2024年11月5日火曜日

ミサイルは複数の短距離弾道ミサイル、韓国軍発表 金与正氏が日米韓訓練への対抗を表明―【私の論評】核・ミサイルだけではない北朝鮮のサイバー攻撃の脅威と日本の防衛

ミサイルは複数の短距離弾道ミサイル、韓国軍発表 金与正氏が日米韓訓練への対抗を表明

まとめ

  • 北朝鮮は5日朝に複数の短距離弾道ミサイルを発射し、発射地点は南西部の沙里院付近であった。
  • 金与正が日米韓の合同空中訓練を非難し、核戦力強化の正当性を主張したことから、発射は対北安全保障協力の牽制と考えられる。
  • 米国の大統領選直前に行われたこの軍事行動は、どの候補が当選しても北朝鮮の核・ミサイル増強路線を貫く姿勢を示す狙いがある。
北朝鮮が10月31日に発射した新型ICBM「火星19」

 北朝鮮は5日朝、日本海に向けて複数の短距離弾道ミサイルを発射した。発射地点は北朝鮮南西部の沙里院付近で、韓国軍の分析によると、ミサイルは日本時間の7時半頃に発射された。日本政府は、発射されたミサイルは既に落下したと報告している。

 この発射は、北朝鮮が10月31日に最新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した直後のものである。金正恩の妹、金与正は、日米韓が行った合同空中訓練を非難し、核戦力強化の正当性を主張した。今回の発射は、日米韓の対北安全保障協力を牽制する意図があると考えられる。

 さらに、米国では同日、大統領選が行われるため、北朝鮮は選挙を前にして、どの候補が当選しても核・ミサイル増強路線を続ける姿勢を示す狙いがあると見られている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】核・ミサイルだけではない北朝鮮のサイバー攻撃の脅威と日本の防衛

まとめ
  • 北朝鮮によるサイバー攻撃は、核・ミサイル開発やロシアへの派兵と同様に、国家や個人に甚大な被害をもたらす深刻な脅威である。
  • 「ラザルスグループ」を中心とした高度なハッキング部隊が、仮想通貨や銀行、政府機関を標的にして資金調達や情報収集を行っている。
  • サイバー攻撃の目的は、資金調達、情報収集、経済的混乱の引き起こしであり、特に核・ミサイル開発の資金源として利用されている。
  • 過去の「ワナクライ」攻撃や仮想通貨取引所への攻撃が示すように、サイバー攻撃は広範な影響を及ぼし、金融システムの安全性への不安を引き起こしている。
  • 日本は国際的な連携を強化し、サイバー反撃や先制攻撃の対策を講じると共に、個人レベルでもセキュリティ意識を高める必要がある。

北朝鮮の動きは、核・ミサイル開発やロシアへの派兵などが注目されているが、もう一つの差し迫った脅威として北朝鮮によるサイバー攻撃がある。これらの攻撃は、国家間の緊張が高まる中でますます重要な問題となっており、国際的な安全保障に対する新たなリスクを生じさせている。サイバー攻撃は、物理的な武力行使とは異なる形で、個人や企業、国家のインフラに甚大な影響を及ぼす可能性があるため、特に警戒が必要である。

北朝鮮のサイバー攻撃は、その脅威が国家の枠を超え、世界中の個人や企業に甚大な被害をもたらす可能性がある深刻な問題である。北朝鮮には「ラザルスグループ」を中心とした高度なハッキング部隊が存在し、資金調達や戦略的利益を得るために仮想通貨、銀行、政府機関、インフラといった分野を標的にしている。この攻撃によって、個人の財産損失から国家の安全保障に至るまで、影響は幅広く深刻である。

サイバー攻撃の目的は主に三つである。第一は資金調達であり、得られた資金は国連制裁を受けている中で経済を支える重要な収益源となっている。特に核やミサイル開発の資金源として活用されていることは、国際的な安全保障に大きな脅威である。たとえば、ラザルスグループは2017年の仮想通貨取引所への攻撃において、5億ドル以上の資金を得たとされ、これは北朝鮮の収益構造に深く関わっている。

第二の目的は情報収集やスパイ活動であり、北朝鮮は世界中の政府機関や企業に対する攻撃によって軍事機密や技術情報を得ようとしている。この活動は、特定の国家に対して軍事的な優位性を求めるだけでなく、国際的な安全保障環境を不安定にする要因ともなっている。

第三として、経済的および社会的混乱を引き起こす目的が挙げられる。金融機関や電力網といった重要なインフラを狙った攻撃によって、標的国の経済や社会が混乱に陥り、制裁対応の効果を弱めることを狙っているのである。

こうした脅威は実際の事例によっても明らかである。2017年に発生した「ワナクライ」攻撃は、ランサムウェアを利用して世界中の病院、企業、行政機関などに影響を与えた。この攻撃では15万台以上のコンピュータが被害を受け、多くの組織が一時的に業務停止に追い込まれたことから、サイバー攻撃の威力が再認識された。

また、北朝鮮は仮想通貨取引所への攻撃も繰り返しており、2020年にはクアドリガCXやビットフィネックスなどが標的となり、数億ドル規模の損失が生じた。このような攻撃によって仮想通貨市場全体が揺らぎ、世界中で金融システムの安全性に対する不安が高まっている。

VRゴーグルをつけた北朝鮮サイバー軍 AI生成画像

北朝鮮のサイバー攻撃がとりわけ脅威となっている理由は、彼らの手法が非常に巧妙かつ多様であることにある。攻撃にはフィッシングやランサムウェア、仮想通貨ハッキング、DDoS攻撃など多岐にわたる手法が用いられ、対象に応じて柔軟に攻撃手法を変えている。

また、北朝鮮は他国のネットワークインフラを経由して攻撃を行うことも多く、攻撃元の特定が困難である点も特徴である。国外のネットワークを利用しているため、国際的な法執行機関であっても対応が難しく、制裁が及びにくい環境にある。こうした状況を改善するには、各国が個別対応するのではなく、国際的な連携を強化し、情報共有や共同防御の仕組みを構築することが不可欠である。

日本は国際的な連携を強化するための取り組みを進めるべきである。具体的には、サイバーセキュリティに関する国際会議やワークショップを開催し、他国の専門家と情報を共有することが重要である。国内のインフラや企業に対して、サイバー攻撃に対する防御策の強化を支援する政策を推進する必要がある。たとえば、サイバー攻撃のリスク評価や対策計画の策定を促すための助成金や支援プログラムを設けることが考えられる。

さらに、日本としてはサイバー反撃やサイバー先制攻撃なども視野に入れた対策が必要である。近年、サイバー攻撃に対する反撃や先制的な措置を講じる国が増えている。例えば、米国はサイバー攻撃を受けた場合、その攻撃の発信源に対して反撃を行う方針を示している。

このような姿勢は、敵対的な行動に対する抑止力となる。日本も同様に、法的な枠組みを整備し、国際的なルールの中で反撃の選択肢を持つことが求められる。これにより、北朝鮮のような国家によるサイバー攻撃に対して、より効果的な防御を実現できるであろう。

個人レベルでは、サイバーセキュリティ(上図参照)に対する意識を高め、基本的な対策を講じることが重要である。強固なパスワードの使用や二段階認証の導入、定期的なソフトウェアのアップデートを行うことが推奨される。また、フィッシング攻撃に関する知識を得て、不審なメールやリンクに対して警戒心を持つことが必要である。仮想通貨を扱う際には、信頼性の高い取引所を利用し、セキュリティ対策が施されたウォレットを使用することが大切である。

北朝鮮のサイバー攻撃は、単なる国家間の問題にとどまらず、企業や個人の財産や社会全体の信頼を脅かす重大なリスクである。その影響範囲と深刻さを踏まえ、今後さらに国際的な協力によってサイバー防衛力を高める必要がある。

このような状況において、我々は毅然とした態度で北朝鮮の挑戦に立ち向かうべきであり、国家の安全保障を守るために一丸となって行動することが求められている。保守派の立場からは、国民の安全を最優先に考え、強固な防衛体制を築くことが不可欠であると強く訴えたい。 

以下の情報を参考にした。

[1] 公益財団法人電気通信普及財団 - 我が国のサイバーセキュリティ戦略の欠点と展望 ― 「平和国家 ... (https://www.taf.or.jp/files/items/1929/File/%E6%9D%BE%E6%9D%91%E6%98%8C%E5%BB%A3.pdf)

[2] Trend Micro - 能動的サイバー防御とは?日本でも必要性が高まる理由を解説 (https://www.trendmicro.com/ja_jp/jp-security/24/j/expertview-20241009-01.html)

[3] 衆議院 - 「専守防衛」及び「サイバー攻撃」に関する質問主意書 (https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a208089.htm)

[4] 内閣官房 - サイバー安全保障分野での対応能⼒の向上に向けた有識者会議 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo/giron_seiri/giron_seiri_gaiyou.pdf

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