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2018年7月22日日曜日

米ロ首脳会談 − 「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」プーチン大統領が発言―【私の論評】トランプ氏を馬鹿であると報道し続ける日米のマスコミは、自身が馬鹿であると気づいていない?

米ロ首脳会談 − 「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」プーチン大統領が発言

大紀元日本

フィンランドのヘルシンキで16日に開かれた米ロ首脳会談。会談後の共同会見

フィンランドのヘルシンキで16日に開かれた米ロ首脳会談後の共同会見で、プーチン大統領は、米国出身のビジネスマンがロシアで稼いだ資金の一部を、ヒラリー・クリントン側に寄付していたと発言した。

プーチン大統領は、記者団が2016年米大統領選のロシア介入疑惑について質問したところ、米検察が疑わしいと思っている人物の捜査を、ロシアに要請できると述べた。「ロシアの検察庁と捜査当局の代表は、捜査結果を米国に提出する」と付け加えた。

さらに踏み込んで、情報共有のため、選挙介入疑惑を調査するロバート・モラー特別検察官を含む米国の代表者が取り調べに参加できるようにするとした。

プーチン大統領の例える「疑わしい人物」とは、首脳会談前、米検察が大統領選介入の疑いで起訴した12人のロシア情報当局者を指すとみられる。

しかし、プーチン大統領は、疑わしい人物の「よく知られた一例」として、大手投資企業エルミタージュ・キャピタル創業者でCEOのビル・ブラウダー氏を名指しした。ロシアの裁判で、ブラウダー氏は脱税の罪で有罪判決が下っている。

ブラウダー氏はロシアで1996年にエルミタージュ社を創業し、一時は外資系企業でロシア国内トップの資産を保有した。2005年、ロシア国家安全機密に違反したとして、ブラウダー氏は入国を禁じられた。

プーチン大統領は会見で、「ブラウダー氏のパートナーは違法にロシアで50億ドルを稼ぎ、米国に送金した。しかし、ロシアにも米国にも税金を払っていない。彼らは4億ドルをヒラリー・クリントン氏の選挙活動資金として渡した」と述べた。

国際マグニツキー法を成立させた事案に絡むビジネスマン
米国出身で現在は英国籍のブラウダー氏は、プーチン大統領批判を繰り返してきた。このたびの名指し批判に対しても、英タイム誌に17日掲載の文書で反論している。ヒラリー氏への献金について「非常にばかげている、妄想だ」と強く否定した。

またブラウダー氏は、米ロ会談では、米検察が起訴したロシア情報当局者12人と、自分を交換することを求めているとの推察を示した。「しかし、私はすでに英国籍だ。もしプーチン大統領は私をとらえたいならば、テリーザ・メイ首相に言えばいい」と書いた。

19日、ホワイトハウスはトランプ大統領の話として、12人のロシア情報当局者に対するロシアからの取り調べは許可しないと述べた。

英国在住のブラウダー氏は、ロシアにおける脱税で2009年に裁判で懲役9年を言い渡された。同氏のかつての弁護士セルゲイ・マグニツキー氏も同様に脱税で起訴された。マグニツキー弁護士は留置所内で心不全のため死亡した。

マグニツキー弁護士は、ロシア当局内の2.3億ドルの巨額横領事件を指摘していた。弁護士の急死をロシア当局の口封じだと疑う米オバマ政権は、ロシア当局者に対して制裁を科す法案「国際マグニツキー法」を2012年、可決させた。

しかし、ロシアの国営メディア・スプートニク2017年8月によると、米諜報当局の高官は、ブラウダー氏の虚構に基づいて法案が可決したと認識していると報じた。報道によると、謎のハッカー集団が米国務省情報調査局のロシア担当責任者ロバート・オットー氏のメールをハッキングしたところ、オットー氏は、マグニツキー弁護士が告発した横領事件には、明白な証拠がないとつづっていたという。

【私の論評】トランプ氏を馬鹿であると報道し続ける日米のマスコミは、自身が馬鹿であると気づいていない?

このニュースそのうち、国内のメディアが報道すると思っていたのですが、とうとうどこも報道しなかったので取り上げることにしました。プーチン大統領が、米国出身のビジネスマンがロシアで稼いだ資金の一部を、ヒラリー・クリントン側に寄付していたと発言したということ自体は事実です。

この発言は、ブログ冒頭の記事にもあるように、2016年の米大統領選に介入した疑いで米連邦大陪審がロシア連邦軍参謀本部情報局(GRU)の情報部員12人を起訴したことについての質問に対し、プーチン大統領が答えた中で触れたものでした。

ブラウダー氏はロシアでの成功の裏話を暴露する本を出版するなどロシアの不正を告発して、プーチン大統領の怒りを買ったと言われ、同氏の顧問弁護士が逮捕されて獄中死する事件も起きました。

プーチン大統領が米国のロシア疑惑に反論する上でブラウダー氏を引き合いに出したのは、同氏のプーチン政権に対する批判をかわすことと、ロシア情報部員を訴追した米国の情報部員の公平性に疑念を抱かせる狙いがあったと考えられます。

大手投資企業エルミタージュ・キャピタル創業者でCEOのビル・ブラウダー氏

プーチン大統領は、この問題が記者会見で問われることを予想して反論を準備していたのでしょうが、それ以上に「ヒラリーへロシアから4億ドルの寄付」それも「米情報部員が民主党に橋渡し」という爆弾発言に思えました。

ところがである。この爆弾発言は、未だに米国のマスコミには全く扱われていません。米マスコミは、「フェイク(偽)・ニュース」とボツにしたつもりなのかもしれませんが、それにしても、いやしくもロシアの首脳の発言です。

この発言を無視して、今回の首脳会談のトランプ大統領を「ロシアにすり寄った」と批判するだけの米国の大半のマスコミは、はたして報道の公平性を貫いているか首をかしげざるを得ないです。

日本の大手マスコミも米国のマスコミに右にならえで、この件については報道しません。ドナルド・トランプ大統領の「ロシア・ゲート問題」は、すでに実体がないことが明らかになったこともあまり報道されていません。

米国では、昨年からヒラリー・クリントン氏の疑惑が持ち上がっていました。この件も、日本ではほとんど報道されていません。

ヒラリー・クリントン

オバマ政権でヒラリー・クリントン氏が国務長官だった当時、カナダの「ウラニウム・ワン」という企業を、ロシア政府の原子力機関「ロサトム」が買収しました。「ウラニウム・ワン」は、米国のウラン鉱脈の5分の1を保有しており、買収には米国政府の許可が必要でした。

ヒラリー氏はこの買収を積極的に推進し、「ウラニウム・ワン」はロシア政府の傘下企業となった。さすがに共和党保守派は当時、「この売却が米国の国家安全保障を大きく毀損(きそん)する」とオバマ政権を批判したが、企業買収は完了してしまいました。

米国の世界戦略における最大のライバルであるロシアにウラン鉱脈を売り渡すことは、誰が考えても米国の安全保障を損なう。ロシアのプーチン大統領は、世界のウラン・マーケットで独占的な地位を確立するために、この買収を行ったのです。

この件に絡んで、「クリントン財団」は何と、「ウラニウム・ワン」買収の関係者から総額1億4500万ドル(約165億2850万円)にも及ぶ献金を受け取っていました。同財団は慈善団体ですが、事実上のクリントン・ファミリーの“財布同様の存在”です。

しかも、「ウラニウム・ワン」の売却交渉が行われている最中(=ヒラリー国務長官時代)、ビル・クリントン元大統領は、ロシアの政府系投資銀行に招かれて講演を行い、1回の講演で50万ドル(約5700万円)もの謝礼を受け取りました。これは通常の彼の講演謝礼の2倍の金額です。

ビル・クリントン元大統領
また、ロシア政府系のウラン企業のトップは実名を明かさず、クリントン財団に総額235万ドル(約2億6700万円)の献金をしていました。

これらは、「反トランプ派」の代表的メディアであるニューヨーク・タイムズも、事実関係を認めています。

クリントン夫妻の「ロシア・ゲート問題」は今後、さらに追及されて、米民主党やリベラル系メディアに壊滅的打撃を与え、ヒラリー氏が逮捕される可能性もささやかれていました。

今回は、さらにプーチン大統領から、「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」という爆弾発言があったわけです。

以上事実から、日本のマスコミも報道の公平性を貫いているとはいえません。以前もこのブログに掲載したように、米国においてはマスコミのほぼ90%程度をリベラルが牛耳っています。そのため、10%の保守が何かを報道したとしても、その声はかき消されてきました。

ただし、実際には保守系のトランプ氏が大統領になったことからもわかるように、少なくとも米国の人口の半分は保守系の人々によって占められているはずです。しかし、現実にはこれらの人々の声のほとんどがかき消されてきたわけです。

トランプ氏が大統領になって以来、これは少しは改善される傾向にはありますが、まだまだです。日本のマスコミは、このような事情を斟酌して報道すべきですが、そうではなく、こと米国情勢に関しては、米国のマスコミの報道を垂れ流すばかりです。

日米のマスコミには、トランプは馬鹿だという報道を繰り返し行なってきたので、今更馬鹿は馬鹿であり続けるように報道するしかなくなってしまったのかもしれません。しかし、そのような報道をするマスコミ自身が馬鹿であることを気づいていないようです。

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2018年7月11日水曜日

ますます強固になりそうなトランプ政権の対中姿勢―【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!


共和党議員からの糾弾で「親中派」キャリア外交官が引退


トランプ大統領が直接くびしたわけではないが、トランプ政権では
キャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が引退に追い込まれた

 トランプ政権から東アジア太平洋担当の国務次官補候補に指名されていたキャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が、議会共和党から中国への姿勢が軟弱にすぎると非難され、引退へと追い込まれた。

 同氏はオバマ政権時代にも中国などを担当していた女性外交官だ。トランプ政権になってから中国政府に対して甘すぎるとして議会の共和党有力議員から激しく糾弾されていた。

 新たな候補には対中強硬派の名前が挙がっており、トランプ政権の対中姿勢がますます強固になることも予測される。

中国への融和的政策に関与していたソーントン氏

 この発表はやや意外に受け止められた。ソーントン氏が次期の国務次官補に正式に指名されていたからだ。同氏は今年(2018年)2月にはトランプ政権下の当時のレックス・ティラーソン国務長官により次の東アジア太平洋担当国務次官補に指名されていた。

 7月初め、米国務省報道官は「東アジア太平洋問題担当の国務次官補代行を務めるスーザン・ソーントン氏が7月末で外交職務から引退する意向を表明した」と発表した。

スーザン・ソーントン氏 写真はブログ管理人挿入

 ソーントン氏はキャリア外交官として1990年代から主に中国を担当する多数のポストに就いてきた。オバマ前政権下では2016年2月に東アジア太平洋担当の国務次官補の筆頭代理となり、同次官補だったダニエル・ラッセル氏の補佐を務めてきた。ラッセル氏がトランプ政権時代が始まってすぐの2017年3月に退任すると同次官補代行となり、国務省における日本や中国を含む東アジア地域担当の事実上の実務最高責任者となってきた。

 今年2月にはティラーソン長官の推薦で正式の国務次官補に指名され、連邦議会の承認を求めるプロセスに入っていた。

 だが、トランプ政権を支える共和党勢力からは、ソーントン氏はオバマ政権時代の中国への融和的な政策に関与しすぎたという批判が絶えなかった。

 連邦議会の上院外交委員会がソーントン氏の国務次官補指名を審議する一連の公聴会で、共和党有力メンバーのマルコ・ルビオ議員らがソーントン氏の対中姿勢はトランプ政権の政策には合わないという趣旨の批判を繰り返し述べた。その結果、同外交委員会での指名承認に必要な賛成票が得られない見通しが生まれていた。

トランプ政権下の中国との折衝には「不適格」

 ルビオ議員らが、公聴会での発言や国務省あての直接の書簡などで明らかにしたソーントン氏の人事への反対の理由は、以下のとおりである。

(1)ソーントン氏はオバマ政権下の国務省で対中政策に関わった際、いまのトランプ政権の中国への強い抑止や対決の政策とはあまりに異なる宥和策の推進に深く関与してきた。そのため、トランプ政権での中国との折衝には不適格である。

(2)米国に亡命して中国共産党を批判していた中国人実業家の郭文貴氏を帰国させるために、2017年5月、中国国家安全部次官の劉彦平氏らがニューヨークに到着した。FBI(連邦捜査局)が彼らを入国手続き違反で逮捕しようとした際、ソーントン氏は反対し、逮捕を阻んだ。

(3)ソーントン氏は国務省の公式ウェブサイトに掲載された台湾(中華民国)の国旗を中国政府の要請に応じる形で削除した。この措置は中国政府の圧力への屈服であり、トランプ政権の台湾政策に反する。

 以上のようなルビオ議員のソーントン氏批判は広範に公表され、共和党が多数を占める上院外交委員会でも同氏の指名に反対する動きが強くなっていた。

 こうした動きの中で、ソーントン氏はトランプ政権の意向も踏まえて、自ら指名を辞退する形をとったとみられている。

 この動きは、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬となり、オバマ政権が続けてきた対中関与政策の排除が一層進んだことを反映したといえる。ソーントン氏の引退で空席となった次期のアジア太平洋担当の国務次官補候補には、2代目ブッシュ政権で国防総省の中国部長を務め、現在は民間研究機関のAEIの中国研究部長のポストにあるダン・ブルーメンソール氏らの名前が浮上している。同氏は中国への抑止強化論者として知られる。

【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!

上の記事にもあるように、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬になりそうです。しかし、中国政府は未だ楽観的に構えているようです。

トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していたときに、中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられていないようでした。

中国はこれまで、1992年と95年の場合も含め、米通商法301条による調査を交渉で乗り切ってきた経緯があります。

だから、今回も何とかなるであろうと考えているのかもしれません。しかし、今回の場合、中国が米国側と協議したりやWTOによる解決に頼ろうとする姿勢は、中国の計算ミスとなる可能性があります。

中国政府が理解していないのは、トランプ政権が「大真面目」だということです。トランプ政権)は小さなことで手を打つことはしないでしょう。

そもそも、トランプ政権の狙いは、貿易戦争により貿易赤字を減らすとか、中国の市場を開放させるとか、人民元自由化などということだけではないでしょう。無論これらも、中途の目標ではありますが、最終目標ではないと私は考えています。

トランプ大統領の最終目標は中国にたっぷり貯め込んだ外貨を散財をさせて、その国力を弱体化させることではないかと思います。それも、かなり弱体化させ、二度と米国に立ち向かうことができなくすることでしょう。米国は中国が呼びかけているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に最初から冷たくあしらっていました。日本も参加する意思はありません。

トランプ大統領は、外貨がなくなるというか、自らなくそうとしている、国のインフラ投資銀行にわざわざ加盟することはないでしょう。日本もトランプ大統領の対中国戦略の最終目標を知りながら、これにわざわざ加入するような愚かな真似はしません。

トランプ大統領としては、本来ならば中国と戦争をして、中国を屈服させたいのでしょうが、これに関しては米国ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)達も中国と武力衝突するのは現実的ではないと考えいます。

トランプ政権は、武力にかわるもので、中国を徹底的に弱体化する方策を考えていて、そのもっとも良い方法が、貿易戦争と厳しい金融制裁ということになったと考えられます。

なぜそのようになったかといえば、以下のような背景があると考えられます。

第一にトランプの戦略は中国国内の金利政策、外貨規制に静かに照準を合わせていると考えられます。中国の外貨準備が底をつけば、必然的に人民元は激安へ向かいます。このことは中国人民銀行中枢もよく理解しており、二年前から資本規制を強めて対応してきましたた。

外貨による送金が事実上不可能となり、海外旅行の持ち出し外貨も制限され、海外の不動産購入は認めなくなりました。例外的に海航集団などの欧米企業買収はみとめてきたが、金額ベースで比較すると減少していたという事実があります。

第二に中国の不動産バブル崩壊は必定ですが、それを早めることができます。つまりFRBが金利を上げると、投機資金は米国へ環流します。不動産価格を下支えしているのは、国有企業、国有銀行などが巧妙に公的資金を注入しているからです。中国の庶民がかかえる住宅ローンも、金利が高まれば個人破産が増え、すでに暴動が頻発しています。

第三に中国経済がかかえている難題は「株安」「債券安」「人民元安」と、三つの市場における連続的な下落です。ところが賃金高、物価高、金利高になって、その乖離は激烈になっています。

第四に中国は国内に鬼城と呼ばれるゴーストタウンを量産しましたが、くわえて週一便しか飛ばない辺地に飛行場を造成し、乗客が見込めない田舎にまで新幹線を建設し、あちこちに橋梁を架け、トンネルを掘り、都市部から離れた田圃に新駅を造り、50の地方都市では採算が合わないとされる地下鉄網をつくって、エベレストより高い借金の山をつくりました。

ちなみに中国の新幹線は、いまや25000キロ(鉄道の総延長は12万7000キロ)、とくに新幹線は2012年比較で2・5倍となって、最新鋭「復興号」は、北京上海を350キロ、四時間半で結んで世界一と自慢しました。中国は16両連結を自慢したが、従来は馬力の関係から8両連結をしていました。

第五に遅れて参入した生損保、とりわけ生命保険が迎えるインソルバンによる危機。また老人年金はすでに多くが基金を取り崩しています。悪名高い一人っ子政策により、少子高齢化の速度は日本より速いのですが、中国には介護保険制度はなく、老人ホームは富裕層しか入居できません。

そうして、全世界で展開中のBRI(一帯一路)は、もしすべて完成すると総額は8兆ドルなります。米国からみると、この中国の世界的規模の投資は、当該国経済を活性化させたかつてのマーシャルプランのような公共財の提供ではなく、まさに不良在庫処理と、労働力の輸出であり、相手国経済を収奪することです。


工事中断に至っている案件はニカラグア運河、ベネズエラ高速鉄道、インドネシア新幹線、ミャンマーの水力発電などで、最近ではマレーシア東海岸鉄道事業も中止に追い込まれています。目標通りに完成させたのはヨーロッパをつなぐ鉄道くらいです。大風呂敷のまま終わったのはラス-ロス間の新幹線プロジェクトほか、これまた山のようにあります。

親中派のチャンピオンであるパキスタンですら、現実には大判振る舞いのCPEC(中国パキスタン経済回廊)に570億ドルを投じていますが、随所で工事が寸断しています。パキスタンはIMF管理にはいるほど財政が悪化、中国は渋々10億ドルの追加融資を決めました。ほかにも中国の商業銀行は20億ドルを貸しているという情報もあります。2013年にパキスタン危機では67億ドルの負債を返済できずに、IMF管理となりました。

また中国は鼻息荒く全米の企業買収のみか、不動産を買いまくったのですが、これもかつての日本のように、堤清二、秀和の小林某、イアイアイの高橋某と、乗っ取り王といわれたバブル紳士たちは、高値を掴まされ、最後には底値で物件を手放し、馬鹿を見ました。

中国勢はハリウッド映画買収に失敗、ウォルドルフアストリアホテルを買い取った呉小暉は逮捕され、安邦生命は国有化という惨状をすでに露呈しました。

他方で、トランプ大統領は中国企業がアメリカに進出すると喜びを素直に表現しています。ウィスコン洲でFOXCOM(鵬海精密工業)の工場の起工式に、トランプはわざわざ出席し鍬入れセレモニーに参加しました。この式典には孫正義も参加しています。孫のファンドが出資しているからです。

トランプは起工式でこう語りました。「この工場は米国の美しい鉄鋼と、アルミ、そして部品を使う。素晴らしい工場になる。ウィスコンシン州で私は勝った。レーガン大統領も負けた土地(戦局)で私は勝ったのだ」と意気軒昂に吠えました。

かつて日本はスーパー301条発動に加えて「ローカル・コンテンツ法」によって、自動車メーカーは米国進出を余儀なくされました。それによって部品の下請け、孫請けもぞろぞろと米国へ進出したため、国内は空洞化を来しました。中国もいずれ、そうなるでしょう。

結局、米中貿易戦争とは、米国による中国貧窮化政策であり、次の段階では厳しい金融制裁に打って出て、中国の外貨を吐き出させ、中国の息の根を止めようとしているのです。

そうして、その背景にはやはり、トランプ氏が米国の保守を地盤としているということが大きく影響していると考えられます。

そうして、米国の保守派の間では近年、「真珠湾攻撃背後にソ連のスターリンの工作があった」とする「スターリン工作説」が唱えられるようになってきています。そうしてこれは、90年代に公表されたヴェノナ文書の裏付けもあります。

ベノナ文書 最近も研究が進み様々な事実が明らかにされつつある

本来日米は戦争をするようなことはあり得なかったにもかからず、スターリンの工作により、日米は戦うように仕向けられ、あのようなことになってしまったという考え方です。

この米国の誤りが、ソ連を台頭させ、ソ連は崩壊したものの、最近ではそれに変わって中国を台頭させ、北朝鮮による核の脅威に米国はさらされている。ソ連や中国など断じて許すわけにはいかない。

というのが、米国草の根保守のリーダーであった、故フィリス・シュラフリー女史の発言でもあります。

シュラフリー女史のこの発言に米国の保守層は多大な影響を受けています。トランプ氏も当然影響を受けています。トランプ氏にとって、中国は倒すべき敵なのです。

だから、トランプ氏は何としてでも、中国を徹底的に弱体化しようと日々行動しているのです。そうして、弱体化して中国を米国にとって無害な存在にし、あわよくば、中国の現体制を崩壊させたいと目論んでいることでしょう。

この背景を中国側は、良く理解していないようです。そうして、日本人の多くも理解していないようです。トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、多くの人々そうして、他ならぬ中国に理解されていくことになるでしょう。

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2018年7月4日水曜日

「トランプ氏の顔に泥」ポンペオ氏が正恩氏を“叱責”か 核・ミサイル温存の疑念―【私の論評】北の崩壊は、中国の崩壊も早める!ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)達にとって最高のシナリオ(゚д゚)!

「トランプ氏の顔に泥」ポンペオ氏が正恩氏を“叱責”か 核・ミサイル温存の疑念

飛行機のタラップを降りるポンペオ長官 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 マイク・ポンペオ米国務長官は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談するため、5日に米国を出発する。米国メディアは最近、北朝鮮が「核・ミサイル」施設を温存・隠蔽しているとの報道を続けている。事実なら、6月の米朝首脳会談での「非核化合意」に反し、ドナルド・トランプ米大統領の顔に泥を塗る行為だ。ポンペオ氏が、正恩氏を厳しく叱責する場面もありそうだ。

 ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は2日の記者会見で、ポンペオ氏が5~7日の日程で訪朝することを発表した。

サラ・サンダース報道官

 国務省によると、ポンペオ氏は訪朝後、東京を訪れ、日韓両国の高官と「北朝鮮の最終的かつ完全に検証可能な非核化」について話し合うという。

 米国メディアは最近、北朝鮮の「非核化」姿勢について、強い疑念を指摘する報道を続けている。

 米紙ワシントン・ポストは1日付で、北朝鮮の正恩体制に自国の核戦力を全面放棄する意思はなく、むしろ多数の核弾頭の隠蔽を画策しているのが実態である-と複数の米情報当局者が結論づけたと報じた。

 米CNNテレビ(日本語版)も2日、「北朝鮮、ミサイル製造の施設拡張か」「米専門家が衛星画像分析」というタイトルの記事を掲載した。北朝鮮北東部・咸興(ハムフン)市にある化学材料研究所での工事が完了したのが確認できたとし、北朝鮮の「核・ミサイル」開発の放棄に疑念を投げかけた。

 前出のサンダース氏は、北朝鮮の非核化について、核実験場の爆破などを例示して「進展している」と強調したが、甘い。北朝鮮はこれまで、非核化協定や合意を、ことごとく裏切ってきた前科がある。現に、多くの新聞やテレビが、米情報当局者の同様の分析を伝えている。

ジェームズ・マティス国防長官(手前)とジョン・ボルトン大統領補佐官(奥)

 トランプ政権では現在、ジェームズ・マティス国防長官とジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら対北強硬派と、ポンペオ氏ら対北融和派の間で、距離があるとされる。

 ポンペオ氏の今回の訪朝次第では、武力行使も辞さない、対北強硬派が再び力を取り戻すこともありそうだ。

【私の論評】北の崩壊は、中国の崩壊も早める!ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)達にとって最高のシナリオ(゚д゚)!

米国の北朝鮮問題の専門家の多くは、「北朝鮮は非核化に努力していると見せかけるため、巧妙に成果を小出しにし、トランプ大統領の歓心を買おうとするのではないか」との疑念を表明。北朝鮮の非核化が進まない場合、制裁強化のほか軍事行動の検討が必要との意見を述べたとされています。

北朝鮮が国際社会を欺き続けてきた経緯を考えれば、こうした疑念が生じるのは当然のことです。

一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルは1日、衛星写真を専門家が分析した結果として、北朝鮮がミサイル製造工場の拡張を進めていると伝えました。同紙によると、シンガポールで6月12日に初の米朝首脳会談が行われた前後、北朝鮮の東海岸にある咸興(ハムン)で、ミサイル工場を拡張する動きが見られたといいます。咸興では、長距離弾道ミサイルの燃料を製造しているともされています。

ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された、北朝鮮の寧辺核研究所の一部で、6月21日に
Airbus Defense&Spaceが撮影した衛星画像
多くの人が、勘違いしていることがあうります。それは、金正恩氏が約束したのは「非核化」であり、「武装解除」ではないということです。

北朝鮮の通常戦力は、兵器の老朽化と兵站の混乱、そして部隊内での窃盗や性的虐待の横行など、軍紀びん乱ですっかり弱体化しています。金正恩としては、せめて一定の弾道ミサイル戦力を保持しなければ、国防そのものが危うくなってしまいます。

また、核兵器と同様、弾道ミサイルの開発にも相当な犠牲を払っていますし、金正恩氏は重要なミサイル試射がある度に現場で直接指揮を執り、それを国内メディアで大々的に発表しました。ときには金正恩氏の間近で、死亡事故が起きたケースもあったもようです。

弾道ミサイル開発の成功は核開発と並び、金正恩氏の貴重な「実績」です。その両方をいっぺんに「無」にしてしまう選択は、心理的に簡単ではないでしょう。

しかし、北朝鮮がこの点で不透明さを残せば、米国内では再度「軍事行動論」が頭をもたげることになります。北朝鮮情勢はまだまだ、前途多難です。

一方、2012年に始まった北朝鮮の経済改革は、2016年の朝鮮労働党第7回大会で本格化した。しかし、厳しい経済制裁が科せられているため、経済改革は前途多難です。

現在までのところ、経済制裁が北朝鮮経済に及ぼした影響はさほど大きくはないもようです。しかし、経済制裁の効果が現れるまで一定の時間が掛かることから、今後、影響が顕在化していくことなります。

北朝鮮の貿易は中国への依存度が非常に高いです。2017年の中朝貿易総額は前年比5.9%減の49億8,640万ドルになりました。中国政府が国連の北朝鮮制裁決議に基づいて制裁を科したことが中朝貿易の減少につながりました。

この経済を立て直すには、北朝鮮は米国などの経済支援が必要です。しかし、これについては、トランプ大統領は北朝鮮への経済支援について「日韓両国に用意がある。アメリカが支援する必要はない」と述べています。

これによって、北朝鮮は日本からの支援を受けるためには、「拉致問題」を解決しなければならなくなりました。

軍事的にも、経済的にも追い込まれた北朝鮮です。北朝鮮としては、中国と米国を手玉にとった二股外交をしてこの難局に対処しようとしているようです。

その兆候は、すでに見られています。金正恩はシンガポールでの米朝首脳会談に臨んだ後、北朝鮮の首都平城に帰る前に、中国に立ち寄り、習近平と三回目の中朝会談にのぞんでいます。

第三回中朝首脳会談

そこで、何と金正恩は、段階的核の放棄を主張をしていました。これは、米国からすればとんでもない裏切り行為です。

このブログでは、以前からトランプ大統領は、金正恩が米国の対中国戦略の駒として動くなら、北の存続を許容するだろうし、そうでなければ見限りであろうことを主張してきました。

これは、トランプ政権からみれば当然のことです。米国にとっての本命は中国であり、北朝鮮はその前哨戦に過ぎないからです。

さらに、金正恩が完璧に米国の対中戦略の駒になったとして、実際には、「どのように体制を保証するか」という点において大きな矛盾を抱えています。北朝鮮の独裁体制はアメリカが掲げる「自由と正義」とは正反対であり、さらに人権問題も抱えています。

現体制を保証するということは、自由主義の象徴であるアメリカのリーダーが北朝鮮の現状を容認することにもなってしまいます。

経済発展についても、南北交流が進めば国民の反乱などによって現体制が維持できなくなる可能性も生まれます。独裁者にとって民主主義は最大の敵ですが、経済発展および国際交流はその促進につながることになります。

さらにいえば、北朝鮮の敵は米国だけてはありません。中国やロシアとも敵対する部分があり、一部のミサイルは中国にも向いているといわれていました。そこでミサイルや核兵器を放棄するとなれば、中国の脅威にどう対処するかという問題も浮上します。

方法論として考えられるのは絶対王政から立憲君主制への移行であり、その場合は戦後の日本がモデルケースとなるかもしれません。その上で、安全保障条約を締結して北朝鮮の安全をアメリカが保証するというパターンがあります。

ただし、これに対しては、これまで北朝鮮の後ろ盾であった中国やロシアが反発する可能性も高く、トランプ大統領が言及した将来的な在韓米軍の縮小および撤収とともに、今後の焦点のひとつとなるでしょう。

現実には、北朝鮮の非核化には、このような大きな壁が立ちふさがってるのです。

米国にとっては、中国と本格的に戦争をするのは、あまり現実的ではないということから、トランプ政権は、戦争の代替として、貿易戦争や金融制裁などを本格化させることでしょう。

しかし北朝鮮はといえば、小国であり、軍事オプションを選択しうる対象です。北朝鮮が今後煮え切らない態度をとり、ポンペオ長官がこれを変えることができなければ、軍事行動に打ってでる可能性は十分にあります。

これは、北朝鮮がどうのこうのというのではなく、中国への見せしめとして、大いにあり得るシナリオだと思います。

これは、中国にとってはかなりの脅威となると思われます。現在の中国は習近平の独裁体制が整いつつあり、北と本質的に変わらなくなりつつあります。そのため米国のパンダハガー(対中穏健派)の声は小さくなりました。変わったところがあるとすれば、中国のほうがはるかに国土も広く、人口も多く、経済も軍事力が大きいということだけです。

北が姿を消せば、このインパクトはかなり大きいです。制裁と軍事攻撃で、北が崩壊して、新たな体制が繁栄すれば、これは中国にも多大な影響を与えます。

中国では2010年あたりから毎年10万件以上の暴動が発生しているといわれています。更に、経済は相当低迷しています。次の富の源泉とみられていた、一帯一路はどうみても失敗です。

北の崩壊は、中国崩壊もはやめるということで、実はトランプ政権のドラゴンスレイヤー(対中強硬派)にとっては、最高のシナリオかもしれません。

無論、中国崩壊とは、中国という国そのものが崩壊するという意味ではなく、中国の現体制(中国共産党一党支配)が崩壊するということです。ドラゴンスレイヤー達にとっては、価値観が真っ向から対立し、米国を頂点とする世界秩序に挑戦する中国の体制はこの世にあってはならない存在なのです。

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2018年6月19日火曜日

安倍首相&トランプ氏の“罠”にはまった正恩氏 トランプ氏「拉致解決拒否なら経済発展はない」―【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!


安倍首相

米朝首脳会談を受け、日本政府は「拉致問題」解決のための日朝首脳会談の実現に向けて動き出している。これに対し、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は「(拉致問題は)すでに解決された」「(日本は)稚拙かつ愚か」との論評を流すなど、いつもの揺さぶりをかけてきた。ただ、水面下では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の関係者が、安倍晋三政権への接触を図ってきているという。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。  

 「私は北朝鮮にダマされない」「(米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領が、正恩氏に拉致問題を提起した)次は私の番だ」「日本が北朝鮮と直接(日朝首脳会談で)向き合い、拉致問題を解決していく」

 安倍晋三首相は14日、首相官邸で、拉致被害者家族に、断固たる決意をこう表明した。

 さらに、安倍首相は16日、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、「(拉致問題は)すべての拉致被害者を日本に帰国させたとき、初めて解決する」「拉致問題が解決しなければ、経済支援は行わない」「正恩氏が、大きな決断をすることが求められる」と断言した。

 いまが拉致被害者全員奪還の最大のチャンスだ。

 驚かないでいただきたい。米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている。

 旧知の米情報当局関係者は「すべては、安倍首相とトランプ氏が綿密に仕組んだ罠(わな)だ。正恩氏は完全にはまった。逃げられない」といい、続けた。

 「米朝首脳会談の席上、トランプ氏は『戦争か、非核化か』と決断を迫り、『完全非核化すれば、北朝鮮に素晴らしい経済発展がある』とバラ色のビデオを見せた。正恩氏は大喜びだった。そのうえで『完全非核化後、経済制裁は解く。だが、米国は1セントもカネは出さない。中国や韓国もほぼ同じだ。頼れるのは日本だけだ。拉致問題を解決すれば安倍首相は応じる。解決拒否なら経済発展はない。いま決めろ!』とやった。正恩氏は震えながら『(安倍首相と)会いたい』といった」

 米朝首脳会談後の夜、トランプ氏は安倍首相に次のように電話している。

 「今後は非核化と同時に、拉致問題を交渉して進めていかなければならない。シンゾー、ビッグ・プレーヤーとして関わってほしい」「100%、シンゾーを信頼している」

 トランプ氏の勝利宣言ではないか!

 現時点で、官邸が検討している日朝首脳会談の候補は以下の3つだ。

 (1)8月中に、安倍首相が電撃訪朝し、平壌(ピョンヤン)で開催する。

 (2)9月11~13日に、ロシア極東ウラジオストクで国際会議「東方経済フォーラム」が開かれる。ウラジーミル・プーチン大統領が、正恩氏を招待し、フォーラムの合間に安倍首相と会談する。

 (3)9月中~下旬、米ニューヨークでの国連総会に合わせて設定する。

 衝撃情報がある。水面下で、北朝鮮はとんでもない行動に出ている。以下、日米情報当局から入手したものだ。

 「米朝首脳会談から帰国後、正恩氏は幹部らに『日朝首脳会談の早期実現』を命令した。幹部らは『このままでは、正恩氏と北朝鮮のメンツが立たない』と頭を抱え、日本国内の北朝鮮協力者に『正恩氏礼賛、安倍潰しの世論工作をやれ!』と秘密指令を出した」

 「首相官邸や自民党の周辺に、北朝鮮関係者とされる人々が秘密接触している。彼らは『(拉致被害者を帰したら)安倍首相は本当に北朝鮮を支援するのか。信用していいのか』『拉致被害者を帰して、日本で激しい北朝鮮バッシングが起きたら、抑えられるのか』と泣きついている」

 日本はこのチャンスを絶対に逃してはならない。何度でもいう。拉致被害者全員の帰国は日本人全員の悲願だ。日本の主権がかかっている。

 だが、問題は左派野党の方々だ。

 政府・与党が「国会会期の1カ月延長」を申し入れたら、断固拒否したのだ。

 はぁ? 能天気もいい加減にしろ! 現状が分かっているのか。ゴールデンウイーク前後には職場放棄の「18連休」で、国民からは「税金ドロボウ!」と批判された。反省すらない。あきれてものが言えない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事で、"米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている"というのは間違いないでしょう。

これは、トランプ大統領が意図的にそのように仕向けたのだと思います。何しろ、米国は北朝鮮に長年にわたって騙され続けてきたという経緯があります。

その米国がまた北朝鮮に援助などの面で直接関われば、また同じことを繰り返す可能性が大きいです。だからこそ、トランプ大統領は援助の部分は安倍総理に任せたのでしょう。

実際安倍総理なら、かなり前から北朝鮮と交渉してきたという経緯があります。北朝鮮との交渉ということでは、各国首脳の中では最も経験のあるうちの一人であることは間違いありません。

長年北と交渉をしてきた経験のある安倍総理

まさに、日本が北への支援にあたるということになれば、拉致問題の解決に関して北に譲ることはないでしょうし、拉致問題は、核の完全放棄に対する正確なリトマス試験紙なる可能性が高いです。

拉致問題を積極的に解決しようとしない北が、核の完全放棄だけを積極的にするなどということは考えにくいです。

このブログでは、米朝首脳会談後すみやかに、中朝首脳会談が開催されるか否かが、リスマス試験紙になるのではないかという見方をしていましたが、それよりも、拉致問題のほうがより正確なものになることでしょう。

実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日、空路で北京に到着し、2日間にわたる訪中日程を開始しています。中国の習近平国家主席は金氏の滞在中、3月と5月に続き3度目となる首脳会談を実施。朝鮮半島の非核化や平和体制構築を巡る米朝間での協議本格化を見据え、中国の立場を伝え、積極的に関与する姿勢を強調する構えのようです。

6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮は完全な非核化を約束しました。ただ米側は対北朝鮮制裁解除は完全非核化実現後になるとの立場で、非核化の行動ごとに北朝鮮が見返りを得る「段階的措置」を求める北朝鮮側の主張とは隔たりがあります。

この隔たりを埋めなおかつ、拉致問題を解決しなければ、日本は北朝鮮を支援することはありません。というより、日本の国民感情を考慮すればそのようなことはできないでしょう。



日本だけが、拉致問題を北朝鮮に迫っても、日本は北朝鮮に憲法の制約上軍事オプションを用いることは難しいので、たとえ援助をするという約束をしても、北が拉致問題解決に応じることはなかなかないと考えられますが、同時に米国の強大な軍事力を背景にすれば、話は違ってきます。

拉致問題を解決しなければ、日米による制裁はさらに強化され、それても北が応じなければ、次の段階では、機雷封鎖や一部爆撃をして、北朝鮮を完璧に孤立させることもできます。最後の段階では米国が軍事オプションを用いることになります。その時は、金正恩がこの世から姿を消すことになります。

これだと、北朝鮮は結局日本の経済支援を受け入れざるをない状況になります。

現在、トランプ政権は中国と貿易戦争を行っています。これに関しても、米国だけではなく、日本も絡めばかなりのことができるはずです。

いずれにせよ、トランプ大統領としては日米の協力のもとに北を早い段階で屈服させ、中国に対してさらに激しい締め付けを行い、いずれ屈服させたいと考えていることでしょう。


トランプ大統領は15日に、中国からの輸入品500億ドル相当への25%の追加関税措置を発表したばかりで、その際、中国が報復措置を講じた場合は追加関税を課すと述べていた。中国は直ちに報復措置を発表しました。

トランプ米大統領は18日、中国が発表済みの報復措置を実施すれば、同国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に追加関税を適用すると警告した。中国側は直ちに対抗する姿勢を打ち出し、このまま行けば米中貿易摩擦の一段の激化は必至の様相です。

この貿易戦争、以前もこのブログでも掲載したように、中国には全く勝ち目がありません。この貿易戦争、いずれかの段階化で日米が協力して、中国に対する制裁という形にもっていけば、中国はかなり窮することでしょう。

中国も、北朝鮮も、まともに先進国などと貿易をしたいのなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化することを迫られることになります。

しかし、これを実行するとすれば、両国とも現体制は崩壊するしかなくなります。

その日が来るのは案外近いかもしれません。

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2018年5月23日水曜日

米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!


文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

 ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国の条件に応じなければ米朝首脳会談(6月12日)を中止すると通告した。ホワイトハウスで22日(米国時間)に行われた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談で明言した。文氏は「米朝の仲介役」として米国に乗り込んだが、完全失敗に終わった。

 「われわれは一定の条件を求めている。それがなければ、(米朝首脳)会談は行われないだろう。会談は北朝鮮と世界にとって素晴らしい機会になる。行われなければ、会談は延期され、別の機会に行われるのではないか」

 米韓首脳会談の冒頭、トランプ氏は記者団にこう述べた。

 北朝鮮は16日、トランプ政権が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を理由に、米朝首脳会談中止を示唆した。得意とする「揺さぶり外交」の一貫だが、トランプ氏は改めて、北朝鮮に「完全非核化」を突きつけた。

 トランプ氏の批判は、北朝鮮に急接近している中国にも及んだ。

 今月7、8日に中国・大連で行われた習近平国家主席と正恩氏による2回目の中朝首脳会談について、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と怒りを押し殺した。

 大連会談で、正恩氏は「関係各国が責任をもって段階的かつ同時並行的な措置を講じ、最終的に朝鮮半島の非核化を実現させることを希望する」と主張した。習氏は、米朝首脳会談で非核化合意に達した場合、中国が段階的支援に乗り出すことが可能との考えを示したとも報じられている。

 トランプ政権は、経済、軍事両面で「最大限の圧力」をかけ、正恩氏を対話に応じさせた。その努力を中国が台無しにしようとしているとするなら大問題だ。

 中国という「後ろ盾」を得て再び、米国への反発に転じた北朝鮮に対し、マイク・ペンス副大統領はクギを刺した。21日に出演した米FOXニュースの報道番組で、「北朝鮮は守る気のない約束で、米国から譲歩を引き出すようなまねはしない方がいい」と述べ、軍事的選択肢を行使する可能性を「一切排除していない」と語ったのだ。

 米国、北朝鮮、中国による駆け引きが続くなか、「米朝の仲介役」を自認し、米国に乗り込んだ文氏の存在感はまるでない。北朝鮮にも会談をキャンセルされるなど、「韓国パッシング」に見舞われている。

【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!

昨年米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」伝えるテレビの画面

米軍が北朝鮮を先制攻撃した場合、最新資料では北朝鮮は1日で壊滅するといわれています。その根拠となるのは、2017年12月4~8日に実施された米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」です。

日本では戦闘機や偵察機など米韓両軍で230機が参加したと伝えられていましたが、11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」発射したことを受けて260機に増強され、史上最大規模の軍事訓練となりました。

詳細はこれまで明らかにされてこなかったのですが、訓練内容を分析した文書を見ると本当に実戦さながらでした。米軍が本当に先制攻撃を仕掛けた場合、その攻撃力は想像を絶します。北朝鮮は報復攻撃さえできずに、早ければ1日で壊滅すると考えられます。

これまで米国が北朝鮮に対して先制攻撃を実行した場合、全面戦争に発展するのは避けられず、北朝鮮の報復攻撃によって日米韓は甚大な被害を受けることが予想されました。

特に非武装地帯(DMZ)の北方に配置された北朝鮮の多連装ロケット砲や長距離砲がいっせいに火を噴き、付近に展開している米陸軍第2歩兵師団が標的になるばかりか、ソウルが“火の海”に化す悲劇も現実味を帯びていました。

北朝鮮の長距離砲

過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがありました。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからです。

しかし、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧されました。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯がありました。

いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の実戦配置も終了したと考えられる、北朝鮮の“脅威”は当時の比ではありません。当然、米国本土も無傷では済まないはずです。

ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されました。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか、公開されている資料などから以下にまとめます。
攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといわれています。 
北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃します。 
F35A
むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩きます。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順です。
B-1B爆撃機
開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜めることになるでしょう。ところが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行します。
さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をします。 
E-8ジョイント・スターズ 
おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは考えにくいです。
仮に、北朝鮮が同時多発的な攻撃を企てたとしても、ほとんどのミサイルが液体燃料のため注入に1~2日かかります。その動向がキャッチされると戦争準備と認められ、米国にとってみれば先制攻撃の口実になります。
やる気になれば、米軍は韓国や日本に従来考えられていたほどの壊滅的な打撃を受けさせることなく、北朝鮮を蹂躙できるわけです。

金正恩として、金王朝存続のためトランプ大統領に北朝鮮の核保有を認めさせたいのでしょうが、トランプ大統領のほうはその気は全くありません。

米国は、北の完璧な核放棄がない限り、いずれ北に攻撃を仕掛けることになるでしょう。現在は、攻撃するにしても、どの規模で、どれくらいの期間攻撃するかを決めるため機会をうかがっているとみるべきでしょう。それでも、金正恩が核放棄に応じれば、別の道を用意する心づもりもあることでしょう。

いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。

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2018年5月10日木曜日

トランプ氏、解放米国人を出迎え 米朝首脳会談を前に北朝鮮が解放―【私の論評】政府は憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還せよ(゚д゚)!

トランプ氏、解放米国人を出迎え 米朝首脳会談を前に北朝鮮が解放


北朝鮮から解放された米国人3人が10日未明、米ワシントンのアンドリューズ空軍基地に到着した。ドナルド・トランプ米大統領は基地で3人を出迎えた。

トランプ氏は3人の基地到着を受け、「この本当に最高の人たちにとって特別な夜だ」と述べた。

ホワイトハウスは3人の解放が、予定されているトランプ氏と北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を前にした友好の意思表示だとしている。

トランプ氏は首脳会談の開催地が「3日以内に」発表されるだろうと述べた。

3人を乗せた米空軍機は、午後2時45分ごろ到着した。トランプ氏とメラニア夫人は機内に入り、数分後に3人の男性と共に姿を現し報道陣に手を振った。

トランプ氏は記者団を前に、金委員長が首脳会談前に3人を解放してくれたことを喜び、「正直言って、会談前に実現するとは思っていなかった」と明らかにした。

3人の解放が自分にとって最高に誇らしい業績かと聞かれると、「それは(朝鮮)半島の完全非核化だ」と答えた。

「(3人の解放実現は)素晴らしい名誉だ。しかし、本当の名誉は、核兵器をなくす勝利の実現だ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏はさらに、北朝鮮に旅行できるようになる日を期待すると話し、さらに金委員長が自分の国を「本当の世界」の一員にしたがっていると、自分は確信していると強調した。

解放されたキム・ハクソン氏、トニー・キム氏、キム・ドンチョル氏の3人は帰国に先立ち発表した声明で「米政府、トランプ大統領、(マイク・)ポンペオ米国務長官、そして我々を家へと連れ戻してくれた米国の人々に深い感謝を伝えたい」と述べた。

「神と、我々と我々の帰国を祈ってくれた全ての家族や友人に感謝する」

トランプ氏は9日、「北朝鮮から飛行機で帰国中のマイク・ポンペオ国務長官に、皆がとても会いたがっている素晴らしい紳士3人が同乗中だと報告できて嬉しい。元気なようだ。そして金正恩と良い会談だった。日取りと場所が決まった」とツイートし、3人の解放を明かしていた。



3人は反政府行為罪などで拘束され、労働収容所に勾留されていた。

解放はトランプ氏と金氏との会談の詳細を調整するためにポンペオ氏が平壌を訪問している最中に起きた。

トランプ氏は「金正恩の行動と3人の帰国を許してくれたことに感謝する」と話した。

左からキム・ハクソン氏、キム・ドンチョル氏、トニー・キム氏

解放された3人はポンペオ氏と共に、米空軍の飛行機で北朝鮮を離れた。4人は帰国途中、東京近郊の横田空軍基地で、より良い医療設備を備えた飛行機に乗り換えたという。

ポンペオ氏は「全ての数値は現在のところ、彼らの健康状態がありうる限り最高に良いと示している」と述べた。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金正恩氏は同氏が3人の拘束米国人の恩赦を求める米国の申し出を承認したとし、自身とトランプ大統領の会談が朝鮮半島の状況を前進させる「素晴らしい最初の一歩」になるだろうと述べたという。

拘束された3人のうち1人は2015年に労働収容所に収容され、残りの2人は1年余りを収容所で過ごした。3人に対する有罪判決は政治的なもので、人権侵害だと広く非難されている。

解放された3人は
  • キム・ハクソン氏は2017年5月、「敵対行為」の疑いで拘束された。同氏は自分をキリスト教伝道師だとし、平壌科学技術大学(PUST)で実験的な農場を始めようとしていると説明していた。
  • トニー・キム氏はキム・サンドクという名前でも知られ、キム・ハクソン氏と同じくPUSTで勤務していた。トニー・キム氏は2017年4月にスパイ容疑で拘束された。韓国メディアによると、同氏は北朝鮮の人道支援にかかわっていたという。
  • キム・ドンチョル氏は60代前半の牧師。2015年にスパイ容疑で拘束され、その後10年の重労働刑を言い渡されていた。

解放への反応は

韓国大統領府の青瓦台は米国人の解放を歓迎し、今後の交渉に「前向きな影響」があるだろうと述べた。

青瓦台の尹永燦(ユン・ヨンチャン)国民疎通首席秘書官はまた北朝鮮に対し、同様に拘束されている韓国人6人の解放も求めた。

尹氏は「韓国と北朝鮮の融和を促進し、朝鮮半島に平和を広めるため、拘束韓国人の速やかな送還を望む」と述べた。

トニー・キム氏の家族はBBCに提供された声明で、「彼の帰還に向けて取り組み、貢献してくれた全ての人々に感謝したい」と述べた。また家族は「北朝鮮と直接やり取りしたことについて、大統領にも感謝したい」と話した。

米国の外交責任者マイク・ポンペオ国務長官は、6週間で2回、北朝鮮の指導者である金正恩氏と会談

北朝鮮の強制収容所はどんな場所なのか

米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)によると、北朝鮮では約12万人が適正な手続きなしに収監されていると考えられている。

韓国製DVD観賞から亡命未遂に至るまで、住民はあらゆる罪状で政府に拘束される恐れがあるという。

そのなかでも政治犯は、専用に収容所に送られることが多い。大抵は過酷な労働収容所で、鉱山採掘や木材伐採など厳しい肉体労働が課される。

米大学生だったオットー・ワームビア氏は、平壌での涙の告白会見から1年もせずに亡くなった

重労働罪を課されていた米国人宣教師のケネス・ベ氏は、悪い健康状態にもかかわらず牧場で週6日の労働を強制されたという。

一番最近解放された米国人、ホテルの政治宣伝ポスターを盗もうとした罪で拘束されていたオットー・ワームビア氏は、昨年解放されたが致命的な健康状態で、帰国後ほどなくして死亡した。

両親のフレッド・ワームビア氏とシンディ・ワームビア氏は、「解放された拘束者やその家族と共に喜んでいる。オットーが恋しい」と話した。

(英語記事 North Korea summit: Trump greets freed US detainees

【私の論評】政府は憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還せよ(゚д゚)!

安倍首相は10日朝、アメリカのトランプ大統領と電話で会談し、北朝鮮からアメリカ人3人が解放されたことについて「大きな成果だ」と伝えました。 安倍首相「私からは、拘束されていた3名の米国人が解放されたことについて、大きな成果であるとお祝いを申し上げました。

この解放については北朝鮮の前向きな姿勢であり歓迎したい」 また、安倍首相は拉致問題について「日米韓、あるいは中国の協力も得て解決に全力を尽くしていきたい」と改めて強調しました。

さらに、トランプ大統領から、北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのポンペオ国務長官との会談について、詳細な説明を受け、米朝首脳会談での対応についてすりあわせを行ったといいます。

 この中でトランプ大統領が「日米で緊密に連携していきたい。日本はビッグプレーヤーだ」と述べたのに対し、安倍首相は「日本の立場を共有していただいていることを感謝する」と応じました。


トランプ大統領が「日本はビッグプレイヤー」だと述べたのは、日本が米国と協同でかなりの圧力を北朝鮮にかけてきたこと、さらには安倍総理の北朝鮮と長期間にわたる交渉の経験による、トランプ大統領に対するアドバイスなどを評価したものと考えられます。

さて、米国人三人の救出と比較すると、日本の拉致被害者問題がいつまでも解決されないのが気にかかります。

拉致犯人はすでにわかっています。被害者が監禁されている国もわかっています。それなのになぜ取り戻せなかったのでしょうか。

その最大の原因として、日本には、その中でもとりわけ外務省には、国家の責任で国民を救出するという考え方自体がなかったからです。現在では事情は多少変化しているとはいえ、海外で被害に遭った国民に対しては、国家としての日本は無関心であり続ける構造になっています。

なぜそうなるかといえば、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」させられ、そしてそれをいつの間にか後生大事に抱えて現実を直視しなくなった戦後日本国民の意識が変わっていなかったからです。「平和を愛する諸国民」は自明な存在ではありません。

拉致被害者問題が明らかになったり、5人の被害者が日本に戻ってきた時あたりまでは、この国民の意識がほとんど変わっていませんでした。当時の政府の中には、北朝鮮は日本人を一時帰国させたという考え方なので、5人の被害者を北朝鮮に返そうと考えた人もいたというのですから、驚きです。これでは、日本という国は国家の意思もないといわれても、仕方ないような状況でした。

結局、安倍氏の判断で5人は政府の意思で日本に残すと発表したのですが、当時の日本は明らかに異常でした。

横田めぐみさん
 
国際社会では当り前の「国家」という言葉さえ使えない風潮の中で、政府は非常に注意深く、タブー視されていることや言葉には、触れないできたのです。日本全体の価値観が信じ難い程、おかしくなっていたのです。国家の意思、或いは責任について語ること自体が現行憲法下ではあってはならない事柄だという国に、日本はなってしまっていたのです。であれば、外務省も当然、国民を守るために動くことなどしてはならないと考えるわけです。

しかし、現在では帰国した拉致被害者を北朝鮮に返せなどといえば、そのようなことを言い出した人は袋叩きにあうのは確実です。国民の意識も最近はかわりつつあり、この国のあり方も変わってきています。それに、世界には日本のように平和をうたう憲法典を持っている国で、軍隊を持ち自衛戦争を認めている国々もあります。

そうして、この憲法の前文だとて、決して金科玉条ではなく解釈など変えられるはずです。平和を愛する諸国民に対しては、公正と信義に信頼するのは当然です。しかし、北朝鮮の諸国民とくにその中でも支配層の公正と信義は信頼できず、わられの安全と生存を保持しようと決意などできないです。よって、この前文は平和を愛する諸国民に対するものであり、そうではない国に対してはあてはまらないという解釈も十分成り立つと思います。

そうして、内閣法制局も1960年代のはじめころまでは、憲法解釈を何度も変えていました。日本の憲法典は決して、金科玉条ではないのです。

であれば、今回は拉致被害者奪還の最後のチャンスであるとも思われますので、政府としてはギリギリの選択を迫られた場合には、憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還して欲しいです。米国が三人の米国市民を奪還できた背景には、米軍の強大な軍事力があったことを忘れるべきではありません。

そうして、政府は憲法解釈の変更後に、解散総選挙を実施し国民の信を問えば良いと思います。それで、与党側が負けるような国であれば、国民が馬鹿だということです。それは、それで仕方ないです。しかし、私自身は日本国民はそれほど馬鹿ではないと思います。そのくらいのことをしてでも、今回は、拉致被害者を奪還すべきと私は思います。

そうして、我が国は新たに拉致被害者が出た場合には、自衛隊を派遣してでも自国民を救出できる当たり前の国になるべきです。

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2018年5月8日火曜日

イラン核合意問題 専門家はこう見る―【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

イラン核合意問題 専門家はこう見る


アメリカのトランプ大統領が、イラン核合意についての判断を日本時間の9日発表することについて、日本とサウジアラビアの専門家に聞きました。

トランプ政権の悪あがき イランはNPT離脱も

イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は、中東のレバノンでの総選挙で、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織、ヒズボラの陣営が躍進したことなどが背景にあるとしたうえで、「イランの影響力が地域に広がるのを止めることに躍起になっているトランプ政権の悪あがきではないか」と分析しています。

そのうえで、「イランの核合意から離脱か、破棄するという内容になると思う」と述べ、合意から離脱すると発表する可能性が高いという見方を示しました。

また、アメリカが核合意から離脱した場合、「イラン側の責任ある立場の人から、核合意を履行することと、イランがNPT=核拡散防止条約にとどまることを条件付ける発言が出てきた。かつての北朝鮮と同じようにNPT離脱というカードを振りかざしてくる可能性がある」と述べ、イランが、強硬路線に踏み切る可能性もあると指摘しました。

そのうえで、「IAEA=国際原子力機関が、現在、世界で最も厳しい査察態勢のもとで、イランを監視しているが、これがなくなるため、イラン国内で何が行われているのか一切情報が見えなくなり、核兵器を開発しているとの疑いが生まれてしまう。こうした状態をイスラエルやサウジアラビア、それに、アメリカやヨーロッパが放置するとは考えにくく、イランの核施設に対する限定的な軍事攻撃か、イランの現体制を崩壊させるために、大規模な軍事介入をする可能性もある」との見方を示しました。

合意の見直しは不可欠 一層混乱が深まるおそれも

ムハンマド・スラミ博士

中東のアラブ諸国の盟主を自認するサウジアラビアは、おととしからイランと国交を断絶したほか、イランが内戦が続くイエメンの反体制派を支援するなどして、地域を不安定化させていると激しく非難し、アメリカのトランプ政権にイランへの包囲網を強めるよう働きかけてきました。

サウジアラビアのイラン研究機関の代表を務めるムハンマド・スラミ博士は、NHKのインタビューに対し、「核合意はイランの核兵器開発の阻止につながったが、包括的ではなかった。重要なのはイランのアラブ諸国に対する内政干渉をやめさせることを、核合意に含めることだ」と述べ、サウジアラビアにとって合意の見直しは、不可欠だとの立場を強調しました。

一方、「サウジアラビアは、直接戦争を望んでいない。ただ、イスラエルやアメリカがイランの支援を受けた中東各地の民兵を攻撃する可能性はある」と分析し、イランが影響力を拡大するシリアなどで、軍事的緊張が高まり、一層混乱が深まるおそれがあると指摘しました。

また、イランとの経済取引について、「もし湾岸諸国とビジネスの継続を望むならば、イランとビジネスをするべきでない。ビジネスの継続は、イランのネガティブな行動を支援していることにほかならないからだ」と警告しました。

【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

上記のニュース、イランの核問題について知らないと理解できないと思いますので、まずはそれについて掲載しておきます。

イランの核開発問題(イランのかくかいはつもんだい)とは、イランが自国の核関連施設で高濃縮ウランの製造を企画していた、またはしている、という疑惑がかけられている問題のこと。

イランは医療用アイソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働のため、20%高濃縮ウランの自国製造を進めています。通常の原子力発電では低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランを用いるのは原子爆弾の製造を狙っているからではないか、とアメリカなどから疑いをかけられました。

ただし原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であるため、意見が分かれました。イランは自ら加盟する核不拡散条約(NPT)の正当な権利を行使しているのであり、核兵器は作らないと主張した。当時の第6代イラン大統領マフムード・アフマディーネジャードは『Newsweek』2009年10月7日号の取材に対して「核爆弾は持ってはならないものだ。」と否定する発言をしています。

これに対し核保有国アメリカは、イランの主張に疑念を持ち、核兵器保有に向けての高濃縮ウランであると主張して、国際的にイランを孤立化させようとする政策を取ってました。これらには政治的思惑が見え隠れしており、疑惑段階でイランに経済制裁をとる一方で、既に核兵器を保有しているパキスタンやインドなどにはイランのようなボイコット(制裁)を行いませんでした。

イランの政権は、2013年の大統領選挙によって、憲法規定による任期で退任したアフマディーネジャードからハサン・ロウハーニーに交代しました。

2015年にイランは米英仏独中露6か国協議「P5プラス1」との間で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結し、核兵器の保有に必要な核物質の製造・蓄積を制限することとなりました。

2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表。これを受けてイランとP5プラス1は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入りました。

国連常任理事国であり核保有国である5カ国に加えドイツがメンバーとなっている背景には、ドイツとイランの密接な経済的結びつき―とりわけ原子力分野における―があります。イランの核開発はかなりの程度ドイツの原子力技術に依存しており、シーメンスを始めとするドイツの主要企業がイランとの深いつながりを持っています。

バラク・オバマ前大統領時代の2015年に締結されたこの合意は、イランが核開発を制限するのと引き換えに、欧米諸国がイランに対する経済制裁を解除するという「包括的共同作業計画」です。

これに伴いアメリカでは国内手続きとして、イランの合意遵守状況に基づき、大統領が制裁解除を維持するかどうかを定期的に判断することになっています。今度の期限は5月12日です。

トランプは選挙戦のときから、イランとの核合意はアメリカが締結した「最も愚かな」合意の1つだとして、その「解体」を約束してきました。それでもジェームズ・マティス国防長官ら閣僚に説得されて、これまでは離脱を思いとどまってきたようです。

トランプ米大統領は7日、P5プラス1とイランの核合意に関し、「8日午後2時(日本時間9日午前3時)に私の決定を発表する」とツイッターに書いており、おそらく合意から離脱すると発表すると考えられています。

トランプ大統領のこの動きは北朝鮮問題とも関係があるものと考えられます。北朝鮮がイランのように原子力分野の開発を継続し、潜在的な核の脅威を温存することを事前に防止するための措置ではないかと考えられます。

実際、これに対応したものかどうかはわかりませんが、中国国営メディアは8日、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が7日から8日まで遼寧省大連を訪問し、習近平国家主席と会談したと報じました。金氏の訪中が確認されたのは3月下旬以来、2回目です。つい最近会ったばかなのに、これは何か新しい動きに対応していると考えられます。

金正恩としては、トランプ氏のこの動きを察知して、これに対応するために習近平と対応を協議するために面談したということも十分考えられます。

中国国営通信 新華社が8日に配信した、中国遼寧省大連で会談する習近平主席(右)と金正恩委員長

金正恩としては、核のリビア方式による完全廃棄は何とか避けたい、最低でもイランのように原子力分野の開発を継続し、いつでも核兵器を開発できる体制を整えたいと目論んでいたのでしょうが、それも封じられる可能性がでてきたわけです。

イラン産石油の最大の「お得意様」は中国です。金正恩としては、その中国が輸入量を減らす可能性は低いとみて。中国がイラン制裁に踏み切るかどうか探りにでたものと考えられます。

12年にアメリカとEUが対イラン経済・金融制裁を強化したとき、国際市場におけるイランの石油販売量は半減しました。そしてこのことが、イランを交渉のテーブルに引き戻す重要な役割を果たしました。

しかし、今度の制裁に中国が参加しなければ、前回ほどの経済的打撃をイランに与えることはできません。そうなればイランを交渉のテーブルに引き戻すことは難しいし、ましてや、より厳しい条件の「新合意」を結ぶことなど不可能です。

そうして、イランが交渉のテーブルにつかなければ、北朝鮮にとっては有利になります。金正恩は、米朝会談で比較的優位に交渉をすすめられることにもなります。しかし、もし米国がイランに軍事攻撃という事態にでもなれば、金正恩は嫌がおうでも、リビア方式以外に生き残る道はないことになります。


いずれにしても、今回のイラン核合意問題の趨勢が米朝会談にも大きな影響を及ぼすことになりそうです。

私は、今回はトランプ氏が「合意から離脱」を発表をすると見ています。そうして、本当にそうするかどうかはわかりませんが、いずれイランへの武力行使の可能性もちらつかせると思います。そうして金正恩を極限まで追い詰めて、米朝会談をかなり有利にすすめるか、金正恩が会談をキャンセルするように仕向け、米軍が武力攻撃をしやすい状況にもっていくものと考えます。

トランプ氏は元々は実業家です。実業家の場合、常に使える資源は限られていることを自覚しています。だから、優先順位をつけます。現在優先度が一番高いのは、北朝鮮です。優先順位をはっきりつけることと、定めた目標に対しては活用できるものは何でも活用するというのが、優れた実業家の真骨頂です。そうして、本当は米国でさえも、使える資源は限られています。

イラクの問題と北朝鮮の問題に関して、どちらを優先するかということを考えれば、北朝鮮に軍配があがるのは当然のことです。

イラン問題は多少複雑になったり、解決が長引いたにしても、イランが北朝鮮のように核ミサイルを米国に発射することはできません。11月の選挙の中間選挙のことを考えても、多少イラン問題が複雑化しようとも、北朝鮮問題の決着への見通しをこのあたりまでにはっきりと、国民に示したいというトランプ氏のしたたかな思惑が透けて見えます。

これは、政治の専門家や、中東の専門家などにはかえって見えにくい局面だと思います。

私は、トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用していると考えるのが妥当な見方であると考えます。

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