2025年7月14日月曜日

安倍構想から11年──佐賀オスプレイ配備、ついに始動

まとめ
  • 佐賀空港へのオスプレイ配備は、2014年に安倍政権が防衛省を通じて佐賀県に検討を要請しており、11年の調整を経て2025年7月に正式配備が開始。8月中旬までに全17機が順次移駐予定。
  • この配備は「南西シフト」戦略の中核をなすもので、佐賀空港は台湾・東シナ海・朝鮮半島への即応展開に最適な地理的位置を持ち、沖縄の基地負担軽減にも寄与する。
  • V-22オスプレイは約1,600kmの航続距離と高い機動力を備え、佐賀から台湾・与那国・尖閣・上海圏まで往復可能。邦人救出(NEO)や災害対応など非戦闘任務にも活用できる。
  • 米海兵隊の統計では、オスプレイの重大事故率(3.16件/10万飛行時間)は旧型ヘリより低く、安全性は証明されている。自衛隊も訓練・整備体制を整備し、地元理解も進んでいる。
  • 配備は地域振興策と一体で進められ、「国防と地域活性化の両立」を掲げる取り組みに。抑止力としての意義は大きく、主権と平和を守る現実的かつ不可欠な手段である。
佐賀配備が意味する日本防衛の変化

佐賀駐屯地に到着した陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイ

2025年7月9日、陸上自衛隊は佐賀空港にV-22オスプレイを正式配備し、本格運用を開始した。これは単なる装備の更新ではない。日本の安全保障の地図を塗り替える決定的な一手である。

この配備は、防衛省が進める「南西シフト」構想の一環である。中国の東シナ海・台湾海峡への軍事的圧力が高まる中で、自衛隊は従来の北方偏重から脱却し、南西方面への重点的な戦力再配置を進めてきた。与那国、宮古、石垣、奄美などに新部隊を創設し、それらを支える拠点として九州・本州各地でも再編が進む。佐賀空港はその“空の中継拠点”として、まさに要の位置にある。

この構想の起点は、安倍晋三政権下にまでさかのぼる。2014年7月、防衛省は新たに導入されるオスプレイの配備先として佐賀空港を選定し、佐賀県に対し移転に関する検討を要請した。当時からこの空港は、地理的優位性に加えて既存の民間空港施設を活用できる点でも適地とされていた。また防衛省は、将来的に米海兵隊が共同で使用する可能性についても言及しており、日米同盟の観点からも戦略的価値は高い。

2014年7月 安倍首相

そして要請から11年。2025年、ついにオスプレイの佐賀配備が現実となった。8月中旬までに全17機が順次、佐賀に移駐する予定である。これに先立ち、陸自のオスプレイは暫定配備先である木更津駐屯地(千葉県)から高遊原分屯地(熊本県)に移動し、うち1機がすでに佐賀駐屯地に飛来している。

佐賀空港は、台湾、朝鮮半島、東シナ海に対する初動展開に適しており、沖縄の基地負担軽減にも寄与する配置といえる。航空自衛隊と陸上自衛隊の連携強化にもつながり、日本全体の防衛バランスの再構築に不可欠な拠点なのだ。

 オスプレイの性能と台湾有事への即応力

配備されたV-22オスプレイは、固定翼機の速度とヘリの柔軟性を併せ持つ航空機である。巡航速度は約450km/h、航続距離は約1,600km。給油なしで佐賀から沖縄本島、与那国、尖閣諸島、台湾、上海近郊までを往復可能とする。

この行動範囲は、戦力投射だけでなく、台湾有事や災害時の邦人救出(NEO)といった非戦闘任務にも極めて有効である。台湾には現在、約2万人の日本人が居住しており(外務省「令和5年 海外在留邦人数調査」)、いざという時に自力で彼らを救出できる手段を持つことは、主権国家として当然の備えである。
VSS事故履歴 クリックすると拡大

一部では、「オスプレイは危険だ」「墜落が多い」といった声もある。しかし米海兵隊の公式データ(FY2022)によれば、MV-22オスプレイのクラスA(重大)事故率は10万飛行時間あたり3.16件。これはCH-53E(12.27件)、CH-46E(9.45件)などの従来型ヘリよりはるかに低い。むしろ、統計的には安全な航空機の部類に入る。

自衛隊は2019年から長崎・相浦駐屯地で飛行訓練を重ね、整備体制や操縦士養成を段階的に進めてきた。騒音測定や住民説明会も継続的に行われ、地域との信頼構築も進んでいる。

国防と地域振興は両立できる


2024年末、防衛省と佐賀県、地元自治体との協議は大きく前進した。地域振興策や空港整備とセットでの受け入れ協議が本格化し、地元経済界からも前向きな声が上がっている。「基地は地域を壊すのではなく、守る存在であり得る」。そんな現実的な声が広がり始めているのだ。

オスプレイは、災害派遣や離島支援、有事の即応展開、邦人救出といったあらゆる任務に対応可能な“万能輸送機”である。そして何より重要なのは、敵に「日本は本気だ」と思わせる抑止力そのものが、この機体の配備によって実現するという点だ。

戦争を望まぬならば、備えよ。これは古来から変わらぬ現実の鉄則である。

佐賀の空が、未来の日本を守る前線となる。その新たな役割を、私たちは誇りと責任をもって受け止めなければならない。

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