定を維持していました。

しかし、中国が資本取引の自由化を進めるにしたがって資本移動が活発になり、現在の実質上のドルペッグ制を維持することが難しくなり、無理に維持しようとしても、内外の金利裁定取引により金融政策が大幅に制約されることになります。

実際、最近の中国は、国内の金融政策が大幅に制限されることになりました。現状の中国では金融緩和を実施すれば、投資効率の低下、資産負債比率の上昇という構造問題が深刻化することが見込まれているからです。債務の株式化も低調であるため、政府はリスクに配慮した慎重な金融政策をせざるを得ないのです。

このように、為替制度を選択する際、中国も他の国々と同様、為替の安定と独立した金融政策、更には自由な資本移動、この三つを同時に達成することはあり得ないという国際金融のトリレンマに制約されているのです(図)。

つまり、その3つの選択肢からどの2つを選ぶのか、言い換えればどれを放棄するのかという選択に直面しているのです。中国は自由な資本移動を放棄する形で独立した金融政策と為替の安定(固定レート)を選んでいるのですが、今後政策的に資本移動が自由化されてくると、独立した金融政策を維持するためには為替レートの安定をある程度犠牲にしなければならなくります。

日本のように完全なフロート制になることはないでしょうが、少しずつ変動の幅を広げていくということは十分あり得るのです。今回の米国の「通貨安関税」は、その誘引となるものと考えられます。

図 国際金融のトリレンマ


10年ほど前、中国では人民元改革と称して、変動相場制に移行すると思われた時期もあったのですが、結局資本移動の自由に立ち入ることはできませんでした。

人民元の自由化は、中国にとっては触れられたくないところです。しかも、それを誘発する人民元安は、中国にとっても資本流出の引き金になりかねないです。コレに関しては、トランプ政権が中国の弱点をついてくるのか、それとも、中国がその前に折れて、何らかの妥協策を打ち出すのか、なかなか興味深いところだったのですが、とうとう結論を出したようです。

その結論が、今回の通貨安関税です。これによって、米国は中国の人民元が変動相場制に移行しようが、しまいが米国にとってはどちらでも良い状況を作り出し、いずれ人民元を変動相場制に移行させる腹でしょう。

米国は、中国を本気で追い詰めその体制を根底から変えさせようとしているのです。それを実行しないなら、米国は「通貨安関税」をかけ続け、中国経済を弱体化させるということです。

北京市内の施設を視察し、マスク姿で手を振る中国の習近平国家主席(右手前)=10日

しかし、昨日のこのブログの記事にも掲載したように、習近平は経済に明るくないため、実質的に最悪かつ解決不能の景気悪化、人民元激安、株価暴落、不動産市場の崩壊という、目の前にある危機への認識が低いようです。たとえば、銀行倒産が中国経済に死活的な凶器となることを習近平は重視していないようです。

金融政策など国内経済も理解できない、習近平には、国際金融も理解できないようです。これでは、何をどうして良いかもわからず、崩壊の道を突っ走るしかないようです。

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2018年9月16日日曜日

今は我慢。中国の「自滅」を誘うために日本が取るべき外交戦略―【私の論評】日本は、中国の自滅を待つにしても、するべきことはしなければならない(゚д゚)!

今は我慢。中国の「自滅」を誘うために日本が取るべき外交戦略


日本がトランプの仕掛ける貿易戦争や、中国の尖閣諸島攻撃に遭っても国益を失わず上手く対抗できる策はあるのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、主要国の波乱含みの内政について分析するとともに、日本がいかに長期安定統治されている国かを紹介。焦らず周辺諸国と良好関係を構築する戦略をとれば、内政が不安定な国が先に自滅するだろうと論じています。

日本、戦略の要は【時間かせぎ】

今まで100万回書いていますが、日本の敵ナンバーワンは中国です。これ、別に私が、反中だとかそういう理由でいっているのではありません。中国が、アメリカ、ロシア、韓国を巻き込んで「反日統一共同戦線」をつくろうとしているので、そういうのです。完全証拠は、こちら。
ところが日本には、「アメリカが主敵だ!」という意見も多く、その手の本もよく売れています。なぜ、そういう話になるのでしょうか? 日本はアメリカ幕府の天領だからです。そして、「ロシアは北方領土を返さないから敵だ!」という意見は、とても多い。さらに、「世界中で慰安婦像設置運動をつづけている韓国は敵だ!」という人も多いです。私も、憤りを共有していますし、理解できます。これらの意見は、どれも一理あります。つまり、「日本の敵はアメリカ中国ロシア韓国だ!」というのです。
しかし、こういう考えは、「まさに中国の思惑どおり」ですね。100万回読んだかもしれませんが、原文を熟読してください。戦略の骨子は、以下のようになっています。
  • 中国、ロシア、韓国で【反日統一共同戦線】をつくろう!
  • 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させよう!
  • 日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣、【 沖縄 】である!
  • 日本に【 沖縄の領有権は 】ない!!!!!!
  • 【 アメリカ 】も反日統一共同戦線に引き入れよう!
そして、今の日本人の意識の状態は、
  • アメリカは敵
  • ロシアも敵
  • 韓国も敵
これって、「まさに中国の思惑どおり」なのではないですか????
もちろん、日本人がアメリカ、ロシア、韓国を嫌う客観的な理由はあります。しかし、もし私たちが、「日本を守りたい」「戦前の失敗を繰り返したくない」と思うなら、「感情的ではなく、「戦略的」に考える必要がある。
戦略は明らかです。中国は、日米分断、日ロ分断、日韓分断を狙っているので、日本は逆に、日米日ロ日韓関係を強固にしていく。たとえば、トランプさんから安倍さんに、貿易関係で厳しい要求がきそうです。私は、
  • シェールガス、シェールオイルを買う
  • 攻撃型の武器をどんどん買う
ことで、対米貿易黒字削減に取り組めばいいと思います。なんやかんやいっても日米関係が強固であれば中国は(少なくとも現時点では)尖閣を侵略できません
2010年の尖閣中国漁船衝突事件。あれは、なぜ起こったのでしょうか? まず、リーマンショックから、アメリカは沈みまくっていた。そして、09年に誕生した鳩山政権が、遠慮なく日米関係を破壊した。この二つの要因で中国は、「アメリカは日本を助けないだろうと予想した。だから、ああいうことになったのです。
アメリカも弱体化が著しいですが、それでも日米関係が強固であれば、中国はまだ手出しできません

日本の強さは、安定性

日本の戦略は、アメリカロシア韓国友好関係を築くこと。「目に見える中国包囲網」を日本が主導する必要はありません。要は、日米関係、日ロ関係、日韓関係が良好であればそれでいい
そして、日本は、ひたすら時間を稼ぎます。なぜ? 日本は、【世界一安定している国】だからです。これからの世界を見るに、「安泰だ!」といえる国は多くありません。アメリカは、1945年がピークだった国。冷戦終結後に2度目のピークを迎えた。その後は、衰退しつづけています(それでも世界最強ですが)。
中国の成長期は2020年まで。その後、経済は伸びず、日本以上の少子化が襲い、体制維持が難しくなっていくことでしょう。ロシアは、現在でも、制裁でかなり疲弊しています。石油、ガス依存がひどく、「成長戦略が描けないでいる。欧州は、イスラム移民が増えすぎて、後50年もすると「キリスト教文明」ではなくなり、「イスラム圏に飲み込まれてしまうことでしょう。
日本は、どうでしょうか? 皆さんご存知のように、日本は「現存する最古の国」です。政治家はコロコロ変わりますが、不変の皇室があり、異常に安定している。そして、民主主義が根付いているので革命は起こりにくい
日本の政治制度も、非常にすぐれていると思います。たとえば自民党がダメになれば、ちゃんと政権交代が起こる。政権をとった民主党がダメなら、総理は、一年で首になる。民主党に3人総理をやらせて、ダメなら、また自民党に政権が戻る。国益にだいたい沿った政治をする安倍内閣は、長期になる。
というわけで、日本の政治制度はすばらしいです。これがアメリカみたく、「4年、二期までです」となったらどうですか? 皆さん、鳩山内閣が4年続いたことを想像してみてください。まさに悪夢でしょう???
というわけで、他の大国と比べて日本は安定している。日米、日ロ、日韓関係を良好にたもつ。日印、日欧、日・東南アジア、日豪関係を良好にたもつ。そのまま10~20年経てば、中国は体制が維持できず自滅することでしょう。
【私の論評】中国の自滅を待つにしても、日本するべきことはしなければならない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、大局的にはこのような行き方が正しいものとは思います。しかし、中国が自滅するまでには、少なくとも10年ながければ20年はかかるとみると、これだけでは足りなくなものと思います。

特に日米関係に関しては、長い間には様々な紆余曲折があると思います。

実際、それを予感させる出来事が最近立て続けに起こりました。6月7日にホワイトハウスで日米首脳会談が行われた際に、冒頭でトランプ大統領が「私は真珠湾を忘れない」と安倍晋三首相に不満を示したという。対日貿易赤字を抱えるアメリカが日本の経済政策を批判したもの、と同紙は解説している。

ただし、これは誤りであることは、このブログで指摘しました。以下に該当記事のリンクを掲載しておきます。
「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!
会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では米国では保守派の間では過去の歴史が見直されていて、単純な「日本悪玉観」は否定されており、いわゆる「リメンバー・パールハーバー」の意味も旧来の意味とは異なっていることを掲載しました。

トランプ大統領も保守派ですから、当然トランプ氏の発言の中にでてきた「リメンバー・パールハーバー」の意味も旧来の意味とはことなるわけです。

もう1つは、7月に日本と北朝鮮の情報当局がベトナムで極秘接触していたことです。日米両国は同盟国として対北問題で緊密に連絡し合うと約束したにもかかわらず、日朝の接触は伝えられていませんでした。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米も知らなかった…日朝極秘接触 7月にベトナムで拉致問題全面解決に向け協議 日米連携に影落とす危険性も ―【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!
北朝鮮交換と接触したとされる北村滋内閣情報官
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に掲載します。
これは、同時に中国の現状の大変さを物語っているとも受け取れます。日米が協同して、中国を叩くということになれば、中国には太刀打ちできません。

中国としては何とかして、日本を味方に引き入れ、日本を親中派政権にして米国の経済冷戦をかわしたいと考えているのかもしれません。だからこそ、ワシントン・ポストを利用して、日米が離反するように仕向けている可能性があります。しかし、次の総裁選では安倍総理が圧倒的に有利ですから、そのような目論見は成就することはないでしょう。

これは、しばらく趨勢をみてみないことには、まだなんとも言えませんが、ワシントン・ポストの報道にはこういう背景があるということを知った上で、報道を吟味すべきと思います。特にワシントン・ポストを鵜呑みにする日本の報道には、留意すべきです。
日米間の隙間風を伝えるこの2つのニュースはどちらも政策当局からのリークとの見方があります。「真珠湾発言」は安倍政権の官邸外交に反発する日本の霞が関が流したもので、「日朝接触」の出どころは中国だというものです。

ところで、非核化交渉は6月12日の米朝首脳会談以降、うまくいっていません。北朝鮮が朝鮮戦争の終戦宣言を求めるのに対し、米側は非核化の具体的行動を要求し、折り合いがつきません。

いら立ちを募らせるトランプは、非核化交渉が不調に陥った背後に中国の存在がある、と批判しています。北朝鮮を対米外交の駒として使っている、というのです。そこで中国は日朝秘密交渉をリークして、トランプの怒りの矛先を日本に向けさせようとしたというのが、この出来事の真相かもしれません。

しかし、この2つの出来事が、日米関係をわずかでも毀損させたという事実は全くありません。

とはいいながら、日米を離反させようと考える勢力は、中国は無論のこと、日本の中にも、米国の中にさえ存在します。今後日本が中国の自滅を待つにしても、それまではまだ時間があります。

このような勢力の存在の暗躍は、ハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンチントン教授が96年に書いた論考『文明の衝突』(邦訳・集英社)そのもののようです。同書によると、ヒューマニズムを基盤とする西洋文明の代表者アメリカは早晩、儒教の代表者である中国と世界秩序をめぐって激突することになるとしています。

「精神的なぬくもりを感じさせない」冷酷な宗教である儒教は個人よりも集団に重きを置き、権威と階級などを重視します。これは、独裁体制を支えてきたイデオロギーでもあるので、中国も北朝鮮も儒教を放棄しません。中国が考える国際秩序は国内秩序の延長線上にあり、国力の増大に伴い西洋中心の秩序に挑戦してくるとしています。

『文明の衝突』の中でハンティントンは、中国や朝鮮、その他いわゆる東アジアのことも記載されています。そうして、これらのことを東アジア文化圏としています。では、日本は、その中に含まれているかといえば、そうではありません。

日本は、日本文化圏としています。ハンティントンも、最初は、日本も中国に影響を受けた国なので、東アジア圏の中に含めようと考えたようですが、結局それでは実体を表しておらず、日本は、あまりにユニークで、どうしても、東アジア文化圏に含むことはできず、結局は、日本文化圏としたと、著書の中にも掲載されています。

ハンティントンは「アジアにおけるアメリカの影響力が小さくなると、日本は<再びアジア化>すべきだとする考えが日本国内で勢いを増し、東アジアの舞台で中国が改めて強い影響力を持つのは避けられないと考えだすだろう」とも書いています。

文明の衝突の表紙

既にそうした前例がありました。89 年に中国が天安門広場で民主化を求める市民と学生を弾圧した後、自由主義陣営が対中制裁を科しました。ところが92年、冷戦崩壊の隙を突くかのように日本は天皇の訪中決め、欧米の結束を崩壊させたのです。

日本の中には明らかに「日本は再びアジア化」すべきだという考えを持つ集団がいます。それは、野党は無論のこと与党の自民党の中にさえ存在します。

ただし、これらの勢力は中国が尖閣諸島沖で、中国の漁船が日本の海上保安庁の艦艇に体当たりしたり、南シナ海で環礁を埋め立て軍事基地化するなどの他にも立て続けに傍若無人な振る舞いを繰り返したため、日本の対中世論は急激に悪化し、今では影を潜めています。

しかし、これらがいつ息を吹き返すかは予想がつきません。日本はこうした勢力を封じ込めつつ中国の自滅を待つ必要があります。

さらに、国際情勢がこれだけ急激に変化してしまったのですから、従来通り日本の防衛を米国に頼るのではなく、少なくとも、自国民の生命財産を守るためには、自衛戦争をできるようにしておく必要があります。

今後米国は日米の同盟関係を崩すことないとは思いますが、日本が日本の領土を守るために何もしないということであれば、今すぐではなくても、今後10年、20年たてば、日米関係にヒビが入る可能性も十分にあります。

ブログ冒頭の記事にもあるとおり、日本の中には米国も、韓国も、ロシアも敵などと考える勢力は確かに存在します。その中で、韓国やロシアはたとえ敵に回っても、GDPでみると両国とも東京都なみですから、さほど悪影響はないかもしれません。無論できたら、敵に回さずに、味方に引き入れておいたほうが良いことは良いには違いはありません。

しかし、米国を本当に敵に回してしまえば、おそらく日本としては、中国と手を組むしかなくななります、これこそ中国の思惑通りということになります。

そんなことになれば、先日のこのブログに掲載したシーパワー国の同盟でもある日米英同盟が破綻しています。

そんなことになれば、中国の崩壊どころか、中国としては日本の経済力を最大限に利用して、米国と対峙することになります。その挙句の果に、中国と共倒れということになりかねません。

そのようなことだけは絶対に避けるべきです。そのためにも、日本は少なくとも自国領土を守れるように、体制を整えておくべきです。

以上まとめると、日本は、国内で「日本は再びアジア化」すべきだという勢力を封じ込めつつ、少なくとも自国領土を防衛できる体制を整えつ、多くの国々を味方につけ、中国の自滅を待つという外交戦略が最上であると考えます。

今後10年、20年と時がすぎれば、日本は他国を味方に引き入れただけでは、中国の自滅を待てない状況になるのは明らかだと思います。

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2017年5月10日水曜日

【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!


文在寅(ムン・ジェイン)韓国新大統領
韓国の大統領選から一夜明けた10日、韓国メディアは文在寅(ムン・ジェイン)氏の当選をトップニュースで伝えるとともに、新政権の課題として経済や外交を挙げた。

 朝鮮日報は、元閣僚や識者らの話を紹介する形で、膨れ上がる個人債務や改善しない雇用問題の解決が急務であると指摘した。また、労働・教育を中心とした構造改革に取り組み、経済再生のきっかけを整えるべきだと新政権に求めた。

 外交・安全保障面では、米韓同盟を最も重要とし、北朝鮮の核問題の解決や、中国との協力関係強化による朝鮮半島の安定が最優先との見方を示した。

 聯合ニュースは、日韓関係について「当分は調整局面を迎える」と展望。「新政権では外交・安保ルートを構築しつつ、対日政策も全般的に見直すとみられる」とした。

 その上で、北朝鮮の核・ミサイルへの対応には日韓の協力が必要で、文政権と安倍政権の連携のきっかけになるとの見方を示した。

 一方で、慰安婦問題をめぐる日韓合意を「両国関係改善の障害物の代表例」として挙げ、文氏が選挙期間中、合意の再交渉を主張してきた点に触れた。

【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!

本日は、文在寅新大統領の、経済対策について論評します。

文在寅新大統領の経済対策

韓国経済の現状を省みると、第19代韓国大統領に当選した文在寅(ムン・ジェイン)氏には準備期間はありません。すぐに手を打たなければとんでもないことになるでしょう。目の前の経済懸案を文氏が率いる新政権がどのように解決していくのか、以下にその公約を点検します。

文氏の大統領当選とともに10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算がカウントダウンに入ります。補正予算の表札は「雇用」に定められています。7日に文氏側の選挙対策委員会(選対委)は、政府が年初に発表した「2017年度公務員採用計画」に加え、1万2000人の公務員を追加で採用すると明らかにしました。

ユン・ホジュン選対委政策本部長は「追加採用と教育訓練に必要な予算を雇用補正予算に、人件費と法定負担金は『2018年度本予算』に反映する」と説明しました。公共雇用81万人創出は文氏の核心公約の一つです。問題は財源です。

文氏の公約には増税案もあります。文氏は先月19日のテレビ討論で「富裕層と財閥大企業中心に増税をするべき」と明らかにしました。公約集によると、利益(課税標準)500億ウォン超過企業に対する法人税の最高税率が22%から25%に上がります。大企業の大株主が株式譲渡過程で得た利益(株式譲渡差益)に適用する税率も20%から25%に引き上げられます。

高所得者に対する税金も強化され、5億ウォン超過で40%の所得税最高税率が3億ウォン超過で42%に調整されます。高額資産家に対する相続・贈与申告税額控除率は7%から3%に引き下げられます。

キム・カプスン東国大経営大教授は「税目と引き上げ率、対象と目的を明確にした後、国民を十分に説得する過程がなければいけない」とし「法人税引き上げも企業が労働者の賃金や家計など他の部分に税負担を転嫁しないよう厳密な設計が必要だ」と助言しました。

法人税引き上げ計画が国際的な流れに逆行するという懸念も新政権は考慮しなければいけないようです。財閥改革と経済民主化も文氏の経済公約の核心です。文氏は過去の調査局のような大企業担当部署を公正取引委員会に拡大・設置すると公約しました。その代わり公取委が独占している専属告発権を廃止する予定だそうです。

文氏の通商公約は他の経済公約に比べ細部が不足するという評価を受けました。通商組織を産業通商資源部から外交部に移管して東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、韓日中自由貿易協定(FTA)を締結するという方向だけを提示しました。トランプ米大統領が「韓米FTA再交渉または終了」を主張していますが、文氏は「軍事同盟とFTAを基礎に韓米間の戦略的関係を強化する」という原則だけを明らかにした状態です。

LG経済研究院のキム・ヒョンジュ研究委員は「サービス収支まで考慮すれば韓米FTAは米国に決して不利ではない協定という点をトランプ政権と米議会に十分に説得していく必要がある」と注文しました。

過去の韓国経済

朴槿恵前大統領
さて、ここで韓国の過去の経済と、2013年2月25日発足した、朴槿恵大統領の経済政策を振り返ります。以下は、当時の日本国内での一般的な見方を掲載します。

韓国は米国や日本をベンチマークとするキャッチアップ型発展を違げてきました。韓国企業は米国や日本などが開発した技術にいち早く適応しそれをベースに製品開発を進めるアァストアォロワー戦略で競争力を高め2000年代に入るとサムスン電子や現代自動車を筆順にグローバル市場で存在感をたかめました。

しかし韓国企粟がグローパル市場で躍進する方で国内軽済に目を転じると家計部門をに問題が生じていました。まず企葉が非正規雇用を増やす対応を採ったたことなどを背景に労働分配率が低下し 家計所得が伸び悩むようになりました。また青年者失業が増加するなど人的資源が十分に話用されていない状況 が生じています。韓国では2000年代に雇用総出力が低下し、どのように雇用の拡大を図っていくかが課題となっていました。

こうした課題に対し2月25日発足した朴価恵(パククネ)政権は「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針でした。「創造経済」の実現は、韓国自らが産粟を創出あるいは市場を先導することを意味しキャッチアップ 型発展からの転換を図るものとする予定でした。

韓国企業を取り巻く環境をみると李明博(イミョンバク)政権下で採られたウォン安政策の是正や低位に抑えられた電気料金の値上げなど価格面での優位性を支えてきた状況に変化が生じていました。そうして中国企業などの追い上げが子想される中韓国企業は価格競争力に依拠するキャッチアップ型の成長パ ターンから脱却し独自柱術に基づく製品開発カに注力する必要に迫られています。

 韓国企業の中には、既にサムスン電子のように液晶、半導体といった分野で独自柱術の開発に成功しそれを購争カの源泉としている企業もありました。また大企業を中心に行われている研究開発(R&D)投資は 世界上位に位置し韓国は技術力強化に注カしている姿が見て取れましたい。

独自技術や胆品開発カの強化は 一朝一タに成し遂げられるものではないのですが「創造軽済」実現に向けた政策的なパックアップの下競争力強化に取り組み始めた韓国企業はこれまで以上に手ごわい競争相手となる可能性がある点を日本企業は認識する必要があると見られていました。

過去と現在の比較

2016年7月21日、「創造経済」の拠点板橋創造
経済バレー(京畿道城南市)を訪れた朴槿恵大統領
朴槿恵大統領の経済対策は、結局のところ「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針のみのようでした。

そうして、この「創造経済」は失敗しました。現在の韓国の経済の状況は、朴槿恵政権発足の頃と比較して良くなることはありませんでした。それは、当たり前といえば、当たり前でした。

朴槿恵政権というか、世界中のどこの国の政府でも、IT産業に力を入れたからといってその産業を興隆させることなどできません。それは、民間企業が競争し互いに切磋琢磨しながら築き上げていくものです。政府にはできるものではありません。

政府としてできるのは、インフラを整備するくらいなものです。そのインフラの上で、民間企業が競い合ってはじめて、イノベーションが生まれます。そうして、IT産業に限らず、一つの産業が国に大きな富をもたらすまでに興隆するには、かなりうまくいって5年、通常は10年から20年かかるのが普通です。

そうして、これは日本で昔言われていた「構造改革」と同じです。日本でも、失われた20年に入る直前から言われだしましたが、結局のところ「構造改革」は掛け声だけに終わりました。

それに、政府主導すなわち官僚主導で、IT産業を興隆させるということができるというのなら、官僚主導の計画経済を実施した共産主義だってうまくいっていたはずです。しかし、これは、皆さんがご存知のようにことごとく失敗しました。朴槿恵大統領の「創造経済」は残念ながら当初から失敗することが、方向付けられていたようなものです。

過去において、計画経済の共産主義はことごとく大失敗した!!
さて、これに比較すれば、文在寅新大統領の経済対策は、朴槿恵大統領のものよりはいくぶんまともなようです。

なぜなら、景気循環的対策である、財政政策を実行しようとしているからです。とりあえず、雇用対策として10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算を組むとしています。

しかし、これはいったいどの程度の規模なのか、何しろ韓国なのでそれが見えません。2015年の韓国の名目GDPは1兆3779億ドル(約138兆円)で、世界11位を記録しました。 日本は、4兆1233億ドルでした。割り算をすれば、日本は韓国の大体三倍の規模ということになります。

では、韓国で10兆ウォン(約1兆円)の経済対策をするとしたら、日本でいえばどの程度のものになるかといえば、約3兆円ということになると思います。しかし、これでは、十分とはいえないと思います。

日本でも過去にこの程度の補正予算は、組んでいろいろ対策を行いましたが、あまり良い結果を生むに至ってはいません。やはり、日本では10兆円以上できれば、20兆円の対策を打つべきでした。

これを韓国に換算すると、6〜7兆円(60兆ウォンから70兆ウォン)の対策をすべきということになります。さらに、財源が増税ということですから、現状の韓国の経済を考えた場合、残念ながら、ほとんど成果を期待できないです。いくら富裕層や、企業に対して増税するとはいっても増税は増税です。これは、悪い影響が出るのは必定です。

現に経済状況が悪いわけですから、本来だと国債発行などで賄うべきものだと思います。国債というと、日本ではなぜか悪者扱いで、将来世代へのつけを回すものと認識されているようですが、それは全く異なります。国債は逆に世代間の不公平を平準化するものです。

韓国を例にとれば、雇用を創出するために、増税すれば、現在の世代ばかりに負担がかかるものになってしまいます。しかし、国債ならば雇用が長期的に確保されるのであれば、将来世代もその恩恵にあずかることができるので、平準化できるのです。増税で雇用を長期的に安定された場合、将来世代は何の負担もすることなく、タダ乗りということになります。悪く言えば、親のスネをかじり続ける極道息子のようなものです。

そうして、朴槿恵前大統領も、文在寅新大統領も、財政政策以外のもう一つの景気循環的対策である、金融政策は頭に思い浮かばないようです。

文在寅(ムン・ジェイン)新大統領も、「雇用」を謳っておきながら、金融緩和には思いも至らないようです。普通は、雇用といえば、まずは金融緩和です。このブログにも過去に掲載したように、インフレ率と雇用の間には密接な関係があります。

米国や日本のような国であれば、物価が数%あがればその途端、他は何もしなくてもたちどこに雇用が数百万も発生します。これは、経験則として広く知られている事実です。そうして、それはこのブログにも以前掲載したように、最近の日本でも実証されていることです。

韓国も、雇用を改善するというのなら、まずは金融緩和をすべきなのです。しかし、このようなことを言うと、韓国の経済は遅れているし、腐敗がまかり通っているから無理だとか、はなはだしくは、金融緩和するとキャピタル・フライトが起こるなどという人もいます。

これは、韓国内だけではなく、日本でもそのような見方をする人がいるようです。しかし、これは間違いです。

いくら韓国の経済活動には不合理なことがまかりとおっていたにしても、構造改革をしてそれが効果をあらわすまでには、先に述べたように、最低でも5年、長ければ10から20年もかかる場合もあります。しかし、現状の経済がとんでもない状況にあるわけですから、構造改革はするなとはいいませんが、その前にまずは景気循環的対策を十分に行うべきです。

さらにキャピタルフライトに関しては現在の韓国は起こりにくい状況にあります。なぜかといえば、それは我が国と同じく、韓国は変動相場制の国であるからです。

通常変動相場制の国であれば、 金融緩和をすれば自国通貨安になり、外貨流出を抑えることになります。さらには、変動相場制の国であれば、政府の外貨準備は通常市場とは直接関係しません。したがってキャピタルフライトは固定相場制の国とは違って発生しません。なぜなら極端な通貨安に振れる理由がないからです。

現に1997年のアジア通貨危機では被害国は固定相場でした。韓国は、80年から変動相場制への移行をはじめ、97年アジア通貨危機後に完全変動相場制になりました。現在では完全変動相場制です。

無論、変動相場制の国の場合でも、キャピタルフライトは起こり得る場合もあります。それは、まずユーロなどの共通貨幣を用いている国ではあり得ることです。しかし、韓国は共通通貨を用いている国ではありません。

さらに、変動相場制の国でもキャピタルフライトがおこる可能性もあります。それは、対外債務が極端に多い場合です。しかし、韓国の現在の対外債務はキャピタル・フライトがおこるような水準ではありません。

であれば、本来は真っ先に大規模な、金融緩和を行うべきです。それなしに、韓国の経済を立ち直らせることはできません。

朴槿恵大統領退任要求の大規模デモ。主催者推定10万人を超える人数が集まり収拾付かなくなった。

文在寅も、このまま韓国経済を立ち直らせることができなければ、結局国民の不満が高まり、朴槿恵前大統領と同じような道を辿ることになります。

もうすでに、朴槿恵元大統領のときのスキャンダルのようなものが囁かれ始めています。

それは、文在寅氏の息子のムンジュニョンさん不正就職事件です。これは、10年前の2007年のことです。

ジュニョンさんは、韓国雇用情報院に採用されて就職をしました。その就職に関して、ムンジュニョンさんが、韓国雇用情報院の5級一般職の試験で、優遇を受けて入社したというのです。

これについては、ここではあまり詳細は触れません。詳細を知りたいかたは、ネットで調べて下さい。

文在寅大統領が、反日や親北に地道をあげて、金融緩和策を実行せず、韓国の雇用を改善できない場合、韓国民は最初のうちは大人しいかもしれませんが、いずれ朴槿恵元大統領を退陣に追い込んだような、嵐が吹き荒れることになります。そうして、任期は全うできず、様々なスキャンダルが暴かれ、文在寅もスキャンダルに塗れて自滅することになるでしょう。

【痛快!テキサス親父】韓国はまさに「赤化危機」 完全な日韓合意違反、国際的信用は失墜した―【私の論評】韓国の赤化で、半島全体が支那の傀儡になる?

2016年12月24日土曜日

【お金は知っている】中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く―【私の論評】行き着く先は超元安とハイパーインフレしかない中国経済(゚д゚)!

【お金は知っている】中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く

トランプ氏(左)と習近平(右)
 中国共産党は1972年2月のニクソン大統領(当時)以来、歴代米大統領に対して台湾を中国の一部とみなす原則を一貫して認めさせてきた。トランプ次期米大統領は「それに縛られない」と明言する。習近平国家主席・党総書記の面子(メンツ)はまるつぶれである。

 北京は何か報復行動をとるかとみていたら、19日にフィリピン沖の南シナ海で米軍の調査用無人潜水機を奪取した。20日には米軍に返還したが、時間をかけて潜水機のデータを調べ上げた。露骨な国際法違反である。粗野でぞんざいなふるいまいを見せつけることが、相手の面子をつぶすと考えるところは、魯迅の『阿Q正伝』そのものだ。

 中国はみかけのうえでは国内総生産(GDP)や対外純資産規模で世界第2位の経済超大国でも、中身は悪弊にまみれている。慢心すれば必ず失敗する。人民元の国際化を例にとろう。

 昨年11月には習政権の執念が実り、国際通貨基金(IMF)が元をSDR(特別引き出し権)構成通貨として認定させた。限定的ながら金融市場の規制を緩和し、人民元の金融取引を部分自由化した。同時に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を創立し、国際通貨元を世界に誇示しようとした。

 ところが、昨年8月に人民元レートを切り下げると、資本が逃げ出した。当局が規制しようにもどうにも止まらない。

 この11月までの12カ月合計の資金純流出額は約1兆ドル(約118兆円)、このうち当局の監視の目を潜った資本逃避は約5000億ドルに上ると米欧系金融機関のアナリストたちは分析している。

 特徴は、11月8日の米大統領選後の11月9日を機に、資金流出が大幅に加速していることだ。当選したトランプ氏が減税とインフラ投資という財政出動を通じて、景気を大いに刺激すると期待されるために米国株が急上昇し、中国に限らず世界の資金がニューヨーク・ウォール街に吸引される。

 中国に対して強硬姿勢をとるトランプ氏にチャイナマネーがおびき寄せられ、トランプ政策に貢献するとは、習政権はここでも面目なしだが、もっと困ることがある。


 グラフを見よう。米大統領選後、元安と市場金利上昇にはずみがついた。いずれも資金流出による。中国人民銀行は元暴落を避けるために外貨準備を取り崩し、ドルを売って元を買い上げるが、それでも元売り圧力はものすごく、元の下落に歯止めをかけられない。商業銀行の手元には元資金が不足するので、短期市場金利である銀行間金利が高騰する。すると、金融引き締め効果となって、莫大(ばくだい)な過剰設備を抱える国有企業を苦しめる。地方政府も不動産の過剰在庫を減らせない。企業や地方政府の債務負担、裏返すと銀行の不良債権は膨らむ一方だ。

 トランプ政権発足を目前に、中国は経済で自滅の道に踏み出した。経済超大国としての要件を満たしていないのに、対外膨張を図ろうとしたからだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】行き着く先は超元安とハイパーインフレしかない中国経済(゚д゚)!

上の記事では、最近の中国の資金流出の状況を掲載しています。しかし、この資金流出がなぜおこるようになったのか、そうしてこの酷い資金の流出の行き着く果てはどうなるかについては掲載されていません。本日は、それに関して記そうと思います。

まずは、このような資金流出が発生するようになった背景を簡単に記します。

一言でいえば、中国政府はコントロールしてはならないものをコントロールしたことが、とめどもない資金流失の直接の原因ということです。

中国政府は、農民から収奪した土地を工業団地や商業地などに転換して不動産バブルを演出したにもかかわらず、供給が需要を大きく上回ってマンションやショッピングセンターが「鬼城(ゴーストタウン)」だらけになってしまいました。そこで習近平政権は投機の受け皿を不動産から株にシフトし、株投資を煽って株高に誘導しました。不動産の次は株の官製バブルを演出しました。


ところが、それは元々政府のやるべき仕事ではありません。株価は、将来得られるであろう企業収益の現在価値です。本来企業の業績が良くならない限り、株価は上がらないのです。その本質を中国政府は理解せず、株式市場にカネを突っ込んで、なりふり構わぬPKO(株価維持策)を続けました。しかし、中国企業の業績は伸びていないのですから、当然の結果として株価は2015年夏から下落し始めました。

すると今度は大量保有株主の株式売却を半年間禁止し、違法売買の摘発を強化しはじめました。しかし、株価が下がっている時に株を売れないことほど株主にとってストレスになることはありません。そのため、大量保有株主の株式売却解禁と同時に株価は大幅に下落しました。株価の急変時に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を新設後5日間で2回も発動したのですが、それがまた呼び水となって、さらに株価は下落するという悪循環に陥ってしまいました。

突然の株価下落で唖然とする上海市民
これら一連の動きから、世界中から中国政府は資本主義経済を全く理解してないという事実が露呈ししてしまったので、現在世界中がある種のパニック状態に陥っています。中国政府は欧洲がやっているような感じのつもりで上へ下へと中国経済をコントロールしようとしてきたつもりなのですが、いまやヨーヨーの紐が伸びきったように何をもってしてもコントロール不能になってしまったのです。

元々、中国は資本主義の歴史もないのですが、工業化の歴史もありません。日本の場合は工業化の長い歴史があるため、生産性の向上や商品価値の向上を実現できたのですが、中国にはその素地がありません。そのため日本のようにイノベーションも期待することもできず、上がり続ける給料や通貨を支えることができません。

にもかかわらず、中国政府は人件費を市場に委ねることをせず、強制的・人為的に毎年15%ずつ引き上げてきました。そのため企業の競争力が著しく低下したのです。

しかし、人民の反発が怖くて賃下げはできないので、自ずと為替は元安に向かうことになりました。1ドル=6.5元ぐらいまで高くなった人民元は、今の人件費と生産性であれば、フロート制(変動相場制)に移行したら1ドル=12~14元ぐらいまで下がらざるを得ないでしょう。

人件費と為替の両方を「管理」することなどできるわけがありません。本来中国政府は、今の人件費で成り立つ労働料集約型の産業は中国には存在しないと心得るべきだったのです。

本来、市場にまかせるべきものを人為的にあれこれ、介入しすぎたため、もはや中国政府に経済政策の打ち手はありません。かつてのように有効需要を創出しようと思っても、すでに高速鉄道、高速道路、空港、港湾、ダムなどの大型インフラはあらかた整備済みで、乗数効果のあるインフラ投資の領域は中国にはありません。

しかも、一人っ子政策を続けてきたせいで今後は高齢化が急速に進展しているのですが、介護や年金などの社会保障を支える人材・予算が大幅に不足しています。

さらに、「理財商品」という隠れた“地雷”もあちこちに埋まっています。これは短期で高利回りを謳った資産運用商品で、株式ブームの前に人気となりました。集まった資金は主に地方政府の不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトに流れたとされています。

中国のシャドーバンキングの仕組み 

ところが、今後はそれらのプロジェクトが行き詰まり、理財商品を発行した「影の銀行」が損失を受けてデフォルト(債務不履行)を起こす可能性があるのです。日本のバブル崩壊でノンバンクが次々に倒れたのと同じ現象です。

そして、中国国内で投資先を失った資金の流出が加速しているのです。人民元は個人では年間約120万円しか海外に持ち出せません。しかし、中国本土から人民元を香港などに違法に送金する「地下銀行」を運営していた300人余り、総額8兆円近くが摘発された例もあるように、現実には資金を流出する方法は存在しています。資金の海外流出は必然的に人民元安と株安につながります。

鳴り物入りでスタートした中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、中国にはプロジェクトを審査して遂行していく能力があるマネジメント経験者がいないからことごとく失敗しています。

中国はまるで、先進国がこの100年間に経験してきたことを10年間に凝縮したかのような状況にあります。しかもその規模は10倍に膨れ上がり、対する政府の能力は1/100ぐらいしかないといった状態です。

もはや中国経済は習近平政権に限らず、誰をもってしてもコントロール不能になりました。コントロールしてはいけないものをコントロールしたから、こうなったのです。行き着く先は超元安とハイパーインフレしかありません。

これを経験して、はじめて習近平政権は、資本主義経済においてはコントロールしてはならないものをコントロールすれば、とんでもないことになることを学ぶことになるのでしょうか。いや、そのときには習近平は失脚しているでしょう。

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2016年2月29日月曜日

【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!


孫子の兵法書
中国の習近平国家主席は昨年9月に訪米し、確かに「南シナ海を軍事拠点化しない」といった。果たして、この言葉を素直に信じた沿岸国の指導者はいただろうか。

その数カ月前、米国防総省の年次報告書「中国の軍事力」は、南シナ海の岩礁埋め立てが過去4カ月で面積が4倍に拡大していると書いた。中国の国防白書も、「軍事闘争の準備」を書き込んで、航行の自由を威嚇していた。

かつて、マカオの実業家がウクライナから空母ワリヤーグを購入したとき、中国要人が「空母に転用する考えはない」と語ったのと同様に信用できない。中国の退役軍人がマカオ企業の社長だったから、尻を隠して頭を隠さずというほど明白だった。

漢民族は自らを「偉大なる戦略家である」と思い込んでいる。孫子の兵法を生んだ民族の末裔(まつえい)であるとの自負が誤解の原因かもしれない。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問、E・ルトワク氏は、戦略家であるどころか「古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎない」と酷評する。実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックだけが生きている。

その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。

国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。

ミサイル配備が明らかになったウッディー島は、南シナ海に軍事基地のネットワークを広げる最初の飛び石になるだろう。早くも22日には、CSISが南シナ海スプラトリー諸島のクアテロン礁に中国が新たにレーダー施設を建設しているとの分析を明らかにした。

やがて、これら人工島にもミサイルを配備して戦闘機が飛来すれば、船舶だけでなく南シナ海全域の「飛行の自由」が侵される。

ルトワク氏はそんな中国を「巨大国家の自閉症」と呼び、他国に配慮することがないから友達ができないと指摘する。例外的に1国だけ、核開発に前のめりの北朝鮮がいるが、それも近年は離反気味である。

中国が脅威を振りまけば、沿岸国など東南アジア諸国連合(ASEAN)は、共同で対処する道を探る。オバマ米大統領が昨年はじめてASEAN大使を任命し、米・ASEAN関係を戦略的パートナーに格上げすることで、その受け皿にした。

中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を含む札束外交で歓心を買おうとしても、従属を強要する意図が見えれば中国への警戒心はむしろ高まろう。ASEAN首脳が米西海岸サニーランズでオバマ大統領との会談に応じたのも、対中ヘッジ(備え)になってくれると考えるからだ。

オバマ政権のアジア・リバランス(再均衡)に中身がなくとも、中国のごり押しで米国とASEANの緊密化が進み、中国の影響力をそぎ落とす。それがルトワク氏のいう『自滅する中国』という予言なのだろう。(東京特派員)

【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!

『自滅する中国』は、アメリカの戦略家E・ルトワク氏による、中国はなぜ対外政策面で今後行き詰まるのかを、大まかながら鋭く分析した異色の書です。

以下に、この書籍を読んで私自身が考えたことなどを掲載します。

著者は中国行き詰まる理由として、中国が巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っていると指摘しています。

この「内向き」な思考にはしばしば驚かされます。中国でかつて行われた、反日デモは官製でもであることが明るみに出ていますが、なぜ国家があのようなことをするかといえば、日本を敵にしたたて、共産党政府に人民の怨嗟の矛先が向かないようにするためです。

最近ほとんど見られなくなった中国の反日デモ。
デモするのも、しないのも、中国内部の事情だ。 
しかし、この反日デモも、発生してしばらくすると、必ずといって良いほど、反政府デモに変わってしまうため、最近では政府が逆に規制をして実施させないようにしています。尖閣や、南シナ海の中国の行動に関しても、対外的な示威行動という側面は無論ありますが、中国内の人民や政敵にむけての示威行動という部分もかなりあります。

さらにこのようなことに、追い打ちするように、著者は中国(漢民族)は実は戦略が下手だという意外な指摘を行なっています。その理由として著者は「過去千年間に漢民族が中国を支配できていたのはそのうちの3分の1である」と語っています。そしてこの戦略の下手さが、現在のように台頭した中国にも随所に見られるというのです。

後半では日本を始めとする東アジアの周辺国の、過去五年間ほどの対中的な動きについて大まかに理解できる構成になっており、著者が驚くほど「嫌韓派」であることがわかるのは意外で面白いところですが、私が最も気になったのは、おそらく誰もが読み過ごしてしまうであろう22章の、アメリカの三つの対中戦略についての話です。

ここには、キッシンジャーがなぜここまで親中派なのか、その理由があからさまに書いてあります。

文章はやや固くて多少読みにくいと感じましたが、それでも原著者の原文の読みにくさを考えれば、これは十分読みやすいほうの部類に入ると思います。

ヘンリー・キッシンジャー氏 

この書籍には、甘言、阿諛、ウソ、脅し、裏切り、毒盛り、暗殺、奇襲・・・という中国の文化と政治を書いてあります。われわれ日本人なら多かれ少なかれ知っている事柄ですが、欧米人にはなじみのない中国のことですから、啓蒙の効果はあるでしょう。しかし、多くの欧米人には「本当? ウソでしょう?」と、すぐには信じられないかもしれません。

中国の演劇とか小説のことにもふれてあれば、中国がどんな世界かわかりやすかったかもしれないです。アメリカ人のルトワック自身も、われわれが何となく知っている、こうした中国の政治文化や外交政策を理解するには、ずいぶんと時間と研究をしなくてはいけなかったのではと想像します。

しかし、たとえばこの戦後の日中関係、あるいは日中国交樹立以後の日中関係、だけをみても、中国の伝統がわかります。たとえば数日前の新聞報道によると、反日政策が強い反中感情を生み出したので、こんどは一般の日本人をターゲットに親中的態度や感情を培養醸成するというようなことがよく見られます。微笑み、もてなし、平手打ち、足げり、罵り、甘言、握手、唾ふきかけ・・・と、ころころ手をかえます。

こうなると、騙す中国より、騙される日本が悪いのかもしれません。

中国は他者を政治的に支配しておかないと安心できません。冊封(さくほう)関係がそれで。まず甘言と賄賂からはいり、次は経済的に依存させ洗脳。最終的に中国の支配下におく。こうなるともう中国は遠慮会釈もなく、冷淡冷酷残忍なとりあつかいをします(第4章)。

さらに、ルトワック氏はこの書籍で、中国の孫子の兵法をとりあげます。これは2500年以上もまえ春秋戦国時代時代の中国の状況から生まれたものですが、この時代の中国内は群雄割拠の時代です。

これはルネッサンス期のイタリアの国際政治とおなじく、文化的に等質でおなじ規模の国家からなりたっていた時代の産物であり、第一に相互に徹底した実利主義と日よみり主義で闘争と協調がなされます。第二に故意に挑発し交渉に持ち込もうとします。第三に虚偽や騙しや、それにもとづく奇襲や暗殺が正当化されあたりまえになっています。

いまの中国もこれをそのまま繰り返しています。

以下に漢民族のコラージュを掲載します。


上段から左から右:蒋中正嬴政
毛沢東楊広郭躍中国人民解放軍の兵士達、パトリック・ルイス・ウェイクワン・チャン
楊玉環曹操司馬懿孫武
劉備関羽張飛孫権

中国人はこの古代からの戦略に深い知恵があるものと信じて疑わず、これさえあれば欧米などをあやつれ、優位にたてると考えています。キッシンジャーはこの中国の考えに敬意をはらう人間です(第9章)。(ただし、この本には書いてはいませんが、キッシンジャーはかって中国を嫌悪軽蔑していました。)

なお、著者は語っていませんが、脅し、甘言、賄賂、裏切りなどは、中国人どうしの対人関係でも用いられる常套手段です。だから中国は信用度の低い社会で、ご存じのとおり日本では考えられないことが起きています。

2012年の習近辺の主席就任でも、激烈なパワー・ポリティックスがありました。あの薄煕来(はっきらい)の裁判も法の正義が実現されるのではなく、単なる政治裁判のショーでした。



こうした中国のあきれるばかりの現金でお粗末なやり方は、かえって信用低下をまねき、中国に対する公式非公式の包囲網を自然と形成させました。第13章以下ではオーストラリア、日本、ヴェトナムなどの中国への警戒が述べられています。

ただこうしたなかで、事大主義・朱子学ファンダメンタリストの韓国だけは中国にすり寄りました(第16章)。その立派な口先とはうらはらに、自分は安全保障のコストをはらわずに、ただ乗りするありさまが書かれています。北朝鮮の核問題をどれだけ真剣に考えているのでしょうか。

私は、韓国の政策からして、もう日本は韓国を朝鮮半島唯一の正統政府をみとめる理由や義務はなくなったと思います。北が核を放棄し、拉致問題を解決すれば、アメリカが強く反対しないかぎり、北ももう一つの正統政府と考えていいのではないでしょうか。

中国がその表面とは違い、実態は多くの脆弱性をもつことは、近年欧米でもさかんに指摘されるようになりました。最後に著者は、この本はいままでどおり中国が成長していうという前提で議論をすすめてきたと断り、この前提に立ちはだかる中国の現実問題にふれます。

著者は中国の民主化に望みをつないでいますが、社会が豊かになれば民主化するわけではありません。これが欧米人の考えの弱いところです。中国の中産階級は西欧の中産階級と違い、歴史上王朝権力を支持してきました。いまは共産党政府を支持しています。また民主化した中国が親日とか親欧米だとは限りません。やはり中華的でしょう。

この本の主題からすれば小さなことですが、著者には欧米人のあいも変らぬロシアについての無理解があります。ロシアはその歴史的経験から中国を大変警戒しています。ロシアが伝統的にタタールの軛を離れ、ヨーロッパに復帰したいというその深層に理解がおよばないようです。ロシアはヨーロッパでありたいのです。

ルトワック氏はウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析した
この本のどこかで著者は、中国は日欧米から貿易で管理的に差別されれば、ロシアから資源を買いつけることによって、問題を解決できるとしています。しかし資源の爆食国家中国に資源さえあればいいというものではありません。

資源を魅力ある製品化する効率的技術とか、その製品の販路販売の市場といった点で、ロシアが日欧米に代れるわけではありません。

ただし、最近のルトワック氏は、ウクライナ危機でシナとロシアの接近は、氷の微小だと分析しており、両国が本格的な協力関係になることはあり得ないと分析しています。

中国は無差別公平な自由貿易により大いにうるおい、かつ巨大化してきました。逆に、著者もいっているように、中国にたいし管理貿易をおこなえば、中国は大いに損をして弱体化します。この案は、著者に限らず、多くの人にも論じられています。
◆エドワード・ルトワック
エドワード・ルトワック氏 
ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザーとしての顔も持つ。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。

米国だけでなく、日本を含む世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。

同年国防省長官府に任用される。主著の『戦略:戦争と平和のロジック』(未訳)を始め、著書は約20ヵ国語に翻訳されている。邦訳には『クーデター入門:その攻防の技術』、『ペンタゴン:知られざる巨大機構の実体』、『アメリカンドリームの終焉:世界経済戦争の新戦略』、そして『ターボ資本主義:市場経済の光と闇』がある。
さて、ルトワック氏の分析もそうですが、過去の中国、そうして最近の中国を見ていても、何も大きな変化はなく「内向き」で最初から自滅することが運命づけられているようです。

事実、中国は大帝国を築き、分裂、また大帝国を築き分裂という歴史を繰り返してきました。そうして、大帝国と大帝国との間には、何のつながりもなく分断されているという、愚策を何千年にもわたって繰り返してきました。

中国の歴史を振り返ると、時代が移り変わり、登場人物も変わり、一見すべてが変わって見えるのですが、非常に単純化すると以下のような図式になります。
1.天下統一して、現代中国に近い版図の大国家ができる。

2.官僚主義により行政が腐敗する。

3.民衆が官僚主義の現況である大国家に反発する。それにつけこんだ新興宗教が広がり、大国家全土で反乱が多数興る。

4.叛乱の多発に乗じて地方軍が軍閥化する。軍閥が肥大化して群雄割拠の時代となる。

5.国内の乱れにより周辺異民族の活発化する。大国家の権威が地に落ちる。長い戦乱の世が続き多くの人民が疲弊する。厭戦的な世論が形成される。

6.大国家の権威が地に落ちたのを機に英雄が現われ周辺異民族を巻き込み再びの天下統一をはかる。
多少の前後があったとしても、大体がこのパターンに従うのが中国の歴史です。

現中国もその例外ではないでしょう。いずれ、分裂して小国の集合体になるか、分裂しなかったにしても、図体だけが大きい、アジアの凡庸な、独裁国家になり、他国に対しての影響力を失い自滅することになります。

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