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2019年8月24日土曜日

G7、日米首脳が“断韓”会談実施!? 識者「朝鮮半島“赤化”対応協議か」―【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!


G7サミット出席のため、フランス・ボルドーに到着した安倍首相と昭恵夫人=23日

 安倍晋三首相は、フランス南西部ビアリッツで24~26日に開かれるG7(先進7カ国)首脳会議に合わせて、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談に臨む。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことを受け、自由主義陣営から離脱しかねない韓国への対応策を協議することになりそうだ。

 「日本は、北東アジアの安全保障環境に照らし、『日米韓の協力に影響を与えてはならない』との観点で、地域の平和と安定を確保したい」「韓国には国と国の約束を守ってもらいたい」

 安倍首相はG7に出発直前の23日、韓国の協定破棄について記者団にこう語った。その表情は、あきれかえっていた。

 米国防総省も、警告を無視した文政権への不快感をあらわにし、「GSOMIAの破棄は、文政権の大いなる思い違いなのだと知らしめることになると繰り返し言ってきた」と異例の声明を発表した。

 日米両国は、北朝鮮の「核・ミサイル」といった地域の脅威に対し、日米韓3カ国の協力体制で対応してきた。だが、文政権の裏切りで、北朝鮮や中国、ロシアが漁夫の利を得て、北東アジア情勢が不安定になるのは避けられそうにない。

 文大統領の狙いは何か。注目の日米首脳会談はどうなりそうか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「文大統領は、日本の輸出管理強化への不満を『米国に泣きつけば日本が妥協し、撤回する』と思ったが、動かなかったため、米国に不信感を持った。GSOMIA破棄をきっかけに意図的に距離を置き、韓国世論を反米に誘導し、『米韓同盟を米国側から破棄させよう』と狡猾(こうかつ)に動いているのではないか」と指摘する。

 やはり、文氏は、北朝鮮との「赤化統一」を狙っているのか。韓国国民は地獄を見るのではないか。藤井氏は続けた。

 「日米首脳会談ではまず、同盟体制の強化を確認する。さらに、朝鮮半島全体がいずれ『反日・反米』一色で赤化し、安全保障の最前線が38度線から対馬海峡まで下がった場合の対応も協議するはずだ。メモリチップの生産工場を、韓国や中国からベトナムに移すなど、ハイテク産業のサプライチェーンを再構築する策も練り上げるだろう」

 日米両首脳が、「断韓」を確認する会談になるかもしれない。

【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!

現代の戦争が、色々な面で「情報戦」であることは間違いないです。ファーウェイをはじめとするIT・通信分野でのサイバー戦争もそうですが、敵の軍隊の動向を各国で共有することも極めて重要な戦略です。

むしろ、ハイテク装置、情報収集能力において日米に格段に劣っている韓国にとってこそGSOMIAは防衛に不可欠な条約です。だから、それを自ら廃止するなど自殺行為です。

韓国政府のGSOMIA破棄決定を伝える韓国のニュース番組

ここまでくると、米国や野次馬たちもドン引きします。

韓国は米国に見放されるだけでは無く、「悪の帝国とその仲間たち」以外から相手にもされなくなるでしょう。

その「悪の帝国」の中には、北朝鮮は入っていない可能性もかなり高いです。このブログでもたびたび掲載しているように、そもそも、金正恩は南北統一など望んでいません。

なぜなら、南北統一をすれば、チュチェ思想などとは無縁で、金王朝等尊敬もしない韓国人が大量に現在の北朝鮮にも入り込んでくることになります。そのようなことは、金正恩は望んでません。

北朝鮮のチュチェ思想塔

金正恩は、何とか制裁を廃止もしくは緩めてもらいたいと切実に思っていたからこそ、最初は文在寅に良い顔して、いかにも南北統一したいように装い、文在寅をもちあげていただけです。要するに、金は文を制裁破りに利用しようとしただけです。

しかし、それに文は我を忘れて有頂天になってしまったのです。

朝鮮半島の分断は、ドイツ、ベトナムと同様に、東西冷戦の産物です。

ドイツは、ベルリンの壁崩壊という東西冷戦の終結を、ヘルムート・コール首相が最大限に使って実現させた。ドイツ統一のケースは、ソ連邦の敗北がもたらしたものです。

ベトナム統一は、逆に北ベトナムが南ベトナムと米国に勝利したことにより実現したものです。米国がベトナム戦争に疲れ切り、国内の厭戦気分もあって、ベトナムから手を引いたからです。

朝鮮半島は、このいずれのケースとも異なっています。韓国の同盟国、米国は強力であり、また北朝鮮を支援する中国やロシアも厳しい制裁により弱体化しつつはあるものの、かつてのソ連のように疲弊しきっているわけではありません。

中国は、GDPで世界第二の大国となり、いまや世界の覇権をアメリカと競っています。ロシアは、ソ連邦の崩壊から立ち直り、プーチンの指導の下、クリミア併合に見られるように過去の大国を復興させる道を歩もうとしています。

しかも、この三つの国のいずれも、現状では朝鮮半島の統一を望んではいません。米国は韓国による統一、中露は北朝鮮による統一を望んでおり、その両者の妥協が困難である以上、現状維持というのがベストなのである。それに先に述べたように、北朝鮮も南北統一など望んでいません。

さらに、金正恩は中国の干渉を嫌っています。自分の叔父や、血のつながった兄を暗殺した背景には彼らが中国と近い関係にあったことがあります。

結果として、北朝鮮とその核が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。北朝鮮のミサイルは、日米だけではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。

韓国は、米国に守られながら、中国にも接近し中国に従属しようとの姿勢を顕にしています。文在寅からすれば、これからの世界は、米国と中国の2大国支配する世界(G2)となるので、韓国としていちはやくこれに対応し、中国と接近し、両国の間でうまくバランスをとって、韓国の発展する道を拓こうとしたつもりなのでしょうが、これは裏目に出たようです。

これは、結局中国からも裏切りものとみられ、米国からもそのようにみられるという最悪の結果を招いたようです。

結局、朝鮮半島およびその近隣の国々は、韓国を除いていずれの国も南北統一を望んではいないのです。

最近「断韓」という言葉がよく使われますが、ストーカーのような韓国に対しての唯一とも言える対抗策は「接触を持たない」ことです。どのような話し合いをしても、ストーカーの都合の良いように解釈されるだけなので意味がありません。だから「断韓」政策は世界中に支持されるでしょう。

漫画家の黒鉄ヒロシ氏(73)がテレビ朝日系の情報番組で
         「断韓」の2文字を掲げたことが話題を呼んだ

北朝鮮は勝手に米国との交渉期限を定めましたが、それは金正恩政権がせいぜい年末くらいまでしか持たないことを自覚しているからです。

最近北朝鮮のミサイル発射が続いていますが、日韓関係が悪化している中で、さらに日韓関係にくさびを打ち込もうという目的は確かにあるでしょう。しかしそれ以上に、トランプ政権に対しての「早く餌をくれないと飢え死にしちまうぜ」というメッセージなのです。

だから、トランプ氏の反応も「わかった、わかった、もう少し待ったらちゃんと餌をやるから」というものなのです。そうして、先程述べたように、北朝鮮が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいるという面もあるので、トランプ大統領は北の短距離ミサイルの発射をあまり批判的ではないのです。

北朝鮮は年末までもたないようですが、年末といえば、あと5カ月も無いです。さらにそ北朝鮮以上に緊迫しているのが韓国です。

日米・中露・北朝鮮が南北統一を望んでいないにもかかわらず、文在寅だけが、南北統一をしようとしているのですから、それこそ、文在寅の一人芝居であり、他国からみれば、ストーカーのようなものです。

現時点で、考えられる韓国にとって最悪の事態は、北朝鮮が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることも考え合わせると、米国が韓国を安全保証上の単なる空き地とみなすか否かです。

安全保証上の空き地とは、在韓米軍が撤退したとしても、北朝鮮が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるし、さらには、金が南北統一を望んでいないことから、韓国が中国に急接近しようにもできない状態になり、結果として安全保証上においては、日米にとって有害にも無害にもならないという意味です。

ただし、これには一つ条件があります。それは、在韓米軍が撤退する前に、主に米日が、韓国を経済焦土化をするというものです。

現在のままの韓国経済を残して、在韓米軍が引き上げれば、韓国の経済力に北や中国が食指を伸ばさないはずがありません。これでは、敵に塩を送るようなものです。

その前に日米は、韓国から資産をひきあげたり、様々な手口で金融的に韓国経済を破壊することになるでしょう。

そうなると、韓国経済は疲弊し、経済的には無意味な存在になります。そんな韓国には、北朝鮮も中国も興味を失うことになります。

日米はG7においては、以上のようなことに関連した会談を実施することになるでしょう。まさに、ブログ冒頭に掲載されているような"断韓"会談が実施されるのです。

経済焦土化されて、韓国経済が疲弊すれば、経済難民が北朝鮮や日本に大量に押し寄せるようになります。

これに対して、金正恩は、韓国難民を入国させないように、38度線の守備を強化させるでしょう。

行き場を失った韓国難民は、日本、中国、ロシアに大量に押し寄せることになるかもしれません。中には武装難民も紛れているかもしれません。経済的に崩壊した韓国ですが、残存兵力を用いて破れかぶれてで何かをしでかすかもしれません。

以上は最悪のシナリオなので、韓国が何らかの形で踏みとどまってくれれば良いのですが、文在寅の行動や発言を見ている限りでは、その兆候はありません。今回のG7における日米首脳会談では、無論こうした最悪シナリオも想定しつつ様々な話し合いが行われることでしょう。

朝鮮半島情勢をみると、日本の防衛力強化は火を見るより明らかなのですが、日本で防衛論議が高まらないことに私は日々危機感をつのらせています。韓国がどうのこうのと言う前に、日本は日本の安全保障について早急に議論をすべきです。

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2019年8月18日日曜日

日韓対立激化、沈黙の中国はこう観察していた―【私の論評】朝鮮半島の現状を韓国一国で変えることは到底不可能(゚д゚)!


「日韓が対立しても米日韓の同盟は揺るがない」

G20大阪サミットで握手する韓国・文在寅大統領と日本の安倍晋三首相(2019年6月29日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 日韓対立が国際的な波紋を広げるなか中国の反応も注目されているが、このたび中国政府系の著名なアジア研究者が日韓対立の影響を考察する論文を官営メディアに発表した。

 論文によると「現在の日本と韓国との対立が、両国の米国との同盟、そして米日韓3国軍事協力を崩すことはない」という。日韓両国の対立が東アジアの安全保障面での米国の立場を大幅に弱めることはなく、中国としては重大な動きとしてはみていない、という趣旨である。

 一方で、論文の筆者は日韓対立が北東アジアの安全保障態勢の再編の始まりを示唆するとして、中国には有利となる動きだとの認識も示した。

日韓対立に対する、初めての中国側の反応

 日本と韓国との最近の対立に、米国も真剣な関心や懸念を示すようになった。

 米国は北朝鮮の非核化や中国の軍事膨張に対応するため、日韓両国との同盟に基づく3国連帯を強く必要としている。日韓両国が衝突すると、その連帯が崩れることになる。日韓両国の離反が中国を利することにつながることは米国にとって大きな懸念材料である。

 では、実際に中国は今回の日韓対立をどうみているのか。トランプ政権としては中国の反応を探りたいところだが、これまで中国側が日韓対立について、公式にも非公式にも論評することはなかった。

 そんななか、中国の官営新聞「環球時報」英語版(8月8日付)に「北東アジアは今より多くのコンセンサスをみる」というタイトルの論文が掲載された。「日韓対立に対する、初めての中国側の反応」だとして、米側の一部専門家が大きな関心を寄せている。

 同論文を執筆したのは、中国黒竜江省社会科学院「北東アジア研究所」の笪志剛所長である。笪(だ)氏は中国の社会科学院で中国とアジア諸国との関係を中心に長年、研究を重ね、中国と日本、韓国との外交関係について中国学界有数の権威とされているという。

3国の同盟関係が崩れることはない


笪志剛氏
 笪氏は論文で、日韓対立に対する中国当局の見方を紹介していた。論文の主要点は以下のとおりである。

・現在の日本と韓国との離反は、貿易、二国関係全般、両国民の感情での対立に及んでいる。日韓両国ともに相手に関する誤った判断、誤った認識を抱いたことが現在の紛争へと発展した。しかし両国とも米国との絆を減らそうとしているわけではない。

・現在の日韓紛争は、米日韓3国の同盟の本質部分に打撃を与えているわけではない。日韓の貿易紛争は3国の協力全般に少なからず影響を及ぼすかもしれない。しかし3国間の軍事同盟は安定したままだろう。

・現状では、日韓対立が、米国が日韓両国と個別に結んでいる同盟を崩壊させることはない。米国が両国に及ぼしている影響力を減らすこともないだろう。米国は、日本と対立して苦しい立場にある韓国に対して、在韓米軍の経費の大幅増額を求めている。米国が対韓同盟の保持に依然として強い自信を持っていることの表れだといえる。

・日本と韓国が結んでいる韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、8月24日に改定の時期を迎える。この軍事情報共有の協定がどうなるかは重要だ。もし協定が骨抜きとなったり破棄される場合は、米日韓3国の軍事同盟関係にヒビが入ることになる。だが、それでも3国の同盟関係が完全に崩れることはないだろう。

・米国は現在の日韓対立に介入していない。日本は韓国の枢要産業分野に照準を絞り、制裁を加えた。米国も制裁や関税を他国への交渉の武器として使っている。だから日本の行動を批判する資格はないということだろう。

 以上のように笪論文は、「日韓関係の悪化が、ただちに日米同盟、米韓同盟、さらには米日韓3国の安保連帯の弱体化につながることはない」とする中国側の見解を繰り返し強調していた。この見解には、米国が「日韓対立が中国を利する」と警告することへの反論や否定が含まれているという見方も成り立つ。だが、中国側が「日韓衝突がただちに米国の北東アジアでの安全保障や軍事の政策の継続に大きな支障を与えることはない」と認識していることは確かだろう。
中国が期待すること

 また、笪論文は中国やロシアの側の動向について、次のような骨子も述べていた。

・最近、中国、ロシア、北朝鮮の間で歩調を合わせて協力する動きが増えてきた。日韓が対立する間に、中国とロシアはアジア太平洋地域で合同の戦略爆撃演習を実行した。北朝鮮は短距離弾道ミサイルを何回も発射した。3国関係の改善を表している動きといえるだろう。

・こうした動きがみられるのは、各国が独自の地政学的な戦略を有しているからである。かといって中国、ロシア、北朝鮮が国家の本質的な部分で連携したり、新たな同盟を結ぶことはないだろう。ただ、日韓対立を除いて、北東アジア諸国はより多くのコンセンサスを有するようになったといえる。

・習近平主席は、今や北東アジアの平和と安定のために関係各国が一国主義や保護貿易主義を排して共通の利益を求める段階になったと改めて宣言した。北東アジアのパワーバランスは再編成されていくだろう。

 以上のように述べるこの論文は、後半で中国の戦略目標を巧みに表明しているわけだ。つまりは、米国が後退していくことへの願望をにじませつつ、中国、ロシア、北朝鮮の協力やコンセンサスの拡大に期待するということだろう。

 だがそれにしても、現在の日韓対立が米国の対日、対韓の両同盟の根幹を揺るがすことはないだろうとする中国側の観測は注視しておくべきである。

【私の論評】朝鮮半島の現状を韓国一国で変えることは到底不可能(゚д゚)!

この見方は確かに中国の見方ですが、中国共産党の見方をすべて表しているとも思えません。その背後には、さらに何かがあるはずです。まずは、中国共産党としては朝鮮半島をどのように捉えているかを認識すべきです。

それについて、参考になることは以前もこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!
4月時点では、マスコミは北朝鮮のミサイル発射実験の可能性を指摘していた
この記事では、朝鮮半島の近隣諸国がいずれの国も現状維持(Status quo)を望んでいることを前提として論を展開しました。この記事から朝鮮半島を巡る近隣諸国等のStatus quoを説明する部分を以下に引用します。
さて、現代も現状維持勢力と打破勢力の相克で動きます。ただし、世界大戦のように劇的に動く時はめったにありません。では、東アジアにおいて、誰が今この瞬間の現状打破を望んでいるでしょうか。 
昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。 
北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。
この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。
だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。
ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。
ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。
では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。
さて、この状況は、基本的には現在も変わっていません。しかし、変化はみられます。北朝鮮と中国は単純に同盟国とみられていますが、現在では北朝鮮は、中国の干渉を極度に嫌っています。さらに、大きな変化としては、北朝鮮が核と弾道ミサイルを開発したことです。

しかし、これは結果として中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いでいます。この状況は米国にとって必ずしも悪い状況ではありません。最悪は、中国が朝鮮半島全体に浸透することです。

北朝鮮が中国の干渉を極度に嫌っていることもあって、北朝鮮は米国大統領を交渉の場にひき出すことに成功しました。

一方韓国は、現状維持を破る方向に動いています。まずは、在韓米軍が駐留しているという現実がありながらも、中国に従属する姿勢をみせました。さらに、文在寅政権になってからは、北と接近して、南北統一を目指すことを強く主張しはじめました。

これについては、金正恩は本当は現状維持を望んでいるのに、何とか制裁破りをしたいのと、とにかく外貨がほしいことから、文在寅に良い顔をして、いかにも南北統一を自らも目指しているような素振りをみせました。

これにすっかり舞い上がった文在寅は、南北統一をさらに大きく主張し始めたのですが、金正恩はこれをきっぱりと否定しました。

中国共産党も当然基本的に現状維持を望んていますし、上記のようなことは理解しています。しかし、文在寅は、中国に従属しようとする一方で本気で南北統一をするということで、現状打破をしようとしています。

中国側からみれば、米国としては当然のことながらこの韓国の振る舞いを絶対に許すはずがないとみたことでしょう。仮に中国の版図内でこのようなことが起これば、中国もこれを絶対に許すはずもありません。

中国としては、現在の日韓対立を在韓米軍の韓国撤退直前の経済焦土化の前触れてあると見ているでしょう。米国は、本当に韓国から在韓米軍を引きあげることになれば、日本はもちろん米国も韓国内で経済焦土化をすると知らしめているとみているのです。

韓国もそのことに気づいていることでしょう。日本としては、韓国にすぐに経済制裁をするつもりはないものの、いざとなればできるし、いざとなれば、米国もそれができるということを韓国に悟らせるために、今回の貿易管理の措置がとられたものと、中国はみているでしょう。

そうして、日本のマスコミなどは、日韓の対立が深まったことにより、習近平はほくそ笑んでいるなどと報道していますが、むしろ中共としては、米国にはすでに経済冷戦を挑まれており、韓国に対して貿易管理の動きに出た日本は、中国に対してもこれを発動する可能性もあることを危惧していることでしょう。

何しろ中国は「製造2025」を標榜していながら、中国の製造基盤はあまりにも技術水準に高低差がありすぎます。中国は、月の裏側に無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)を世界で初めて、着陸させた一方で、信じ難いことに航空機などに用いられる精度の高いネジを製造することできませんし、工作機械も製造できません。

日本が中国を制裁対象とすれば、中国の製造戦略は絵に描いた餅になる

無人探査機のネジなどは無論外注していることでしょう。無論工作機械もそうでしょう。これらの輸出が止められれれば、中国はもちろん無人探査機等を製造することはできません。

日本からは、中国は様々なハイテク部品、素材、様々な用途の工作機械等を輸入しています。もし日本が米国とともに、中国を経済制裁の対象とした場合「製造2025」など吹き飛びます。

このような現状を踏まえれば、韓国は到底在韓米軍の撤退など要求できないはずです。韓国が在韓米軍を撤退させ、経済焦土化されない方法が一つだけあります。それは、韓国が、米国の中短距離核ミサイルの設置場になることです。

この場合、韓国が攻撃された場合、米国はすぐにこれに対応することができず、韓国がかなりの打撃を被ることになります。であれば、韓国がわざわざ在韓米軍をみすみす撤退させるようなことはできないでしょう。中国もそのように見ているでしょう。

韓国としては、経済焦土化を極度に恐れているとともに理不尽に感じているのですが、それを米国に直接訴えることもできず、だからこそ当面は日本に対して反日によってその鬱憤を晴らすしかないのです。

せめて、韓国の経済規模が日本の半分くらいであり、さらに軍隊が日本の自衛隊を上回る能力を持っていれば話は別ですが。結局、日米、中露、北朝鮮が朝鮮半島の現状維持を望んでいる一方、韓国だけが半島の現状を打破しようとしても到底できないということです。それを金正恩は、文在寅に強烈に知らせるとともに、自らは現状維持の破壊者ではないことを周りの国々に周知しているのです。

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2019年1月21日月曜日

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか―【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか




レーダー照射問題:韓国軍艦のとった不自然な行動

 日本の排他的経済水域内で、北朝鮮の漁船らしき木造船を救助するのに、北朝鮮の海軍警備艇や民間船舶ではなく、韓国の軍艦・警備艦が向かった。

 北朝鮮は、排水量1000トン以上の貨物船などの民間船舶を170隻以上、フリゲート艦、コルベット艦、哨戒艦、高速艇および警備艇の海軍戦闘艦艇約200隻を保有している。

 これらの艦船が本来救出に来るべきなのだが、そうではなかった。

救助に派遣されたのは韓国の最新鋭艦

 1993年5月に、ノドンミサイルとみられる発射実験が行われた際に、その観測支援のためにフリゲート艦とコルベット艦の2隻が日本海に展開したことがある。

 本来、この木造船を救助する必要があるならば、今回もその当時と同様に、軍艦あるいは民間船舶を派遣するのが普通だろう。

 しかし、なぜか韓国が、韓国海洋警察の警備艇に加え、海軍駆逐艦までも派遣した。

 北朝鮮の木造船を捜索するため、派遣された警備艇の参峰号は、韓国最大で最新の警備艇(排水量約6300トン、韓国は2隻保有)だ。

 駆逐艦の広開土大王(クァンゲトデワン)は、韓国で最初に建造された駆逐艦で約4000トンだ。

 木造の小船を大型艦艇が挟み込んで救助しているというのは、常識ではあり得ない不思議な光景である。

 韓国の大型の軍艦と警備艇が、日本海の真ん中よりも日本に近い位置にいた木造船をしかもレーダーには映らない木造船をどのようにして発見したのか。それが疑問である。

北朝鮮のアナログステルス戦闘機

 詳しく説明すると、レーダー波を金属製の航空機に当てると電波が反射して戻ってくるが、木材の場合はレーダー波を反射しない。

 軍事専門家は、北朝鮮特殊部隊を空輸する木材と布で作られた輸送機「An-2」を、皮肉を込めて「アナログステルス戦闘機」と呼ぶ。

 この木造船がSOSの救助信号を発信した可能性もあるが、海上保安庁も海上自衛隊も確認していないという。

 韓国が発表した北朝鮮の木造船の映像をよく見ると、イカ釣り用の電球が並ぶ上に、前方のマストから後方のマストにかけて、AM通信(モールス通信)用のケーブルらしきものがかけられている。

韓国側が発表した映像から

 北朝鮮の木造船は、モールス通信を使用して本国に救助を依頼したのではないだろうか。

 また映像を見ると、その木造船は、沈みかけていない。漂流する原因は、燃料切れだと推測される。

 私は、韓国の大型艦は北朝鮮の木造船に燃料を渡していると判断している。
救助に向かう燃料がない北朝鮮

 韓国が、沈没しそうな木造船と漁民を救助しているというのならば、漁民を救助している写真やその木造船をロープで曳行している写真を発表すべきだろう。

 大きな疑惑がいくつも生じるのは当然のことである。

 私の推測では、北朝鮮の小型木造船は、燃料切れを起こし、本国に燃料補給の救助を求めた。

 だが、北朝鮮は漁船を救助するために、海軍警備艇や民間船舶を派遣するための燃料がない。

 また、海軍軍艦はポンコツで500キロも離れた日本海の中央まで移動して帰投することができない。

 このような理由から、北朝鮮金正恩委員長は、韓国に支援を依頼した。

 北朝鮮としては、金正恩委員長の要求を何でも聞き入れる文在寅大統領に頼めば、すぐに引き受けてくれるだろうという予想通りになった。

いまや金正恩の言いなり、文在寅大統領

 金正恩が頼めば、文大統領は「北朝鮮は非核化をします。国連制裁を解除すべきだ」と欧州諸国を駆けずり回る。

 「自国の漁船を救助してほしい」と頼めば、大型軍艦や警備艇を派遣する。韓国文在寅大統領は、いまや北朝鮮の言いなりのようだ。

 そのことと、南北の陸と海上の境界の障害が徐々に取り除かれていること、南北の融和行事などを合わせると、南北の統一は近いと見てほぼ間違いないのではないか。

 だが、その統一は韓国主導による連邦制ではなく、北朝鮮が韓国を呑みこむ占領という形で行われるのではないか考えられる。

(これについては、軍事情報戦略研究所朝鮮半島分析チーム「可能性が高くなりつつある北朝鮮による半島統一」『JBPress(2018年12月3日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54805』で詳細に分析している)

【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

冒頭の記事では、南北統一のことがいわれています。そうして、その統一は韓国によるものではなく、北朝鮮による半島統一ということがいわれています。

このように多くのメディアで、南北統一が当然のようにいわていますが、南北統一は解決策なのでしょうか、あるいはそれこそが問題なのでしょうか。北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上しているのは事実です。

統一という言葉は、東西ドイツを隔てるベルリンの壁が崩壊して家族が再会し、軍が武装解除したときのことを思い起こさせます。

韓国と北朝鮮は平和的な統一を繰り返し訴え、韓国で開催された昨年の平昌冬季五輪では統一旗を掲げて共に入場行進を行いました。また最近にK─POP歌手らの一行が北朝鮮を訪問した際、彼らは北朝鮮人と手をつなぎ、「われらの願いは統一」を歌いました。

「少女時代」のソヒョンが、北朝鮮芸術団と共に感動のステージを披露し、話題を呼んだ。
2018年2月12日11日、国立劇場ヘオルム劇場で開催された北朝鮮芸術団「三池淵管弦楽団」
のソウル公演に、白いワンピースに身を包んだソヒョンがサプライズ登場。

ところが、70年にわたり緊張状態が続く朝鮮半島において、「統一」の理念ははますます複雑さを増し、非現実的だと考えられるようになりました。両国の格差がかつてないほど広がる中、少なくとも韓国ではそのように捉えられていると、専門家や当局者は言います。

韓国はテクノロジーが発達し、民主主義の下で活気に満ちた主要経済大国となりました。一方、北朝鮮は金一族の支配下にあり、個人の自由がほとんどない、貧しく孤立した国です。

1990年に再統一した東西ドイツとは異なり、朝鮮半島の分断はいまだ解決されていない同胞同士の内戦に基づいてます。韓国と北朝鮮は朝鮮戦争を終結するための平和条約に署名しておらず、お互いをまだ正式に認めていません。

過去には、北朝鮮の独裁政権が崩壊し、韓国に吸収されるという前提に基づいた統一計画を描く韓国の指導者もいました。しかしリベラルな文政権はそうしたアプローチを和らげ、最終的に統一へとつながるであろう和解と平和的共存を強調しています。

韓国では、統一を支持する世論も低下しています。韓国政府系シンクタンク・韓国統一研究院(KINU)の調査によると、2014年には70%近くが統一が必要と回答したのに対し、現在は58%に低下しています。1969年に政府が実施した別の調査では、90%が統一を支持すると答えていました。

統一にかかる費用は最大5兆ドル(約550兆円)と試算されており、そのほとんどが韓国の肩にのしかかることになります。

一昨年7月にベルリンで行ったスピーチの中で、文大統領は「朝鮮半島平和構想」について説明。北朝鮮の崩壊を望まない、吸収による統一を追求しない、人為的な方法による統一を追求しない、ことを明らかにしました。

「求めているのは平和だけだ」と、同大統領は語りました。

一昨年7月にベルリンでスピーチした、文大統領
両国とも、統一についてそれぞれの憲法で明記しており、北朝鮮は「国家の最重要課題」と表現しています。

韓国統一省のように、北朝鮮にも「祖国平和統一委員会」があります。北朝鮮からの報道を集めたウェブサイト「KCNAウオッチ」の記事をロイターが分析したところによると、国営メディアは2010年以降、統一について2700回以上言及しています。

北朝鮮は昨年1月、声明で「国内外にいる全ての朝鮮人」に共通の目的を目指すことを呼びかけ、「お互いの誤解と不信感を払拭(ふっしょく)し、全ての同胞が自身の責任と国家統一の原動力という役割を果たすべく、南北間における連絡や移動、協力や交流を広範囲で可能にしよう」と訴えました。

北朝鮮人は、韓国にいても北朝鮮にいても統一を支持しているようです。韓国にいる脱北者の95%以上が統一を支持すると回答しています。

北朝鮮「建国の父」である金日成主席は1993年、祖国統一のための「10大綱領」を発表。その中には、国境は開放しつつ、2つの政治体制を残す提案が含まれていました。

北朝鮮は1970年代まで、憲法でソウルを首都と主張していました。一方、韓国は現在に至るまで、北朝鮮に占拠されたままだとする「以北五道」に象徴的な知事を任命しています。

昨年4月25日、南北統一は解決策なのか、あるいはそれこそが問題なのか、北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上していました。

「統一は結局、非核化であろうと人権問題であろうと、あるいは、単に南北間で安定したコミュニケーションを築くことであろうと、喫緊の短期目標の多くを達成困難にする」と、韓国シンクタンク「峨山(アサン)政策研究所」のベン・フォーニー研究員は語りました。

開城(ケソン)工業団地

両国は、開城(ケソン)工業団地のような小規模の協力でさえ、問題にぶつかってきました。北朝鮮の核兵器開発を巡る緊張が高まる中、2016年に閉鎖されるまで、この工業団地では両国の労働者が共に働いていました。

最近では、両国は離散家族の連絡事業再開で合意には至りませんでした。

不信感は根強いです。朝鮮半島を支配するための長期計画の一環として、北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核兵器を開発したと、一部の韓国人と米国人は信じ続けているようです。一方の北朝鮮は、韓国の駐留米軍について、金氏の転覆を狙った侵略部隊だと懸念しています。

1990年に東西ドイツが統一したとき、朝鮮半島のモデルになることを期待する向きもありました。

しかし、東西ドイツの場合は内戦を経験しておらず、東ドイツは北朝鮮と比べて国民に対する統制がはるかに弱かったと、元韓国統一省の当局者は2016年のリポートで指摘しました。さらに、東ドイツは核武装はしていませんでした。

最も大きな障害は、金正恩氏自身かもしれないです。平和的な統一に必要な妥協を受け入れる動機が、同氏にはほとんどないと専門家は言います。韓国も、同氏に実権を許すような取り決めに合意する可能性は低いです。

北朝鮮を独立国として、また米同盟国である韓国との間の緩衝地帯として維持することに、中国も既得権を有しています。

長期的に見れば、完全な統一を強硬に求めることを放棄すれば、両国は関係を修復できる可能性があると、朝鮮半島情勢について複数の著書があるマイケル・ブリーン氏は指摘しています。

「矛盾しているようだが、統一はある種、ロマンチックで、健全で、民族主義的な夢として考えられている」と同氏は言う。「だが実際には、問題の多くはそこから生じている」

そもそも、統一後を考えた場合、金正恩にとって、韓国人が1番のリスクになります。北朝鮮と違い韓国人には将軍様への敬意などはなく、気に入らなければデモとクーデターで彼を攻撃する存在に豹変します。結果、アラブの春以降のアラブや中東が再現されることになります。

北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。 米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは絶対許せないです。周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいないです。一方北朝鮮は、国の枠組みは変えたくないです。その金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権、南北で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。

他国は朝鮮半島の統一を望んでいません。しかし、当事者間の問題であり、関与はしないだけのことです。 中国、ロシア、日本、米国、どこにも積極的なメリットはなく、投資リスクも大きいです。北朝鮮が今のまま、自由化を進める方がメリットが大きいし、衝突リスクも低いです。

それに、以前も述べたように、現在のように北が核を持っている状況は、中国の影響が半島に及ぶことを防いでいます。北の核は中国にとっても脅威なのです。そうして、北朝鮮は中国から完全独立を希求しています。韓国は、中国に従属する道を選びました。

この状況は、米国にとって良い状況です。ただし、北朝鮮が米国を脅かす核ミサイルを開発せず、開発したものがあれば、破棄し、中東に核を渡さないことを約束すれば、中国を睨む米国にとって現状は最善といっても良い状態です。

以上のようなことから、半島情勢をみるときには、南北統一が近いなどという見方はしないほうが良いでしょう。そんなことよりも、北朝鮮の核が結果として、半島への中国への浸透を防ぐ役割もしていることに注目すべきです。

北朝鮮が核を開発していなければ、今頃北朝鮮は中国の傀儡政権であったか、そこまでいかなくても、完璧に中国の意図に沿って動く国であったことは間違いないです。

その場合、韓国は中国の従属国ですから、統一は現状よりはやりやすかったと思います。ただし、統一とはいっても中国の傀儡国家として統一ということになるでしょう。日本としては、対馬のすぐ先が、中国の傀儡国家という状況になります。

それよりは、北により中国からの浸透が防がれてる状況のなかで、韓国が中途半端な中国の従属国であるという現在の状況のほうが日本にとってもよりましであるといえます。

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2018年6月24日日曜日

沖縄の米軍、朝鮮半島のためだけではない 在韓米軍撤退すれば在日米軍拡充も―【私の論評】安保に無頓着な翁長知事には、沖縄を任せられない(゚д゚)!

沖縄の米軍、朝鮮半島のためだけではない 在韓米軍撤退すれば在日米軍拡充も

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 朝鮮半島が緊張緩和すれば、辺野古移設は必要なくなる-。沖縄県の翁長(おなが)雄志(たけし)知事は23日の沖縄全戦没者追悼式で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する理由として「東アジアをめぐる安全保障環境の変化」を挙げた。だが、沖縄に駐留する米海兵隊は朝鮮半島有事のためだけに存在するのではない。朝鮮半島情勢の変化に基づく在沖米軍の縮小論は十分な根拠に裏付けられているとはいえない。

 翁長氏はこれまで、辺野古移設が「沖縄の基地負担軽減に逆行している」と訴えてきた。しかし、住宅密集地に位置する普天間飛行場が移設できれば、周辺住民の負担軽減につながる面は否定できない。

23日の沖縄全戦没者追悼式にて

 そこで、辺野古移設に反対する新たな理由として加えたのが朝鮮半島情勢の変化だ。米政府は12日の米朝首脳会談を受け米韓合同軍事演習の一部を中止しており、これにからめた議論は耳目を集めやすい。

 23日の式典でも、翁長氏が朝鮮半島情勢を引き合いに辺野古移設を批判すると、大きな拍手を浴びた。翁長氏は20日の県議会でも米朝首脳会談に関連し「10年以上かかるような基地を着々と造る状況は、東アジアの安全保障という面からも心配だ」と述べていた。

 しかし、朝鮮半島の緊張緩和が即座に在日米軍の削減にはつながらない。防衛省幹部は「在日米軍の駐留根拠は朝鮮半島だけではない」と語る。在沖米海兵隊は、日本の防衛支援や台湾、南シナ海有事への対応など広範な任務も有する。

 小野寺五典防衛相は23日、翁長氏の発言について「在日米軍基地は北朝鮮のみならず、この地域の安全保障上の重要な役割を果たしている」と反論した。

 韓国に駐留する陸軍主体の米軍約2万8千人も、朝鮮半島有事への対応だけが任務ではない。昨年6月の米韓首脳会談で署名した共同声明には「米韓はアジア太平洋地域でルールに基づく秩序を維持するため協働する」と明記しており、マティス米国防長官も今年5月に在韓米軍がアジア太平洋全体の安定に貢献していると説明した。

 仮に在韓米軍が撤退しても、どこかで穴埋めをしなければならない。日米外交筋は「在沖米海兵隊の重要性が高まりこそすれ、必要なくなるということはあり得ない」と断言する。

 韓国陸軍とも交流がある元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「在韓米軍が撤退するなら在日米軍を増やさなければならない」と指摘する。翁長氏の発言は「結論ありき。辺野古移設が嫌だから朝鮮半島の緊張緩和が米軍縮小につながると思い込んでしまう」と述べた上で、こう続けた。

 「安全保障で一番危険なのはウィッシュフル・シンキング(希望的観測)だ」

 沖縄県では11月に知事選が予定されている。朝鮮半島の緊張緩和で米軍が不要になるという認識が浸透すれば、辺野古移設に反対する候補に有利に働くことは間違いない。選挙目当ての希望的観測で安全保障を損なうことがあれば事態は深刻だ。(杉本康士)

【私の論評】安保に無頓着な翁長知事には、沖縄を任せられない(゚д゚)!

朝鮮半島が緊張緩和すれば、辺野古移設は必要なくなるなどと、翁長知事は語っていますが、本当にそうなるかどうかなど全く予測がつきません。特に在韓米軍の撤退もあり得る現在、沖縄の米軍基地の存在意義はますます高まりつつあります。

北朝鮮が核兵器を廃棄するにしても、体制存続の保証と在韓米軍撤退という結果を勝ち取れば、北の「外交上の大勝利」と位置付けられることになります。これはスポンサー的立場にある中国やロシアにとっても、歓迎すべき米国側の譲歩といえます。

特に中国としては、朝鮮戦争以来の頭痛の種が1つ取り去られることになります。

この前提となるのが、韓国がいまや、米国にとって「信頼できる同盟国」ではなく、「厄介なお荷物」に過ぎなくなっているという現実です。

米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備では、保守と呼ばれた朴槿恵(パク・クネ)政権ですら反対しました。

左派の文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年10月、(1)米国のミサイル防衛システムには加入しない(2)日米韓の安全保障協力は軍事同盟に発展しない(3)THAADミサイルを追加配備しない-という3条件をチャイナに確約してしまいました。米国にとっては「同盟国への裏切り」としか言いようのない従中外交です。

文在寅

文氏は昨年8月、「朝鮮半島で米国に軍事行動をさせない」と明言しました。トランプ氏は同11月に訪韓しましたが、韓国の大統領補佐官は直後の記者会見で、米韓共同声明を否定する発言をしました。

文氏は、北朝鮮を攻撃しようとする米国を止めるのが使命だと信じています。こうした事実を冷徹に認識し、トランプ氏が「北朝鮮の非核化」の代償として、「在韓米軍の撤退」を決断する可能性は十分にあります。文政権も歓迎することでしょう。

そうなれば、日本の国防最前線は、38度線から対馬海峡に南下することになります。日本は国家存続のため「自主防衛の強化」と「日米安保の充実」で臨むしかありません。そうなれば、当然のことながら、沖縄の米軍基地の存在はさらに大きなものになります。

日本の国防最前線は、38度線から対馬海峡に南下することに?

さらに、将来北朝鮮と韓国が連邦化されたり、場合によっては統一される可能性も捨てきれません。そうなれば、ますます沖縄の米軍基地は、存在価値を増すことになります。

さらに、最近では米中の貿易戦争が話題となっていますが、その他にも、このブログで指摘してきたように、北の問題がある程度収束すれば、今度は台湾をめぐる米中の争いがあらわになるのは目にみえています。

その原因をつくったのは、南シナ海の環礁を実効支配するだけでなく、埋め立てをし、自らの軍事基地にした中国です。その中国は尖閣列島付近でも、日本に対する示威行動を続けていて、収まる気配もありません。

今や、中国は米中にとって仮想敵国です。日米は、否が応でも、中国に対峙するように、中国に仕向けられているといっても過言ではありません。

このようなときに、沖縄から米軍が基地がなくなるようなことでもあれば、中国が沖縄に進出するのがたやすくなり、それこそ中国が尖閣どころか沖縄に侵攻し、沖縄は日本本土攻略のための、中国の最前線基地になるかもしれません。

このような危険が迫っている可能性も捨てきれないにも関わらず、翁長知事は、23日の追悼式典で、選挙目当ての希望的観測で安全保障を損なうような発言をしているのです。これでは、安保に無頓着と謗られても致し方がないです。

翁長知事は、日本の安全保障のことはもとより、沖縄県民の安全保障なども全く考えていません。そんなことより、選挙のことで頭がいっぱいのようです。このような人物は沖縄県知事とふさわしくはありません。冒頭の記事にもあるように、沖縄県では11月に知事選が予定されています。沖縄県民の賢明な判断を期待したいです。

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2018年5月30日水曜日

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朝鮮半島の"再属国化"を狙う習近平の誤算

歴史的には"隷属関係"が当然だが…

開催が不透明な状況にある米朝首脳会談。混乱の背景について、著述家の宇山卓栄氏は「北朝鮮の後ろ盾として介入姿勢を強める中国を、アメリカが牽制したのだろう」とみる。その構図を読み解くには、123年ぶりに朝鮮半島の「属国化」を狙う習近平と、中国を利用しつつ干渉は避けたい金正恩という、両国の約2000年の歴史についての知識が必要だ――。

正恩(左)率いる北朝鮮の属国化を目論む習近平(右)だが。5月に開かれた2度目の中朝首脳会談にて

2000年に及ぶ隷属関係

5月24日、トランプ米大統領は突如、米朝首脳会談の中止を表明しました。それに先立つ22日、同大統領は金正恩・朝鮮労働党委員長が、習近平・中国国家主席と2回目の会談をしてから「態度が少し変わった。気に入らない」と発言しています。

27日、トランプ大統領は再び会談に応じると表明しました。会談の主導権はアメリカにあると、明確に示した格好です。24日の会談中止表明は、北朝鮮への介入を急激に進めつつある中国への、アメリカの牽制だったと考えられます。

漢の武帝が紀元前108年、楽浪郡を朝鮮に設置して以来、朝鮮半島は約2000年間、中国の属国でした。高麗(こうらい)王朝の前半に一時期、独立を維持したことがありましたが、朝鮮はその歴史のほとんどにおいて、中国に隷属させられていたのです。

下関条約

日清戦争後の1895年、下関条約により、日本は清(しん)王朝に、朝鮮の独立を承認させます。日本は中国の朝鮮に対する属国支配の長い歴史を断ち切りました。それから123年の時を経た現在、中国は朝鮮半島を再び属国にしようとする野心を隠しません。

中国が目論む二つのステップ

中国は10年~20年くらいの時間をかけて、朝鮮の再属国化を実現することを考えているようにみます。第1段階では、経済支援を通じ、北朝鮮を中国資本の傘下に組み入れます。北朝鮮の立場を強化したうえで、第2段階として、北朝鮮に南北朝鮮の連邦制統一を主導させます。韓国に文在寅政権のような左派政権が現れたことも、赤化統一の追い風になっています。

この二つの段階を経て、中国は朝鮮半島への支配を復権させることができます。普通に考えれば、妄想のように思えるかもしれませんが、中国はこういう妄想を実行する(実行した)国であることをよく認識しておかねばなりません。

2018年の3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で、2期10年の国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正が承認され、習近平主席が独裁権を固めました。習主席は、いわゆる「習近平思想」を国の指針として憲法に盛り込み、中国の国益拡大を狙っています。中国の世界戦略は、これまでのフェーズとは全く違う段階に入っているのです。

中国とむしろ距離を置いてきた歴代「金王朝」

とはいえ北朝鮮のほうは、簡単に中国の支配下に組み込まれる気はないようです。

中国は以前から、北朝鮮を中国資本の傘下に組み入れようと画策し、北朝鮮に「改革開放」を迫ってきました。金正恩委員長の父の金正日は、2000年5月の最初の電撃訪中以降、2011年までに合計8回、訪中しています。その度ごとに、江沢民や胡錦濤は上海の経済特区を金正日に見学させるなどして、共産主義体制を維持しながら資本主義的な市場開放を行うことは可能だと示し、北朝鮮も中国にならって改革開放路線を歩むべきと説得しました。

金正日

しかし、金正日はこれを拒否し続けました。表向きは、「経済の自由化は政治の自由化を求める危険な動きとなる」ということでしたが、実際には「中国の介入を受けるのがイヤだ」ということだったのでしょう。

金正恩も露骨に中国を嫌い、中国を「1000年の宿敵」と呼んでいました。これは前述のように、朝鮮が長年中国の属国であった歴史的経緯を踏まえての発言です(歴史的な事実に基づけば、「2000年の宿敵」と言わなければならないところですが)。さらに2013年には、親中派の代表格で、改革開放を推進しようとしていた叔父の張成沢(チャン・ソンテク)を処刑します。これ以降、北朝鮮と中国との関係は急速に冷え込みました。

そこへトランプ大統領が登場し、北朝鮮への圧力政策を進めたことで、北朝鮮は窮地に陥ります。中国はこれを好機と見なしました。北朝鮮のクビが絞まれば絞まるほど、中国の差し伸べる「救いの手」は高く売れるからです。

習近平と金正恩は何を話し合ったのか?

ところが、北朝鮮は簡単には中国の「救いの手」を握りませんでした。北朝鮮は韓国を仲介にして、アメリカへ抱き付いたのです。この抱き付き作戦が予想以上に効果を発揮し、3月8日、トランプ大統領は米朝首脳会談の開催を決めました。

この一連の動きに焦ったのが中国です。中国は、北朝鮮が窮すれば自分たちのところへ頭を下げに来るはずだとタカをくくっていましたが、見事に当てが外れました。3月と5月に、習主席は金正恩と2回にわたって会談。3月の会談は中国側が金正恩を招聘(しょうへい)したもので、5月の会談も中国側の招聘で行われたとみて間違いないと思います。中国は北朝鮮という暴れ馬の手綱を握ろうと必死なのです。

この2回の首脳会談で、中国は北朝鮮に譲歩し、北朝鮮に有利な合意が形成されたことでしょう。これは、アメリカと中国をてんびんにかける北朝鮮の二股外交です。中国が金正日時代から求めている改革開放路線は是認されたものの、「カネも出す、口も出す」とはいかず、「口も出す」部分について、中国は大幅に制約をかけられたとみるべきです。

よくありがちな「北朝鮮が中国に泣きついた」論では、実態を捉えることはできません。北朝鮮はわれわれが考える以上に、外交技術に長(た)けた国です(北朝鮮は、外交官だけは処刑しない)。貧弱な小国でありながら、これまでも、アメリカや中国などの大国に外交上伍(ご)してきました。転んでもタダでは起きないのです。韓国の文在寅政権などが扱える相手でないことだけは確かです。 ただ、トランプ大統領が首脳会談の中止を表明した5月24日以降は、北朝鮮もトランプ大統領にはかなわないと思ったことでしょう。

金日成による朝鮮戦争後の「親中派」粛清

中国は北朝鮮との経済連携を進めていきさえすれば、いずれ北朝鮮を中国資本の傘下に収めることができるという長期的な戦略を描いているでしょうし、それを対アメリカの外交カードに利用することもできます。そこで、まずは北朝鮮と経済連携をすることを急いだのです。習主席は5月16日、北朝鮮の訪中使節団に対し、「金正恩委員長と2度も会い、両国の関係発展の共通の認識を持つことができた」と述べました。

しかし、過去に、中国は北朝鮮に痛い目に合わされています。1950年に勃発した朝鮮戦争で、中国は北朝鮮を支援しました。戦後、毛沢東は北朝鮮への影響力を強め、属国にしてしまおうともくろんでいましたが、失敗します。中国は北朝鮮内の「延安派」と呼ばれる親中派の一派と連携していましたが(延安は1930年代後半の中国共産党の本拠地)、金日成はスターリン批判(1956年)以降の中ソ対立の隙を突いて、延安派を速やかに処刑していきました。

1959年、毛沢東の大躍進政策に対する批判が巻き起こり、中国指導部で内部紛争が生じたとき(彭徳懐の失脚)、金日成は「延安派」を完全に根絶やしにしました。中国は混乱に巻き込まれている間に、北朝鮮支配の足場を失ってしまったのです。中国共産党の対北朝鮮政策は、このように失敗続きでした。

北朝鮮は金日成時代と同じように、中国を都合よく利用しつつ中国の影響力は断つという方法を、今後模索していくと思われます。今日の習政権が、経済連携を通じて北朝鮮という暴れ馬の手綱を完全に握ることができると考えているなら、大きなしっぺ返しを食らうでしょう。中国の「朝鮮属国化構想」を阻止するうえで最も大きな力を発揮するのは、アメリカではなく北朝鮮かもしれません。

「二股外交」はどこまで通用するか

もっとも、アメリカと中国の両方を利用しようとする北朝鮮の二股外交が、トランプ政権にどこまで通用するかはわかりません。

北朝鮮はこれまで、中国の支援を背景にアメリカに対して強気なアプローチを展開し、ペンス副大統領を罵倒までして揺さぶりをかけていました。ところが、トランプ大統領が突然会談中止を表明したことで、北朝鮮のこうしたアプローチはピシャリと退けられました。同時に、裏で策動していた中国の影響力も、一定のレベルで低下しました。

会談中止の発表直後、中国の「環球時報」は「信義にもとる行為」などという言葉を使って、トランプ大統領を批判する記事を掲載しました。一方で、同じ記事内では「アメリカが北朝鮮に対する軍事的圧力を高めないことを望む」と記され、中国のアメリカに対する屈服をうかがわせる内容となっています。

北朝鮮問題はその本質において、アメリカと中国の二大国の駆け引きであり、「米中冷戦」と呼ぶべき現在の危機構造の一部として存在しています。アメリカにとって、北朝鮮に譲歩することは、中国に譲歩することと同じなのです。「ドラゴンスレイヤー」と呼ばれる対中強硬派で占められたトランプ政権の中枢は、そのことを最もよく理解しています。

宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家。1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。

【私の論評】「習近平皇帝」を抑え込むためトランプは金正恩という駒を駆使している(゚д゚)!

トランプ大統領は東シナ海を中国の内海にはさせない

アメリカの最終的な北朝鮮問題に関する、目標が、朝鮮半島の「非核化」(denuclearization)、朝鮮戦争の「終結」(the conclusion of the peace treaty)にあるとは思えません。 

なぜなら、北朝鮮問題は、アメリカという世界唯一のスーパーパワー(=hegemon:世界覇権国)にとっては、そこまで大きな死活問題ではないはずです。核とICBMを持ったからといっても、経済制裁(=兵糧攻め)でいずれ干上がるのですから、平和条約など結ばないで放置しておいてもいいのです。

しかし、相手が中国となると話は違ってきます。中国はアメリカの世界覇権に挑戦し、建国100周年の2049年までに、アメリカを凌ぐ「世界覇権国」になることを宣言しています。これを「中国の夢」(中国梦)と言いますが、そんなことが実現したら、世界はどうなるでしょうか。


ブログ冒頭の記事にもあるように、習近平国家主席は憲法を改正して“終身皇帝”となり、「中華民族の偉大なる復興」を目指して着々と政策を進めています。AIIB(アジアインフラ投資銀行)も「一帯一路」構想も、みなそのための布石です。いまや、南シナ海は、7つの人工島により中国の「内海」となってしまったことは、世界中が知るところです。

自由と人権を無視した“中華秩序”(新冊封体制)が、世界秩序になる、そんな世界が実現して良いはずはありません。

結局北朝鮮問題とはは、中国の世界覇権への挑戦問題とセットなのです。米国としては、中国の夢を打ち砕くためにも、北朝鮮の体制保持を認めることはできないのです。できれば潰したいのです。そうすれば、中華秩序は韓半島に及ばなくなり、東シナ海を南シナ海と同じように中国の内海化されずにすみます。

ドラゴン・スレイヤーが跋扈するトランプ政権

本当の外交は、表面で進行している状況とはと必ずしも一致しているわけではありませか。トランプ大統領が米朝会談をどのように位置付けているかはわかりません。単なる「外交ショー」、「ディール」としているなら、追い詰められた金正恩が「CVID」(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を約束するだけで、体制保証と制裁解除を見返りに与えるかもしれないです。

しかし、そうだとしても、それは「罠」です。アメリカがOKとする非核化までに時間がかかると困るのは、北朝鮮のほうだからです。

北朝鮮は少しでも非核化達成の時期を長引かせます。そうして、段階的に援助を引き出し、うまくいけば核を隠し持とうとするだろうという「見方」が大勢を占めているようです。しかし、そんなことをすれば、経済制裁は解除されず、北朝鮮は完全に干上がります。それはアメリカにとっては思う壺で、そのうちに北朝鮮内に内乱を起こさせ、体制を転覆させることができるでしょう。

アメリカの最終目標は、朝鮮半島の非核化ではなく、金正恩をイラクのサダム・フセイン、リビアのカダフィと同じく、この世から葬ることと考えるべきです。

そうして、“朝貢国”である北朝鮮の背後にいる“冊封国”中国にプレッシャーを与えること。これが、アメリカの本当の狙いでしょう。

トランプは、今年になって政権内を「強硬派」(hawk)で固めました。ハーバート・マクマスターの代わりにやってきたジョン・ボルトン補佐官(安全保障担当)は、「悪魔の化身」(the devil incarnate)と、「狂犬」(mad dog)と称されるジェームズ・マティス国防長官から言われる人物です。

ジョン・ポルトン補佐官

ヘンリー・キッシンジャーやジェームズ・ベーカーなど共和党の歴代国務長官のバックサポートを受け、「平和は力によって達成できる」(=交渉や条約では達成できない)と信じています。かつて、「国連などというものはない。あるのは国際社会だけで、それは唯一のスーパーパワーたるアメリカによって率いられる」と発言したことがあります。

水面下交渉のため2度、平壌に行ったマイク・ポンペオ国務長官も、完全な強硬派です。ボルトンもポンペオもかつて北朝鮮に対しては、予防戦争をやって体制を崩壊させるべきだと発言していました。

対北朝鮮ばかりか対中国を見ても、トランプ政権内には「対中強硬派」(ドラゴン・スレイヤー:dragon slayer)がそろっています。制裁関税に反対して政権を去った大統領国家経済諮問委員会のゲリー・コーン委員長に代わったのが、ラリー・クドロオ氏。アンチ・チャイナの代表的論客で、中国へ高関税を課すのは「当然の罰だ」と言う人物です。

さらに、商務長官のウィルバー・ロス氏、国家通商会議のピーター・ナヴァロ氏、そしてUSTR(アメリカ合衆国通商代表)のロバート・ライトハイザー氏も、対中強硬派である。とくにナヴァロは「アメリカの災難はすべて中国によってもたらされている」と言ってはばかりません。

このようなトランプ政権が、非核化だけで北朝鮮を生かし続けるるはずがありません。 いくら核を捨てようと、彼らは暴力と恐怖で国民を支配する独裁体制を維持し続けます。これから人々を解放することが本当の平和の達成であり、かつまた、アメリカ覇権(パクス・アメリカーナ)を維持することです。

要するに、米朝会談をきっかけとして、いずれ北朝鮮を国家として葬り、中国の力を削いでいくこと、これが、いまのアメリカの国家目標でしょう。これが、トランプ氏の本音でしょう。

トランプ大統領は金正恩をがんじがらめに

13日、ポンペオ国務長官は、アメリカの民間企業による北朝鮮への投資を認めるかもしれないと、『FOX』のニュース番組で発言しました。また、アメリカの投資家が北朝鮮のエネルギー供給網構築を支援できるかもしれないとも述べました。

ボルトン補佐官もまた、『ABC』の番組で、非核化の証拠が得られれば、アメリカは北朝鮮に民間投資を導き、経済を繁栄させる用意があると、ポンペオと同様の話をしました。

これは金正恩に対する「CVID」に同意せよというメッセージであり、「撒き餌」でしょう。この餌に食いつかせれば、あとはアメリカの思惑通りにできます。ところが、金正恩
は、中国に行き、習近平と会談しました。

トランプ大統領は27日、元駐韓国米大使で現在は駐フィリピン米大使を務めるソン・キム氏が率いる米国実務者代表団を北朝鮮に派遣しました。ソン・キム氏は長年にわたり北朝鮮の核問題を担当してきました。

同行者の中には、国家安全保障会議(NSC)のフッカー朝鮮部長のほかに、ランディ・シュライバー国防次官補らがいました。ランディ・シュラ-イバー次官補は、このブログでも紹介したことがありますが、強烈な反中派です。

その彼が、いまや板門店の北朝鮮側施設「統一郭」にいて北朝鮮の対米外交を担当する崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官らと、実務者レベルの話し合いをしていたのです。話し合いは29日まで続いたとされています。

同時にトランプ大統領はシンガポールにヘイギン米大統領次席補佐官ら一行を派遣し、北朝鮮との間で米朝首脳会談開催の調整に当たらせています。北朝鮮側からは金正恩委員長の執事(秘書室長格)とされているキム・チャンソン国務委員会部長が参加。

彼は北京経由でシンガポール入りしました。キム・チャンソン部長は5月24日に北京に到着し、26日に帰国した人物です。その間に、トランプ大統領の米朝首脳会談中止宣言が出されました。

北朝鮮とシンガポールで米朝実務者レベルが会談するという状況にいきなり追い込まれた金正恩委員長としては、まさか習近平に助けを求めに行くことなどできはしないでしょう。

おまけにトランプ大統領は27日にツイッターで「北朝鮮には素晴らしい潜在力があり、いつか偉大な経済・金融国家になるだろう。金委員長と私はこの点で認識が一致している」とつぶやいています。「北朝鮮が核放棄に応じれば、北朝鮮がこれまでにない経済発展を遂げることができる」とも言い、金正恩委員長の心を刺激しています。

金正恩は「だとすれば、いっそのこと、中国ではなくアメリカ側に付いてしまった方が得かもしれない」と心ひそかに思ったかもしれません。

トランプは、5月16日に北朝鮮が南北閣僚級会談をドタキャンしたり、「米朝首脳会談だって考え直さなければならない」などと「デカイ態度」を示し始めたことを、「金正恩が習近平と二度目の会談をしてからのことだ」と言い始め、5月7日と8日の大連会談に疑義を挟み始めました。

そうして、トランプ大統領は5月16日以降の北朝鮮の態度の変化を「中国のせい」にしておいて、それもちらつかせながら米朝首脳会談を中止しました。

これに対して、金正恩は、米朝首脳会談復活となれば、この段階でさらに習近平にSOSを出せぱ、きっとトランプがまた機嫌を悪くして「中止する」と言い出しかねないと考えたに違いありません。金正恩としては、腹の中ではどんなことをしてでも米朝首脳会談を成功させたいと考えているでしょうから、彼はもう訪中はできません。。

おまけに板門店とシンガポールの挟み撃ちで米朝実務者レベルの会談に急に追い込まれた状況で、習近平に会いに行くなどしたら、トランプの逆鱗に触れることになります。

こうして金正恩をまず、「がんじがらめにして習近平に会わせないようにする」ことに、トランプは成功したのです。

金正恩をがんじがらめにしたトランプ大統領

こうなると、習近平としては、もう何もできないです。自ら積極的に「さあ、北京にいらっしゃい」とは言えないのです。

トランプ氏は、金正恩の豹変を「中国のせい」ではないことを知りながら、あえて「中国のせい」にしたのです。

さらに、5月26日の今年に入ってから第2回目の南北首脳会談のあと、文在寅大統領は米朝首脳会談のあと「南北米」で朝鮮戦争の終戦協定に入ってもいいと27日に語りました。

となると、朝鮮戦争で最も多くの兵士を参戦させ、また多くの犠牲者を出した中国は、その終戦協定という平和体制への移行に発言力を持てなくなってしまいます。

しかし「米朝は対話のテーブルに着け」と言い続けてきたのは中国です。今まさにそのテーブルに着こうとしているのですから、中国としては文句が言える筋合いではありません。こうしてトランプは、習近平の口をも閉ざさせてしまったのです。

これが十分に練り上げた戦略として編み出されたものか、あるいはトランプのビジネスマンとしての「勘」が、結果的にここまで行ってしまったのかは、わからないです。いずれにしても、トランプの圧勝です。

もしトランプが北朝鮮の「完全な非核化の程度」に満足して莫大な経済支援をしたとすれば、金正恩なら、「習近平からトランプに乗り換える」くらいのことは、やるかもしれないです。

どんなに中朝軍事同盟があり、中朝蜜月を演じたとしても、それはアメリカへの威嚇であって、その威嚇が必要となくなれば、中国は「いざという時の後ろ盾」程度の位置づけになり、存在感を失うことになるでしょう。

こうして、「中国の覇権」を抑え込むために、トランプは十分に金正恩という駒を駆使しているのかもしれないです。

中国に対抗することが米国の長期戦略に

先に、トランプ大統領の目標は、「朝鮮を国家として葬り」と掲載しましたが、これは何も軍事作戦だけを意味するものではありません。

北朝鮮の体制を転換させ、いずれ民主化させるということもありえます。そのほうが、経済的にも、恵まれることになります。そうして、そのときには、北朝鮮は米国にとって軍事的にも経済的にも、対中国の最前線基地になっているかもしれません。

一方、北朝鮮があくまで、体制転換を望まないというなら、その時には徹底的に制裁をして、軍事力も用いて、北の現体制を潰し、新たな政権を樹立させるかもしれません。

トランプ大統領としては、場合によってどのような道も選べるように、強烈なタカ派を重用しつつ、中国に対抗できる体制を整えたのです。そうして、中国に対抗していくことを米国の国家戦略に据えたのです。

そうして、この戦略は習近平が、習近平国家主席は憲法を改正して“終身皇帝”となり、「中華民族の偉大なる復興」を目指して着々と政策を進めている現在、たとえポスト・トランプが誰になろうと、民主党政権に政権交代したとしても、引き継がれることでしょう。その意味で、少し前までの米国と現在の米国は根本的に変わってしまったのです。

これから米国がどのように変わったにしても、習近平皇帝の意のままにはさせないということで、米国は一致団結することでしょう。

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2018年5月4日金曜日

歴史が教える「朝鮮半島に深入りすると日本は必ず失敗する」―【私の論評】日・米の戦略の間違いが、冷戦、北朝鮮問題、中国問題を生み出した(゚д゚)!

歴史が教える「朝鮮半島に深入りすると日本は必ず失敗する」

東京通信大学教授、早稲田大学名誉教授の重村智計氏

 「今こそ日本には、朝鮮半島に関わらない戦略が必要」--朝鮮半島を長きにわたり取材・分析してきた東京通信大学教授の重村智計氏は、こう断言する。

 * * *

 電撃的な米朝首脳会談の決定を受けて、日本の「乗り遅れ」や「置き去り」を危惧する論調が目立つ。しかし、そうした声は日本と朝鮮半島の歴史を全く理解していないゆえのものといえる。

 歴史が教えるのは、「朝鮮半島に軍事的、政治的に深入りすると、日本は必ず大失敗する」という事実だ。中国が必ず介入するからだ。

 古くは660年、百済が滅びた後に朝鮮半島に介入した倭国(日本)は、白村江の戦いで唐・新羅連合軍に大敗を喫した。近世においては豊臣秀吉の朝鮮出兵が大失敗に終わったこともよく知られる。いずれも、中国の介入で大敗北した。

白村江の戦いの絵画 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 近代になり、“朝鮮半島は日本の生命線”との覚悟で臨んだ日清、日露戦争では勝利を収めたが、戦争は列強の干渉を招き、日本が国際社会から孤立する一因となった。その後の植民地支配もうまくいかず、日本は韓国と北朝鮮からいまも恨まれている。

 逆に日本が参戦しなかった朝鮮戦争では、戦中も戦後も「朝鮮特需」という大きな果実で経済が潤った。この戦争も中国の介入で膠着状態に陥り、米国の実質的な敗北で終わった。半島国家である南北朝鮮はともに小国であり、常に周辺国を巻き込んで利益を得ようとする。

 冷戦時代、北朝鮮は文化大革命下の中国から独裁体制を批判されるとソ連に接近し、デタント(緊張緩和)で米ソ関係が改善すると中国にすり寄った。冷戦終結後の1990年代も、南北対話が上手くいかないと米朝交渉に向かい、それがダメなら日本に秋波を送った。

 こうした「振り子外交」は北朝鮮のお家芸だ。周辺国に「乗り遅れ懸念」をまき散らし、自国に有利な状況をつくろうとする。

1990年9月の訪朝時。金丸信氏(左)、金日成主席(中)、田辺誠社会党副委員長

 かつての日本は「乗り遅れ」と「置き去り」を怖れ、1990年の「金丸訪朝団」をはじめ、渡辺美智雄氏(1995年)、森喜朗氏(1997年)らが競って北朝鮮を訪問したが、“援助”としてコメなどを奪われただけで日朝関係は一向に改善しなかった。これもまた大きな教訓である。

 【PROFILE】重村智計(しげむら・としみつ)/1945年、中国・遼寧省生まれ。毎日新聞記者としてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員などを歴任。朝鮮半島情勢や米国のアジア政策を専門に研究している。『金正恩が消える日』(朝日新書)、『外交敗北』(講談社刊)など著書多数。

【私の論評】日・米の戦略の間違いが、冷戦、北朝鮮問題、中国問題を生み出した(゚д゚)!(゚д゚)!

日本が、朝鮮半島や中国に関わると、ろくなことがないということは、ジャーナリストの西村幸祐氏も同じようなことを語っていました。それどころか、あの福沢諭吉氏が、日本が中国、朝鮮にかかわるとろくなことがないとして、「脱亜入欧論」(後進世界であるアジアを脱し、ヨーロッパ列強の一員となることを目的とした思想)を唱えていました。

福沢諭吉

確かに、過去の世界史を紐解いてみるとそういうことがいえそうです。特に歴史上はっきりしているのは、「大国は小国に勝てない」という現実です。

日露戦争で、ロシアは当時小国であった日本に勝てず、フィンランドにも勝てませんでした。中国はベトナムに勝てず、アメリカすらベトナムに敗北しています。このような事例は多く存在します。

これについては、米国の戦略家であるルトワック氏も同じようなことを語っています。

ルトワックは「戦略的バランシングが発生するので大国は小国に勝てない」と語っていました。例えば中国がフィリピンに圧力をかけても、アメリカや日本がフィリピンのバックアップに回るのでフィリピンが屈することはありません。

ベトナムもしかりです。大国であるアメリカがベトナムと戦争をした時も、中国やソ連、ラオスなどがベトナム側について、アメリカはベトナムから撤退するしかありませんでした。

ロシアもそうでした。日露戦争ではイギリス、アメリカの支援を受けた日本に敗れています。

勝利のための戦略を立て、それを推進すれば必ず勝利できるというのは間違いであり、自分たちが行動をすれば、必ず相手のリアクションがあって、戦略の修正や見直しを余儀なくされます。これをルトワック氏は逆説的論理と呼んでいます。

ルトワック氏

この前提を無視すると逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)が発動して大国は小国に勝てなくなるのです。真珠湾攻撃で対米戦を始めた日本も戦略的には大きな間違いを犯しており、逆説的論理に苦しめられることになりました。

では当時の日本にとってベターな戦略は何だったかと言えば、真珠湾攻撃の直後に降伏することだったとルトワックは述べています。確かにそうすれば、良かったのかもしれません。

私としては、日本としてはルトワック氏のやり方以外にも方法はあったと思います。そもそも、真珠湾攻撃などせずに、日本が1943年に定めた絶対国防圏を守り抜き、朝鮮半島と満州はあくまでソ連が侵攻してくるのを防ぐためとして統治し、中国大陸にはかかわらず、ソ連とだけ対峙していれば、いずれ米英と和平の講話することもできたと思います。


講話の条件は、連合国側が石油の禁輸などを解くかわりに、絶対国防圏に含まれる国々を独立させると確約すれば確実に和平が成り立ったと思います。

そうなると、冷戦もなかったかもしれません。北方領土もソ連にとられることはなかったかもしれません。

そうして、ナチスドイツは消え、軍事大国の日本が残れば、それにソ連はこれに備えなければならず、ソ連の台頭により東欧がソ連に蹂躙されることもなかったかもしれません。

実際、スターリンは日本の関東軍が関東軍特種演習(当時ソ連と対峙していた日本の関東軍による軍事演習)が開催されるたびにいつ攻め込まれるかと恐れおののいていたそうです。

ノモンハン事件に関しては、過去においては日本の一方的な負けとされていましたが、ソ連崩壊後のロシアが様々な文書が公開され、それによれば、ノモンハン事件ではソ連側もかなりの大打撃を受けており、実際にはどちらかというとソ連側の負けであると考えたほうがふさわしかったということがわかっています。

日本がそのように動いていれば、今日世界は北朝鮮問題や、中国の問題にさらされることもなかったかもしれません。

これは、夢物語のように聞こえるかもしれませんが、米国の保守系の歴史学者らも同じようなことを語っています。ルーズベルトがスターリンのソ連に接近し、ソ連に対峙していた日本を攻撃したことは間違いだったとしています。

結局、日本と米国の戦略の間違いが、冷戦、そうして今日の北朝鮮問題、中国問題を生み出しているのです。

そうして、今日過去の間違いを正すことはできませんが、これを反省材料として未来を考え、良い方向に導くことはできます。

福沢諭吉は脱亜入欧論を主張していましたが、今日のアジアをみてもその考えを変えなかったたでしょう。

日米は今度こそ間違えることなく、一時的に安全保障などで朝鮮半島や中国に関わることはあっても、本格的に関わりを持つようなことはすべきではありません。

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2018年2月19日月曜日

無理筋だった韓国の五輪外交、北の時間稼ぎに利用される ぶれていない米国の強硬姿勢―【私の論評】長期では朝鮮半島から北も韓国も消える可能性も(゚д゚)!


平昌冬季五輪の開会式で韓国の文在寅大統領(左)と握手する北朝鮮の金与正氏=9日
 平昌五輪の開会式に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、与正(ヨジョン)氏らが出席し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が融和姿勢を示した。これによって核・ミサイル開発をめぐる米朝関係に何らかの影響が出てくるのだろうか。

 米国は、ペンス副大統領を平昌五輪に派遣し、「北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄するまで同国を経済的、外交的に孤立させ続ける必要があるとの認識」を強調した。ペンス氏は「問題は言葉でなく行動だ」と、北朝鮮の非核化に向けた具体的な行動を文氏に求めた。

 ペンス氏の行動ははっきりしていた。9日、文氏が主催した事前歓迎レセプションを事実上、欠席した。

 実は、ペンス氏と安倍晋三首相は、レセプション開始時刻を10分も過ぎて到着した。その後、ペンス氏はレセプション会場に入っても主賓の席に座らず、北朝鮮高官代表団団長の金永南(キム・ヨンナム)氏を除く要人と握手して、立ち去ってしまった。

レセプション場を着席することもなくわずか5分で出ていったペンス副大統領 
 韓国としては、レセプションの座席配置も米朝の了解を得ていたつもりで、同じテーブルでペンス氏と金永南氏が同席するだけでも絵になるともくろんでいた。しかし、米国がそれを認めるはずもなく、ペンス氏は、北との接触を回避するというより、平然と無視していた。

 一連のおぜん立ては文氏の平和演出であろうが、これは無理筋だ。北朝鮮側の事実上トップだった金与正氏は、米国の制裁対象者でもあり、米国としては無視するのは当然だ。

ペンス氏は、文氏に「米国は、北朝鮮が永久的に不可逆的な方法で核兵器だけでなく弾道ミサイル計画を放棄するその日まで、米国にできる最大限の圧迫を続ける」と伝えた。訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談でも、「近日中に北朝鮮に最も強力かつ攻撃的な制裁を加える」と明らかにしたという。

ペンス米副大統領が、訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談
 マティス米国防長官は、平昌パラリンピック(3月9~18日)の後に、軍事演習を再開することを明言している。

 一方、金永南氏は、文氏との会談において、米韓軍事演習などを中止し、訪朝を最優先とすることを要請したようだ。金正恩氏は、9月9日の北朝鮮建国50周年までに南北首脳会談を実現したい意向と伝えられている。

会談する韓国の文在寅大統領(右から3人目)と北朝鮮の金与正氏
(左から2人目)、金永南氏(同3人目)=10日午前、韓国大統領府
 はっきりいえば、これは北朝鮮の時間稼ぎである。北朝鮮の核・ミサイル技術はロシア製なので、進展度合いを技術的に読むことが可能だ。米国に到達する弾道弾について、実戦配備可能な技術的な時期はあと3カ月から6カ月以内というのが通説である。

 米国は、やられる可能性があれば、その前にやる国だ。平昌五輪前日、北朝鮮では軍事パレードを行い、「火星15」とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)も披露したという。これは、米国人にとって「不穏な動き」と見られなくはない。北朝鮮に対し、「核を放棄せよ、さもないと叩く」という米国の姿勢は全くぶれていない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】長期では朝鮮半島から北も韓国も消える可能性も(゚д゚)!

平昌五輪という一大イベントを契機に南北関係が改善すること自体は、一見して評価して良いかのようにもみえます。しかし、露骨な政治利用が続くことに「もはや“平壌五輪”なのでは」といった声も聞こえてくるのが実情でした。そうして、この背後には、北朝鮮の並々ならぬ危機感がみてとれます。

そもそも、韓国と北朝鮮が融和したところで朝鮮半島危機は終息しません。重要なのは北朝鮮の非核化です。また、今回のアプローチは北朝鮮主導で行われており、仮に南北統一が実現するとしても、このままいけば北朝鮮が主導権を握ることになります。核を持つ北朝鮮と、アメリカに見限られかねない韓国を比較すれば明らかです。北朝鮮のほうが立場は上です。

これまで、日米は韓国を「反共の壁」として利用してきました。中国やロシアとの間の緩衝地帯であると同時に、日本海の安全を守るための橋頭堡という位置付けです。その代わりに、日本は韓国に膨大な資本投下や技術移転を行うことで発展を支え、いわば「自由社会のショーケース」として共存してきました。

しかし、韓国が北朝鮮に懐柔されるかたちで統一すれば、これらはすべて無駄になります。
地政学的に見れば、韓国は日本にとって非常に重要な位置にあり、日本海を軍事的対立線にしないための役割も担っています。しかし、韓国の国民が北朝鮮主導による南北統一を選ぶのであれば、日本にそれを阻止する手段はないに等しいです。ただし、米国は黙ってはいないでしょう。

かつて、日本の保守勢力と韓国の政界は深い関係を持っており、韓国の内政に日本の影響力を行使することもできました。しかし、現在はそうした人脈が失われつつあります。

すでに、世界は「平昌五輪後」の情勢を見据えています。欧米メディアからは「五輪が終わるまでは……」というフレーズが多く聞かれ始めています。振り返ってみれば、2014年のロシアによるクリミア侵攻もソチ五輪の閉幕直後でした。前述したアメリカの独自制裁も含め、五輪後に北朝鮮情勢に新たな動きがあったとしてもおかしくありません。

ロシアによるクリミア侵攻
平昌五輪終了後の半島情勢は以下のようなシナリオが考えられます。ただし、このシナリオ内でも大きなバリエーションのあるものになりそうです。

①北朝鮮の崩壊と新体制の確立 ②現状維持 ③朝鮮半島の合意一体化の3つです。②と③は北朝鮮の実質勝利です。日本や中国を含む多くの国は目先②を望むのでしょうが、それは案外、可能性が低い選択肢かもしれません。なぜなら、②は単なる北朝鮮の時間稼ぎに利用されるだけだからです。

ただ、現状維持とはいっても様々な事態が予想されるかもしれません。たとえば、米は経本格的に海上封鎖することになるかもしれません。それも中途半端なことはせずに、海上に機雷を敷設して完璧に封鎖ということも十分考えられます。場合によっては、北と中国の間の鉄橋などを破壊するかもしれません。こうなると、もう戦争状態です。

中国が描くシナリオは③である可能性が高いです。その場合、いったん韓国を左派色に染めて北朝鮮との色の差を薄くし、アメリカと韓国との色の差を強調するかもしれません。

一方、中国にとって日本は戦略的に重要な立場になるため、南京事変といった歴史問題は当面横に置いておき、日本とのコミュニケーションをスムーズにしておくことを推し進めるかもしれません。

日本の報道では日中関係改善と報じられていますが、外貨不足の中国による日本からの外貨誘導のための改善かもしれません。実質的には巧みに計算された政策です。日本政府ももちろん、それは理解していることでしょう。

仮に③のシナリオとなった場合、韓国の中で右寄りの思想の人たちが日本に渡ってくる可能性は大いにあります。

ただし、同じ③でも、米国主導により、北朝鮮・韓国の現体制抜きで、半島全体に新たな秩序をつくりだすということも考えられます。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日韓合意検証発表】交渉過程の一方的公表を韓国メディアも批判「国際社会の信頼低下」―【私の論評】北だけでなく朝鮮半島全体に新レジームが樹立されるかもしれない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
現在の文在寅政権は、かなり親北的です。これは、日米からみると、北が米国の圧力に屈したり、武力攻撃で崩壊したしたにしても、韓国にその勢力が残存することになり、実質半島全体が北朝鮮になってしまうかもしれません。これはかなりやっかいなことになります 
中露からすれば、北朝鮮が一方的になくなれば、いずれ韓国が北の領域も併合することになるかもしれないという危機感があります。そうなると、今までは日米との間に北という緩衝地帯があったにもかかわず、それがなくなることを意味します。 
これは、日米中露にとっては良いことではありません。であれば、朝鮮半島全域を日米中露と他国をも含めた国連軍などで統治した後に、ここに日米寄りでも、中露寄りでもない中立的な新国家を設立するというのが最も望ましいかもしれません。 
しかし、北の後には、韓国を何とかしなければならないという機運は、日米中露の間で高まるのは間違いないものと思います。ただし、これはすぐにということではなく、北朝鮮崩壊後数年から10年後ということになるでしょう。
このように、長期では、半島全体に北朝鮮や韓国とは全く異なる、中立的な新国家を樹立ということになる可能性も十分あると考えられます。

また①のシナリオ、つまり斬首作戦はアメリカがどういう分析をしているかによるでしょう。仮に金一族を否定することが北朝鮮国民のマインドを喪失させるのか、かつての日本のように180度転換できるのか、その場合、誰かリーダーになれる人はいるのか、疑問だらけではあります。

つまり首を取るのは簡単でもその後の2500万の残された国民の対応は、結局のところ未だわかりません。ただし、今の国民は体制のことを考えることすら許されていません。であれば、それを考えることが許される体制への変化は受け入れやすいかもしれません。それに、リーダー足り得る人も存在すると思います。

平昌五輪・パラリンピック終了後の4月頃には米韓合同軍事演習や文大統領の来日も予定されていますが、今は春に向けて政治的駆け引きが活発化しています。

かつて、太平洋戦争前の1941年11月に「ハル・ノート」と呼ばれる交渉文書がアメリカから日本に提示されました。これは日本に中国およびインドシナからの撤退などを求める内容で、事実上の最後通牒とみなされています。

そして、要求をのめなかった日本は開戦へと突き進むことになったわけですが、今回の日米首脳の訪韓は、ある意味で韓国に向けた「現代版ハル・ノート」といえるのかもしれません。

かつて、アメリカの国務副長官リチャード・アーミテージが9/11直後、パキスタンが、アフガニスタンの盟友、タリバンを即座に裏切り、アメリカにアフガニスタン侵略の為のパキスタン内軍事基地の使用を認めなければ、「アメリカがパキスタンを爆撃して石器時代に戻してやる」とパキスタンの諜報機関ISI長官マフムード・アフメド中将を恫喝したとムシャラフは主張していました。

アーミテージ
今回もペンス副大統領がこれに近いことを文在寅に吹き込んだ可能性すらあるのではないかと私は睨んでいます。

そこまでいかなくとも、日米と中国との狭間で、どっちつかずのバランス外交をしていると、半島から北はもとより、韓国も消える可能性もほのめかしたしたかもしれません。そうして、それは日米だけではなく、中露も望んでいる可能性があります。

何しろ、ここ70年朝鮮半島は、各国にとって少しも良いことはありませんでした。今の状況は、北朝鮮は中露の同盟国とは言い切れない状況にあります。また、韓国が日米の同盟国ということも言い切れません。かといって、無論北朝鮮は日米の同盟国にはなり得ません。同じく、韓国が中露の同盟国となることも不可能です。

こんなことを考えると、日米中露が朝鮮半島全体に新たな秩序をつくりだすことには、それなりの意義と合理性があります。

いずれにしても、朝鮮半島には今までの常識では計り知れない何かがおこる可能性が大です。すべての可能性を除去することなく考えておくことによってのみ適切な対応が可能になるでしよう。これをきっかけに、日本も大きく変わる可能性もあります。

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2017年2月17日金曜日

米軍、金正恩氏「7日で排除」3月にも世界最強の軍事力行使か、韓国紙は日本配備のステルス戦闘機に言及―【私の論評】まさに、朝鮮半島は戦争前夜(゚д゚)!

米軍、金正恩氏「7日で排除」3月にも世界最強の軍事力行使か、韓国紙は日本配備のステルス戦闘機に言及

ドナルド・トランプ米大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件は、国際社会が注目している。「毒劇物による暗殺」の可能性が高まるなか、ドイツ・ボンで16日に開催の日米韓外相会談でも、事件や北朝鮮の核・ミサイル問題は議題となった。ドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮への対抗姿勢を強めており、3月にも世界最強の軍事力を行使する可能性がある。北朝鮮は16日、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日「光明星節」を迎えたが、専門家は正恩氏排除までの期間を「早ければ7日」と断言した。

 日米韓外相会談は、ボンでのG20(20カ国・地域)外相会合に合わせて行われた。岸田文雄外相と、レックス・ティラーソン米国務長官、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が出席した。

 会談では、日米韓が連携して、アジアの平和と安定を壊しかねない北朝鮮への制裁措置の実効性確保を図るとともに、中国に対して北朝鮮への圧力を強めるよう働きかける方針を確認した。当然、正男氏の暗殺事件についても意見交換したとみられる。

 注目の事件だが、マレーシアの国営ベルナマ通信は16日、同国の警察が2人目の女を逮捕したと報じた。地元メディアは、女2人のほかに、男4人が犯行を手助けした疑いがあり、警察が行方を追っていると報じた。

 韓国・朝鮮日報は16日、「(正男氏の遺体の)口元に泡がついており、典型的な毒殺時の現象だ」という政府当局者の証言を伝えた。

 事件への関与が注目される正恩氏は75周年の「光明星節」という16日、父の正日氏と、祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を訪問した。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 今後、犯行が「北朝鮮の仕業」「正恩氏の指示」と断定されれば、日米首脳会談に合わせた11日の弾道ミサイル発射を受けて「非常に強い態度で対応する」と怒りをあらわにしたトランプ氏を、激高させそうだ。

 トランプ氏の本音について、13日に帰国した安倍晋三首相はNHKのニュースに出演し、「オバマ政権は軍事力の行使には非常に慎重だった。今のトランプ政権では、もう一度見直し、あらゆる選択肢をテーブルの上にのせながら、外交的に解決していきたいと考えていると思う」と語った。

 「あらゆる選択肢」とは、当然、世界最強の軍事力を指す。

 福井県立大の島田洋一教授は「トランプ氏は『ここで北朝鮮になめられたら、他の国になめられる』という感覚から、目に見える格好で強い姿勢を示すだろう。過去にも、相手がなめてかかってきたら『10倍返し』でやるという趣旨の発言をしている」といい、今後の行動をこう予測する。

 「まず考えられるのは、北朝鮮と取引する中国企業が使用する金融機関に対する金融制裁のグレードアップだ。さらに米韓軍事演習の強化や、米国防情報局(DIA)を通じた工作も強化してくるのではないか」

 米韓軍事演習については、拡充する見通しを韓国紙が伝えている。

 朝鮮日報(日本語版)は11日、米原子力空母「カール・ビンソン」が前日にグアムに到着したことや、ステルス戦闘機「F22ラプター」の日本配備に触れ、米軍の戦略部隊が朝鮮半島周辺に集結していることを報じた。記事では、軍関係者の話として「3月の米韓軍事演習『キー・リゾルブ』と『フォールイーグル』に参加する可能性が高い」と伝えている。

 カール・ビンソンは「動く軍事拠点」とも呼ばれるニミッツ級の原子力空母で、同紙は「西太平洋を担当する第7艦隊には、すでに原子力空母『ロナルド・レーガン』が配備されている。米国が西太平洋で2つの空母機動部隊を運用するのは異例」と指摘した。

 かつてない規模で行われる3月の米韓軍事演習だが、過去には正恩氏を急襲し、確保・排除する「斬首作戦」に沿った演習が行われてきた。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「本物の『斬首作戦』に変更してもいいような軍事演習となるだろう」といい、北朝鮮攻撃のシナリオを次のように語る。

 「陸からは、韓国軍と米軍の特殊部隊で平壌まで行く。空からは、B2爆撃機が平壌(ピョンヤン)上空まで行き、地下の約50メートルまでコンクリートをぶち抜ける爆弾『バンカーバスター』を使って、地下壕にいる正恩氏の居場所を徹底的に攻撃するだろう。海からは、恐らくトマホークを打ち込む。海上にはイージス艦もいるので、北朝鮮が弾道ミサイルで反撃してきた場合は、海上配備型迎撃ミサイルSM3で全部打ち落とすだろう」

 トランプ氏が、暴走する正恩氏を排除する決断を下すきっかけは何か、作戦終了までにかかる時間はどの程度か。

 世良氏は「北朝鮮が米国に到達する能力を持つICBM(大陸弾道間ミサイル)を発射したとき、またはトランプ氏が何らかの情報に基づきゴーサインを出したときが考えられる。早ければ1週間程度で、正恩氏を排除できるのではないか」と語っている。

【私の論評】まさに、朝鮮半島は戦争前夜(゚д゚)!

すでに米軍は、昨年金正恩斬首部隊を韓国に配備し、そのための訓練を行っています。それについてはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
在韓米軍、「金正恩斬首」の特殊部隊を配備―【私の論評】戦争に傾く混迷の2016年以降の世界を日本はどう生き抜くのか(゚д゚)!
第75レンジャー大隊の隊員たち ジャーマン・シェパードを含む 
この記事は、昨年の2月5日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
在韓米軍がこのほど、第1空輸特戦団と第75レンジャー連隊所属の特殊部隊を韓国にローテーション配備した。 
同部隊は、イラク戦争やアフガニスタンでの戦闘に投入され、敵の要人を暗殺する「斬首作戦」などを担ってきた。核・生物化学兵器などの大量破壊兵器(WMD)の除去作戦も行う。 
在韓米軍の発表によれば、「特殊部隊は韓国特殊戦司令部と共に特殊戦司令部準備態勢や能力増大のための訓練を行う」という。訓練には、特殊部隊を極秘潜入させる米空軍のMC-130J支援機も投入される予定。

在韓米軍がこうした発表を行うのは異例。
さらに、 米国は昨年から2つの空母打撃群を西太平洋に配置する構えをみせ、ステルス戦闘機「F22ラプター」の日本配備も昨年すでになされています。今年になってはじめて、ブログ冒頭のような構えをみせたわけではありません。それに関す記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報―【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?
この記事は、昨年1月28日のものです。以下に一部分を引用します。
米西部ワシントン州の母港を15日、原子力空母「ジョン・C・ステニス」(排水量10万5500トン)が出港し、西太平洋に向かった。同空母は、戦闘機や攻撃ヘリコプターなど約90機を搭載し、士官・兵員約3200人、航空要員約2500人が乗船している。当然、ミサイル巡洋艦や駆逐艦、原子力潜水艦などを引き連れて、空母機動部隊を編成している。 
ご存じのように、横須賀基地(神奈川県)には、原子力空母「ロナルド・レーガン」(同10万8000トン)を中心とする、機動部隊が配備されている。東アジアに2つの空母機動部隊が展開するなど、異例中の異例といえる。 
横須賀に入港中のロナルド・レーガン
さらに、横田基地には、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」と、F16戦闘機「ファイティング・ファルコン」の計26機が集合した。米グアムの米軍基地には、「死の鳥」と恐れられるB52戦略爆撃機「ストレイトウフォートレス」(成層圏の要塞)と、B2ステルス戦略爆撃機「スピリット」がスタンバイした-。
以下、複数の米軍関係者から得た仰天情報だ。 
「北朝鮮殲滅(せんめつ)作戦は数パターンある。基本は、ステルス戦闘機などで約700カ所の軍事拠点をピンポイント爆撃し、原子力潜水艦で海域を封鎖する。同時に特殊部隊が突入。北朝鮮内部に構築したスパイとともに正恩氏を一気に確保し、排除する」 
「作戦の第1段階は、原子力空母や原子力潜水艦などの朝鮮半島沖への展開だ。2月末から、米韓合同軍事演習『キー・リゾルブ』と、野外機動訓練『フォールイーグル』が予定されている。空母などは、その名目で展開する。第1段階は2月下旬までに完了する」 
「Xデー」とはこのことだ。情報はこう続く。 
「最終的なゴーサインはオバマ米大統領次第だ。こちらは北朝鮮の地下軍事基地の詳細や、正恩氏の居場所、中国やロシアへの脱出トンネルも把握している。正恩氏はもはや、核放棄に応じるしかない。それは『2005年の事件』で分かっているはずだ」 
米軍は05年、北朝鮮で極秘軍事作戦を決行した。F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」を、平壌上空に派遣し、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記の豪邸にめがけ、上空から急降下を繰り返し、正日氏に死を覚悟させて震えあがらせた。見えない戦闘機に北朝鮮は手も足も出なかった。
F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」
今回の米軍展開は、その時以上といえる。
飛行中のB2ステルス戦略爆撃機「スピリット」
米国が西太平洋で2つの空母機動部隊を運用するのは異例のことですが、それを米軍は昨年の今頃も実施し、今年も行っているということです。

この動き無論のこと、金正恩にだけ焦点をあてたものではなく、支那に対する牽制という意味もあると思います。

さて、米国といえば、オバマ政権時代にオサマ・ビン・ラディン氏を暗殺しています。これを考えれば、ブログ冒頭の記事にあるような、金正恩氏暗殺ということも十分にあり得ます。

オサマ・ビン・ラディン氏に関しては何年間もCIAが居場所をつきとめようとしていてなかなかつきとめられなかっのが、とうとう突き止めることができたため、斬首作戦に踏み切ったものです。

金正恩氏に関しても、わざわざ斬首部隊を韓国に配置したり、今年も空母打撃群を2つも派遣したり、さらにはステルス戦闘機を今年も日本に配備したということで、米軍としては、条件が揃えば実行する用意があるのは当然のことと思います。

それにしても、米国の昨年に続くこのような動き、北朝鮮側、金正恩からみても不気味でしょう。

さて、ブログ冒頭の記事にもあるとおり、北朝鮮は16日、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日「光明星節」を迎えました。正恩氏は今年の75周年の「光明星節」に父の正日氏と、祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を訪問しました。

故金正日総書記の生誕記念日「光明星節」を記念して
開かれたシンクロナイズドスイミングの公演=15日、平壌
金正恩党委員長は16日0時、金正日総書記の生誕記念日(2月16日)である光明星節に際して、平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝しました。同日、朝鮮中央通信が報じました。私自身は、金正恩氏はこの日にあわせるように、金正男氏を暗殺したのではないかとみています。
これをもって、完璧に後継者問題を終焉させるという意味があったものと考えます。
錦繍山太陽宮殿を訪れた金正恩氏と党・内閣・
軍の幹部ら(2017年2月16日付労働新聞より)
その並々ならぬ決意は、錦繍山太陽宮殿を参拝という事実に現されているものと思います。なぜなら、金正恩氏は、昨年の光明星節にはこの宮殿を訪問していないからです。なぜほうもんしなかったかといえば、それについてはこのブログにも過去に掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【北朝鮮情勢】金正恩氏、米軍の急襲恐れる?正日氏の遺体集団参拝に加わらず―【私の論評】中国に対する牽制のためにも、米による金正恩斬首は大いに有り得る(゚д゚)!
平壌の錦繍山太陽宮殿
この記事は、昨年の2月18日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、金正恩氏がなぜ宮殿を訪問しなかったのか、その理由に関する部分のみ以下に掲載します。
北朝鮮の金正恩第1書記が16日の金正日総書記の生誕記念日に取った異例の行動が、韓国で話題となっている。金正恩氏は例年、午前0時に金正日氏の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を幹部らと集団参拝するが、今年は零時の集団参拝には加わらなかった。国営メディアは「16日に夫人と参拝した」と報じるのみだ。

韓国メディアは18日、金正恩氏が例年と異なる行動を取ったのは、F22戦闘機など戦略兵器を韓国周辺に展開する米軍の急襲を恐れたためとの見方を伝えた。
結局のところ、昨年は、斬首部隊が韓国に派遣されたり、米軍の2つの空母打撃群の配置があったり、日本にはステルス機などが配置され、自分の居場所を公にして、その場所に赴けば、それこそ斬首されかねないことを恐れたのだと思います。

しかし、今年は参加したというのは、やはり、後継者問題に片を付けるという意味あいがあったのものと考えます。宮殿を参拝することによって、これを北朝鮮内外に向かって強い意志を強く印象づけるという意味があったものと思われます。

そうして、これが他国も了解して、北朝鮮の後継者は、金正恩ただ一人と認めれば、今後金正恩の暴走は沈静化する可能性もあるかもしれません。

しかし、その意図がトランプ大統領などに伝わるかどうかは疑問です。北朝鮮は日米首脳会談めがけて、弾道ミサイルを発射したり、今度は金正男氏を暗殺したりということで、トランプ氏の逆鱗に触れる可能性は多いにあります。

それに支那の動きも気になるところです

中国政府が金正男を庇護下に置いたのは、金正恩体制がクーデターなどで転覆した際、取って代わって親中国政権を樹立するためでした。いわば正男は中国にとって手駒であり、隠しカードだったのです。

その正男を暗殺したとしたら、中国にケンカを売ったも同然。今後、北朝鮮の暗殺への関与がはっきりすれば、習近平政権は『中国政府に対する重大な挑戦』と捉えることになるでしょう。いずれにせよ、金正恩政権の北朝鮮と中国の間で緊張が高まることになるのは確実です。
 
中国は金正恩の過剰な独裁体制に不信感を抱いています。それを察知した正恩には、自分の身が中国に狙われることになるかもしれないという恐怖が常にあります。ならば、自分の代わりに後継指名されることになりそうな正男を先回りして暗殺しようと思い至ったとしても、不思議ではありません。

まさに、朝鮮半島は、戦争前夜といっても良い状況にあります。

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