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2018年7月16日月曜日

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ―【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ

2016年上海では習近平のポスターを張り巡らした家屋が出現・・・・・ 写真はブログ管理人挿入

中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。

「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。

同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に「今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない」と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた。

【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

2016年には、上海で強制解体に必死の抵抗を試みた家主が、建物全面に「習近平ポスター」を貼りまくるという事件が発生しました。それがこのブログ冒頭の記事の写真です。

習近平主席の写真やポスターなど無断で引き剥がしたりすれば、不敬罪にあたるとして、家主はこれで、強制撤去を免れると目論んだのですが、呆気なく 十数人の作業員が動員されポスターは引き剥がされてしまいました。

今月の、7月4日の午前6時ごろ、中国の湖南省出身、現在は上海に住むとされる女性、董瑶琼さん、29歳が、習近平国家首席を支持しないという内容の動画を生配信し、習近平のポスターに墨をかけるパフォーマンスを行いました。

董瑶琼さんとされる写真

動画の中で、董さんは「私は、習近平とその独裁主義に反対です」と発言。動画は、「みなさん、私は彼の写真に墨をかけました」「彼が私をどうするかみものです」と続き、まるで習近平を挑発するような内容でした。習近平と中国共産党を批判した約2分のこの動画はTwitterで大拡散され、中国の人気メッセージアプリWeChatでも、多くシェアされました。

同じく4日の昼、中国の活動家・華涌さんが、董さんの動画をシェアし、彼女の安否を気遣うツイートをしています。以下にそのツイートを掲載します。

私自身は、このような事件があった後に、「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」という公安当局の緊急通知が出回ったので、中国共産党当局としては、董瑶琼さんのような行為が全国各地で頻発することを懸念して、このような通知を出したのではないかと思います。

ただし、実際出してみたもの、これも異常といえば異常です。それこそ、習近平の権威を貶めることにもなりかねません。だから結局引っ込めたのでしょう。その事実を中国共産党内の習近平反対派閥に利用されたのだと思います。

このようなことは、中国では珍しくはありません。たとえば、2010年あたりには、中国政府は反日デモを奨励していました。デモを起こしても、「反日デモ」であれば、「反日無罪」ともいわれたように、あまり厳しく取締りなど行いませんでした。

それどころか、その後は政府のほうが、反日を煽って多くの人々を巻き込んで大規模デモを実施させるという、いわゆる官製反日デモが繰り広げられました。

ところが、2011年から12年かけては、反日デモが起きると、いつの間にか反政府デモになったり、反日デモとして届け出されたデモが、実はそれを隠れ蓑として本当は反政府デモだったという事例も多数でたため、政府は反日デモを強力に取り締まるようになり、2013年あたりからは、全くなくなりました。

2011年の中国での大規模反日デモ

中国共産党中央委員会は2018年2月25日、国家主席の2期10年の任期を撤廃する憲法改正案を発表しました。3月5日から始まった全国人民代表大会(全人代)で憲法改正が成立し、習近平(シー・チンピン)主席は3期目以降も現職にとどまれることになりました

この動きが歴史的に重要なのは、習の終身統治が第二次大戦後の世界秩序を葬り去る可能性があるからです。市場資本主義、民主主義、個人の権利を中心とした政治制度など欧米の価値観に基づく秩序が失われかねないです。

これからは中国が世界のリーダーになると、習は明言しています。つまり、個人より国家を優先する「中国モデル」の独裁的統治が、過去75年間近く各国の統治の模範として、また国際的な枠組みをつくる上でも、重要な役割を果たしてきた欧米型民主主義に取って代わろうとしているかもしれないのです。

中国が影響力を増す一方で、アメリカはドナルド・トランプ大統領は、中国の勝手はさせじと、中国に対して貿易戦争を挑んでいます。そうして、当の中国は未だトランプ氏の本気度を測りかねているようです。

「アジア型」開発モデルについては、78年の鄧小平(トン・シアオピン)の改革開放以降、さまざまに論じられてきました。鄧の市場経済導入も、リー・クアンユーの指導下でのシンガポールの経済成長も、独裁的な統治と市場ベースの経済開発を組み合わせた、いわゆる「開発独裁」です。

政治活動の自由や個人の権利が制限されても、経済が成長していれば、人々は政府を支持し、社会の現状に満足するといわれています。特にアジア人はその傾向が顕著だとの説もあります。

開発独裁は中国古来の儒教文化とも親和性が高いです。儒教の伝統では政治は政治家の専売特許で、民が口出しすべきものではありません。政府は自分たちがつくったり、改革したりするものではなく、天候のようにただ受け入れ、耐えるものとされてきました。

結局のところ長年にわたる共産党の支配をもってしても、中国に深く根付いた儒教の伝統はなくせませんでした。実際、今の中国の政治と経済にとって、共産主義思想は人民服のように時代錯誤なものにすぎません。共産党政権ですら、儒教の伝統を統治に取り入れています。

朝服は古代中国の役人が朝廷に出仕する時の服装。冠は地位を表す
大事なもの、笏(しゃく)はメモとして必要なアイテムだった。

古代高級官僚の朝服をまとったナショナリズムは独裁体制を支える柱であり、習はかつての皇帝のように絶対的な権限を掌中にしようとしています。

毛沢東時代に個人崇拝が進み、1人の人間に権力が集中し過ぎた苦い経験から、中国は2期10年の主席任期を設けました。今それを捨て去った理由については、2つの可能性が考えられます。

1つは、習への権力集中は、習政権の弱さの裏返しだという解釈です。中国当局は厳しいメディア規制を敷いていますが、中国全土で毎年、数十万件ものデモが起きていることは隠し切れないです。人々は汚職や環境汚染、地方政府の怠慢に怒り、抗議の声を上げています。

一党独裁の中国共産党には、政府批判を建設的な声と受け止める発想がありません。そのため抗議の声が上がれば反射的にそれを圧殺しようとします。そうしながらも彼らは、自分たちの支配は見掛けよりはるかに不安定で弱いのではないかとビクビクしています。

中国の政府の政治家なるものは、民主的な選挙で選ばれたわけではなく、政権の統治の正統性に疑問が付きまとうことも、彼らの不安を駆り立てています。

習政権は「中華帝国の再興」を掲げ、ナショナリズムをあおってきましたが、その目的は国民に誇りを持たせ、愛国心を育てることだけではありません。政権の正統性をアピールし、人々の不満を抑え付ける狙いがあります。

もう1つの可能性として、2期10年ルールの変更は個人的な傲慢さの表れとも取れます。78年以降、中国は政治、経済、社会、軍事と、あらゆる面で驚異的に力を付け、人々の生活も豊かになり、国際社会でも大きな発言力を持つようになりました。

中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。この中国が主席の任期のルールをなぜ変更するのでしょうか。しかも、それによって中国の制度の欠陥がなくなるわけではありません。1人の人間に永続的な権力が与えられるだけです。

習自身が強権支配を求めたのなら、これはかなり危うい状況です。共産党のほかの指導者や官僚は国家ではなく、1人の男に忠誠を誓わなければ、その地位が危うくなります。つまり、国家の命運が1人の男に託されるということです。

しかし、仮に才覚ある人間であったとしても、一人の人間が国家を丸ごと背負うのは不可能です。しかも皇帝であっても人間は皆いつか死にます。いつか来るそのとき、権力をどう継承するのでしょうか。


羅貫中の肖像画
独裁国家では常に跡目争いが支配の弱体化を招いてきました。古代ローマ帝国も、羅貫中が『三国志演義』に描いた古代中国の群雄割拠の時代もそうでした。

ソーシャルメディア上で憲法改正案への批判が噴き出すなか、中国政府は「クマのプーさん」などのキーワードを検閲対象にした。なぜプーさんを? 中国のネット民はしばしば親しみを込めて、習の「プーさん体形」をからかうからだ。

くまのプーさん(左)と習近平(右)

1800年前、中国の三国時代に武将・劉備が極寒のなか諸葛亮に会いに行くと、酒場から歌声が聞こえてきました。地位や名誉に背を向けた諸葛亮をうたう歌だ。「永遠に続く名声など、誰が望むというのか」

習近平はもとより、中国共産党幹部は、プーさんを検閲したり、するより、『三国志』を読み直すべきです。

そうして、読み直すにしても真摯に読み直さなければ、本気で中国に貿易戦争を挑むトランプ大統領により中国はかなり弱体化されてしまうことになるでしょう。

トランプ大統領としては、米国を頂点とする、第二次大戦後の世界秩序を中国に壊させることなど、絶対にさせないでしょう。

貿易戦争を挑んでも中国の態度がかわらなければ、次の段階では、本格的金融制裁に踏み切ることになるでしょう。その時、中国にはなすすべもないです。トランプ大統領は完璧に習近平の首根を抑えてしまったようです。

習は、国内では人民の憤怒のマグマの標的となり、国外でトランプ政権から徹底的に追い詰められることになります。私は、習政権は長持ちしないと思います。

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