2020年6月2日火曜日

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち―【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち

   2018年11月1日、米国司法省は、米半導体大手「マイクロン・テクノロジー」のDRAM技術を狙った
   スパイ活動を行ったとして、中国の国有企業を連邦大陪審が起訴したと発表。この日、ジェフ・
   セッションズ司法長官は、中国による情報窃取や経済スパイ活動に対処していく「チャイナ・イニシア
   チブ」を発表した。

  最近、米国の大学や研究機関で「中国絡み」のトラブルが頻発している。

 2020年1月28日、米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長のチャールズ・リーバー教授(60)がFBI(連邦捜査局)によって逮捕された。ナノサイエンスの分野における世界的権威であるリーバーの逮捕容疑は、中国の武漢理工大学で研究所を設立するとして中国政府から約150万ドルを受け取っていた上に、毎月5万ドルの支払いを中国から受け取っていたこと。これらは当局へ報告の義務があるが、リーバーは捜査員に虚偽の説明をしたことで逮捕された。

チャールズ・リーバー容疑者

  さらに5月には、オハイオ州のクリーブランド・クリニックで研究者をしていた中国系アメリカ人チン・ワンが、中国政府から研究助成金を受けて中国の研究施設で役職をもっていることを米国で虚偽申告したとして逮捕されている。

 ■ 中国政府が推し進める「千人計画」 

 実はこの2人、中国政府が国策として海外の優秀な人材を支援する「千人計画」に参加していた。のちに詳しく見るが、この「千人計画」に関与している米国内の科学者たちはかなりの人数に上り、彼らを米国当局は「中国政府のスパイ行為に協力している」と睨んでいる。上述の摘発もその流れの中で実施されているのである。

  その動きが最近の米中関係の悪化にともない、より強化されている。いま米国政府は、新型コロナウィルスの責任問題や貿易不均衡問題、また中国の通信機器大手ファーウェイなどとの取引をめぐる争いに加えて、こうした米国内で中国政府につながりのある学者や中国人留学生などに対する締め付けを厳しくしているのだ。

 2018年11月から、米国司法省は、冒頭のリーバーやワンの事件で取り沙汰された千人計画など中国側と関与している者たちによるスパイ活動の取り締まりや重要インフラのサイバー攻撃からの保護などを含む「チャイナ・イニシアチブ」を始動した。この時、当時のジェフ・セッションズ司法長官は中国政府のスパイ活動に「もううんざりだ」と吐き捨てた。ちなみにFBIでは、その2年前から千人計画を捜査し、関係各所には注意を促していたが、“スパイ活動”が鳴りを潜めることはなかった。

 ■ 「千人計画」にすでに1万人以上が参加

  中国で2008年にはじまった「千人計画」は、中国興隆のために国外にいる中国人科学者などを中心に人材を確保することを目的としている。米情報当局者がメディアに語ったところによると「すでに1万人以上が参加しており、参加者は本職でもらっている給料の3~4倍の給料が提供される」という。

  特に米国が警戒しているのは、生物科学医学の分野などでの研究開発の情報や知的財産に関するスパイ活動で、米当局は昨年から180件に及ぶ調査を行なっている。その過程で、世界的にも知られるような主要な研究所などほとんどすべてでこうした疑いのあるケースが浮上しているという。「共同研究」などの名目で知的財産を盗まれ、中国で勝手に特許が取られている場合もあり、米当局は中国政府とつながりのある研究者や学生などが研究所などから情報を盗む「スパイ工作」に関与していると見ている。

  2019年にも、米カンザス大学で中国系の准教授が中国の大学との関係を隠していたとして起訴されている。これまでも中国は同様の手口で情報を盗んできているし、サイバー攻撃でハッキングを行なって米重要機関から知的財産や機密情報を盗んでいる。だからこそ米当局は厳しい取り締まりに乗り出している。

  中国政府に繋がっている「協力者」は、大学や研究機関のみならず、民間企業にも潜んでおり、その数は600人ほど確認されているという。うちの4分の1はバイオテクノロジー系の企業にいるらしい。 

 こうした中国政府の関与が疑われる「スパイ工作」は米中貿易交渉の中でも議題に挙がるほど深刻になっている。

 米国による締め付け強化は、科学者だけでなく、中国からの留学生に対しても行われている。トランプ政権はつい最近、中国から留学している人民解放軍とつながりのある大学院生などの入国拒否や制限を実施すると発表した。これにより3000人ほどの留学生や研究員に影響が及ぶことになる。

■ 軍人が学生を装い米国留学 

 米政府関係者がメディアに語ったところによれば、「中国政府は、軍とつながりのある大学から海外に留学する学生の選別に関与しており、学生の中には留学先の学費を免除する代わりに情報収集をするという条件で留学の許可を得ている者もいる」という。

  実際に1月には、人民解放軍の傘下にある国防科学技術大学と関係がある29歳の女性軍人が、学生を装ってボストン大学に留学し、2年近くにわたって物理学や医用生体工学の学部に出入りして情報を中国に送っていたとしてFBIに指名手配されている。 


 また2019年12月には、ハーバード大学に留学していた中国人のがん研究者ジェン・ザオソンががん細胞の入った生物試料の瓶を21本も隠し持って中国に帰国しようとしたところ、ボストン空港で逮捕された。

  こうした事態を踏まえて米国務省は、2018年から中国人研究者らに対し、センシティブな情報や研究を行う大学や研究機関への留学ビザの期間を1年に短縮(1年ごとに更新可能)した。一方で、留学生がもたらす学費などのビジネスは莫大で、2019年は450億ドル(全留学生)のカネが米国もたらされていることから、学部生については引き続き留学を許可している。

 締め付けがどんどん厳しくなる中国人留学生に対する態度は、大学によっても差があるようだ。

  筆者は米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していたが、その際に、大学側と知的財産の所在を明確にして大学から無断で持ち出さないと合意する文書にサインをさせられた。米国の名門大学や大学の研究機関などでも大学院生や研究者などに対するそうしたルールは徹底している。特にマサチューセッツ州のボストン近郊には名門大学が近くにいくつもあり、どこも大学の研究の扱いは厳しいはずで、実際にMITなどでは中国人留学生や教員が摘発さえるケースは聞かない。それどころか、研究協力をしていた中国のAI関連企業が中国国内でウイグル族などへの監視に関与しているとして、研究関係を直ちに解消している。それだけにハーバードの教授の逮捕は衝撃的だった。

  もっともハーバードは中国政府と関係は悪くない。そのため逮捕された教授以外でも、中国共産党の息のかかった教授などが暴露されている。有能な人材を多数輩出しているだけに、そうした外国からの影響にも人々は注目している。

 ■ 日本だって当然中国スパイの標的 

 筆者は少し前に、イスラエルの元情報機関関係者と話をしていて、中国の対外工作について見解を聞いたことがある。

  「中国人の裏の活動は私たちも注視しています。サイバー攻撃で知的財産を盗もうとしてくることも把握しています。イスラエルでも米国でも、中国からの留学生は警戒が必要です。なぜなら、彼らの家族は中国国内にいて、言わば人質のようなものです。家族が人質なら、指示されたことはやらざるを得ない。それが情報を盗むというスパイ工作に繋がるのは当然でしょう」

  誤解ないようにはっきりしておくが、すべての中国人留学生や研究者がスパイだと言っているのではない。ただよからぬ目的を持っていたり、中国共産党から指示を受けたりして動いている人たちが中にいることは米国の例からも明らかである。 

 もちろん、これは米国だけの話ではない。「中国人スパイ」は、世界各地で様々な手を尽くして組織的に情報を盗もうとしている。日本でも最近、三菱電機が中国政府系ハッカーらによって8000人以上の人事情報や機密情報が盗まれたと話題になっていた。

  日本の政府機関や研究機関、民間企業が、中国だけでなく世界中の情報機関やハッカー集団から「おいしい標的」として目をつけられているのは事実だ。米国並み、とは言わないが、外国からの公然・非公然のスパイ活動に対し、もっと警戒レベルを挙げておく必要があるのではないだろうか。

山田 敏弘

【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

中国の千人計画については、このブログでも過去に掲載して、警鐘を鳴らしたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【瓦解!習近平の夢】「千人計画」は知的財産泥棒? “超ハイレベル人材”で科学的発展目論むも… 米は違反者摘発へ本腰―【私の論評】トランプ政権の“泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!

千人計画」のロゴ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

この記事は、2018年11月14日のものです。この頃から、中国の「千人計画」や、それ以前から稼働していた「外専千人計画」等が知られていました。

無論、その頃から米国は、この「千人計画」等にかかわる、米国内のスパイを摘発していました。日本でも報道されたので、ご存知の方々も多いと思います。

ただし、その規模や奥行きは、米国内でも考えもおばなかった規模のようです。

実際2019年11月にもそれについて米国内で報告がなされてました。

中国の国外で研究を行っている研究者らを中国政府が募集する人材募集プログラムにより、米国政府の研究資金と民間部門の技術が中国の軍事力と経済力を強化するために使われており、その対策は遅れている、と米国議会上院の小委員会が2019年11月に公表した報告書が指摘しました。

報告書は、上院国土安全保障政府問題委員会調査小委員会(委員長Rob Portman;共和党所属、オハイオ州選出)が超党派報告としてまとめ、公表しました。

Rob Portman

報告書の調査は、米国の連邦捜査局(FBI)、全米科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、エネルギー省、国務省、商務省、ホワイトハウス科学技術政策室の7つの組織を対象に8カ月間かけて行われました。同小委員会は2019年11月19日、この報告に関する公聴会を開き、議論しました。

報告書などによると、中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指しているそうです。中国政府は1990年代後半から、海外の研究者を募集して国内の研究を促進しており、そうした人材募集プログラムは現在、約200あります。その中で最も有名なものが、「海外高層次人才引進計画」(千人計画、Thousand Talents Program)です。報告は千人計画を詳しく分析しています。

千人計画は2008年に始まり、2017年までに7000人の研究者を集めたとされる。ボーナスや諸手当や研究資金が用意され、対象は中国系の研究者とそれ以外の場合の両方がある。Portmanは、千人計画の契約の実例のいくつかの規定を取り上げた。契約は、参加する科学者たちに、中国のために働くこと、契約を秘密にし、ポスドクを募集し、スポンサーになる中国の研究機関に全ての知的財産権を譲り渡すことを求めている。

さらに契約は、科学者たちが米国で行っている研究を忠実にまねた「影の研究室」を中国に設立することを奨励している。NIHの副所長Michael Lauerは、「中国は、影の研究室のおかげで米国で何が進んでいるかを世界に先駆けて知ることができます」と議員たちに説明した。「NIHが、影の研究室の存在を米国の研究機関に知らせると驚かれることがしばしばで、多くの研究機関は職員が中国に研究室を持っていることを知りませんでした」とLauerは話した。

報告書によると、エネルギー省の調査では、米国立研究所に所属していたあるポスドク研究員は、千人計画に選ばれて中国で教授職を得、中国に戻る前にこの研究所から機密扱いではない3万件の電子ファイルを持ち去ったといいます。この研究員は中国の研究機関に対し、米国での自分の研究分野は高度な防衛力を持つために重要なものだと話し、中国の防衛力の近代化を支援する研究を計画していたといいます。

こうした中国のプログラムに対し、FBIや米国の研究機関の対応は非常に遅く、研究機関は米国の研究を守るための取り組みを組織しなければならない、とPortmanは指摘しました。「私たちは、もっと素早く行動しなければなりません」と彼は話しました。

報告書は、外国の人材募集プログラムに参加している研究者には、その契約条件などの完全な開示なしに米国の研究資金を得られないようにすべき、などと提言しています。また、基礎研究で得られる成果には可能な限り制約をかけないという、米国政府が1985年から採用してきた基本方針の再検討を求めています。Portmanらは対策の立法化にも言及しています。

この問題の調査で、中国系の研究者たちが不公平に標的にされているという懸念も生じています。報告書は、米国政府出資の研究を守ることと国際協力を両立させることは今後も必要だとしています。

米国大学協会(ワシントンDC)の政策担当副会長のTobin Smithは、「報告は、人材募集プログラムの契約内容を徹底的に調べることにより、この問題を生々しく伝えています。大学教員たちに、こうした人材募集プログラムに加わる場合は注意しなければならないことを気付かせるには、この報告が役立つはずです」と話したとされています。

2018年時点でも、「千人計画」などについては、その脅威が認識されていたにも関わらず、2019年時点でも、塀国内ではまだ取り組みが遅れていたようです。

それが、今年の1月には米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長が逮捕されたというのですから、米国でもようやっと取り組みが本格化してきたようです。

そうして、この動きは加速するでしょう。なぜなら、現在はコロナウイルスの蔓延による影響が世界を覆っており、コロナが変えてしまった世界は過去とは異なるものになるからです。

特に、米中対立は世界経済をどう変えるのでしょうか。リスク分析を専門とするアメリカの国際政治学者、イアン・ブレマー氏は本日の「Newsモーニングサテライト」テレビ東京に出演して以下のようなことを語っていました。

コロナ危機は少なくとも3年は続き、世界経済は10%以上縮小するだろう。 
最大の懸念はどれほど多くの職が失われるかだ。最も心配しているのは米中の対立だ。今は米中の相互依存が薄れ、技術をめぐる冷戦が起きている。 
米中は互いの技術に投資せず、互いに介入を許さない状況だ。米中の溝は深まり、その影響は経済の他の分野にも広がるだろう。 
米中間の不信が強まる中で、両国で人件費は上昇している。米中にまたがっていたサプライチェーンを国内に戻す動きが強まるだろう。
グローバル化からの急激な逆行は世界の姿を変えるとブレマー氏は指摘しています。ブレマー氏は「10年かけて起こるような変化が1~2年の間に起きるだろう。破壊的なことで、世界の地政学を変えてしまう。民主主義や自由市場の有効性や正当性も変えてしまうだろう。世界を緊張が覆うことになる。」などと述べました。

私もイアン・ブレマー氏の指摘は正しいと思います。米中対立が先鋭化しつつある現在、米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたちも、コロナ以前であれば、5年〜10年かけて摘発が行われだのでしょうか、今後は1年〜2年にスビードアップされることになるでしょう。

先に掲載したリンク先の記事の結論部分を掲載します。
日本と米国は同盟関係にあります。だから、日本には米国の情報もかなり蓄積しています。これが、中国に盗まれるということもあります。これは、明らかに米国にとって大きな不利益です。 
さらに、米国の技術ではなくても、日本の技術が中国に盗まれ、「中国製造2025」に大きく寄与することになれば、これも米国は自国にとって不利益とみなすことでしょう。 
このように、日本経由で中国に米国の不利益になる形で、情報が漏れれば、米国は黙っていないでしょう。それこそ、日本に対して制裁を課すということにもなりかねません。 
トランプ政権の“知的財産泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機なのです。
この記事を書いた、2018年11月14日時点では、日本の本格的な危機に対処するには、なんとなく5年から10年と思っていました。しかし、コロナによって変わった世界においては、1〜2年で、そのような脅威に日本が見舞われるかもしれません。

今のところ、政府はコロナ対策で目いっぱいのところがあると思いますが、こうしたコロナによって変わった世界にを目を配り対策を立てておくべきと思います。特に中国への対応は、旗幟を鮮明にすべきです。

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2020年6月1日月曜日

トランプ、暴力的抗議を受けアンティファをテロ組織に指定と発表―【私の論評】暴力集団は、日本でも許されるものではない(゚д゚)!

トランプ、暴力的抗議を受けアンティファをテロ組織に指定と発表

<引用元:FOXニュース 2020.5.31

「アメリカ合衆国はアンティファをテロ組織に指定することになる」とツイートしたトランプ大統領

トランプ大統領は31日、米国政府は極左団体のアンティファをテロ組織に指定すると発表した。

トランプが、ジョージ・フロイドの死を受けて全国で起きている暴動をアンティファのせいだとする中での動きだ。黒人男性のフロイドは武器を持っていなかったが、5月25日もミネソタ州ミネアポリスで警官に拘束された際に警官に8分以上膝で首を抑えられた後死亡し、その様子はビデオにとらえられていた。

「アメリカ合衆国はアンティファ(ANTIFA )をテロ組織に認定することになるだろう」とトランプは31日の午後ツイートした。

警察に対する平和的な抗議として始まったものがエスカレートした背景に誰がいるのかは明確になっておらず、極左過激派と白人至上主義者の両方に非難が向けられている。

「アンティファと極左勢力だ。他のせいにするな!」とトランプは30日にツイートしていた。

マイク・ポンペオ国務長官は、略奪、放火、暴力の背後に誰がいるのかについて決定的な態度で語るのを控えている。長官はFOXニュースの「Sunday Morning Futures」出演中に暴動を「アンティファ的」と呼んだが、平和的な抗議から全く異なるものに発展したのが「厳密にどのような状況だったのか分かるのはまだこれからだと思う」と述べた。

ミネソタ州司法長官のキース・エリソンは「Fox News Sunday」で、州外から来ている人々がミネアポリスの暴力行為に関与しているという証拠があると述べたが、特定の団体や思想と関連があるかどうかについては明言しなかった。

2019年には上院でアンティファを国内テロ組織に指定する決議案が提出され、アンティファは「平和的な集会と言論の自由という民主主義の理想とは正反対に相当する」とされた。

ビル・カシディー上院議員(共和党、ルイジアナ)とテッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス)が共同で提案した法案は、アンティファに関連する人物がICE職員とジャーナリストのアンディ・ンゴに対して起こした脅迫と行為を受けて提出された。

【私の論評】暴力集団は、日本でも許されるものではない(゚д゚)!

C.R.A.C.(元レイシストしばき隊)の米国版ともいえる集団で、保守系の人間が大学で講演会をすると聞くと、その大学に押しかけて妨害するなどの活動を繰り返しています。もっともアンティファの方が歴史は古く、C.R.A.C.にもアンティファを真似ている部分が多いです。

第二次世界大戦前の欧州にルーツを持つアンティファは、ナチズムと人種差別主義に対抗することを標榜しており、その基本指針は「ファシストが政府や社会に根を張って第2のナチスドイツを誕生させることを阻止する」です。

もっとも、表現・宗教の自由などをうたった憲法修正第1条を軽視し、暴徒を動員して「ヤジで相手を黙らせる」ので、これではファシストと変わらないという批判もあります。

アンティファの組織としての実態は謎に包まれており、全米各地に200もの拠点があるとされますが、支部として明確に認知できるのはオレゴン州ポートランド市内の事務所だけだといいます。

アンティファのイデオロギー面での代弁者はマーク・ブレイという政治活動家で、『アンティ・ファシスト・ハンドブック』という著書を出して、アンティファの政治理念などを説明しています。

立憲民主党・杉並区議会議員のひわき岳が2019年10月にツイッターに投稿した動画は新宿で行われたデモの様子を撮影しており、アンティファの旗が映っています。


東京渋谷でもアンティファの旗を掲げた左翼組織がデモを行った他、2019年8月のあいちトリエンナーレの展示「表現の不自由展・その後」が中断された件では、アンティファ名古屋支部が展示の再開を要求する団体に主張の場を提供しています。

ごく最近も東京都渋谷区では5月30日、警察官の対応に抗議するデモがありました。同月23日、渋谷警察署の警官が職務質問を拒否したクルド人男性を、取り押さえたことが発端となりました。男性は当時、路上駐車していた。別のクルド人男性がその模様を撮影した映像をネットに投稿し、複数のネットユーザーが米国の騒乱と関連付けて転載していました。

30日のデモには、このクルド人男性を含む180人近くが参加したとされます。一部の参加者は「ANTIFA」の旗を掲げていました。このデモへの参加を呼び掛けるため、多言語のANTIFA関連のアカウントもデモ参加を呼び掛けました。

現地取材のフリージャーナリスト・Gregor Wakounig氏は、デモ参加者について「自発的な反ファシスト、特定政党の支持者、無政府主義者、他の政治的見解の人々が集まった」とツイートしています。

立憲民主党の石川大我議員がデモに参加しています。公開された映像によると、石川議員はデモ終了時に、騒動について「国会で大きく取り上げる」と述べました。

この出来事について、政治学者の岩田温が以下の動画で解説しています。


アンティフアの危険性については、この岩田氏の動画で十分におわかりいただけたものと思います。

日本では、左翼と言われる人たち、吉良よし子(日本共産党)、有田芳生(立憲民主)、辛淑玉が、ANTIFA(アンティファ)のロゴが入ったTシャツを着て、アピールしています。このことに関して、危険な匂いを感じるのは、岩田氏だけではないでしょう。




足立康史衆議院議員(54)が1日、ツイッターで話題になったアンティファに言及しました。
 
アンティファ(Antifa)は上でも述べたように、左派の反ファシズム団体。米国では警察官に拘束された黒人男性が死亡した事件をきっかけに全米で広がる抗議デモが過激化し、暴徒と化しています。

これをあおっているのがアンティファだとして、トランプ大統領は31日テロ組織として指定すると発表。日本も無関係ではないとして1日、420万ツイートを超えるほど話題になりました。

これについて足立議員は「日本には、スパイ防止法もちゃんとした情報機関もないから、なかなか面倒だけど、破防法を含めて当局の適切な対応が求められますね」と慎重なコメントを残しています。

アンティファのような極左暴力集団は普段は、あまり見向きもされないのですが、現在のようにコロナウイルスなどで、多くの人が疲弊しているときなどに、活動を活発化させ、多くの人々を自分たちの味方につけたり、自分たちにとって有利になるように、社会を作り変えたりしようとします。

米国の暴動にアンティファが関与したり、日本でも姿をみせるということは、アンティファなどの極左暴力集団が、コロナ禍に乗じて活動を活発させようとしている兆候かもしれません。

我々としても、今後アンティファの動きには、注目し彼らが暴力を行使することがないように監視を続けていくべきと思います。

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2020年5月31日日曜日

習近平いよいよ「台湾潰し」へ…迎え撃つ蔡英文総統の「外交戦略」―【私の論評】中国が台湾武力奪取に動けば、急襲部隊は崩潰し、習近平の中国内での評判は地に堕ちる(゚д゚)!

習近平いよいよ「台湾潰し」へ…迎え撃つ蔡英文総統の「外交戦略」

台湾は日米との関係を強化

習近平

 4年に一度のその日、台北はいつもと違う朝を迎える。5月20日は、日本で人気の高い李登輝の頃はもとより蒋介石の時代から、総統就任の日となることが多かった。1月11日の総統選挙で再選を決めた蔡英文総統もこの日、台湾人だけでなく海外からの多くの賓客に祝福されて、政権2期目を正式にスタートさせる――はずだった。


 だが新型コロナウィルス(台湾では民間だけでなく政府も「武漢肺炎」という呼称を用いている)の影響で、大規模な式典での国威発揚は困難となった。一変したのは総統就任式というセレモニーだけではない。台湾を取り巻く国際政治は、いま大きなうねりの中にある。筆者は台湾外交部(外務省に相当)の招聘を受けてTaiwan Fellowshipに参加し、1月から4月まで台湾大学で在外研究にあたったが、その成果にも触れながら本稿を認めたい。

  蔡英文は台北賓館で就任演説に臨んだ。台北賓館は日本統治時代に台湾総督の公邸としてネオ・ルネッサンス様式で建設され、摂政宮として台湾を行啓した昭和天皇も大正12(1923)年に宿泊された。現在は外交部が管理する迎賓館となっており、筆者も3月に訪れたが、意匠の凝らされた内装からは当時の日本が台湾統治にどれほど意を用いていたのかがよく伝わってくる。

蔡英文総統

  演説の中で蔡英文が、中国以外で具体名を挙げてバイ(二者間)の関係について言及したのは、「米国、日本、欧州との貿易あるいは投資保護協定の締結、これは我々が継続して努力する目標だ」、「これからの4年間、我々は米国、日本、欧州等の価値観を共有する国家とパートナーシップを深化させていく」という2か所だった。

  これは外交の基軸が引き続き米国、日本との協力関係であることを明確に示したといえよう。同様のメッセージは、蔡英文が当選を決めてから面会した外国使節の顔ぶれからも読み取れる。総統選挙の投開票日の翌1月12日午前にまず面会したのが、クリステンセンAIT台北事務所所長だった。

  国交が存在しない米国と台湾の関係において米国側の窓口機関となっているのがAIT(在台米国協会)であり、クリステンセンは事実上の駐台大使に相当する。筆者は国務省からAITに派遣されている米外交官との意見交換のため、台北市東部の内湖区に新築された事務所を訪問した。事務所という語感からはかけ離れた丘の上の巨大な要塞のような事実上の大使館の構えは、米国の台湾重視がトランプ政権下での一過性のものではないことを端的に表しているといえよう。

  そして同日午後に面会したのが岸信夫衆議院議員であり、台湾にとってもう一つの重要な大国である日本との関係を改めてスタートさせた。蔡英文が岸を迎えたのが永和寓所だったことにも意味がある。「仕事場」である総統府ではなく「住まい」である寓所において安倍晋三総理の実弟を遇することで、日本との関係に個人的な親密さという彩りを添えたといえよう。

欧州も台湾を重視

 日米に続いたのが、英国のネトルトン代表(1月17日)、EUのGrzegorzewski所長(1月22日)、ドイツのプリンツ所長(2月25日)だった。日米からはいくらか時間が経ってからだったが、欧州からの使節と面会する機会を他の国々に先んじて設けたのは、価値観を共有する欧州との関係を前進させたいという蔡英文の意思の表れといえよう。

  欧州の側にも台湾重視の動きがある。台湾のWHO総会へのオブザーバー参加を支持する声が、日米に歩調を合わせ英仏独からも上がったのだ。日米と同様に欧州主要国も、対中関係が緊張するリスクを覚悟の上で台湾を後押しした。また軍事面では、仏海軍が昨年4月にニューカレドニアを母港とするフリゲート艦「ヴァンデミエール」に、英海軍が昨年12月に測量船「エンタープライズ」に台湾海峡を航行させた。 

 加えて持ち上がっているのが、かつて仏から台湾への武器売却だ。台湾への武器の供給源は基本的には米国だが、仏は1991年にラファイエット級フリゲート艦6隻を、翌92年にミラージュ戦闘機60機を台湾に売却している。台湾は艦船の装備をアップデートするため、仏からの購入が検討さているのだ。

TPP加入への意欲


 就任演説に話を戻すと、分野としては経済外交に注力しようという姿勢が見て取れる。現時点で台湾が自由貿易に関する協定を結んでいる主だった国は、中国を除けばニュージーランドとシンガポールに過ぎない。昨年の貿易総額に13.2%を占める米国や10.9%を占める日本との貿易協定がもし実現すれば、台湾経済へのプラス効果は計り知れないといえよう。

  経済外交におけるもう一つの大きな目標がTPP加入だ。台北滞在中に筆者は経済閣僚とも会談し、蔡英文政権がTPPへの加入そしてTPPを主導する日本からの後押しをいかに切望しているかを改めて実感した。日米との貿易協定やTPPは、昨年の貿易総額に24.3%を占める中国への依存度を低減させるという観点からも重要といえよう。

  蔡英文演説の翌々日5月22日、予定よりも約2か月半遅れて北京で開催された全国人民代表大会で、中国の李克強首相が政府活動について報告し、台湾については台湾独立への反対や統一の促進に言及した。蔡英文は就任演説で対話を呼び掛けていたが、中国はゼロ回答で応じたといえよう。

  中国側は、台湾内部での蔡英文圧勝という政治情勢や対中感情悪化という世論動向について取り合うつもりは全くないということだろうが、事態は北京が考えるよりも深刻だ。昨年1月、習近平国家主席は台湾政策について演説し、一国二制度による統一を目指し武力統一を放棄しないという方針を改めて示したが、原則論に固執し強硬姿勢を崩さない習近平の頑なな態度によって台湾世論は硬化し、蔡英文の総統選挙での勝利の一因となった。 

 今年に入り情勢は中国にとってより不利に傾いている。総統選挙と同時に実施された立法院選挙では与党民進党が再び過半数を獲得し、総統府と立法院をどちらも制して政権基盤を固めた。一方で民進党と比較すれば中国との協調に軸足があった野党国民党でも、中国との関係見直しに言及する江啓臣立法委員が新しい主席に選出され、台湾政界における脱中国がますます進んでいる。

コロナ禍の巨大な影響

 そしてコロナによって台湾世論の中国との心理的距離はさらに広がった。公衆衛生という人命に直結する問題において、台湾海峡の両岸では医療体制というハード面だけでなく、国民のマインドというソフト面でもかけ離れていることが明らかになったからだ。

  国民党に近いとみられる中国問題が専門の大学教授ですら、もしコロナが発生してから選挙が行われていれば、蔡英文は1000万票(実際には817万票)の大台を獲得していたかもしれないと筆者に耳打ちしたが、あながちオーバーな数字ではない。生死に関わる問題で加速した世論の脱中国トレンドは、短期ではおよそ変わりようがなかろう。

  にもかかわらず中国は、台湾を後押ししようとする国々に対して注文を付けることに躍起になっている。日台には国交がないこともあり、安倍と蔡英文が膝を突き合わせて首脳会談を開催することは困難だ。だが両者はtwitterを通じて交流しており、ネット上では肯定的に捉える向きも多い。

  これに対して中国は、筆者が外交官補としてかつて所属していた北京の日本大使館に対して抗議したという。中国外交部も最近では自らtwitterを活用していることから、SNSの威力には一目置いているものとみられ、ヴァーチャルな日台首脳交流がネット上でさらに影響力を持つことを恐れ、横槍を入れてきたのだろう。 

 ニュージーランドに対しても中国は警告を発した。台湾のWHO総会への招待を求めるテドロス事務局長への共同書簡に、NZは日本、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアとともに加わったが、中国はこれに噛みついたのだ。中国は自らへの包囲網を破ろうとする時に、最も脆い箇所を叩くことを定石としている。テドロスへの共同書簡に加わった8か国の中で国力が一番小さいのはNZだ。

  NZは既述の通り台湾と貿易協定を結んでいる数少ない国であり、台湾と良好な関係にある。一方で中国は、自らに友好的だった国民党の馬英九政権に得点を挙げさせるため、台NZ協定を妨害せず黙認していた。NZの台湾政策に対して時には目をつぶり時には異を唱えるのは、自らが許容する範囲の中でのみ台湾との関係構築を認めるという態度なのだろうが、こうした露骨なやり方は果たして持続可能だろうか。

  蔡英文は就任演説で台湾のコロナ対策を自賛したように、コロナをきっかけとして台湾の国際的地位は向上し、台湾を巡る各国の連携も強まった。米国とともに台湾の後ろ盾の役割を演じている日本にとっては、望ましい方向に事態が動いているといえよう。だが中国はこうした現実を直視しないどころか、強硬策一辺倒の姿勢をますます強めている。一国の外交から柔軟性が失われた時にどういった結末が待っているのか。未来は誰にもわからない。

村上 政俊(同志社大学ロースクール嘱託講師)

【私の論評】中国が台湾武力奪取に動けば、急襲部隊は崩潰し、習近平の中国内での評判は地に堕ちる(゚д゚)!

中国は、今後台湾を武力で奪取する可能性は十分にあります。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!
台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)
以下に、この記事から一部を引用します。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。 
これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。 
そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。 
そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。
考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。 
中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。 
香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。 
中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。 
中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。 
しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。 
今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。
 ・・・・・・・一部略・・・・・・・・・ 
本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。
香港を中国の1都市にし、一国二制度を葬り去った中国は、次の段階で台湾を標的にする可能性も高まってきました。

中国側の理論からすれば、台湾は自国の領土なので、何をしようが自分の自由であり、それに対して外国が批判するのは内政干渉であると考えることでしょう。

これに関しては、蔡英文台湾総統は無論大反対ですが、一つ気がかりなことがあります。それは、軍事的には米中であれば、米国が圧倒的に強いです。しかし、台中ということになれば、台湾は中国どころか、日本の自衛隊よりも劣勢です。

だから、もし中国が本気で台湾を武力で奪取しようと考えた場合、台湾は武力では中国に負けしまうことになります。

しかも、米国は台湾と未だ正式には国交を結んでいません。米国は台湾に武器を提供するようなことをしていますが、それでも未だ韓国に対するように、軍隊を駐留させてまで、本格的に台湾を防衛しているわけではありません。

この隙をついて、中国が武力で台湾に攻撃をしかけて、奪取し、米国をはじめとするこれを批判する勢力に対して、「台湾は中国の領土であり、たとえ中国が武力で台湾を強制的に中国に併合したとしても、これは中国の問題であり、これを批判するのは内政干渉である」と教鞭する可能性は十分にあります。

中国の最近の「戦狼外交」ぶりをみれば、十分にありそうなシナリオです。これに対して米国は手も足もでないのでしょうか。

私としては、これに米国が対応する方法はあると思います。以下は、私が思いついた方法ですが、これは、中国の台湾武力奪取を粉砕するだけではなく、習近平の面子を丸つぶしにし、習近平政権の崩潰につながるかもしれません。

まずは、米国の対応の方法を述べる前に、2017年に日本で起こった不思議な事実を掲載します。

トランプ米大統領は2017年13日までに、マティス国防長官(当時)が2月に東京を訪問した際、35機の最新鋭ステルス戦闘機F35がレーダーに探知されずに日本上空を飛行していたとの認識を示していました。ホワイトハウスで行われた米タイム誌とのインタビューで述べました。

アメリカ空軍のF-35A

トランプ氏はこの中で、「彼らは35機のF35を日本上空に飛行させた。レーダーに探知されなかった。上空を飛行し、誰もが『一体どこから飛来したのか』と言っていた。あれがステルス機能だ。本当に格好良い」と言及。この35機について、「高速で低空を飛行しており、探知されなかった」「飛来してきているとは誰も知らなかった」などとも述べました。

ただ、F35の海外初配備で日本に到着したと伝えられている海兵隊仕様機は、配備予定16機のうち10機のみで、マティス氏訪日の数週間前でした。海兵隊は事前に配備を発表していたため、岩国基地に飛来してきたことに驚く人もいなかったようです。

このとき他にもF35が日本に展開していた可能性はあるのでしょうか。F35の他の海外配備としては少数の空軍仕様機が4月に欧州に派遣されただけでした。仮に日本に来ていたのが事実なら、それは最高機密に相当するものだったと考えられます。

これは、無論日本の航空自衛隊がF35を導入する前です。日本では2018年2月24日(土)航空自衛隊三沢基地の118格納庫において、最新鋭のF-35Aステルス戦闘機の配備記念式典が開催されました。

その日本で、2017年にF35が35機が、レーダーで発見されることなく、飛行していたというのですから、驚きです。

日本で可能というのなら、台湾上空や近海でも、中国や台湾に気づかれずに飛行することも可能でしょう。実際、F35のステルス性を破るような技術は中国も台湾も持っていないと考えられます。

であれば、中国が台湾を武力で奪取しようとして、航空機や艦船などを台湾に派遣した場合、米国は台湾にも中国にも感知されずに、F35を大量に台湾方面に派遣する事が可能とななります。

これで中国軍を攻撃し破壊し、無言で台湾から去った場合には、中国も台湾もこれを探知することができず、中国の航空機や艦艇が破壊されるということになります。

ただし、F35に対して正確に中国軍を攻撃・破壊するためには、無論早期警戒機などが必要になります。そうなると、早期警戒機は中国や台湾に発見されてしまうかもしれません。

しかし、それには逃げ道もあります。早期警戒機などは台湾上空や近海を飛ばなくでも、遠方からでも警戒行動ばできます。それでも、情報が足りなければ、潜水艦がその役割を担えばよいのです。

たとえば、米海軍のバージニア級原子力攻撃潜水艦「サウスダコタ」(SSN-790)が2019年2日、就役し、試運転の様子や最新設備の一端がYouTube動画などを通じて披露されていました。このような潜水艦を、偵察ならびに中国の艦艇攻撃に使えば、ステルス性も備えているので、中国や台湾などに感知されずに、中国艦艇を攻撃することができます。

一方中国の潜水艦は、米軍は容易に探知することができます。これでは、ほとんど勝負にならないかもしれません。中国の虎の子の空母や、強襲揚陸艦も撃沈されてしまうかもしれません。

「サウスダコタ」は、「ブロックIII」(3世代目)」に属する17隻目のバージニア級で、敵に発見されにくいステルス性能および偵察能力、攻撃力の強化やコスト削減が図られました。同艦の配備は、潜水艦隊能力で追い上げてきている中国、ロシアへの強力な対抗策となるとされました。

「サウスダコタ」は、9つの能力を持つ「マルチミッション潜水艦」とされています。その9つの能力とは、「対潜水艦戦闘」「対水上艦戦闘」「特殊部隊の輸送」「対地攻撃戦闘」「特殊戦闘」「情報収集」「救助活動」「偵察」「機雷戦闘」の各能力です。

米源泉サウスダコタ

米国防総省は今年2月4日、低出力で「使える核兵器」と称される小型核を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を、海軍が実戦配備したと発表しました。米メディアによると小型核の潜水艦配備は初めてです。トランプ政権は中国、ロシアへの軍事的優位を確保するため、早期の製造、配備を目指していました。

このようなことから、中国としては、台湾奪取の目的のため、核兵器を使うことは、できないでしょう。

台湾近海に、これらステルス性に優れた、「サウスダコタ」のような潜水艦を数席配置しておけば、偵察はもとより、攻撃も十分にできます。

中国の台湾急襲舞台は、当然のことながら航空機ならびに艦艇により派遣されると思います。それには、米国のステル性の高い航空機ならびに、潜水艦で隠密理に攻撃すれば、中国の台湾急襲部隊のほとんどが、崩潰することになります。

崩潰した後の中国台湾急襲部隊への追撃戦は、米国が行うことなく、台湾が実施すれば良いです。そうして、軍事力も強化しつつある昨今の台湾はこの追撃戦を首尾良くやり遂げるでしょう。中国にとっては屈辱的かもしれませんが、捕虜になる人民解放軍もかなりの数に登ることになるでしょう。

その後米国は、この軍事行動に関して、何も公表しなければ、台湾が独力で中国軍を粉砕したということになります。そうなると、台湾に軍事でも負けた習近平ということになり、国内でも習近平の評判は地に堕ちることにります。

中国が米国によるものだと批判しても、中国流に突っぱねれば良いのです。そもそも、中国は米軍攻撃の証拠を見つけることができないでしょう。

ちなみに、日本海上自衛隊の潜水艦も、ステルス性に優れていることはこのブログでも何度か掲載しました。日本の海自は、中国の艦艇を攻撃することはできないかもしれませんが、中国や台湾に探知されずに、哨戒行動なとで協力することもできるかもしれません。

軍事には素人の私でも、これくらいのことは考えられるので、米軍であれば、もっと優れた中国の封じ込め戦略を構築することができるでしょうし、実際構築していることでしょう。

これでは、中国もなかなか台湾の武力による奪取には踏み込めないでしょう。人民解放軍は自殺攻撃を覚悟しなければならなくなります。人命を多数失ってもなお、台湾を奪取できない可能性のほうが高いです。

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2020年5月30日土曜日

トランプ氏、香港の優遇措置見直し WHOと「断絶」も―【私の論評】日欧は香港問題で八方美人外交を続ければ、英米加豪に相手にされなくなる(゚д゚)!


対中国の制裁措置を発表するトランプ米大統領=29日

 トランプ米大統領は29日、ホワイトハウスで記者会見し、中国が香港に国家安全法の導入を決めたことに関し「香港の高度な自治は保証されなくなった」と述べ、米国が香港に対し認めている優遇措置を見直す手続きに着手すると表明した。トランプ氏はまた、世界保健機関(WHO)について、新型コロナウイルスをめぐって中国寄りの対応をとったとして「関係を断絶する」と述べ、脱退を表明した。

 新型コロナ危機に乗じて香港などに対する強権姿勢や南シナ海などで覇権的行動を打ち出す中国に、米国が正面から対決していく立場を鮮明にしたもので、米中の対立が一層激化していくのは確実だ。

 トランプ氏は、中国の全国人民代表大会(全人代)が香港に国家安全法を導入する「決定」を採択したことに関し、「中国は香港に約束していた『一国二制度』を『一国一制度』に変えた」と非難した。優遇措置の見直しの対象は、関税や査証(ビザ)発給など「ごく一部を除き全面的なものになる」としている。

5月27日、香港立法会の本会議に出席した民主派の陳淑荘議員

 トランプ氏はまた、「香港の自由の圧殺」に関与した中国や香港の当局者に制裁を科すと表明した。

 米国務省の香港に対する渡航勧告も中国と同等とし、滞在中に「監視を受ける危険が増大する」との文言を明記するとした。

 新型コロナへの中国の対応に関しても、中国が忌避する「武漢ウイルス」の用語をあえて使用し、「中国がウイルスを隠蔽(いんぺい)したせいで感染が世界に拡大し、米国でも10万人以上が死亡した」と訴えた。

 WHOに関しては「中国に牛耳られている」「米国の組織改革の要求に応えていない」などと批判。年間4億5千万ドル(約480億円)規模とされるWHOに対する米国の拠出金については「他の保健衛生関連の国際組織に振り向ける」とした。トランプ氏は今月18日、WHO事務局長に「30日以内に組織を改革しなければ米国は資金拠出を恒久停止する」と警告していた。

 またトランプ氏は会見で、米株式市場に上場している中国企業の透明性向上に向け「特異な行為」をしていないか作業部会で検証すると語った。

 さらに、中国人の学生らが米国内の大学や研究機関で技術窃取を繰り返してきたと非難。記者会見後は、中国人民解放軍に連なる研究機関に所属する大学院生の米国への入国を禁じる大統領布告に署名した。

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一国二制度の破壊で香港は中国の一地方都市となったのですから、特別優遇の廃止は当然のことです。しかし、それでは中国は、国際金融と貿易における香港の特別地位を失って経済が沈没するのは必至です。中国は、資金調達と対外貿易の重要な窓口を失うことになります。いつものことだが、習近平の愚挙は、結局自分たちの首を絞めることになるだけです。

トランプ米大統領が29日の、声明要旨は次の通りです。

■新型コロナの情報隠蔽

米国は中国との開かれた、建設的な関係を望んでいるが、その関係を実現するには米国の国益を精力的に守る必要がある。中国政府は米国や他の多くの国々への約束を破り続けてきた。中国による「武漢ウイルス」の隠蔽により、疾病は世界中に拡散した。世界的な大流行を引き起こし、10万人以上の米国民、世界中で100万人以上の命が失われた。

■WHOとの関係断絶へ

中国は世界保健機関(WHO)を完全に支配している。彼らは我々が要請した必要な改革を実施しなかったため、本日、WHOとの関係を断絶する。資金の拠出先は世界的でふさわしい、他の差し迫った公衆衛生ニーズに振り替える。

■産業機密保護へ入国制限

中国政府は長年にわたり、米国の産業機密を盗む違法なスパイ活動を行ってきた。本日、私は米国の極めて重要な大学の研究成果を保護するため、潜在的な安全リスクとみなす者の中国からの入国を停止する布告を出す。

■中国上場企業の慣行調査

さらに米国の金融システムの健全性を守る措置を取る。金融市場に関するワーキンググループに対し、米国の市場に上場している中国企業の慣行を調査するよう指示する。

今週、中国は香港の安全に一方的な統制をかけた。これは、1984年の宣言で英国と結んだ条約に対する、中国政府による明確な義務違反だ。

■香港の自治侵害は条約違反

中国による最近の侵害と、香港の自由を悪化させたその他の出来事をみれば、中国への返還以来、米国が香港に与えてきた優遇措置を続けるための正当な根拠となる自治がないのは明らかだ。

中国は、約束した「1国2制度」方式を「1国1制度」に置き換えた。このため私は米政権に、香港を特別扱いしてきた政策をやめるプロセスを始めるよう指示する。本日の私の発表は、犯罪人引き渡し条約から軍民両用技術の輸出規制まで全ての範囲の合意に影響する。

香港への渡航勧告についても、中国治安当局による刑罰や監視の危険の増加を反映して見直す。

■関税など優遇措置を撤廃

関税や渡航の地域としての優遇措置も取り消す。香港の自治侵害と、自由の抑圧に直接的または間接的に関与した中国と香港の当局者に制裁を科すのに必要な措置を取る。

香港の人々は、中国が活動的で輝く香港の街のようになることを望んでいた。世界は、香港が中国の未来像の一端であるとの楽観的な思いに打たれたのであり、香港が中国の過去の姿を映すことを期待したのではなかった。

以上

国連安全保障理事会は29日、中国政府が香港に「国家安全法」を導入する方針を決めたことを受け、米英両国の提起で香港情勢について非公式に協議しました。米国は中国に方針転換を求め、全ての国連加盟国に米国に同調するよう要請。猛反発した中国が内政干渉の即時中止を米英に要求し、議論は平行線に終わりました。

米英中の各国連代表部は協議後、それぞれ声明を発表。それによると、クラフト米国連大使は、安保理理事国に「中国共産党が国際法に違反し、香港の人々に考えを押し付けることを許すのか」と問い掛けました。

アレン英国連臨時代理大使は、「中国が立ち止まり、香港や世界が抱いている深刻かつ正当な懸念について省察するよう期待する」と求めました。

これに対し中国の張軍国連大使は、「香港問題は純粋な中国の内政問題であり、外国の干渉は認められない」と強調。29日の討議に関しても安保理として「正式」に協議を行ったわけではないとくぎを刺し、「香港を使って中国に内政干渉しようとするいかなる試みも失敗する運命にある」と主張しました。

中国の張軍国連大使

新型コロナウイルスの世界的流行をめぐり深まっていた米中対立は、香港問題を受け一段と悪化しました。ともに常任理事国である米中間の亀裂により、安保理が具体的行動を取るのは困難な情勢です。

このような情勢はなぜか日本では、あまり深刻に受け止められていないようです。

日本には「中国に制裁をほのめかして、この立法を阻止しなければならない」と主張するような政治家はいないのでしょうか。今回の一連の出来事は、米中新冷戦が熱戦(直接的な武力行使)の入り口に近づくくらいのインパクトがあるものと受け止めるべきです。

中国に帰属する自由都市・香港は、長らく西側の自由主義社会と中華全体主義社会をつなぐ回廊の役割を果たしてきました。多くの金と人が香港を通じて行き来していました。
その香港を潰すということは、中国は西側社会との決別を決心したということです。日本やEU諸国の出方はまだ不明ですが、本当に香港に対するビザや関税の優遇が取り消され、中国への経済制裁が行われることになれば、次に起こりうるのは冷戦ではなく熱戦の可能性もあります。
中国党内には、最近、トランプが中国に戦争を仕掛けてくる、という危機論があるようです。日本に真珠湾攻撃をさせたように、巧妙な情報戦で中国を追い詰め、戦争を仕掛けさせるつもりだ、といった意見を語る人間もいる程です。

台湾への米国の急接近もその文脈で説明する人がいます。だから挑発に乗らないようにしよう、という話にはならず、そうなら米国から先に手を出させてやる、と言わんばかりの「戦狼外交」(挑発的、恫喝的、攻撃的な敵対外交を指す)で対抗するのが今の習近平政権です。

こういう局面で、今や世界は一寸先は霧の中に入ったといっても過言ではありません。

香港国安法が制定されば香港はどうなるでしょうか。「香港暴動」が仕立て上げられて、軍出動となるかもしれないし、そうならないかもしれないです。ただし、中国唯一の国際金融市場が消滅するのは確かです。多くの香港知識人や社会運動家やメディア人や宗教家が政治犯として逮捕の危機にさらされ、政治難民が大量に出るでしょう。

香港の旺角地区で、民主派デモ隊による道路封鎖を阻止する警官隊(2020年5月27日)
米英が香港国安法を批判するのは、中国の国家安全部が、これから、徹底的に香港民主派市民を人権も無視して弾圧することを知っているからです。中国は、香港問題は中国の内政問題と主張しています。

しかし国際法では、人権問題に絡む干渉などは内政干渉ではないとされています。ただし、国際法をこれまでも無視してきた中国にとっては、トランプの今回の声明は、内政干渉以外のなにものでもないようです。

台湾蔡英文政権は、それを見越して、政治難民の受け入れも想定した「可能な人道的援助」に言及しています。今年1月に再選を果たしてから、新型コロナ感染対応を経て、自信をつけた、蔡英文は見違えるほど頼もしくなりました。言うべきときに言うべきメッセージを国際社会に発しています。

つい先日もこのブログで主張したように、日米をはじめとする先進国は、台湾が香港を吸収する形で香港の国際金融都市としての役割を肩代わりできるようにすべきです。また、全体主義国家が常任理事国として名をつなれているような、国際連合(連合国)などは、捨て去り、新たな国際組織を設置すべきです。

従来は主に米中の戦いとみられていた米中冷戦ですが、香港情勢等を巡って徐々に対立軸がはっきりして来ています。今まで英国は、はっきり態度を表明していませんでしたが、さすがに香港の事になると、英国も銭より価値観を選ばざるを得なくなったようです。

英米加豪は対中国でまとまったので、後はEUと日本はどうするかという状況になってきました。日本とEUは、八方美人外交を続ければ、英米加豪に相手にされなくなる覚悟を決める時がやってきたようです。

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2020年5月29日金曜日

尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず―【私の論評】国賓来日をキャンセルし、尖閣の守備を固め習近平の野望を打ち砕け(゚д゚)!

尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず
デイリー新潮


尖閣諸島で最大の島、魚釣島「国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省」

ヘリコプターによる上陸作戦

 中国海警局所属の公船「海警」2隻が5月上旬に尖閣諸島の魚釣島領海に侵入し、付近の海域で操業中の日本漁船に接近した。以降、尖閣諸島周辺で日本領海へ接近・侵入する中国公船は、40日以上にわたって目撃された。 【写真】1日に何十人もの米兵と……【歴史の闇に葬られた「日本人慰安婦」たち】  そもそも、尖閣諸島を中国はどのように占領するつもりなのか? 以下に(問題点は多々あるにせよ、)考えられるシナリオを挙げることにする。

 尖閣諸島のどの島も周囲が岩場で囲まれているため、砂浜への上陸を想定しているエア・クッション艇(ホバークラフト)を用いての上陸は困難だろう。同様に陸自が保有するAAV7のような水陸両用強襲輸送車による上陸も難しい。このため、後述する漁船などの小型船の次に現実的な上陸手段は、ヘリコプターということになる。 

 尖閣諸島が海保、海自の艦船で包囲されていたとしても、「防衛出動」下令前であれば撃墜される危険がないため、最も現実的と思われるのは、ヘリコプターを用いたヘリボーンとなるだろう(ヘリボーンとは、ヘリコプターを用いて敵地などへ部隊を派兵する戦術)。

  ヘリボーンによる占拠の目的は、ヘリコプターで特殊部隊などの先遣隊を派遣し、後続部隊の大規模な上陸作戦を支援するための海岸堡の構築である。しかし、実際には後続部隊もヘリボーンということになるため、大規模な兵員の輸送は難しい。

  ヘリコプターにより、まとまった兵員が輸送され、自衛隊の上陸を阻止するための海岸堡を構築できたとしても、大量の武器、弾薬等の補給を自衛隊の上陸作戦が実行される前に終えておく必要がある。その術を考えるとなると、あまり現実的ではない。

  そもそも前提として、こうした作戦を実行するためには、尖閣諸島周辺の制海権と制空権を確保しておく必要がある。実行する揚陸艦および機動部隊が、海自艦艇や空自戦闘機による対艦ミサイルによる攻撃を受けることになるためだ。

  ただし、中国海軍艦艇にも対空・対艦ミサイルが搭載されているため、日本にしてみても、機動部隊を構成する艦艇全てを壊滅状態にすることは難しい。また、海自や空自にも損害が発生する。

  中国軍が制海権と制空権を確保するためには、海・空自衛隊を大きく上回る戦力を尖閣諸島周辺に投入する必要がある。中国軍が制空権を確保するためには、F-15戦闘機(201機)、F-2戦闘機(92機)のうち本土防空の任にあたる戦闘機を除いた、大半の戦闘機を戦闘不能にしなければならない。

  中国軍は空自のF-15に相当する第4世代の戦闘機であるのSu-27を75機、Su-30を73機、J-11を200機、J-10を270機保有している。このため、質だけでなく量でも中国が圧倒的に有利なように思える。

  だが、大量の戦闘機を一度に飛ばすことはできない。中国本土のレーダー基地では航空機が捕捉できない遠洋において作戦を行うためには、数機(後述するように、東シナ海以外でも戦闘が行われるため)の早期警戒管制機(AWACS)による支援が必要となる。作戦の内容によっては空中給油機も必要となるだろう。中国はこれを可能とするAWACS(KJ-2000)を5機程度保有している。

  中国軍は空対空戦闘および艦対空戦闘により空自の戦闘機を撃墜してゆくわけだが、空自の戦闘機だけが一方的に撃墜されるわけではない。中国の戦闘機も撃墜されることになる。海自のイージス艦により撃墜される戦闘機も多いだろう。

ゲリラ攻撃

「中国軍」としてではなく、漁民を装った海上民兵による上陸作戦が行われる可能性もある。これが最も現実的なシナリオかもしれない。
  民兵とは、退役軍人などで構成される準軍事組織で、正規軍の支援が任務。中国の海上民兵は約30万人とされ、常万全国防相は2016年7月末に浙江省海上民兵部隊を視察、「海の人民戦争の威力を発揮せよ」と訓示した。中国の建国初期に創設された海上民兵は、世界最大の漁船団で編制されている。近年は海上民兵の重要性が増し、建築資材の運搬から情報収集まで幅広い任務を果たすようになってきた。最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。 

 漁船1隻に海上民兵20~30人が乗船していると仮定する。200隻だと4000~6000人となる。海保の巡視船のみでこれに対応することが困難なのは、2014年に小笠原諸島周辺に集結した、200隻以上の赤サンゴ密漁中国漁船への対応を見ても明らかである。この時、海保は10人の中国人船長を逮捕したものの、あとの漁船は摘発することなく、領海から追い出すことしかできなかった。

グレーゾーンを突いた作戦

 あくまで「漁民」である以上、この作戦には軍事組織である中国海軍は直接的には参加しない。よって「有事」ではなく、「平時」における事態(日本政府の言うところのグレーゾーン事態)であるため、海自は手出しができないのだ。 

 このため、尖閣諸島に上陸した漁民を装った海上民兵を排除するには、日本の警察官と海上保安官を大量に派遣することになる。では、どのように海上民兵を排除するのか、その方法が問題となるだろう。  仮に武装した海上民兵が攻撃をしかけてきて、海保の対応能力を上回る事態とみなされた場合は、自衛隊は「海上警備行動」として武器を使用することが認められている。ただし、相手方と同等の武器しか使用できない(例えば、素手の相手に拳銃は使用できない)「警察比例の原則」が適用されるため、自衛隊が武力行使できない状態で尖閣諸島が占拠される可能性があるのだ。

  しかし、海上民兵にも弱点がある。長期間にわたり占拠するには、食糧や水の補給が必要となる。特殊部隊なみに訓練された海上民兵なら、蛇などを捕獲して食いつなぐことができるが、それにも限界があろう。長期にわたり「兵糧攻め」を行えば、海上民兵も投降せざるを得なくなるだろう。

もし占領されたら
 仮に、中国軍が尖閣諸島の占領に成功した場合、自衛隊は奪還作戦を実施することになる。しかし、防衛省が島嶼奪還作戦の目玉として導入したLCAC(エア・クッション艇)とAAV7(水陸両用強襲輸送車)は、尖閣諸島のような岩場で囲まれた島嶼への作戦には使用できない。この点は、中国軍が尖閣諸島へ上陸する際の問題点と全く同じである。

  ゴムボート等の小型船、あるいはヘリコプターを用いての上陸となるわけだが、海岸近くの海中には機雷が敷設され、海岸は地雷原となっている可能性がある。また、ヘリコプターによる降下を試みた場合、携帯式の地対空ミサイルで攻撃される可能性がある。機関銃や対戦車ロケット等による攻撃に晒され、組織的に上陸すら出来ないまま撤収することになる可能性も高い。

  このように、占領することよりも、奪還することのほうが大きな困難を伴う。  となれば、少人数の特殊部隊を夜間に上陸させ、ゲリラ戦を展開して中国軍を掃討するしかない。

日本海や西太平洋も戦場になる

 中国が尖閣諸島を狙うとなれば、戦闘海域および空域は、尖閣周辺だけでなく東シナ海全体、西太平洋、日本海にも広がることになる。東シナ海だけでなく、日本海や西太平洋(日本沿岸)も「戦場」とすることで、尖閣諸島周辺へ自衛隊の戦力が集中することを避けることになるからだ。また、米軍の戦力を分散するためにも、西太平洋と南シナ海での活動を活発化させるだろう。

  今回は尖閣諸島について述べたが、南西諸島などの離島を占領する場合も、同じように他の海域や空域で同時に戦闘が展開されることになり、自衛隊は戦力を集中させることが難しくなる。 

 例えば、中国東北部に配備されている空軍機が北朝鮮上空を通過して日本海へ進出してきた場合、空自の戦力の何割かは、日本海での作戦に投入されることになり、九州や沖縄へ投入することが出来なくなる。

  このように、中国が尖閣諸島をはじめとする日本の島嶼を占領するためには、広範囲かつ大掛かりな作戦を実施する必要がある。西太平洋や日本海へ艦艇や航空機を進出させ、訓練や情報収集を行う近年の中国軍の動きからは、こうした事態を想定していることが分かる。

  尖閣諸島周辺における中国公船の動向は、中国の軍事戦略の一端を示しているのだ。

宮田敦司/北朝鮮・中国問題研究家 週刊新潮WEB取材班編集 2020年5月29日 掲載

新潮社

【私の論評】国賓来日をキャンセルし、尖閣の守備を固め習近平の野望を打ち砕け(゚д゚)!

最近は、国内ではコロナ禍が話題となり、世界的には香港や台湾が大きな話題になっていますが、我が国固有の領土である、尖閣諸島への中国艦艇の侵入については、ますます深刻になっているにもかかわらず、あまり話題にもなりません。

沖縄県・尖閣諸島周辺で今月初め、中国海警局の公船が領海侵犯して、日本漁船を追い回すという異常事態が起きた。日本領海で他国が警察権を行使するなど、絶対に許してはならない。元海上保安官の一色正春氏は、中国公船による主権侵害や日本漁船が危険な目に遭った映像を、日本政府は国際社会に公開すべきだと訴えています。

一色正春氏

尖閣諸島については、多くの日本国民が、過去に何度も中国艦艇の侵入などがあったため、それになれてしまったようで、上記の危機的状況にあっても、あまり問題にする人はいなくなりました。マスコミも同じで、侵入の事実は報道するものの、それだけです。

確かに、現在の日本国民の最大関心事はコロナであり、現状ではコロナ禍による経済の落ち込みから、V字回復できるかが、最大関心事であることは当然といえば、当然です。

しかし、尖閣問題に関しては、本当に危険な状況になりつつあるのは、間違いないようです。

習近平は、2018年に憲法を改正(改悪?)してまで、終生主席の道を拓いたのですが、過去の主席と比較すると実績らしい実績がありません。習近平としては、自分の派閥は無論ですが、反対派閥の人間も認める大実績をつくりあげたいと考えています。

しかも、本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一等の大事業が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

習近平は、武漢肺炎の終息を世界で一番先に実施したことを、無理やり大偉業の一つにしました。しかし、これは元々武漢でのウイルス感染の事実がありながら、それを隠蔽したことが、中国全土への感染、ならびにパンデミックにつながったことは厳然たる事実です。

習近平としては、これを中国内ではあらゆる手段を用いて無理やり終息させたのですが、それは、多くの人民も知るところとなり、これだけでは、習近平の大きな手柄にはなりえません。

しかし、台湾統一自体は、米国の関与もあってかなり難しいものになりました。そうなると、尖閣諸島は台湾よりは与し易いです。であれは、今年中に習近平が何らかの手段で尖閣奪取に走る可能性は否定できません。

尖閣諸島を完璧に実効支配し、そこに南シナ海のように、中国の軍事基地を設置して、日本の沖縄侵攻や台湾侵攻への拠点とすれば、これは習近平の手柄となり、中国内での武漢ウイルスと合わせて、全党ならびに全人民を納得させるだけの効果となる歴史的偉業にできる可能性が大です。

これにさらに、日本が習近平の国賓としての入国を認め、天皇陛下と謁見できれば、完璧に習近平は終身主席としての地位を固めることができます。中国では、日本の天皇陛下に謁見したということは、かなりの権威付けになります。習近平は無論、これを狙っているでしょう。

マスクをした習近平

そのためか、日本を刺激しないようにする配慮もしています。実際、中国政府は国営メディアなどに対し、安倍首相への批判を控えるよう指示していたことがFNNの取材でわかりました。

中国外務省は、26日の会見で、25日に安倍首相が新型コロナウイルスが「中国から世界に広がったのは事実だ」と述べたことに反発していました。

しかし、この会見の数時間後、中国共産党系の「環球時報」は、「安倍首相は同盟国であるアメリカに配慮しつつ、中国を刺激することを避けた」などとする社説を掲載していました。

関係者によると、これは、中国政府が習近平国家主席の意向をふまえて、国営メディアなどに批判を控えるよう非公式に指示を出していたもので、米国と対立を深める中、日本との関係を悪化させたくないとの判断があったとみられます。

中国というか中共は、習近平に限らず、自国内部の都合で動きます、外交など二の次です。だから、外務大臣の地位も、日本などの先進国から比較すると相対的に低いです。

尖閣や、香港や台湾等に対する対応や、武漢肺炎ですら、自国内の都合で動くので、日米などの先進国からみると、対応が遅れたり、とてつもない火事場泥棒的なことでも平気で実施します。

普通の国の人間の感覚であれば、習近平が日本を国賓待遇で訪問して、天皇陛下に謁見したいというのなら、しばらくの間は尖閣への侵入をやめるなどのことをするのが当たり前ですが、中共は違います。

そもそも、米中冷戦だって、米国の知的財産を剽窃し、南シナ海を自分勝手に埋め立てて軍事基地化したり、武漢ウイルスも隠蔽した挙げ句に、全世界にパンデミックをもたらしました。

このような中国共産党は、まったく信用に値しません。日本としては、習近平を国賓として迎えるなどのバカ真似はやめるのは当然であり、尖閣諸島についても、忖度の土地も中国に奪取させるべきではありません。

尖閣防衛に関しては、米国のルトワック氏が数年前に日本に対して分析・提言しており、これは、現在でも十分に有効だと思います。それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国不法漁船を爆破 インドネシアが拿捕して海上で 「弱腰」から「見せしめ」に対応―【私の論評】ルトワックが示す尖閣有事の迅速対応の重要性(゚д゚)!
エドワード・ルトワック氏
この記事より、ルトワック氏が提唱する尖閣防衛の要諦を引用します。
どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に対応するべく準備せよというものです。 
日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。 
たちば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。
とにかく、ルトワック氏は、政府としては、政府の各機関が協調して動くようなことはせず、各機関が迅速に動くべきとしています。

政府としては、憲法解釈を変えるか、変えられないなら、「尖閣防衛臨時措置法」などを制定し、防衛省や他の官庁など、いざ中国が尖閣奪取に踏み切った途端に、互いに連絡をとりあい意思決定をするなどのことをしなくても、各部署が予め決めてあったとおり、独自に動き迅速に事を収めるのです。

これは、なぜなのでしょうか。ぐずぐずしていたら、「手遅れ」になるからです。ここで肝に銘じておくべきなのは、
「ああ、危機が発生してしまった。まずアメリカや国連に相談しよう」
などと言っていたら、島はもう戻ってこないということだ。ウクライナがそのようにしてクリミア半島を失ったことは記憶に新しい。(『中国4.0』p152)
安倍総理は、「人民解放軍が尖閣に上陸した」と報告を受けたとします。「どうしよう…」と悩んだ総理は、いつもの癖で、アメリカに相談することにしました。そして、「国連安保理で話し合ってもらおう」と決めました。そうこうしているうちに3日過ぎてしまいました。尖閣周辺は中国の軍艦で埋め尽くされ、誰も手出しできません。

米軍は、「ソーリー、トゥーレイトゥ」といって、動きません。国連は、常任理事国中国が拒否権を使うので、制裁もできません。かくして日本は、尖閣を失いました。習近平の人気は頂点に達し、「次は日本が不法占拠している沖縄を取り戻す!」と宣言するなどという悪夢のようなことにもなりかねません。こんなことにならないよう、政府はしっかり準備しておくべきです。

安倍政権は、現在はコロナ制圧に大成功し、コロナ対策の第二次補正予算では、真水の対策を大幅に増やしました。コロナで大失敗し、本当はかなりの犠牲者を出し、経済がガタガタの中国とは根本的に違います。

ここで、気を緩めることなく、追撃戦に入り、習近平の国賓待遇での日本訪問を中止し、実践的な尖閣防衛計画を立案し、中国が尖閣奪取に走った場合は、緒戦でこれを叩き、習近平の野望を打ち砕くべきです。

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2020年5月28日木曜日

コロナで分かった中国より優れたパートナー台湾―【私の論評】国際金融センターは不安定な香港から台湾に移せ(゚д゚)! 

コロナで分かった中国より優れたパートナー台湾

岡崎研究所

 国際社会は、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックへの対処ぶりを見て、中国共産党独裁体制の隠蔽、脅迫の体質を改めて認識させられた。それとは対照的に、台湾に根付いた民主主義下での透明性と説明責任のある統治は、中国と異なる台湾の存在を明確に印象付ける結果をもたらした。


 中国大陸との間で貿易、投資、旅行者、留学生交換など多くの面で近い関係にある台湾において感染者数、死者数が極めて低いレベルに抑制されていることは、台湾での対応が見事なまでに的確かつ効率的であったことを示している。

 台湾当局の対処ぶりについては、いくつかの特徴のなかでも、きわめて初期の段階において中国との人的交流を遮断したことが特筆されよう。中国から台湾への入国者を全面的に禁止し、同時に、中国滞在の個々の台湾人の帰国を制限し、台湾指定の飛行機を派遣し、受け入れた。また人的隔離政策を徹底させ違反者には罰金を科した。陳時中保健大臣は頻繁に記者会見し、きわめて懇切丁寧に感染状況などを市民に説明した。これら台湾における対処ぶりは、武漢において初期段階での隠蔽工作などに警鐘を鳴らした中国人医師たちを摘発した中国共産党政権とは全く異なったアプローチであったといえる。

 台湾はWHOに対し、すでに昨年12月31日の段階で、武漢において感染者が出ているという情報を通報し、関連情報の共有を希望するとの連絡をおこなったが、WHOはこれを無視し、「習近平体制下の中国はよく感染拡大を防ぐため尽力している」と述べた。

 中国は、感染の世界的拡大は中国から始まったにもかかわらず、ウィルス抑制の成果を誇示している。とりわけ初期の情報開示に問題があったことは歴然としているにもかかわらず、自らを被害者であるとの姿勢を貫き、反省の色を一切見せないばかりか、情報戦を行う構えを見せ、「マスク外交」を展開しつつある。中国に新型コロナウイルスの発生源についての透明性などを求める国に対しては、経済的不利益を示唆するなど恫喝的言辞を投げかけたりもしている。

 新型コロナ、SARSなどの対処に当たって、優れた知識と経験を有する台湾がWHOのメンバーになる資格を有することは今更強調する必要もないだろう。日本としては、従来一貫して、台湾のWHO加盟を支持しているが、具体的にこれを進めるための支援が期待されている。今回のパンデミックの拡大のなかで、WHOがいかに偏向しているかが明白になった。WHOの組織の在り方を見直すことに絡めて、台湾のメンバー加入の問題を見直すことが喫緊の課題となってきたといえよう。5月18日から開かれたテレビ会議方式でのWHO総会にも、各国からの台湾のオブザーバー参加の要請にもかかわらず、結局、台湾は招待されなかった。なお、馬英九・国民党政権時代には、WHOはあらかじめ中国の了承を得た上であろうが、WHO総会へのオブザーバーとして台湾の参加を認めたことがあるが、蔡英文・民進党政権になってこの方式もとりやめた。当時のWHO事務局長は、香港出身のマーガレット・チャンである。

 さらに、WHO加盟に加え、自由・民主主義体制下にある台湾を環太平洋経済連携協定(TPP)の一員として参加させるということは、日本をはじめTPPメンバー国が直面する次なる課題であろう。台湾がアジア・太平洋において占める地政学上の位置、台湾経済のもつ重要性、そしてなりよりも自由で民主的な政治体制からみて、台湾はTPPの一員になるにふさわしい条件をすべて整えている。日本とTPPのこれまでの関与ぶりから見て、日本としては台湾の加盟を支持するうえで主導的役割を果たすことが期待される。

 ワシントンポスト紙コラムニストのロウギンは、5月7日付けの論説‘The pandemic shows why Taiwan is a far better partner than the People’s Republic’において、「今回のパンデミックは中国が全く信用できないパートナーであることを強く示した。われわれは、代わりとなる『中国モデル』(つまり、台湾)があることを認める時期だ」と指摘している。このロウギンの指摘は、決して言い過ぎではない。

【私の論評】国際金融センターは不安定な香港から台湾に移せ(゚д゚)! 

米国では、中共(武漢)肺炎拡散の責任を問う裁判での賠償金の支払いを担保する方法として、中国が保有する米国債の凍結が議論されています。

幸か不幸か、日本国債の保有者の大部分が日本国内の機関投資家等ですが、日本の土地を中国勢が買いあさっていることは周知の事実です。特に、北海道は静岡県を超える程度の土地が中国資本によって買い漁られているという始末です。


共産主義中国では、土地は国有ですから日本人は中国の土地を所有できないです。50年などの長期で借りているだけなのです。これは、中国国民も同じです。中国人は、中国では土地を購入できないのですが、日本では購入できるのです。

これはあまりに不平等です。日本人が中国の不動産を保有できるようになるまでは「対等条件」を主張すべきです。日本において「土地が国有の中国などの国の外国人」が購入した場合は、50年後にその土地を国有化できるようにすべきです。

もし、これに中国人民の不満があれば中国人民は中国共産党に外国人の土地の私有化という「平等な条件」を認めさせるべきです。

実際、大陸中国で混乱が発生した場合は、建物などを含む日本企業資産の没収が行われる可能性が高いですから、日本もこれに対抗措置ができるように法整備を行うべきです。

日中間の歴史問題に対して欧米では関心が薄く、その間隙をぬって、中国人による日本人大虐殺=「通州事件」を無視して、ほとんど証拠がないいわゆる「南京大虐殺」などを騒ぎ立てるプロパガンダが行われました。あろうことか、これに米国も加担しました。

    南京大虐殺だとされた写真の元写真 拡散中の写真は上部文章を故意にカットさ
    れました。-『土匪之為メ虐殺サレタル鮮人ノ幼兒』とあり万宝山事件周辺の
    満州人と朝鮮人の抗争被害者と思われます。
しかし、今回の武漢肺炎によって、共産党発表の欺瞞が世界中の人々に明らかになりました。事情が分からずに、中国共産党の言い分をうのみにして日本を非難していた人々も目を覚ましたはずです。
特に米国は、「コロナウイルス米国発」の中国のプロパガンダや、火事場泥棒が消防士のように振る舞う、中国のマスク外交などには、嫌気がさしたようです。米国も、中国の執拗なプロパガンダの嫌らしさに気づいたようです。

世界中の人々が、中国共産党の実像を理解した今こそ、日本は中国に対して「断交」も含めた「厳しい態度」で臨むべきです。今回は、第二次世界大戦後とはうってかわって、世界中の先進国が日本の後押しをしてくれるはずです。

ナチス・ドイツと手を組んだ戦前の過ちを繰り返しすべきではありません。日本は、第2次世界大戦で組む相手を間違えて、戦後75年間も苦しみました。

現在の中国共産党は、少なくとも米国ではナチス・ドイツ同様「人類の敵」として扱われています。また、武漢肺炎で苦しんだ国々でも反発が高まっています。

そうして共産主義中国は「1つの中国」を強調しますが、中国が1つしかないのであれば、ポツダム宣言に参加したことなどの歴史的正当性から、「中華民国=台湾=民主主義中国」がそれに該当します。

今米国が目指しているのは、明確に中華民国(台湾)が1つの中国であった「米中国交正常化」の前の世界です。1つの中国である中華民国(台湾)と国交を結べば、中華民国を暴力で追い出して成立した共産主義中国とは断交することになります。

また、日本にとって本当に大事なのは、台湾と華僑である。共産主義中国の奇跡の成長の原動力は実は彼らなのです。共産党幹部を中心とした中国大陸の人々は、その果実を奪っただけなのです。

そもそも、台湾や華僑の人々は主に共産主義者による「暴力革命」の魔の手から逃亡してきた人々の集団です。どちらをとるべきかは明らかです。

日本はそれほど遠くない将来に「決断」を迫られるはずです。

東西冷戦は、資本主義と共産主義の対立とされましたが、今始まったばかりの第2次冷戦は「民主主義」対「反民主主義」の対決といえます。

最終的には米国・英国を中心とした「ファイブアイズ」(重要軍事情報を共有するUKUSA協定を締結している米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの5か国)が勝利するはずですから、日本も安倍首相が上手にまとめたTPP11を土台にこれらの国々と親密な関係を保つべきです。

逆に、巨大な「反民主主義国家」である共産主義中国とは早急に断交すべきです。中共武漢肺炎対策で、中国からの入国が規制されている今が最大のチャンスかもしれないです。

このような中、台湾総統蔡英文氏は27日午後に台北市内で記者団の取材に答えました。「自由と民主を追求する香港人の決意を支持する」「台湾での居住や労働などで必要な支援を行う」と表明した。蔡氏は行政院(内閣)に具体的な施策の策定を指示したと明かしました。

香港人が台湾で一般の居留許可を得るには「台湾で600万台湾ドル(約2200万円)以上の投資を行う」などの条件をクリアする必要があります。こうした条件を再考し、受け入れをしやすくする可能性があります。

香港では2019年6月から政府への抗議活動が激化し、台湾など海外への移住希望者が増えました。台湾では19年に、香港人への居留許可の件数が前年比41%増の5858件となりました。20年1~4月は2383件と前年同期の2.5倍となりました。

「香港国家安全法」の制定方針が示されたことで、台湾では中国への警戒感が一段と強まっています。蔡総統が主席を務める対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)は香港民主派と交流があり、中国側は両者の連帯に神経をとがらせています。

もし国際金融都市で自由都市である香港が消滅するのであれば、台湾が香港を吸収する形で香港の役割を肩代わりできるようにすべきです。

台北国際金融センター「台北101」 クリックすると拡大します

米国や英国、日本、EU、オーストラリアあたりが本気で協力すれば、台湾を正式メンバーとして組み入れた国際社会の枠組みを再構築することもできます。

そうすれば、中国は香港という金融の拠点を失い、世界は台湾という新たな金融の拠点を得ることになります。それは、これからのアジアや世界の発展に寄与することになるでしょう。

大陸中国がいつまでも、共産党一党独裁の今の形で継続するとは考えられません。いずれは体制を改めるか、中国が分裂し、分裂した国々のいくつかは、民主的な道を歩もうとするかもしれません。

その時こそ、台湾が国際金融センターとして本領を発揮すれば良いのです。本来であれば、香港が国際金融センターとして機能するはずでしたが、大陸中国はそれを放棄しようとしています。台湾が国際金融センターになることは、十分に可能であると考えます。民主化する新民主中国にも多いに寄与することになるでしょう。

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