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2017年1月18日水曜日

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか―【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか

経団連の榊原定征会長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 経団連の榊原定征会長は5日の記者会見で、「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」と話したという。

 経団連は、今年の春季労使交渉における経営側の基本姿勢として、将来不安を解消するため、社会保障制度改革の推進や教育費の負担軽減策などを盛り込んだ「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を17日に正式決定、政府に要望する。

 これまで経団連は、法人税の減税などを政府に働きかけ、実現させている。法人税減税と同時に消費税増税も主張してきた。大企業中心の圧力団体として自己の利益に沿った提言を行っており、法人減税と規制緩和が提言の柱である。

 ここで残念なのは、法人減税に関する理論武装がまったくないことだ。理論的には、法人税は二重課税の典型なので、個人段階で税の捕捉が十分にできれば、法人税は不要であるという基本から提言すればいい。そうなると、個人所得の捕捉のために、マイナンバー制や歳入庁創設が必要だということにつながるだろう。

 ところが、経団連傘下の大企業は、租税特別措置による恩恵も大きく、財務省には頭が上がらないようだ。そのためか、こうした「王道」の提言にはあまり積極的ではなく、財務省が唱える財源論に乗っかり、消費増税を主張してきた。ただし、法人減税と消費増税がバーターというのではさすがに国民の批判を浴びるので、社会保障改革として消費増税を主張してきたようにみえる。

 そうした経団連の「努力」もあってか、2014年4月から消費増税は実施された。ところが、「消費増税しても景気は悪くならない」という財務省の主張はウソであり、実際に14年4月以降、景気は落ち込んでいる。

経団連ビル
 「賃上げをしても消費が伸びない」というのは、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したもので、なかなか滑稽な話だ。標準的な経済理論によれば、消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためだ。

 そうであれば、消費を伸ばすために消費減税や消費増税の凍結を主張してもいいはずだが、「民僚」ともいわれる経団連は自らの政策提言の失敗を認めず、消費増税路線のままだろう。経労委報告の提言でも社会保障制度改革の推進が掲げられているからだ。

 経団連は、賃金の上昇を恐れており、これ以上の金融緩和も望まないのだろう。追加緩和で完全雇用が実現すれば賃金上昇が本格化するからだ。一方で財務省の路線に乗って緊縮財政と消費増税の旗も降ろさない。

 となると、残るのは規制緩和、構造改革によって消費増加という、ちょっと不可解な方向性だ。未来への投資として、教育・科学技術を国債発行で賄う案でも出せばいいと思うのだが…。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事で解説していたように、経団連は、結局のところ自分たちに都合が良い政策をしてもらうための、圧力団体であるという側面があることは否めません。つい最近までは、日本の一番強力な圧力団体というと、農協と創価学会体でした。しかし、農協は自民党との不和によってその地位を失いました。

そうして、経団連や日本医師会もそれに次ぐ圧力団体といえると思います。現実には、法人減税と消費増税がバーターということで、消費増税を主張してきたのが事実です。

8%消費税を導入して消費が伸びなくなるのは当たり前です。そうして、増税後に消費が低迷しているのは、明確な事実です。それについては、以前もこのブログに何度か掲載しています。その記事の典型的なものを以下に掲載します。
日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!
この記事より、消費税増税の悪影響に関する部分を以下に掲載します。
消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。 
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。 
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。 
平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。
名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。
上の消費支出のグラフは2015年までしか掲載されていないので、以下にその続きも含んだグラフを掲載します。


消費税増税直後よりは、良いですが、それでも2016年の8月は前年同月比で-4.6%ですから、どうみても悪いとしか言いようがありません。この傾向は、現在も続いています。

やはり、2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているのですが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、企業の設備投資にも慎重になるのはやむをえず、昨年はGDPの伸びが横ばいにとどまったのです。

これは、日本のGDPに占める個人消費の割合が60%であり、最大であるということを考えると当然といえば当然です。消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためです。これは、上のグラフにより、明白です。

これらの事実があるにもかかわらず、「賃上げをしても消費が伸びない」という榊原定征氏の発言は、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したものであり、ブログ冒頭の記事で、高橋氏が言及しているように、滑稽といわざるをえません。

経団連(日本経済団体連合会)は昨年6月2日、定時総会を開催しました。2期3年目となる榊原定征会長はその総会で挨拶に立ち、「首相の決定を尊重したい」と安倍政権による消費増税延期を支持していました。さらに、「政権と経済界は車の両輪」と発言し、安倍政権との「蜜月」をアピールして見せました。

しかし、今年の5日の記者会見での榊原定征会長の「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」という発言は、やはり財務省を意識したものでしょう。

やはり、財務省があの手この手で、攻勢をかけた結果として、榊原会長は再度財務省側についたか、官邸と、財務省の間で揺り動いているのかもしれません。

ちなみに、経団連の他の商工会議所も経済同友会も財務省よりです。これらの団体も消費増税すべきとの考えです。

経団連に所属する企業は、大企業であり、輸出をしている企業も多いです。そうして、この「輸出」をめぐっては、過去にはなかった大きな世界的な変化があります。それは、現在の世界が「スロー・トレード」の時代に突入しているという現実です。

スロー・トレードとは、「実質GDPが成長しても貿易量が増えない」現象のことです。IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP成長率が平均3.1%だったのに対し、貿易量は6.6%も拡大した。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのです。

それが、2000年から2011年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5.8%成長と倍率が下がりました。そして、2012年から2015年を見ると、GDP3.3%成長に対し、貿易量は3.2%となっているのです。ついに貿易量の成長率が、GDP成長率を下回ってしまったのです。


この原因は様々な要因があるとは思いますが、まずは世界貿易を牽引する役割を担ってきた新興国の自立ということがあると思います。

少し前までの新興国では資源などを先進国に輸出し、それで得た外貨で先進国から製造品を輸入する構図がありました。成長著しい新興国は、こうして経済を発展させました。しかし経済規模が大きくなると、製造品を自国で作り、自国で消費する方が効率的となります。

自動車やスマホなどを見ても、中国や台湾、インドなどの新興国メーカーが台頭してきている背景はそれが理由です。
こうして新興国が自立し、「自国生産・自国消費」を進めることが貿易量の低下の原因となっている面は否めません。

そうして、もう一つは、反グローバル主義の台頭あります。これまで世界は、貿易量の増加でグローバル化が進みました。

先進国ではこのグローバル化によって、雇用や生産を新興国に奪われていると考えています。
そこで台頭してきたのが、反グローバル主義です。アメリカでは反グローバル主義のトランプ氏が大統領選に勝利し、国内での製造への転換を図ろうとしています。

WTOの発表でも08年以降G20で導入された関税引き上げなどの措置は1671件にのぼり、撤廃は408件を大きく上回っています。

このスロートレード、長引くのか、あるいは収束するのか、今のところは判断が難しいです。

スロートレードが長引くと、世界経済の減速につながるのは確かです。なぜなら、各国得意分野と不得意分野があるからです。人間と同じように、不得意分野を補い合うことで効率が高まり、世界規模で生産性が上がる。それに歯止めがかかるということです。
このスロートレードが長引かないことを祈るばかりですが、これからも続くことも考えられるし、景気循環的に定期的にやってくるようになるのかもしれません。

これを前提とすれば、やはり日本も含めて、世界中の国々がまずは自国の内需を高めることが望ましいはずです。

日本は、貿易立国だなどとする人々もいますが、それは事実ではありません。実際、20年ほど前までは、日本のGDPに占める割合は8%に過ぎませんでした。現在は、11%程度です。

日本は、昔から内需大国だったのです。スロートレードの現在、大企業は輸出の伸びはあまり期待できないわけですから、日本の内需が拡大したほうが良いはずです。

中小企業も、財務省からの補助金があったにせよ、まずは内需が伸びないようでは死活問題です。補助金があっても、内需が低迷すれば、中小企業は成り立ちません。

増税すれば、個人消費が低迷して内需は低迷します。これは、決してすべての企業にとって良いはずはありません。

これを考えれば、経団連などの企業の団体こそ、消費税延期、消費税減税、さらなる量的金融緩和を主張すべきです。とにかく、日本国内の内需を拡大する方向にもっていくべきであると主張するのが当然です。ましてや、デフレを放置したり、デフレスパラルにどっぷりと再びはまることになる消費税増税などとんでもないです。

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2016年11月22日火曜日

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ

グラフ、写真、図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 今年7~9月期の国内総生産(GDP)1次速報値は、実質季節調整値で前期比0・54%増、年率換算で2・2%増となった。3四半期連続のプラスで、その水準もなかなかのものだ。ただし、その中身をみると喜べない。

 GDPを構成する主要項目別にみると、7~9月期の実質季節調整値で民間消費が前期比0・1%増、民間住宅が2・3%増、民間企業設備が0・03%増、政府最終消費が0・4%増、公的資本形成が0・7%減、輸出が2・0%増、輸入(控除)が0・6%減だった。

 住宅と輸出が伸びたのはよかったが、消費は微増、設備投資は横ばい、政府投資はマイナス、輸入もマイナスと今一歩だ。景気という観点では、消費と設備投資が伸びてこそ、ちゃんと成長しているといえるわけで、現状は不十分だ。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。(注:太字としたのはブログ管理人)

 政府投資も16年度当初予算などを前倒し執行した4~6月期の反動が出て、マイナスになった。内需が弱い反映として輸入のマイナスもある。

 その中で、住宅は、住宅ローン金利の低下が購入を促した形だ。金融機関はマイナス金利に猛反対しているが、内需を増加させるということが示された。

 輸出が増えたのは、GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費等に支えられたものだ。

 以上のように、個々の項目を見ると、日本の景気が良くなっていると胸を張るのは難しい。

 それにもまして、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数だ。消費者物価と卸売物価を合わせたような性質で、その推移によってデフレ脱却しているかどうかの判断基準にもなる。


 四半期デフレーターの前年同期比をみると、1年前の15年7~9月期からの推移は、1・7%、1・5%、0・9%、0・7%と徐々に低下し、ついには今期は0・1%低下とマイナスになってしまった。

 国内需要デフレーターも1年前からマイナス圏に落ち込んでいる。この数字は1995年頃から、マイナスになっており、これがデフレ転落を示すともいわれていた。

 第2次安倍晋三政権誕生後の2013年当初から急速に上昇し、14年からはプラス圏内で推移していたが、今期は13年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。つまり、一時デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレ突入の瀬戸際になっているのだ。

 原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格下落によって輸入デフレーターが低下するため、逆にGDPデフレーターの上昇要因となるからだ。

 雇用は相変わらず好調だが、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要な状況である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

高橋洋一氏のブログ冒頭の記事において、やはり太字にした部分は、重要です。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。

消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。

増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。

この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。

平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。


名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。

さらに、あまりにも長く続いたデフレの悪影響で貯蓄率も減っています。以下にそのグラフを掲載します。


これだけ、貯蓄ゼロの世帯が増えると、元々消費を控えているのに、増税されれば、当然のことながら、これらの世帯の人たちは、将来不安で一層消費を控えるようになるでしょう。

上の高橋洋一氏の指摘と、このような統計資料を合わせて考えてみると、どう考えても財政政策として、増税をしたのは全くの間違いです。財政政策として実施するなら、まずは増税などせずに、給付金対策をするとか、あるいは減税などをすべきでした。

8%増税は全くの間違いで、これを放置しておけば、景気は良くなりません。日銀による金融緩和によって、雇用はかなり改善しましたが、これも今のままではいずれ悪くなる可能性もあります。

やはり、高橋洋一氏が上記で指摘したように、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要です。それも、貯蓄ゼロの世帯を減らすには、中途半端な政策では成就できないでしょう。

日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。

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2016年1月31日日曜日

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか



日銀は29日、金融機関から預かっている当座預金にマイナス金利を導入する新たな金融緩和策に踏み切り、さらに今後も金利のマイナス幅を拡大する可能性を示唆しました。これを受けて長期金利は過去最低まで急激に下がりましたが、金利の低下が投資や消費の増加につながるかどうか、今後、新たな金融緩和の効果が問われます。

日銀は、金融機関から預かっている当座預金の一部に来月半ばからマイナス金利を導入する、新たな金融緩和策に踏み切ることを決めました。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の政策のねらいについて「金利全体により強い下押し圧力を加えていく。2%の物価目標をできるだけ早く実現するため導入を決めた」と述べ、世の中の金利全般を一段と下げることで、投資や消費を活発化させることが期待できるとしました。

これを受けて、東京債券市場では29日、長期金利が一時、0.09%と過去最低の水準まで急激に下がり、金利はひとまず、日銀のねらいどおりの反応を示したほか、円安と株高も進みました。

ただ、金利が下がっても企業や個人の資金の需要が高まらなければ、金融機関からの貸し出しなども増えず、投資や消費の増加につながらないおそれもあります。日銀は必要があればマイナス金利の幅を拡大する可能性も示唆していますが、金利の低下を経済の活性化につなげ、日銀が目標とする2%の物価上昇率を達成できるかどうか、新たな金融緩和策の効果が問われることになります。

【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

今回のゼロ金利について、予め予言をしている人がいました。それは、あの高橋洋一氏です。その予言を掲載した動画を以下に掲載します。


マイナス金利の件は45分あたりから

 この動画は1月28日に収録されたものです。高橋氏としては、29日に日銀が重大発表があるとの発表をした時点で、ゼロ金利はあり得ることとして、この動画の緊急特番ということになったのだと思います。

この動画の中でも、今回の黒田総裁が、マイナス金利を導入しなければ、まともな中央銀行総裁とはいえないということを語っていました。そうして、今回実際にゼロ金利政策を宣言したわけですから、黒田総裁はまともだということです。このあたりのことについては、詳細は上の動画をご覧ください。

このゼロ金利政策、マスコミの経済記者などには意味が良くわからないようです。識者のなかにもとんでない解説をする人がいるので、そんなことに皆さんが幻惑されないように、以下にいくつかの査証(エビデンス)を掲載させていただきます。

そもそも、日銀がマイナス金利政策を宣言する前から、もう日本は実質的にマイナス金利政策をとっているといっても過言ではありませんでした。

すでに、日本銀行は、マイナス金利政策を発表する前からゼロ金利政策を放棄してマイナス金利政策を採用してしまっていました(これって、英文法でいえば過去完了)。その査証を以下に掲載します。


さて、上は、財務省が発表している国債金利情報をグラフにしたものです。昨年の12月の半ば頃から残存期間1年の国債の利回りはマイナスになってしまっていたのです。瞬間的にマイナスになったというのではないのです。それ以来マイナスが継続しまっていたのです。

そして、昨年12月13日には、5年物新発国債の落札利回りがゼロとなったとも報じられてしまっていました。10年物国債にしても、利回りは0.26%まで低下してしまっていました。

国債の利回りがマイナスになるその原因は、日本銀行が市中金融機関から国債を買い入れる場合に、額面以上の価格で購入しているからです。日銀が額面以上の価格で国債を購入すれば、落札利回りはマイナスになります。つまり、市中金融機関は、国債を担保に日銀からマイナス金利でお金を借りてしまっていたのです。

今や市中金融機関は、ゼロ金利どころかマイナス金利で日銀からお金を借りることができる時代に突入しているのです。では、何故そのようなことを日銀はするのでしょうか。

そうでもしなければ、日銀が目標に掲げた国債の買い入れが達成できないからです。そうなると日銀の掲げた物価目標を達成できなくなるからです。

さて、すでに国債のマイナス金利政策を実行している、日銀がさらに今回マイナス金利政策を発表したのにはどんな背景があり、それが日本経済にどのような影響を及ぼすのか以下に解説します。

日銀には銀行の預金口座である「日銀当座預金」があります。この「日銀当座預金」にはこれまで0.1%の金利がついていたのですが、預金の一部にマイナス0.1%の金利、つまり手数料がとられるようになるのです。

日銀はアベノミクス開始以降、銀行などの金融機関から大量の国債を購入していますが、その国債の購入代金は銀行の預金口座である「日銀当座預金」に振り込まれます。しかし、「日銀当座預金」に0.1%の金利がついたままでは、銀行は振り込まれたお金を企業の貸出しにまわすことなく、そのまま放っておくことが考えられます。



しかし、今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すとか、株式投資をするようになることが考えられます。これがマイナス金利導入の狙いです。

しかし、ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。

その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。


ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。

これは、高橋洋一氏が動画で指摘していたように、正しい措置であり、黒田日銀総裁は、まともな中央銀行総裁であることが示されたといえると思います。

しかし、だからといって、日本経済は安泰だというわけでもありません。先日も、指摘したように、この先中国経済はしばらくかなり停滞します。アメリカの利上げによって新興国の経済が大ダメージを受けてしまう可能性も大きいです。

さらに、原油安が資源国の経済を直撃しています。また、中東の地政学的リスクも増大しています。これらが日本の経済にどのような悪影響を与えるのか、全く予断を許さない状態です。今後リーマン級の大打撃が日本を再度襲う可能性があります。 

今後の、不測の事態に備えるためにも、日本政府は早急に2016年度の補正予算を組み、金融緩和を拡大して、財政金融両面でさらなる景気対策を施さなければなりません。

10%増税などやっている場合ではありません。まずは、景気回復、デフレ完全脱却が今の日本にとっては最優先課題です。安倍政権にはECBのように政策の優先順位を間違えないようにして欲しいです。もし、10%増税など予定通りに実行してしまえば、ECBの優先順位の誤りどころの話ではありません。

ECBが優先順位を間違えて、マイナス金利政策をやっても、効果が出ないだけで、それ自体が経済に甚大な悪影響を及ぼすわけではありません。しかし、デフレ完全脱却前の、増税は甚大な悪影響を及ぼすのは必定です。そんなことは、私達は8%増税の大失敗ですでに学んでいるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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