2021年1月26日火曜日

【日本の選択】バイデン大統領就任演説の白々しさ 国を分断させたのは「リベラル」、トランプ氏を「悪魔化」して「結束」はあり得ない―【私の論評】米国の分断は、ドラッカー流の見方が忘れ去られたことにも原因が(゚д゚)!

 【日本の選択】バイデン大統領就任演説の白々しさ 国を分断させたのは「リベラル」、トランプ氏を「悪魔化」して「結束」はあり得ない

トランプ前大統領はアメリカを分断した「悪魔」だったのか

 ジョー・バイデン氏が20日(日本時間21日未明)、第46代米国大統領に就任した。多くの「リベラル」メディアは、バイデン大統領誕生を歓迎しているような様子である。だが、私は素直にこの大統領の就任を祝う気になれない。「リベラル」という病が米国、そして日本を蝕(むしば)んでいるように思えてならないからだ。

 就任演説を読むと「民主主義」を11回、「結束」を8回も呼びかけている。私が注目したいのは「結束」の部分だ。例えば、次のような表現がある。

 「大統領に就任した今日、私は米国を1つにすること、国民、国を結束させることに全霊を注ぐ。国民の皆さんに、この大義に加わってくれるようにお願いする。怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病、そして、職と希望の喪失という共通の敵と戦うために結束すれば、素晴らしく大切なことを成し遂げられる」

 あまりに白々しいセリフだと思うのは、私だけだろうか。

 ドナルド・トランプ前大統領が米国を「分断」させた。だからこそ、バイデン氏は「結束」を強調すると言いたいのだろうが、それほど単純な話ではないだろう。

 真剣に考えてみて、実際に米国を分断させたのは誰なのか?

 米国国民というアイデンティティーを否定し、さまざまなマイノリティーのアイデンティティーを過度に強調してきたのは「リベラル」ではないのか。

 民族的、性的マイノリティーの人権を擁護するのは当然だ。しかし、彼らの人権のみを過度に強調し、米国の庶民を敵視するような風潮がなかっただろうか。こうした米国を分断させる「リベラル」への憤りの念が、トランプ氏への支持につながっていたのだろう。

 ツイッター、フェイスブックといったSNSは、トランプ氏が米連邦議会議事堂襲撃を煽ったとしてアカウントを停止した。「言論を封殺した」という指摘もある。

 常識に立ち戻って考えてみるべきだ。こうした言論の統制が「結束」をもたらすはずがない。自らの意見を表明することすらできないとの大衆の憤りの念は、米国内の分断を深めるだけだ。

 私はトランプ氏を熱烈に支持した一人ではない。日本の国益を第一に考える愛国者として、その外交感覚には危うさを覚えていた者である。だが、彼を「悪魔化」してしまうことを憂慮している。トランプ氏、そしてトランプ支持者を悪魔のように扱うことによって、米国の「結束」が甦(よみがえ)ることはあり得ないからだ。

 「リベラル」は、国民としてのアイデンティティーを否定することが、知的に洗練されたことであるかのようにみなす。

 だが、これは間違いだ。国家なくして人権の擁護はあり得ない。国民としてのアイデンティティーを取り戻すことこそが肝要なのだ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。

【私の論評】米国の分断は、ドラッカー流の見方が忘れ去られたことにも原因が(゚д゚)!

冒頭の岩田氏の記事にもあるように、バイデンは就任演説で、「大統領に就任した今日、私は米国を1つにすること、国民、国を結束させることに全霊を注ぐ。国民の皆さんに、この大義に加わってくれるようにお願いする。怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病、そして、職と希望の喪失という共通の敵と戦うために結束すれば、素晴らしく大切なことを成し遂げられる」と述べました。



では、具体的にはどうすれば、その結束や団結が達成できるとバイデンは考えているのでしょうか。バイデンは就任演説で「対峙しなければならず、打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロがある」と明確にし、「私たちが直面する敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」という言葉を用いながら、「事実そのものが操作されたり、捏造されたりする文化を拒否しなければいけない」と言明しました。

これは、すべての聴衆にとり、バイデン氏の「打ち負かすべき敵」が誰を指していたのかは明々白々でした。それは、非リベラルであり、トランプ陣営であり、陰謀論者であり、ツイッターやフェイスブックにアカウント停止されるような人々です。つまり、民主党やリベラルエリートの政敵です。

バイデン氏のメッセージに「結束」「団結」と、「打ち負かすべき敵との対峙」が矛盾する形で混在しています。バイデン氏は、自らの政敵であるトランプ陣営に対する戦いに国民を「参戦」させ、同じ敵を叩くことにより、彼が意図する「結束」と「団結」がもたらされることを説いているのです。

事実、バイデンは、「私の魂のすべては、米国をまとめること、国民を一つにまとめること、この国を結束させることにある。すべての国民に、この大義に参加してもらいたい」と支持を訴え、同時に、非リベラルやトランプ支持派を意味する「打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロ」「敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」の打倒を誓っています。

これでは、岩田氏も語っているように、トランプ氏やその支持者を「悪魔化」して「結束」を解いているのであって、米国民の結束を説いているのではないのは、あまりにはっきりしすぎています。だから、白けるのです。

今回の選挙で、トランプ支持者が、極少数派であったとすれば、あるいはこれでも良かったかもしれません。しかし、今回の大統領選挙では実にトランプ大統領7100万票も獲得しているのです。これは、決して少数派とはいえません。半分近くが、トランプ大統領を支持したのです。

この分断を招いたのはトランプだと言う人も多いですが、元々米国社会は分断していましたし、特に90年代以降においては分断の原因は、“リベラル”といわれる側にありました。

経済的な格差が拡大する中、リベラル派が多文化主義やマイノリティなどの問題に入れ込みすぎて、ラストベルトと呼ばれる地域に住む白人労働者層を包摂しなくなっていってしまいました。

民主党オバマ政権は明らかに失敗し、ラストベルトや南部の白人を置いてきぼりにしてしまいました。


"Yes We Can"の兵庫に代表されるように、圧倒的な陶酔感の中で現れた「国民統合」の象徴がオバマでしたが、就任してからは、皮肉なことに国民が徹底的に分断してしまいました。2008年の大統領選挙で国民統合を訴えたオバマが「国民を分裂させた大統領」になってしまったのはたまらない皮肉です。

そこにトランプが出てきて、“俺が支えるぞ”と力強く言ったので、多くの人がこれを支持したのです。いわば民主党やリベラル派に対する失望、絶望がトランプ大統領を生んだのです。

今は米国でも日本でも、“リベラル”と呼ばれるものがリベラルではなくなっているようです。例えばメリトクラシーの問題です。要するに、アメリカンドリームというものがあるのだからこどもたちに勉強させましょう、そうして頑張ればチャンスを与えよう、というもので、共和党も民主党も同じようなことを言っています。

確かにチャンスを与えることは大切です。しかし、そもそも勉強できるような家庭環境ではなかったり、本を読むような環境がなかったりと、意欲さえも持てずに貧困から抜け出ることができない子ども大勢います。

大人でさえ、“頑張ればできる”と言われても、“今さら俺は頑張れないよ”という人たちがいるはずです。そういう人たちにも目を配り、包摂するのが真のリベラルのはずです。しかし、民主党を支持する高学歴エリートそのようなことには無頓着のようです。

 これが、90年代以降の欧米が抱えている問題です。これを解決しない限り、米国の分断は収まりません。

そうして、バイデンはこの問題を解決できないでしょうし、トランプ大統領もこれに対処しようとはしていたのですが、根本的な解決方法はみいだせないままのようでした。

私は、意外とこの問題はAIが解消する可能性があるのではないかと思っいます。多くの人はAIに既存の仕事が奪われることを心配しています。しかし、そうとばかりはいえないと思います。

AIに関しては、夢物語とも脅威とも受け取る人が相半していると思います。しかし、これについては正しい認識をすべきでしょう。

AIに関しては、私自身は簡単なブログラムなら学生のときに作成したことがあります。それで、わかったのですが、結局のところAIも人がブログラミングしないと何もできないということです。

高度に発達したAIでは、それこそ、医師や弁護士などが頭の中で実施しているような、様々なことができますが、いくら高度であっても、手順が決まったものでないとできません。そのかわり、手順の決まったものなら、かなり高度なものでもできます。

先日このブログでGoogleのコロナ感染者の予測の例をあげましたが、この予測ではAIが活躍しています。ただし、このAIが実施しているのは、古典的な微分方程式を解くことです。初期条件を与えれば、AIが微分方程式を解いてくれるのです。

初期条件として与えるのは、その時々でコロナ感染者数のみです。実行再生産数などは考慮していません。その時々のコロナ感染者数の増減の速度には、病院の状況や、ワクチンの有無とか、薬の有無や有効性など諸々すべてが含まれていることとを前提として方程式が組まれています。

そのため、大雑把な傾向を知るには十分に役立ちますが、正確無比ということはあり得ません。しかし、それでも役に立っています。そうして過去の予測の状況をみると確かに大雑把な傾向はつかめます。

過去には、この微分方程式は人が解いていたのですが、AIにそれを実行させると、人間よりはるかに短い時間でできますので。日々頻繁に更新できます。これは、人間にはできないことです。

このようなAIはたとえば、保険数理士などの仕事はすぐに任せられるでしょう。ただし、人間が最終的に確認するので、人が全くいらなくなるということはないでしょうが、それにしても、一人の保険数理士が多数の計算をこなすことになるでしょうから、現在のような人数の保険数理士が必要ではなくなるのは確実です。

このようなことは、今までいわゆる知識労働といわれた職業にすべてあてはまるでしょう。企業のマネジメントや弁護士や医師も例外ではなくなるでしょう。とにかく、手順が決まっていることについては、ほとんどがAIが実施することになるでしょう。

ただ、全く新しいく、手順化されていないものは、AIは無理です。ただし、既存の手続きまではAIが実施し、その後手順化されていない部分のみ人間が実行することになるでしょう。

そうなると、何が起こるでしょうか。かつてのラストベルトや南部の白人がおいてきぼりを食らったように、民主党支持派を含むすべてのいわゆる高学歴エリートがおいてきぼりを食らうことになるのです。

その時になってはじめて、高学歴エリートは、ラストベルトや南部の白人の気持ちが理解できるようになるかもしれません。

ただし、ラストベルトや南部の白人をおいてきぼりにしない方法もあります。それは、トランプ大統領が実施したように、中国からの輸入品に関税をかけることでは、根本的には解決できません。無論、トランプ大統領が中国と対峙したのは間違いではありませんが、それでは米国内の問題を根本的に解決することはできません。

AIにできることとして、手順の決まったことであれば、教育の機会均等ということがあげられます。人間であればできないことがAIにはできます。それこそ、一人の子供朝から晩までつききっきりで無理なく、教育をするということさえ可能になります。そうして、こうした道具を主体的に利用できる人を育てることができれば、教育の格差は解消されることになるでしょう。

そうなると、誰もが自分の強みと弱みをかなり早い時期から認識して、強みを伸ばすことができます。多くの人が強みに特化すれば、それだけで世の中は変わるでしょう。

ドラッカーは人の強みについて以下のように述べています。

誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思う。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし、何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。(『プロフェッショナルの条件』)

ドラッカーは、この強みを知る方法を教えています。“フィードバック分析”です。なにかまとまったことを手がけるときは、必ず9ヵ月後の目標を定め、メモしておきます。9ヵ月後に、その目標とそれまでの成果を比較します。目標以上であれば得意なことであるし、目標以下であれば不得意なことです。

ドラッカーは、こうして2~3年のうちに、自らの強みを知ることができるといいます。自らについて知りうることのうちで、この強みこそが最も重要です。

このフィードバック分析から、いくつかの行なうべきことが明らかになります。行なうべきではないことも明らかになるといいます。

AIを用いれば、子どもの頃から、そうして大人になっても、詳細なフィードバック分析ができるでしょう。さらにその時代に適応して、自らが最も強みが発揮できるのは何であるかも知る手立てができるようになります。そための知識も、無理なく得られるようになります。

地理的にも自国内はもとより、世界中で、自分の強みを発揮できる地域を特定できるようになるでしょう。そのように考えると、AIは使い方によっては、人にかつては考えられなかったような多様で奥行きの深い様々な機会を提供するようになるでしょう。

しかし、使い方を誤れば、米国のラストベルトや南部の白人のように打ち捨てられる人を増やすことになります。

基本的な考え方としては、テクノロジーでも政治でも、経済でもすべてが社会を良くするため存在しているということを忘れないことだと思います。ただし、これは無論社会主義をすすめることではありません。

わたしたちが異質な新しい社会に入ったことがはじめて明らかになったのは、イデオロギーとしてのマルクス主義と社会システムとしての共産主義の双方の崩壊によってでした。ところが、社会システムとしての共産主義を破壊したのと同じ力が、資本主義も老化させつつあると認識すべきです。

その力は何かといえば〝知識〟です。「基本的な経済資源、すなわち経済用語でいうところの『生産手段』は、 もはや、資本でも、天然資源(経済学の『土地』)でも、『労働』でもありません。それは知識となったのです。そうして、AIはその知識を生産的に効率的に使うためのツールなのです。

ドラッカー氏

「知識」が反資本主義でも、非資本主義でもないドラッカーがいうところの、「ポスト資本主義社会」という新しい〝知識社会〟を誕生させたのです。現在では、知識の仕事への適用である『生産性』 と『イノベーション』によって価値は創造されるのです。そうして、これからの最も重要な社会勢力が、〝知識労働者〟〝テクノロジスト〟になったのです。
きわめて多くの知識労働者が知識労働と肉体労働の両方を行う。そのような人たちをテクノロジストと呼ぶ。テクノロジストこそ、先進国にとって唯一の競争力要因である」(『明日を支配するもの』)
現代社会はすでに、知識に裏付けられた技能を使いこなす者が無数に必要とされるようになったのです。それは技能者というよりも、「テクノロジスト」です。ドラッカーは、若者のなかでも最も有能な者、知的な資質に最も恵まれた者、最も聡明な者にこそ、テクノロジストとしての能力を持ってほしいと語っていました。

先進国の一員であり続けたいのならば、米国がものづくりから離れるなど、もってのほかでした。純粋の知識労働者を持つだけでは、最先端を進むことは不可能だからです。ものづくりこそ、重要なのです。それに気づいたトランプ氏はその点では、優れていたと思います。

物理学、生化学、高等数学の知識について国境はありません。たとえばインドは、その貧しさにもかかわらず、質量ともに、世界最高水準の医師とコンピュータープログラマーを擁します。他方で知識の裏付けはないですが、低賃金でも働く肉体労働者は途上国に豊富に存在します。

じつは、従来は、テクノロジストによる競争力優位を実現していたのはかつて米国だけでした。
テクノロジストについて体系的で組織だった教育が行われているのはごくわずかの国でしかない。したがって今後数十年にわたり、あらゆる先進国と新興国においてこのテクノロジストのための教育機関が急速に増えていく。(『明日を支配するもの』)
本来米国では、テクノロジストを育てていくべきだったのに、それを怠ってしまったのが、失敗の本質だったと思います。

テクノロジストが大勢育っていれば、そうしてサンベルトや南部の白人たちが、テクノロジストに転換していれば、大きくて深刻な分断は起こらなかったはずです。というより、ある程度の分断は、互いに競い合うということで、決して悪いことではないと思うのですが、米国の分断は度が過ぎます。

トランプの取り巻きの中にも、ドラッカーの教えを熟知して指南する人もいなかった違いありません。もしそのような人がいれば、トランプ氏のやり方も随分変わったかもしれません。トランプ氏は実業家であるので、ドラッカー流の考え方はかなり受け入れやすかったに違いありません。

そうして、ドラッカー流のマネジメントは、あらゆる組織にあたはまります。政府も例外ではありませんし、ドラッカーはいずれ、政府の本来の仕事は統治であり、それ以外に関する機能は外に出すべきであるなどの革新的な提言も行っていました。

なぜ顧みられなくなってしまったのでしょう。一昔前だと、米国でもドラッカー流の経営学は、第一線の経営者に熟知され、敬愛されていましたが、現在は残念ながら、ドラッカー流の経営学は、米国の主流の経営学者からは忘れさられ、因果関係や数理的な分析ばかりが主流となり、経営者でも昔のように信奉する人は少なくなってしまったからでしょう。

日本の経営学者でも、ドラッカーは時代遅れなどと言う経営学者もいますが、はっきりいいますが、そのような人はそもそもドラッカーの書籍などの読み込みが少なすぎるのではないでしょうか。因果関係一辺倒で、ドラッカー流の見方をできない経営学者を私は信用していません。そういう学者には私はこういいたいです。「実際に会社の経営をしてみろ!そこまでいかなくとも、少なくとも業績が良く、かつまともな企業の経営者のことを仔細に観察せよ!」と・・・・・。

そのためもあって、私はかつてはドラッカーの論文が掲載されていてよく読んでいたハーバード・ビジネス・レビューなども読まなくなってしまいました。しかし、今でもドラッカーの著書は折に触れて読んでいます。そうして、その時々で新たな発見があります。

これは、やはりドラッカーがあまりに偉大すぎて、ビジョナリー・カンパニーの著者ジム・コリンズは例外として、目立った継承者がいなかったということにも原因があると思いますこれに対して、日本では元々ドラッカー流の経営学が受け入れられる素地があったのだと思います。

このような風潮が米国の競争力を従来よりは、低下させてしまったのだと思います。同じころ、日本では平成年間のほとんどを財務省が緊縮財政に走り、日銀が金融引締一辺倒に走り、日本も競争力を低下させてしまいました。

トランプ氏もバイデン氏も今一度、ドラッカーの主張に耳を傾けてほしいものです。日本では、ドラッカー流の見方は今でもある程度根付いているようですが、マクロ経済についてもっとまともな議論ができるよう素地をつくるべきと思います。

米国でも多くの人が、ドラッカー流の見方も考慮に入れて、政治を見ていれば、今日のような深刻な分断はなかったのではないかと思い、残念な気持ちになります。

日米ともに、ドラッカー流の経営学という先達の考え方を大切にし、さらに発展させていくべきと思います。

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2021年1月25日月曜日

【産経・FNN合同世論調査】若者や学生からの支持高く 施策奏功か―【私の論評】GOTOトラベル、緊急事態宣言の次はワクチンとオリンピックで中高年層の心を蝕むマスコミの手口(゚д゚)!

【産経・FNN合同世論調査】若者や学生からの支持高く 施策奏功か

菅総理

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が23、24両日に実施した合同世論調査では、若者世代で菅義偉(すが・よしひで)内閣の支持率が高かった。新型コロナウイルスのワクチンへの期待に加え、携帯電話料金の引き下げなど若者をターゲットにした施策を積極的に打ち出していることも、支持率向上に影響したとみられる。

 年代別の内閣支持率を見ると、「支持する」と回答した20代は62.7%に上り、「支持しない」の31.7%を大きく上回った。「支持しない」の回答で最も多かったのは60代の51.7%で、次いで70代の51.6%となった。

 職業別では、「支持する」と回答した学生は68.1%となり、正規、非正規雇用、自営・フリーランスからの回答は、いずれも過半数を占めた。「支持しない」との回答が最も多かったのは主婦・主夫だった。

 ただ、内閣支持率の高い若者世代も政府の新型コロナ対策に関する評価は厳しい。「評価する」は男性20代で36.9%、女性20代で33.9%と低調。「評価しない」は男性20代が61.4%、女性20代が66.1%となった。

山田太郎参議院議員

 これまで、首相は若者世代の将来の負担上昇を防ぐために、75歳以上の医療費窓口負担について所得基準を単身世帯の年収「200万円以上」と改めるなど、若年層を狙った施策が相次いでいる。24日にはインターネットに詳しい自民党の山田太郎参院議員から発信力強化に向けた助言を受けるなど、若者への支持拡大に余念がない。

【私の論評】GOTOトラベル、緊急事態宣言の次はワクチンとオリンピックで中高年層の心を蝕むマスコミの手口(゚д゚)!

菅内閣の支持率等のグラフ等、詳しい内容については以下の記事を御覧ください。


さて、上の記事では、「年代別の内閣支持率を見ると、「支持する」と回答した20代は62.7%に上り、「支持しない」の31.7%を大きく上回った。「支持しない」の回答で最も多かったのは60代の51.7%で、次いで70代の51.6%となった」とあります。

どうしてこうなるかといえば、やはり若者は、ネットを情報源にしているからでしょう。若者というと、SNSなどを思い浮かべがちですが、多くの若者は、SNSだけではなく、厚生労働省等が出す資料なども見ています。私の身の回りでも、若者はそのような傾向がありますが、40歳代以上は、テレビなどが情報源になっている人が相変わらず多いです。

千人あたりの、感染者数と重傷者数をグラフにすると、以下のようになります。やはり、日本が世界で最も少ないです。


そもそも、テレビなどではいたずらに恐怖を煽っていて、なにやら最近は感染者数が増えて、破滅的な状況にでもあるような報道ぶりです。

しかし、冷静に元データにあたるようなことをすれば、日本だけが感染者や死者が増えているのではなく、他国も増えており、むしろ日本は少ない状況にあることがわかります。

そうして、以前もこのブログに掲載したのですが、南半球では昨年の夏(北半球の冬にあたる)には感染者が北半球に比較して増えましたが、最近は減少傾向です。

このようなことをみれば、日本の最近の感染者数が増える傾向は、元々感染学者が警告していたように、冬になって気温が下がり、乾燥したからというのが妥当な見方です。GoToトラベルが感染者を増やしたとか、政府の自粛勧告が手遅れだったと考えるのが妥当といえるようなデータは見当たりません。

昨年「GoToトラベル」について、マスコミは止めろとの大合唱でした。ちょうど同じころ、韓国では、GoToトラベルのような事業は展開していないにもかかわらず、日本のように感染者が増えていました。それは、当然とといえば当然で、GoToトラベルによる人の移動は全体の1%程度しかなく、コロナ感染拡大の「元凶」になっているとは言いがたいものでした。

しかし、理不尽なことにマスコミは止めろと大合唱していました。政府は、それを受けて「とりあえず」止めたようです。感染が止まればそれでよし、止まらなければGO TOは無関係とわかるのでよし、だったのでしよう。

そうして、GoTOを政府がやめると、一方でマスコミは「観光が大変だ」と、まるでマッチポンプのような報道を続けました。GoToを止めても感染者増加したため、ハッキリ言ってマスコミの主張はデタラメだったということははっきりしましたが、マスコミは全く反省していません。

昨年12月はじめの新型コロナ対策についても、マスコミは「大きすぎる」と批判しました。その後の新型コロナ対策を見据えたものだったのですが、マスコミは全く先も見えず、無意味なから騒ぎばかりして、テレビや新聞の視聴者や購読者を脅しつづけています。

それどころか、今年1月に政府が出した緊急事態宣言について、マスコミは「遅すぎるし、支援が少ない」とまで批判しました。これは、流石に異様です。

これについては、高橋洋一氏が「医療崩壊を防ぐために…3月までに使える「9.3兆円」活用が日本を救う 重要なのは「アメとムチ」のバランス」で、マスコミの小鳥脳(少し前のことも覚えていないこと)と批判していました。

日本のコロナ対策のための、財政出動はGDP比でみても世界最高レベルです。海外から見れば、日本は感染が少なく経済も痛んでいません。それは、下のグラフ(20201018FinacialTimesのグラフ)をみれば一目瞭然です。


このグラフの横軸は、100万人あたりの死者数です。縦軸はGDPの落ち込みです。日本は先進国の中ではかなり健闘していることが良くわかります。

そうして、わずか1ヶ月前の12月初めに、緊急事態宣言が再発令に備えた予算額を用意したのに、「遅すぎるし、支援が少ない」とはあきれてしまいます。しかも、1ヶ月前には「大きすぎる」と批判したことをすっかり忘れています。

現在、日本医師会から「医療崩壊」の危険性が叫ばれていますが、昨年5月の2次補正予備費10兆円に対して、大きすぎると批判したのはマスコミと一部野党でした。それで関係者が萎縮してしまったことは否めないです。

昨年夏頃に新型コロナがひと段落したと判断されたため、現場の医師会、知事からの具体的な要請もなく、積極的な予算消化もないまま、無為な時間を過ごしてしまったというのが実体です。

現在できることは、病床余力のある民間病院での新型コロナ専用病床への転用について補助金を出すことですが、これは既に行われている。さらに、医師・看護師、その他看護助手、消毒業者等の直接コロナ患者へのケアに携わる人達の手当アップもすべきです。そうして、資金的には有り余るほどあるので、菅政権は着実に実行していくことでしょう。

以上のような馬鹿げた、小鳥の小脳的な奉読を繰り返してきた、マスコミですが、次の標的はワクチンです。

接種は2月中〜下旬からと予定されていますが、その予算手当は、昨年5月の2次補正で1300億円計上されています。このワクチン接種は、予防接種法に基づくものなので、実務についてこれまで厚労省中心で都道府県、市町村で検討されてきまし。昨年12月には実務マニュアルも作られ、自治体向けに説明会も行われています。

1948年予防接種法制定当初は義務接種であり、違反した場合の罰則まで規程されていました。しかし、1960年代あたりから集団接種などで、複数の人に対して注射針を変えずに接種するなどの不適切事例があり、1976年改正で、罰則なし義務接種となりました。

1980年代から、予防接種の副作用に関するマスコミ報道が多くなり、そうした世論に押され、予防接種法改正で定期接種は努力義務とされました。その結果、各種接種率は低下し、感染症流行の一因ともされています。

最近では、子宮頸がんワクチンの事例があります。一部の大手新聞が、ワクチンの副作用を強調する報道を行ったことをきっかけに、ワクチンが危険という風潮が広がり、結果として、厚労省はワクチン接種の方針転換を余儀なくされました。こうした方針転換の理由は他国では見られないことから、ただちに世界保健機関(WHO)からも非難されました。

日本では、おそらく、こうした一部マスコミの煽り記事により、ワクチンを打っておけば助かったであろう人が結果として大勢亡くなっていると考えられます。

ただし、煽ったマスコミでは成功体験のように受け止められているのかもしれません。そもそも、マスコミは自分たちの存在意義を政府を批判するものだと決めつけているようで、特に過去のマスコミによる民主党旋風で、民主党政権が成立したという成功体験を忘れられないのでしょう。マスコミはそもそもが「大変だ、大変だ」といい、視聴率や購読率をあげたい人たちです。そのため、ワクチンではメリットよりデメリットを強調することになります。

ワクチン接種は、新型コロナ対策の要です。情報戦になりうる可能性もあるため、政府にはバランスのとれた情報発信を望みたいです。河野太郎氏がワクチン大臣に任命されたのは、マスコミの報道にうんざりした政府が情報戦を制するための人事と読むべきです。河野氏であれば、情報発信力もありますし、明らかに間違った報道などには、ためらわず鉄槌をくだすでしょう。

さらに、東京オリンピックに関しても、とにかくその危険性を一方的に煽るなどして、政府批判を煽るのに利用するでしょう。

このあたりのワクチン、オリンピック等についても、若い人達は、様々な情報源にあたり、正しい認識を持つのでしょう。そうして、東京オリンピックについても開催の可能性もあると信じることでしょう。

そうして、コロナ収束後の世界に思いを馳せていることでしょう。

一方、新聞・テレビが情報源の中高年層は、コロナで相当精神が痛めつけられ、悲惨な老後、悲惨な死しかイメージできなくなっているに違いありません。

しかし、情報源を新聞・テレビ以外にも求めたり、見方を少し変えれば、将来への見通しが変わってくると思います。そもそも、運動能力では及ばないかもしれませんが、考え方や行動が若者のようにしなやかになるでしょう。マスコミ等に操られ惨めな余生を送るのか、充実した余生を送るかは、考え方と行動により随分変わるのだと思います。

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2021年1月24日日曜日

メディア業界の救世主として期待のニュースレター「Substack」の威力―【私の論評】既存メディアは崩壊し、SNSは単なる連絡簿になる世界がくるかもしれない(゚д゚)!

メディア業界の救世主として期待のニュースレター「Substack」の威力

Falon Fatemi |CONTRIBUTOR


メディア業界は、パンデミックの影響を最も強く受けた業界の一つだ。米国のメディア業界では2020年に3万人以上の雇用が失われており、2019年の水準から200%以上の増加となった。

そんな中、ニュースレターという、新たなトレンドに関心が高まっている。ニュースレターを収益化するプラットフォームの「Substack(サブスタック)」は、2017年のローンチ以来、着実に成長を遂げている。

Yコンビネータの卒業生が開設し、2019年のシリーズAでアンドリーセン・ホロウィッツの主導で1530万ドル(約16億円)を調達したSubstackは、現在25万人以上の有料購読者を抱えている。

かつてはメールマガジンと呼ばれた古びたシステムに、最新のアルゴリズムを導入したSubstackに対しては、懐疑的な見方もあるが、メディアの新時代を切り開くツールとして期待されている。長年、ページビュー指標に縛られてきたライターや編集者たちは、クリエイティブの自由と経済的自由を与えてくれるSubstackに群がっている。

Substackに参加する著者の一人、Judd Legumは、「Substack では、グーグルやフェイスブックのアルゴリズムに縛られず、人の心をつかむ説得力のあるコンテンツを書くことが重要だ」と話す。

Substackで、ジャーナリストは経済的自由も手に入れられる。Substackは売上の10%を受け取り、決済会社のStripeがさらに3%を受け取る一方で、ライターは残りの金額を自分の懐に入れられる。Substackはさらに、3000ドルから10万ドルまでの様々な助成金を、書き手に与えている。

そして、万が一、法的トラブルに直面した時のために、Substack Defender と呼ばれるプログラムが用意され、一流の弁護士に助けを求めることも可能だ。Substackは、最高100万ドルの弁護士費用を負担することを約束している。

Substackのアピールは、パンデミック後にさらに高まっている。元Buzzfeed記者で、「Big Technology」という名のニュースレターを発行するAlex Kantrowitzは、「多くのジャーナリストたちが、困難な状況に直面する中で、自身でビジネスを立ち上げている」と話す。

メディアへの信頼を取り戻す


Substackによると、読者数と作家数は、パンデミック後の3カ月間で2倍に伸びたという。一方で、マスコミへの信頼度は長年にわたって低下している。2019年のある推計によると、マスコミに大きな信頼を寄せている人の割合はわずか6%に過ぎない。

「ニュースレターは、いかにして読者との間に信頼関係を再構築するかという問いに、確かな答えを提供してくれる」と、SubstackのプロデューサーであるValerio Bassanは話す。読者の受信箱に直接届くニュースレターは、人々と1対1の会話が出来るという。

Substackを用いれば、ロイヤルな読者を獲得し、書き手は自分をブランディングできると、Heatedという気候問題に焦点を当てたニュースレターを発行するEmily Atkinは話す。彼女は以前はThe New RepublicやThinkProgressに所属していたが、現在はSubstackで、会社員時代よりも高い知名度と収入を得ている。

かつては、読者が個人のジャーナリストをフォローすることはほとんどなかったが、状況は変わりつつある。読者は大手メディアよりも、個々の書き手に対する信頼度を高めている。

Substackのミッション・ステートメントには次のような記述がある。「前世紀のジャーナリズムは死にかけている。コンテンツの大量生産やクリックベイト、リスティクル(まとめ記事)、バイラルで拡散されるフェイクニュースなどがこの状況を招いている」

Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させようとしている。

【私の論評】既存メディアは崩壊し、SNSは単なる連絡簿になる世界がくるかもしれない(゚д゚)!

米国の既存メディアは、大手新聞はすべてリベラル、大手テレビ局はFoxTVを除いて他はすべてリベラル系であることを、このブログには何度か掲載してきました。この状況では、米国の人口の半分は存在するであろう、保守系の人々の声はかき消されてしまいます。

従来はそうだったのですが、そこにSNSが風穴をあけ、保守系の人々の声も無視できなくなりました。これもトランプ大統領を生み出した一つの大きな要因ともなったと思います。

ところが、昨年の米大統領選挙では、ご存知のようにSNSがトランプ大統領の発言を封じたり、挙げ句の果に、アカウントを凍結してしまいました。

これは、明らかにやりすぎです。これで、多くの既存メディアに失望した人々がSNSにも失望したことでしょう。

しかし、Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させるかもしれません。


このようなことは、GAFAなどにはできないのでしょう。たとえば、GoogleはSNSとしては、Google Waveのサービスをはじめましたが、これはうまくいかずサービスを中止しました。

その後新たなSNSとして、Google+のサービスを開始しましたが、これもうまくいかず、2019年4月でサービスが停止されました。

両方とも使っていた私は、本当にがっかりしました。特にGoogle+は期待していただけに本当に残念でした。結局、検索サービスと広告の企業が、新たなSNSを創造することは思いの外難しかったということでしょう。

ちなみに、Google Photoも今年の5月でサービスが中止になります。このサービスも使っていたのですが、結局写真をユーザーが保存するのがメインのもので、他の用途としては、写真を他のユーザーとシェアできるというものくらいでした。

便利なので、使用はしていましたが、それにしても何か付加価値をつけることはしないのかと、思っていましたが、それてもできずに、サービス終了です。終了してもFacebookやAmazon Photosもあるので、特に困ることもありません。

GAFAなども現在実施しているサービス以外のサービスに挑戦することは思いの外難しいことなのかもしれません。

そのようなGAFAがSubstackのようなサービスを手掛けてもうまくはいかないような気がします。結局、ジャーナリズムのあり方を突き詰めたのがSubstackなのでしょう。


Substack関連の報道では、米国では昨年9月著名と思われる2人のtech系のジャーナリストが所属組織を相次いで退職するというニュースを見かけました。

1人はThe Vergeのシリコンバレー担当兼上席編集長のCasey Newton氏。9月末で辞職すると表明したのはDigidayの社長兼編集主幹のBrian Morrisy氏

米国メディアの世界ではより良いポストを求めて転職するのは珍しくも何でもない印象がありますが、2人の行き先が、興味深かったのです。

それは、別のメディア企業ではありませんでした。有料ニューズレター(メルマガ)の発行を様々な形でサポートするプラットフォームSubstackの参加者の一員として独立するということなのです。

経営不安のなさそうな二つの有力tech系メディアの幹部の座を捨てさせるほどの誘引力を持つSubstackの魅力は何だつたのでしょう。それについては、NYタイムズAXIOSDigidayなどが報道していました。

Substackの充実したホームページも含め、それらを総合すると、主としてtech系ニュースの編集部を離れて、独自ブランドのメルマガを発行して成功した例は全く珍しくないようなのです。

例えば、Emily Atkinさん。New Republic誌などの記者を経て独立し、気候変動の危機を訴えるメルマガHEATEDを昨年9月から連日配信していますが、大学を出てまだ9年ですから30歳そこそこです。

その彼女はSubstackに招かれて講演し、こう言いました。「大学時代から、私の夢は自分の文章で生計を立てることだった。Substackはその夢を叶えてくれた。私は今、どんなサラリーマンジャーナリストより稼いでいる」

その額は正確には言いませんでしたが「6ケタ」と示唆しました。10万ドル以上ということでした。彼女のメルマガ読者は2万人超、うち有料読者は2千人超とのことでした。有料料金は年間75ドル、月8ドルです。単純計算ですが75ドルに2千を掛ければ確かに15万ドルになる計算です。

Substackは、無料メルマガからは手数料などは一切取りませんが、有料分については10%を差し引きます。それでも、楽に10万ドルオーバー。大卒9年目としては大したものです。

またNYタイムズの記事で紹介しているのはAnne Helen Petersenさん。博士号を持ち、一時、母校の教員でしたが、その後、Buzzfeedに移り、シニアカルチャーライターの傍ら、メルマガを4年前から書き始め、この夏、メルマガに専念するために独立したそうです。多分、40歳前後。

そのメルマガ「Culture Study」の購読料は年50ドル、月5ドル。無料読者2.3万人で有料読者が2千人超だとのことですから、彼女も計算上は6ケタ・ドル組でしょうが、実際にはもらった金額の前払金を受け取ったので、1年間は売り上げからの差引き額は15%になるそうです。独立組にはこういう面倒もSubstackは見るのです。

このほかにもThink Progressの創業者Judd Legum氏、NewYork MagazineのコラムニストでNew Republicの編集長も勤めたAndrew Sullivan氏、Rolling Stoneの寄稿者だったMatt Taibbi氏など、メディア界出身者の”専業者”が少なくないのです。

そしてSubstackのホームページにはトップ25のリストがあるのですが、そこで優良作品ナンバーワンに挙げられているThe Dispatchの場合は3人組で、TheWeekly Standardの元編集長、National Reviewの元編集長とシンクタンクAmerican Enterprise Instituteの元幹部という組み合わせで昨年スタートしたばかりですが、従業員12人を抱え、読者は10万人近くで、うち有料読者は1.8万人に達しているそうです。

料金は年100ドル、月10ドルなので、「初年度から収益は200万ドル近くになりそう」とNYタイムズは伝えています。

インターネットの”最も古い”ツールであるメールによるビジネスが、これだけ人気を呼んでいるのはにわかには信じられない思いです。

第一には、有能な書き手が集まっていることでしょう。なぜ集まるか?その一つにAXIOSは法的プログラムであるSubstack Defenderの存在を挙げています。「困難なストーリーを追求する自信を作者に与えるように設計されている」とのことです。

組織に属するジャーナリストは記事を巡ってトラブルが生じた場合、組織が守ってくれますが、独立してしまうとその保護がありません。しかし、このDefenderだと、Substackの弁護士がトラブルに対処し、裁判などになったら最大100万ドルの援助もするそうです。これはフリーのライターには魅力です。

またPetersonさんの件で触れましたが、前払金制度は、有料読者が増えるまで持ち堪えるのに役立つことでしょう。

さらに、参加したライターには無償でウェブページが作られ、有料読者向けの記事アーカイブも準備されます。そしてお金の勘定も気にしなくて良いのです。ライターは記事作成に専念できるわけです。

さらに、ウェブにない利点として、メールにはノイズがないことをNYタイムズが挙げています。ウェブに記事を出せば、称賛する人もいれば貶す人も必ずいる。しかし、メールの読者は自分のファンなので貶されることは滅多にありません。

この点について、NYマガジン時代、とかく”逆張り”的な視点でのエッセイでリベラルな読者や編集者との軋轢があったというAndrew Sullivan氏は「あなたのファンには説明責任があるが、それはとてもピュアな関係で快適だ」と語ったそうです。

さらに加えれば、SNSのように、「いいね」がたくさん欲しくて書くということもないのも快適なのかもしれません。メールの読者は全員、自分のファンなのですから。


その延長線上で、先の人気 NO.1のDispatchのウェブページにはPitch usとして「あなたに記事のアイディアがあれば、取材して欲しい特定の観点を知らせて欲しい。返答は保証できないが、担当編集者に提案を転送する」とあったり、Petersenさんも、「読者のアイディアでストーリーを書くのも好き。だからアイディアを送って」と呼びかけるなど、筆者と読者がメールならではのつながりがあることも強みなのでしょう。

SubstackのA better future for newsーなぜ我々はSubstackを構築しているかーにはこんな自信満々な宣言もありました。

「広告に支えられた新聞の時代は終わった。我々の使命の中核は独立したビジネスを構築するために必要なツールを民主化することでニュースの市場全体が劇的に成長する時代にライターが成功することを助けるという信念だ」

「購入ベースのニュース業界が成熟すれば、サンフランシスコの配車サービス業界がLYFTやUber以前のタクシー業界より大きくなったように、新聞業界より遥かに大きくなる可能性がある。私たちはニュースビジネスの新たな革命の頂点にいるのだ」

新聞・テレビなどの既存メディアの報道に関しては、世界中でその信頼性に疑問符がついています。SNSにも大統領選で多くの疑問符がついてしまいました。

そのため、私自身はGABなどにも登録してみましたが、ほとんど使っていません。結局SNSそのものに疑問を感じてしまったので、あまり心に響かないのだと思います。

今は、Substucksの使用も検討していこうと思っています。Substackのようなサービスが、これからいくつか出てきてほしいものです。

TwitterやFacebookなどは、創業当初は素晴らしいと思いましたが、今から考えるといくつもあった他のSNSc(My Space、日本ではMIXiなど)がほとんど使われなくなり、TwitterやFacebookに集約されてしまったことが、SNSの全体主義的傾向に拍車をかけてしまったようです。

5大SNS動向と新機能まとめより

Substackが市場を独占してしまえば、また思いもよらない形で、弊害がでてくると思います。そのようなことを避けるためにも、独占だけは許さないようにすべきです。

それにしても、Substackのようなサービスが興隆していけば、既存メディアは崩壊し、SNSは連絡簿のようになり、様々なコミュニティーなど内部用の便利で機能が豊富な連絡に用いられるだけになるかもしれません。

そもそも、SNSの役割とは、それが主なものであり、その範疇をこえて政治的な検閲までするようになったのですが、それが没落の原因になるかもしれません。

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2021年1月23日土曜日

【日本の解き方】医療崩壊これから止めるには「札束のムチ」しかない 2月下旬からのワクチン接種も万全の準備を―【私の論評】コロナも過去のインフルエンザのように、近いうちに必ず収束する(゚д゚)!

 【日本の解き方】医療崩壊これから止めるには「札束のムチ」しかない 2月下旬からのワクチン接種も万全の準備を


     新型コロナウイルス感染症患者の対応に当たる医療スタッフら
     =さいたま市大宮区の自治医科大附属さいたま医療センター

 新型コロナウイルス感染症患者の増加に伴う病床の逼迫(ひっぱく)については、昨年夏の時点で予備費を使うなどの対策を取らなかった問題を以前の本コラムで指摘した。医療関係者からは、日本は民間の中小病院が多いことや、カネを出しても医師が増えるわけではないといった意見もあるが、医療崩壊を阻止する手は打てるのか。

 経済学のイロハとして、「需要」と「供給」がある。需要は短期間で増減したりするが、供給は短期的に増減しにくく、特に生産設備が毀損(きそん)して短期に減少することはあっても、増加させるのは難しい。だから、あらかじめ昨年5月に10兆円の予備費を組んで中期的な供給対応を図ったのだ。

 カネの力で中期的な供給アップを図ることができるのは、医療でも同じだ。専用病床など医療設備の増強、手当を拡充させた上で退役医師・看護師の確保や医療体制の人員シフトなどについて、中期的な対応ができるからだ。

 しかし、多額の予備費に対する一部野党やマスコミの批判があり、関係者が萎縮してしまった。夏頃にコロナがひと段落していたこともあり、現場の医師会、知事からの具体的な要請もなく、厚生労働省の積極的な予算消化もないまま、無為な時間を過ごしてしまった。

 今の段階でできることは、病床に余力のある民間病院のコロナ専用病床への転用について補助金を出すことで、これは既に行われている。さらに、医師・看護師への手当アップもやるべきことだ。こうなったら、カネの力に頼るしかない。

 政府の要請に従わない医療関係者に、罰則などのムチを打つのは、いうまでもなく適切ではない。ムチではなく、札束でたたくのなら、いいだろう。

 海外のような戒厳令に近い非常事態法制について、平時に議論さえ行われず、存在しない日本では、個人の私権制限や罰則は無理で、現実策として、言葉は悪いが「札束のムチ」しかできない。

 準備しておくべきことは、病床・医師看護師の確保だけでない。2月下旬からのワクチン接種もある。この予算手当も、昨年5月の第2次補正予算で1300億円計上されている。

 このワクチン接種は、予防接種法に基づくものなので、実務についてこれまで厚労省中心で都道府県、市町村で検討されてきた。昨年12月には実務マニュアルも作られ、自治体向けに説明会も行われている。ワクチン接種に伴う冷凍施設や配給体制も整備されているが、ほとんど報道されていない。もちろん、全てが予定通りに行かないかもしれないが、国民も含めて万全の準備をしなければいけない。

 こう考えると、今回、河野太郎規制改革担当相がワクチン担当相になったのは、同氏の発信力を生かす意味で時宜を得たものだ。

 マスコミはコロナ報道であおりたいだけになりがちだ。ワクチンについても副作用を過度に強調して、子宮頸がんワクチンの愚を繰り返しそうなので、筆者は心配している。河野大臣の発信力に期待したい。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナも過去のインフルエンザのように、近いうちに必ず収束する(゚д゚)!

このブログでも過去に掲載したように、医療崩壊は本来防ぐことができます。実際、2016年の2月には、1週間で200万人のインフルエンザ感染者が出たのですが、医療崩壊も起きず、インフルエンザ由来の経済の落ち込みもありませんでした。

インフルエンザとコロナは違うという方もいらっしゃるとは思いますが、ウイルス由来による病ということでは同じです。それにインフルエンザを軽く見るべきではありません。コロナは高齢層にとって特に危険なのですが、インフルエンザはすべての年齢層に感染して深刻な事態が生じていました。

コロナでは10歳以下の重症化はありません(1例あったが後に間違いってあったことが判明)が、インフルエンザは、子供でも重症化する例も多く、当時はインフルエンザ脳炎でなくなる子供もいて深刻な状況でした。


医療崩壊が起きなかった最大の要因は、インフルエンザが日本伝染病の分類では5類だったのに対し、コロナは2類であり、一部は1類扱いされているところだと思います。

無論、コロナの正体が見えなかった、昨年の初期の段階では2類扱いにするのは妥当だったと思いますが、現状でもまだ2類扱いしているのは、過剰だと考えられます。

これには、エビデンスもあります。

厚生労働省の人口動態統計によると2019年の我が国の死亡者は総数は138万人、死因は①がん37万7千人②心疾患20万8千人③老衰12万2千人④脳血管疾患10万7千人⑤肺炎9万5千人⑥誤嚥性肺炎4万人 という順です。昨年のコロナの死亡者4千人でした。結核で亡くなる人と同じくらいです。

2019年にインフルエンザが直接的に死因の人は3575人。インフルエンザによる慢性疾患悪化による死亡者を含めて毎年約1万人だといいます。昨年のコロナ死亡者は3800人ほどです。コロナが直接死因の人とコロナによる慢性疾患悪化の死亡者が含まれています。

それに、コロナ死亡者の平均年齢は、平均寿命より4歳くらい若いだけであり。その大半が持病など基礎疾患があることを考えればコロナが直接の原因で死亡したと言えるのかと言う問題もあります。

コロナを5類扱いにしていれば、医療崩壊の危機に見舞われることなどあり得なかったと思います。


ただ、そうは言っても、未だ2類扱いしているわけですし、ワクチンもまだ接種が開始されていないわけですから、これに対する解消法は、やはり高橋洋一氏が主張するように、病床に余力のある民間病院のコロナ専用病床への転用について補助金をさらに出すことと、医師・看護師への手当アップもやるべきことです。

しかし、これは当然といえば、当然のことだと思います。民間病院はまずは利益を出すことが至上命題です。これは、なにやら悪い事のように考える人もいますが、そんなことはありません。

経営学の大家であるドラッカー氏も語っていますが、利益とは単なる儲けではなく、未来への投資でもあるのです。そもそも、利益がなければ、どんな民間組織でも継続は不可能です。


このようなことは、利益などとは関係のない官僚や、日刊新聞法や放送法などの法律で手厚く保護されているマスコミ関係者などの行動や発言などをみていれば良くわかるでしょう。利益を考えなくても良い人たちは、ともすると物事がまともに考えられず、時に馬鹿というか幼稚な行動や発言をします。

利益を前提とするまともな民間企業や組織では、若い頃は空虚な理想論を語っても、それを続ける人はいません。どんなに素晴らしい理想論を語ってみても、すぐに現実に打ちのめされるからです。だから、民間企業で働く人達は、官僚やマスコミ関係者からみれば、まともにみえます。

政治家も問題行動、発言をする人もいますが、選挙という縛りがあります。選挙に落ちてしまえばただの人です。官僚やマスコミは違います。

だから、コロナのような危急存亡の時にこそ、民間病院や働く人達を手厚く補助するのは当然のことです。これらの組織やそこで働く人たちは、これは一時的なものであることを十分に理解していて、官僚やマスコミの一部(多く?)の人にみられる、馬鹿で幼稚な行動や発言をすることはないからです。

それと、コロナの最前線で働く、医師・看護師は当然のこととして、その他の看護助手や消毒などをする事業者を含めたコロナ患者に直接関わり、リスクのある医療従事者にも資金面で手厚い保護をすべきでしょう。

これでしのいでおきながら、後はワクチン接種が始まった頃から、コロナウィルスの2類から5類への分類のし直しをするべきでしょう。

結局、日本のやり方は全部平常時の対応ということにつきると思います。そのため、コロナ対応でも、5類から2類への転換とか、民間病院や医療従事者への手厚い保護など、喫緊の課題であったはずなのに、昨年の夏の段階で何もできなかったのでしょう。

コロナ対策においても、官僚主導の問題とは何かというと、平時の安定した環境で、少しずつ改善していけばいいというようなときには官僚主導はうまく機能するのですが、緊急事態が起きて前例なき決断や大転換をしないといけないときには対応ができないということです。

このようなときこそ、政治家が活躍すべきだと思うのですが、エリートの“お坊ちゃま”官僚たちや二世議員たちで占められている日本の統治機構に「戦時の対応」など、ハナからできるはずはなかったのです。コロナで日本が示した体たらくは、むしろ当然であって、不思議でも何でもなかったのです。

そうして、マスコミはあろうことか、倒閣のために政府のコロナ対応を利用しようとしているようです。テレビでは朝から晩までコロナの話だけで疲れてしまいます。感染者爆発とかで脅かしています。

その中で最近の最大の極めつけは、新型コロナウイルス変異種の死亡率の高さです。この変異種は英国では従来型よりも最大70%感染力が強いとされ、諮問グループが分析結果を政府に報告。

ジョンソン首相の記者会見に同席したバランス首席科学顧問によると、60代の感染者1000人あたりの死者は従来型の場合は約10人だが、変異種は13~14人に増えると推計されたそうです。他の年齢層でも同様の傾向がみられたというのです。 

計算上は従来型よりも死亡率が約3割増えるが、同氏は「(死亡率が高まる)確かな証拠はまだないといいます。(分析データの)数値には不確かな点も多く、さらなる作業が必要だ」と強調。英国で接種が進む英製薬大手アストラゼネカ製と米製薬大手ファイザー製のワクチンは有効と説明しました。

これも良く考えてみてください。感染者が日本よりはるかに多い英国では、以上が事実なら確かに重大問題ですが、もともと感染者数が少ない日本では、少ない感染者が3割増えたところで、英国よりは深刻な問題にならないはずです。これよりも、2016年インフルエンザのほうがはるかに深刻でした。

コロナが終息したあかつきには、これら政治の問題や、マスコミの問題も白日のもとにさらし、あるべき姿にもっていく努力をすべきです。

多くの国民の皆様には、2016年のインフルエンザも収束したように、コロナも必ず収束すると信じていただきたいものです。特に収束は意外に近いかもしれません。少なくとも半年しないうちに訪れるでしょう。オリンピック開催も夢ではなくなるかもしれません。少なくとも、完全な形ではなくても、ある程度限定した形ならできる可能性は十分にあると思います。

私達としては、将来に希望を持って、日々目の前のすべきことをやって、終息後に備えていこうではありませんか。

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 トランプ政権の功績と負の遺産 拉致に理解示し対中国姿勢一貫、連邦議会乱入事件を機に問われる民主主義 

高橋洋一 日本の解き方


 米ドナルド・トランプ政権が終わったが、この4年間でどのような功績があったのか。逆に負の遺産となったものは何か。

 日本から見ると、拉致問題に最も理解があった米大統領だったといえる。来日した際に拉致被害者と面会し、2017年9月19日の国連総会では「日本の13歳の少女が拉致された」と訴えてくれたほどだ。

 経済でも、日米間で貿易摩擦があるのが普通だったが、トランプ政権時代にはほとんどなかった。米国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱後、日本との交渉で武器である自動車関税を持ちださなかったのは、日本にとって大きかった。

 もちろん、安倍晋三前首相とトランプ氏の個人的な関係があったからだが、それにしても、日本にとってトランプ氏はありがたい存在だった。通例ならば日本に向かう批判が全て中国に向かったのも、日本の国益からみればよかった。

 安全保障についても、日本に過度な負担を明示的に求めなかったのも幸運だった。さらに、尖閣諸島や台湾をめぐっても、中国からの脅威に対抗する姿勢は一貫しており、中国の覇権に対する歯止めになった。

 世界から見ても、ウイグルの人権問題、香港問題、中東和平で大きく貢献した。これらは、トランプ氏の遺産だろう。

 負の遺産はやはり今年1月6日の米連邦議会乱入事件だ。もちろんトランプ氏や支持者らの言動は褒められたものではないが、関連してGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)など米巨大IT企業が行った「トランプ氏排除」もひどかった。これは、民主主義にとって負の遺産だと筆者は思っている。

ツイッターの創業者の一人ジャック・ドーシー

 たとえばツイッター社はトランプ氏のアカウントを永久凍結した。20日の大統領就任式での不測の事態を避けるためだったというが、ちょっとやり過ぎだろう。

 ツイッター社が私企業だと割り切れば、個人アカウントの凍結までは理解の範囲だ。しかし、「独占はいけない、優越的地位の濫用(らんよう)はいけない」という独占禁止法の原則がある。それがどのように担保されるかというと、ツイッターと代替的なものを別の企業がSNSで提供できることが必要だ。その代替手段が確保されているのが民主主義国であり、全体主義の国と違うところだ。

 「パーラー」というトランプ氏の支持者に人気のSNSアプリについて、グーグルとアップルが提供を停止した。さらに、アマゾンはパーラーの運営サービスの提供を打ち切った。ツイッターと代替的な関係であるフェイスブックもトランプ氏のアカウントを凍結した。GAFAが結託して優越的な地位を行使するような状況の方が、民主主義国としては気味が悪い。

 こういうことは、本来米国の独禁法の世界では許されない。歴史的に独禁法運用に厳しいのは民主党政権だったので、新政権の課題がさっそく出たともいえる。独禁政策をどうするのか、どのようにして競争を確保して民主主義の世界を保つかについて、本件は試金石になるだろう。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】トランプの登場と退場は、日本の貢献が世界を救うことを示した(゚д゚)!

日本人は、これから先もトランプ大統領が歴代の米大統領の中で、拉致問題に最大の理解を示した大統領であったことを忘れるべきではありません。

「拉致問題は私の頭の中に常にある」。一昨年5月、東京・元赤坂の迎賓館で家族と面会したトランプ氏はこう断言しました。平成29年に続き2度目の対面となった家族らと向き合い、「きっと会える」と励ましました。

拉致に関心を寄せる米大統領は過去にもいました。18年に訪米した早紀江さんとホワイトハウスで面会したジョージ・W・ブッシュ元大統領は「国の指導者が拉致を奨励するのは心がない」と指弾。協力を約束しました。

26年に来日したオバマ前大統領も滋さん、早紀江さんら家族と面会。「政治家ではなく娘2人を持つ親の立場として許せない」などと北朝鮮を非難しました。ただ長年、米朝交渉の主題は北朝鮮の非核化でした。

こうした中、トランプ氏は被害者家族と面会後の30年6月に行われた史上初の米朝首脳会談で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に拉致解決を提起。一昨年2月の会談でも「顕著な進展を見せていない」と迫りました。

拉致被害者との面談で身を乗り出して話を聴くトランプ大統領

トランプ氏は一昨年6月、有本恵子さん(60)=同(23)=の父、明弘さん(92)に手紙を寄せました。同年5月の訪日時、明弘さんが米関係者に託した被害者救出を切望する手紙に応え「全力を尽くしています。あなたはきっと勝利する」と激励。明弘さんは「解決が近づいているように感じた」と涙を拭いました。

このトランプ氏のアカウントが凍結されたというのは、本当に大ショックでした。GAFAを始めとするIT大手企業に対しても「公共インフラ」として、国民が(あくまで公正な)選挙で選んだ政府(の制定する法律)が、厳しく監督する時代になったのだと考えます。

現代のITビジネスの基盤を築いたのは、1993年に発足したビル・クリントン政権だと言えるかもしれないです。 大統領候補のクリントン氏と副大統領候補のゴア氏は、 1992 年の大統領選挙期間中に「すべての家庭、企業、研究室、教室、図書館、病院を結ぶ情報ネットワークをつくる」と公約しました。さらに当選後の93 年に、シリコンバレーでアメリカの産業競争力強化のための「情報スーパーハイウェイ」を 2015 年までにつくるという構想を発表しました。 その後のIT・インターネットの発展ぶりは、ここであえて語るまでもないですが、IT・インターネトの発展と米国金権政治の浸透、そして共産主義中国の密接な関係については、昨日もこのブログに掲載した、翟東昇の動画から「媚中派大統領のクリントン、オバマ、バイデンとウォール街の行状」には大きな疑問符がつきます。

GAFAを始めとするIT大手は、現在しゃにむにデジタル全体主義の道を歩んでいるように見えますが、彼らは実は「表面に見える道具」に過ぎないのかもしれないです。つまり、「ビッグブラザー」というコンピュータが支配している裏には「闇の帝王」が存在するのではないのかということです。無論それは、中共である可能性が高いです。そうして、中共と協力する勢力が米国に存在する可能性が高いです。
もしこれが本当だとすれば、日本でも「媚中派」の政治家が多いですから、米国と同等あるいはもしかしたらそれ以上にデジタル全体主義が進行しているのかもしれないです。 オールドメディアは、「デジタル化で日本は中国に遅れているから追いつけ」などと述べていますが、利便性の陰に隠れた「デジタル全体主義」の浸透が遅れているとしたら不幸中の幸いともいえます。

確かに、たとえば自民党の二階氏が「デジタル全体主義」に協力できるのかということもあります。たとえば、麻生氏も自身のアカウントはないですが、事務局のアカウントはあります、しかしアカウント取得直後にいくつかツイートした他は、その後ほとんど使われていません。

一方、日本はビックデータにおいて独自の行動をとっています。たとえば、先日も掲載したコマツの建機の例です。

GPSを搭載したコマツの建設機械がいま世界で約30万台稼働しています。これは「KOMTRAX(コムトラックス)」と呼ばれる機械稼働管理システムで、どの機械がどの場所にあって、エンジンが動いているか止まっているか、燃料がどれだけ残っているか、昨日何時間仕事をしたか、すべてがコマツのオフィスで分かる仕組みになっています。

KOMTRAZの概念図

KOMTRAX導入のメリットは次のとおりです。
(1)→ 建設機械の故障原因推定の容易化、修理の迅速化
(2)→建設機械の盗難防止(持ち主が意図しない場所に建設機械が移動していることが分かれば、遠隔操作でエンジンを停止する)
(3)→ 顧客側へのコスト削減提案(収集・集積したデータを分析し、適切な点検時期や部品の交換時期の提案、効率的な配車計画や作業計画の作成支援、燃費改善方法の提案など、顧客側のコスト削減につながる価値を創出する)
(4)→ 製品の需要動向予測(建設機械の稼働状況を国や地域ごとに分析し、市場動向を予測。稼働状況が高い地域や企業に対しては、販売増を狙い営業強化。一方、稼働状況が低くなったら、早めに生産を絞り在庫調整を行う)
これ以外に、コマツの建設機械は、契約に反して機械のローンが返済されなくなった時に、度重なる警告を経て遠隔操作でエンジンを停止させて返済を促 すことができます。また、使用状況が分かり、保守・点検が的確になされていることが把握できるので、中古機械の価格も他社製より高く、その点も顧客から評 価されているのだそうです。

このコマツの建機、ほとんどの中国の建築土木現場で使われています。中国側としては、コマツのような建機は作れないし、無理に作ったとすれば、割高になるのだと思います。これは、日本による平和的な中国への浸透ともいえます。

トヨタ自動車は、通信機能を備えた「コネクテッドカー(つながる車)」を生かした交通事故撲滅に本格的に乗り出しました。高齢ドライバーに多いペダル踏み間違い事故を防止しようと、今夏からコネクテッドカーから得られたビッグデータを解析・開発した新機能「急加速抑制機能」を導入します。

道路上の障害物の情報を車両間で共有できるシステムについても、2020年度内にめどをつける見込みです。実現すれば、コネクテッドカーが事故防止だけでなく社会課題を解決する切り札となります。

将来トヨタの車は、すべて「コネックテッドカー」になり、様々なビッグデータの解析により、ペダル踏み間違いをなくすことは無論のことKOMTRAXと同じように様々な便益を顧客に提供することになるでしょう。そうして、そのような車が世界のあるゆるところで走り、世界各地で車社会の様々な問題の解決に貢献していくことになるでしょう。

JR東海は東海道新幹線の走行車両からブレーキやドアなど機器の動作データを取得して「状態基準保全(CBM)」を推進している。連続するデータの変化点を管理して故障発生前に予兆を検出し、適切なタイミングで保守作業を実施。営業時間内の不具合抑制や作業効率化を実現した。新幹線の安全、安定運行レベルを高めるアプローチの一つが、車両ビッグデータ(大量データ)の活用です。今後は、安全運行だけではなく様々な分野で活用されていくことでしょう。

これからの世の中では、パソコンやスマホだけが、ビッグデータの入り口ではありません。それは、ほんの一部に過ぎません。スマート電力計などをはじめ、ありとあらゆる、ビックデータの取得と、その解析によって世界は変わっていくことでしょう。

その中において、日本は独自の位置を占めていくいくことになるでしょう。新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼ全てを兼ね備えている産業構造を持つ国は日本だけです。中国、韓国、台湾、ドイツはハイテクそのものには投資していながら、その周辺や基盤技術の多くを日本に依存しています。GAFAも例外ではありません。そもそも、半導体製造の工作機械が日本の独壇場です。

中国やGAFAなどのデジタル改革は、どちらかというと、パソコンやスマホ等に偏りすぎています。無論一企業ができることにはいくら企業規模が大きくても、限界があります。過去においてはEコマースなどで、自分たちの能力を存分に活かすことができたのですが、消費者の直接的な消費は社会活動のごく一部にしか過ぎません。その偏りが将来的にはGAFAや中国を苦しめることになるでしょう。

今日のGAFAや中国の全体主義的な動きは、そうした将来を予感させるものかもしれません。将来に希望があり、明るい未来が開けていれば、そもそも全体主義的な動きなどせず、明るい未来に向けて、努力を続けるはずです。実際は、中国やGAFA自体が閉塞感、逼迫感にとらわれているのではないでしょうか。

多くの先進国においては、右派の伝統的な支持基盤はそれほど変わっていないのですが、高学歴左派の支持基盤が大きく変わって、ブルーカラー労働者の味方がいなくなるというエア・ポケットが生まれたのです。

事実、どの国でも、低学歴層の投票率は時を追うごとに低下しています。そしてこの変化に気づいたのは、フランスでも米国でも、左派ではなく右派でした。マリーヌ・ル・ペンであり、ドナルド・トランプです。

そうして、これは正しいです。なぜなら、会社などの組織であれば、仕事のできない人や会社にあわない人は、会社の外にほうりなければそれですみますが、国はそうはいかないからです。

国は、ブルーカラー等の貧困層を放置しておけば、深刻な社会問題を生み出すことになります。

私自身は、米国におけるトランプ大統領の登場、GAFAの全体主義への傾斜は、こうした社会問題の解決が必要であることを顕在化したものであると考えています。

この問題を解決するには、既存の枠組みで考えていては、無理であり、日本のビッグデータによる取り組みが参考になり、それが社会を変えていくのではと期待しています。

考え見てください、一部の高学歴エリートだけで、来るべきビッグデータの時代は、乗り切れないはずです。CPUや半導体、それにOSやアプリと、Eコマース、スマホやコンピュータそれと金融界による金儲け等だけでは、社会問題は解決できないのです。

私自身は、そもそも米国の左派・リベラル系高学歴エリートは、そもそも社会変革など必要と思っているのかどうかさえ疑問符がつきます。彼ら、結局貪欲な中国の官僚(中国には選挙がないので、厳密な意味で政治家は存在しない、その意味では習近平も官僚)と変わらないのではないでしょうか。

日本産業の裾野の広さは、金を出せば購入できるとは限りません。実際、トヨタの見学は自由だそうですが、それを見学した諸外国の自動車会社が、すぐにトヨタのやり方を真似できるわけではないのです。

社会問題の解決という視点でみれば、様々なビックデータの活用が考えられます。そこには、エリートだけではなく、社会の様々な部門で働く人たちが必要であり、その人達の仕事の質が、これからの社会の質を規定していくのです。

うまい表現が思い浮かばないのですが、それこそ地が足についた活動が必要不可欠なのです。人々の頭だけでなく、多くの人々の手足と経験と感性が必要不可欠なのです。中国や、GAFAだけではこれは不可能です。

今こそ、日本がビッグデータの活用の一角で大変革をおこし、世界に貢献していくべきです。

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2021年1月21日木曜日

バイデン一族の異常な「習近平愛」|石平―【私の論評】エスタブリッシュメントが支配する世界は、日本が終わらせる(゚д゚)!

 バイデン一族の異常な「習近平愛」|石平

バイデン大統領の習近平に対する「偏愛ぶり」は異常だ!オバマ政権時代、副大統領としての8年間に中国とどう付き合ってきたのか――事あるごとに習近平との蜜月ぶりをアピールするばかりか、遂には習近平の暴挙を容認し同盟国日本と国際社会を裏切ってきた。断言する、バイデンは「罪人」である!

中国との癒着ぶり

この原稿を書いている2020年11月14日現在、トランプ大統領側は不正選挙の疑惑を追及して法廷闘争を展開、決着はいまだ付いていない。  

一方で、日本の菅首相を含む各国首脳が続々とバイデン氏に祝電を送ったり祝福の電話をかけたりしている状況からすれば、来年(2021年)1月における「バイデン政権」の誕生はかなりの現実味を帯びてきている。  

ならばわれわれとしては、来年1月からの4年間、「バイデン政権」の下で何が起きるかを一度、真剣に考える必要があろう。  

中国の覇権主義政策が日本を含めたアジア諸国の安全を大いに脅かしているなかで、バイデン氏は一体、中国にどう対処していくのか。これはわれわれが特に関心を持たざるを得ない大問題である。  

バイデン氏の対中姿勢を考えるとき、大統領選挙中の彼の発言からは手がかりを得ることはできない。なぜなら彼は選挙中、中国について多くを語らず、むしろこの話題を意図的に避けてきた感があるからだ。  

時に中国に言及し、厳しい言葉を発したことがあっても、それが本心からなのか、単なる選挙対策なのか定かではなく、バイデン氏の対中姿勢はいまも未知の領域と言える。  

それを解明するためには、バイデン氏が政治家としてこれまで中国といかにかかわってきたかを見る他ない。特に、彼が2009年に誕生したオバマ政権の副大統領となってからの8年間に中国とどう付き合ってきたのか。 それを徹底検証することによって、バイデン氏と中国との癒着ぶり、特に、彼と習近平国家主席との異様な親密ぶりが浮かびあがってくる。

初対面の習近平に



バイデン氏と習近平主席との親交は、9年前の2011年に遡る。この年の8月、バイデン氏は米国副大統領として中国を初訪問した。  

バイデン氏が北京入りしたのは8月17日、同月22日までの6日間、中国に滞在した。大統領と比べれば閑職であるとはいえ、米国副大統領が特定の外国に連続6日間も滞在するのは異例といえる。

その時のバイデン副大統領のカウンターパートこそ、当時、国家副主席の習近平氏だった。この中国訪問も習近平副主席からの招待によるものであり、中国滞在中、習氏は終始バイデン氏のホスト役を務めた。  

バイデン氏が北京に到着した翌18日の午前に、習氏はまず北京人民大会堂において彼のための歓迎式典を執り行った。その式典のあとで2人は早速首脳会談を行い、その日の夜、習氏はバイデン氏のための晩餐会を催している。  

バイデン氏にとって習氏との初会談だったが、新華社通信が報じたところによれば、バイデン氏は会談のなかで次のように発言したという。 「台湾・チベットは中国の核心的利益であることを十分に理解しており、台湾独立は支持しない。チベットが中国の一部であると完全に認める」  

バイデン氏がここで語ったことは当時のオバマ親中政権の基本方針ではあるが、「十分に理解している」 「完全に認める」と強調したバイデン氏の言葉遣いには、彼自身の強い気持ちが窺える。  

つまりバイデン氏は、初対面の習氏に対してできる限りの媚びを売り、「良い関係」のスタートを切ろうとした。当時の習氏は、1年後の2012年秋開催予定の共産党大会において次期最高指導者となることが既定事項であったから、バイデン氏は当然、それを計算に入れて習氏に取り入ろうとしたのであろう。

2人の濃密な時間

バイデン氏訪中の3日目、19日の午前に習近平氏はバイデン氏とともに「米中企業家座談会」に出席し、昼食もともにした。午後からは当時の胡錦濤主席や温家宝首相がバイデン氏との会談に臨んだが、一連の会談には習氏も同席している。  

訪中4日目の20日、北京を離れて四川省成都市を訪問したバイデン氏は、それから成都とその周辺で2泊3日滞在しているが、その間、ほぼ全日程にわたって習氏はバイデン氏と行動をともにしている。  

成都の滞在中、バイデン氏は四川大学で講演したり、市内のレストランで習氏招待の非公式の夕食会に参加したり、習氏の同伴で郊外の都江堰という古代からの水利施設を見学するなど、至るところで習氏の姿が確認されている。この2泊3日の間、2人の「副」指導者は特に濃密な時間を共有した。

バイデン氏の6日間という異例に長い滞在で、両氏の間でかなり親密な個人的関係が結ばれたと考えられよう。

訪中の成果を日本にアピール

実は、これに関して2011年8月25日に日本経済新聞のウェブサイトに掲載された秋田浩之編集委員(当時)の署名記事が、興味深い話を披露している。  

それによると、バイデン氏と習氏との一連の会談について、同行していたホワイトハウス高官は「全くメモなしで、さまざまな話題を縦横無尽に話し合った」と記者団に紹介した。  

そしてバイデン氏は中国訪問を終えて日本に立ち寄った時、当時の菅直人首相との会談で、自ら「米中の対話を深め、習近平国家副主席との関係を深める機会になった」と語って訪中の成果をわざわざ日本側にアピールした、というのである。  

これらはバイデン氏の対中姿勢、とりわけ彼の対習近平姿勢を考えるうえで忘れてはならない点である。

再び濃密な時間を共有

バイデン氏と習氏との親交は、これ以降も継続されている。  2012年2月13日から17日にかけて、今度は習氏が夫人とともに中国国家副主席として訪米した。それもバイデン初訪中と同様、5日間という異例の長さの訪問であった。  

もちろんその時、米国副大統領のバイデン氏は最大の厚遇ぶりで、自分の老朋友(旧友)である習氏の接待に当たっている。習近平夫婦がアメリカに到着した時、バイデン副大統領夫婦はわざわざ空港まで彼らを出迎えた。相手は中国の国家副主席であるとはいえ、米国の副大統領が外国からの訪問客を空港で出迎えるのは異例のことで、バイデン氏は習氏に対する最大限の厚意を示した形だ。  

その後、バイデン夫婦は習近平夫婦を晩餐会に招くなど、家族ぐるみの親交を深め、習氏がワシントンでの訪問日程を終えてアメリカの西海岸を訪問したときも、バイデン氏は当然のように同伴、習氏と終始行動をともにした。2人は再び濃密な時間を共有したわけである。  

2013年12月、バイデン氏が副大統領として2回目の中国訪問を行った時、習氏はすでに中国の国家主席の椅子に座り、最高権力者となっていた。

実は、このバイデン訪中の1カ月前、ある重大な出来事が起っていた。習主席がアジアの安全保障に重大な脅威を与える冒険的行動に打って出たのだ。

習近平の暴挙を容認、同盟国日本と国際社会を裏切る


2013年11月23日、習近平政権の中国は東シナ海の上空で中国の防空識別圏を設定、政権成立後の軍事的冒険の第一歩を踏み出したのである。  

簡単に説明すると、本来どの国の航空機でも自由に飛べる東シナ海上空の空域を、中国は勝手に自分たちの「防空圏だ」と設定し、それを中国軍の監視下に置いたのである。そんな暴挙は当然のことながら、民間機を含めた各国航空機が自由に飛行する権利の侵害であり、脅威であり、許されることではない。   

日本にとってこの問題は特に深刻だった。中国の防空識別圏が設定されている空域は、まさに日本の領空とは隣り合わせで、日本の航空機が頻繁かつ大量に飛ぶ空域でもある。日本と国際社会にとって、習近平政権の暴挙への対策は喫緊の課題となった。  

この中国の防空識別圏設定の10日後、12月3日にバイデン副大統領はアジア歴訪の最初の訪問地として日本の東京を訪れている。  

当時、日本の首相は安倍晋三氏。同盟国である米国の副大統領の来訪は、日本にとってはまさに日米が連携して中国の暴挙を食い止める好機のはずだった。  

そのため、バイデン副大統領との会談で、安倍首相はまず日米が共同して防空識別圏設定の撤回を中国に強く求めようと米国側に働きかけた。しかし案の定というか、意外というのか、バイデン副大統領は安倍首相の提案をきっぱりと拒否して、中国に対して「撤回」を求めない考えを貫いたのだ。  

そこで安倍首相は次善の策として、日米で「防空識別圏設定反対」の共同声明を出して中国を牽制しようとも提案したが、これもバイデン氏によって拒否された。バイデン氏は、中国の防空識別圏設定の危険性を顧みずに、同盟国首相からの懇願も同盟国日本の安全保障を無視する形で、中国を庇うことに徹したのである。  

バイデン氏は一応、米国副大統領として中国の防空識別圏設定に反対の意思を表明したが、中国に対して「撤回」を求めず、事実上、習近平氏の軍事的冒険を容認した。  

同盟国日本の安全が脅かされているこの肝心な時に、そして国際社会が習近平政権の暴走を封じ込めることができるかどうかという重大な時に、バイデン氏はあくまでも中国寄り、習近平寄りの姿勢を取り続け、同盟国日本と国際社会を裏切ったのである。

バイデンは「罪人」である

バイデン・安倍首相会談の翌日の十二月四日、中国国内の各メディアは一斉に日米首脳会談のニュースを報じ、バイデン氏が中国に防空識別圏の撤回を一緒に求めようという安倍首相の提案を拒否したことを嬉々として報じた。同時に、日本では全く報じられてないバイデン氏の重大な発言を報じている。何か──。  

12月3日、安倍首相との会談を終えて、バイデン氏が当時の民主党代表の海江田万里氏と会談した時に、中国に防空識別圏の撤回を求めないことの理由について、海江田氏にこう語ったという。 「習近平主席の仕事はいま軌道に乗っている最中だから、われわれは彼に面倒をかけてはならない」  

私は当時、ネット上で中国メディアが報じたバイデン氏の言葉をみてわが目を疑った。中国メディアに嘘が多いことは周知のとおりだが、さすがに外国首脳、特にアメリカ首脳の発言を捏造することはできまい。  

バイデン氏の言葉が中国で報じられた12月4日は、バイデン氏本人が日本をあとにして中国に向かっている最中だった。中国の各メディアがバイデン氏の発言を捏造したのであれば、アメリカ政府や駐北京の米国大使館もそれを当然看過するわけもなく、中国にとっても米中関係を悪化させる事態になったに違いない。  

ところが、実際にそのようなことは一切起きていない。つまり、バイデン氏が海江田氏に対して行った発言の信憑性は極めて高いといえる。  

習近平氏が国家主席になって九カ月目、バイデン氏の「仕事を軌道に乗せたばかりの習近平主席に面倒をかけてはならない」との言葉からは、バイデン氏が親身になって習氏のために物事を考えているかが明々白々であろう。  

単なる「習近平寄り」を通り越して、まさに習氏の立場に立った習氏のための発言であり、バイデン氏の習氏への「愛情」さえ感じさせる言葉といえる。  

国家主席一年目の習氏からすれば、これによってオバマ政権の足元を見たことだろう。その後、オバマ、バイデン両氏が習氏の暴走に容認の態度を示したこともあり、習氏は南シナ海などでは何の躊躇いもなく軍事的な拡大を進めていった。いまになってはもはや、取り返しのつかないところまで中国の実効支配が強化されているが、事の始まりは中国の防空識別圏の設定に対するオバマ政権の許しがたい弱腰の態度であり、そのなかで重要な役割を果たした人物こそ、習氏に対して異様な「偏愛」を持つバイデン氏その人なのである。  

そういう意味ではバイデン氏は、現代のヒトラーである習近平氏の暴走に加担して大きな罪を犯した「罪人」であると言える。

ハンター・バイデン疑惑

しかしバイデン氏は、はたして単なる自分自身の思い入れから、そこまで習氏の“協力者”になったのだろうか。彼と習近平、そして中国との関係には別の闇もあるのではないか、との疑念を禁じ得ない。  

実は今年(2020年)になって、バイデン氏の中国あるいは習近平氏に対する異様な想い入れの謎の一つが解けそうになってきている。  

バイデン氏の次男、ハンター・バイデン氏が修理店に出したパソコンから、ハンター氏自身のさまざまなスキャンダル・疑惑が露呈したからである。  

10月15日、ニューヨークポスト紙は、ハンター氏のパソコンから発見された彼の中国関連の疑惑を報じた。  

それによると、2017年、ハンター氏は中国の国営企業である「中国華信能源」との間で投資ベンチャーの合弁企業の設立を協議した時、彼自身が新会社の会長か副会長に就任し、「中国華信能源」から多額の報酬を受け取る約束を取り付けた。同時に、新株式の10%を「big guy」(大もの)のために確保する約束をも取り付けたという。  

そこで浮上してきたのが、「big guy」(大もの)が前副大統領のバイデン氏ではないか、という疑惑である。もしそれが真実であれば、次男のハンター氏だけでなくバイデン氏自身もすでに中国側に買収されている、ということになる。  

10月23日、トランプ・バイデン両候補が大統領選の最終討論会に立った時、トランプ大統領がこの一件を取り上げて、「全てのEメール、キミと家族がかき集めた金に関するEメールについて、キミは米国民に説明する必要がある。キミは“大もの”らしいじゃないか。キミの息子は『10%を“大もの”に渡さなければならない』と言った」と、バイデン氏に問い詰めた。  
それに対してバイデン氏は「私は1セントも受け取っていませんよ」と「買収疑惑」を否定したが、次男のハンター氏の「中国による買収疑惑」には一切触れていない。要するに、否定できなかったのだ。  

たとえバイデン氏自身が中国側に買収されていないとしても、彼の息子が中国に買収されているのであれば、バイデン氏の中国に対する考えや政策に大きな影響を与えている可能性は十分にある。肉親の弱みを中国に握られているのであれば、バイデン氏の中国寄り・習近平寄りはより決定的なものとなる。

訪中に同行した若者の正体

さらにあまり知られていないが、ハンター氏と中国側の接点は、まさに父親のバイデン氏によって作られた可能性があるのだ。  

前述のように、2013年12月4日、当時のバイデン副大統領は日本をあとにして2回目の中国訪問のために北京へ向かったが、彼が北京空港で専用機から降りようとした時、そばに付き添っている2人の若者がいた。  

1人は高校生くらいの若い女性、新華社通信の配信した写真の説明によれば、それはバイデン氏と再婚した夫人との間のお嬢さんであるという。そしてもう1人の若くてハンサムな男、誰なのかは新華社通信は報じていなかったが、それがまさにバイデン氏の次男、いまや渦中の人物であるハンター・バイデンその人なのだ。  

2度目の訪中時、ハンター氏は父親と一緒に北京を訪ねていたのである。  

米国の大統領や副大統領が外国を訪問するときに夫人を同伴させることはよくあるが、娘や息子を連れていくことはあまり聞かない。公職についていないハンター氏を、バイデン副大統領は一体何のために中国へ連れていったのか。  

ここで肝心なのは次のことである。 バイデン氏が前述のとおり、防空識別圏の一方的な設定という習近平政権の暴走を容認し、日米で中国に防空識別圏設定の撤回を一緒に求めようという安倍首相の提案を拒否した翌日に北京空港に着いたということである。  

その時に彼が、公務とは全く無関係の息子を北京へ連れていくことの意味は何か。習近平主席を助けて恩を売ったバイデン氏は、この時に習氏に対して「うちの息子を頼んだぜ」と堂々と言ったのではないだろうか。  

これはもちろん、筆者の個人的推測ではあるが、バイデン氏があの時、息子のハンター氏を北京へ連れていったことの意味は重要だ。

悪夢の到来

一つの可能性として考えられるのは、バイデン親子はその時点ですでに中国に買収されていたということだ。あるいは買収がなかったとしても、ハンター氏のことも含めて、その時からバイデン氏と習近平氏の間に、すでに持ちつ持たれつの特別な関係ができていた──。  

あれから7年。もしバイデン氏が来年(2021年)1月からアメリカ大統領となれば、北京の中南海で高笑いが止まらないのは彼の老朋友、習近平主席であることは間違いない。  

もし「バイデン政権」の4年間が、かつての防空識別圏の一件の時と同じように、アメリカが習近平政権の暴走と冒険をひたすら容認するような4年間となれば、またアメリカの政権がひたすら「習近平氏に面倒をかけないこと」をモードとしているような四年間となれば、日本の安全保障とアジアの平和維持にとって、まさに悪夢の到来でしかない。(初出:月刊『Hanada』2021年1月号)

【私の論評】エスタブリッシュメントが支配する世界は、日本が終わらせる(゚д゚)!

米国では、社会を動かしてきたエスタブリッシュメント(既存の支配層)が実質すへでの大統領に対して強い影響力を行使し、実質上操ってきたというのが実体です。米国社会に詳しい人なら、これは周知の事実でしょう。

これに対する反エスタブリッシュメントのマグマはとても強く、その中で「トランプ大統領」が誕生したのです。一方バイデンは、エスタブリッシュメントの利益を代表する、既存の大統領たちと同じとみるべきでしょう。

では、エスタブリッシュメントは中国に対してどのような姿勢なのかを知れば、バイデン大統領の姿勢も見えてくるはずです。しかし、多くの日本人にとって、いや多くの米国人にとっても、エスタブリッシュメントは、飛び抜けた資産家であり、それこそ雲の上のような存在で、日常的に会うこともなく、ましてや報道されることなどありません。

ただ、それを垣間見せるような動画が昨年の11月にYouTube に掲載されました。以下にその関連の動画を掲載します。この動画は昨年かなりの物議を醸しました。


この動画では、直接的にはウォール街のことが語られているますが、無論ウォール街では、いわゆるエスタブリッシュメントの意向が大いに反映されていることを認識した上でこの動画を理解すべきものと思います。

さて、動画に関する解説をします。昨年11月、米国左派メディアが大統領選挙のバイデン候補(民主党)の「当選確実」を宣伝している中、中国の一部学者は、米中関係が再びトランプ氏の大統領就任前の状態に戻る可能性があると期待感を高めていました。中国学者の翟東昇(てき とうしょう)氏は、過去数年間、中国当局はウォール街の金融機関を通して、米政府などを「うまく扱うことができた」と発言しました。

翟氏は、中国人民大学の国際関係学院副院長、同大学中国対外戦略研究センターの副主任兼事務局長、同大学国際貨幣研究所の特別招聘研究員などを務めています。同氏は11月28日、動画配信サイトがライブ配信した討論会で、講演を行った。討論会には、中国人民銀行(中央銀行)国際司の元司長である張之驤氏、国務院発展研究センター世界発展研究所の丁一凡副所長らの当局者も参加しました。

翟氏は講演の中で、中国当局が現在金融市場の開放を推し進めている背景に、様々な政治的かつ戦略的要因があるとしました。1つの要因として「バイデン政権が誕生した」と同氏は挙げました。

同氏は、過去数十年間、中国当局が米政府をうまく扱うことができたのは、「米国の政治権力を支配するウォール街に(中国当局の)友人がいたからだ」「彼らは中国(当局)の味方だった」と話し、しかし、この状況は「トランプ政権の発足で変わった」としました。

「中国に貿易戦を仕掛けたトランプ氏にはお手上げ状態だ。以前、1992~2016年までの間、米中間に起きた様々な問題、すべての危機、例えば大使館爆発事件など外交上の衝突をうまく処理できた。すべての問題は、夫婦ゲンカのようにすぐ仲直りできた。大体2カ月で解決できた」

「なぜだろうか?われわれに味方がいたから。われわれは米国の既存権力者の中に古くからの友人がいたからだ」

この既存権力者こそ、エスタブリッシュメントあるいはディープステートであると見て良いでしょう。

翟氏は、ウォール街は1970年代以降、米国の内政と外交に対して強い影響力を発揮してきたと指摘しました。しかし、2008年以降、ウォール街の影響力が低下し、特に2016年以降は「ウォール街はトランプ氏をうまく操ることができなくなった」といいます。

同氏が得た情報では、米中貿易戦が始まって以来、ウォール街の金融機関は中国のために動いたが、「力不足だった」といいます。

講演の中で、翟氏は「しかし今、バイデン氏が政権を握ることになった。(中略)伝統的なエリート、政界のエリート、建制派(エスタブリッシュメント)はウォール街と密接なつながりがある」と述べました。

また、同氏によれば、2015年に習近平国家主席が訪米前、中国側が米ワシントンDCにある有名書店Politics and Prose Storeで「習近平氏が治国理政を語る(中国語:習近平談治国理政)」と題する新書発表会を企画しました。

しかし、希望した時間帯には、すでに他のイベントの予約が入っていました。このイベントの主催者は中国共産党に反対しているため、時間帯の変更を拒否しました。しかし、あるユダヤ人の女性年配者(翟氏は鼻の大きいお婆さんと形容)が書店に圧力を掛け、予定通り新書発表会を開きました。

この女性は「ウォール街にある金融大手のアジア地域担当責任者だ。中国国籍を持っているし、北京市にも戸籍を持っている。(北京市の)東城区に住宅も保有している」と翟氏は話しました。

翟教授はこの老婦人の名前を明かさなかったのですが、中国共産党と強力なコネを持つ元ウォール街金融機関のトップで、米国籍と中国籍を持ち、中国語はネイティブ並み、北京市の一等地の長安街に四合院の屋敷を持っているというヒントから、一部では投資家のリリアン・ウィレンスではないか、という説が出ています。

習近平の本を見て満面の笑みを浮かべるリリアン・ウィレンス

ウィレンスはロシア系ユダヤ人で、20世紀初頭〜半ばにロシアから上海に亡命した家庭に無国籍状態で生まれました。のちに米国に渡って米国籍を取得し、ウォール街のキーパーソンとして米国と中国のコネクション形成に関与していたといいます。

中国官製メディアの報道では、2015年9月17日、中国のメディアや出版を管理する国家新聞出版広電総局は、同書店で同イベントを行いました。

翟氏が述べたこの事例は、のちにウェブサイトで公開された動画から削除されました。

中国当局がウォール街の金融機関を抱き込み、米政府の政策に影響力を及ぼすのは公然の秘密です。中国経済学者、至清氏は過去、中国企業の米市場上場を通じて、米国の金融機関は膨大な利益を得たと指摘しました。これらの金融機関が利益のために、中国企業の虚偽財務報告を無視したため、米投資家は巨額の損失を被ったといわれています。

しかし、これだけ政治的に敏感な内容が物議を醸すのは、目に見えていたはずです。この講演の中身が、なぜこのタイミングで中国で広く公開されたのでしょうか。

翟教授の“放言”は、今に始まったわけでもない。2019年から2020年にかけて行われている翟教授の断続的なインタビュー番組が、やはりネットで公開されていますが、そこでは、米国の株式バブルの背景や構造を解説しながら、米国を操っているディープステートがどんな存在か、トランプとディープステートの関係などの内幕を語っていました。翟教授はこんな話をしています。

「米国の権力構造は、異なる複数の利益集団の集まりでできている」
「(ウォール街を中心としたグローバリスト集団の)ディープステート(影の政府)がその核心だ」
「冷戦を行ったのも、第2次大戦後の世界秩序そのものを作り上げたのも、この小さなディープステートだ」
「米国の主人公はディープステートであり、大統領ではない。トランプは、ディープステートにとって初めての“外地人(よそもの)”の大統領なのだ」

翟教授は、人民大学の金燦栄教授とならんで、習近平政権の経済・国際関係方面のブレーンとみなされています。特に人民元の国際化に関する提言を主導するのはもっぱら翟教授です。

ディープステートの最大の行動原理は自らの利益の追求なので、金で動きます。中国共産党はチャイナマネーで彼らとのコネクションを形成することができたということです。

それにしても、中国の体制内知識人が、なぜあえてこのタイミングで、こうも赤裸々にこのネタを語ったのでしょぅか。中国ネットメディアで拡散し、炎上を引き起こしてしまったのは、本当に単にうっかりなのか。

中国も実は一枚岩ではないどころか、米国以上の複雑な権力構造をもっています。共産党一党独裁のヒエラルキー構造というのは間違いないのですが、すべての官僚、地方、軍、企業が共産党中央指導部に心の底から従順であるとはいえません。

中国にも「ディープステート」と呼ぶことのできる存在があります。例えば軍、長老政治、メディア、太子党企業利益集団、金融テクノクラート集団、あるいは官僚集団。そうした利益集団にまたがる共産党のキーパーソンたち。

ところが、習近平はそれらの伝統的な権力構造をぶち壊し、すべての権力を自分に集約させるために、軍制改革を行い、長老や太子党、官僚たちの派閥を反腐敗キャンペーンを利用して寸断、潰滅し、メディア・知識分子の言論統制を強化し、鄧小平の打ち立てた共産党ルールを崩壊させることを企てました。

そういう意味では中共の伝統的エリート層にとって習近平も“外地人”いや“外星人”ぐらい理解不能で、扱いにくい存在であることは間違いないないです。そうして翟教授は中共の伝統的エリート層側にいる人物です。

米国の大統領選後、米国の分断が誰の目にも明らかになって、その行方が混とんとしたままだが、実は中国共産党一党体制も同様の分断が起きているのかもしれないです。

民主主義のオープンな国ではなく、選挙もありませんし、言論不自由の恐怖政治の国なので、中国の政権批判の声や、あからさまな対立行動は見えにくいです。だが、翟教授のこうした「うっかりミス」のように見える言動が、なにかしらの意図や影響力の期待を含むという事例は過去にも多々ありました。興味深いのは、最近の中国のそれは、米国メディアや在米華人らの反応とセットにして、米国内と中国内で同時に世論誘導を起こそうとしていることです。

現在世界はコロナ以前から、新たな秩序ができあがる直前にあり、コロナがそれをはやめている状況にあるといえます。第2次大戦後、こうした米エスタブリッシュメントが作り上げた秩序、米中のディープステート双方の関係を軸とした秩序が壊され、新たな秩序ができようとしているのです。

2018年中国の習近平国家主席が、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩序を構築していくことを宣言しました。この宣言は、当時の米国のトランプ政権の「中国の野望阻止」の政策と正面衝突することになりました。米中両国の理念の対立がついにグローバルな規模にまで高まり、明確な衝突の形をとってきたといえました。

習近平氏のこの宣言は、中国共産党機関紙の人民日報(6月24日付)で報道されました。同報道によると、習近平氏は6月22日、23日の両日、北京で開かれた外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」で演説して、この構想を発表したといいます。

当時の米国政府は中国に対してここまでの警戒や懸念を表明していました。これまで習近平政権はその米国の態度に対して、正面から答えることがありませんでしたが、この対外戦略の総括は、その初めての回答とも呼べそうでした。つまり、米国による「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」という指摘に対し、まさにその通りだと応じたのです。

習近平のいわゆる新たな国際秩序とは、当時は私自身も米国への挑戦のみであると捉えていたのですが、これは中国内部に向けた習近平の中国の米国のそれと結びついた「ディープ・ステート」をぶっ壊すというメッセージでもあったかもしれません。

今回の米国の大統領選挙も、その大きな枠組みでとらえるべきです。こういうときには、様々人が様々な目的で、様々な暴露やフェイクニュースを垂れ流し、世論誘導をして、来る世界を自分たち利益集団の都合のように導こうと蠢き始めるものです。私たちは冷静に身構えながら、こうした奇妙な出来事や情報を精査していくべきでしょう。

中国は、民主化、政治と経済、法治国家化がなされおらず、そのためその時々の政府も元々統治の正当性が低く、「ディープステート」がはびこるのは当然のことです。彼らは、泥沼の権力闘争から逃れられないのは仕方のないことです。

しかし米国は違います。今回の大統領選挙以前から、選挙の不正が囁かれてきていましたが、表面上は民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分になされていて、民主国家であるとみなされています。

しかし、その中で、ディープステートが蠢いてきたのは確かなようです。こうしてみると、トランプは中国の体制とディープステートの両方と戦おうとしたともいえるでしょう。

トランプの退任で語った「我々が始めた運動は始まったばかり」という発言は、まさにこのことを意味しており、トランプが返り咲く、咲かないなどの時限の問題ではなく、世界の新た秩序づくりは、始まったばかりとの宣言とらえるべきです。

この秩序づくりには、当然のことながら、日本も参加すべきでしょう。金融の力弱まりつつあり、それにともない米国の既存の「ディープステート」も衰退していくでしょう。次世代の富の源泉はビッグデータの本格的な活用に移りつつあります。これには、米国の知的財産の剽窃した習近平の中国と、GAFAが先頭を走っています。

しかし、以前にもこのブログで述べたように、ビッグデータ活用に関する新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼ全てを兼ね備えている産業構造を持つ国は日本だけです。中国、韓国、台湾、ドイツはハイテクそのものには投資していながら、その周辺や基盤技術の多くを日本に依存しています。GAFAも例外ではありません。

日本のエレクトロニクス企業群は、このイノベーションブームの到来に際して、最も適切なソリューションを世界の顧客に提案・提供できるという唯一無二の強みを持っているのです。特に、CPUなどの心臓部分では日本は後塵を拝したところがありますが、それ以外の部分、特ビッグデータの入り口には強みを発揮することができます。

GAFAのような少数の企業ではなく、日本の裾野の広い全産業の取り組みが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制して、平和な世界を築く礎になるかもしれません。それができるのは、日本だけです。

それが、世界の新たな秩序形成に大きな役割を果たすことになりそうです。というより、私は中共やGAFAが先頭を走り続けるようであれば、世界はまた、米中の「新たなディープステート」に支配されてしまうのではないかと思います。

米国の戦略家ルトワック氏は技術革新の加速に対し、「私たちはコントロールする術(すべ)を理解できていない」と警鐘を鳴らし、グーグルなど「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT大手4社による市場独占への対処など、政治レベルによる技術革新の管理を求めました。

しかし、これも一つの方法だとは思うのですが、自由競争によってなりたってきた経済を今更政治が関与して管理をすれば、これは中国と同じになってしまう可能性があります。それに、それができたにしても、GAFAはそれから逃れるために様々な方法を駆使して逃れると思います。

であればビッグデータの入り口など、大きな一角を日本が占めるようにしたほうが、はるかに「新たなディープステート」の成立を阻止しやすいです。そもそも、日本の「TRON」が世界でもっと使われるようになっていれば、世界はもっと変わっていたかもしれません。

一昔前は、石油メジャーが、その後は金融界が、その後は中国とGAFAが強力な「ディープステート」になるような時代は終わりにすべきです。鼻の大きいお婆さんに、いつまでも操られるべきではないのです。

日本はこのチャンスを逃がすべきではありません。

政府は、そのことをしっかりと認識して、日本産業の発展をサポートすべきでしょう。無論役人がその役割を主導することはできないです。あくまで、政府はここは、黒子に徹するべきなのです。金は気前よく出しても、口は出すべきではないのです。しかも、成功は千三と呼ばれているように、確率が低いということを大前提として金を出すべきでしょう。役人が前面にでれば、すべてぶち壊しになります。特に財務省は必ず全部を緊縮でぶち壊します。財務省はこうした新しい取り組みには禁忌とすべきです。

ここは、日本の若い起業家らに期待したいところです。世界の新たな秩序は、中国でもGAFAでもなく、自分たちが作るのだという気概をもって努力していただきたいです。

安倍やトランプができるのは、中共、GAFAと戦うことですが、新秩序は若い世代が作っていくべきものです。

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