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2017年11月28日火曜日

【スクープ最前線】12・18、米の北朝鮮攻撃Xデー警戒 各国緊張の極秘情報、世界最強ステルス戦闘機6機投入の狙い―【私の論評】今回は、米の北攻撃が始まってもおかしくない(゚д゚)!

【スクープ最前線】12・18、米の北朝鮮攻撃Xデー警戒 各国緊張の極秘情報、世界最強ステルス戦闘機6機投入の狙い

金正恩氏に迫るF22。トランプ大統領の狙いは
 朝鮮半島の緊張が続いている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、平和的解決を求めた中国の「特使」と会わずに“追い返した”ことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したのだ。北朝鮮による「核・ミサイル開発」の加速化と、各国の情報当局が警戒する「北朝鮮攻撃のXデーは、12月18日の新月の夜前後」という情報とは。ジャーナリストの加賀孝英氏の緊急リポート。

 驚かないでいただきたい。今、次の極秘情報が流れて、各国の情報当局関係者が極度に緊張している。

 《米国は、北朝鮮が平和的解決を拒否したと判断した。トランプ氏がついに『北朝鮮への予防的先制攻撃』(正恩氏斬首作戦)を決断し、作戦準備を命じた。第一候補のXデーは12月18日、新月の夜前後》

 旧知の米軍情報当局関係者は「この裏には、3つの重大な理由がある」と語った。以下の3つの情報だ。

 (1)米本土を攻撃できる北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星14」の開発が、年内にはほぼ完了する。米国には時間がない。

 (2)北朝鮮は10月中旬から、核弾頭の量産体制に入った。日本や韓国、米領グアムの米軍基地を狙う、中距離弾道ミサイル「ノドン」「火星12」に搭載可能になる。日本と韓国に潜入した工作員(日本約600人、韓国約5万人)の動向が異常だ。急激に活発化している。

 (3)北朝鮮への経済制裁が効いてきた。軍部は飢餓状態だ。正恩氏はクーデターを阻止するため、父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の命日である12月17日か、来年1月8日の正恩氏の誕生日前後に、日本海の北部か太平洋上で、核実験(水爆の可能性も)を強行、暴走する可能性がある。

 正恩氏は“狂気”に走っている。

 米韓両軍は12月4日から8日まで、朝鮮半島周辺で、史上最大規模の合同軍事演習「ビジラント・エース」を行い、戦闘機約230機が結集する。米軍からは、空軍や海軍、海兵隊などの兵士約1万2000人が参加する。

 ここに、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」6機と、同F35A「ライトニングII」が3、4機投入されるという。

 問題はF22だ。

 同機は「レーダーにまったく映らない。過去撃墜されたことが一度もない。敵を100%倒す」(防衛省関係者)と恐れられる、世界最強の戦闘機だ。F22が、朝鮮半島に6機も展開すれば初めてである。その狙いは何か。

 米軍関係者は「正恩氏に対する『白旗を上げろ! 米国は本気だ!』という最後通告だ。正恩氏は『F22に狙われたら命はない』と理解し、脅えて震えているはずだ」といい、続けた。

 「米軍は2005年、極秘作戦を強行した。F22の原型である世界初のステルス戦闘機F117『ナイトホーク』を、平壌(ピョンヤン)上空に侵入させ、正日氏の豪邸に目がけて、急降下を繰り返した。正日氏は手も足も出ず、死を覚悟して震えていたとされる。その絶対恐怖を息子が忘れるはずがない」

 重大な局面が迫っている。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】今回は、米の北攻撃が始まってもおかしくない(゚д゚)!

北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると発表したトランプ米大統領(20日、ホワイトハウス)
ブログ冒頭の記事では、ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した事実をあげています。しかし、その理由まではあげていません。これを知れば、北朝鮮問題は確かに重大な局面に迫っていることが理解できます。

アメリカのトランプ大統領は11月20日、ホワイトハウスで記者団に対し、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを決めたと発表しました。

なぜ再指定したのでしょうか。その理由を、トランプ大統領は11月8日、韓国の国会での演説の中で詳しく説明しています。北朝鮮を「監獄国家」と激しく非難、その実態についてこう言及したのです(以下、読売新聞11月9日付朝刊から引用)。

韓国国会で演説するトランプ大統領(右端)
この演説の詳細を知りたい方は、是非以下のリンクをご覧になって下さい。
https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12327005453.html
以下にこのトランプ大統領の演説の一部をピックアップしつつ、説明をします。

《北朝鮮の労働者たちは、耐え難い状況下で、へとへとになりながら何時間もほぼ無給で働いている。最近、すべての労働者が70日間連続での労働を命じられた。休みたいなら金を払わなければならない。》

かつて北朝鮮も「労働者の天国だ」と言われたことがありましたが、実際はとんでもないブラック国家なのです。

 国民もまた、劣悪な生活環境と飢えに苦しんでいます。

《北朝鮮の家族は、給排水もない家に暮らし、電気が来ている家は半分にも満たない。親たちは、息子や娘が強制労働に送られるのを免除してもらおうと教師に賄賂を贈る。1990年代には100万人以上が餓死した。今日も飢えによる死者が続いている。

 5歳未満の子供たちの約30%は、栄養失調による発育不良に苦しんでいる。北朝鮮政権は2012、13年に、その独裁者たちをたたえる記念碑や塔、像をこれまで以上に建造し、それに費やした費用は約2億ドルに上ったと見積もられる。これは、国民の生活改善に充てた予算の約半分に及ぶ。》


 栄養失調にあえぐ北朝鮮の子ども
一党独裁の共産主義国家である北朝鮮には労働組合を作る自由も言論の自由もありません。このため、こうした人権弾圧がまかり通っているのです。

北朝鮮の飢餓を理由に食糧支援を主張する「人権団体」もありますが、いくら日本や韓国を含む西側諸国が北朝鮮に援助をしようと、その援助は国民に届くことはありません。金正恩政権が続く限り、一部の特権階級以外は、飢餓に苦しむことになるからです。その仕組みをトランプはこう説明します。

《北朝鮮の経済の貧弱な成果の分け前は、ゆがんだ体制に対する見かけの忠誠心を尺度に分配される。残忍な独裁政権は、平等な市民を尊重するのとはまったくかけ離れたやり方で、国家への忠誠心といういい加減な指標で国民を値踏みし、点数をつけ、ランク付けする。

 最高の忠誠心を持つと評価された者は首都平壌に住める可能性がある。最低の評価を受けた者は飢える。ちっぽけな違反行為によって、たとえば、捨ててあった新聞に掲載された独裁者の写真に誤って染みを付けただけで、何十年にもわたって家族全員の社会的な地位が地に落ちることになる。》

北朝鮮は、金正恩「万歳」を叫ぶ政府幹部とその家族だけがまともな暮らしをすることができ、その他の大部分は飢餓に苦しむ、凄まじい「差別国家」なのです。

レイプ、拷問、処刑。9歳の子供も監獄に

北朝鮮では、金正恩政権を批判したり、金正恩の写真をずさんに扱った人、キリスト教の信仰を持った人は容赦なく「強制収容所」に送られます。しかも日本人を含む多くの外国人が、北朝鮮のスパイ活動のために拉致され、北朝鮮に拘束されています。

《北朝鮮では推定で約10万人が強制収容所で強制労働に従事させられ、日常的に拷問や飢餓、レイプ、殺人にさらされている。

 祖父が反逆罪に問われたために、ある9歳の男の子が10年間も監獄に入れられた事例が知られている。別の例では、ある生徒が金正恩(キムジョンウン)の伝記のほんの細かい一節を忘れただけで殴打された。

 兵士が外国人を拉致し、北朝鮮のスパイのための語学教師として従事させてきた。

 朝鮮戦争以前、キリスト教徒の拠点の一つだった地域では、キリスト教徒やほかの信仰を持つ人々は、今日、祈りをささげたり聖典を持っていたりしただけで、拘束され、拷問され、多くの場合、処刑されることさえある。》


日本人拉致被害者も大勢いることを忘れてはならない
この金正恩政権は同時に、女性の人権も平気で踏みにじる国でもあります。

《北朝鮮の女性は、民族的に劣等と見なされる赤ちゃんの中絶を強いられる。新生児は殺される。中国人の父親との間に生まれたある赤ちゃんは、バケツに入れて連れて行かれた。衛兵は、不純で生きる価値がないと言い放った。

 それなのに、中国は北朝鮮を支援する義務をなぜ感じるのだろうか。》

これほどひどい「監獄国家」の北朝鮮を懸命に支えてきたのが、中国なのです。訪中する日本の政治家は多いですが、北朝鮮の人権侵害に加担する中国の責任を正面から追及する人が少ないのは本当に残念なことです。

自由な朝鮮、アジアの平和のために

こうした人権弾圧を阻止するためトランプ政権は今回、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定し、さらなる経済制裁を科そうとしているわけです。
トランプはこう続けます。

《すべての責任ある国家が力を合わせて、北朝鮮の野蛮な体制を孤立させ、拒絶しなければならない。いかなる支援も供給も行ってはならない。受け入れてはならない。中国とロシアを含めたすべての国に対して、国連安全保障理事会の決議を完全に履行するよう求める。北朝鮮政権との外交関係を見直し、すべての貿易と技術協力の関係を断ち切るよう求める。》

経済制裁を主張しているが、トランプは話し合いを拒否しているわけではありません。

《朝鮮半島を空から見ると、南はまぶしく光り輝く国で、北には真っ暗な闇が広がっているのが分かる。我々は、輝き、繁栄し、平和な未来を望んでいる。だが、北朝鮮にとってのより明るい道程については、北朝鮮の指導者が脅しをやめ、核計画を解体してはじめて我々は話し合う用意がある。》

トランプは核開発を断念すれば、交渉する用意があると主張しています。その目的は「自由な朝鮮」の実現です。トランプは長い演説の最後をこう締めくくっています。

《我々はともに、自由な朝鮮、安全な(朝鮮)半島、家族の再会を強く望んでいる。南北が高速道路で結ばれ、親族が抱擁を交わし、核の悪夢が美しい平和への約束に取って代わることを夢見ている。

 その日が訪れるまで、我々は断固とした態度で警戒を続ける。北を注視し、朝鮮のすべての人々が自由に生きることができる日が来るよう祈るのだ。》

アジアの平和と北朝鮮国民の自由のため、金正恩政権には断固とした態度で核計画の放棄を求めると主張しているのが、トランプ大統領なのです。

そのトランプの方針に日本はどう対応するのでしょうか、金正恩政権による人権弾圧や核開発をこのまま放置するのでしょうか、拉致被害者をいかに救出するのでしょうか「監獄国家」北朝鮮の実態を踏まえた建設的な国会論戦を期待したいものです。

金正恩は、トランプ大統領が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことを軽く考えるべきではありません。なぜ指定したかといえば、それだけの要因があるからです。

この要因だけでも、すでに北朝鮮は米国から先制攻撃を受ける可能性はかなり高まりました。これにさらに、北がミサイルの発射実験や核実験を再度強行すれば、それは米国に対して先制攻撃をしかける大きな理由を与えることになります。米国としては、このような機会が訪れれば何らかの形で攻撃するだけです。

ブログ冒頭の記事を書いている加賀孝英氏は、どちらかというと、結構煽る方であり、昨年年末あたりでも、今にも米国による北朝鮮攻撃が始まるようなことを主張しました。それらは、ことごとく外れましたか、今回だけは当たる可能性が高まってきたと思います。12 月18日に本当に戦争が始まるかどうかは別にして、年末から年始のいずれかに起こっても何の不思議もありません。まずは、全核・ミサイル施設、当面韓国への脅威になりそうな部隊等に対するピンポイントの爆撃やミサイル攻撃が火蓋をきるでしょう。

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2017年2月17日金曜日

米軍、金正恩氏「7日で排除」3月にも世界最強の軍事力行使か、韓国紙は日本配備のステルス戦闘機に言及―【私の論評】まさに、朝鮮半島は戦争前夜(゚д゚)!

米軍、金正恩氏「7日で排除」3月にも世界最強の軍事力行使か、韓国紙は日本配備のステルス戦闘機に言及

ドナルド・トランプ米大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件は、国際社会が注目している。「毒劇物による暗殺」の可能性が高まるなか、ドイツ・ボンで16日に開催の日米韓外相会談でも、事件や北朝鮮の核・ミサイル問題は議題となった。ドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮への対抗姿勢を強めており、3月にも世界最強の軍事力を行使する可能性がある。北朝鮮は16日、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日「光明星節」を迎えたが、専門家は正恩氏排除までの期間を「早ければ7日」と断言した。

 日米韓外相会談は、ボンでのG20(20カ国・地域)外相会合に合わせて行われた。岸田文雄外相と、レックス・ティラーソン米国務長官、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が出席した。

 会談では、日米韓が連携して、アジアの平和と安定を壊しかねない北朝鮮への制裁措置の実効性確保を図るとともに、中国に対して北朝鮮への圧力を強めるよう働きかける方針を確認した。当然、正男氏の暗殺事件についても意見交換したとみられる。

 注目の事件だが、マレーシアの国営ベルナマ通信は16日、同国の警察が2人目の女を逮捕したと報じた。地元メディアは、女2人のほかに、男4人が犯行を手助けした疑いがあり、警察が行方を追っていると報じた。

 韓国・朝鮮日報は16日、「(正男氏の遺体の)口元に泡がついており、典型的な毒殺時の現象だ」という政府当局者の証言を伝えた。

 事件への関与が注目される正恩氏は75周年の「光明星節」という16日、父の正日氏と、祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を訪問した。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 今後、犯行が「北朝鮮の仕業」「正恩氏の指示」と断定されれば、日米首脳会談に合わせた11日の弾道ミサイル発射を受けて「非常に強い態度で対応する」と怒りをあらわにしたトランプ氏を、激高させそうだ。

 トランプ氏の本音について、13日に帰国した安倍晋三首相はNHKのニュースに出演し、「オバマ政権は軍事力の行使には非常に慎重だった。今のトランプ政権では、もう一度見直し、あらゆる選択肢をテーブルの上にのせながら、外交的に解決していきたいと考えていると思う」と語った。

 「あらゆる選択肢」とは、当然、世界最強の軍事力を指す。

 福井県立大の島田洋一教授は「トランプ氏は『ここで北朝鮮になめられたら、他の国になめられる』という感覚から、目に見える格好で強い姿勢を示すだろう。過去にも、相手がなめてかかってきたら『10倍返し』でやるという趣旨の発言をしている」といい、今後の行動をこう予測する。

 「まず考えられるのは、北朝鮮と取引する中国企業が使用する金融機関に対する金融制裁のグレードアップだ。さらに米韓軍事演習の強化や、米国防情報局(DIA)を通じた工作も強化してくるのではないか」

 米韓軍事演習については、拡充する見通しを韓国紙が伝えている。

 朝鮮日報(日本語版)は11日、米原子力空母「カール・ビンソン」が前日にグアムに到着したことや、ステルス戦闘機「F22ラプター」の日本配備に触れ、米軍の戦略部隊が朝鮮半島周辺に集結していることを報じた。記事では、軍関係者の話として「3月の米韓軍事演習『キー・リゾルブ』と『フォールイーグル』に参加する可能性が高い」と伝えている。

 カール・ビンソンは「動く軍事拠点」とも呼ばれるニミッツ級の原子力空母で、同紙は「西太平洋を担当する第7艦隊には、すでに原子力空母『ロナルド・レーガン』が配備されている。米国が西太平洋で2つの空母機動部隊を運用するのは異例」と指摘した。

 かつてない規模で行われる3月の米韓軍事演習だが、過去には正恩氏を急襲し、確保・排除する「斬首作戦」に沿った演習が行われてきた。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「本物の『斬首作戦』に変更してもいいような軍事演習となるだろう」といい、北朝鮮攻撃のシナリオを次のように語る。

 「陸からは、韓国軍と米軍の特殊部隊で平壌まで行く。空からは、B2爆撃機が平壌(ピョンヤン)上空まで行き、地下の約50メートルまでコンクリートをぶち抜ける爆弾『バンカーバスター』を使って、地下壕にいる正恩氏の居場所を徹底的に攻撃するだろう。海からは、恐らくトマホークを打ち込む。海上にはイージス艦もいるので、北朝鮮が弾道ミサイルで反撃してきた場合は、海上配備型迎撃ミサイルSM3で全部打ち落とすだろう」

 トランプ氏が、暴走する正恩氏を排除する決断を下すきっかけは何か、作戦終了までにかかる時間はどの程度か。

 世良氏は「北朝鮮が米国に到達する能力を持つICBM(大陸弾道間ミサイル)を発射したとき、またはトランプ氏が何らかの情報に基づきゴーサインを出したときが考えられる。早ければ1週間程度で、正恩氏を排除できるのではないか」と語っている。

【私の論評】まさに、朝鮮半島は戦争前夜(゚д゚)!

すでに米軍は、昨年金正恩斬首部隊を韓国に配備し、そのための訓練を行っています。それについてはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
在韓米軍、「金正恩斬首」の特殊部隊を配備―【私の論評】戦争に傾く混迷の2016年以降の世界を日本はどう生き抜くのか(゚д゚)!
第75レンジャー大隊の隊員たち ジャーマン・シェパードを含む 
この記事は、昨年の2月5日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
在韓米軍がこのほど、第1空輸特戦団と第75レンジャー連隊所属の特殊部隊を韓国にローテーション配備した。 
同部隊は、イラク戦争やアフガニスタンでの戦闘に投入され、敵の要人を暗殺する「斬首作戦」などを担ってきた。核・生物化学兵器などの大量破壊兵器(WMD)の除去作戦も行う。 
在韓米軍の発表によれば、「特殊部隊は韓国特殊戦司令部と共に特殊戦司令部準備態勢や能力増大のための訓練を行う」という。訓練には、特殊部隊を極秘潜入させる米空軍のMC-130J支援機も投入される予定。

在韓米軍がこうした発表を行うのは異例。
さらに、 米国は昨年から2つの空母打撃群を西太平洋に配置する構えをみせ、ステルス戦闘機「F22ラプター」の日本配備も昨年すでになされています。今年になってはじめて、ブログ冒頭のような構えをみせたわけではありません。それに関す記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報―【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?
この記事は、昨年1月28日のものです。以下に一部分を引用します。
米西部ワシントン州の母港を15日、原子力空母「ジョン・C・ステニス」(排水量10万5500トン)が出港し、西太平洋に向かった。同空母は、戦闘機や攻撃ヘリコプターなど約90機を搭載し、士官・兵員約3200人、航空要員約2500人が乗船している。当然、ミサイル巡洋艦や駆逐艦、原子力潜水艦などを引き連れて、空母機動部隊を編成している。 
ご存じのように、横須賀基地(神奈川県)には、原子力空母「ロナルド・レーガン」(同10万8000トン)を中心とする、機動部隊が配備されている。東アジアに2つの空母機動部隊が展開するなど、異例中の異例といえる。 
横須賀に入港中のロナルド・レーガン
さらに、横田基地には、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」と、F16戦闘機「ファイティング・ファルコン」の計26機が集合した。米グアムの米軍基地には、「死の鳥」と恐れられるB52戦略爆撃機「ストレイトウフォートレス」(成層圏の要塞)と、B2ステルス戦略爆撃機「スピリット」がスタンバイした-。
以下、複数の米軍関係者から得た仰天情報だ。 
「北朝鮮殲滅(せんめつ)作戦は数パターンある。基本は、ステルス戦闘機などで約700カ所の軍事拠点をピンポイント爆撃し、原子力潜水艦で海域を封鎖する。同時に特殊部隊が突入。北朝鮮内部に構築したスパイとともに正恩氏を一気に確保し、排除する」 
「作戦の第1段階は、原子力空母や原子力潜水艦などの朝鮮半島沖への展開だ。2月末から、米韓合同軍事演習『キー・リゾルブ』と、野外機動訓練『フォールイーグル』が予定されている。空母などは、その名目で展開する。第1段階は2月下旬までに完了する」 
「Xデー」とはこのことだ。情報はこう続く。 
「最終的なゴーサインはオバマ米大統領次第だ。こちらは北朝鮮の地下軍事基地の詳細や、正恩氏の居場所、中国やロシアへの脱出トンネルも把握している。正恩氏はもはや、核放棄に応じるしかない。それは『2005年の事件』で分かっているはずだ」 
米軍は05年、北朝鮮で極秘軍事作戦を決行した。F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」を、平壌上空に派遣し、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記の豪邸にめがけ、上空から急降下を繰り返し、正日氏に死を覚悟させて震えあがらせた。見えない戦闘機に北朝鮮は手も足も出なかった。
F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」
今回の米軍展開は、その時以上といえる。
飛行中のB2ステルス戦略爆撃機「スピリット」
米国が西太平洋で2つの空母機動部隊を運用するのは異例のことですが、それを米軍は昨年の今頃も実施し、今年も行っているということです。

この動き無論のこと、金正恩にだけ焦点をあてたものではなく、支那に対する牽制という意味もあると思います。

さて、米国といえば、オバマ政権時代にオサマ・ビン・ラディン氏を暗殺しています。これを考えれば、ブログ冒頭の記事にあるような、金正恩氏暗殺ということも十分にあり得ます。

オサマ・ビン・ラディン氏に関しては何年間もCIAが居場所をつきとめようとしていてなかなかつきとめられなかっのが、とうとう突き止めることができたため、斬首作戦に踏み切ったものです。

金正恩氏に関しても、わざわざ斬首部隊を韓国に配置したり、今年も空母打撃群を2つも派遣したり、さらにはステルス戦闘機を今年も日本に配備したということで、米軍としては、条件が揃えば実行する用意があるのは当然のことと思います。

それにしても、米国の昨年に続くこのような動き、北朝鮮側、金正恩からみても不気味でしょう。

さて、ブログ冒頭の記事にもあるとおり、北朝鮮は16日、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日「光明星節」を迎えました。正恩氏は今年の75周年の「光明星節」に父の正日氏と、祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を訪問しました。

故金正日総書記の生誕記念日「光明星節」を記念して
開かれたシンクロナイズドスイミングの公演=15日、平壌
金正恩党委員長は16日0時、金正日総書記の生誕記念日(2月16日)である光明星節に際して、平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝しました。同日、朝鮮中央通信が報じました。私自身は、金正恩氏はこの日にあわせるように、金正男氏を暗殺したのではないかとみています。
これをもって、完璧に後継者問題を終焉させるという意味があったものと考えます。
錦繍山太陽宮殿を訪れた金正恩氏と党・内閣・
軍の幹部ら(2017年2月16日付労働新聞より)
その並々ならぬ決意は、錦繍山太陽宮殿を参拝という事実に現されているものと思います。なぜなら、金正恩氏は、昨年の光明星節にはこの宮殿を訪問していないからです。なぜほうもんしなかったかといえば、それについてはこのブログにも過去に掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【北朝鮮情勢】金正恩氏、米軍の急襲恐れる?正日氏の遺体集団参拝に加わらず―【私の論評】中国に対する牽制のためにも、米による金正恩斬首は大いに有り得る(゚д゚)!
平壌の錦繍山太陽宮殿
この記事は、昨年の2月18日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、金正恩氏がなぜ宮殿を訪問しなかったのか、その理由に関する部分のみ以下に掲載します。
北朝鮮の金正恩第1書記が16日の金正日総書記の生誕記念日に取った異例の行動が、韓国で話題となっている。金正恩氏は例年、午前0時に金正日氏の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を幹部らと集団参拝するが、今年は零時の集団参拝には加わらなかった。国営メディアは「16日に夫人と参拝した」と報じるのみだ。

韓国メディアは18日、金正恩氏が例年と異なる行動を取ったのは、F22戦闘機など戦略兵器を韓国周辺に展開する米軍の急襲を恐れたためとの見方を伝えた。
結局のところ、昨年は、斬首部隊が韓国に派遣されたり、米軍の2つの空母打撃群の配置があったり、日本にはステルス機などが配置され、自分の居場所を公にして、その場所に赴けば、それこそ斬首されかねないことを恐れたのだと思います。

しかし、今年は参加したというのは、やはり、後継者問題に片を付けるという意味あいがあったのものと考えます。宮殿を参拝することによって、これを北朝鮮内外に向かって強い意志を強く印象づけるという意味があったものと思われます。

そうして、これが他国も了解して、北朝鮮の後継者は、金正恩ただ一人と認めれば、今後金正恩の暴走は沈静化する可能性もあるかもしれません。

しかし、その意図がトランプ大統領などに伝わるかどうかは疑問です。北朝鮮は日米首脳会談めがけて、弾道ミサイルを発射したり、今度は金正男氏を暗殺したりということで、トランプ氏の逆鱗に触れる可能性は多いにあります。

それに支那の動きも気になるところです

中国政府が金正男を庇護下に置いたのは、金正恩体制がクーデターなどで転覆した際、取って代わって親中国政権を樹立するためでした。いわば正男は中国にとって手駒であり、隠しカードだったのです。

その正男を暗殺したとしたら、中国にケンカを売ったも同然。今後、北朝鮮の暗殺への関与がはっきりすれば、習近平政権は『中国政府に対する重大な挑戦』と捉えることになるでしょう。いずれにせよ、金正恩政権の北朝鮮と中国の間で緊張が高まることになるのは確実です。
 
中国は金正恩の過剰な独裁体制に不信感を抱いています。それを察知した正恩には、自分の身が中国に狙われることになるかもしれないという恐怖が常にあります。ならば、自分の代わりに後継指名されることになりそうな正男を先回りして暗殺しようと思い至ったとしても、不思議ではありません。

まさに、朝鮮半島は、戦争前夜といっても良い状況にあります。

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2016年3月17日木曜日

二度の世界大戦で敗れたドイツが、それでもヨーロッパの「頂点」に君臨し続ける本当の理由―【私の論評】「知覚」に鋭敏な日本人がドイツ流「体系知」を身につけたら世界最強になる?

二度の世界大戦で敗れたドイツが、それでもヨーロッパの「頂点」に君臨し続ける本当の理由


佐藤優直伝・社会人のための「教養」講座 現代ビジネス


ドイツのメルケル首相(左)は理系、フランスのオランド大統領は文系

20世紀は「ドイツの時代」

今、日本では大学教育改革が話題になっています。文部科学省は、「人文系を軽視しているわけではない」と言いながら、ごく一部の超エリート校だけを文理両方を教える総合大学とし、あとは○○大学という名前だけ残して、事実上の専門学校として再編しようと考えているようです。

しかし、本当に人文系の知識は役に立たず、経済学や工学などの「実学」といわれる学問だけが重要なのでしょうか。この講座には「役に立つ教養」という言葉が入っています。今回は、国際社会の中で教養が果たす役割について考えてみましょう。

近現代史の第一人者である、イギリスの歴史家エリック・ホブズボームは、「20世紀はドイツの時代だ」と述べています。

ドイツは、19世紀末から後発の工業国として急速に国力を増してきました。20世紀に入り、この新興国をどうやって取り込むかという問題に直面した世界は、2度の世界大戦を経て、どうにか軟着陸に至った。これが20世紀最大の事件であり、歴史の主役はドイツだったということです。

今、ミュンヘンのレストランで、ビールとシュニッツェル(カツレツ)を注文するとしましょう。

おそらく、その店の経営者はドイツ人で、清掃係はかなりの確率でチェコ人かハンガリー人です。カツに使われている豚肉はハンガリーから輸入されていて、そのハンガリーの養豚場で働いているのはウクライナ人が中心。豚のエサもウクライナから来ているはずです。

つまりドイツは、2度の世界大戦に敗れたにもかかわらず、ヨーロッパの中でドイツ人を頂点としたシステムを作り上げた。EUの統合通貨ユーロも、ドイツの通貨マルクを拡大させたものとみることができます。

では、なぜドイツは勝者になれたのか。見逃せないのが、大学教育です。ドイツの大学教育は、ヨーロッパにおけるライバル・フランスの教育とは対照的でした。

フランスでは19世紀初頭、ナポレオンによって学校改革が行われ、大学は徹底した実学重視になりました。神学や文学なんて教えるのはやめて、工学・経済学・軍事学などの実学だけにせよ、と。今も、フランスの国立大学のほとんどには神学部がありません。

ナポレオン 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
一方、ドイツでは今でも、神学部がないと総合大学を名乗ることができない。ドイツがなぜ神学を重視するかというと、「目に見える世界だけでなく、目に見えない世界を学んでこそ、知はバランスを保てる」という考え方があるからです。こうした考え方をドイツに定着させたのが、18世紀から19世紀にかけて活躍した、フリードリヒ・シュライエルマッハーという神学者でした。

シュライエルマッハーの考え方は、「知は体系知でなければ意味がない」というものです。オタクのように、断片的な知識を山ほど持っていても意味はない。それらの知識がどう関係しているのか。そうした「体系知」を体得しないと、知は完成しないという考え方です。

ベルリン大学の神学部長だったシュライエルマッハーは、専門科目を教える教授にも教養科目を受け持たせた。そうしてさまざまな学問の交流をはかり、生きた「体系知」を生み出してこそ、初めて大学の存在意義があると彼は考えたわけです。

これが19世紀ドイツの大学教育をつらぬく方針になったのですが、実は21世紀の現在も、これと同じような考え方にもとづいて教育を実践している国があります。そう、アメリカです。

例えば、ハーバード大学の学部では教養重視の授業が行われていて、専門的なことは基本的に大学院で学びます。昔のドイツの大学と同じようなシステムです。ちなみにハーバード大学の授業料は年間7万ドル。日本円にするとおよそ800万円で、当然、ここで学べるのは富裕層の子供たちだけです。

日本が目指すべきもの

フランスのような実学志向ではなく、教養を中心とした「体系知」を重んじたドイツは、20世紀の主役となった。21世紀の今も、ヨーロッパでは「ドイツの世紀」が続いていると言っても過言ではないでしょう。

この実例から分かることは、すぐに役に立つ「実学」は、短期的に、あるいは狭い範囲でしか役に立たず、一見すると役に立たなそうに見える「教養」こそが、案外役に立つことがあるということです。

私たちは普段、無意識のうちに、合理主義や近代的なものの見方にもとづいて行動しています。国と国の関係においても、国際法や国家の主権があることが、自明の前提になっている。

ところが世界には、この前提が通用しない地域も珍しくありません。例えば、中東で起きているイスラム教シーア派とスンニ派の紛争の背景には、近代以前の世界観が横たわっているといえます。

今年1月、サウジアラビアとイランが国交を断絶しました。きっかけとなったのは、昨年、サウジアラビアのメッカ近郊で起きた巡礼者の将棋倒し事故です。

日本ではあまり報じられていませんが、この事故で2000人以上が亡くなり、うち400人以上がイラン人でした。激怒したイラン最高指導者のハメネイ師は、「サウジに責任を取らせる」と言っています。

ところが、イランとサウジが国同士のレベルでは国交断絶しても、サウジはイランからの巡礼者を受け入れ続けています。ということは今後、メッカでイランとサウジの巡礼者がいつ大規模な衝突を起こしてもおかしくないわけです。

しかし「聖地巡礼」となると、その瞬間に、イスラム教徒の中では近代、すなわち国家という枠組みとは全く異なるスイッチが入ってしまうのです。

近代合理主義だけでは捉えきれない、この世界の成り立ちと、どう向きあっていけばよいのか。少なくとも、日本人がちやほやする「実学」だけでは、とうてい太刀打ちできません。「実学」には、限界があるのです。

【私の論評】「知覚」に鋭敏な日本人がドイツ流「体系知」を身につけたら世界最強になる?

確かに、「実学」だけではどうにもならないことがあります。特に、企業の中で働くにしても、作業や仕事レベルまでは「実学」だけでどうとでもなるのですが、本当の意味で顧客を知る、顧客の変化を知る、自分たちの顧客は誰かという根源的な問題を考える上では、「実学」だけではあまり役に立ちません。

いくら、昔ならとても扱えないような巨大なデータを集めて、これまた一昔前までは、考えられないような高度な処理能力を持つコンピュータで解析しても、自分たちの顧客を知ることはできない場合もおうおうにしてあります。

特にイノベーションを起こすときには、そのようなことが言えます。今までの延長線上で物事を考え、それを改善するというのなら、巨大データを集めて、コンピュータで解析すれば、答えは出るかもしれません。しかし、今までの延長線上にはないイノベーションを起こそうとするときには、それだけではどうにもなりません。

イノベーションのための7つの機会
出典:P.F.ドラッカー著『イノベーションと企業家精神』を基に藤田 勝利 氏が作成
その時には、知覚がものをいいます。イノベーションは分析だけで行なうことはできません。そもそもイノベーションに対する社会のニーズは分析では知ることはできません。

イノベーションの成果が、やがてそれを使うことになる人たちの期待、価値、ニーズにマッチしうるかは知覚によってしか知ることはできません。

そうして、知覚とは、 思慮分別をもって知ること。「物の道理を知覚する」という時の知覚と、目、耳、鼻、皮膚などの感覚器官を通して外界の事物や身体内部の状態を知る働きの両方を意味します。

そうしてそれを知覚することによって、初めて、それを使うことになる人たちが利益を見出すには何が必要かを考えられるようになります。これを考えられなければ、せっかくのイノベーションも間違ったかたちで世に出てしまうことになります。

イノベーションに成功する人は、右脳と左脳の両方を使うのです。数字を見るとともに人を見るのです、人の集まりである社会を見るのです。どのような、イノベーションが必要かを分析をもって知った後、実際に外に出て、知覚をもって顧客や利用者を知るのです。知覚をもって彼らの期待、価値、ニーズを知るのです。そうして、はじめて、イノベーションに成功するのです。

このようなことをするときに、「実学」だけでは、知覚もって顧客や利用者を知ることはできません。

ブログ冒頭の記事で示されていた、シュライエルマッハーの考え方は、「知は体系知でなければ意味がない」というものでした。断片的な知識を山ほど持っていても意味はないのです。それらの知識がどう関係しているのか、そうした「体系知」を体得しないと、知は完成しないというものです。

フリードリヒ・シュライアマハー

知識は、高度化するほど専門化します。そうして、ある専門知識は、他の専門知識と結合するとき爆発してとてつもない力を発揮します。そのため、多様な専門知識への理解が不可欠です。このよらうに、自分の専門外の知識を持つ人こそ、知識社会における教養ある者人と呼ぶことができます。

ただし、専門知識のすべてに精通する必要はありません。しかし、それらのものが何についてのものか、何をしようとするものか、中心的な関心事は何か、中心的な理論、問題、課題が何かは知っておくべきです。だからこそ、幅広い本当の意味での教養が必要なのです。

しかし、専門知識を一般知識へと統合できない教養課程や一般教養は、教養ではありません。本当の意味での、教養は相互理解をもたらすこと、文明が存在しうるための条件である対話の世界を造り出すことができるものです。そうして、はじめて、知識は「体系知」となり、完成するのです。

確かに、今の日本の大学で行われている教養課程は、専門知識を一般知識へと統合できない部分があり、そのため、「体系知」を体得できず、知を完成させていない学生も多いのかもしれません。

最近の日本では、「体系知」を体得していない人々が増えたのだと思います。そのためでしょうか、過去の日本は、失われた20年というとんでもない状況に見まわれ、停滞しつづけました。

その主たる原因は、あまりにも長い間、デフレを放置してきたことです。そうして、このデフレの根本原因は、バブル期には土地や株式などの資産価格はあがっていたものの、一般物価はさほどでもなかったものを、日本銀行が金融引き締めに転じたことが、最初のきっかけでした。

その後も、日銀は長い間、金融引き締めを続け、さらに消費税の増税を二度にわたって、行い、日本はデフレスパイラルの泥沼に沈むとともに、超円高に苦しむことになりました。

日銀が、金融緩和に転じたのは、2013年からでした。しかし、それもつかの間、その後には、平成14年4月からは、8%増税が実施され、ご存知のように経済は停滞しています。愚かなエコノミストなどは、この経済の停滞を増税以外のせいにしています。まったく、愚かな連中です。こういう連中が、それこそ、日本の失われた20年の原因を創りだしたのです。彼らは、真の意味での教養のある人間ではないのです。

このようなことは、日本で多くの人、その中でも特に大学以上の学歴を持つ人々の多くが、「体系知」を体得していれば、起こらなかったものと思います。

そもそも、マクロ経済に関して多少の知識があれば、不景気のときには、金融緩和と積極財政を行うべきことは基本中の基本です。間違っても、金融引き締め、緊縮財政などすべきでないことはすぐに理解できます。

仮に、マクロ経済を勉強なかったにしても、過去の歴史を紐解けば、日本が世界恐慌(日本では、昭和恐慌と呼ばれ、その原因は1990年代の研究でデフレが原因であったことが明らかにされている)から金融緩和策、積極財政で世界で一番はやく脱却したことからも、理解できるはずです。

さらに、この歴史的事実を知らなくても、江戸時代の経済対策を遡れば、経済対策として、いわゆる節約令を出したものはのきなみ全部失敗しています。

成功した事例としては、「元文の改鋳」があります。江戸時代中期に徳川吉宗が行った緊縮財政(享保の改革)により日本経済はデフレーションに陥いりました。そこで町奉行の大岡忠相、荻生徂徠の提案を受け入れ政策転換し、元文元年(1736年)5月に元文の改鋳を行いました。改鋳は差益を得る目的ではなく、純粋に通貨供給量を増やすことが目的でした。現在でいえば、日銀による増刷に相当するものです。

元文の改鋳で鋳造された金貨
元文の改鋳は現在では、幕府初のリフレーション政策と位置づけられ、日本経済に好影響をもたらした数少ない改鋳であると積極的に評価されています。元文の通貨は以後80年間安定し続けました。江戸の経済対策というと、なにかといえば儒教思想にもとづく倹約道徳にもとづく、吉宗が行ったような緊縮財政であり、いわゆるこの事例のような、金融緩和策は数少ない成功事例の一つです。

たとえ、これを知らなくても、日本が増税を決める直前のEUをみれば、イギリス、スペイン、イタリア、ポルトガルなどの国々が景気が悪い中で、増税で失敗していました。


それに、現在でなくても、過去を調べれば、古今東西を通じて、デフレや不景気のときに、増税して、成功した国などありません。

これらのことを知っていれば、あるいは知らなくても調べれば、増税などすべきなどという考えにはならないはずです。さらに、金融政策についても同じことです。景気の悪いときに、金融引き締めを行って成功した国など古今東西存在しません。

にもかかわらず、いわゆる財務省の官僚や、いわゆる経済アナリスト、経済学者などで、増税や金融引き締めをすべきとした人たちは、軒並み無教養の謗りをうけても仕方ないです。そういう無教養な人が日本には、大勢います。

なぜ、そのようなことになってしまったのかといえば、やはり、高校や大学での教育の仕方にも問題があったものと思います。

そもそも、最近の金融政策や、財政政策の有り様を知るためには、過去のそれがどうなっているのか知らなければならないですが、高校ではそれを知る機会は、日本史や、世界史の現代史の部分にあたるのでしょうが、その部分は教科書の後ろのほうにあるし、それに、試験にはあまり出ないといいうことで、しっかりとは教えられていないようです。

実際に、金融アナリスやエコノミストと呼ばれる人でも、過去の経済対策に関する知識を持っている人は驚くほど少ないです。これらの人の多くは、せいぜい数ヶ月か、半年くらいの状況をみて判断していて、短期では予想が的中することもありますが、長期の予想はことごとく外してしまいます。とくに、増税の判断ではそうでした。

それに、今の日本の大学の教育で、それぞれの先生たちは、努力して教えたにしても、システム的に専門知識を一般知識へと統合できない教養課程になってしまっています。

そうして、大学生のほうも、結構厳しい受験勉強が終わって、緊張から開放され、教養の過程は、あまり勉強せず、高校生のときに蓄えた知識にブラスアルフアで、留年しない程度にしか勉強しません。学部に入ってから専門知識は、ある程度は勉強するようですが、教養過程はないがしろにされがちです。

この状況では、日本はいずれドイツの後塵を拝するようになりそうです。やはり、日本でも、真の教養というものを身につけさせるため、専門知識を一般知識へと統合できるようにして、多くの学生たちに「体系知」を体得させ、知を完成させるか、その端緒を築けるようにすべきものと思います。

さて、ここまではドイツの優れたところを掲載してきましたが、以下には、日本の優れたところを掲載します。

先に、イノベーションにおいては、知覚が重要であるということを掲載しました。実は、日本人の強みは、この「知覚」なのです。経済学の大家ドラッカー氏は、日本の近代社会の成立と経済活動の発展の根底には“知覚”の能力があるとしています。

ドラッカー氏
ドラッカー氏は、「分析に対置するものとしての知覚こそ、実に一〇世紀以降の日本画における継続的な特性である」と語っています。(『すでに起こった未来』)

日本の歴史と社会についての第一人者、エドウィン・O・ライシャワー元駐日大使が、その著『ザ・ジャパニーズ』において、日本は第一級の思想家を生み出していないと言ったとき、ドラッカー氏は、日本の特質は“分析”ではなく、“知覚”にあると言ってくれました。

ドラッカー氏は、中世における西洋最大の偉業、トマス・アクィナスの『神学大全』に対置するべきは、宮中の愛と病と死の描写からなる世界最高の小説、紫式部の『源氏物語』だといいます。

近松門左衛門の文楽と歌舞伎は、カメラとスクリーンこそ使いませんでしたが、高度に映画的だともいわれます。登場人物は、何を言うかよりも、どう見えるかによって性格づけされます。誰も台詞は引用しないのですが、場面は忘れません。

近松は、映画のための道具はなに一つ使わずに、映画の技法を先取りしていました。役者が不動の形を取る見得は、まさに映画のクローズアップそのものです。

歌舞伎の見得(みえ)
ドラッカー氏の洞察は、日本の近代社会の成立と経済活動の発展の根底には、その伝統における知覚の能力があると看破しました。これによって日本は西洋の制度と製品の本質を把握し、再構成することができたといいます。日本の真価はこの知覚の能力にあるのです。

ドラッカー氏は、以下のようにも語っています。「日本について言える最も重要なことは、日本は知覚的であるということである」(『すでに起こった未来』)

日本人には、このように知覚に優れているからこそ、失われた20年を経たあとでも、なんとか国を維持して来れたのだと思います。他の国であれば、20年近くも、緊縮財政、金融引き締めを続けていれば、完璧に破綻しています。

日本人である多くの人は、自らの知覚能力があまりに当たり前になっていて、その高さを意識していないようですが、外国人と比較すると日本人の知覚能力は高いようです。ただし、それが最近では悪い方面にもでているようです。

知覚に頼りすぎて、分析をせず、それこそ、先に述べた増税せよ、金融引締せよなどとのたまっていたエコノミストのような人々もいます。

私自身は、日本人の多くは、外国人と比較すれば、知覚に優れていると思います。たとえば、日本人なら、虫の鳴き声を聴いて、元気な声とか、うら寂しいなどと感じますが、多くの外国人にとっては、虫の声は単なる雑音に過ぎないようです。

それに、現在世界でトレンドになってる、和食など、知覚に鋭敏な日本人だからこそ、できたものです。ドイツの食べ物は、日本と比較すると、味付けも大雑把で、季節感にも乏しく、本当に食べ物であって、和食のように見たり、香りを楽しんだり、出汁などの微妙な味付けを楽しむようなものではありません。

典型的なドイツ料理 日々このような食事では確かに知覚は研ぎ澄まされない?
それに、対人関係に関しても、日本人からすると、かなり大雑把で、あまり相手の感情など知覚できないようです。そのためですか、何でも細かなとこまで話し合いをしようとします。

ドイツ人などと話していると、あまり知覚に鋭敏でないようで、日本人ならば話さなくてもわかりそうなところも、合理的な判断にもとづく話し合いをするので、彼らの合理性にはほんとうに辟易とするところがあります。

これに対して、日本人は、もともと知覚が優れた日本人の子孫として生まれたので、子供の頃からそのような環境に育ち、自然と知覚が研ぎ澄まされていったものだと思います。

日本人として生まれた私たちは、知覚に優れているという生来の能力を最大限に活かすべきものと思います。そうして、ドイツ人のように、専門知識を一般知識へと統合し、「体系知」を体得し、知を完成するか、完成のための端緒をつかむには、何も大学でそのような教育を受けられなかったからといって、悲観する必要はありません。その方法は、あります。それは、「読書」です。読書の習慣をつけることです。それも、できたら体系的な読書をすべきです。

そうして、ドイツ人の「体系知」を体得できた日本人は世界最強になれるかもしれません。

それについては、ここで述べだすと長くなりますので、また機会があれば、改めて掲載したいと思います。

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