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2020年7月31日金曜日

消費税めぐり自民党内に減税論 時限措置で経済刺激、英独は引き下げ— 【私の論評】今こそ大規模な積極財政、異次元の量的金融緩和を実行すべき時、今やらないでいつやる!(◎_◎;)

消費税めぐり自民党内に減税論 時限措置で経済刺激、英独は引き下げ

    自民党内で時限的な消費税減税論がくすぶっている。新型コロナウイルス感染拡大によって大きく落ち込む景気を刺激するためだ。英国やドイツなどは日本の消費税に当たる付加価値税の減税に乗り出した。現段階で政府は否定的だが、安倍晋三首相が消費税減税の判断を大義名分にして、年内にも衆院解散に踏み切るとの見方は消えていない。

 「減税すると税収は減るが、消費は活発化する」。首相の経済ブレーンとして知られた本田悦朗・元内閣官房参与は28日、国会内で講演し、コロナ禍の経済対策に消費税減税は有効だと指摘した。

 講演会を主催したのは自民党の若手有志30人でつくる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」。党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」(56人)と共に、消費税減税を求める緊急声明を3月に発表した。

 党内には、財政赤字が増えても問題なしとする「現代貨幣理論」(MMT)を支持する議員もいる。そのため消費税減税を容認する自民党議員は100人近くに達するとみられている。

 コロナ禍での経済復興を優先するため、欧州各国は「消費税」減税に相次いで取り組んでいる。英国はレストランやパブで飲食する場合などの付加価値税率を期間限定で20%から5%に下げた。財政規律を重んじるドイツも19%から16%に引き下げ、食品などに適用される軽減税率は7%から5%になった。

 オーストリアでは、アルコールを含む飲料の付加価値税が20%から5%になった。議連の若手は「日本も流れに乗り遅れてはいけない」と話す。

 衆院議員の任期満了は来年10月だ。首相は2014年11月に衆院を解散したが、消費税率10%への増税先送りの是非を問うものだった。議連メンバーはこの時と同様、税に関する判断は解散の大義になると踏む。
 野党では国民民主党が消費税率5%への引き下げを主張。所得の低い人ほど恩恵があるとして、共産党もコロナ禍での消費税減税を訴えている。自民党の中堅議員は「選挙の争点をつぶせる」と自信を示す。


 ただ政府は消費税について「社会保障のために必要なもの」(菅義偉官房長官)との立場を堅持している。首相は21日発売の月刊誌のインタビューで「減税を考えていない」と強調した。

【私の論評】今こそ大規模な積極財政、異次元の量的金融緩和を実行すべき時、今やらないでいつやる!(◎_◎;)
消費を喚起するための定額給付金をやってはみたのですが、政府のITがお粗末すぎたので、給付するまでに余分の資金がかかってしまいました。そうなると、経済を浮揚する効果は、削がれてしまいます。そこで脚光を浴びてくるのが、減税です。

安倍の10万よりも、減税の方が経済浮揚効果がある
減税は、定額給付金と似た効果がある上に、国会の手続きや、実務を考えても、はるかに早く実現でき、効果が出るものです。そもそも、給付金のように申請手続きや、送付の手間もありません。簡単に言えば、2次補正予算で10兆円の予備費を作ったので、秋に3次補正で3兆円分の国債を発行して13兆円にすれば、1%を減税した場合の歳入減が2.6兆円分なので、5%の減税分に相当することになるので、1年間、10%から5%にすることは可能です。

マクロ経済政策で重要なのは、景気が落ち込んだときには、とにかく市中にお金をつぎ込むことです。ここでお金をつぎ込まないと、GDPが落ち失業が増えてしまうことになります。後で手当てすれば手遅れになりかねないので、先回りするのが普通の経済政策です。社会保険料の徴収を止めるといったこととあわせて、必要になってくる政策です。

消費減税に伴う、社会保障費などの財源の懸念などありません。国債を発行すれば良いだけです。国債を発行すると将来世代の負担になるという言い方をされますが、それは間違いです。

22日に出た、麻生財務大臣と黒田日銀総裁の共同声明を読めば、国債は全て日本銀行が買うと約束をしています。そうすれば、利払い費や償還の負担が発生しません。

ただし、インフレ率が高まる可能性はありますが、現状これだけ消費が落ちこみ、需要が消失している状況なので、そう簡単にはインフレ率は高まらないです。こういう時にこういう政策をするのが世界の常識です。

さらにもう一つ付け加えると、国債を大量に発行し、日銀がそれを全部買い取るということになれば、市中に出回る円が増えることになります。そうなると、相対的に日本円が世界の金融市場で低下することになります。

これによって、円高を食い止めることができます。もし、日銀が一切政府の政策に関与しせず、かつ減税などの積極財政を実行したらどうなるかと言えば、当然のことながら、円の需要が高まり、円高状況になります。そうなると、せっかく経済を良くするために、実行した減税などの積極財政が円高という結果につながり裏目に出ることになります。

しかも、現状は、以下のグラフを見ても分かるように、日銀の国債保有額は、減少しています。現状では、かなり買い増すことが可能です。これを考えると、日銀が政府の発行した国債を買い取るという方式は、非常に良い方式です。


西欧では景気が落ち込んだときには、政府の積極財政と、中銀の金融緩和の両方を同時に実行することが、常道になっています。これを同時に行って、インフレになれば、やめれば良いのです。

日本では、なぜか両方を一辺にやるというのではなく、積極財政だけとか、金融緩和だけど考える人が多いようですが、それは明らかに間違いです。両方やって、インフレが高進した場合、金融緩和をやめ、それでもインフレの亢進がやまない場合には積極財政を辞めるのです。

それでも、インフレの亢進がやまない場合は、金融引き締めをします。それでもやまなければ、今度は増税などの緊縮財政を行い、物価を安定させるのです。

このように、その時々の経済状況に応じて、臨機応変に金融政策、財政政策を変えるのがマクロ経済政策の正しいあり方です。

しかし、日本には不思議な人が大勢いて、とにかくその時々の日本経済がどうであろうとも、増税などの緊縮財政が正しいと信奉する財務省ならびに、その走狗の人々が大勢います。

また、白川総裁以前の、日銀は、その時々の日本経済の状況がどうであろうとも、とにかく金融緩和すれば負け、金融引き締めする勝ちと考えるような人が主流を占めていました。そうして、今の日銀官僚にもそういう類の人は多いです。本当に、信じがたいことです。

私は、このブログにおいては、積極財政をせよとか、金融緩和をせよと、主張してきましたが、無論永遠にこれを実行すべきなどとは、思っていません。その時々で、ふさわしい、金融政策、財政政策を実行せよと言っているのです。

コロナでは、かなり景気が落ち込み続けるのは、明らかです。積極財政と、金融緩和を同時に行い、減税はもとより、政府は休業補償や家賃の負担も行い、早期にコロナの終息を図り、その後の経済の回復に注力すべきです。

今、積極財政、大規模な金融緩和を行わず、いつ実施するのかと言いたいです。

安倍総理は、どうしても反対勢力がいてできないというのなら、秋に積極財政、金融緩和を公約として、衆院解散総選挙に打って出るべきです。

このような最中、菅官房長官は29日の記者会見で消費税減税に触れました。

菅官房長官

記者:消費税の引き下げを検討する選択肢は、少しでもあるのか。

官房長官:現在、一連の補正予算などで全国民に一律10万円の給付、そして収入が減少した事業者に最大200万円の給付に加えて家賃などの支援を行うなど、総額230超円を超える規模の対策を実施しております。その中で収入が減少した事業者については、税、社会保険料を1年間猶予しており、消費税についても納税猶予の対象になりますが、消費税自体については、社会保障のために必要なものである、と思っている(http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202007/29_a.html)。

この発言に関して、

時事通信は「消費税減税に慎重 菅官房長官」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072900561&=pol)、日本経済新聞は「官房長官、消費減税に慎重姿勢『社会保障に必要』」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62028980Z20C20A7PP8000/)、NHKは「官房長官 消費税率引き下げに否定的な考え コロナ影響めぐり」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200729/k10012538501000.html)といった具合に報道しています。

官房長官発言をどう読めば、こういう報道になるのでしょうか。菅氏は「消費税自体については、社会保障のために必要なものである」と語っていますが「減税は考えない」などとは、一言も言っていません。

社会保障のために消費税が必要という発言は、社会保障はそもそも保険であり、明らかに間違いだと思いますが、それはそれとして、菅氏は「消費税の必要性」を語っただけで、税率の引き下げについては、一言もコメントしていません。

この発言を「減税に慎重」と報じるのは、記者たちの問題意識と理解力が足りないです。「引き下げを検討するか」と聞いたのに、税の必要論で答えたのは、記者たちが「はぐらかされた」のです。経済というと、財務省や日銀の発表を何も吟味せずにただ、垂れ流すような経済記者が多いので、このようなことになったのかもしれません。

では、なぜ菅氏は答えをはぐらかしたのでしょうか。理由は1つだけです。減税を選択肢に残しておきたいからです。しかし、正直にそう答えてしまったら、世間が、特に財務省とその取り巻きたちが、大騒ぎになるのは目に見えています。だから、税の建前論にとどめたのでしょう。

そうして、選択肢を残したのは、菅氏の一存でもないと思います。私は、政権内部ですでに減税の検討が始まっていると思います。それほど、事態は切迫しているのです。このまま何も手を打たずに、夏に突入すれば、飲食、観光などバタバタと倒産ラッシュが始まるのは避けられないです。

解散しなくても、安倍晋三首相は来年9月に自民党総裁の任期を終える。衆院議員の任期は1カ月後の同10月までだ。安倍首相は任期満了で退任し、新しい自民党総裁が首相になって、すぐ総選挙というシナリオも考えられます。

あるいは、自民党が緊急避難として「連続3期9年まで」とする総裁規定を変えて、安倍氏が総裁に4選し、コロナ制圧に目処をつけるまで首相を務めるシナリオもあるかもしれません。いずれにせよ、経済政策も政局も鍵を握っているのは、新型コロナの行方いかんと言えそうです。

とはいいなが、新型コロナ等で経済がかなり落ち込んだ時の脱出方法は、先ほど述べたように、大規模な積極財政と、異次元の量的緩和を同時に実行する以外にありません。それと、これはMTTとは無関係です。

そのような理論抜きで、現在のまともなマクロ経済学では、景気が落ち込んだ時の、政策は、大規模な積極財政と,大規模な量的緩和を実施すべきことを教えています。無論、規模や実際のやり方などは、種々様々ですが、方向性としてはこれ以外はありません。これ以外を実施すれば、失敗するだけです。

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2020年7月21日火曜日

今こそ5Gからファーウェイを締め出すとき— 【私の論評】今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるもの!(◎_◎;)

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岡崎研究所

今年の1月、英国のボリス・ジョンソン首相は、5G通信網へのファーウェイの参入について、核になる重要な通信網からは除外する、35%以下の制限をつける、という条件付きで、それを容認した。当時、それを聞いたトランプ大統領が激怒したというニュースが流れた。


米国では、2019年5月に、ファーウェイは安全保障上好ましくない企業として商務省のリストに登録され、大統領は、同社との取引を原則禁止する大統領令に署名した。更に、今年の5月15日、米国は、ファーウェイへの部品供給元である台湾の「台湾半導体製造会社(TSMC)」のアリゾナ州への工場誘致と、ファーウェイへの制裁強化を発表した。

6月30日、英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣のダウデン氏は、議会において、英国は将来的にファーウェイを5Gに使用しないだろうと述べた。これは、米国のファーウェイへの制裁を受けての英国の政策転換であった。英国政府高官は、セキュリティ上信頼性が低くなったファーウェイを使用するわけには行かなくなったと説明する。

この件に関し、英国の秘密情報部(MI6)の元長官ジョン・サワーズが、7月5日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、ジョンソン首相がファーウェイの英国からの締め出しを決めたが、全ての西側の民主主義国家が中国のより攻撃的手法に対し、団結して断固たる態度で臨むことが肝要である、と述べている。

サワーズの論説の見出しは、「英国は、その5G網からファーウェイを締め出すべきである」(The UK should bar Huawei from its 5G network)であり、最初の部分はファーウェイを中心に論じているが、途中から最近の中国のより攻撃的な対外手法に論点を移している。論説は中ほどで、「全ての西側民主主義国家が、中国のより攻撃的な手法に対し、団結して断固たる態度で臨むことが肝要である」と言っているが、これが、論説が一番言いたかったことであろう。

サワーズは、論説の中で、過去6か月で過去6年よりも習近平主席の中国が分かった、と述べているが、最近、中国の対外関係でのより攻撃的な手法が目立つ。

南シナ海でのベトナム漁船への攻撃、中印国境での中国兵のインド軍への攻撃などがあったが、香港での国家安全維持法の制定もその一環と考えてよいだろう。

このような攻撃的な手法は最近「戦狼外交」と言われている。「戦狼」とは、2015年と 2017年に中国で大ヒットしたアクション映画シリーズのタイトルで、国内外の敵から中国の国益を守る戦いに身を投じる戦士を意味するらしい。中国の環球時報は4月に欧米に戦いを挑む中国の「戦狼外交官」を称賛したという。習近平はこのような攻撃的な対外手法を今後とも続けるのではないか。

それに対して、西側諸国は、サワーズの言うように、団結して断固たる態度で臨む必要がある。そして中国が攻撃的な対外手法を続けることが中国にとって得にならないことを知らしめることが重要であろう。

今や世界第2の経済大国となった中国と関係を持たないわけにはいかない。これは貿易面のみならず、投資面においても言えることだろう。要は中国に対する過度の依存が政治的リスクを伴うものであることを常に自覚して行動することが必要であると思われる。

【私の論評】今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるもの!(◎_◎;)

ここのところ、英国は矢継ぎ早に、中国への対抗措置を打ち出しています。

今月、19日に英国は、中国西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のイスラム系少数民族に対する中国政府の対応に「吐き気を催すような甚だしい人権侵害」があると非難し、「深い憂慮」を表明しました。 人権団体や専門家は、ウイグル人をはじめとするチュルク語(Turkic)系の少数民族100万人超が拘束され、各地の強制収容所群に収容されているとみています。

中国の劉暁明駐英大使は19日朝、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、新疆ウイグル自治区でウイグル人が目隠しをされて列車に乗せられている様子に見えるドローン映像を見せられて、「何の映像か分からない」と述べのべました。 劉大使はさらに、中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人女性の不妊手術や妊娠中絶を強制しているという現地報道を否定しました。

ドミニク・ラーブ(Dominic Raab)英外相は、新疆ウイグル自治区で強制不妊手術や大量拘禁が行われているとの報告に、もっと国際社会が注目する必要があると主張し、「吐き気を催すような甚だしい人権侵害が行われているのは、明らかだ」「深く、深く憂慮している」とBBCに語りました。

今月14日付の英紙タイムズは、空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群が来年初め、初の本格任務として極東に派遣される計画が進んでいると、英軍高官らの話をもとに報じました。

2017年に就役した「クイーン・エリザベス」は、全長約280メートル、排水量約6万5000トンで、英海軍史上最大級の艦船。艦橋が前後に2つある特殊な形状をしています。自衛隊も導入する垂直離着陸可能な最新ステルス戦闘機「F35B」を運用します。

英国が、東アジアを含めたグローバルな安全保障にコミットする姿勢として大きな意味を持池ます。『クイーン・エリザベス』は、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦『いずも』より大きく、米海軍の原子力空母『ロナルド・レーガン』よりは小さいスケールです。

クイーン・エリザベス
人権や民主主義の本家である英国が見せた今回の果敢な対応は、歴史的な一歩です。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先進国の姿勢が問われるでしょう。これまで尻込みしていた国も、米英に追随するケースも出てくるはずです。中国が反発して報復に出れば、かえって国際社会から見放されることになるでしょう。

英国がこのような姿勢に転じたのは、なんといっても香港の問題があるでしょう。中国が6月末、香港に施行した国安法は、中英共同宣言で保障した2047年までの「高度な自治」に明確に違反するものです。香港の旧宗主国である英国をはじめ、米国や日本など先進7カ国(G7)は事前に、国安法導入に「重大な懸念」を伝える外相共同声明を発表していたが、中国はまったく聞く耳を持ちませんでした。

ボリス・ジョンソン英首相は今月初め、統治時代に香港市民に発行した「英国海外市民(BNO)旅券」の保有者を対象に、英市民権を付与する道筋をつける意向を表明しました。英国は、香港で中国に理不尽な思いをさせられたので、覚醒したと言えるでしょう。

それ以前の英国は、中国とのビジネス関係を失いたくなかったせいでしょうか、かなり歯切れの悪いものでしたが、完璧に吹っ切れたようです。

ボリス・ジョンソン英首相
昨年、トランプ大統領が、中国経済に大きなボディブローをくらわし、習近平を土俵際まで追い詰めたところで新型コロナウイルスが起こりました。トランプの経済制裁により、殆どの中国の産業の輸出がストップし、中国不動産バブルも弾け始めています。中国経済はやがて崩壊すると多くの人が言っています。

しかし中国共産党はしぶとく、簡単には崩壊しないでしょう。習近平はコロナウイルス災害を逆手に取り、形勢の挽回に動き出しました。こうした疫病によるショックを封じ込むのは、情報統制をし、人民を犠牲にする全体主義的な中国共産党国家の方が民主主義国よりやり易いです。

中国はコロナウイルスを封じ込めるために、徹底した都市のロックダウンをし、ITにより個人の行動管理を実行しました。キャシュレスの支払い記録、スマートフォンによる個人の位置情報と全国に張り巡らせた監視カメラ網による顔認証のデータをもとに感染を終息させつつあるといわれています。

4月8日に武漢の都市封鎖を解除し、中国は、いち早くコロナウイルスを退治したので,まだコロナウイルスと闘っている国ぐにを助けるとして、マスク外交や医師団を派遣するという大キャンペーンを繰り広げており、その情報戦を繰り広げています。

習近平は素早く中国内では最早奴隷同然のウイグル人をも動員して、中国の産業の生産開始の号令をかけました。中国はコロナウイルスが発生しても、半導体と通信機器の生産は中断することなく稼働を続けてきました。

こうして中国はこのコロナウイルスを逆手に取って、米国の覇権の座に迫ろうとしていると見るべきです。リーマンショックの時も、中国は、間髪を入れず4兆元を投下し、結果的にこれで輸出を伸ばして貿易黒字として米ドル3兆ドルを獲得し、この資金で中国は「一帯一路戦略」を進めたのです。それにより中国は米国に挑戦できるという自信を得たのです。

米中がデカップリングしても、中国は14億人の市場を持っており、その中で新しい生産・市場関係を創り、経済を維持することができるでしょう。更に一帯一路でアジア、ヨーロッパ、アフリカを取り込み、版図を更に拡大していく可能性があります。

しかし、習近平が恐れているのはトランプが仕掛けようとしてる「米国による中国在米資産の凍結」、「米国の中国に対するコロナウイルス災害に対する賠償訴訟」、「在中国の日本企業とアメリカ企業の中国からの引き上げ」、「米国株式市場に上場している中国企業の上場廃止」等々です。

そこにきて、今回の英国の動きです。この動き、日本はもとより、EU諸国もいずれ巻き込むでしょう。そうして、トランプ氏の対中国制裁に追づいすることになるでしょう。

そしてこれは、「共産党の内部の抗争」、「中国の民衆の政府への反乱」へと結びつくことになるでしょう。

共産党内部の抗争は間違いなく激化します。中国共産党員のほとんどは、共産党員になることにより、中国では最も重要な人脈を得られるから入党します。なぜ人脈が必要かといえと、もちろん金儲けのためです。

この人脈が曲者で、ある特定の人物が失脚すると、それに連なる人脈も同じく失脚するというのが常です。そうして、習近平の失政により、財産を凍結されたりして実害を受けた共産党員は、習近平に恨みを抱くことになるでしょう。

金の切れ目が、縁の切れ目です。そのような共産と幹部が増えるに従い、中国共産党の統治の正統性は崩れていくことになるでしょう。そうなれば、民衆の反乱につながることになります。

そうして、中国共産党は崩壊することになるかもしれません。そうでなければ、米国は、中共を経済的に弱体化させ、少なくともソ連崩壊後のロシアのような状態にまで弱体化させることになるでしょう。

崩壊直前のモスクワ。物資不足のためどこへ行っても行列が目立った

かつての、ソ連は日本に追い越されるまで、GDP世界第二位でした。今日のロシアのGDPは、韓国もしくは、東京都と同程度の水準です。10位以内にすら入っていません。

現在は、復活しましたが、軍事費も日本のそれを下回ってる時もあったほどです。ただし、そうは言いながら、現在のロシアは、旧ソ連の核と軍事技術やノウハウを継承しているので、決して侮ることはできません。旧ソ連の核弾頭は、今でもロシアに温存され、いつでも発射できます。

しかし現在の状況では、ロシアが一国で、大規模な軍事作戦を遂行したり、米国のように効果のある経済制裁などはできません。今では、米国抜きのNATOとも戦争はできないでしょう。すれば、負けます。

旧ソ連は、第二次世界大戦に勝利して、当時の東欧等から様々な資産を奪い、特に東独から多くの科学者を連れてきて、彼らに軍事や宇宙開発、民生品の開発をさせ、経済発展をしました。これは、50年代の米国の経済学者によって暴露されました。

その経済学者によると、ソ連の経済は簡単すぎるほど簡単で、投入=算出でした。50年代でも、他国の資源や技術を奪い続け、多くの資源を投入することによって、経済発展していたのです。つまり、何の付加価値もつけずにただ、投入されたものを算出するだけの経済だったのです。

この意味するところは、放置しておいても、ソ連経済は崩壊するということでした。その後のソ連は、体質的にあまり改善されることなく、崩壊しました。

ソ連邦の人口は、最大で約3億でした。今日のロシアは1億4千万人です。これに比して、中国の人口は、現在約14億人ですから、先にも述べたように、中国は自国の経済だけでも十分成り立つ可能性があります。

ただし、ソ連は、第二次世界大戦直後から他国から奪って資源で、経済的にも超大国になり、それだけでなく、強大な軍事力を用いて、自らの経済圏を作り、他国の資源を簒奪したり、今の中国と同じく、他の先進国の技術を剽窃し、しばらくは超大国として経済発展を続けることができました。

しかし、中国は違います、当初は発展途上国であり、最近GDPを伸ばして、国全体では世界第二のGDPを達成しましたが、一人当たりのGDPでは、英国にも及びません。さらに、致命的なのは、「一帯一路構想」は未だ、構想の段階であり、それに向けての準備はなされていますが、旧ソ連のように、他国の富を簒奪できるような状況ではありません。逆に、現在は様々な国々に投資をする方が多いです

例えば、スリランカのハンバントタ港が2017年7月より99年間にわたり中国国有企業・招商局港口にリースされています。これは、中国がスリランカに投資をして、それをスリランカ政府が返すことができず、借金の方として、中国に取られたようなものです。

これでは、一見中国丸儲けのように見えますが、ハンバントタ港を所有している事は、利益にはなりません。この港が金のなる木であれば、スリランカをそれを手放すことはあり得ません。では、どうなるかといえば、管理費が嵩むだけの話です。これでは、何の富も生み出しません。

中国の国際投資は、国際投資の常識(自分の国よりはるかに経済発展している国に投資すると儲かる)を知らないためか、このようなものばかりです。

この状況で、米国から経済冷戦を挑まれ、さらに英国などの国々も次々とこれに同調すれば、中国も旧ソ連と同じ運命を辿ることは想像に難くないです。

今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるものです。

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2019年2月17日日曜日

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず―【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず



【ミュンヘン時事】河野太郎外相は16日(日本時間17日)、ロシアのラブロフ外相と、平和条約交渉の責任者に就いてから2度目となる会談に臨んだ。

【図解】日本の北方における領土の変遷


だが、焦点の北方領土問題で双方の溝は埋まらず、長期化の気配が濃厚。日本政府が描いてきた「6月大筋合意」のシナリオは崩れている。

「双方が受け入れ可能な解決に向け、かなり突っ込んだやりとりをした」。河野氏は会談後、記者団にこう説明した。今回は、前回1月14日の外相会談や同22日の首脳会談を踏まえ、相手方の主張に対する反証を述べ合ったもよう。日本側の同席者は北方四島に対する主権をめぐり「激しいやりとりになる場面はあった」と明かした。

河野氏は会談で、ロシア側の期待が大きい医療やエネルギー、極東開発など8項目の協力プランに触れ「(日ロの)貿易額が伸びている」と強調し、ロシアからの訪日客増加にも言及。4島での共同経済活動も取り上げ、経済分野の関係強化をてこに交渉の前進を図る姿勢をにじませた。

会談する河野太郎外相(左手前から2人目)とロシアのラブロフ外相
(右手前から2人目)=16日、ドイツ南部ミュンヘンのロシア総領事館

ただ、ラブロフ氏は会談後、北方領土の主権はロシアにあるとの立場を改めて強調した。交渉スケジュールについても、プーチン大統領が1月の首脳会談の際に「辛抱強さを要する作業が待っている」と長期化を示唆したのに続き、期限を切らない立場を鮮明にした。

「不法占拠」「固有の領土」といった表現を控える日本政府の配慮にもかかわらず、ロシア側が軟化する兆しはない。安倍晋三首相は12日、国会答弁で「期限を切るつもりはない」と表明。政府内には「6月まで数カ月でまとめるのは無理だ」(高官)と悲観論が広がった。

「70年間続いている問題だから、そう簡単に一足飛びに前へというわけにはいかない」。打開のめどが立たない現状を踏まえ、河野氏は16日、記者団にこうも語った。 

【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

北方領土に関しては、現実的に考えれば「二島どころか一島でも返してもらうのが現実主義」とうそぶく現“状”主義者の言っていることも、「四島どころか千島全部返せ!」とできもしない空論を叫ぶ空想主義者の言っていることも正しくはありません。

「北方領土は今は返っ来なくて良い」というのが一番現実的な考えだと思います。なぜなら、十九世紀的帝国主義者的ロシア、プーチンのことを考えれば、基本的に国境不可侵の原則など外交の道具としか思っていないだろうし、一方日本の現状主義者も空想主義者など全く現実的ではないからです。

現状の予想外に好転するかに見えた状況を見据えつつも、現実だけを見るべきであって、空想など顧みるべきではありません。

その上で、昨年9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの壇上で突如、同席した安倍晋三首相に「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」と提案した、プーチン大統領の思惑は、どこにあるのでしょうか。これをどう捉えるべきなのでしょうか。

そもそも、ウラジミール・プーチンとは何者なのでしょうか。プーチンは国内を秘密警察により掌握し、事実上の独裁体制をしいています。暗殺した人間は数知れません。「人を殺してはならない」という価値観が通じない相手です。

対外政策では、欧州では強気ですが、中国にはいっさい逆らったことがありません。この前の「ハチミツ」騒動(下の動画参照,プーチンが習近平にロシアの蜂蜜をお土産に持たせた件)程度のシャレで済む意趣返しレベルはしても、基本的にはシナの従属国と言っても良いくらいの現状です。


せいぜい、中国共産党の権力闘争のバランスで立ち位置を変えるが、江沢民や習近平個人にはともかく、プーチンがロシアの独裁者である以上、ロシアが中国に逆らうことは無いでしょう。

この状況は現在の北朝鮮問題をよく見れば、わかるはずです。北朝鮮は元々はロシア(当時のソ連)が建国させた国であるにもかかわらず、現在の北朝鮮問題は米中で話あわれることはあっても、ロシアは蚊帳の外です。

米国も、北朝鮮というと、中国とは話をしても、ロシアと話をすることはほとんどありません。これは米国も現状のロシアは中国のいいなりであることを理解しているからでしょう。北朝鮮で米中が何らかの取り決めを行ったにしても、ロシアがそれを反対することはないからです。

そんなプーチンの「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」という先の台詞を翻訳します。
「クリル(北方領土)なんか一島も返す気は無い。さっさと平和条約結んで業績らしきものにしてやるから、少しは金寄越せ」
そもそも1956年の日ソ共同宣言以来、二島返還は無条件で平和条約を結び、もう二島はその後の交渉だったのが、プーチンにひっくり返されています。これで二島どころか一島でも返ってくると考えたらよほどの愚か者かプーチンの回し者だとしか言いようがないです。ここまで読めば、タイトルの「北方領土は今は返ってこなくても良い」の意味がわかるでしょう。

今は、中国に従属するプーチン政権の間は、ということです。むしろ現状ではプーチンと交渉すること自体が、禍根を残すことになりかねません。現に、交渉するたびにプーチンは過去の日露合意を反故にしています。

北方領土を取り返したいなら、中露対決が再び高まった時まで待つべきなのです。現在ロシアのGDPは韓国なみです、ということは東京都のGDPとほぼ同じです。人口はあの広大な領土に一千四百万人しかありません。これは、日本より若干多い程度です。中国は13億人です。これでは、ロシアは本当はそうしたくなくても、中国に従属するしかありません。

今でもシベリアには中国人が大量入植しています。これを国境溶解と呼ぶ人もいるくらいです。プーチンは欧州方面でNATOと張り合わなければならないですから、極東では強気に出れないのです。だから中国にやられたい放題になっているのです。

ロシア人女性が中露国境の街で、長い冬に向けた生活必需品の買い出しに熱を入れている。写真は
黒河市の露店市場。国境のロシア人にとっては中国の物資はなくてはならないものになっている。

結局、戦争で取られた領土は軍事力で取り返すしかない以上、今は日本は、防衛力増強に努めるしかないのです。そしてロシアが本当に弱った時には四島どころか千島に樺太まで取り返しに行って良いのです。領土交渉ではそれ位の時間軸で考えるべきなのです。

北方領土、何島返還論が正しいのかという議論がしばしば聞かれますが、現在は「一島もいらん」で構わないのです。いかなる正論も、時宜にかなっていなければ、愚論よりもたちが悪いのです。

ただし、今は「一島もいらない」のですが、これを取り返せる時が従来よりは近づいているのは間違いありません。なぜなら、現在では米国の対中国冷戦が勃発しているからです。

これは単なる貿易戦争ではありません。ハイテク覇権や安全保障が絡んだ米中のガチンコ対決だ。中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の事件は、そんな対決の本質を如実に示しています。

このブログでは、米国は中国が体制を変えるか、体制を変えるつもりがないなら、経済的に相当弱体化するまで、制裁を続けると主張してきました。これには、短くて10年、長ければ20年の年月がかかることでしょう。

中国が体制を変えて、共産党1党独裁をやめ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などすすめて構造改革を行うことにした場合には、政治的には激変しますが、経済的にはさらに発展する可能性があります。この場合、ロシアは中国に対して強気にでることはできません。おそらく、北方領土が返還されることはないでしょう。

しかし、中国が米国の圧力に屈することなく、現状の体制を貫き通したとしたら、米国の制裁は継続され、それこそかつてのソ連が疲弊したように、中国も疲弊することでしょう。

そうなった場合、中露対決が再度深まることになります。そうなると、ロシアも疲弊することになります。その時こそが、まさに日本がロシアに対する北方領土交渉の好機が訪れるのです。

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2018年9月16日日曜日

今は我慢。中国の「自滅」を誘うために日本が取るべき外交戦略―【私の論評】日本は、中国の自滅を待つにしても、するべきことはしなければならない(゚д゚)!

今は我慢。中国の「自滅」を誘うために日本が取るべき外交戦略


日本がトランプの仕掛ける貿易戦争や、中国の尖閣諸島攻撃に遭っても国益を失わず上手く対抗できる策はあるのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、主要国の波乱含みの内政について分析するとともに、日本がいかに長期安定統治されている国かを紹介。焦らず周辺諸国と良好関係を構築する戦略をとれば、内政が不安定な国が先に自滅するだろうと論じています。

日本、戦略の要は【時間かせぎ】

今まで100万回書いていますが、日本の敵ナンバーワンは中国です。これ、別に私が、反中だとかそういう理由でいっているのではありません。中国が、アメリカ、ロシア、韓国を巻き込んで「反日統一共同戦線」をつくろうとしているので、そういうのです。完全証拠は、こちら。
ところが日本には、「アメリカが主敵だ!」という意見も多く、その手の本もよく売れています。なぜ、そういう話になるのでしょうか? 日本はアメリカ幕府の天領だからです。そして、「ロシアは北方領土を返さないから敵だ!」という意見は、とても多い。さらに、「世界中で慰安婦像設置運動をつづけている韓国は敵だ!」という人も多いです。私も、憤りを共有していますし、理解できます。これらの意見は、どれも一理あります。つまり、「日本の敵はアメリカ中国ロシア韓国だ!」というのです。
しかし、こういう考えは、「まさに中国の思惑どおり」ですね。100万回読んだかもしれませんが、原文を熟読してください。戦略の骨子は、以下のようになっています。
  • 中国、ロシア、韓国で【反日統一共同戦線】をつくろう!
  • 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させよう!
  • 日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣、【 沖縄 】である!
  • 日本に【 沖縄の領有権は 】ない!!!!!!
  • 【 アメリカ 】も反日統一共同戦線に引き入れよう!
そして、今の日本人の意識の状態は、
  • アメリカは敵
  • ロシアも敵
  • 韓国も敵
これって、「まさに中国の思惑どおり」なのではないですか????
もちろん、日本人がアメリカ、ロシア、韓国を嫌う客観的な理由はあります。しかし、もし私たちが、「日本を守りたい」「戦前の失敗を繰り返したくない」と思うなら、「感情的ではなく、「戦略的」に考える必要がある。
戦略は明らかです。中国は、日米分断、日ロ分断、日韓分断を狙っているので、日本は逆に、日米日ロ日韓関係を強固にしていく。たとえば、トランプさんから安倍さんに、貿易関係で厳しい要求がきそうです。私は、
  • シェールガス、シェールオイルを買う
  • 攻撃型の武器をどんどん買う
ことで、対米貿易黒字削減に取り組めばいいと思います。なんやかんやいっても日米関係が強固であれば中国は(少なくとも現時点では)尖閣を侵略できません
2010年の尖閣中国漁船衝突事件。あれは、なぜ起こったのでしょうか? まず、リーマンショックから、アメリカは沈みまくっていた。そして、09年に誕生した鳩山政権が、遠慮なく日米関係を破壊した。この二つの要因で中国は、「アメリカは日本を助けないだろうと予想した。だから、ああいうことになったのです。
アメリカも弱体化が著しいですが、それでも日米関係が強固であれば、中国はまだ手出しできません

日本の強さは、安定性

日本の戦略は、アメリカロシア韓国友好関係を築くこと。「目に見える中国包囲網」を日本が主導する必要はありません。要は、日米関係、日ロ関係、日韓関係が良好であればそれでいい
そして、日本は、ひたすら時間を稼ぎます。なぜ? 日本は、【世界一安定している国】だからです。これからの世界を見るに、「安泰だ!」といえる国は多くありません。アメリカは、1945年がピークだった国。冷戦終結後に2度目のピークを迎えた。その後は、衰退しつづけています(それでも世界最強ですが)。
中国の成長期は2020年まで。その後、経済は伸びず、日本以上の少子化が襲い、体制維持が難しくなっていくことでしょう。ロシアは、現在でも、制裁でかなり疲弊しています。石油、ガス依存がひどく、「成長戦略が描けないでいる。欧州は、イスラム移民が増えすぎて、後50年もすると「キリスト教文明」ではなくなり、「イスラム圏に飲み込まれてしまうことでしょう。
日本は、どうでしょうか? 皆さんご存知のように、日本は「現存する最古の国」です。政治家はコロコロ変わりますが、不変の皇室があり、異常に安定している。そして、民主主義が根付いているので革命は起こりにくい
日本の政治制度も、非常にすぐれていると思います。たとえば自民党がダメになれば、ちゃんと政権交代が起こる。政権をとった民主党がダメなら、総理は、一年で首になる。民主党に3人総理をやらせて、ダメなら、また自民党に政権が戻る。国益にだいたい沿った政治をする安倍内閣は、長期になる。
というわけで、日本の政治制度はすばらしいです。これがアメリカみたく、「4年、二期までです」となったらどうですか? 皆さん、鳩山内閣が4年続いたことを想像してみてください。まさに悪夢でしょう???
というわけで、他の大国と比べて日本は安定している。日米、日ロ、日韓関係を良好にたもつ。日印、日欧、日・東南アジア、日豪関係を良好にたもつ。そのまま10~20年経てば、中国は体制が維持できず自滅することでしょう。
【私の論評】中国の自滅を待つにしても、日本するべきことはしなければならない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、大局的にはこのような行き方が正しいものとは思います。しかし、中国が自滅するまでには、少なくとも10年ながければ20年はかかるとみると、これだけでは足りなくなものと思います。

特に日米関係に関しては、長い間には様々な紆余曲折があると思います。

実際、それを予感させる出来事が最近立て続けに起こりました。6月7日にホワイトハウスで日米首脳会談が行われた際に、冒頭でトランプ大統領が「私は真珠湾を忘れない」と安倍晋三首相に不満を示したという。対日貿易赤字を抱えるアメリカが日本の経済政策を批判したもの、と同紙は解説している。

ただし、これは誤りであることは、このブログで指摘しました。以下に該当記事のリンクを掲載しておきます。
「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!
会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では米国では保守派の間では過去の歴史が見直されていて、単純な「日本悪玉観」は否定されており、いわゆる「リメンバー・パールハーバー」の意味も旧来の意味とは異なっていることを掲載しました。

トランプ大統領も保守派ですから、当然トランプ氏の発言の中にでてきた「リメンバー・パールハーバー」の意味も旧来の意味とはことなるわけです。

もう1つは、7月に日本と北朝鮮の情報当局がベトナムで極秘接触していたことです。日米両国は同盟国として対北問題で緊密に連絡し合うと約束したにもかかわらず、日朝の接触は伝えられていませんでした。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米も知らなかった…日朝極秘接触 7月にベトナムで拉致問題全面解決に向け協議 日米連携に影落とす危険性も ―【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!
北朝鮮交換と接触したとされる北村滋内閣情報官
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に掲載します。
これは、同時に中国の現状の大変さを物語っているとも受け取れます。日米が協同して、中国を叩くということになれば、中国には太刀打ちできません。

中国としては何とかして、日本を味方に引き入れ、日本を親中派政権にして米国の経済冷戦をかわしたいと考えているのかもしれません。だからこそ、ワシントン・ポストを利用して、日米が離反するように仕向けている可能性があります。しかし、次の総裁選では安倍総理が圧倒的に有利ですから、そのような目論見は成就することはないでしょう。

これは、しばらく趨勢をみてみないことには、まだなんとも言えませんが、ワシントン・ポストの報道にはこういう背景があるということを知った上で、報道を吟味すべきと思います。特にワシントン・ポストを鵜呑みにする日本の報道には、留意すべきです。
日米間の隙間風を伝えるこの2つのニュースはどちらも政策当局からのリークとの見方があります。「真珠湾発言」は安倍政権の官邸外交に反発する日本の霞が関が流したもので、「日朝接触」の出どころは中国だというものです。

ところで、非核化交渉は6月12日の米朝首脳会談以降、うまくいっていません。北朝鮮が朝鮮戦争の終戦宣言を求めるのに対し、米側は非核化の具体的行動を要求し、折り合いがつきません。

いら立ちを募らせるトランプは、非核化交渉が不調に陥った背後に中国の存在がある、と批判しています。北朝鮮を対米外交の駒として使っている、というのです。そこで中国は日朝秘密交渉をリークして、トランプの怒りの矛先を日本に向けさせようとしたというのが、この出来事の真相かもしれません。

しかし、この2つの出来事が、日米関係をわずかでも毀損させたという事実は全くありません。

とはいいながら、日米を離反させようと考える勢力は、中国は無論のこと、日本の中にも、米国の中にさえ存在します。今後日本が中国の自滅を待つにしても、それまではまだ時間があります。

このような勢力の存在の暗躍は、ハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンチントン教授が96年に書いた論考『文明の衝突』(邦訳・集英社)そのもののようです。同書によると、ヒューマニズムを基盤とする西洋文明の代表者アメリカは早晩、儒教の代表者である中国と世界秩序をめぐって激突することになるとしています。

「精神的なぬくもりを感じさせない」冷酷な宗教である儒教は個人よりも集団に重きを置き、権威と階級などを重視します。これは、独裁体制を支えてきたイデオロギーでもあるので、中国も北朝鮮も儒教を放棄しません。中国が考える国際秩序は国内秩序の延長線上にあり、国力の増大に伴い西洋中心の秩序に挑戦してくるとしています。

『文明の衝突』の中でハンティントンは、中国や朝鮮、その他いわゆる東アジアのことも記載されています。そうして、これらのことを東アジア文化圏としています。では、日本は、その中に含まれているかといえば、そうではありません。

日本は、日本文化圏としています。ハンティントンも、最初は、日本も中国に影響を受けた国なので、東アジア圏の中に含めようと考えたようですが、結局それでは実体を表しておらず、日本は、あまりにユニークで、どうしても、東アジア文化圏に含むことはできず、結局は、日本文化圏としたと、著書の中にも掲載されています。

ハンティントンは「アジアにおけるアメリカの影響力が小さくなると、日本は<再びアジア化>すべきだとする考えが日本国内で勢いを増し、東アジアの舞台で中国が改めて強い影響力を持つのは避けられないと考えだすだろう」とも書いています。

文明の衝突の表紙

既にそうした前例がありました。89 年に中国が天安門広場で民主化を求める市民と学生を弾圧した後、自由主義陣営が対中制裁を科しました。ところが92年、冷戦崩壊の隙を突くかのように日本は天皇の訪中決め、欧米の結束を崩壊させたのです。

日本の中には明らかに「日本は再びアジア化」すべきだという考えを持つ集団がいます。それは、野党は無論のこと与党の自民党の中にさえ存在します。

ただし、これらの勢力は中国が尖閣諸島沖で、中国の漁船が日本の海上保安庁の艦艇に体当たりしたり、南シナ海で環礁を埋め立て軍事基地化するなどの他にも立て続けに傍若無人な振る舞いを繰り返したため、日本の対中世論は急激に悪化し、今では影を潜めています。

しかし、これらがいつ息を吹き返すかは予想がつきません。日本はこうした勢力を封じ込めつつ中国の自滅を待つ必要があります。

さらに、国際情勢がこれだけ急激に変化してしまったのですから、従来通り日本の防衛を米国に頼るのではなく、少なくとも、自国民の生命財産を守るためには、自衛戦争をできるようにしておく必要があります。

今後米国は日米の同盟関係を崩すことないとは思いますが、日本が日本の領土を守るために何もしないということであれば、今すぐではなくても、今後10年、20年たてば、日米関係にヒビが入る可能性も十分にあります。

ブログ冒頭の記事にもあるとおり、日本の中には米国も、韓国も、ロシアも敵などと考える勢力は確かに存在します。その中で、韓国やロシアはたとえ敵に回っても、GDPでみると両国とも東京都なみですから、さほど悪影響はないかもしれません。無論できたら、敵に回さずに、味方に引き入れておいたほうが良いことは良いには違いはありません。

しかし、米国を本当に敵に回してしまえば、おそらく日本としては、中国と手を組むしかなくななります、これこそ中国の思惑通りということになります。

そんなことになれば、先日のこのブログに掲載したシーパワー国の同盟でもある日米英同盟が破綻しています。

そんなことになれば、中国の崩壊どころか、中国としては日本の経済力を最大限に利用して、米国と対峙することになります。その挙句の果に、中国と共倒れということになりかねません。

そのようなことだけは絶対に避けるべきです。そのためにも、日本は少なくとも自国領土を守れるように、体制を整えておくべきです。

以上まとめると、日本は、国内で「日本は再びアジア化」すべきだという勢力を封じ込めつつ、少なくとも自国領土を防衛できる体制を整えつ、多くの国々を味方につけ、中国の自滅を待つという外交戦略が最上であると考えます。

今後10年、20年と時がすぎれば、日本は他国を味方に引き入れただけでは、中国の自滅を待てない状況になるのは明らかだと思います。

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