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2017年5月10日水曜日

【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!


文在寅(ムン・ジェイン)韓国新大統領
韓国の大統領選から一夜明けた10日、韓国メディアは文在寅(ムン・ジェイン)氏の当選をトップニュースで伝えるとともに、新政権の課題として経済や外交を挙げた。

 朝鮮日報は、元閣僚や識者らの話を紹介する形で、膨れ上がる個人債務や改善しない雇用問題の解決が急務であると指摘した。また、労働・教育を中心とした構造改革に取り組み、経済再生のきっかけを整えるべきだと新政権に求めた。

 外交・安全保障面では、米韓同盟を最も重要とし、北朝鮮の核問題の解決や、中国との協力関係強化による朝鮮半島の安定が最優先との見方を示した。

 聯合ニュースは、日韓関係について「当分は調整局面を迎える」と展望。「新政権では外交・安保ルートを構築しつつ、対日政策も全般的に見直すとみられる」とした。

 その上で、北朝鮮の核・ミサイルへの対応には日韓の協力が必要で、文政権と安倍政権の連携のきっかけになるとの見方を示した。

 一方で、慰安婦問題をめぐる日韓合意を「両国関係改善の障害物の代表例」として挙げ、文氏が選挙期間中、合意の再交渉を主張してきた点に触れた。

【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!

本日は、文在寅新大統領の、経済対策について論評します。

文在寅新大統領の経済対策

韓国経済の現状を省みると、第19代韓国大統領に当選した文在寅(ムン・ジェイン)氏には準備期間はありません。すぐに手を打たなければとんでもないことになるでしょう。目の前の経済懸案を文氏が率いる新政権がどのように解決していくのか、以下にその公約を点検します。

文氏の大統領当選とともに10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算がカウントダウンに入ります。補正予算の表札は「雇用」に定められています。7日に文氏側の選挙対策委員会(選対委)は、政府が年初に発表した「2017年度公務員採用計画」に加え、1万2000人の公務員を追加で採用すると明らかにしました。

ユン・ホジュン選対委政策本部長は「追加採用と教育訓練に必要な予算を雇用補正予算に、人件費と法定負担金は『2018年度本予算』に反映する」と説明しました。公共雇用81万人創出は文氏の核心公約の一つです。問題は財源です。

文氏の公約には増税案もあります。文氏は先月19日のテレビ討論で「富裕層と財閥大企業中心に増税をするべき」と明らかにしました。公約集によると、利益(課税標準)500億ウォン超過企業に対する法人税の最高税率が22%から25%に上がります。大企業の大株主が株式譲渡過程で得た利益(株式譲渡差益)に適用する税率も20%から25%に引き上げられます。

高所得者に対する税金も強化され、5億ウォン超過で40%の所得税最高税率が3億ウォン超過で42%に調整されます。高額資産家に対する相続・贈与申告税額控除率は7%から3%に引き下げられます。

キム・カプスン東国大経営大教授は「税目と引き上げ率、対象と目的を明確にした後、国民を十分に説得する過程がなければいけない」とし「法人税引き上げも企業が労働者の賃金や家計など他の部分に税負担を転嫁しないよう厳密な設計が必要だ」と助言しました。

法人税引き上げ計画が国際的な流れに逆行するという懸念も新政権は考慮しなければいけないようです。財閥改革と経済民主化も文氏の経済公約の核心です。文氏は過去の調査局のような大企業担当部署を公正取引委員会に拡大・設置すると公約しました。その代わり公取委が独占している専属告発権を廃止する予定だそうです。

文氏の通商公約は他の経済公約に比べ細部が不足するという評価を受けました。通商組織を産業通商資源部から外交部に移管して東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、韓日中自由貿易協定(FTA)を締結するという方向だけを提示しました。トランプ米大統領が「韓米FTA再交渉または終了」を主張していますが、文氏は「軍事同盟とFTAを基礎に韓米間の戦略的関係を強化する」という原則だけを明らかにした状態です。

LG経済研究院のキム・ヒョンジュ研究委員は「サービス収支まで考慮すれば韓米FTAは米国に決して不利ではない協定という点をトランプ政権と米議会に十分に説得していく必要がある」と注文しました。

過去の韓国経済

朴槿恵前大統領
さて、ここで韓国の過去の経済と、2013年2月25日発足した、朴槿恵大統領の経済政策を振り返ります。以下は、当時の日本国内での一般的な見方を掲載します。

韓国は米国や日本をベンチマークとするキャッチアップ型発展を違げてきました。韓国企業は米国や日本などが開発した技術にいち早く適応しそれをベースに製品開発を進めるアァストアォロワー戦略で競争力を高め2000年代に入るとサムスン電子や現代自動車を筆順にグローバル市場で存在感をたかめました。

しかし韓国企粟がグローパル市場で躍進する方で国内軽済に目を転じると家計部門をに問題が生じていました。まず企葉が非正規雇用を増やす対応を採ったたことなどを背景に労働分配率が低下し 家計所得が伸び悩むようになりました。また青年者失業が増加するなど人的資源が十分に話用されていない状況 が生じています。韓国では2000年代に雇用総出力が低下し、どのように雇用の拡大を図っていくかが課題となっていました。

こうした課題に対し2月25日発足した朴価恵(パククネ)政権は「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針でした。「創造経済」の実現は、韓国自らが産粟を創出あるいは市場を先導することを意味しキャッチアップ 型発展からの転換を図るものとする予定でした。

韓国企業を取り巻く環境をみると李明博(イミョンバク)政権下で採られたウォン安政策の是正や低位に抑えられた電気料金の値上げなど価格面での優位性を支えてきた状況に変化が生じていました。そうして中国企業などの追い上げが子想される中韓国企業は価格競争力に依拠するキャッチアップ型の成長パ ターンから脱却し独自柱術に基づく製品開発カに注力する必要に迫られています。

 韓国企業の中には、既にサムスン電子のように液晶、半導体といった分野で独自柱術の開発に成功しそれを購争カの源泉としている企業もありました。また大企業を中心に行われている研究開発(R&D)投資は 世界上位に位置し韓国は技術力強化に注カしている姿が見て取れましたい。

独自技術や胆品開発カの強化は 一朝一タに成し遂げられるものではないのですが「創造軽済」実現に向けた政策的なパックアップの下競争力強化に取り組み始めた韓国企業はこれまで以上に手ごわい競争相手となる可能性がある点を日本企業は認識する必要があると見られていました。

過去と現在の比較

2016年7月21日、「創造経済」の拠点板橋創造
経済バレー(京畿道城南市)を訪れた朴槿恵大統領
朴槿恵大統領の経済対策は、結局のところ「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針のみのようでした。

そうして、この「創造経済」は失敗しました。現在の韓国の経済の状況は、朴槿恵政権発足の頃と比較して良くなることはありませんでした。それは、当たり前といえば、当たり前でした。

朴槿恵政権というか、世界中のどこの国の政府でも、IT産業に力を入れたからといってその産業を興隆させることなどできません。それは、民間企業が競争し互いに切磋琢磨しながら築き上げていくものです。政府にはできるものではありません。

政府としてできるのは、インフラを整備するくらいなものです。そのインフラの上で、民間企業が競い合ってはじめて、イノベーションが生まれます。そうして、IT産業に限らず、一つの産業が国に大きな富をもたらすまでに興隆するには、かなりうまくいって5年、通常は10年から20年かかるのが普通です。

そうして、これは日本で昔言われていた「構造改革」と同じです。日本でも、失われた20年に入る直前から言われだしましたが、結局のところ「構造改革」は掛け声だけに終わりました。

それに、政府主導すなわち官僚主導で、IT産業を興隆させるということができるというのなら、官僚主導の計画経済を実施した共産主義だってうまくいっていたはずです。しかし、これは、皆さんがご存知のようにことごとく失敗しました。朴槿恵大統領の「創造経済」は残念ながら当初から失敗することが、方向付けられていたようなものです。

過去において、計画経済の共産主義はことごとく大失敗した!!
さて、これに比較すれば、文在寅新大統領の経済対策は、朴槿恵大統領のものよりはいくぶんまともなようです。

なぜなら、景気循環的対策である、財政政策を実行しようとしているからです。とりあえず、雇用対策として10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算を組むとしています。

しかし、これはいったいどの程度の規模なのか、何しろ韓国なのでそれが見えません。2015年の韓国の名目GDPは1兆3779億ドル(約138兆円)で、世界11位を記録しました。 日本は、4兆1233億ドルでした。割り算をすれば、日本は韓国の大体三倍の規模ということになります。

では、韓国で10兆ウォン(約1兆円)の経済対策をするとしたら、日本でいえばどの程度のものになるかといえば、約3兆円ということになると思います。しかし、これでは、十分とはいえないと思います。

日本でも過去にこの程度の補正予算は、組んでいろいろ対策を行いましたが、あまり良い結果を生むに至ってはいません。やはり、日本では10兆円以上できれば、20兆円の対策を打つべきでした。

これを韓国に換算すると、6〜7兆円(60兆ウォンから70兆ウォン)の対策をすべきということになります。さらに、財源が増税ということですから、現状の韓国の経済を考えた場合、残念ながら、ほとんど成果を期待できないです。いくら富裕層や、企業に対して増税するとはいっても増税は増税です。これは、悪い影響が出るのは必定です。

現に経済状況が悪いわけですから、本来だと国債発行などで賄うべきものだと思います。国債というと、日本ではなぜか悪者扱いで、将来世代へのつけを回すものと認識されているようですが、それは全く異なります。国債は逆に世代間の不公平を平準化するものです。

韓国を例にとれば、雇用を創出するために、増税すれば、現在の世代ばかりに負担がかかるものになってしまいます。しかし、国債ならば雇用が長期的に確保されるのであれば、将来世代もその恩恵にあずかることができるので、平準化できるのです。増税で雇用を長期的に安定された場合、将来世代は何の負担もすることなく、タダ乗りということになります。悪く言えば、親のスネをかじり続ける極道息子のようなものです。

そうして、朴槿恵前大統領も、文在寅新大統領も、財政政策以外のもう一つの景気循環的対策である、金融政策は頭に思い浮かばないようです。

文在寅(ムン・ジェイン)新大統領も、「雇用」を謳っておきながら、金融緩和には思いも至らないようです。普通は、雇用といえば、まずは金融緩和です。このブログにも過去に掲載したように、インフレ率と雇用の間には密接な関係があります。

米国や日本のような国であれば、物価が数%あがればその途端、他は何もしなくてもたちどこに雇用が数百万も発生します。これは、経験則として広く知られている事実です。そうして、それはこのブログにも以前掲載したように、最近の日本でも実証されていることです。

韓国も、雇用を改善するというのなら、まずは金融緩和をすべきなのです。しかし、このようなことを言うと、韓国の経済は遅れているし、腐敗がまかり通っているから無理だとか、はなはだしくは、金融緩和するとキャピタル・フライトが起こるなどという人もいます。

これは、韓国内だけではなく、日本でもそのような見方をする人がいるようです。しかし、これは間違いです。

いくら韓国の経済活動には不合理なことがまかりとおっていたにしても、構造改革をしてそれが効果をあらわすまでには、先に述べたように、最低でも5年、長ければ10から20年もかかる場合もあります。しかし、現状の経済がとんでもない状況にあるわけですから、構造改革はするなとはいいませんが、その前にまずは景気循環的対策を十分に行うべきです。

さらにキャピタルフライトに関しては現在の韓国は起こりにくい状況にあります。なぜかといえば、それは我が国と同じく、韓国は変動相場制の国であるからです。

通常変動相場制の国であれば、 金融緩和をすれば自国通貨安になり、外貨流出を抑えることになります。さらには、変動相場制の国であれば、政府の外貨準備は通常市場とは直接関係しません。したがってキャピタルフライトは固定相場制の国とは違って発生しません。なぜなら極端な通貨安に振れる理由がないからです。

現に1997年のアジア通貨危機では被害国は固定相場でした。韓国は、80年から変動相場制への移行をはじめ、97年アジア通貨危機後に完全変動相場制になりました。現在では完全変動相場制です。

無論、変動相場制の国の場合でも、キャピタルフライトは起こり得る場合もあります。それは、まずユーロなどの共通貨幣を用いている国ではあり得ることです。しかし、韓国は共通通貨を用いている国ではありません。

さらに、変動相場制の国でもキャピタルフライトがおこる可能性もあります。それは、対外債務が極端に多い場合です。しかし、韓国の現在の対外債務はキャピタル・フライトがおこるような水準ではありません。

であれば、本来は真っ先に大規模な、金融緩和を行うべきです。それなしに、韓国の経済を立ち直らせることはできません。

朴槿恵大統領退任要求の大規模デモ。主催者推定10万人を超える人数が集まり収拾付かなくなった。

文在寅も、このまま韓国経済を立ち直らせることができなければ、結局国民の不満が高まり、朴槿恵前大統領と同じような道を辿ることになります。

もうすでに、朴槿恵元大統領のときのスキャンダルのようなものが囁かれ始めています。

それは、文在寅氏の息子のムンジュニョンさん不正就職事件です。これは、10年前の2007年のことです。

ジュニョンさんは、韓国雇用情報院に採用されて就職をしました。その就職に関して、ムンジュニョンさんが、韓国雇用情報院の5級一般職の試験で、優遇を受けて入社したというのです。

これについては、ここではあまり詳細は触れません。詳細を知りたいかたは、ネットで調べて下さい。

文在寅大統領が、反日や親北に地道をあげて、金融緩和策を実行せず、韓国の雇用を改善できない場合、韓国民は最初のうちは大人しいかもしれませんが、いずれ朴槿恵元大統領を退陣に追い込んだような、嵐が吹き荒れることになります。そうして、任期は全うできず、様々なスキャンダルが暴かれ、文在寅もスキャンダルに塗れて自滅することになるでしょう。

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2016年3月25日金曜日

安倍政権の最重要課題は「デフレ脱却」と再確認せよ! 見当外れな批判と政局予想にダマされてはいけない―【私の論評】10%増税見送りは当然、次の政治課題はマイナス3%の消費税導入によるデフレからの早期完全脱却(゚д゚)!

安倍政権の最重要課題は「デフレ脱却」と再確認せよ! 見当外れな批判と政局予想にダマされてはいけない


1年前から予見していた

来年4月の消費増税先送りと7月衆参ダブル選挙への流れが加速している。「増税先送りでダブル選」予想を繰り返し公言してきた私としては、このテーマは「いまさら感」もある。ここでまた書くのは気が引けるが、政治観察論として見ると面白いので、おさらいしておこう。

私が初めて増税先送りとダブル選予想をメディアで話したのは、昨年8月21日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/44837)に書いたように、同7月12日放送のテレビ番組『そこまで言って委員会NP』である。

テレビだけだと証拠が残らない可能性があるので念のため、当時連載していた同17日発売の『週刊ポスト』コラム「長谷川幸洋の反主流派宣言」(http://www.news-postseven.com/archives/20150717_336635.html)にも書いておいた。

昨年7月といえば、安保関連法案をめぐって国会が大荒れで「再来年の増税がどうなるか」などマスコミはまったく注目していなかった時期だ。そんな中、なぜ私が「増税先送りでダブル選」と読んだかと言えば、景気の先行き不透明感が強まる一方、内閣支持率が低下していたからだ。

安倍晋三政権がもっとも注視しているのは、いつも景気動向である。

それは政権が成立して以来、変わらない。安保関連法案を「戦争法案」とレッテル張りしていた野党や左派マスコミは「安倍政権は戦争に夢中になっている」と勝手に思い込んでいるのだろうが、残念ながら、まったく勘違いだ。

当時もいまも変わらず、最優先の政策課題は「戦争」ではなく「デフレ脱却」である。「なんとか景気を良くしてデフレを脱却したい」と願っているのだ。

ここの理解を間違えると、政局の読み筋も間違える。それはそうだ。「首相が何を重視して政権を運営しているか」という出発点の理解がトンチンカンだったら、その先を読めるわけがない。それは当たり前なのに、野党も左派マスコミも大方の政治評論家たちもトンチンカンを続けている。

どうでもいい政局話に拘泥してはいけない

なぜそうなってしまうのか。それは結局、野党や左派マスコミ、政治評論家たち自身が「デフレを脱却しなければならない理由」と「どうしたらデフレを脱却できるか」を理解していないからだ。そもそも政権の出発点にある政治課題を根本から分かっていないのである。

それは彼らの言動を見ていれば分かる。野党や左派マスコミは「景気を良くしたい」と心底から思っていない。彼らが声高に唱えているのは、景気回復ではなく「格差是正」である。

だから安倍政権がどれだけ真剣に景気回復を考えているかを理解できないし、理解しようともしていない。何をしてもケチをつけるだけだ。その結果、野党や左派マスコミが政局見通しを誤っても、それは自分に跳ね返ってくるだけだから、それも良しとしよう。

政治評論家たちに至っては景気も格差是正も時々、思い出したように言葉の端に付け足すくらいで、夢中になって追っかけているのは権力闘争の行方である。

そうは言っても、野党が与党を転落寸前まで追い詰めた局面はないから、首相官邸内で「官房長官がどうした」とか「内輪喧嘩が始まった」とか、どうでもいいようなゴミ話を知ったかぶりして喋っている。そんな調子で大局観をもって政権運営を見通せるわけがない。彼らは見通しを喋るのを商売にしているのだから、罪が深い。

話を戻そう。昨年7月には景気に暗雲が垂れ込めていた。

それは街角のタクシー運転手らに聞いた景気ウオッチャー調査に表れていたし、なんといっても中国・上海の株価暴落が始まっていた。政権支持率の低下に加えて、景気が危ういのに増税で参院選突入となれば、敗北は必至である。だから、増税先送りで政権選択選挙(=ダブル選)に持ち込むシナリオが浮上する(詳細は先のコラム参照)。

実際、翌8月には2015年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報で実質GDPが前期比年率1.6%減のマイナス成長に陥った。この時点で「景気がこの先、大きく落ち込む」ことが確実になった。不動産バブル崩壊に加えて、株価バブルも崩壊した中国が世界経済の足を引っ張るのは、もはや必至だったからだ。

いっそ5%に戻すべき

以来、15年12月4日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46714)、16年1月15日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47386)などテレビ、ラジオ番組も含め、私は終始一貫して増税先送りでダブル選見通しを公言してきた。

安倍政権が首相官邸で開いた国際金融経済分析会合でノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ、クルーグマン両教授が唱えたのも、べつに目新しい見方ではない。ようするに「世界経済が大低迷しているから増税は先送りすべきだ」という当たり前の話である。

それは中国経済の様子を見ていれば分かるし、3月4日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/48092)で書いたように、先の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の結論をみれば、各国が財政出動で景気テコ入れをしなければならない局面であるのは明白だった。

政府も3月の月例経済報告で景気判断を5ヵ月ぶりに下方修正した。

つまり、いまは増税どころか、実は減税が求められる局面という話である。経済記者は「財政出動」と聞くと、すぐ歳出拡大を思い浮かべるが、減税も財政政策の一環だ。それとも記者たちは「財政は歳出だけで、歳入は関係ない」と思っているのだろうか。

たぶん、そう思っているはずだ。私は「減税は税制の話であって、財政出動とは別」と訳知り顔で解説する経済記者に出会ったことがある。こういう記者は経済学の教科書を読んだことがなく、もっぱら財務官僚(それも主計局)の話を聞いて記事を書いているのだ。

記者たちは経済政策に対する理解がトンチンカンだから、補正予算を検討する一方で増税に執着する財務省のトンチンカンぶりが理解できないのである。

安倍首相の経済ブレーンである本田悦朗内閣官房参与は正しく7%への消費減税を唱えているが、私は中途半端な減税ではなく、いっそ5%に戻すべきだと思っている。そういう立場からみると、両教授が増税延期を唱えたのは、実は控えめすぎるくらいである。

相変わらずピンぼけの野党
さて増税先送りとなれば、ダブル選は必至だ。それは「野党がだらしなくて政権側の勝利が確実だから」というような、そこらの政治評論家が言いそうな理由からではない。衆院を解散してもう一度、国民に信を問わねばならない必然性があるからだ。

安倍首相は14年11月の衆院解散に際して「リーマンショック級の異変がない限り、17年4月に消費税を10%に増税する」と国民に約束した。

いま中国のバブル崩壊に端を発した世界経済の低迷はリーマンショックを上回る可能性さえあるから、増税先送りは適切である。ただし、そうだとしても「先送りの判断でいいかどうか」再び国民の声を聞くのは、政治的にまったく正統である。

国民生活に大きな影響を及ぼす増税の是非をめぐって国民の声を聞く。それが衆院解散の大義でなくて、なんなのか。安倍政権は増税断行を強く示唆していたのだから、むしろ解散しなかったら、国民置いてきぼりの政治判断になってしまう。

野党はここへきて増税反対を言っている。野党が反対する増税を、その通り政権が先送りするのだから、増税先送りはもはや与野党の対立軸にならない。すると、ダブル選の与野党対立軸は何になるか。あるとすれば、例の「戦争法反対」くらいだろう。

そうなると、北朝鮮が核とミサイル実験を繰り返し、南シナ海や尖閣諸島で中国の脅威が強まる中「戦争法反対」では、野党のピンぼけぶりが一層、鮮明になるだけだ。

せめてノーベル賞の教授たちが増税延期を言う前に「減税が必要だ!」とでも言っておけば、経済政策で巻き返すチャンスがあったかもしれない。だが、それもいまとなっては手遅れだ。いまから減税を言い出せば「このコラムを読んだから」とバレてしまうに違いない。かくて、安倍政権はダブル選に突き進む。

■長谷川 幸洋

【私の論評】10%増税見送りは当然、次の政治課題はマイナス3%の消費税導入によるデフレからの早期完全脱却(゚д゚)!

10%増税など実施すれば、安倍政権は崩壊します。経済が理解できていない、与野党の政治家は、増税で経済が悪化したのではなく、アベノミクスはそもそも失敗だと思い込むか、政治的駆け引きのための道具にして、与党議員は安倍おろしに奔走し、野党はここぞとばかり、政権交代への橋頭堡をつくるため奔走することになります。

この奔走が激化し、いずれにせよ、安倍政権は崩壊し、安倍政権以外の政権ができあがります。しかし、そうなっても、次の総理大臣が経済を全く理解していなければ、景気の低迷は続きます。

そうして、現在中国の経済は落ち込むのは目に見えていますし、それ以外にも原油価格が落ち込み、産油国である新興国の経済が落ち込んでいます。さらに、世界各地に地政学的リスクが存在し、いつ何がおこり、経済に悪影響を及ぼすかもしれない状況にあります。

最悪の場合、リーマン・ショック級もしくは、それ以上の経済の悪化を招くかもしれません。そうすると、日本は再度失われた20年に突入することになります。

そうなると、また、新たな政権は短期政権で終わります。これを3〜4回繰り返しても、経済を理解しない総理が擁立され続けたら、いずれ民主党への政権交代への麻生政権のようになり、民進党かあるいは、他の政党、もしくは野党を統合した連列政権に、結局政権交代されてしまい、自民党は下野することになります。

実際、リーマンショツクのあった、2008年前後には、短期政権が続きました。以下に歴代の総理大臣の在任期間を含む表を掲載します。


しかし、その後の野党も経済を理解していないので、これも3年続けば良いくらいで、また自民党に政権交代することになります。

しかし、それでも経済を理解しない人間が、総理大臣になれば、また先の繰り返しで、数ヶ月から長くて1年少しくらいのスパンでしかもたない政権が続くことになります、そうして、3年前後で政権交代が続くことになります。

こんなことを20年も繰り返していれば、政治はさらに腐敗し劣化し、経済などを含む国力は地に落ち、すぐに日本が破綻するということはないでしょうが、いずれ日本も先進国から発展途上国にまで落ち込んだ、今日のアルゼンチンのようになることでしょう。

このブログに以前掲載したように、 アルゼンチンと日本に関しては、1971年にノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの経済学者・統計学者サイモン・グズネッツーは以下のように語っています。

サイモン・クズネッツ
「世界には4つの国しかない。 先進国と途上国、そして、日本とアルゼンチンである」1900年初頭、アルゼンチンは黄金期を迎えていました。世界を制するのはアメリカかアルゼンチンか。そう言われるほどの国力を誇っていたのです。

実際、その当時の国民1人あたりのGDPは、およそ2750ドル。同じ時期の日本は1130ドルでしたから、日本の2倍以上の経済力があったことになります。

この関係が逆転したのは、1967年のこと。高度経済成長に沸く日本、そして停滞・後退を始めたアルゼンチン。

戦後の混乱から、奇跡的な発展を遂げた日本は、資源がほとんどない小国でありながら先進国の仲間入りを果たしました。一方アルゼンチンは、豊かな資源がありながら、工業化に失敗し、衰退しました。

途上国から先進国になった日本と、先進国から途上国になったアルゼンチン。どちらの事例も非常に稀なことであり、それをもってグズネッツは前述の言葉で世界には4種類の国があると説明したのです。

しかし、日本が先に掲載したように、10%増税などという愚かな政策を実施した場合、日本は数十年後にそれこそ、アルゼンチンのように、先進国から発展途上国に仲間入りすることになりかねません。

日本も、アルゼンチンのようにアルゼンチン・タンゴを踊るようになってしまうかもしれません。

そんなことにならないため、10%増税阻止はもう規定事実であたり、当然のことであるという認識を持つべきです。そうして、安倍総理はそのような認識でいることでしょう。それは、以下の橋本政権と、現在の安倍政権の比較をみても容易に理解できることです。

安倍内閣と橋本内閣の比較

しかし、8%増税でも経済が悪化したわけですから、当然のことながら、消費税を増税前の5%にするという考え方が出てくるのは当然のことです。

今後の政治課題は、10%増税を見送るのは当然のこととして、消費税減税をするかどうかになることでしょう。

消費税を5%に減税するという考え方は、長谷川 幸洋氏のオリジナルのように掲載されていますが、そうではありません。私の知る限りでも、評論家で経済アナリストと自称しておられる、森永卓郎氏も提言していました。

その他、経済学者の田中秀臣氏も、経済アナリストの中野剛志氏もそのように提言していました。

私はさらにもっと過激な提言をしたいと思います。

上のチャートに掲載したように、橋本内閣で日本で初の3%増税が導入されました。チャートにもあるように、橋本内閣は増税の半年後に支持率が急落し、2年半で退陣ということになりました。なぜ、そのようなことになったかといえば、増税後経済が低迷したからです。

そうして、橋本龍太郎氏は後に、3%増税は失敗であったことを認め、国民に謝罪しました。

そもそも、3%増税が失敗だったのです。経済が良くないときに増税して失敗するのは当然でした。橋本内閣は、増税ではなく減税をすれば良かったのです。できれば、3%減税をして、その時に同時に金融緩和を実行すればよかったのです。そうすれば、橋本政権はもっと長期政権になった可能性もあります。いずにせよ、この増税から日本の経済は低迷して、後に失われた20年と呼ばれることとなりました。

さて、ここから、私の提言です。

そもそも、3%増税で橋本政権は失敗して、その後は、5%増税、8%増税がなされて、それがことごとく失敗しています。であれば、消費税そのものをなくしてしまうか、本来橋本政権で実施すべきであった減税を実施するべきです。

そうして、ここからが私の提言です。まずは、消費税そのものを完璧になくすのです。5%どころか、0%にするのです。しかし、これでは、橋本政権がすべきだった減税という政策を実施するには至りません。

そうです。橋本政権が実施すべきだった、減税政策を現在実行するのです。そうです、マイナス金利ならぬ、マイナス消費税を導入するのです。

具体的には、マイナス3%減税を導入するのです。お客様が小売店で、100円の買い物をした場合、マイナス3%の消費税ですから、お客様から商品の代金として、100円を頂いたら、3円をお客様に返却するのです。

ただし、そのようなことは面倒でしょうから、現実的には、正札に100円と書かれている商品を売るなら、最初から97円で売るのです。これで、マイナス3%増税ができます。しかも、何も面倒な手続きがいらず、店頭ですぐにそれができます。

プラスの消費税だと、お店側では、いちいち計算をして、納税するという事務作業が必要です。積極財政にもいろいろあります、たとえば給付金もそうですが、これだと給付金のための役所の手続きが結構煩雑です。

しかし、マイナス金利の場合は、何も煩雑な手続きはいらず、電卓やレジで、3%を代金から引くようにする表示ができれば、すぐに実行可能です。

そうして、その効果は凄まじいものがあると思います。これを実行しつつ、追加金融緩和も実施します。

これだと、かんり短期間に日本経済は、デフレから完全脱却し、また成長軌道に戻り、失われた20年のマイナスを取り戻すことができます。

無論いつまでもこれを続けるわけにはいかないと思います。これを続ければ、当然のことながらインフレが加熱します。そうなった場合は、まずは金融緩和をやめ、次に緩やかな金融引き締めを次に、マイナス消費税のとりやめ、その次にプラス消費税の導入などと段階を踏んで実行すると良いと思います。

そうして、各々の施策を実施するための経済状況の目安を最初から設置しておき、順次実行していくと良いと思います。

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【関連図書】

結局のところ、日本の政治は官僚特に財務官僚が主導しているところがまだまだ大きいです。官僚が政治に関与することは一概に悪いことではありませんが、意思決定はその時々の空気に流されることなく政治家、政府が地頭を使って行うべきものです。それすらも、官僚に譲ってしまえば、民主主義は成り立ちません。それを実感していただける三冊の書籍を以下にチョイスさせていただきこました。

総理の実力 官僚の支配 ─教科書には書かれていない「政治のルール」─
倉山 満 
TAC出版 (2015-07-15)
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官愚の国 日本を不幸にする「霞が関」の正体 (祥伝社黄金文庫)
高橋 洋一
祥伝社 (2014-06-12)
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「空気」の研究
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