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2020年7月21日火曜日

今こそ5Gからファーウェイを締め出すとき— 【私の論評】今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるもの!(◎_◎;)

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岡崎研究所

今年の1月、英国のボリス・ジョンソン首相は、5G通信網へのファーウェイの参入について、核になる重要な通信網からは除外する、35%以下の制限をつける、という条件付きで、それを容認した。当時、それを聞いたトランプ大統領が激怒したというニュースが流れた。


米国では、2019年5月に、ファーウェイは安全保障上好ましくない企業として商務省のリストに登録され、大統領は、同社との取引を原則禁止する大統領令に署名した。更に、今年の5月15日、米国は、ファーウェイへの部品供給元である台湾の「台湾半導体製造会社(TSMC)」のアリゾナ州への工場誘致と、ファーウェイへの制裁強化を発表した。

6月30日、英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣のダウデン氏は、議会において、英国は将来的にファーウェイを5Gに使用しないだろうと述べた。これは、米国のファーウェイへの制裁を受けての英国の政策転換であった。英国政府高官は、セキュリティ上信頼性が低くなったファーウェイを使用するわけには行かなくなったと説明する。

この件に関し、英国の秘密情報部(MI6)の元長官ジョン・サワーズが、7月5日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、ジョンソン首相がファーウェイの英国からの締め出しを決めたが、全ての西側の民主主義国家が中国のより攻撃的手法に対し、団結して断固たる態度で臨むことが肝要である、と述べている。

サワーズの論説の見出しは、「英国は、その5G網からファーウェイを締め出すべきである」(The UK should bar Huawei from its 5G network)であり、最初の部分はファーウェイを中心に論じているが、途中から最近の中国のより攻撃的な対外手法に論点を移している。論説は中ほどで、「全ての西側民主主義国家が、中国のより攻撃的な手法に対し、団結して断固たる態度で臨むことが肝要である」と言っているが、これが、論説が一番言いたかったことであろう。

サワーズは、論説の中で、過去6か月で過去6年よりも習近平主席の中国が分かった、と述べているが、最近、中国の対外関係でのより攻撃的な手法が目立つ。

南シナ海でのベトナム漁船への攻撃、中印国境での中国兵のインド軍への攻撃などがあったが、香港での国家安全維持法の制定もその一環と考えてよいだろう。

このような攻撃的な手法は最近「戦狼外交」と言われている。「戦狼」とは、2015年と 2017年に中国で大ヒットしたアクション映画シリーズのタイトルで、国内外の敵から中国の国益を守る戦いに身を投じる戦士を意味するらしい。中国の環球時報は4月に欧米に戦いを挑む中国の「戦狼外交官」を称賛したという。習近平はこのような攻撃的な対外手法を今後とも続けるのではないか。

それに対して、西側諸国は、サワーズの言うように、団結して断固たる態度で臨む必要がある。そして中国が攻撃的な対外手法を続けることが中国にとって得にならないことを知らしめることが重要であろう。

今や世界第2の経済大国となった中国と関係を持たないわけにはいかない。これは貿易面のみならず、投資面においても言えることだろう。要は中国に対する過度の依存が政治的リスクを伴うものであることを常に自覚して行動することが必要であると思われる。

【私の論評】今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるもの!(◎_◎;)

ここのところ、英国は矢継ぎ早に、中国への対抗措置を打ち出しています。

今月、19日に英国は、中国西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のイスラム系少数民族に対する中国政府の対応に「吐き気を催すような甚だしい人権侵害」があると非難し、「深い憂慮」を表明しました。 人権団体や専門家は、ウイグル人をはじめとするチュルク語(Turkic)系の少数民族100万人超が拘束され、各地の強制収容所群に収容されているとみています。

中国の劉暁明駐英大使は19日朝、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、新疆ウイグル自治区でウイグル人が目隠しをされて列車に乗せられている様子に見えるドローン映像を見せられて、「何の映像か分からない」と述べのべました。 劉大使はさらに、中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人女性の不妊手術や妊娠中絶を強制しているという現地報道を否定しました。

ドミニク・ラーブ(Dominic Raab)英外相は、新疆ウイグル自治区で強制不妊手術や大量拘禁が行われているとの報告に、もっと国際社会が注目する必要があると主張し、「吐き気を催すような甚だしい人権侵害が行われているのは、明らかだ」「深く、深く憂慮している」とBBCに語りました。

今月14日付の英紙タイムズは、空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群が来年初め、初の本格任務として極東に派遣される計画が進んでいると、英軍高官らの話をもとに報じました。

2017年に就役した「クイーン・エリザベス」は、全長約280メートル、排水量約6万5000トンで、英海軍史上最大級の艦船。艦橋が前後に2つある特殊な形状をしています。自衛隊も導入する垂直離着陸可能な最新ステルス戦闘機「F35B」を運用します。

英国が、東アジアを含めたグローバルな安全保障にコミットする姿勢として大きな意味を持池ます。『クイーン・エリザベス』は、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦『いずも』より大きく、米海軍の原子力空母『ロナルド・レーガン』よりは小さいスケールです。

クイーン・エリザベス
人権や民主主義の本家である英国が見せた今回の果敢な対応は、歴史的な一歩です。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先進国の姿勢が問われるでしょう。これまで尻込みしていた国も、米英に追随するケースも出てくるはずです。中国が反発して報復に出れば、かえって国際社会から見放されることになるでしょう。

英国がこのような姿勢に転じたのは、なんといっても香港の問題があるでしょう。中国が6月末、香港に施行した国安法は、中英共同宣言で保障した2047年までの「高度な自治」に明確に違反するものです。香港の旧宗主国である英国をはじめ、米国や日本など先進7カ国(G7)は事前に、国安法導入に「重大な懸念」を伝える外相共同声明を発表していたが、中国はまったく聞く耳を持ちませんでした。

ボリス・ジョンソン英首相は今月初め、統治時代に香港市民に発行した「英国海外市民(BNO)旅券」の保有者を対象に、英市民権を付与する道筋をつける意向を表明しました。英国は、香港で中国に理不尽な思いをさせられたので、覚醒したと言えるでしょう。

それ以前の英国は、中国とのビジネス関係を失いたくなかったせいでしょうか、かなり歯切れの悪いものでしたが、完璧に吹っ切れたようです。

ボリス・ジョンソン英首相
昨年、トランプ大統領が、中国経済に大きなボディブローをくらわし、習近平を土俵際まで追い詰めたところで新型コロナウイルスが起こりました。トランプの経済制裁により、殆どの中国の産業の輸出がストップし、中国不動産バブルも弾け始めています。中国経済はやがて崩壊すると多くの人が言っています。

しかし中国共産党はしぶとく、簡単には崩壊しないでしょう。習近平はコロナウイルス災害を逆手に取り、形勢の挽回に動き出しました。こうした疫病によるショックを封じ込むのは、情報統制をし、人民を犠牲にする全体主義的な中国共産党国家の方が民主主義国よりやり易いです。

中国はコロナウイルスを封じ込めるために、徹底した都市のロックダウンをし、ITにより個人の行動管理を実行しました。キャシュレスの支払い記録、スマートフォンによる個人の位置情報と全国に張り巡らせた監視カメラ網による顔認証のデータをもとに感染を終息させつつあるといわれています。

4月8日に武漢の都市封鎖を解除し、中国は、いち早くコロナウイルスを退治したので,まだコロナウイルスと闘っている国ぐにを助けるとして、マスク外交や医師団を派遣するという大キャンペーンを繰り広げており、その情報戦を繰り広げています。

習近平は素早く中国内では最早奴隷同然のウイグル人をも動員して、中国の産業の生産開始の号令をかけました。中国はコロナウイルスが発生しても、半導体と通信機器の生産は中断することなく稼働を続けてきました。

こうして中国はこのコロナウイルスを逆手に取って、米国の覇権の座に迫ろうとしていると見るべきです。リーマンショックの時も、中国は、間髪を入れず4兆元を投下し、結果的にこれで輸出を伸ばして貿易黒字として米ドル3兆ドルを獲得し、この資金で中国は「一帯一路戦略」を進めたのです。それにより中国は米国に挑戦できるという自信を得たのです。

米中がデカップリングしても、中国は14億人の市場を持っており、その中で新しい生産・市場関係を創り、経済を維持することができるでしょう。更に一帯一路でアジア、ヨーロッパ、アフリカを取り込み、版図を更に拡大していく可能性があります。

しかし、習近平が恐れているのはトランプが仕掛けようとしてる「米国による中国在米資産の凍結」、「米国の中国に対するコロナウイルス災害に対する賠償訴訟」、「在中国の日本企業とアメリカ企業の中国からの引き上げ」、「米国株式市場に上場している中国企業の上場廃止」等々です。

そこにきて、今回の英国の動きです。この動き、日本はもとより、EU諸国もいずれ巻き込むでしょう。そうして、トランプ氏の対中国制裁に追づいすることになるでしょう。

そしてこれは、「共産党の内部の抗争」、「中国の民衆の政府への反乱」へと結びつくことになるでしょう。

共産党内部の抗争は間違いなく激化します。中国共産党員のほとんどは、共産党員になることにより、中国では最も重要な人脈を得られるから入党します。なぜ人脈が必要かといえと、もちろん金儲けのためです。

この人脈が曲者で、ある特定の人物が失脚すると、それに連なる人脈も同じく失脚するというのが常です。そうして、習近平の失政により、財産を凍結されたりして実害を受けた共産党員は、習近平に恨みを抱くことになるでしょう。

金の切れ目が、縁の切れ目です。そのような共産と幹部が増えるに従い、中国共産党の統治の正統性は崩れていくことになるでしょう。そうなれば、民衆の反乱につながることになります。

そうして、中国共産党は崩壊することになるかもしれません。そうでなければ、米国は、中共を経済的に弱体化させ、少なくともソ連崩壊後のロシアのような状態にまで弱体化させることになるでしょう。

崩壊直前のモスクワ。物資不足のためどこへ行っても行列が目立った

かつての、ソ連は日本に追い越されるまで、GDP世界第二位でした。今日のロシアのGDPは、韓国もしくは、東京都と同程度の水準です。10位以内にすら入っていません。

現在は、復活しましたが、軍事費も日本のそれを下回ってる時もあったほどです。ただし、そうは言いながら、現在のロシアは、旧ソ連の核と軍事技術やノウハウを継承しているので、決して侮ることはできません。旧ソ連の核弾頭は、今でもロシアに温存され、いつでも発射できます。

しかし現在の状況では、ロシアが一国で、大規模な軍事作戦を遂行したり、米国のように効果のある経済制裁などはできません。今では、米国抜きのNATOとも戦争はできないでしょう。すれば、負けます。

旧ソ連は、第二次世界大戦に勝利して、当時の東欧等から様々な資産を奪い、特に東独から多くの科学者を連れてきて、彼らに軍事や宇宙開発、民生品の開発をさせ、経済発展をしました。これは、50年代の米国の経済学者によって暴露されました。

その経済学者によると、ソ連の経済は簡単すぎるほど簡単で、投入=算出でした。50年代でも、他国の資源や技術を奪い続け、多くの資源を投入することによって、経済発展していたのです。つまり、何の付加価値もつけずにただ、投入されたものを算出するだけの経済だったのです。

この意味するところは、放置しておいても、ソ連経済は崩壊するということでした。その後のソ連は、体質的にあまり改善されることなく、崩壊しました。

ソ連邦の人口は、最大で約3億でした。今日のロシアは1億4千万人です。これに比して、中国の人口は、現在約14億人ですから、先にも述べたように、中国は自国の経済だけでも十分成り立つ可能性があります。

ただし、ソ連は、第二次世界大戦直後から他国から奪って資源で、経済的にも超大国になり、それだけでなく、強大な軍事力を用いて、自らの経済圏を作り、他国の資源を簒奪したり、今の中国と同じく、他の先進国の技術を剽窃し、しばらくは超大国として経済発展を続けることができました。

しかし、中国は違います、当初は発展途上国であり、最近GDPを伸ばして、国全体では世界第二のGDPを達成しましたが、一人当たりのGDPでは、英国にも及びません。さらに、致命的なのは、「一帯一路構想」は未だ、構想の段階であり、それに向けての準備はなされていますが、旧ソ連のように、他国の富を簒奪できるような状況ではありません。逆に、現在は様々な国々に投資をする方が多いです

例えば、スリランカのハンバントタ港が2017年7月より99年間にわたり中国国有企業・招商局港口にリースされています。これは、中国がスリランカに投資をして、それをスリランカ政府が返すことができず、借金の方として、中国に取られたようなものです。

これでは、一見中国丸儲けのように見えますが、ハンバントタ港を所有している事は、利益にはなりません。この港が金のなる木であれば、スリランカをそれを手放すことはあり得ません。では、どうなるかといえば、管理費が嵩むだけの話です。これでは、何の富も生み出しません。

中国の国際投資は、国際投資の常識(自分の国よりはるかに経済発展している国に投資すると儲かる)を知らないためか、このようなものばかりです。

この状況で、米国から経済冷戦を挑まれ、さらに英国などの国々も次々とこれに同調すれば、中国も旧ソ連と同じ運命を辿ることは想像に難くないです。

今日の英国の行動は、まさに中国の将来を予感させるものです。

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2019年3月12日火曜日

迫りくる台湾をめぐる米中危機―【私の論評】日本を軽視する韓国に対して制裁が俎上に登っている現在、日本は台湾に対する支援を厚くすべき(゚д゚)!

迫りくる台湾をめぐる米中危機

岡崎研究所

台湾をめぐる米中の対立は、本欄でも何度も指摘してきた通り、高まる一方である。こうした事態に懸念を示す、最近の論説、社説の中から、米外交問題評議会のリチャード・ハースによる2月15日付け論説を中心にご紹介する。同論説の要旨は、以下の通り。


 米中外交は、米国は「中国は一つであり台湾は中国の一部であるという中国の立場」を認識する(acknowledge)とする、3つのコミュニケ(1972年、1978年、1982年)を基礎としている。1979年の台湾関係法には、米国の台湾へのコミットメントが明記されている。3つのコミュニケと台湾関係法が相まって、米国の「一つの中国政策」の基礎をなしている。

 この構造は、勝利の方程式となってきた。中国は世界第二の経済大国にまで発展し、台湾も経済発展と民主化を遂げた。米国は、地域の安定、中台双方との緊密な経済関係により利益を得ている。

 問題は、時間が尽きつつあるのではないかということだ。長年、米国の政策立案者は、台湾が独立その他、中国に受け入れられないことをしないか、懸念してきた。台湾の指導者は理解しているように見える。ただ、彼らは「一国二制度」による統一を拒否している。

 しかし、今や、安定は米中双方により危機にさらされている。中国経済の鈍化は習近平を脆弱な立場に置き得る。習が、国民の目を経済成長の鈍化から逸らすために外交政策、とりわけ台湾問題を使うことが懸念される。習は今年1月、台湾併合を目指す考えを繰り返し、そのために武力行使を排除しないと述べた。

 米国も、過去40年間機能し続けた外交的枠組みを守らないようになってきている。ジョン・ボルトン安全保障担当補佐官は、就任前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「一つの中国政策を見直す時だ」とする論説を寄稿している。トランプも、米大統領(あるいは同当選者)として、1979年以来初めて台湾の総統と直接話をした。

 最近、5人の共和党上院議員が、ナンシー・ペロシ下院議長に、蔡英文総統を米議会に招くよう求める書簡を送った。そんなことをすれば、米台間の非公式の関係と矛盾し、中国の強い反応を招く。

 政府内外の多くの米国人が中国に強いメッセージを送ることを望み、そうすることで失われるものはほとんどない、と信じている。

 この計算が正しいかどうか、全く明確ではない。中国の経済制裁、軍事力行使が行われるような危機が起これば、2300万の台湾人の自治、安全、経済的繁栄が危機に瀕する。中国にとり、台湾危機は米国および多くの近隣諸国との関係を破壊し、中国経済にダメージを与えるだろう。

 危機により、米国は台湾への支援を求められ、それは新冷戦あるいは中国との紛争に繋がり得る。といって、台湾の自助努力に全て任せるという判断は、米国の信用を損ね、日本の核武装、日米同盟の再考に繋がりかねない。

 関係者全てにとり、リスクが高くなっている。相手にとって受け入れられないような象徴的な一歩を避けるのが最善だ。現状維持には欠点があるが、一方的な行動、きちんとした解決策の伴わない状況打破の企てよりは、はるかにマシである。

出典:Richard N. Haass,‘The Looming Taiwan Crisis’(Project Syndicate, February 15, 2019)
https://www.project-syndicate.org/commentary/looming-taiwan-crisis-over-one-china-policy-by-richard-n--haass-2019-02

 上記論説でハースが言っていることは、3つのコミュニケと台湾関係法に基づく「一つの中国政策」が40年間機能してきたのだから、今後ともそれに従って各当事者が自制すべきである、ということである。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、2月19日付け社説‘Taiwan tensions call for restraint from big powers’において、米国による台湾への武器売却、米海軍艦艇による台湾海峡の通過、台湾への武器売却の継続と当局者の交流を求める「アジア再保証イニシアティヴ法」など一連の米国の動きを「中国は刺激的だと見ている」とする一方、中国の台湾併合への熱意はこれまでになく高まっている、として各当事者に自制を呼びかけている。

 自制は重要だが、米国の「一つの中国政策」の枠組みが今後も有効であるのかは、検討を要する。中国が台湾を併合する意思は一貫しているが、今や、中国は軍事大国であり、台湾併合のために武力行使を排除しない、と明言している。米中双方が危機を作り出しているというが、やはり中国の責任が重いのではないか。米国が強い態度をとり中国を抑止することの方が「現状維持」に資すると思われる。米国の最近の対中強硬姿勢は止むを得ないと言うべきであろう。上記フィナンシャル・タイムズ社説が挙げているような、米国による台湾支援強化の措置は、ますます強化されると考えられる。ちょうど、2月下旬にも米海軍の艦艇が台湾海峡を通過したばかりである。

 蔡英文の米議会への招聘については、ワシントン・ポスト紙のジョン・ポンフレット元北京支局長が2月18日付の論説‘China’s Xi Jinping is growing impatient with Taiwan, adding to tensions with U.S.’で、中国を怒らせるとする専門家の見解と、それほどでもないとする専門家の見解を紹介している。

 米国の対応で、むしろ最も心配すべき点は、トランプ大統領が、台湾問題が米中の間でカードとなり得ると解釈され得るような発言をしてしまうことであろう。トランプは、そういう不用意な発言をする傾向があるので、注意を要する。

【私の論評】日本を軽視する韓国に対して制裁が俎上に登っている現在、日本は台湾に対する支援を厚くすべき(゚д゚)!

中国政府の指導者たちは建国以来約70年にわたり、台湾の統一を将来達成すべき課題として扱ってきました。ところが台湾政府は中国共産党の支配下に入ることにまったく関心を示していません。

2016年に独立志向の民進党から出馬した蔡が総統選挙で当選して以来、中国の台湾に対する敵対的な姿勢は強まっています。中国はこれまで、中台統一のための武力行使を放棄したことは一度もありません。

台湾周辺での中国の軍事演習により武力行使への懸念は高まっています。ところがロンドン大学東洋アフリカ学院中国研究所のスティーブ・ツァン所長は、アメリカの介入を避けるためにトランプ政権との交渉が行われない限り、人民解放軍が台湾に軍事攻撃を仕掛けることはないだろうと述べました。

ロンドン大学東洋アフリカ学院中国研究所のスティーブ・ツァン所長

「あと5年ぐらいは、(アメリカの反対を押し切ってまで)台湾に武力行使する力は中国にはないだろう。もしやれば、侵略の過程で前線と先進的な装備、軍隊の大半を失いかねない」

中国がいくら武力を用いて、台湾を統一するといきまいてみても、現実はこのとおりだと思います。

当面中国は軍事力以外の方法を用いて、台湾を統一する道に走ることになるでしょう。おそらく、それは香港を統一したときのような方式になるでしょう。

最近、中台統一を受け入れたら、あなた方は10の特権を享受できると、中国軍高官がラジオを通じて台湾の人々に呼びかけました。

台湾メディアによると、この放送は中国人民解放軍の台湾向けラジオ局「海峡の声」が流したものです。中国軍の王衛星少将は、1949年に国共内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて政権を樹立して以来、台湾人民は「真実を知る権利を剥奪されてきた」と述べ、その理由を5つ挙げました。

王衛星少将

王によると、台湾の人々は「1国2制度」を正しく理解していない。その理由は「第1に台湾当局による長期にわたる反共教育、第2に台湾独立派の分離主義イデオロギーの悪影響、第3に再統一に対する警戒感、あらゆる再統一プランを積極的に回避もしくは拒絶する姿勢、第4に一部メディアの誤った報道、第5に1国2制度に関する情報提供が不十分で、人々がこの制度をきちんと理解していないこと」だという。

その上で王は、台湾の人々が台湾海峡の向こうの本土の後ろ盾を得れば、10の特権を享受できると述べました。

第1に、中国政府の指導下で自治政府を維持できる。王によれば、一案として台湾を中国の「特別行政区」に指定し、その行政府が「台湾の基本法(憲法)」に基づいて統治を行う方式も可能で、その場合中国共産党なり人民解放軍の幹部が台湾に常駐することはないといいます。

第2に、台湾の代表が本土の政治に参加することは歓迎される一方で、「1つの国」という概念に抵触しない限り、台湾は独自の法律を制定できる。立法のみならず、第3第4の特権として、行政と司法の独立も認められるそうです。

第5に、外交の権限は最終的には中央政府に帰するのですが、台湾当局は「台北」もしくは「中国の台湾特区」として、外国政府と独自に交渉を行えるとしていす。第6に、人民解放軍と共に国防の任に当たるという条件で、台湾は独自の軍隊を持てるとしています。

第7に、台湾の企業や住民は中央政府に対する納税義務を免除され、しかも要請があれば、中央政府は台湾に補助金を支給するとしています。第8に、台湾当局は独自通貨を発行でき、その通貨には人民元とは独立した為替レートが適用され、台湾は独自の外貨準備を保有できるそうです。第9に、台湾当局は独自の通商政策を実施し、外国と貿易協定を締結できる。

そして最後に、「平和的な再統一」が実現すれば、台湾当局は独自にパスポートを発行でき、私有財産制や宗教の自由など台湾の人々がいま享受している権利や制度は完全に守られると、王は保証しました。

王衛星少将のソフトな呼びかけがある一方で、中国人民解放軍軍事科学院の元副院長で、同軍中将の何雷(He Lei)氏は9日、中国が武力行使による台湾併合を余儀なくされた場合、台湾の独立支持派は「戦争犯罪人」と見なされると警告しました。

「1国2制度」は、かつての中国の指導者・鄧小平が提唱した方式で、1997年に旧ポルトガル領のマカオ、1999年に旧英領の香港がこの方式で中国に返還されました。この2つの特別行政区は建前上は一定の経済的・政治的な自治を認められているものの、最終的には中央政府の決定に従わなければならなりません。香港では中国による言論弾圧が強まっており、もはや「乗っ取られた」も同然です。

共産主義中国の「建国の父」毛沢東が1979年に「台湾同胞に告げる書」を発表してから40周年に当たる今年、習近平国家主席は年初に1国2制度の適用などの台湾政策を発表。中台統一の実現は「責務であり、必然である」と述べて、必要ならば軍事行動も辞さない姿勢を見せました。

現在、台湾と正式に国交を結んでいる国は十数カ国にすぎないです。毛が中台統一を呼びかけた1979年には米中国交正常化が実現、アメリカは台湾と断交しました。ところが米国による台湾への軍事的な支援など非公式な関係は続き、中国は緊張高まる台湾海峡で実弾演習を行うなど軍事演習を強化しています。

蔡英文総統は先月末、日本メディアの取材に応じ、安全保障問題などについて日本政府と対話したいとする意向を表明しました。これについて国立政治大国際関係研究センターの研究員、蔡増家氏は、蔡総統には台湾と米国が安全保障面において連携関係にあることを日本に伝え、台湾は日本とも米国と同様の連携関係を築けると示唆する意図があったと分析しています。

国立政治大国際関係研究センターの研究員、蔡増家氏

蔡増家氏は、蔡総統の発言には主に3つの意図があると分析。第1に、安倍晋三首相が太平洋からインド洋にわたる地域で安全保障や経済成長の協力を目指して掲げる「インド太平洋戦略」への参加に向けた意思表示だといいます。蔡増家氏は日本が台湾にとって重要な隣国であり、共に中国の脅威に晒されていることに言及した上で、安全保障面において台日間の情報共有は非常に重要となると説明しました。

第2は、日本と中国の関係が改善に向かっていることに関連しており、台湾と民主主義の価値観を共有する日本が、中国と接近する一方で台湾との関係を犠牲にしないよう訴える目的が蔡総統にあったとみられるといいます。

第3は、蔡増家氏によれば、インタビュー直前の先月25日に米軍艦による今年2度目の台湾海峡航行があったことに触れ、このタイミングでの日本への対話要請は、台湾と米国と日本が民主主義の価値観を共有していることを前提に、日本とも米国と同様の安全保障面における連携強化を進めたいという宣言とも取れると述べました。

台日間の安保対話が実現する可能性について、蔡増家氏は軍事面での協力や共同訓練の実施などについては現段階では困難だとし、情報共有に関する連携なら実現する可能性は比較的高いとの考えを示しました。

蔡総統のインタビューは、2日付の産経新聞朝刊に掲載されました。同紙によれば、蔡総統が日本と直接対話する意向を明らかにしたのは初めてで、強まる中国からの脅威を念頭にしています。蔡総統は同日、インタビューの要点をツイッターに日本語で投稿し、中国が唱える「一国二制度」を拒否する姿勢やサイバー攻撃に関する日本との対話を望む考えなどを発信しました。

このインタビューにおいて蔡総裁が、安全保障・サイバー分野での直接対話を日本政府に要請したことについて、国際政治学者で政策研究大学院大学長の田中明彦氏が7日、日本側は中国への配慮などで準備ができていないとの考えを示しました。

政策研究大学院大学長の田中明彦氏

同日東京都内であったフォーリン・プレスセンター(FPCJ)主催のシンポジウムに出席した際、中央社の記者から日台安保対話に関する質問を受けて答えました。

田中氏は、現時点での日台ハイレベル、当局間対話の開催は「不可能」としつつも、サイバーセキュリティーなどの分野では、実務者協議だけで効果を上げることができるとの見解を示しました。

蔡総統の安保対話要請を巡っては、日本の河野太郎外相が8日の記者会見で、日台関係は「非政府間の実務関係を維持していくというので一貫している。この立場に基づいて適切に対応してまいりたい」と述べました。

日本を軽視する韓国に対する制裁が俎上に登っている今日、日本としては台湾に対して安全保障に関する話あいを行うのは無論のこと、様々な方面で支援を厚くする方針でのぞむべきと思います。

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