2018年10月2日火曜日

本庶氏が語った研究の原動力 ノーベル医学・生理学賞―【私の論評】 日本も未来投資として、教育・研究国債を発行すべきときがきた(゚д゚)!

本庶氏が語った研究の原動力 ノーベル医学・生理学賞

FNN PRIME

本庶佑京都大学特別教授

ノーベル医学・生理学賞が発表され、がん治療に、新たな道を開いた、本庶佑京都大学特別教授(76)の受賞が決定しました。

その本庶氏から、椿原慶子キャスターが直接、お話を伺いました。

(ノーベル賞受賞おめでとうございます)

「ありがとうございます」

(研究を続ける、原動力・心構え)

「原動力というのはね、小さい時に、野口英世の伝記を読んで、非常に強い感銘を受けたということが1つありますし。それから、医学部にいる時に、同級生が、がんで死んだとかね、いろんなことがあります。それから、何よりも大きなことは、わたし自身が、物事を突き詰めて考えたりという好奇心というのが、わりかし強かった」

(野口英世の伝記にどんな感銘?)

「ご存じのように、野口英世というのは、非常に逆境で、普通の教育すら受けられるかどうか、わからないというところで、困難を破って、そして、医師の資格を取って、さらに、単身で、アメリカに押しかけのような形で行って、そういう非常に強い意志と行動力と能力があったと。それは、非常に、わたしは感銘を受けました。わたしの家族には、医師の人が多かった、おやじ自身も、大学の医学部の教授でしたし。それから、何よりもね、わたしは、人に使われることが好きじゃなかったので。自由にやりたい、勝手にやりたいと、そういうことで、医者とか、弁護士とか、そういう資格がある方がいいんじゃないかなと思ってました」

(日本の基礎医学分野の発展に必要なことは?)

「まず、重要なことは研究費です。基礎医学に、もうちょっと研究費を出す。どこに、大きな種があるかは、わかんないんですね。だから、たくさんのことを試してみないといけない。第2は若い人、なるべくエンカレッジ(激励)するということです。そう言いながら、僕がずっと大学に残っているというのは、大変矛盾していますけれども、なんとか、そういう環境ができればいいなと思ってます」

この内容は動画でご覧いただくことができます。以下に動画のリンクを掲載します。
https://www.fnn.jp/posts/00402161CX
【私の論評】 日本も未来投資として、教育・研究国債を発行すべきときがきた(゚д゚)!

本庶佑氏は、日本の基礎医学分野の発展に必要なこととして、開口一番に、「まず、重要なことは研究費です。基礎医学に、もうちょっと研究費を出す」としています。やはり研究費にはご苦労されたし、今でもされているのだと思います。

同じノーベル賞受賞学者であり、ips細胞の研究で有名な中山教授はノーベル賞の受賞賞金を若手研究者の育成に全額寄付したほか、チャリティ募金により研究資金を集めるためにマラソンに出場するなど涙ぐましい努力をしておられるようです。

大阪マラソンでフィニッシュする京都大の山中伸弥教授=大阪市住之江区で2013年10月27日

現在の日本は、過去の研究によって、ノーベル賞受賞者が毎年のように輩出していますが、今のままだと将来は危ういと危惧の念をいだいている研究者や識者もいます。

民主党政権時代に、財務官僚のシナリオによって行われた事業仕分けの結果、思わぬかたちで社会から関心を集めることになったのが、科学分野の基礎研究でした。基礎研究には、「知的好奇心を満たす」という根源的な目的の他にも、「イノベーションの汎用性を保つ」という意義があります。基礎研究を担う大学には「選択と集中」の波が押し寄せていました。

2010年北海道大学名誉教授の鈴木章氏と、米パデュー大学特別教授の根岸英一氏が、米デラウェア大名誉教授のリチャード・ヘック氏とともに化学賞を受賞しました。

北海道大学名誉教授の鈴木章氏

鈴木氏は、受賞が決まった直後の2010年10月8日、報道記者の取材にこんなことを言っていまし。「研究は一番でないといけない。“2位ではどうか”などというのは愚問。このようなことを言う人は科学や技術を全く知らない人だ」。

鈴木氏のこの批判は、もちろん、事業仕分けにおける蓮舫参議委員(当時)の発言に向けられたものでした。2009年11月13日、次世代スーパーコンピューティング技術の推進をめぐる仕分け作業で、理化学研究所の説明者がした「世界一を取ることによって夢を与えることが、実は非常に大きなこのプロジェクトの1つの目的」という発言に、「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃだめなんでしょうか」と応酬。報道では蓮舫氏のこの発言がなされ、この年の流行語大賞の候補にまでなりました。


研究資金が足りないから基礎研究にまで「選択と集中」になるという人もいます。しかし、そもそも財務省の官僚や文科省の官僚等が研究資金の「選択と集中」などできません。官僚に限らず、誰もそのようなことはできません。

もしそれができたなら、共産主義における計画経済も成功したはずです。頭の良い設計主任が計画したとおりにすれば、うまくいくはずでしたが、そうはなりませんでした。共産主義はことごとく敗退しました。

この問題を解決する手段はあります。このような、限りある財源を使うという閉塞した発想ではなく、国債で将来投資すると考えを変えるべきなのです。そうして、ある程度薄く広くばらまけば良いです。そうして、ある程度競争させて見込みのあるものはさらに今度は深く投資すれば良いわけです。

「知識に投資することは、常に最大の利益をもたらす(An investment in knowledge always pays the best interest.)」というベンジャミン・フランクリンの名言があります。

教育と基礎研究を投資として捉えると、社会的な便益もコストより高いです。教育・基礎研究によって、国民の将来所得が増加し、将来所得が財源となるからです。これは、国際機関などで多くの研究がなされています。だからこそ、国債で財源を賄うのがいいということになります。

ちなみに、OECD(経済協力開発機構)では、いろいろな教育に関するデータを国際比較の形で毎年公表しています(Education at a Glance 2016 http://www.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance_19991487 )。

その中で、先進国における高等教育投資の便益とコストを私的・公的に算出したものがあります。私的な便益は高等教育を受けると所得が高くなることなどです。公的な便益は高くなった所得から得られる税収増などです。それをみると、日本の公的なB/C(費用便益比)は他国よりず抜けて大きいので、公的投資の余地が大きいです。

簡単にいえば、有形資産も無形資産も、経済発展のためには欠くことができないものなのです。しかし、今の財政法では有形資産の場合にしか国債発行を認めていません。政治的な議論をするのであれば、この財政法を改正して、無形資産の場合にも国債発行を認めるべきとなります。

教育国債については、経済学的にはまったく否定できないものです。ただし、将来負担になるという批判があります。

これに対しては、優良投資なのだから心配無用であるといいたいです。しかも、教育・研究投資は外部性を伴うので、国が率先して行うべきものです。

教育・基礎研究のメリットは教育を受ける当人や、研究する本人だけでなく、社会全体に及びます。これを教育・研究の「外部経済効果」といいます。

「外部経済効果」が発揮される例として、ある専門知識をもった人を雇ったおかげで、その会社の他の社員にも効果が及び、会社全体の生産性が上がることがあげられます。あるいは、高度な教育を受けた人が多い国や地域は、そうでない国や地域に比べて、治安・文化・技術などの水準が高いことが考えられます。

もう一つは財政状況に対する誤解があります。借金1000兆円ガー、という話です。これは、企業でいえば連結ベースバランスシート、これは政府では「統合政府」バランスシートになりますが、そのバランスシートの左右をみると、実は既に結論が出ていて、過度な心配は無用です。財務省はそうはいいませんが、これは、昨年経済財政諮問会議の場で、ノーベル経済学者を受賞したスティグリッツ教授も同じことを言っていました。

さらに、国債発行というと将来世代へのつけなどという人も政治家の中にすらいて、驚くことがありますが、たとえば何十年も耐用年数があるインフラを作成した場合、それは償還期間が何十年もある建設国債などて賄うのが世界の常識です。

なぜなら、そのインフラは現在世代だけが使うだけではなく、将来世代も使うからです。もし、これを税金で賄うとすれば、現在世代だけが負担して、将来世代は負担しないということになり不公平が生じます。国債に反対する人は、このことを全く理解していません。

だから教育などという長い期間たたないと、その成果が出てこないものは税金で賄うよりも、国債で賄うのに適しています。これに反対する人は、財務省の太鼓持ちをしているだけです。

海外では、教育・研究は投資という考え方により、国債発行の例もあります。教育・研究投資のための国債発行では、フランスのサルコジ国債が有名です。

2009年6月、サルコジ大統領(当時)は、両院(上院:元老院、下院:国民議会)合同議会において、大規模な特別国債の発行を発表しました。演説の中で大統領は、「国土整備や教育、研究、技術革新など、我々の未来にとって極めて重要な分野が多くあり、年間予算の厳しい枠組みの中では対応できない。我々がやり方を変えない限り、優先課題を掲げるだけで実現できない状態が続く。私は投資を犠牲にしない。投資なくして未来はない。」と述べ、未来への投資のための国債発行の重要性を強調しました。

そうして日本では、日銀が金融緩和のため、市中銀行から国債を買い取っています。多く買い取ったので、市場では国債が品薄状態になっています。金融緩和に反対の人々は、「債が~暴落する!」といって大騒ぎしていましたが、国債の金利は未だにかなりの低水神です。

この状態ならば、さらに国債を刷り増すべきです。その中に将来有望な投資となる、教育・研究国債も含めるべきです。

日本人は、様々な分野でノーベル賞をとっていますが、ノーベル経済学賞は一人もいません。これには様々な理由があるのでしょうが、財務省の太鼓持ちのようなエコノミストが多いということもあると思います。この分野でもノーペル賞受賞者が将来でるように、経済の基礎研究にも研究費を出すべきです。

日本も未来投資として、教育・研究国債を発行すべきときがきたのではないかと思います。

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