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2017年5月16日火曜日

実は不動産会社だった? 日本郵政が野村不動産買収との報道、その狙いは―【私の論評】官製企業から再度完全民営化しなければこれかも失敗し続ける(゚д゚)!

実は不動産会社だった? 日本郵政が野村不動産買収との報道、その狙いは

日本郵政が不動産大手の野村不動産を買収するとの報道が出ています。郵便局が不動産会社を買収するというのはピンと来ませんが、どのような意図があるのでしょうか。


 各種報道によると同社は野村證券グループの不動産会社である野村不動産に対してTOB(公開買い付け)を実施する方向で検討を進めているそうです。野村不動産は大手デベロッパー5社に入る企業で、「プラウド」というブランド名でマンションを展開しているほか、オフィスビルの運用を行っています。

 郵便事業を営む会社が不動産会社を買収というのはあまりピンと来ませんが、郵便事業の半分は不動産業ともいえます。全国に郵便を届けるためには、各地にその拠点を備える必要があり、日本郵政は2万カ所の郵便局を所有しています。

 また同社はもともと国営の事業だったこともあり、逓信病院などの医療施設、かんぽの宿といった宿泊施設など、民間では考えられないような多数の不動産を抱えています。所有する土地の面積は東京ドーム5万5000個分にもなり、建物などを加えた固定資産の総額は3兆円に達します。

 同社はNTT以来の超大型銘柄として鳴り物入りで上場を果たしましたが、郵便事業は縮小が余儀なくされており、今後の成長シナリオを描く必要に迫られています。

 しかし、現実はそう簡単ではありません。2015年5月に6200億円もの巨費を投じて買収したオーストラリアの物流会社は、予定の業績を達成することができず、はやくも4000億円の損失が発生している状況です。海外事業で躓くということになると、選択肢は日本国内にある不動産の有効活用しかありませんが、日本郵政には不動産運用に関するノウハウはほとんどありません。野村不動産をわざわざ買収することにはこうした事情があると考えられます。

「プラウド」というブランド名でマンションを展開している野村不動
 野村不動産の株式を過半数取得するということになると、最低でも2000億円以上の資金が必要となりますが、15兆円以上の純資産を持つ日本郵政からすれば微々たるものでしょう。

 買収による増益効果についても、野村不動産の売上高が全額連結決算に反映されたとして数%という程度ですから、業績への影響は軽微です。重要なのは、野村不動産のノウハウを今後、どのように自社の不動産運用に活用できるのかというところに絞られてくるでしょう。

 日本郵政が野村不動産を買収すること自体は不自然ではありませんが、海外の物流会社を買収して損失を計上したかと思えば、今度は国内の不動産会社を買収するなど、収益拡大に向けて無軌道に会社を買い続けているという印象は否めません。経営陣の戦略性がより厳しく問われることになるでしょう。

【私の論評】官営企業から再度完全民営化しなければこれかも失敗し続ける(゚д゚)!

日本郵政については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本郵政 豪物流事業の業績悪化で巨額損失計上か―【私の論評】財務省御用達人材が、東芝、日本郵政を駄目にした(゚д゚)!
この記事では日本郵政の業績悪化の原因と思われるものについて掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にそれに関わる部分のみ掲載します。
日本郵政の社長は、元東芝の社長であった西室泰三氏です。東芝も西室氏のころから危なくなりました。日本郵便は事業や投資に関しては、官僚だけの素人集団です。これでは先行きかなり厳しいです。ちなみに西室氏が日本郵政社長になった当時の日経はかなり高く評価していましたが、どうしてそうなるのか理解できません。以下にその紙面を掲載します。
郵政民営化を簡単に振り返ると、小泉政権の時に民営化法成立し、民営化が実施されました。ところが、民主党政権になって民営化を否定し実質上「再国有化」されました。

郵政民営化のときには西川氏が本当に民間会社にするつもりで、大量の民間人を引き連れてきました。ところが、再国有化されると、西川氏とその仲間の多量の民間人は追いだされ、財務省御用達の西室氏だけがトップで来て、周りはほぼ官僚だけとなりました。これでは、海外投資業がうまくいくはずがありません。
以上のように、日本郵政の業績不振は、まずは西室氏の経営者としての能力が低いこと、さらには現在の日本郵政の幹部は西室氏を除いてすべて元官僚によって占められていることです。

さて先週末のニュースで意外性があったのは、この報道です。野村不動産ホールディングスの時価総額は約4000億円。この株式の一部あるいは全部を日本郵政が取得し、不動産開発事業を加速させる狙いがあります。

日本郵政は土地保有額の上場企業ランキングで6位に入っています(下のグラフをご覧になってください)。しかも、郵便局などの土地建物は、鉄道のターミナル駅近くにある場合が多く、都心の一等地の不動産を、有効活用できれば収益性を高めることができます。



有名な例では、東京駅の前に出来たJPタワーがあります。かつての東京中央郵便局を再開発し、大型商業施設として生まれ変わりました。また名古屋駅前にもJPタワー名古屋を開業し、博多でも同様の商業施設が博多駅前にオープンしています。

昨年、200兆円の資産を保有するゆうちょ銀行が、今後5年程度で、国内外の不動産や未公開企業などのオルタナティブ投資と呼ばれる資産に、最大6兆円を資産配分すると報道されました。ゆうちょ銀行の資産運用は金融資産が運用対象の中心で、その中でもリスクの低い国債が過半を占めていました。日銀がマイナス金利を導入したことで、運用利回りの低下が大きな経営課題になっています。

不動産開発や不動産投資事業は、日本郵政が従来手掛けてきた、郵便事業や金融資産を中心とした資産運用とは、異なるノウハウが必要です。社内で人材を育てていては間に合わないので、不動産会社を買収することで、新事業の経営ノウハウを一気に手に入れようということです。

日本郵政が保有する土地が、マンション開発などに活用されれば、住宅供給が増えて需給にとってはマイナスの影響が予想されます。一方で、JPタワーのような商業施設が駅前に開業すれば、その駅の周辺の開発が加速され、不動産価値の上昇というメリットが出るかもしれません。

今後不動産有効活用を検討する大手企業が追随する可能性もあり、国内不動産事業への注目が高まることは確実です。唐突な感じがした、今回の買収記事ですが、買収価格はともかく、有休不動産保有企業と不動産開発業者の組み合わせという点で、シナジーが期待できます。

買収額は数千億円規模といわれます。日本郵政は全国2万以上の郵便局をはじめ多くの不動産を保有していますが、不動産ビジネスのノウハウはなく、いわば宝の持ち腐れでした。今回の買収劇からは、不動産業を経営の柱に据えたいという意気込みが伝わってきます。

日本郵政も不動産開発には全く無関係だったというわけではく、2007年の民営化後、東京駅前の商業施設「KITTE(キッテ)など不動産開発を手掛けてきました。ただ、遊休地の活用など経営課題は多いです。

日本郵便初の商業施設「KITTE(キッテ)」
日本郵政は17年3月期に約400億円の最終赤字を見込んでいます。15年に買収したオーストラリアの物流大手トール社に絡み、4000億円以上の減損を計上するためです。こうしたマイナスイメージから脱却するため、成長性のある不動産ビジネスへの進出をブチ上げたのでしょう。

上でも掲載したように、西室氏は東芝時代に、米ウェスチングハウス社の買収に暗躍し、日本郵政では豪トール社買収を主導しました。両案件とも巨額損失につながっただけに、西室氏の責任を問う声大きいです

実は、野村不動産と東芝の関わりは深いのです。08年、野村不動産が東芝不動産(現NREG東芝不動産)の株式65%を取得し、子会社化しています。当時、西室氏は相談役でしたが、東芝社内への影響力は絶大でした。

NREG東芝不動産は、人気の商業施設として知られる「ラゾーナ川崎プラザ」(川崎市)を開発。隣は、東芝未来科学館の入る「ラゾーナ川崎東芝ビル」です。

ほぼ10年前に野村不動産グループとなった「東芝ビル」を、日本郵政が手に入れようとしている。そこかしこに東芝のドンのカゲがチラつきます。

とはいえ西室氏はすでに経営の第一線から退き、療養中だとされています。今回の日本郵政による野村不動産買収に口出しするとは思えません。しかし、本当はどうなのか外部からうかがい知ることはできません。

そうして、今後の不動産業界を考えると、不安がよぎります。

リーマンショック以降、不動産業界ではマンションの価格下落、ビルの空室率上昇、賃料の下落、不動産投資市場の低迷など暗いニュースが続いていました。しかし、ここ最近は、東京オリンピックの開催が5年後に迫ってることもあり、東京都心部の一部では活発に不動産取引が行われています。

一方、地域別にみると苦戦を強いられているエリアが存在するのも事実であり、都心部と地方の格差は拡大するばかりです。
また、一部の業者による「物件の囲い込み」の実態が明るみになったりと何かと世間を騒がせているのもこの業界ならではないでしょうか。オリンピックが開催する2020年までには、海外投資家が投資した東京都心部の収益物件が次々と売却される恐れもあるため、今以上に不動産市場の需要と供給のバランスが保てなくなる可能性も否定できません。

国立社会保障・人口問題研究所による推移において、市区町村別の数値が公表されるのは人口だけで、残念ながら世帯数は都道府県別にとどまります。2013年3月に公表された市区町村別人口推計を見ると、2040年の人口が現在の半数を割込むところも少なくないです。中には3分の1程度まで減少する町村もあるようです。


もちろん東京都でも、人口減少とは無縁でいられません。2040年の人口が2010年より増えると予測されているのは以下だけになります。

【東京都】
中央区、港区、新宿区、墨田区、江東区、練馬区、三鷹市、東村山市、稲城市の6区3市、それにもともとの人口が少ない御蔵島村だけです。
【大阪府】
大阪市の西区、天王寺区、鶴見区、北区の4区、大阪府下では田尻町のみが増加となっている。また、大阪市内には2割以上の人口減少が見込まれている区も多いようです。
【愛知県】
名古屋市で守山区と緑区だけが増加なのに対して、その周辺では安城市、大府市、高浜市、日進市、みよし市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、大治町、幸田町が増加すると予測されています。
いずれにせよ大都市圏でも大半の市区町村で人口の減少が避けられず、それに数年ずつ遅れながら世帯数の減少も進行していくことでしょう。人口および世帯数の減少は街の活気を奪い、不動産市場も次第に縮小していくことでしょう。現在もすでに住宅の数が充足し、逆に家余りが社会問題となっています。2014年7月に総務省が発表したデータによると、日本全国では820万戸空き家があり、空室率は13.5%まで上っているのです。

国内における人口の減少、それに続く世帯数の減少は、不動産業界のあり方も大きく変えることになります。

市場規模の縮小を見越して、一部の住宅メーカーはすでに海外の不動産市場へ参入を始めているほか、国内では住宅ストックの活用に軸足を移している例も多いです。

また、単身者世帯、高齢者世帯の割合の増加に合わせた商品企画も求められます。特に2020年からは、単身者世帯が最も多くなります。以下のグラフをご覧になって下さい。
今後単独世帯、夫婦のみ世帯が増加する見込み

2020年には大半の都道府県で単独世帯がもっとも多い家族類型に
間取りの変化だけでなく、留守の時間が長くなりがちな単身者世帯のセキュリティ対策、高齢者向けのバリアフリーなど普段の生活が快適に過ごせるような工夫も重要になるでしょう。さらに、顧客と長くお付き合いができる体制を作らなければ、需要が減退していく社会の中で生き残ることは困難です。

一棟マンション・アパートにはじまる収益物件をメインに扱う不動産会社であれば、「投資」という部分にフォーカスした、より高い知識が営業担当者に求められます。

投資家が求めているサービスを提供するためには、投資アドバイザーという立場から、不動産以外に資産全体の組み替えを含むポートフォーリオのアドバイス、実際の買収・売却請負、財務分析、資産評価などを行うほか、投資内容や投資先の分散、投資期間の設定などについて工夫し、助言することが要求されるようになるでしょう。

新築分譲を手掛ける不動産会社であれば、販売後のアフターサービスがますます重要になるでしょう。それも従来のような物件の定期点検や保証といった範囲にとどまらず、入居後の生活全般に対するフォローが欠かせなくなります。インテリアのアドバイスやリフォームの提案、さらに将来の売却、場合によっては子育て相談や生活相談まで、住まいに関するトータルサービスを提供することが求められます。

不動産仲介会社であれば、整備されつつある中古住宅流通市場の中で、他社より「優れたサービス」を考えることが重要です。契約時における的確な情報提供や物件調査のスキルアップはもちろんのこと、これまでのように「物件の引渡しが済んだらそれで終わり」というスタンスからは卒業しなければならなくなります。入居後の生活全般をトータル的にサポートする等、従来の不動産業からの脱却を目指すことも必要になるでしょう。

株式上場計画について記者会見する日本郵政の西室泰三社長(当時)=2014年12月26日

このように将来の不動産業界の変化を見通すことは、原子力産業の将来を見通せなかった、西室氏には到底無理なことです。そうして、現在日本郵政の幹部のほとんど占めている官僚出身者にも到底無理です。

さて、日本郵政の不動産事業はこれからどうなるかは、わかりませんが、まずは野村不動産買収に成功した場合、まずはどのような人事政策をとるかが鍵になると思います。

野村不動産の運営には、西室氏や官僚出身の幹部らは一切かかわらず、金や資産を差し出すことはしても、運営には一切口を挟まないという体制が築かれれば成功する見込みも少しはあります。

現在は、2016年4月1日付で、西室泰三日本郵政社長の病気による退任に伴い、ゆうちょ銀行の代表執行役社長職を退き(取締役としては留任)、後任の日本郵政取締役兼代表執行役社長に就任しています。

ただし、現状をみてみると、どうも疑問です。そもそも西室氏のように経営力に不安のある人物しかリーダーになれなかった日本郵政の体質にも問題があるといえるでしょう。実際のところ、本当に優秀な経営者であれば、政府が株式を保有しているために制約が多い会社に来ようとは思わないでしょう。

仮に一人あるいは数人の優秀な民間経営者が来たとしても、野村不動産を買収できたとしても、周りを元官僚で固められています。頭だけ民間に代えても、首の下は官営企業そのものです。

そうして、西川氏更迭のときに追放された民間人も悲惨な待遇を受けています。そのときは西川氏の尽力で救済された人も多いそうですが、これは彼にしかできない芸当でもあります。

この顛末をよく知っている経営者は、日本郵政のかじ取りに二の足を踏んでしまいます。民間から人を連れてくれば、このような憂き目にあうかもしれないということになれば、二の足を踏まざるを得なくなります。こうした何重もの制限がある日本郵政が赤字になるのは当然のことです。これからも、今のままでは、失敗することは目に見えています。

方法としては、もう一度完璧な民営化を目指すこと以外にはありません。

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