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2020年7月18日土曜日

米、中国共産党員の渡航禁止を検討! ハイテク排除、ハリウッドの対中協力も非難 識者「習政権への宣戦布告」— 【私の論評】中国は超大国になるために海洋進出を諦めるかもしれないが、それでも油断は禁物!(◎_◎;)


米、中国共産党員の渡航禁止を検討! ハイテク排除、ハリウッドの対中協力も非難 識者「習政権への宣戦布告」

トランプ氏(写真)は習氏の入国も認めない?
 米国の対中「宣戦布告」なのか。ドナルド・トランプ政権は、全ての中国共産党員と家族による米国への渡航禁止を検討していると米メディアが報じた。8月には通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など中国企業5社の製品を使う企業が米政府と取引することを禁じる法律も施行される。米中対立は全面戦争状態に突入しそうだ。
 ロイター通信は関係筋の話として、中国共産党員と家族の渡航禁止について、政府高官が大統領令の草案を準備し始めたと報じた。検討は初期段階で、トランプ大統領にはまだ諮られていないというが、複数の連邦機関が関与し、党員の子供が米国の大学に在籍することを拒否するかどうかも検討されているという。

 米国の大学に留学する中国共産党幹部の子供も多く、実現すれば影響は小さくない。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は、「中国共産党員は約9000万人とされ、配偶者や子息を合わせると数億人になるのではないか。いったん入党すれば離党しづらく、世界中に党員は存在する。中には党の任務を負う人もいると考えられ、中国本土だけの問題ではないだろう」とみる。

 一方、米政府が取引停止の対象としたのは、ファーウェイのほか、中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の5社の製品。

 官報に8月13日から実施する規則を掲載。施行されれば、原則として対象企業の製品やサービスを利用する企業との新規契約や契約更新も行わない。各社は米政府と中国企業のどちらと取引するのか選択を迫られる。

 中国に協力するハリウッドの映画業界や米IT企業にも注文を付けた。ウィリアム・バー司法長官は16日、ハリウッドにが興行収益のため中国当局を怒らせないよう「恒常的に自主検閲している」と指摘。中国のイメージを悪くするシーンを自ら削除することが横行していると説明し、「中国共産党の一大プロパガンダ作戦」に利用されていると懸念を示した。

 IT企業についてはグーグル、マイクロソフト、アップルなどが「中国の手先になっている」と主張した。

 人もモノも中国排除が進む。前出の石平氏は、「米国への留学生や共同研究者などを経た技術の流出もあるが、ハイテク競争の域を越え、党自体を否定することで、習近平政権への事実上の宣戦布告になる」と指摘した。
【私の論評】中国は超大国になるために海洋進出を諦めるかもしれないが、それでも油断は禁物!(◎_◎;)
最早、米国は宣戦布告をしたのも同様という石平氏の見解は、正しいと思います。米国は、このように様々な方策を講じて、米国内やインド太平洋地域から中国を排除し、中国を封じ込めようとしています。
これは、いずれ成功し、中国は、米国や他の国々によって封じ込められるのでしょうか。私は、そうではないと考えています。
その根拠になることが、米国のニュース・ウイーク紙日本版に掲載されています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで浮上する第2の道とは
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、中国が超大国になるための道筋は二つあると言います。

以下に一部を引用します。
1つは、アメリカの多くの戦略専門家が予測してきた道だ。この道を選んだ場合は、まず自国の周辺の西太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグローバルな超大国の座を目指すことになる。もう1つは、これとはまるで違う道だ。こちらは、戦略と地政学の歴史的法則に反するアプローチに思えるかもしれない。
まず、最初の道筋は、時刻周辺の南太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグーロバルな超大国の道を目指すことです。

これは、困難が伴うとこの記事にも書かれています。なぜなら、最大の障害として日本が立ちはだかっているからです。

中国にとっては、日本は単独でも脅威です。先日中国の潜水艦が日本の接続領域を潜航したのですが、これはあっさりと日本に発見され、河野防衛長官がその事実を大々的に発表しました。その内容は、日本のマスコミでも公表されました。

中国としては、自国の最新鋭原潜が日本や米国に探知されるか否かを試しに、日本の接続領域に潜航させて見たのでしょうが、あっさりと発見されてしまったわけです。

これは、日本のマスコミはいずれも公表しなかったのですが、中国の潜水艦は未だ、日本に簡単に発見されてしまい、日本の敵ではないことを暴露されてしまったわけです。

これに対して、中国は日米の潜水艦の行動をいまだに探知できないようです。これは、機密事項なので、公には公表されませんが、おそらく日米の潜水艦は、中国側に発見されず、自由に南シナ海は無論のこと、東シナ海や黄海あたりを潜航していると思います。

中国が日米の潜水艦の行動を探知できるなら、今まで一度くらいは、日本の高野防衛大臣が行なったように、日米の潜水艦の行動を公表するに違いありません。そうすることによって、中国として、対潜哨戒能力の技術が向上したことをアピールするとともに、日米に対する牽制ができます。

これは、日本単独でも、日本の潜水艦は中国の潜水艦を含む艦艇を、中国に発見されることなく、探知して撃沈できることを示します。これに対して、中国海軍は日本の潜水艦に撃沈は愚か、どこにいるかさえ把握できないのです。

これでは、最初から勝負が決まったようなものです。これでは、尖閣上陸も恐ろしくてできないはずです。無論、私自身は、このブログでも以前から指摘しているように、中国の艦艇の尖閣での狼藉を放置せよと言って訳ではありませんが、それにしても、中国は今のところ、日米の潜水艦が障害となって、未だ尖閣諸島に上陸できないばかりか、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できないでいます。

中国海軍のロードマップでは、今年中には、第二列島線まで、確保する予定なのですが、今のところ、全く不可能な状態です。さらには、英海軍がインド太平洋地域に空母「クリーンエリザベス」を派遣するとの報道もあり、中国海軍のロードマップはますます絵に描いた餅に近づいてきました。


中国がこのように海で苦戦するのは、やはり自らは未だシーパワー国にはなり切れておらず、ランドパワー国でもあるにも関わらず、海洋進出をしようとしているからでしょう。

これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾問題だけでない中国の南太平洋進出―【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!
詳細は、この記事をごいただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。
劉華清(中国海軍の父)
事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。
中国の海洋進出には、日本が巨大な壁として立ちはだかっているだけではなく、シーパワー国の雄である、米国の軍隊が駐留しています。さらには、中国の香港などでの横暴に、脅威を抱き、中国の海洋進出に脅威抱いたこれもシーパワー国である英国が、「空母クイーンエリザベス」を太平洋に常駐させる計画を立てています。

シーパワー国になることは、容易ではないのです。まずは、優れた海軍を持つには、資本の蓄積が必要です。資本があれば、艦艇は作れますが、それだけでは優れた艦艇は作れません。高度の技術が必要です。

高度な技術を用いて、優れた艦艇を多数作れるようになってもそれだけでは駄目です。今度は、優れた多数の艦艇を操るノウハウが欠かせません。そうなると、シーパワー国になるための敷居はかなり高いです。かつて、世界には英国だけがシーパワー国だった時期があり、その頃には日本も米国もランドパワー国だったのですが、数十年かけて、シーパワー国に変貌しました。

中国がこれから、本格的にシーパワー国になろうとすれば、少なくとも今後20年くらいはかかるでしょう。

そうして、今後ますます多くの国々がインド太平洋地域において、中国に対して反旗を翻することでしょう。そうなると、中国としては、インド太平洋地区を治めることは、ほとんど不可能といって良いです。

これでは、中国周辺の西太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグローバルな超大国の座を目指すことはほぼ不可能です。

では、先ほどのニューズウィークの記事に出てきた、中国が超大国になるもう一つの道とはどのようなものなのでしょうか。

その第二の道は、中国が自国の東に位置する西太平洋ではなく、自国の西に目を向けることです。ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立し、それと並行して国際機関で中心的な地位を占めることを目指すのです。

先のニューヨークタイムズの記事によれば、このアプローチの土台を成すのは、世界のリーダーになるためには、軍事力よりも経済力と技術力のほうがはるかに重要だという認識です。そうした発想に立てば、東アジアに勢力圏を築くことは、グローバルな超大国になるための前提条件ではありません。西太平洋では軍事的バランスを維持するだけでよく、軍事以外の力を使って世界に君臨することを目指せば良いということになります

元々、ランドパワー国である、中国がこの道筋を取ろうと方針転換をすれば、これは今よりも大きな脅威になります。

軍事力以外の力を使って君臨することを目指すにしても、やはり軍事力は重要です。それに関しては、すでにミサイルや核兵器も開発してきた中国ですから、それなりのノウハウも持っており、ランドパワー国としての技術力やノウハウを開発することは、中国に取っては、シーパワー国を目指すよりは、遥かに簡単です。

このブログでも以前示したように、中共は、南シナ海、東シナ海、太平洋、アフリカ、EU、中東などに手を出しつつ、ロシア、インド、その他の国々との長大な国境線を守備しつつ、米国と対峙して、軍事力、経済力、技術力を分散させています。

かつてのソ連も、世界中至る所で存在感を増そうとし、それだけでなく、米国との軍拡競争・宇宙開発競争でさらに力を分散しました。当時は米国も同じように力を分散したのですが、それでも米国の方が、国力がはるかに優っていたため、結局ソ連は体力勝負に負け崩壊しました。

今日、中共は、習近平とは対照的な、物事に優先順位をつけて実行することが習慣となっているトランプ氏という実務家と対峙しています。今のままだと、中国も同じ運命を辿りそうです。

このように、米国と比較すると、今のところ世界中で攻勢に出ているように見える、中国は超大国になるための2つの道の両方を同時試そうとしているようですが、いずれ中国は海洋進出の拡大を諦めて、ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立し、それと並行して国際機関で中心的な地位を占めることを目指すことに、集中するかもしれません。

そうなるとかなり厄介です。ただし、それ以前に中国の経済か政治制度が揺らいだり、競争相手の国々が賢明な対応を取れば、どちらの道もうまくいかない可能性も大いにあります。

米国などの自由主義陣営は、そのことも考慮に入れて、中国と対峙すべきでしょう。そうして、今はインド太平洋地域を最重要点として、中国と対峙していくべきでしょう。そのようにすれば、当面中国はますます、シーパワー国を目指して、多大な経費や労力を無駄に浪費することでしょう。

そうすれば、中国がランドパワーを強化し、ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立しょうとしても、疲弊してうまく行かなくなる可能性が大です。

ただ、我々が気をつけなければならないのは、中国が早めに海洋進出を諦めたように見えた場合、それは自由主義陣営に敗北したためとすぐに判断すべきではないということです。

もしかすると、それは、中国がユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保証・経済秩序を確立することに転じたサインかもしれないということです。

もし中国がそれに転じたとしても、現在の失敗続きで懲りた中国は、鄧小平が残した「韜光養晦(とうこうようかい)」という言葉を思い出し、今度は細心を注意をしながら、自由主義陣営になるべく気がつかれずに、行動するようになるかもしれません。



ユーラシア大陸の、ロシアや中央アジアの国々に対して、過去の強権的なやり方ではなく、もっとスマートな形で、自らの経済圏に取り込むように働きかけるようになるかも知れません。

気がついたときには、ヨーロッパ、ロシア、中央アジア、インドなどの地域が実質的に中国に飲み込まれているかもしれません。これもかなり困難なことですが、太平洋のハワイの西側まで中国の海とすることよりは、簡単です。

日米を含めた自由主義陣営は、過去には中国が経済成長して豊かになれば、まともになるだろ等として、過去には中国の暴挙を許容してきました。それが今日の危機を招きました。

中国が第二の道を選んだ場合にも、自由主義陣営も過去の失敗を繰り返すことなく、早めにその芽を積むべきです。どのように外見や態度を変えて見せたところで、現在の中共の本質は変わりません。中共が消えるまで、戦いは続くと見るべきです。

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2020年5月26日火曜日

香港は米中通貨戦争の主戦場 習政権、強権支配は経済自爆への引き金 ―【私の論評】国際金融市場をカジノにたとえると、中国は1プレイヤーに過ぎないが、米国は胴元(゚д゚)!

ビジネスアイコラム
香港は米中通貨戦争の主戦場 習政権、強権支配は経済自爆への引き金 



   米中対立はコロナを挟んで冷戦を通り越して熱戦に転じかねない。1月に米中貿易第1段階合意で米中貿易戦争が休止となったのもつかの間、新型コロナウイルス発生時の情報を隠蔽(いんぺい)した中国の習近平政権に対するトランプ米政権の怒りが爆発している。対する北京の方は激しく反発すると同時に、香港に対して国家安全法制定を強要して、「一国二制度」を骨抜きにする挙に出ている。ワシントンはこれに対し、対中制裁を辞さない構えだ。

 こうした一連の米中激突の表層は政治劇だが、根底は米中通貨戦争である。トランプ政権は2018年に米中貿易戦争を仕掛けて以来、中国にハイテクと並んでドルを渡さない決意を日々刻々強めている。ドル依存こそは北京の最大の弱みであり、習政権はだからこそドル流入の玄関である香港を強権支配しようとする。それが「香港国家安全法」の真の意味である。

 だが、トランプ政権には切り札がある。ワシントンが昨秋制定した「香港人権民主法」である。トランプ氏は同法によりいつでも習氏の喉元に刃を突き付けられる。

 同法は、香港が中国政府から十分に独立した立場にあり、優遇措置適用に値するかを国務長官が毎年評価するよう義務付けている。米国は、香港で人権侵害を行った個人に対する制裁や渡航制限を課すことができる、というのが一般的に報じられている概要だ。

 同法の条文に目をこらすと、メガトン級破壊兵器の起爆装置が仕込まれていることに気付く。起爆装置とは「1992年香港政策法」修正条項である。香港政策法とは97年7月の英国による香港返還に合わせて92年に成立した米国法で、香港の高度な自治の維持を条件に、香港に対する貿易や金融の特別優遇措置を対中国政策とは切り離して適用することになっている。

 優遇措置は通常の国・地域向けの場合、貿易、投資、人的交流が柱になり、香港も例外ではないのだが、ただ一つ、香港特有の項目がある。それは「香港ドルと米ドルの自由な交換を認める」となっていることだ。香港人権民主法に関連付けた「92年香港政策法」の修正条項によって、米政府は香港の自治、人権・民主主義の状況によっては「通貨交換を含む米国と香港間の公的取り決め」も見直し対象にできるようになった。

米ドルに対するカレンシーボード制を採用している香港ドル

 香港の通貨金融制度は「カレンシーボード」で、香港金融管理局が香港ドルの対米ドル・レートを固定し、英国系の香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行と中国国有商業銀行の中国銀行の3行が手持ちの米ドル資産に見合う香港ドルを発行する。つまり、香港ドルを米ドルに自由に交換できることが前提となっている。

 中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は香港経由である。香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。香港に拠点を置く日米欧の企業、銀行にとっても打撃になるが、同時にそれは習政権にとっては、中国経済自爆の引き金になりかねない。

 習政権が香港国家安全法を強行するかどうかは米中通貨戦争ばかりでなく、自国経済、さらに習近平体制の命運に関わるだろう。(産経新聞特別記者 田村秀男)

【私の論評】国際金融市場をカジノにたとえると、中国は1プレイヤーに過ぎないが、米国は胴元(゚д゚)!

中国は単純な理屈を理解していないようです。国際金融市場をカジノにたとえると、米国はカジノのハウス側であり、中国は単なるプレイヤーに過ぎないです。いくら金を持っていたとしても、ハウスのルールは変えられません。ハウス側である米国は、中国を出禁にできます。

カジノでいえば、中国は壱プレイヤーにすぎないのだが、米国は胴元である

無論ハウス側も、自分だけが儲かるようなことをしていれば、お客は集まりまりません。お客にとって、信頼できる、まともな規則や規制や管理手法でカジノを運営しなければならくなります。

現在の国際金融市場には、多くの国々が参加しているわけですから、カジノでいえば、たくさんの客が集まる優良カジノということができると思います。

だから、米国が中国に注文をつけるのも、米国のみの利益を代表しているのではなく、世界中の多くの国々を代表して言っているわけです。無論、イランや北朝鮮などの国々はその中には入らないでしょうが、多くのまともな国々の考えは代表しています。そこを中国は勘違いしていると思います。

かといって、中国が今更新たなカジノ(国際金融市場を作ろうとしても)を作ろうとしても、そのようなノウハウもないし信用もないわけです。もし、中国が独自の国際金融市場をつくったとしても、加入するのは中国、北朝鮮、イラン、その他アフリカや経済的には無価値な国々しかないでしょう。

ただし、中国の国際金融市場に入った国々でさえ、米国の国際金融市場も利用するでしょう。使い勝手の悪い、カジノからお客が抜け出すように、いずれ他の国も抜け出し、中国だけが残るかもしれません。

米国側は、場合によっては、香港ドルを紙くずにする可能性も出てきて、そうなれば、中国は破滅への一歩を踏み出すことになるわけです。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は24日、NBCテレビに出演し、香港の統制強化を定めた「国家安全法」が成立すれば、中国に制裁を科す可能性を示唆しました。

オブライエン米大統領補佐官

その上で「香港がアジアの金融センターとしてとどまると考えるのは難しい」と警告したました。

先程のカジノのたとえでいえば、香港はカジノで特別なお客として、自由に香港ドルをドルというチップに交換できたのですが、その特別待遇を剥奪されることもあり得る事態となったのです。

香港問題が米中対立の新たな火種に浮上しています。オブライエン氏は、昨年11月に成立した「香港人権・民主主義法」に基づく制裁を示唆した格好です。

同法は「一国二制度」に基づく香港の「高度な自治」が機能しているかどうか検証する年次報告書の提出を国務省に義務付けています。米国が香港に認めてきた関税などの優遇措置の是非を判断するほか、人権侵害に関わった中国当局者への制裁も可能にしました。

ドルと香港ドルが換金できなくなれば、人民元の価値もかなり落ちます。人民元は香港ドルに換金しないと他国から、輸入ができなくなります。

それでも中国は、香港に対して国家安全法制定を強要して、米国の怒りを買い、国際金融市場から放逐されたいのでしょうか。そうなれば、このブログでも何度か主張しているように、中国は石器時代に戻りかねないです。

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2020年2月3日月曜日

新型肺炎、中国の“衝撃”惨状 感染者「27万人以上」予測も…習政権は“隠蔽”に奔走、「国賓」来日に潜む危険 ―【私の論評】本来習近平自身が、延期等を打診してくるべき!日本に対する無礼の極み(゚д゚)!

中国発「新型肺炎」

習近平(左)と李克強(右)のコンビを信用できるのか

中国本土で、新型コロナウイルスによる肺炎が「パンデミック(感染爆発)」状態となっている。一日あたりの感染者増加は2000人以上。中国当局は「春節(旧正月)」の大型連休が明けた3日、さらなる感染拡大を防ぐため厳戒態勢を敷いている。こうしたなか、フィリピンで2日、新型肺炎で中国人男性が死亡したと発表された。世界保健機関(WHO)によると中国国外での死者は初めて。地球規模の混乱が続くなか、今年4月、天皇、皇后両陛下が接遇される「国賓」として、中国の習近平国家主席を迎えられるのか? 中国事情に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が、大手メディアが伝えない「衝撃の裏情報」に迫る緊急寄稿第2弾-。


 「2月4日には、新型ウイルスが発生した湖北省武漢市で13万人から27万人以上の感染者が予測される。ほかに最大規模の感染者が予想される中国の都市は、上海、北京、広州、重慶、成都だ」

 「飛行機での移動を通じて感染拡大の危険性が高い国や特別行政区は、タイと日本、台湾、香港、韓国である」

 これは、英国ランカスター大学と、同グラスゴー大学ウイルス研究センター、米国フロリダ大学の感染症生物学者の専門家が1月23日、今後の14日間の新型肺炎の流行予測として発表した内容である。

 武漢市からのチャーター機3機で日本に帰国した計565人の中に、感染者は8人いた。感染割合は1・5%弱となる。武漢市の人口は約1100万人なので、16万人以上が感染してもおかしくはない。

 しかも、中国政府が隠蔽に奔走していた間に、北京や上海はじめ中国全土にウイルスが拡散してしまった。英BBCは先月31日、「チベットでも感染者が確認されたことは、中国すべての地域にウイルスが到達したことを意味する」と報じた。

中国メディアによると、3日朝時点で、中国全土の死者は360人、感染者は1万6000人超という。感染拡大が加速するなか、習近平政権は「情報統制」にますます力を注いでいるように感じる。

 新華網によると、中国の巨大メッセージアプリ「WeChat(微信)」のセキュリティーセンターは先月25日、「新型肺炎に関する噂の特別管理公告」を発表した。「SNSでの伝達、伝聞の類の噂話は社会秩序を著しく乱すため、3年以下の懲役、拘束または管理対象とする。重大な結果を招く者は、3~7年以下の懲役に処せられる」という。

 さらに、李克強首相(中国共産党序列2位)をトップ(組長)とする、「アウトブレーク(集団発生)を防ぎ制御する領導小組(疫情防控領導小組)」が立ち上がった。宣伝担当の王滬寧・政治局常務委員(同5位)を副組長に、中央宣伝部部長、公安部部長など党幹部がメンバー入りした。

 これに対し、中国国内では「医師や学者など専門家がいない!」「人民の命は後回しか」「目的は人民の怒りの封じ込めと、情報漏洩(ろうえい)を防ぐことだ」との揶揄(やゆ)が飛んでいる。また、「これまで、複数の組長になってきた習主席が、責任を李首相に押し付けようとしている」との皮肉も聞こえる。

 混乱をよそに、中国各地からは「意を決した」人民によるさまざまな情報や写真、映像が拡散され続けている。

 武漢の協和病院では、1人の肺炎患者を治療したところ、14人の医療従事者が同時に感染したという。また、上海では先月末までに、市内201カ所の公園が閉鎖された。上海で最も有名な繁華街「南京路」が“無人状態”となっている写真も流出している。

 また、北京大学呼吸器科の主任医師が、中国中央電視台(CCTV)で「(新型肺炎の流行は)制御可能」「医師と看護師など医療現場での感染者はない」と語り、党幹部らと武漢市を訪れた後、自身の感染が発覚して隔離された、という話もある。「北京の病院は国家安全部(=情報機関)に管理され始めている」との情報もある。

 ロイター通信は、封鎖されて7日目の武漢市の様子を航空写真で公開した。中国メディアの一部は「死城(死んだ街)」と表現した。

 ■習主席「国賓」来日の危険度

 また、中国内外からは、「武漢市の海鮮市場からウイルス感染が広がったのではなく、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、エボラ出血熱といった危険な病原体を研究するために指定された中国唯一の研究室『武漢P4研究室』から生物化学兵器が漏れた」という説とともに、犯人捜しがヒートアップしている。

 情報が錯綜(さくそう)するなかで流れる「習政権は、昨秋から戦争の準備をしていた」とか、「9月には、すでに新型コロナウイルスが存在していた」という話も、フェイクとは言い切れなくなった。

 なぜなら、武漢天河国際空港の税関で「コロナウイルスの感染が1例検出された」という想定での緊急訓練活動が昨年9月18日に実施されたことを、湖北省の官製メディアが報じているからだ。

 さて、問題は日本だ。

 日中両政府は現在、習主席の4月上旬の「国賓」来日で調整している。実現すれば、習主席は中国から大勢の同行者とともに来日するが、その中に「自覚なき感染者」が含まれていないともかぎらない。

 国賓の場合、天皇、皇后両陛下による歓迎行事や会見、宮中晩さん会などが催される。両陛下や皇族の方々が、新型肺炎に感染しないと誰が保証できるのか。

 情報の「開示」どころか「隠蔽」に走る習政権のメンツを立てることが最優先事項なのか? 永田町が「国民の安全」と「国体の護持」について真剣に考えているとは到底思えない。

【私の論評】本来習近平自身が、延期等を打診してくるべき!日本に対する無礼の極み(゚д゚)!

上の記事にもある、新型コロナウィルスがHIVからデザインされた生物兵器というのはインドの研究チームの早とちりのようです。新型の遺伝子はSARSなどと96%一致。HIVと同じとされている部分は他の生物にもたくさん存在する配列のようです。そもそも、新型コロナウィルスには、遺伝子編集された痕跡がないとのことで、生物兵器説はないと見て良いでしょう。

それに、生物兵器であれば、ウィルスの蔓延を防いだり、治療方法も開発してあるでしょうから、発症・感染の初期にはやめに対策を打てたはずですから、現状をみていると、そのようなことはないようなので、こちらの観点からも、やはり生物兵器説はあり得ないと断じて良いでしょう。この点以外は、冒頭の記事の内容は、概ね信憑性があるものと思います。



ところで、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で3日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。2日にも確認しており、尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは2日連続です。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。領海に近づかないよう巡視船が警告しました。

中国は新型肺炎で、大変なはずですが、そのような大変な時にもかかわらず、今年に入ってから皆勤賞です。1日も欠かさず「毎日」来ています。今日で28日連続です。

自民党幹事長二階氏が「親戚の人が病になったとという思い」とマスク100万枚送った国からの仕打ちがこれです。馬鹿馬鹿しくてもはや腹も立たないです。政治家の言葉はまさに政治的駆け引きの道具ですから、時には歯の浮くお世辞も必要ですが、時機もわからないご老体には無理な話だったようです。二階幹事長の勇退と習近平主席の国賓招聘中止をあわせて求めたいです。


そうして、中国外務省は1日、春に予定する習近平国家主席の国賓訪日に向けた準備を日本側と継続する考えを示し、新型肺炎の拡大やそれを受けた日本側の渡航制限などの対応は訪日計画に影響しないとの見解を示しました。
日本側と密接に連絡を取り合っていると強調。「重要な外交議題と日程を順調に進める」ため、日本側と努力を続けるとしました。
日本政府は中国湖北省から新型肺炎が拡大したことを受け、14日以内に湖北省に滞在歴がある外国人の入国拒否を開始。同省を除く中国全土の感染症危険情報を「不要不急の渡航の自粛」を求めるレベル2に引き上げました。
コロナウイルスを蔓延する最中に、中国ではH5N1鳥インフルエンザが同時に爆発的広げてます。ウイルスが高伝染性と発表されています。

このような状況では、本来ならば、中国側から訪問の延期などを打診するのが普通だと思います。逆の立場になったと考えれば、すぐにわかります。安倍総理が4月に中国訪問を予定していて、日本で大規模な伝染病が発生した場合、普通は日本側から延期を申しでるなどのことをするはずです。

これは、日本に限らず、他の先進国が同じ陽な立場にたった場合、同じようなことをするでしょう。少なくも現時点では様子見ということになるでしょう。

それだけ、習近平とその取り巻きには、世間一般常識がないということだと思います。まさに日本に対する無礼の極みです。国内で、自分たちの思い通りにゴリ押しをしてきたので、外国にまでそれが効くと勘違いしている大馬鹿共の集まりです。

非常識な習近平は中国内でもかなり浮いた存在になっているようです。このままだと、習近平国賓招待される前に、習近平が失脚する可能性が高くなりました。

共産党内部ではコロナウイルスのトラブルに習近平の無能を責めたてられるでしょう。もし安倍首相が習近平招待を盛大にアピールする最中に習近平が失脚したとしたら、チャイナマネーに理性を失った愚かな日本として、世界の物笑いの種になるでしょう。

ところで、安倍総理は国会で新型コロナウイルスの感染拡大を受け台湾のWHO参加の必要性を強調しました。政治的な立場で排除しては、地域全体を含めた健康維持、感染の防止は難しいとさらっと爆弾発言をしました。

   安倍首相は30日、新型コロナウイルスの感染例が増加し
   ていることを受けて、台湾のWHO加盟を支持した

これは、明らかに中共を念頭に置いており、安倍総理個人としては習近平の国賓招待に積極的ではないとのほのめかしとも受け取れる発言です。呼びたい真犯人は、やはり二階幹事長でしょうか。安倍総理としては、党内政治力学で、二階氏を無下に突き放すということもできないのでしょう。

日本の親中政治家にも、そろそろ目覚めていただきたいものです。米国ではもはや、政治的には、親中派の居場所はなくなりました。なぜそうなるのか、日本の親中政治家も勉強すべきです。そうでないと、彼らの居場所が日本でもなくなるでしょう。

しかし、そんなことは今では子供でも理解できることだと思います。国内外で、非道の限りをつくし、反対するものは、暴力で弾圧し、WTOやWHOなどのような国際組織においても札束にものをいわせ、我が物がを振る舞い、他国の領土にも平気で侵略して我が物にし、挙げ句の果てに世界唯一の超大国である米国の怒りを買い、米国は中国が体制を変えるか、経済的に無意味な存在になるまで、対中冷戦を継続することでしょう。

これは、どう考えても、現在の中国の体制には、将来はないと見るのが、当たり前でしょう。それでも、中国、中国というのは、すでに妄想の中に入り込んでしまっているのかもしれません。

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新型肺炎は、中国共産党支配の「終わりの始まり」かもしれない―【私の論評】全体主義国家が強大になっても、様々な異変でそのほころびを露呈し結局滅ぶ(゚д゚)!

2018年7月16日月曜日

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ―【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ

2016年上海では習近平のポスターを張り巡らした家屋が出現・・・・・ 写真はブログ管理人挿入

中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。

「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。

同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に「今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない」と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた。

【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

2016年には、上海で強制解体に必死の抵抗を試みた家主が、建物全面に「習近平ポスター」を貼りまくるという事件が発生しました。それがこのブログ冒頭の記事の写真です。

習近平主席の写真やポスターなど無断で引き剥がしたりすれば、不敬罪にあたるとして、家主はこれで、強制撤去を免れると目論んだのですが、呆気なく 十数人の作業員が動員されポスターは引き剥がされてしまいました。

今月の、7月4日の午前6時ごろ、中国の湖南省出身、現在は上海に住むとされる女性、董瑶琼さん、29歳が、習近平国家首席を支持しないという内容の動画を生配信し、習近平のポスターに墨をかけるパフォーマンスを行いました。

董瑶琼さんとされる写真

動画の中で、董さんは「私は、習近平とその独裁主義に反対です」と発言。動画は、「みなさん、私は彼の写真に墨をかけました」「彼が私をどうするかみものです」と続き、まるで習近平を挑発するような内容でした。習近平と中国共産党を批判した約2分のこの動画はTwitterで大拡散され、中国の人気メッセージアプリWeChatでも、多くシェアされました。

同じく4日の昼、中国の活動家・華涌さんが、董さんの動画をシェアし、彼女の安否を気遣うツイートをしています。以下にそのツイートを掲載します。

私自身は、このような事件があった後に、「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」という公安当局の緊急通知が出回ったので、中国共産党当局としては、董瑶琼さんのような行為が全国各地で頻発することを懸念して、このような通知を出したのではないかと思います。

ただし、実際出してみたもの、これも異常といえば異常です。それこそ、習近平の権威を貶めることにもなりかねません。だから結局引っ込めたのでしょう。その事実を中国共産党内の習近平反対派閥に利用されたのだと思います。

このようなことは、中国では珍しくはありません。たとえば、2010年あたりには、中国政府は反日デモを奨励していました。デモを起こしても、「反日デモ」であれば、「反日無罪」ともいわれたように、あまり厳しく取締りなど行いませんでした。

それどころか、その後は政府のほうが、反日を煽って多くの人々を巻き込んで大規模デモを実施させるという、いわゆる官製反日デモが繰り広げられました。

ところが、2011年から12年かけては、反日デモが起きると、いつの間にか反政府デモになったり、反日デモとして届け出されたデモが、実はそれを隠れ蓑として本当は反政府デモだったという事例も多数でたため、政府は反日デモを強力に取り締まるようになり、2013年あたりからは、全くなくなりました。

2011年の中国での大規模反日デモ

中国共産党中央委員会は2018年2月25日、国家主席の2期10年の任期を撤廃する憲法改正案を発表しました。3月5日から始まった全国人民代表大会(全人代)で憲法改正が成立し、習近平(シー・チンピン)主席は3期目以降も現職にとどまれることになりました

この動きが歴史的に重要なのは、習の終身統治が第二次大戦後の世界秩序を葬り去る可能性があるからです。市場資本主義、民主主義、個人の権利を中心とした政治制度など欧米の価値観に基づく秩序が失われかねないです。

これからは中国が世界のリーダーになると、習は明言しています。つまり、個人より国家を優先する「中国モデル」の独裁的統治が、過去75年間近く各国の統治の模範として、また国際的な枠組みをつくる上でも、重要な役割を果たしてきた欧米型民主主義に取って代わろうとしているかもしれないのです。

中国が影響力を増す一方で、アメリカはドナルド・トランプ大統領は、中国の勝手はさせじと、中国に対して貿易戦争を挑んでいます。そうして、当の中国は未だトランプ氏の本気度を測りかねているようです。

「アジア型」開発モデルについては、78年の鄧小平(トン・シアオピン)の改革開放以降、さまざまに論じられてきました。鄧の市場経済導入も、リー・クアンユーの指導下でのシンガポールの経済成長も、独裁的な統治と市場ベースの経済開発を組み合わせた、いわゆる「開発独裁」です。

政治活動の自由や個人の権利が制限されても、経済が成長していれば、人々は政府を支持し、社会の現状に満足するといわれています。特にアジア人はその傾向が顕著だとの説もあります。

開発独裁は中国古来の儒教文化とも親和性が高いです。儒教の伝統では政治は政治家の専売特許で、民が口出しすべきものではありません。政府は自分たちがつくったり、改革したりするものではなく、天候のようにただ受け入れ、耐えるものとされてきました。

結局のところ長年にわたる共産党の支配をもってしても、中国に深く根付いた儒教の伝統はなくせませんでした。実際、今の中国の政治と経済にとって、共産主義思想は人民服のように時代錯誤なものにすぎません。共産党政権ですら、儒教の伝統を統治に取り入れています。

朝服は古代中国の役人が朝廷に出仕する時の服装。冠は地位を表す
大事なもの、笏(しゃく)はメモとして必要なアイテムだった。

古代高級官僚の朝服をまとったナショナリズムは独裁体制を支える柱であり、習はかつての皇帝のように絶対的な権限を掌中にしようとしています。

毛沢東時代に個人崇拝が進み、1人の人間に権力が集中し過ぎた苦い経験から、中国は2期10年の主席任期を設けました。今それを捨て去った理由については、2つの可能性が考えられます。

1つは、習への権力集中は、習政権の弱さの裏返しだという解釈です。中国当局は厳しいメディア規制を敷いていますが、中国全土で毎年、数十万件ものデモが起きていることは隠し切れないです。人々は汚職や環境汚染、地方政府の怠慢に怒り、抗議の声を上げています。

一党独裁の中国共産党には、政府批判を建設的な声と受け止める発想がありません。そのため抗議の声が上がれば反射的にそれを圧殺しようとします。そうしながらも彼らは、自分たちの支配は見掛けよりはるかに不安定で弱いのではないかとビクビクしています。

中国の政府の政治家なるものは、民主的な選挙で選ばれたわけではなく、政権の統治の正統性に疑問が付きまとうことも、彼らの不安を駆り立てています。

習政権は「中華帝国の再興」を掲げ、ナショナリズムをあおってきましたが、その目的は国民に誇りを持たせ、愛国心を育てることだけではありません。政権の正統性をアピールし、人々の不満を抑え付ける狙いがあります。

もう1つの可能性として、2期10年ルールの変更は個人的な傲慢さの表れとも取れます。78年以降、中国は政治、経済、社会、軍事と、あらゆる面で驚異的に力を付け、人々の生活も豊かになり、国際社会でも大きな発言力を持つようになりました。

中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。この中国が主席の任期のルールをなぜ変更するのでしょうか。しかも、それによって中国の制度の欠陥がなくなるわけではありません。1人の人間に永続的な権力が与えられるだけです。

習自身が強権支配を求めたのなら、これはかなり危うい状況です。共産党のほかの指導者や官僚は国家ではなく、1人の男に忠誠を誓わなければ、その地位が危うくなります。つまり、国家の命運が1人の男に託されるということです。

しかし、仮に才覚ある人間であったとしても、一人の人間が国家を丸ごと背負うのは不可能です。しかも皇帝であっても人間は皆いつか死にます。いつか来るそのとき、権力をどう継承するのでしょうか。


羅貫中の肖像画
独裁国家では常に跡目争いが支配の弱体化を招いてきました。古代ローマ帝国も、羅貫中が『三国志演義』に描いた古代中国の群雄割拠の時代もそうでした。

ソーシャルメディア上で憲法改正案への批判が噴き出すなか、中国政府は「クマのプーさん」などのキーワードを検閲対象にした。なぜプーさんを? 中国のネット民はしばしば親しみを込めて、習の「プーさん体形」をからかうからだ。

くまのプーさん(左)と習近平(右)

1800年前、中国の三国時代に武将・劉備が極寒のなか諸葛亮に会いに行くと、酒場から歌声が聞こえてきました。地位や名誉に背を向けた諸葛亮をうたう歌だ。「永遠に続く名声など、誰が望むというのか」

習近平はもとより、中国共産党幹部は、プーさんを検閲したり、するより、『三国志』を読み直すべきです。

そうして、読み直すにしても真摯に読み直さなければ、本気で中国に貿易戦争を挑むトランプ大統領により中国はかなり弱体化されてしまうことになるでしょう。

トランプ大統領としては、米国を頂点とする、第二次大戦後の世界秩序を中国に壊させることなど、絶対にさせないでしょう。

貿易戦争を挑んでも中国の態度がかわらなければ、次の段階では、本格的金融制裁に踏み切ることになるでしょう。その時、中国にはなすすべもないです。トランプ大統領は完璧に習近平の首根を抑えてしまったようです。

習は、国内では人民の憤怒のマグマの標的となり、国外でトランプ政権から徹底的に追い詰められることになります。私は、習政権は長持ちしないと思います。

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2017年6月17日土曜日

AIIBの正体は「アジアインフラ模倣銀行」だ! 見切りつけた習政権、人民元を押し付け 編集委員 田村秀男―【私の論評】ブラック金融のようなAIIBに日米が絶対に加入できない理由(゚д゚)!

AIIBの正体は「アジアインフラ模倣銀行」だ! 見切りつけた習政権、人民元を押し付け 編集委員 田村秀男


 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体はアジアインフラ模倣(Imitation)銀行である。北京は加盟国・地域数でアジア開発銀行(ADB)を上回ると喧伝するのだが、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行を装っている。元締・中国の外貨準備は減り続け、対外借金がなければ底をつく。ドル本位のAIIBに限界を見て取った習近平政権はユーラシアのインフラ整備構想「一帯一路」の決済通貨を人民元にしようともくろむ。

 韓国・済州島でのAIIB第2回年次総会会場では韓国企業などが最先端の情報技術(IT)インフラ設備の売り込みを競っているが、AIIB目当てでは「とらぬたぬきの皮算用」同然だ。ドル建て金融のAIIBの信用の源泉は元締・中国の外貨準備で、残高は3兆ドル余りだが、帳簿上だけだ。海外からの対中投資や融資は中国にとって負債だが、当局はその外貨を強制的に買い上げて、貿易黒字分と合わせて外準に組み込む。外貨の大半が民間の手元にある日本など先進国とは仕組みが違う。

 グラフを見よう。外準は3年前をピークに急減している。対照的に負債は急増し、昨年末には外準の1・5倍以上だ。外国の投資家や企業が中国から資金を一斉に引き揚げると、外準は底をつくだろう。

 中国外準を見せ金にして昨年初めに開業したAIIBには世界最大の債権国日本とドルの本家米国が参加を見送った。当然のように国際金融市場はそっぽを向く。米欧の信用格付け機関はAIIBの格付けを拒否するので、AIIBはドル建て債券発行ができない。

 AIIBはやむなくADBや世銀との協調融資で当座をしのぐ。5月末時点の融資額は授権資本金1千億ドル(約11兆1千億円)に対し21億ドル余りにすぎない。加盟国の多くは割にあわないことを恐れ、当初約束した出資金の払い込みを渋る。

 習近平国家主席は5月中旬、北京で開いた一帯一路の国際会議で、人民元資金、7800億元(約12兆8千億円)をインフラ整備用にポンと出すと表明した。国際通貨としての信用力が貧弱な人民元でも不自由しない企業は中国の国有企業に限られるので、韓国や欧米企業は受注で二の足を踏むだろう。借り手国は人民元の返済原資確保のために、対中貿易に縛りつけられる。AIIBに見切りをつけた習政権は中国による中国企業のためのプロジェクトを周辺国に押し付けるだろう。

【私の論評】ブラック金融のようなAIIBに日米が絶対に加入できない理由(゚д゚)!

中国の人民元は元々、巨額の米国ドルによる中国の外貨準備高が裏付けとなって保証されていたものです。人民元そのものの信用が高かったわけではありません。その外貨準備が底をつけば、人民元は国際的には信用を失うわけです。

人民元はどうあがいても、国際通貨にはなりえません。これを考えると、AIIB構想そのものが、元々最初から無理筋であったと言わざるを得ません。

結局、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行もどきの金貸しに過ぎません。

銀行でもないものが、銀行を装っているようなものですから、このような似非銀行に金を借りれば、どんなことになるかわかったものではありません。いつ、街金の高利貸しのように豹変するかわかったものではありません。

このようなAIIBには、日米とも参加しないのが、当たり前であり、これに加入すべきなどという輩は国籍はどこであり、馬鹿か中国スパイとの誹りを受けてもやむを得ないです。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は17日、年次総会を開いていた韓国南部の済州島で記者会見しました。金総裁はAIIBへの参加を見送っている日本と米国について「我々はこれからもドアを開き続ける」と語り、加盟を歓迎する意向を改めて示しました。
記者会見するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁=(左)(17日、韓国・済州島)

AIIBが日米に参加を促す理由は2つあります。まず人材の確保です。AIIBの職員は100人程度と日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の約3千人と比べ少なく、融資案件の発掘も簡単ではないです。開発金融に精通した人材は限られます。日米が加盟すれば、国際機関で勤務経験のある官僚など、人材確保のルートが幅広くなると考えているのでしょう。

結局中国には、国際金融に通じた人材などほとんど存在せず、何をどうやれば良いのか良く分からないのです。現状ては、中国国内の粗雑で野蛮なやり方でしか、AIIBを運用するしかないのです。

それに、信用力の補完も狙っているのでしょう。出資国の上位に世界経済1、3位( 金融では2位、GDPも本当は中国は世界第三位以下との評価もある)の日米が加われば、国際機関としての信用力は増します。

そもそAIIBは中国の通貨・人民元ではなく、米国の通貨・米ドルで構成されている、という事実があります。私の調べでは、これまでのところ、AIIBの融資承認案件数は予定額ベースで20億ドル程度に過ぎませんが、その金額は米ドル建てです。
中国主導のAIIBの融資実績(2017年4月末時点) 
区分         件数 AIIB融資額
承認済プロジェクト   12件   20億ドル
検討中プロジェクト   10件   15億ドル
また、AIIBの現時点の参加国は、「加盟する意思を表明し、AIIBに承認された国」を含めて、70カ国です(上)。

AIIBの現時点の融資金額の少なさは、ADBと比較すると一目瞭然です(下)。

つまり、中国が主導するAIIBは、肝心の資金を米国の通貨・米ドルに頼っているのです。世界最大の米ドル保有国である日本に対し、執拗に協力を求めて来ているのも、当然のことといえるかもしれません。

つまり、中国としては、「一帯一路」「シルクロード基金」「AIIB」という「3点セット」で金融覇権を握ろうとしているのに、肝心の資金源である日米が付いてきていないという状況にあります。しかも、自国の通貨・人民元については、事実上、国際化に失敗してしまいました。

このように考えると、「政治力は超一流」の中国も、「経済・金融のセンス」という観点からはゼロ点だというのが実情といえるのかもしれません。

そうして、日米がAIIBに加入するなど、まともで業績の良い銀行が、悪徳街金やブラック企業に肩入れするようものであり、あり得ないことです。実際、AIIBによってなされるインフラ事業は、中国主導で中国の国内基準元に行われるので、そのようなものになります。

中国政府が中国内でそのようなことを実施することについては、諸外国がこれに意義を唱えるのは、ある意味内政干渉になりかねませんが、国際的にそれを展開すると話は違ってきます。

現在の中国ができるのは、中国内のブラック的な要素を海外に移転するというお粗末なことしかできません。

インフラに関しては、国際社会で広く共有されている考え方があります。透明性で公正な調達によって整備されることが重要です。プロジェクトに経済性があり、借り入れをして整備する国にとって、債務が返済可能で、財政の健全性が損なわれないことが不可欠です。

これに関しては、まともな銀行であるADBにはできることですが、銀行もどき、悪質街金のようなAIIBには全く不可能です。そもそも、現中国には鬼城が全国各地いたるところに存在します。

全国いたるところに存在する中国の鬼城
鬼城とは、本来は、本来は、元々住んでいた人々がいなくなった廃墟や死の町を指すのですが、現代中華人民共和国では、特に投機目的の不動産投資と開発運営事業の失敗により完成しないまま放置されたり、人々が入居する前に廃れた都市や地域を指す表現として使われています。

日米が、AIIBに参加して、巨額の出資をした場合、AIIBは悪徳街金のように、無理な返済計画でも資金を融通し、世界中に鬼城を輸出することになることでしょう。

そうなると、日米の巨額の出資も焦げ付き、回収不能になります。そうて、そんなことより、AIIBに参加したということで、日米の信用に大きく傷がつくことになります。そんなことは断じてできません。だからこそ、日米はAIIBに絶対に参加しないのです。

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2017年3月5日日曜日

【中国全人代】陰の主役はトランプ氏 米の国防費増、対中制裁課税…中国のアキレス腱狙う“攻勢”に習政権は耐えられるか―【私の論評】秋の政治局常務委員改選で異変が?


5日、北京の人民大会堂で開幕した中国の全国人民代表大会
 全国人民代表大会(全人代)の陰の主役はトランプ米大統領である。間を見計らったかのように、トランプ米政権は矢継ぎ早に通商、軍事両面で対中強硬策を放った。習近平政権は耐えられるか。


 トランプ政権は2月末に国防費を前会計年度比約10%増額する方針を公表。3月1日には世界貿易機関(WTO)ルールに束縛されず、不公平な貿易相手国に高関税などの制裁を科す米通商法301条の発動もちらつかせる通商政策の年次報告書を米議会に提出した。3日には中国の鉄鋼製品への制裁課税を決定。これらは、国家通商会議(NTC)のピーター・ナバロ委員長が作成中の貿易と軍事を一体とする対中強硬策の前触れだ。

 習政権は国防費増を打ち出すが、軍拡を支える経済力に不安を抱える。全人代では国内総生産(GDP)成長率目標を6・5%前後に引き下げた。一方、GDPの約10%の資金が海外に流出している。

 思い起こすのは1980年代のレーガン政権の対ソ連強硬策である。レーガン大統領はアフガニスタン侵攻など対外膨張路線のソ連に対抗し、戦略防衛構想(通称「スターウォーズ計画」)を打ち出すと同時に、高金利・ドル高政策をとって石油価格を数年間で3分の1に急落させた。国家収入をエネルギー輸出に頼るソ連経済は疲弊し、90年代初めに崩壊した。

 トランプ政権もまた中国の弱点をつく。貿易制裁が対米輸出に打撃を与えるばかりではない。米株高と連邦準備制度理事会(FRB)による利上げは中国からの資本逃避を促す。流出した資金は米ウォール街に流れ込み、米株価を押し上げている。

 人民元防衛のために外貨準備は取り崩される。外準は今や対外負債を大きく下回り、借金なくして維持できない。アジアインフラ投資銀行(AIIB)を主導し、全アジアを北京の影響下に置こうとするもくろみはついえる寸前だ。

 個人・企業の海外での「爆買い」や対外送金規制などの小手先の対策では資金流出をとめられない。金融を引き締めれば国内景気が持たない。党中央は逆に、銀行融資を急増させて不動産相場の下支えやインフラ投資後押しに躍起だが、企業債務の膨張など人民元マネーバブルを招き、元暴落不安が募る。習氏は全人代で答えを出せるか。(特別記者 田村秀男)

【私の論評】秋の政治局常務委員改選で異変が?

これから先も、米国の対中国政策は、「トランプ大統領が中国を叩き潰す」ということになります。今年はアメリカと中国の「経済戦争」の元年です。トランプ政権の中国に対する姿勢は、閣僚人事を見れば明らかです。

ピーター・ナバロ氏
新設された国家通商会議のトップには、ピーター・ナバロ氏が起用されましたが、ナバロ氏は過去に「中国製品を買うべきではなく、購入すれば国家安全保障上の脅威となる」と発言している人物です。また、通商代表部の代表に起用されたロバート・ライトハイザー氏も、中国製鉄鋼のダンピング(不当廉売)輸出を批判するなど、対中強硬派として知られています。今後、トランプ政権の通商戦略は、このナバロ氏とライトハイザー氏が司令塔となって進められます。

ロバート・ライトハイザー氏
また、台湾を中国の一部とみなす「ひとつの中国」の原則を見直すことを表明するなど、トランプ大統領は各方面から中国を揺さぶっています。トランプ大統領はこの後で、習近平と電話会談をして、中国に「ひとつの中国」政策を認める発言をしました。

これは、かなり矛盾するようにもみえますが、これは政治観点からみると、トランプ大統領は一つの大きな外交カードを握ったことになります。オバマ政権とは打って変わって、トランプ政権の対中政策はかなり厳しいものになりました。

もともと、トランプ大統領は「中国を為替操作国に指定する」「中国製品に45%の報復関税を課す」と宣言していました。

これは、中国の経済基盤と産業構造を否定するものです。「ヒト・モノ・カネ」の移動を自由化するグローバリズムの最大の受益者は中国であり、中国は自由経済と計画経済の“いいとこ取り”をするかたちで、国際社会での存在感を拡大してきました。しかし、それは同時に先進国で大量の失業者を生むことにつながり、世界各国で紛争の原因にもなりつつあります。

資源や食糧は有限のため、人口の多い新興国が発展すれば、資源や食糧の枯渇、やがては奪い合いにつながります。中国が急成長することで、地球が発展の限界を迎えていると言い換えてもいいでしょう。トランプ大統領は、そうした流れにも「待った」をかけているわけです。

そうして、この対立構造においてはアメリカのほうが圧倒的に有利です。中国側は有効なカードを持っていないに等しいのですが、習近平国家主席は求心力を失いたくないために引くに引けないのも事実です。

しかし、中国は、国家運営の根幹となる穀物もアメリカからの輸入に頼る構造になっており、環境問題の悪化によって食糧問題が悪化することがあっても、改善する可能性は低いです。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…―【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に中国の食料事情に関連する部分だけ引用します。

実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか? 
2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。 
人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。 
2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。 
とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。
中国江蘇省の豚肉売り場、価格は上昇し続けている
中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。 
それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。 
その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。 
2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。 
また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。
このような状況を考えると、「トランプ大統領が中国を叩き潰す」という政策は、さして困難な政治目標ではないと思えてきます。

さて、保護主義的な政策を掲げるトランプ大統領は、「自国優先」を旗印に、製造業の国内回帰を目指しています。そして、「強いアメリカを取り戻す」とうたっているわけですが、これは歴史的にいえば1980年代の米国のことだと思われます。当時、日米貿易摩擦が国際問題となり、アメリカの強硬策によって日本は生産体制をアメリカにシフトせざるを得なくなり、その後のバブル崩壊につながりました。

今後は、中国が当時の日本のような立場に追い込まれることになります。そして、かつての日米間以上に激しい摩擦になると同時に、中国側にほぼ勝ち目はないです。日本製品は日本にしかつくれない「オンリー・ジャパン」だったため需要がありましたが、中国製品は単なる組み立て品で付加価値や優位性ありません。中国製品を選ぶ理由は価格の問題だけですが、そこで公約通りに45%の関税が課せられれば、中国経済にとっては致命傷になります。

トランプ政権による中国製品の排除が加速するという動きは昨年からありました。11月に日本の財務省が中国など5カ国を「特恵関税制度」の対象外とすることを発表しています。同制度は、新興国の輸入関税の税率を低くしたり免除したりすることで経済発展を支援するというものですが、もう中国には援助の必要性はないという判断です。
 
また、経済産業省は12月に中国をWTO(世界貿易機関)の「市場経済国」に認めない方針を発表しました。市場経済国とは、国際社会から「自由な市場経済を重視する国」と認められた国のことです。現在、「非市場経済国」扱いの中国は、他国からのダンピング認定などで不利な条件を課されていますが、その規定条項が失効した12月以降も市場経済国への移行を認めないというわけです。

日本と同様にアメリカやEUも認めていないため、日米欧は不当に安い価格で輸出される中国製品に対して、反ダンピング措置をとりやすい体制にあるわけです。このように、アメリカをはじめとする先進国は、さまざまな方法で中国の競争力を奪う方向に向かっています。

こうした厳しい状況に対処しなければならないのが、習近平なのですが、簡単に南シナ海から撤退することもままなりません。そうすれば、中国国内での習近平の求心力が失われてしまいます。

さらに、金融面を見たとき、アメリカと中国の力関係はゾウとアリぐらい違います。確かに中国の銀行は巨大化しているのですが、それは米ドルとの両替保証があってこそです。たとえば、人民元は変動幅が決まっている管理変動相場制で、事実上のドルペッグ制(米ドルが裏付け)です。また、香港ドルは米ドルがなければ発行できないドル預託通貨です。一見、強く見える中国経済だが、実際は非常に脆弱で米ドルに生殺与奪権を握られています。

また、アメリカは14年12月の時点で、アメリカ国内にある中国人および共産党幹部の資産を調査しており、その総額は最大3兆ドルともいわれています。つまり、アメリカは国内の中国マネーをすべて把握しているわけで、有事の際には共産党幹部の個人攻撃を始めることも可能です。対露制裁の際、個人に対しても口座の封鎖などを行ったように、狙い撃ちのように共産党幹部の口座を封鎖することもやりかねないです。

また、トランプ政権はロシアと近づきつつありますが、これには中国牽制という意味合いもあります。米露が関係を改善して中東問題で手を組めば、中東での多面展開はなくなり、その分アメリカは南シナ海の問題に全戦力を集中できるようになります。

さらにいえば、南シナ海においてロシアが日米側につけば中国は勝ち目がなくなります。ロシアとしては勝ち馬に乗ったほうが得だし、そういう計算ができる国です。中国とは昔から仲が悪いという事情もあり、南シナ海において中国の肩を持つことは考えにくいです。

 アメリカとしては、自分から先に仕掛けることはないものの、中国の出方次第では、海上封鎖と金融制裁によって内側から中国を潰すことができるわけだ。現代においては武力よりも金融制裁のほうが効果的であり、それが筆者の言う「経済戦争」である。

しかしながら、中国は今年秋に5年に一度の共産党全国代表大会を控えているため、強硬な姿勢を崩すことができません。一歩でも引けば、習近平政権の瓦解につながる可能性もあるからです。一方、トランプ大統領は「100日計画」を発表しているように、就任から100日以内にある程度の実績を出したいという思惑がある。そのため、就任前から中国に揺さぶりをかけていたのです。

2017年秋に開かれる第19回党代表大会では、新執行部(政治局常務委員)が選出されます。現執行部メンバー7人のうち、習近平国家主席と李克強首相を除き、「江沢民人脈」と見られる4人を含む5人は年齢的な原因(67歳が上限)で引退します。


これまでの経験則によれば、党大会の開催に向け、党内の権力闘争が激化します。1995年陳希同・元北京市書記の失脚、2006年陳良宇・元上海市書記の失脚、2012年薄熙来・元重慶市書記の失脚などは、いずれも党大会開催直前の「政変」劇です。2017年新執行部の選出をめぐり、5つの最高幹部のポストを狙う熾烈(しれつ)な争奪戦が予想されます。

そうして、従来通りに権力闘争は激化するだけならな、政権転覆のシナリオはないと見て良かったかもしれません。

しかし、今回はトランプ大統領が手を変え品を変え、引くに引けない習国家主席が前に出れば出るほど、米中の対立が深まり、段階的にアメリカの制裁が強まることになるのです。それに、米中関係とは全く関係なく、元々中国国内は経済的に苦しい立場に追い込まれることが確実です。

また、5~6月にはアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)が開催されますが、このままいけば、同会議で中国が非難の的になることも間違いないでしょう。

このままだと、「トランプ大統領が中国を叩き潰す」政策は、完璧に功を奏して、今年の今年秋に5年に一度の共産党全国代表大会には、習近平は実質上失脚という事態になることも十分予想できます。それは、まず第19回党代表大会の中国共産党常務委員の改選に異変から見られるかもしれません。太子党が多数派を維持できなかった場合には、習近平氏は事実上失脚とみても良いでしょう。

そうなったにしても、ならなかったにしても、米国による「トランプ大統領が中国を叩き潰す」政策は中国が南シナ海から退かない限り、徹底的に実行されることになります。これにより、いずれ中国にはいずれ確実に何らかの異変が起こることは確かです。

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2016年12月24日土曜日

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【お金は知っている】中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く

トランプ氏(左)と習近平(右)
 中国共産党は1972年2月のニクソン大統領(当時)以来、歴代米大統領に対して台湾を中国の一部とみなす原則を一貫して認めさせてきた。トランプ次期米大統領は「それに縛られない」と明言する。習近平国家主席・党総書記の面子(メンツ)はまるつぶれである。

 北京は何か報復行動をとるかとみていたら、19日にフィリピン沖の南シナ海で米軍の調査用無人潜水機を奪取した。20日には米軍に返還したが、時間をかけて潜水機のデータを調べ上げた。露骨な国際法違反である。粗野でぞんざいなふるいまいを見せつけることが、相手の面子をつぶすと考えるところは、魯迅の『阿Q正伝』そのものだ。

 中国はみかけのうえでは国内総生産(GDP)や対外純資産規模で世界第2位の経済超大国でも、中身は悪弊にまみれている。慢心すれば必ず失敗する。人民元の国際化を例にとろう。

 昨年11月には習政権の執念が実り、国際通貨基金(IMF)が元をSDR(特別引き出し権)構成通貨として認定させた。限定的ながら金融市場の規制を緩和し、人民元の金融取引を部分自由化した。同時に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を創立し、国際通貨元を世界に誇示しようとした。

 ところが、昨年8月に人民元レートを切り下げると、資本が逃げ出した。当局が規制しようにもどうにも止まらない。

 この11月までの12カ月合計の資金純流出額は約1兆ドル(約118兆円)、このうち当局の監視の目を潜った資本逃避は約5000億ドルに上ると米欧系金融機関のアナリストたちは分析している。

 特徴は、11月8日の米大統領選後の11月9日を機に、資金流出が大幅に加速していることだ。当選したトランプ氏が減税とインフラ投資という財政出動を通じて、景気を大いに刺激すると期待されるために米国株が急上昇し、中国に限らず世界の資金がニューヨーク・ウォール街に吸引される。

 中国に対して強硬姿勢をとるトランプ氏にチャイナマネーがおびき寄せられ、トランプ政策に貢献するとは、習政権はここでも面目なしだが、もっと困ることがある。


 グラフを見よう。米大統領選後、元安と市場金利上昇にはずみがついた。いずれも資金流出による。中国人民銀行は元暴落を避けるために外貨準備を取り崩し、ドルを売って元を買い上げるが、それでも元売り圧力はものすごく、元の下落に歯止めをかけられない。商業銀行の手元には元資金が不足するので、短期市場金利である銀行間金利が高騰する。すると、金融引き締め効果となって、莫大(ばくだい)な過剰設備を抱える国有企業を苦しめる。地方政府も不動産の過剰在庫を減らせない。企業や地方政府の債務負担、裏返すと銀行の不良債権は膨らむ一方だ。

 トランプ政権発足を目前に、中国は経済で自滅の道に踏み出した。経済超大国としての要件を満たしていないのに、対外膨張を図ろうとしたからだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】行き着く先は超元安とハイパーインフレしかない中国経済(゚д゚)!

上の記事では、最近の中国の資金流出の状況を掲載しています。しかし、この資金流出がなぜおこるようになったのか、そうしてこの酷い資金の流出の行き着く果てはどうなるかについては掲載されていません。本日は、それに関して記そうと思います。

まずは、このような資金流出が発生するようになった背景を簡単に記します。

一言でいえば、中国政府はコントロールしてはならないものをコントロールしたことが、とめどもない資金流失の直接の原因ということです。

中国政府は、農民から収奪した土地を工業団地や商業地などに転換して不動産バブルを演出したにもかかわらず、供給が需要を大きく上回ってマンションやショッピングセンターが「鬼城(ゴーストタウン)」だらけになってしまいました。そこで習近平政権は投機の受け皿を不動産から株にシフトし、株投資を煽って株高に誘導しました。不動産の次は株の官製バブルを演出しました。


ところが、それは元々政府のやるべき仕事ではありません。株価は、将来得られるであろう企業収益の現在価値です。本来企業の業績が良くならない限り、株価は上がらないのです。その本質を中国政府は理解せず、株式市場にカネを突っ込んで、なりふり構わぬPKO(株価維持策)を続けました。しかし、中国企業の業績は伸びていないのですから、当然の結果として株価は2015年夏から下落し始めました。

すると今度は大量保有株主の株式売却を半年間禁止し、違法売買の摘発を強化しはじめました。しかし、株価が下がっている時に株を売れないことほど株主にとってストレスになることはありません。そのため、大量保有株主の株式売却解禁と同時に株価は大幅に下落しました。株価の急変時に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を新設後5日間で2回も発動したのですが、それがまた呼び水となって、さらに株価は下落するという悪循環に陥ってしまいました。

突然の株価下落で唖然とする上海市民
これら一連の動きから、世界中から中国政府は資本主義経済を全く理解してないという事実が露呈ししてしまったので、現在世界中がある種のパニック状態に陥っています。中国政府は欧洲がやっているような感じのつもりで上へ下へと中国経済をコントロールしようとしてきたつもりなのですが、いまやヨーヨーの紐が伸びきったように何をもってしてもコントロール不能になってしまったのです。

元々、中国は資本主義の歴史もないのですが、工業化の歴史もありません。日本の場合は工業化の長い歴史があるため、生産性の向上や商品価値の向上を実現できたのですが、中国にはその素地がありません。そのため日本のようにイノベーションも期待することもできず、上がり続ける給料や通貨を支えることができません。

にもかかわらず、中国政府は人件費を市場に委ねることをせず、強制的・人為的に毎年15%ずつ引き上げてきました。そのため企業の競争力が著しく低下したのです。

しかし、人民の反発が怖くて賃下げはできないので、自ずと為替は元安に向かうことになりました。1ドル=6.5元ぐらいまで高くなった人民元は、今の人件費と生産性であれば、フロート制(変動相場制)に移行したら1ドル=12~14元ぐらいまで下がらざるを得ないでしょう。

人件費と為替の両方を「管理」することなどできるわけがありません。本来中国政府は、今の人件費で成り立つ労働料集約型の産業は中国には存在しないと心得るべきだったのです。

本来、市場にまかせるべきものを人為的にあれこれ、介入しすぎたため、もはや中国政府に経済政策の打ち手はありません。かつてのように有効需要を創出しようと思っても、すでに高速鉄道、高速道路、空港、港湾、ダムなどの大型インフラはあらかた整備済みで、乗数効果のあるインフラ投資の領域は中国にはありません。

しかも、一人っ子政策を続けてきたせいで今後は高齢化が急速に進展しているのですが、介護や年金などの社会保障を支える人材・予算が大幅に不足しています。

さらに、「理財商品」という隠れた“地雷”もあちこちに埋まっています。これは短期で高利回りを謳った資産運用商品で、株式ブームの前に人気となりました。集まった資金は主に地方政府の不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトに流れたとされています。

中国のシャドーバンキングの仕組み 

ところが、今後はそれらのプロジェクトが行き詰まり、理財商品を発行した「影の銀行」が損失を受けてデフォルト(債務不履行)を起こす可能性があるのです。日本のバブル崩壊でノンバンクが次々に倒れたのと同じ現象です。

そして、中国国内で投資先を失った資金の流出が加速しているのです。人民元は個人では年間約120万円しか海外に持ち出せません。しかし、中国本土から人民元を香港などに違法に送金する「地下銀行」を運営していた300人余り、総額8兆円近くが摘発された例もあるように、現実には資金を流出する方法は存在しています。資金の海外流出は必然的に人民元安と株安につながります。

鳴り物入りでスタートした中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、中国にはプロジェクトを審査して遂行していく能力があるマネジメント経験者がいないからことごとく失敗しています。

中国はまるで、先進国がこの100年間に経験してきたことを10年間に凝縮したかのような状況にあります。しかもその規模は10倍に膨れ上がり、対する政府の能力は1/100ぐらいしかないといった状態です。

もはや中国経済は習近平政権に限らず、誰をもってしてもコントロール不能になりました。コントロールしてはいけないものをコントロールしたから、こうなったのです。行き着く先は超元安とハイパーインフレしかありません。

これを経験して、はじめて習近平政権は、資本主義経済においてはコントロールしてはならないものをコントロールすれば、とんでもないことになることを学ぶことになるのでしょうか。いや、そのときには習近平は失脚しているでしょう。

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