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2020年7月15日水曜日

「消費減税」猛烈に反対する財務省の理屈…建前も本音も木っ端みじん! それでも財務省のいいなりの学者、財界、メディア— 【私の論評】安倍総理は、次のちゃぶ台返しで、財務省の嫌がる”家賃補填、休業補償の拡充””消費税減税”を実行せよ!(◎_◎;)

「消費減税」猛烈に反対する財務省の理屈…建前も本音も木っ端みじん! それでも財務省のいいなりの学者、財界、メディア 
高橋洋一 日本の解き方


 
 英国が飲食、宿泊、娯楽業界の付加価値税の時限的引き下げを発表した。すでにドイツは引き下げを実施している。日本でも自民党の若手や国民民主党などが減税に積極的だが、現状で減税に反対する人はどんな人なのか。その理屈は妥当なのだろうか。

 コロナ・ショックは消費需要の消失という形で現れるので、消費需要をアップさせる政策が望まれる。そのため可処分所得を増加させる減税や給付金が有力な政策手段だ。特に、消費に直接的に働きかける消費減税は、現状では交付に時間がかかる給付金と異なり、家計がその果実をすぐに受けることができるというメリットがある。

 もちろん企業サイドへの補助金や給付金も政策としてはあり得るが、配布基準など公平性の確保が難しい。消費者サイドへの減税や給付金のほうが問題が出にくい。

 しかし、消費減税には、財務省が猛烈に反対する。財務省のいいなりの経済界、財政学者、マスコミも反対だろう。経済界は法人税の減税、財政学者はポストの確保、マスコミは軽減税率の確保とそれぞれ目的は異なるが、財務省の肩を持つ。

 消費税は1989年の創設以来、97年4月、2014年4月、19年10月の3回しか増税していない。ほぼ30年間で3回、つまり10年に1回なので、1回引き下げるとまた上げるのが大変だというのが財務省の本音ではなかろうか。

 もちろん、建前は社会保障財源が少なくなり、高齢化社会に対応できないというものだ。しかし、そもそも消費税を社会保障目的税としている国はないので、両者をリンクして考えること自体がナンセンスだ。社会保障の充実であれば、社会保険料で対応するのが、国民にも分かりやすく納得できる方法で、消費税は無関係であるべきだ。

 「1回下げると上げにくい」というのは、今回のようなコロナ対策では心配することではない。ドイツも英国も消費減税は一時的な措置であり、恒久的ではない。

 例えば、2次補正の予備費は10兆円であり、うち5兆円はまだ使い道が決まっていない。ここに2000億円を追加すれば、消費税率を10%から8%への2%減税を1年間実施できる。これなら既に財源を用意できているので、社会保障の支出に関する心配も杞憂(きゆう)となり、財務省の建前の理屈も本音も木っ端みじんになる。

 こういうとき、財務省は消費減税の声が大きくならないように、近い議員に働きかけることが多い。先日、安倍晋三首相のところに税収を上げるような政策を申し入れた議員らはその一例と筆者はにらんでいる。もちろん、「税収を上げるような」とは成長戦略の意味も含むので、増税ではないという言い訳もちゃんと用意されているが、「将来世代にツケを残さないように」と、今回の補正が通貨発行益で賄われていることを無視しているのは、意見の出所が推察できる。

 いずれにしても、消費減税とは言わないことは、海外の消費減税の日本への影響力を弱める結果となっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】安倍総理は、次のちゃぶ台返しで、財務省の嫌がる”家賃補填、休業補償の拡充””消費税減税”を実行せよ!(◎_◎;)
米国も当然減税します。トランプ米政権はすでに6月の段階で、新型コロナウイルスの追加経済対策として、労使双方が負担する「給与税」の減免の検討に入りました。

トランプ政権はコロナ以前から様々な減税策に取り組んでいる

同税は年1.2兆ドル(約128兆円)の税収がある基幹税で、実現すれば2017年末以来の大型減税となります。米経済は失業率が10%を超えて戦後最悪の水準になると予想され、減税とともに雇用の受け皿となるインフラ投資も打ち出す方針です。

トランプ大統領は6月3日、米テレビ番組で「雇用を立て直すため、給与税減税が必要だ」と表明しました。米政権と議会は新型コロナ対策として、既に過去最大の3兆ドル弱もの財政出動を決めています。トランプ氏はさらに給与税の全面免除を議会に働きかける方針で、1兆ドル規模の追加の財政出動となる可能性があります。

これまでの新型コロナ対策は、中小企業(従業員500人以下)の給与支払いを連邦政府が肩代わりする雇用維持策などが中心で、倒産や失業を防ぐ「止血」に焦点を当てていました。ただ、米経済は4~6月期の実質成長率が前期比12%減、年率に換算すれば40%ものマイナスになると予測されます。失業率も10%を大きく超えそうで、新たに雇用の受け皿の確保が必要になっています。

トランプ氏が減免対象に挙げた給与税は、全歳入の3分の1を占める基幹税です。社会保障費の財源として労使がそろって給与の6.2%分を納税する仕組みで、全面免除すれば企業と労働者の双方の負担減となります。

法人税の引き下げなどを盛り込んだ17年末の「トランプ税制」は、年間の減税規模は1500億ドルでした。給与税を全額免除すれば年1兆ドル規模の巨額減税となります。

トランプ氏としては、大統領選挙の兼ね合いもあり、ここぞというときに、超大大型減税を打ち出すのは、確実です。

英国スナク財務相
上の記事にもあるとおり、英国も当然減税です。英国のスナク財務相は8日、飲食店など新型コロナウイルスの影響が大きい業種を対象に、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)を現行の20%から5%に引き下げると発表しました。同日発表した総額300億ポンド(約4兆円)の追加経済対策の一環とされています。
英国では飲食店や劇場などが4日に再開したのですが、客足の戻りが鈍いため、減税によって消費を促し、雇用維持につなげる狙いです。15日から来年1月まで半年間の期間限定。減税規模は41億ポンドを見込んでいます。
新型コロナを受け、ドイツも1日から年末までの期間限定で、VATを19%から16%に引き下げました。食料品などを対象にした軽減税率も7%から5%にしました。
さて、減税を実行する予定の英国ですが、15日イングランド銀行(英中銀)金融政策委員会のテンレイロ委員は、同国の景気回復が「不完全なV字型」になる可能性が高いとの見通しを示しました。

消費者が新型コロナウイルスの流行を警戒するほか、社会的距離を確保する戦略で経済活動が制限され、失業が増える見通しというのです。

同委員はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス主催のオンラインイベントで「行動反応を踏まえると、英経済の見通しは、引き続き国内外の新型コロナ感染症の流行状況に左右される」と指摘しました。

「感染拡大ペースが緩やかに低下すると想定した場合、国内総生産(GDP)が途中で遮られる形の不完全なV字型の軌道をたどるというのが、私の基本シナリオだ。四半期ベースで最初に回復するのは第3・四半期になるだろう」と述べました。

同委員は「強制的な休業だけが原因だった支出の落ち込みについては、すでに急激な回復の兆しが見られる」と指摘。

「ただ、リスク回避姿勢の継続や、一部セクターでの自主的な社会的距離戦略、また他のセクターに依然適用されている規制、失業全般の増加を背景に、回復は中断されるだろう」と述べました。

同委員は、物価の下押し圧力がしばらく続く公算が大きいと予想。需要には「かなりの下振れリスク」があると述べました。

「必要に応じて、経済を下支えするさらなる対策に賛成票を投じる用意が依然としてある」としています。

マイナス金利については、ユーロ圏などで、おおむね前向きな結果が出ているとの認識を示しました。

次回の金融政策委員会の決定は8月6日に発表されます。

金融政策委員会は先月、債券買い取り枠を1000億ポンド拡大することを決定。政策委員9人のうち8人が買い取り枠の拡大に賛成する一方、チーフエコノミストを務めるハルデーン委員は、景気の回復が「これまでのところ非常にV字型」だとして反対票を投じました。

新型コロナウイルスを受けて、世界では巨額の財政・金融政策が打ち出されています。これら刺激策はすでに4月の段階で、世界GDPの3%超に匹敵する規模となっている他、政策金利の追加利下げや量的緩和プログラムが開始となり、中央銀行からは低金利の融資ファシリティが提供されています。

米国における刺激策の第一段はGDPの6%相当で、経済を幅広く支援する内容となっています。しかし、外出禁止などロックダウンによる生産損失が出ている事から、この刺激策を使ってリセッション入りを回避する事は不可能です。

とはいえ、失業率の行き過ぎた伸びを防ぐ観点から刺激策は必要不可欠であり、最終的な経済回復局面で力を発揮するでしょう。そうして、先にも述べたように、トランプ政権は第二段の対策として、大規模減税を計画しているのです。

そうして、欧米では何らかの原因があって、景気がかなり落ち込んだ場合には、大規模な財政出動・無制限の金融緩和というのが〝定番政策”になっています。

だから、コロナ禍による経済による落ち込みにも、この定番政策が実行されるため、財政出動としての減税策は当然の如く実行されるのです。間違っても、増税とか、減税しないという選択肢はないのです。日本も、早くこのようになって欲しいです。

一方日本違います。何かと、財務省が邪魔をします。4月17日、安倍首相のちゃぶ台返しがありました。「所得制限つき、1世帯あたり30万円の現金給付」が覆り、「所得制限なし、1人一律10万円の現金給付」となりました。このブログではこの政策変更は正しいと評価しました。

30万円の所得制限をつけた給付だと、確認などに時間がかかり、ひょっとすると今でも給付が十分進んでおらず、そのことで、安倍政権は自民党内外から責められ、国民からも不興を買ったに違いありません。これは、倒閣に結びついた可能性が十分あります。無論財務省主導によるものでしょう。



安倍総理は、当初から10万円、所得制限なしの給付を考えていたようですが、岸田氏任せたところ、いつの間にか30万円の所得制限の給付に切り替わっていたというのが、真相のようです。そのため、安倍総理の岸田氏への信頼は崩れたようです。

これで、安倍総理による岸田氏への総理の席の禅譲という話は、消えたようです。

安倍首相には2度目の〝ちゃぶ台返し〟で、家賃補填、休業補償の拡充と消費減税を是非実現してもらいたいです。

最近東京では、感染者数が増え、コロナ感染の第二波が始まるのではと危惧されています。現史上では東京都も政府も有効な手立てを打ちあぐねています、これは、潤沢な資金で、大規模な家賃補填、休業補償の拡充ができれば、それを前提として様々な手段を講じることができるはずです。

ただし、安倍総理のまわりは緊縮イデオロギーに染まった人たちが囲っています。それだけではなく、30万円給付のような、もっともらしい政策等で第二、第三の倒閣運動が企てらている可能性もあります。

与野党問わず政治家は相変わらずですし、軽減税率という〝毒まんじゅう〟を喰らった新聞も、社会保険料の据え置きや法人減税というニンジンをぶら下げられた経済界も財務省の味方です。

それでも第1弾の緊急経済対策はギリギリながらも合格でした。安倍総理の政策は、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟に近づいています。そうして国民のマクロ経済政策への理解は、東日本大震災のときよりはるかに高まっています。これが日本経済復活への一縷の望みです。

ただ若い世代には、ずいぶんとマクロ経済への理解は、広まったようですが、高齢世代は、経済情報の情報源は、テレビのワイドショーなので、財務省やその走狗どもの言いなりです。しかも、高齢者の方が人口が多いのです。まだまだ、油断できません。

とにかく、安倍総理のもとで、景気が落ち込んだ時、落ち込みそうな時には、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟が実現できるように道筋をつけていただきたいものです。総理大臣がちゃぶ台返しをしないと、まともな経済対策ができない今の日本は異常です。

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2019年1月21日月曜日

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか―【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか




レーダー照射問題:韓国軍艦のとった不自然な行動

 日本の排他的経済水域内で、北朝鮮の漁船らしき木造船を救助するのに、北朝鮮の海軍警備艇や民間船舶ではなく、韓国の軍艦・警備艦が向かった。

 北朝鮮は、排水量1000トン以上の貨物船などの民間船舶を170隻以上、フリゲート艦、コルベット艦、哨戒艦、高速艇および警備艇の海軍戦闘艦艇約200隻を保有している。

 これらの艦船が本来救出に来るべきなのだが、そうではなかった。

救助に派遣されたのは韓国の最新鋭艦

 1993年5月に、ノドンミサイルとみられる発射実験が行われた際に、その観測支援のためにフリゲート艦とコルベット艦の2隻が日本海に展開したことがある。

 本来、この木造船を救助する必要があるならば、今回もその当時と同様に、軍艦あるいは民間船舶を派遣するのが普通だろう。

 しかし、なぜか韓国が、韓国海洋警察の警備艇に加え、海軍駆逐艦までも派遣した。

 北朝鮮の木造船を捜索するため、派遣された警備艇の参峰号は、韓国最大で最新の警備艇(排水量約6300トン、韓国は2隻保有)だ。

 駆逐艦の広開土大王(クァンゲトデワン)は、韓国で最初に建造された駆逐艦で約4000トンだ。

 木造の小船を大型艦艇が挟み込んで救助しているというのは、常識ではあり得ない不思議な光景である。

 韓国の大型の軍艦と警備艇が、日本海の真ん中よりも日本に近い位置にいた木造船をしかもレーダーには映らない木造船をどのようにして発見したのか。それが疑問である。

北朝鮮のアナログステルス戦闘機

 詳しく説明すると、レーダー波を金属製の航空機に当てると電波が反射して戻ってくるが、木材の場合はレーダー波を反射しない。

 軍事専門家は、北朝鮮特殊部隊を空輸する木材と布で作られた輸送機「An-2」を、皮肉を込めて「アナログステルス戦闘機」と呼ぶ。

 この木造船がSOSの救助信号を発信した可能性もあるが、海上保安庁も海上自衛隊も確認していないという。

 韓国が発表した北朝鮮の木造船の映像をよく見ると、イカ釣り用の電球が並ぶ上に、前方のマストから後方のマストにかけて、AM通信(モールス通信)用のケーブルらしきものがかけられている。

韓国側が発表した映像から

 北朝鮮の木造船は、モールス通信を使用して本国に救助を依頼したのではないだろうか。

 また映像を見ると、その木造船は、沈みかけていない。漂流する原因は、燃料切れだと推測される。

 私は、韓国の大型艦は北朝鮮の木造船に燃料を渡していると判断している。
救助に向かう燃料がない北朝鮮

 韓国が、沈没しそうな木造船と漁民を救助しているというのならば、漁民を救助している写真やその木造船をロープで曳行している写真を発表すべきだろう。

 大きな疑惑がいくつも生じるのは当然のことである。

 私の推測では、北朝鮮の小型木造船は、燃料切れを起こし、本国に燃料補給の救助を求めた。

 だが、北朝鮮は漁船を救助するために、海軍警備艇や民間船舶を派遣するための燃料がない。

 また、海軍軍艦はポンコツで500キロも離れた日本海の中央まで移動して帰投することができない。

 このような理由から、北朝鮮金正恩委員長は、韓国に支援を依頼した。

 北朝鮮としては、金正恩委員長の要求を何でも聞き入れる文在寅大統領に頼めば、すぐに引き受けてくれるだろうという予想通りになった。

いまや金正恩の言いなり、文在寅大統領

 金正恩が頼めば、文大統領は「北朝鮮は非核化をします。国連制裁を解除すべきだ」と欧州諸国を駆けずり回る。

 「自国の漁船を救助してほしい」と頼めば、大型軍艦や警備艇を派遣する。韓国文在寅大統領は、いまや北朝鮮の言いなりのようだ。

 そのことと、南北の陸と海上の境界の障害が徐々に取り除かれていること、南北の融和行事などを合わせると、南北の統一は近いと見てほぼ間違いないのではないか。

 だが、その統一は韓国主導による連邦制ではなく、北朝鮮が韓国を呑みこむ占領という形で行われるのではないか考えられる。

(これについては、軍事情報戦略研究所朝鮮半島分析チーム「可能性が高くなりつつある北朝鮮による半島統一」『JBPress(2018年12月3日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54805』で詳細に分析している)

【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

冒頭の記事では、南北統一のことがいわれています。そうして、その統一は韓国によるものではなく、北朝鮮による半島統一ということがいわれています。

このように多くのメディアで、南北統一が当然のようにいわていますが、南北統一は解決策なのでしょうか、あるいはそれこそが問題なのでしょうか。北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上しているのは事実です。

統一という言葉は、東西ドイツを隔てるベルリンの壁が崩壊して家族が再会し、軍が武装解除したときのことを思い起こさせます。

韓国と北朝鮮は平和的な統一を繰り返し訴え、韓国で開催された昨年の平昌冬季五輪では統一旗を掲げて共に入場行進を行いました。また最近にK─POP歌手らの一行が北朝鮮を訪問した際、彼らは北朝鮮人と手をつなぎ、「われらの願いは統一」を歌いました。

「少女時代」のソヒョンが、北朝鮮芸術団と共に感動のステージを披露し、話題を呼んだ。
2018年2月12日11日、国立劇場ヘオルム劇場で開催された北朝鮮芸術団「三池淵管弦楽団」
のソウル公演に、白いワンピースに身を包んだソヒョンがサプライズ登場。

ところが、70年にわたり緊張状態が続く朝鮮半島において、「統一」の理念ははますます複雑さを増し、非現実的だと考えられるようになりました。両国の格差がかつてないほど広がる中、少なくとも韓国ではそのように捉えられていると、専門家や当局者は言います。

韓国はテクノロジーが発達し、民主主義の下で活気に満ちた主要経済大国となりました。一方、北朝鮮は金一族の支配下にあり、個人の自由がほとんどない、貧しく孤立した国です。

1990年に再統一した東西ドイツとは異なり、朝鮮半島の分断はいまだ解決されていない同胞同士の内戦に基づいてます。韓国と北朝鮮は朝鮮戦争を終結するための平和条約に署名しておらず、お互いをまだ正式に認めていません。

過去には、北朝鮮の独裁政権が崩壊し、韓国に吸収されるという前提に基づいた統一計画を描く韓国の指導者もいました。しかしリベラルな文政権はそうしたアプローチを和らげ、最終的に統一へとつながるであろう和解と平和的共存を強調しています。

韓国では、統一を支持する世論も低下しています。韓国政府系シンクタンク・韓国統一研究院(KINU)の調査によると、2014年には70%近くが統一が必要と回答したのに対し、現在は58%に低下しています。1969年に政府が実施した別の調査では、90%が統一を支持すると答えていました。

統一にかかる費用は最大5兆ドル(約550兆円)と試算されており、そのほとんどが韓国の肩にのしかかることになります。

一昨年7月にベルリンで行ったスピーチの中で、文大統領は「朝鮮半島平和構想」について説明。北朝鮮の崩壊を望まない、吸収による統一を追求しない、人為的な方法による統一を追求しない、ことを明らかにしました。

「求めているのは平和だけだ」と、同大統領は語りました。

一昨年7月にベルリンでスピーチした、文大統領
両国とも、統一についてそれぞれの憲法で明記しており、北朝鮮は「国家の最重要課題」と表現しています。

韓国統一省のように、北朝鮮にも「祖国平和統一委員会」があります。北朝鮮からの報道を集めたウェブサイト「KCNAウオッチ」の記事をロイターが分析したところによると、国営メディアは2010年以降、統一について2700回以上言及しています。

北朝鮮は昨年1月、声明で「国内外にいる全ての朝鮮人」に共通の目的を目指すことを呼びかけ、「お互いの誤解と不信感を払拭(ふっしょく)し、全ての同胞が自身の責任と国家統一の原動力という役割を果たすべく、南北間における連絡や移動、協力や交流を広範囲で可能にしよう」と訴えました。

北朝鮮人は、韓国にいても北朝鮮にいても統一を支持しているようです。韓国にいる脱北者の95%以上が統一を支持すると回答しています。

北朝鮮「建国の父」である金日成主席は1993年、祖国統一のための「10大綱領」を発表。その中には、国境は開放しつつ、2つの政治体制を残す提案が含まれていました。

北朝鮮は1970年代まで、憲法でソウルを首都と主張していました。一方、韓国は現在に至るまで、北朝鮮に占拠されたままだとする「以北五道」に象徴的な知事を任命しています。

昨年4月25日、南北統一は解決策なのか、あるいはそれこそが問題なのか、北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上していました。

「統一は結局、非核化であろうと人権問題であろうと、あるいは、単に南北間で安定したコミュニケーションを築くことであろうと、喫緊の短期目標の多くを達成困難にする」と、韓国シンクタンク「峨山(アサン)政策研究所」のベン・フォーニー研究員は語りました。

開城(ケソン)工業団地

両国は、開城(ケソン)工業団地のような小規模の協力でさえ、問題にぶつかってきました。北朝鮮の核兵器開発を巡る緊張が高まる中、2016年に閉鎖されるまで、この工業団地では両国の労働者が共に働いていました。

最近では、両国は離散家族の連絡事業再開で合意には至りませんでした。

不信感は根強いです。朝鮮半島を支配するための長期計画の一環として、北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核兵器を開発したと、一部の韓国人と米国人は信じ続けているようです。一方の北朝鮮は、韓国の駐留米軍について、金氏の転覆を狙った侵略部隊だと懸念しています。

1990年に東西ドイツが統一したとき、朝鮮半島のモデルになることを期待する向きもありました。

しかし、東西ドイツの場合は内戦を経験しておらず、東ドイツは北朝鮮と比べて国民に対する統制がはるかに弱かったと、元韓国統一省の当局者は2016年のリポートで指摘しました。さらに、東ドイツは核武装はしていませんでした。

最も大きな障害は、金正恩氏自身かもしれないです。平和的な統一に必要な妥協を受け入れる動機が、同氏にはほとんどないと専門家は言います。韓国も、同氏に実権を許すような取り決めに合意する可能性は低いです。

北朝鮮を独立国として、また米同盟国である韓国との間の緩衝地帯として維持することに、中国も既得権を有しています。

長期的に見れば、完全な統一を強硬に求めることを放棄すれば、両国は関係を修復できる可能性があると、朝鮮半島情勢について複数の著書があるマイケル・ブリーン氏は指摘しています。

「矛盾しているようだが、統一はある種、ロマンチックで、健全で、民族主義的な夢として考えられている」と同氏は言う。「だが実際には、問題の多くはそこから生じている」

そもそも、統一後を考えた場合、金正恩にとって、韓国人が1番のリスクになります。北朝鮮と違い韓国人には将軍様への敬意などはなく、気に入らなければデモとクーデターで彼を攻撃する存在に豹変します。結果、アラブの春以降のアラブや中東が再現されることになります。

北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。 米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは絶対許せないです。周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいないです。一方北朝鮮は、国の枠組みは変えたくないです。その金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権、南北で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。

他国は朝鮮半島の統一を望んでいません。しかし、当事者間の問題であり、関与はしないだけのことです。 中国、ロシア、日本、米国、どこにも積極的なメリットはなく、投資リスクも大きいです。北朝鮮が今のまま、自由化を進める方がメリットが大きいし、衝突リスクも低いです。

それに、以前も述べたように、現在のように北が核を持っている状況は、中国の影響が半島に及ぶことを防いでいます。北の核は中国にとっても脅威なのです。そうして、北朝鮮は中国から完全独立を希求しています。韓国は、中国に従属する道を選びました。

この状況は、米国にとって良い状況です。ただし、北朝鮮が米国を脅かす核ミサイルを開発せず、開発したものがあれば、破棄し、中東に核を渡さないことを約束すれば、中国を睨む米国にとって現状は最善といっても良い状態です。

以上のようなことから、半島情勢をみるときには、南北統一が近いなどという見方はしないほうが良いでしょう。そんなことよりも、北朝鮮の核が結果として、半島への中国への浸透を防ぐ役割もしていることに注目すべきです。

北朝鮮が核を開発していなければ、今頃北朝鮮は中国の傀儡政権であったか、そこまでいかなくても、完璧に中国の意図に沿って動く国であったことは間違いないです。

その場合、韓国は中国の従属国ですから、統一は現状よりはやりやすかったと思います。ただし、統一とはいっても中国の傀儡国家として統一ということになるでしょう。日本としては、対馬のすぐ先が、中国の傀儡国家という状況になります。

それよりは、北により中国からの浸透が防がれてる状況のなかで、韓国が中途半端な中国の従属国であるという現在の状況のほうが日本にとってもよりましであるといえます。

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2018年1月22日月曜日

「財政問題」でまた財務省の言いなりになる、ポチマスコミの情けなさ―【私の論評】日本のマスコミは能力が低すぎてまともな国際・経済報道はできない(゚д゚)!

「財政問題」でまた財務省の言いなりになる、ポチマスコミの情けなさ

いつまで同じことを繰り返すのか…


髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 プロフィール

ICANについてどうしても言っておきたいこと


先週の本コラムで、北朝鮮リスクと国内増税派リスクの内憂外患について書いた。前者に関連するが、ノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が来日し、安倍晋三首相と面会できなかったことが話題になった。

フィン氏は12日に来日、東京には16、17日と滞在していたという。一方、安倍首相の動静を見ると、12日午前中に羽田空港を出発し、17日まで東欧6カ国を歴訪している。

筆者は官邸勤務の経験があるが、首相の予定はいつもいっぱいであり、外遊日程を見る限り、単に日程の都合で面会できなかっただけだろう。それを「なぜ会わなかったのか」と批判するのは変な話だ。

そもそも首相が会うべき人物でもない。というのは、ICANの主張する核兵器廃絶については、長期的な目標としてはそのとおりであるが、実現させるための手順が問題であるからだ。

まず、今の核兵器保有国を広げないことが先決であるので「核兵器廃絶」の前に「核不拡散」がある。

現時点では「核不拡散」がより重要なので、「核兵器廃絶」だけを叫ぶのは、いまある危機を助長することにもなる。具体的には、北朝鮮が「核不拡散」を破ろうとしており、それを押さえることが優先課題になる。

ベアトリス・フィン氏
北朝鮮を抑制できないまま、ほかの核保有国が核廃絶を進めた場合、戦争確率が高まるというのが国際的な紛争論のセオリーである。この意味で、ICANの行動に日本が賛同すれば、当面の日本の安全保障上の立場を危うくする(まずは北朝鮮の非核化が先、という単純な話だ)。

こうした点については、ICAN事務局長も、訪問した日本の与野党議員との会合で聞かされたはずだ。

ICANは日本が「核兵器廃絶」に賛同しても、日米同盟は揺らがないというが、その確約を日本に来る前にアメリカ政府から取ってきてほしいものだ。欧州では、アメリカとの「核シェアリング」によって守られている国もあるが、そうした国は「核兵器廃絶」には賛同していない。

そうした事実を見ないICANの活動は、日本の一部野党の「お花畑議論」と本質的に同じである。そういえば、国会での与野党議員との会合でICANに賛同していたのは、共産党などの一部野党しかいなかったのは、国会議員の良識であろう。

いずれにしてもICANのいう核兵器廃絶は、現実的な核軍縮にはつながらない。

そもそも核兵器を持たない日本に来て説教するより、現実に核兵器を持っている北朝鮮や中国に行って、核兵器廃絶を訴えたほうがいいだろう。

さてICANの話はこれぐらいにして、今回はいま勢いを強めている「国内増税派」のリスクについて触れておきたい。増税にむけて、早くも攻防が始まったからだ。

財政黒字化についてのヘンな報道

昨年の総選挙において、2019年10月に消費増税を行う方針は固まったが、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する目標は先送りする、とされている。

この点については、今年6月に予定されている「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる骨太の方針)がポイントになる。そこで、新たなプライマリーバランス黒字化達成時期が示されるだろう、というのが大方の予想である。

まず、1月5日の閣議後の記者会見で、茂木敏充経済財政・再生相が中長期の経済財政試算において「金利の動向などを、より現実的に修正する」と発言した。

これに早速噛みついたのが、マスコミである。たとえばテレビ朝日は「安倍政権が税収と歳出が見合う財政の黒字化を2027年度に2年先送りし、しかも、借金が膨らんで見えないような試算を行っていることがANNの取材で分かりました」(http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000119017.html)と報じている。

いまから行う議論を明確にするためにも、報道の続きを引用しておこう。

<内閣府はこれまで財政が黒字化する前提として、将来の経済成長率を名目で3.9%、金利を4.3%に設定して試算してきました。

しかし、来週に公表される予定の新たな試算では成長率を0.4ポイント下げた一方で、金利は1.1ポイントも引き下げていて、借金が膨らんで見えないよう数字を設定していることが分かりました>

テレビ朝日をはじめとするマスコミは、内閣府が「財政の黒字化を二年間先送りにしたこと」、さらに「その試算をするうえで、金利だけを大きく下げて試算したこと」を批判している。

もっとも、マスコミはこの種の数字の議論には弱いので、その裏には財務省かその影響勢力がいるとみたほうがいい。実際、このテレ朝のニュースは「財務省関係者は『通常、成長率と金利は連動するが、金利だけ大きく下げすぎている』と懸念を示しています。」とご丁寧に財務省関係者の解説を添えて報道している。

しかし、金利を下げて試算することが問題かどうか、彼ら(マスコミ)は本当にわかっているのか。ただ財務省に「これは悪いことだ」と吹き込まれて、それを反射的に報道しているだけのようにしか見えないのだが。

この報道を見て、筆者は12年ほど前のことを思い出した。竹中平蔵総務大臣の補佐官をしていたときのことである。

2006年3月16日に行われた経済財政諮問会議において、竹中総務大臣と吉川洋・東大教授との間で繰り広げられた「金利・成長率」論争がそれである(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2006/0316/minutes_s.pdf)。

名目GDP成長率と名目長期国債金利のどちらが高くなるか、を問う論争で、これだけ聞くと、単なる学者の「遊び」のように思われるかもしれないが、中長期の経済財政試算において、金利と成長率をどう置くかによって、財政健全化のために必要なプライマリーバランスの水準が変わってくるのだ。

金利が高く出る「欠陥」

この話は、高校程度の数学知識で簡単に証明できるが、これを、首相が議長を務める経済諮問会議において、短い時間で説明するのは至難の業だ。そこで、最低限の資料を筆者が作った(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2006/0316/item3.pdf)。


その資料にも書かれているが、財務省は、必要なプライマリーバランスの黒字幅を大きくするために、とにかく「金利が成長率を必ず上回る」と主張し、それを吉川氏が代弁した。

筆者は、金利が成長率を上回るのは、日本に独特の話であり、日本ではデフレによって名目成長率が低かったり、マイナスになっていたことを知っていた。しかも、日本以外の先進国では、金利と成長率はどちらが大きくなるかは決めがたかった。これを示唆するものとして、名目成長率が名目民間金利より低いという理論はあっても、名目成長率と名目国債金利(これは名目民間金利より低い)の間の大小関係を規定する理論はない。

そこで、竹中大臣には「金利が成長率より大きい、という財務省の決め打ちだけは避けて欲しい」と言った。

結局、経済財政諮問会議では、小泉首相は、金利と成長率の大小関係は決め打ちするなという竹中大臣の方針に軍配を上げた。

実際のデータでも、金利と成長率の関係はにわかには決めがたい。もっとも、最近のデータでは、財務省の当時の主張とは異なり、若干金利は成長率よりわずかに低い可能性がある。「金利が成長率を必ず上回る」と言っていた財務省はやはり経済音痴であり、その見通しは大外れだった。


さて、こんな昔話が、茂木大臣の話とどのように関係するのか。財務省の言い分は、報道にあるとおり、「安倍政権が金利を大きく下げて2027年の試算をしている」ということだろう。その前提として、これまでの中長期の経済財政試算における金利の決め方が正しかったのだろうか、ということを考えなければならない。

若干テクニカルであるが、中長期の経済財政試算は、いろいろな式の塊であり、経済モデルで計算されている。そのモデルの詳細は、内閣府のホームページで公開されている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html)。

12年前の経済財政諮問会議は大臣間のガチンコ議論だったが、さすがにその前に事務折衝を筆者と内閣府担当者の間で行った。筆者がその当時指摘したのは、金利の決定式において、債務残高対GDP比が説明要素として含まれ、金利が高止まりする仕組みになっているが、その根拠とされる統計量からみて、統計的に説明要素とするのは不適切だ、ということだった。

かなりテクニカルであるが、その証拠も見せよう。以下が金利決定式である(これは上の内閣府サイトを探せば出てくる)が、債務残高対GDP比の項目のt値が、通常では2以上とされているのにあまりに低い(2005年モデルでは1.2711)というものだ。

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これに対する明快な解はなかった。小泉首相の判断後に、この要素を削除したわけでもない。その後も、部分修正は行ったが、金利式の基本的な性格は変更していない。内閣府は、金利が高く出る欠陥を放置したのだ。もちろん、この背後には財務省がいたに違いない。

こんなデタラメやっていると…

今回の茂木大臣の話は、こうした10年来の不始末をこの際きれいにしようとするものだろう。経済分析の専門家として、内閣府は、金利を高止まりさせる(財務省の息のかかった)モデルをそのまま使うのは良心の呵責があるはずだ。

もっとも、財務省はそんなことはどうでも良く、ひたすら増税のために、プライマリーバランスのハードルを高くしたいだけだ。

金利を計算上さげるという茂木大臣の発言に噛みつくマスコミは、財務省のポチであろう。モデル計算も何も知らないで、財務省の走狗になっているようだ。金利が少し下がるのは、本来戻ると言うことであることを、マスコミは理解しなければいけない。

最後に、経済財政諮問会議は、もっとまじめに経済分析をすべきだ、ということを提言しよう。そもそも、財政の状態をどう見るか、これは、本コラムで再三繰り返してきたように、日銀を含めた「統合政府」でのバランスシートとしてみればいいのだ。

現状をみれば、ほぼ資産と負債がバランスしている。これを毎年のフローで見ると、国債の利払費は、資産サイドの金利収入などでほぼ賄えるということだ。

しかし、実際には、資産サイドからの金利収入は、各主体において「準備金化」され、フローの資産収入を少なく見せている。こうした「隠れた準備金」を発掘するのが国民からの期待である。かつて、筆者が発掘した「埋蔵金」と同じである。

昨年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、「債務残高対GDP比の安定的な引下げ」という項目が入ったのは一歩前進であるが、さらに「統合政府ベースのネット債務残高対GDP比の安定的な引下げ」とすべきである。

実は、統合政府ベースのネット債務残高対GDP比は、プライマリーバランス対GDP比、成長率、金利の関係によって、その動きが決まってくる。この証明も、高校数学程度の知識で可能である。

筆者も、きちんとした財政状況を把握して、そのために、プライマリーバランス対GDP比を管理しようとするのは、まっとうな経済運営であるとおもう。しかし、今のように、バランスシートを見ずに、フローのプライマリーバランスだけで、財政状況を見ようとするのは信頼性に欠けてしまう。

こんなデタラメの財政運営をしていると、いっそのこと「いくら財政赤字でもかまわない」と言い出すような過激分子もでてきてしまうだろう。財政の状態を国民に正確に知らせるためにも、経済財政会議は財務省の提灯持ちではなくもっと専門的な議論をすべきなのである。

【私の論評】日本のマスコミは能力が低すぎてまともな国際・経済報道はできない(゚д゚)!

ベアトリス・フィン氏の発言と、それをそのまま垂れ流す日本のマスコミには私も呆れ果ててしまいした。


ベアトリス・フィン氏はNHKのニュースで、
「核兵器は破壊の均衡によって平和を保つというもので非常に危険で永続性はない。」
と語っていますが、軍事力の均衡が国家間の武力衝突を防ぐことは常識です。抑止力という概念を知らないのでしょうか。核兵器だけを特別視する理由としては、彼女の主張には全く説得力がありません。

また原爆を落とされた被害国である我が国に、何と「道義的責任がある」と彼女は語っています。どこをどう繋げればそういう結論になるのでしょうか。何らかの責任を云々するなら原爆を落としたアメリカに言うべきです。

念のため指摘しておきますが、西洋の価値観に従えば、我が国は米国に対して最低8発の原爆を使用する権利を有します(倍返しが常識であることと、人口は2倍以上、面積はさらに大きいことを考慮)。その権利を行使するかしないかを決めるのは我が国です。日本の価値観に従えばそういうことはしないでしょうが、とにかく決めるのは我が国であるはずです。

これは、無論米国に原爆を落とせと言っているのではありません。権利というよりは、日本が米国に対してそのくらいの貸しがあるというほうが良いかもしれません。

これについては、私は実際複数の米国人に対して話たことがありますが、保守派の人に話せばこれにあからさまに反論する人はいませんでした。「逆の立場に立てば、そうだろう」というのが彼らの判断のようでした。

さらに彼女は、「核兵器の脅威にさらされていない国はなく日本政府も条約に同意しなければならない」と語っています。

しかし、至近距離の隣国の国家元首から、
「核爆弾をぶち込んで日本列島まるごと沈めてやる」
と脅されている現実を知っているとは思えない発言です。


我が国以外のどこの国がこのような脅威にさらされているのか、是非教えていただきたいものです。

そもそも、主権国家である日本に向かって「しなければならない」などの発言は、無礼千万としか言いようがありません。

「決めるのは国民であり国民が『署名してほしい』といえば政府は署名するはずだ」
との発言は、議会制民主主義の何たるかを全く理解していない無知をさらけ出しています。

我が国は選挙によって選ばれた多数派が政権を担い政策を決めて実行します。日本政府が署名しないのは、国民の多数が署名を望んでいないからです。

ベアトリス氏が話を聴いたいわゆる「市民」とは日本国民の中では少数派に過ぎません。彼女は、我が日本国はまともな選挙制度も無い遅れた独裁国家とでも思っているのでしょうか。一部の人達の「アベの独裁を許さないぞ~」を真に受けているのかもしれません。

東京新聞の記事では核の傘に進んで入ることは受け入れられない。長崎、広島の価値観と大きな隔たりがある」と苦言を呈したとありますが、別に彼女に我が国の安全保障政策を受け入れて貰う必要性など全くありません。
貴女が言うところの「長崎、広島の価値観」は観念論・理想論に過ぎず日本国民の多は、きれい事ではない現実を見据えた価値観を共有しているのです。

そうして、彼女の無知が際立ったのは次の発言です。「(長崎への原爆投下以降に)核兵器が使われなかったのは、幸運だったからにすぎない」。

現実には、1945年以後も核実験によって多くの人々が被爆しました。とりわけ中国は、ウィグル人が多く住む新疆ウィグル自治区で核実験を繰り返し多くのウィグル人を被爆させました。

中国政府はいまも核汚染は存在しないと公言しています。中国の被曝実態が世界に知られるようになったのは、1998年8月にイギリスで放映されたドキュメンタリー番組「Death on the silk road」によるものです。同番組で、ウイグル人医師のアニワル・トフティが核実験場周辺で調査した発癌率のデータが以下のグラフです。

この調査から、核実験をした場所の近くの町や村では、1990年には30%以上も発がん率が高くなっていることがうかがえます。

中国の四六回にも及ぶ原爆や水爆の実験で、一説にはウイグル人の被爆者数は一九万人以上、死者は一九万人以上とも言われています。日本で「シルクロード」がブームになった時代にも、この地域での核実験は続いていたので、多くの日本人観光客が何も知らずに被爆したのではないかと言う人もいます。このように、長崎以後も核兵器は使われ続けているのです。


国と国の戦争では使われていないと主張するのなら、それはむしろ核兵器の本当の恐ろしさを理解していないことになります。いまや主権国家ではなく、テロ組織、犯罪組織が核兵器を入手して使うという脅威が現実のものとなりつつあります。

核兵器廃絶国際キャンペーンにはその視点が欠けているのではないでしょうか。それぞれの国には歴史や伝統とそれに根ざした価値観があり刻々と変化する国際情勢の中でそれぞれの事情があります。そうした諸問題への配慮が彼女の発言からは全く感じられません。

無知であるにもかかわらず、彼女の「意識高い系的上から目線発言」に対しては日本人を舐めるなと、怒鳴りつけてやりたい気分になった方々は多かったことでしょう。

彼女の無知と、彼女の発言を何の取捨選択もせず、エビデンスに基づいた解説を加えることもなく垂れ流すマスコミには本当に呆れ果てるばかりです。

そうして、この態度は、経済報道についても同じです。マスコミは財務省の発言を、何の取捨選択も、エビデンスに基づいた解説を加えることなく垂れ流すだけです。これなら、マスコミが報道する意味がありません。財務省のサイトを見れば良いだけです。全く存在価値がありません。

経済に関しては、本来は高校の数学くらいは駆使して、財務省の提供する資料を分析したりすべきでしょうが、そこまでしなくても、分析することは可能です。それは過去の数値や、他の国々の数値を調べることです。

私は、日本の構造的失業率など高橋洋一氏のように様々な数値から、 NAIRU(インフレを加速させない失業率)を計算することはできませんが、それでも日本のNAIRUは2%半ばくらいだろうとみなしています。

そうして、これは高橋洋一氏も同じような結論を出しています。高橋洋一氏のような計算をせずになぜそのようなことがいえるかといえば、それは過去の日本の失業率の数値の推移をみているからです。

残念ながら、日本は長期間デフレだったので、この期間は失業率は3%を超えは普通で、4%を超えているときもありました。これでは参考になりません。ですから、日本がデフレに突入するまえの失業率を見れば、一番さがっていたのは2%台半ばでした。だから、日本のNAIRUは2%半ばであることが直感的に読み取ることができました。

そもそも、経済記事を書くような記者は、最低限このくらいのことはすべきでしょう。ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事では、「金利と成長率」が問題になっています。これも、実際に自分で計算できなければ、過去の事例や海外の事例などを調べてみれば、ある程度のことは理解できます。

マクロ経済学の最適成長論の考え方では確かに長期金利が名目成長率を上回るとされています。ただ、ここで言う長期金利とは、民間企業の発行する長期社債の利回りや株式の資本収益率も含まれており、財政再建に関わる長期国債の利回りは、リスクプレミアム分だけ民間の長期社債の利回りよりも低いことになります。

従って、経済理論によって民間の金利が成長率より高いからといって、国債金利のほうが成長率より高くなるとはいえません。長期的な歴史的事実関係を見ても、多くの主要国について名目成長率が国債金利を上回っています。これをみれば、少なくとも、国債金利のほうが成長率よりも高いという財務省の主張は間違っていることが理解できます。

経済記事を書く記者なら、これくらいのことはして欲しいです。最低限、種々の計算を高橋洋一氏などの複数の専門家にしてもらい、その専門家らから解説を聞き、自分で判断してから、記事にすべきでしょう。

それに、できれば高校数学くらいの計算はしてみて、確認するなどのこともすべきでしょう。なにしろ、仕事で経済記事を書くのですから、読者のためにそのくらいの労は惜しむべきではないと思うのですが、日本にマスコミはそうではありません。

以上のことからも、以前のこのブログで私が主張した、日本のテレビは国際・経済報道はできないという主張は正しいといえると思います。そうして、新聞ですらこの有様ですから、日本のマスコミはまともな国際・経済報道はできないと結論付けても良いと思います。

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