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2016年12月13日火曜日

蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性―【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!

蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性

時間が経つほど、自民党がトクをする?

田崎 史郎

最近とみにブーメランに見舞われる民進党代表蓮舫氏
衆院解散・総選挙時期をめぐる報道がまた、にぎわしくなってきた。産経新聞が12月8日付朝刊で「首相、年内解散見送り 外交優先 来秋ずれ込みか」と打てば、日経新聞は「早期解散巡り臆測 年内?年明け? 真珠湾訪問で与野党に警戒感」(同9日付朝刊)、朝日新聞は「1月解散論 自民に浮上 真珠湾訪問 支持率上昇期待 年明け情勢調査へ」(同10日付朝刊)と報じた。「年内・年明け解散」の有無をめぐって、朝日、日経両紙と産経新聞が真っ向から対立する構図だ。

衆院解散・総選挙時期の見立ては首相退陣と同じくらい、各社政治部の力量が問われる。その戦いに、私も加わってみよう。

     「自民60議席減」の予測もあるなか…

衆院解散は首相の専権事項だから、解散時期を予測するには、安倍晋三、およびその側近にどれだけ食い込んでいるかが試される。と同時に、衆院解散・総選挙をめぐる情勢への認識が問われる。

まず、今、解散するべき時期なのか。2014年12月14日投票の衆院選から2年が経過したので、いつ解散が行われても不思議ではない時期に入った。だから今後、政局は解散の可能性がつねに1割程度はある展開になる。

だが、解散には、国民がなるほどと思う一定の理解が必要だ。米国で来年1月、大統領にトランプが就任。トランプがどんな政策を打ち出すかによって世界が大きく変わる。今年6月、英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まった。今月、イタリアでは憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、敗れた首相・レンツィは辞意を表明した。

来年4~5月にフランス大統領選、来秋にはドイツで連邦議会(下院)選がある。その結果次第では、ドイツ首相・メルケルが続投できるかどうか分からない。世界が不安定化している中で、先進7カ国( G7)首脳会議(サミット)参加国で安定した政権運営を長期に続けているのは日本だけである。こんな時に解散して、国民が納得するだろうか。

国内の政治日程を見ても、安倍は来年1月中旬に豪州、東南アジア訪問を検討し、下旬には訪米してトランプと正式な日米首脳会談を行うことも計画している。そんな時期に衆院解散を行うのは日程的に厳しい。政権の命運がかかった衆院選を行うには、選挙態勢づくり、公約作成、争点設定など緻密な作業が求められるからだ。

また、衆院議員の定数削減・是正は4月の衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)の勧告を経て、6月ごろ実現する見込み。このため、年明け解散だと「定数削減・是正逃れ」と批判されるようになるだろう。

次期衆院選で、自民党が議席を減らすのは必至とみられていることも、解散を判断する重要な要素だ。自民党が衆院選で続けて290を上回る議席を獲得したのは12年、14年しか例がない。次期衆院選では、野党統一候補が増える一方、自民党の12年当選組の選挙準備不足などによって、自民党は少なくとも30議席、多い場合には60議席近く減るとみられている。

    解散先延ばしの原因は「民進党」にアリ 

安倍は18年の自民党総裁選で3選され、21年まで続投する可能性が高い。これが現実となるなら、21年までにもう1回、衆院を解散することができる。

その場合、可能性が高いのは20年夏の東京オリンピック・パラリンピック直後の20年秋だ。年明け解散だと当選した議員の任期は21年2月ごろとなり、任期満了近くになってしまう。来秋以降の解散なら、任期満了までに余裕を持つことができる。

安倍官邸が衆院解散を急いでいない最大の理由は、9月に民主党代表に就任した蓮舫の人気が沸かないことだ。7日の党首討論で蓮舫は安倍を「息をするようにウソをつく」となじった。蓮舫の発言は前大阪市長・橋下徹が「人格攻撃」と指摘したように度を超えており、反安倍の人たちには受けても、分厚い保守層は民進党からますます離れただろう。

蓮舫の任期は19年9月まで。蓮舫を見る党内外の目は冷ややかであっても、当分、辞めそうにない。政権中枢部はこう言う。

「蓮舫の支持は今後も伸びず、民進党はもっと落ちていくだろう。解散は先に延ばした方が有利ではないか」

民進党の体たらくが解散時期を先延ばした方が有利という安心感をもたらしている。新聞社の攻防は産経の勝利になるのではないか。

(文中敬称略)

【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!

野党共闘により、次期衆院選では自民党がかなり議席数を減らすことは、産経新聞も予測の記事を出しています。その予測では、47議席を失う可能性を指摘しています。

その産経新聞の予測記事のリンクを以下に掲載します。
【衆院選シミュレーション】4野党共闘ならば47選挙区で当落逆転 与党326→279 全野党共闘ならば84選挙区で逆転…
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事に掲載されていた、チャートと表を掲載します。



この記事の、結論部分を以下に掲載します。
 試算では、4野党共闘と距離を置く維新の党(現日本維新の会)や次世代の党(現日本のこころを大切にする党)を第三勢力として別枠としたが、維新など全野党が共闘した場合、計83選挙区で与野党の勝敗が逆転する。この場合、与党は243議席と過半数(238議席)をわずかに上回る勢力まで落ち込み、政権運営は極めて不安定となる。
この状況をみると、田崎史郎氏が予想するように、確かに来年早々の解散はないかもしれません。

上の記事で、田崎氏は、"蓮舫の任期は19年9月まで。蓮舫を見る党内外の目は冷ややかであっても、当分、辞めそうにない"としています。

実際にそうです。特に最近の蓮舫代表は、大ブーメランの連続です。政策論争など抜きで、舌鋒鋭く自民党や、安倍首相を攻撃するたびに、鋭く大ブーメランが蓮舫氏を突き刺すことになっています。

特にカジノ法案については、蓮舫代表は党首討論でも、舌鋒鋭くギャンブル依存症の酷さを指摘しましたが、この指摘は非常に矛盾に満ちたものでした。

なぜなら、日本ではカジノは解禁されておらず、現在日本でギャンブル依存症に陥った人々の大多数が、パチンコでそのような依存症に陥っていることは明らかなのに、蓮舫代表はパチンコによる被害に関しては何もいいませんでした。

「パチンコでこのくらい酷い被害があるのだから、カジノを解禁すればもっと酷くなる可能性もある」というのならわかるのですが、パチンコについては一切述べず、まだ解禁になってもいないカジノの危険性を指摘するにとどまっています。これは、大きな矛盾です。

そうして、カジノといえば、カジノに猛烈に反対する蓮舫氏が、実は過去にカジノを日本に導入しようとしていた張本人であることが分かっています。

12月8日の民進党蓮舫代表定例会見において、ある記者が質問をしていました。



この動画の、11分16秒あたりで、フリーの記者の佐藤りょうへいという方が質問をしています。この動画また民進党に削除されるかもしれないので、以下に質問の要旨のみ掲載しておきます。

2011年、民主党はカジノ導入を成長戦略として考えていました。カジノ解禁に向けてつくられた資料は証拠として残っており、当時の行政改革担当大臣を調べるとなんと蓮舫氏。記者はこの点について「蓮舫氏の方針が当時と変わったという理解でよろしいでしょうか?」と質問しました。

これに対し、蓮舫氏は「カジノ解禁は当時たくさんあった規制改革案の一つにすぎない。私がカジノ解禁について議員立法に力を入れたことはない。政府として一つの選択としてあったという程度の認識です」と回答しました。

しかしこれは真っ赤な嘘。この受け答えはあまりにも卑怯です。

蓮舫氏のこわばった表情が全てを物語っています。要するに過去に自分自身もカジノをつくろうとしていたのに、安倍総理がやろうとするとたちまち反対派にまわったということです。

当時の民主党政権下でつくられた「国土交通省成長戦略」の資料によると、観光戦略としてカジノを中心に総合リゾート開発を推し進めることが力説されており、しかも数年以内の実現を目指すと具体的なスケジュールまで明記されています。

さて、その資料の一部を掲載します。

▼「2~3年後の実現を目指すもの」にカジノが挙げられています。治安が悪くなるリスクに配慮しながら、実施すると書かれています。


▼「早期の実現を目指すもの」に新しい観光アイテムとしてカジノが挙げられている。



党首討論において蓮舫氏は安倍総理を嘘つき呼ばわりすることで見事な自虐ネタを披露し盛大な笑いをとってました。蓮舫氏が投げるブーメラン攻撃がことごとく投げた本人に当たるものだから見ていて滑稽です。

この党首討論については、このブログでも紹介しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
蓮舫代表、醜悪ブーメラン直撃 首相相手に罵詈雑言連発の党首討論デビュー―【私の論評】パチンコ業界守護神の蓮舫民進党は風前の灯火(゚д゚)!
7日の党首討論で、安倍晋三首相への口汚い批判を繰り返した蓮舫民進党代表
民主党政権時代の大臣としてカジノをつくろうとしていたのに、今では涼しい顔でカジノ反対派に転身です。白々しい以下のツイートをご覧頂きたいです。


多くの有権者は、そもそも戸籍謄本も公開できない日本人かどうかすら怪しい人に「世界に誇る美しい国」などと言われたくないでしょう。これぞ息をするように嘘をつく、蓮舫氏の嘘のつきっぷりはまさに神ってます。

それにかなり心配というか、蓮舫氏に関しては"大丈夫なのか?"と言いたくなります、わずか5年くらい前のことも記憶にない、記憶になかったとしても、党首討論などに備えるためには、その頃のことを調べてみたりするのが当たり前だと思います。私自身は、民主党政権は、カジノ法案を推進していた事は、うっすらとですが覚えています。

政治の世界は、本来少なくとも3年〜5年くらいのスパンで物事を考えてもらわないと困ります。民間会社ですら、最近では3年〜5年くらいの長期経営計画を立案して、会社の舵取りをしています。政治の世界では、10年、20年場合によっては、50年くらいのスパンで物事を考えなければならないことがあるはずです。

たとえば、総務省が11月29日発表した10月の労働力調査によると、正社員は前年同月に比べ74万人増え3405万人となりました。非正規は31万人増の2028万人でした。正社員の増加が非正規を上回るのは2カ月連続です。


企業は年末の繁忙期を前に、待遇のよい正社員でないと人手が集めにくくなっています。

厚生労働省が同日発表した正社員の有効求人倍率(原数値)は0.92倍と過去最高になった。全体の有効求人倍率(季節調整値)も1991年8月以来となる1.40倍の高水準に達しています。

10月の完全失業率は前月と同じ3.0%。総務省の同月の家計調査によると、実質消費支出は前年同月比0.4%減でした。正社員化による待遇改善が続けば、消費の活性化につながる可能性があります。

雇用に関してほとんど、無知と言っても良い、民進党は、雇用と金融政策との相関関係について全く理解していません。だから、雇用に関する質問や、発言はいつも頓珍漢です。

一般に金融緩和の過程で、雇用状況が改善していく過程において、最初はパート・アルバイトなどの雇用が増えます。そのため、実質賃金が下がるのですが、さらに雇用状況がよくなると、正社員の雇用も増え、実質賃金も増えるようになります。しかし、このようになるには少なくとも3年はかかります。

そのことを認識しない民進党は、金融緩和を始めて一年も経っていない時から、やれ「非正規ばかり増えている」とか「実質賃金が下がっている」挙げ句の果てに「民主党政権の時代のほうが正規雇用が多かった」などと大騒ぎをしていました。

民進党は、雇用に関しては、ほんとうに数ヶ月くらいのスパンでしか物事を見ていないようです。これは、民進党だけではなく、他の野党も大同小異です。野党はもつそろそろ、雇用と金融政策との関係を認識して雇用に関してもっと前向きでまともな論議をすべきです。

普通の会社ですら、業績が一端低下すると、それを元に戻したり、さらに成長させるためには、数年の年月を必要とします。

私は、最初は民進党のこの愚かな振る舞いや、蓮舫代表の愚かな発言に関して、何でも政争の道具にしようとするからあのようなことになると思っていたのですが、最近ではそうではないと思うようになりました。

雇用情勢や経済に対する民進党の発言をみていたり、わずか5年前に、カジノを推進していたことをきれいさっぱり、忘れている蓮舫代表などを見ていると、本当に数ヶ月単位でしか物事を考えていないのだと思います。まるで、脊髄反射のようです。

脊髄反射を起こすための刺激の伝導路、脊髄反射弓
この状況が続く限り、民進党には政権与党に返り咲く資格など全くないと思います。返り咲けば、雇用も経済もぶち壊しになり、日本はまた酷いデフレスパイラルのどん底に舞い戻ることになります。

このようなことは、一般に周知されるにはある程度時間がかかるようです。だとすれば、来年早々衆院解散選挙をするよりは少し伸ばしたほうが、選挙戦は有利になるかもしれません。これからも、蓮舫代表はブーメランを繰り返し、民進党の支持率はさらに下がるでしょうから、その頃に選挙に踏み切るべきなのかもしれません。

しかし、もう一つ圧倒的に有利なやり方があります。それは、現在3%程度の失業率を2.7%程度に下げることです。そのためには、さらなる追加金融緩和が必要です。

さらに、GDPをもっと上向かせる必要があります。そのためには、機動的な財政政策が必要です。そのためには、減税なども視野にいれるべきです。そのためには、増税一辺倒で国民の敵である財務省を完膚なきまでに打ち砕く必要があります。

これらのことを実行して、経済を完璧に上向かせるためには、それなりにある程度の時間を要します。経済が上向きつつあり、これからかなり良くなることがはっきり見えてきた段階で選挙にすれば、大勝利は間違いないです。

経済のことを考えれば、どう考えても、他の党では駄目で、やはり今のところは自民党に大勝利してもらう以外にありません。何とか、頑張って、次の選挙では大勝利していただきたいものです。

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2016年3月15日火曜日

中国で湧き上がる“反中トランプ”待望論 多くの人民が習体制崩壊を望んでいる ―【私の論評】トランプ大統領が実現したら、最も大きな影響を受けるのは米国でも中国でもなく日本だ(゚д゚)!

中国で湧き上がる“反中トランプ”待望論 多くの人民が習体制崩壊を望んでいる 

中国市民からも“ラブコール”を受けるトランプ氏
国会に相当する全国人民代表大会(全人代)中の中国で、あの“暴言王”への待望論が起きている。今年11月に予定されている米大統領選で、共和党の有力指名候補に躍り出た実業家、ドナルド・トランプ氏(69)を「大統領に」と望む声が高まっているというのだ。背景には、言論統制を強め、独裁体制を固める習近平政権への反発があるとみられる。大統領にトランプ氏がなれば中国への圧力が強まり習政権が崩壊するきっかけになるという思惑だ。

熾烈さを極めている米大統領選の候補者選び。とりわけ注目を集めているのが共和党の指名争いで台風の目となっているトランプ氏だ。

過激な言動を繰り返し、欧米メディアから「大統領としての資質に欠ける」などと批判を受けながらも各地で快進撃を続けている。

共和党では、党主流派が「反トランプ」の立場を鮮明にしており、対立候補の一本化を急いでいるが、当のトランプ氏は今月8日、逆風をものともせずに中西部ミシガン州と南部ミシシッピ州などで勝利。勢いを維持したまま、南部フロリダなど重要州の予備選が集中するヤマ場の15日に臨む。

この情勢を中国人民の、“ある層”は興味深く見つめている。

現地事情に詳しい中国人実業家は、「中国の一部市民の間で『トランプ待望論』が出ている。中国最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)『微信』や中国版ツイッター『微博』では、『トランプを米大統領に』と投稿するケースもあるようだ」と明かす。

トランプ氏と言えば1月、米テレビ局CNNの取材で、国際社会の非難を無視して核開発を繰り返す北朝鮮を糾弾した上で、「北朝鮮問題を解決しないならば、中国を潰してしまえ」と発言。「貿易関税を引き上げるか、貿易そのものを中止してしまえば、2分以内に中国は崩壊する」などとぶち上げて物議を醸した。

昨年8月にも中国の習国家主席が訪米する直前、トランプ氏は、オバマ大統領が「国賓」として厚遇することを批判し、「私ならば晩餐(ばんさん)会は開かず、ハンバーガーでも出す」と言い放つなど、「反中」ぶりは際立っている。

なぜ、そんな人物が中国で支持を得ているのか。

先の実業家は「それほど、習体制への反発が強いということだ。昨年から人権派弁護士や民主活動家を大量に拘束したり、ネットの規制を強化したりするなど言論弾圧を強めている。『微信』や『微博』でも反政府的な書き込みはすぐに削除され、自由にものを言えなくなっている」と指摘する。

「多くの中国人が現在の習体制に不満を抱えており、その崩壊を望んでいる。民主党の有力候補であるヒラリー(クリントン)前国務長官は、オバマ米大統領の外交路線を踏襲する見込みで中国に強硬な姿勢で臨むとは考えにくい。それに対して『中国を潰せ』とまで言い放つ『反中』のトランプ氏なら、『習政権と対峙(たいじ)して現状を打破してくれる』と期待を寄せているようだ」(実業家)

 毒をもって毒を制す-の心境か。

【私の論評】トランプ大統領が実現したら、最も大きな影響を受けるのは米国でも中国でもなく日本だ(゚д゚)!

中国においては、習近平は国内を掌握できおらず、未だ激烈な権力闘争にあるというのが実体です。習政権が続けている反腐敗運動は、党官僚の汚職腐敗体質をただすというのは名ばかりで、本来の目的は政敵を倒す権力闘争です。

なぜそのようなことをはっきり言えるかといえば、そもそも習近平自身が「一族が巨額資産を保有」と米紙に暴露されています。というより、中国では共産党幹部ともなれば、ぼぼ全員が汚職をしているのが当たり前だからです。そうして、その金額も、それこそ日本の官僚の汚職など、無垢な天使の戯れ言程度とでもいいたくなる程の天文学的数字であることがほとんどです。

習近平に関しては、他にもスキャンダルがあります。それは、習氏が推し進める「反腐敗運動」で、腐敗官僚たちを次々と血祭りに上げている「党中央規律検査委員会」。その書記を務める王岐山氏のものです。反腐敗運動を、政敵潰しと国民の人気集めに利用してきた習氏にとって、政権の屋台骨を支えるキーマンともいえる人物です。

その王氏に関する不穏な情報が出回っていました。

これは、郭文貴氏という中国人実業家が、亡命先の米国で受けた米国メディアでのインタビューが発端でした。このなかで郭氏が、王氏自身も過去に汚職に関与していた…とほのめかしたのです。事実なら、『反腐敗運動』の取り締まり側のトップが腐敗していたことになり、運動そのもの、ひいては習政権の正当性が問われることになります。

さらに、最近では『習近平とその愛人たち』というスキャンダル本を出版しようとしていた、書店主などを拘束しています。

そうして、習近平の権力闘争の相手は、2012年の党大会で習近平党指導部が成立するのを阻もうとした反対派、薄熙来(はく・きらい、前党中央政治局委員、服役中)、周永康(前党中央政治局常務委員、服役中)、徐才厚(前党中央軍事委員会副主席、公判前の3月に病死)と、胡錦濤政権で党中央弁公庁主任という権力中枢にいた令計画の4人、通称「新四人組」とされています。



この4人組にかかわらず、習近平の反腐敗運動の対象となる人々は、習近平も腐敗にまみれていることは先刻承知です。中国の権力闘争はすざまじいですから、検挙されればとんでもないことになり、財産を剥奪されたり、拘束されたり、場合によっは命も保証の限りではありません。

自分たちと同じように腐敗にまみれている習近平に、このようにされることなど、誰も潔しとしないでしょう。

だからこそ、習近平派以外の中枢の人々や、それに連なる人々は、ブログ冒頭の記事のように、習体制への反発を強めているのです。

そうして、上の記事を理解するためには、中国は他国と比較すると驚くほど、内向きの国であることを理解しなければなりません。

多くの中国人にとって、世界は中国が中心であって、対外関係もほとんどが中国国内の都合により動いていることが多いのです。

尖閣問題が習近平が主席になってから、大きくなったもの、国内事情が大きく影響しています。これも、中国内部の権力抗争の一環であり、より先鋭的な示威行動を尖閣で行わせることにより、反習近平派に力の誇示をすることも大きな目的の一つでした。

南シナ海での暴虐ぶりが、ひどくなったのも、この方面で守勢に回れば、反習近平派につけいる隙を与えないようにするという目的もありました。

中国は、このように国内の権力闘争と、対外政策が表裏一体になっている部分があります。

だからこそ、特に反習近平派は、トランプが大統領になれば、習政権と対峙(たいじ)して現状を打破してくれるかもしれないと期待を寄せるのです。こんなことは、他国ではありえない中国に特有のことだと思います。

さて、この期待は実際にトランプが大統領になれば、実現するのでしょうか。

この話をする前に、まず、皆さんは、権力分立とか、三権分立という言葉をご存知でしょうか。

権力分立(けんりょくぶんりつ、けんりょくぶんりゅう、英:separation of powers)とは、権力が単一の機関に集中することによる権利の濫用を抑止し、権力の区別・分離と各権力相互間の抑制・均衡を図ることで、国民の権利・自由の確保を保障しようとするシステムです。対義語は権力集中(権力集中制)です。

権力分立の典型例としては立法・行政・司法の三権分立(さんけんぶんりつ、さんけんぶんりゅう)が挙げられますが、地方自治制など他の政治制度にも権力分立原理はみられます。権力分立は国家全体についてみると、まず、中央と地方との権限分配がなされ(垂直的分立)、ついで中央・地方でそれぞれ水平的に分配されることになり(水平的分立)、中央では立法・行政・司法の三権に水平的に分配されていることになるとされています。

ただし、三権分立とは、モンテスキューというフランスの哲学者が、ジョージ3世(在位1760~1820年)時代のイギリスを「おお、三権分立だ、すばらしい!」と勘違いして「発明」してしまった概念です。

本人は大発見したと思い込んでいたようですが、これは、モンテスキューの頭の中で作り上げられた妄想に過ぎませんでした。

現在、三権分立をまともに実行してしまっている国は、世界の文明国の中でアメリカ合衆国ただ1国です。いつまでたっても他の文明国がアメリカの真似をしないのは、三権分立が欠陥制度だからです。



そして、アメリカ大統領はこの完全な三権分立のせいもあって、「世界“最弱”の権力者」と言われています。そうして、アメリカ大統領が最弱であることは世界の比較憲法学の常識です。

日本で「アメリカ大統領のような強いリーダーを作るために首相公選制をやろう」などと言っている人がいますが、単なる思い違いです。

このような完全三権分立制をとっているアメリカで、たとえトランプ氏が大統領になったとしても、何もかも思い通りに、できるかといえば、そんなことはありません。

ちなみに、アメリカでは、完全な三権分立となっていますが、そうはいっても、平時においては司法が最も強いといわれています。

ただし、戦時になると違います、戦争を遂行するために、いきなり大統領に権力が集中します。戦時になると、アメリカ大統領は強いリーダーシップを発揮することができるようになるのです。

しかし、戦争するにしても、大統領一人の判断ではできません。あくまで、議会の承認が必要です。

となれば、トランプ氏が大統領になったにしても、余程のことがない限り、何もかもトランプ大統領の思い通りということにはなることはありません。

さらに、アメリカは二大政党の政治体制です。この二大政党制を長らく維持してきた国ですから、それなりの慣習があります。それは政治の継続性を保証するため、政権交代しても、6割から7割は、それ以前の政権のやりかたを踏襲し、それ以外の4割から3割を政権交代をした党のカラーを出します。


今回共和党のトランプ氏が大統領になったからといって、何もかも変えるということはできず、せいぜい3割から4割を共和党のカラーを出すことになるでしょう。さらに、その中で、トランプ氏が自分のカラーを出せるのも、数割に過ぎないでしょう。

そうなると、トランプ氏が仮に大統領になったとしても、あれもこれも実施などということはできず、本当に重点的なものをいくつかできるかできないかという程度だと思います。

ただし、戦争になれば別です。中国が南シナ海などでの暴虐を続けるのを阻止するため、議会が中国との戦争を決議すれば、トランプ氏はかなりのことができます。

こう考えると、実際にトランプ氏が大統領になったとしたら、最も大きく影響を受けるのは、アメリカや中国でもなく、日本かもしれません。

そうして、日本が最も影響を受けるのは、日米安保条約です。

トランプ氏は、日本に対しては、集団的自衛権の片務性に関して、強く非難しています。要するに、日本が攻撃を受けた場合、米国は助っ人するのですが、米国が攻撃を受けても、日本は助っ人をしないということに対してトランプ氏は非難しています。

しかし、これはもともと米国が日本が二度と戦争をしないようにするため、日本を軍事的にも弱体化する変わりに、米国が日本の防衛を担うという形で決まったものであり、トランプ氏のように一方的に日本を指弾するのは、適当ではないと思います。

ただし、このブログでも以前掲載したように、何年も前から、「日本は憲法改正せよ」が米国議会では、多数派になっています。

そうなると、これも以前のブログに掲載したことなのですが、やはりトランプ氏はこれは議会の承認を得たのも同じですから、非常にやりやすいということで、これを最優先事項として取り組み、早期に実現するかもしれません。

そうして、日本に憲法改正を迫る理由は、原則として日本は自国の防衛は、自国で行うことです。そうなると、米軍は全部ではないにしても、かなり大きな部分が撤退することになると思います。

ただし、新たな日米安全保障条約の枠組みが設定され、フイリピンでは米軍が撤退した途端に、中国の南シナ海への進出が加速されたという苦い経験もありますから、すぐに米軍が日本から撤退ということではなく、何年かの猶予期間を置いて実施されることになるかもしれません。

私自身は、憲法を変えなくても、憲法解釈を変えれば、日本は自衛のための武力を持ち、自衛のための戦争はできると思っています。日本の主流派の憲法学者の解釈だけが唯一無二で、絶対に正しいなどということはありません。実際、世界には日本以外にも平和憲法がありますが、それらの国々では軍隊があり、無論自衛戦争はできます。

日本は憲法改正のハードルは高い

しかし、米軍が一部でも撤退ということにでもなれば、中国の脅威はさら増します。今のままでは絶対に駄目です。憲法解釈を変えるか、憲法を改正して、日本も防衛戦争ができる普通の国に転換しなければならなくなります。

国会では、最近でも日々平時のことばかり論議されていますが、トランプ氏が大統領になったときに備えて、こうした論議もある程進めておくべきものと思います。

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2015年12月14日月曜日

中朝国境“緊迫状態” 中国、即応部隊2千人を増派 正恩氏発言が影響か―【私の論評】南北から挟み撃ちされる中国は、海洋進出どころではなくなる!しかし、日本にとっても深刻な問題だ(゚д゚)!




中国と北朝鮮の関係が緊迫している。習近平国家主席率いる中国人民解放軍の即応部隊2000人が中朝国境に緊急増派されたという情報がある。北朝鮮の美女音楽グループ「牡丹峰(モランボン)楽団」は北京公演をドタキャンし、緊急帰国した。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記による「水爆保有発言」が影響しているようだ。

香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは13日、中国が北朝鮮に対し石油支援を中止する可能性があることを伝達し、12日夜に中国軍の即応部隊2000人を国境に緊急増派したと伝えた。

中朝関係はこれまでも何度か悪化したが、中国はパイプラインを通じて北朝鮮に石油支援を続けてきた。支援中止は北朝鮮体制の崩壊に直結しかねず、中朝関係の断絶を意味するからだ。

真偽は不明だが、同センターは、この決定に金第1書記が激怒し、北京で12日から3日連続で行われる予定だった「牡丹峰楽団」の公演が中止されたとしている。

「牡丹峰楽団」は金第1書記が2012年に結成した。ミニスカート姿の派手な衣装で、北朝鮮版「少女時代」とも称される。

今回の中朝緊張のきっかけは、金第1書記による「水爆保有発言」とみられている。

朝鮮中央通信は10日、金第1書記が平壌の視察先で、北朝鮮が「自衛の核爆弾、水素爆弾の巨大な爆音をとどろかせることのできる強大な核保有国」になったと述べた-と報じたのだ。

中国はこれに猛反発した。習主席がこれまで何度も「北朝鮮による核開発は容認しない」と表明してきたためだ。当初、「牡丹峰楽団」の公演を、中国共産党の政治局員1人が観覧する予定だったが、観覧者の格を次官級に引き下げた。

習主席は、親中派だった張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛清し、核開発で従わない金第1書記を嫌っているとされる。

【私の論評】南北から挟み撃ちされる中国は、海洋進出どころではなくなる!しかし、日本にとっても深刻な問題だ(゚д゚)!

北朝鮮の少女時代ともいわれているモランボン楽団ですが、日本では彼女らのテレビなど一切放映されることもないので、どのような楽団なのかご存知ない方々がほとんどだと思いますので、以下にその動画を掲載します。

牡丹峰楽団 学ぼう 
모란봉악단 배우자




それにしても、中国にしてみれば、確かに北朝鮮に水爆など開発されれば、大変なことになりそうです。北朝鮮は各弾道ミサイルも開発中ですから、もし水爆でも開発され、ミサイルに搭載されて、中国に向けて発射されることにでもなれば大変なことです。

弾道ミサイルの開発がうまくいかなくても、爆撃機に搭載して、核爆弾で攻撃されれば大変なことです。トラックか何かで秘密裏に持ち込まれ、爆発させるなどのことも考えられなくもありません。

いずれにせよ、中国にとっては、かなりの脅威です。それに中国には従来はなかった、新たな脅威が迫っています。それについては、このブログにも何度か掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
「イスラム国」が習政権に“宣戦布告” ウイグル周辺に中国語で聖戦呼び掛け―【私の論評】国境溶解で、中国はISの侵入を防ぐことは困難、崩壊の序曲がはじまる(゚д゚)!
ISは中国を新たな標的に定めたのか
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、東トルキスタンと言われる、現在は中国領である新疆ウィグル自治区、その他キルギスさらに、カザフスタンの東部を含む地域には、すでにイスラム国の影響が及んでいることを掲載しました。
 
中央アジアに第二イスラム国ができるあがるのは、時間の問題のようです。現状は、イスラム国から随分とテロリスト・グループが入っており、キルギスあたりでは統治不能の状態になっています。そうして、新疆ウィグル地区にも相当過激派が入っている状態になっています。

これらは、様々な筋から判断して間違いないようです。近いうちに、中国はISの脅威にさらされ、そうして、上記で述べたように、北朝鮮の脅威もあるわけですから、南北から挟み撃ちされている状況です。

このような状況が深刻化すれば、中国は海洋進出などは断念せざるを得なくなることでしょう。おそらく、尖閣問題も沈静化するかもしれません。沖縄の脅威も軽減されるかもしれません。
モランボン楽団の演奏
とはいいながら、これは日本にとっても深刻な問題です。日本のすぐ近くの2つの国が、核兵器を保有し、その2つの国が悪化、さらに一方の国には、ISの脅威が間近に迫っているという状況です。

日本を取り巻く環境は、安全や安定からは、ほど遠い状況です。北朝鮮が、水爆開発でもしようものなら、拉致問題など永遠に解決できなくなるかもしれません。

日本も、安全保障を本気で考える時期になったのだと思います。日本では、安全保障の問題を考えるうえで、様々なタブーが存在します。核の問題もその一つです。

ISや、中朝の対立が深刻化する前に、日本もタブーは棚上げにして、安全保証の問題を議論すべきです。

日本は核兵器を開発するための技術は十分保有していると思います。日本も、核保有も視野に入れるべきか否かという、真摯な議論がなされるべきです。

また、それを実現するためにも、京都学派の憲法解釈を広く日本国内に流布して、自衛のための武装は可能であるとの見方もあることを周知徹底すべきです。それが、戦争に関する論議のタブーを破るかもしれません。

日本では、多くの人それも保守派と目される人でも、憲法9条の解釈は、東大を頂点とする、日本の主流派の憲法学者らの解釈に従っています。要するに、憲法9条は、自衛のための武装や、戦争もはっきりと否定しているという解釈です。

しかし、同じ憲法学者でも、京都学派の憲法解釈によれば、日本国憲法9条は、日本が自衛のための武装をしたり、自衛のための戦争まで禁じてはいないという解釈をしています。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?
京都学派の重鎮 佐々木惣一氏

詳細は、この記事を読んでいただくものとして、確かに、憲法9条を隅から隅まで読んでも、国際紛争を解決するための手段として、武力を用いてはならないとの明確な規定は存在しますが、自衛のための戦争をはっきりと否定はしていません。そんなことは、どこにも書かれていません。

このようなことを書くと、日本の主流派の憲法学者の解釈が正しいと認識している人たちは、それは詭弁であると考えるかもしれません。しかし、自衛のための戦争に関しては、国連憲章でも禁じていませんし、他国の憲法典をみると、自らの国が自衛のための戦争ができるなどと明記しているものはほとんどありません。

なぜなら、自衛のための戦争は、人権と同じく自然権であり、自然権とは、人が生まれなら我に持っている固有の権利とみなされているからです。

中朝の対立の激化、煮え切らない韓国、さらに中国に迫る第二イスラム国の脅威を考えると、日本も様々なタブーという呪縛から解き放たれ、まともに安全保障論議をすべきときに迎えたと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年10月20日月曜日

安倍首相が消費増税の延期示唆、経済への影響踏まえ判断=FT―【私の論評】安倍総理は、外国の新聞社には増税見送りの示唆をするが、殺人マシーンと化した財務省に諜略された日経・朝日新聞をはじめとする大手新聞にはそのようなことはしない。しかし、本当にそんな事で良いのだろうか(゚д゚)!

安倍首相が消費増税の延期示唆、経済への影響踏まえ判断=FT
Reuters

フィナンシャル・タイムズの電子版は19日、安倍総理が
イタリアを訪問中に行ったインタビュー記事を掲載した。

 安倍晋三首相は、消費税率の再引き上げについて、日本経済へのダメージが大きすぎるようであれば「意味がなくなる」との認識を示し、消費増税を延期する可能性を英フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで述べた。

安倍首相は、消費税率引き上げの目的について、次世代の年金・福祉の財源確保のため、とあらためて説明した。ただ同時に「デフレを終わらせる好機でもあり、この機会を逃すべきではない」とも強調した。

首相は「消費税を引き上げることで、経済が軌道から外れたり、鈍化したりすれば、税収は増えない。そうなれば意味がない」と述べた。

「アベノミクス」に批判的な見方があることについては「経済の好循環が始まり、その効果が隅々にまで波及する日が来る」と主張した。

一方、円安で打撃を受けている中小企業には支援が必要、と強調。

首相は「当然、輸入物価の上昇に苦しむ地方や、中小企業には目配りする必要がある。必要であれば、措置を講じるつもりだ」と述べた。

この記事の詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】安倍総理は、外国の新聞社には増税見送りの示唆をするが、殺人マシーンと化した財務省に諜略された日経・朝日新聞をはじめとする大手新聞にはそのようなことはしない。しかし、本当にそんな事で良いのだろうか(゚д゚)!

この記事に関して、エコノミストの村上尚己氏は、以下のようにツイートしています。
このツイートを理解するには、日本の大手新聞のほとんどが、軽減税率を望んていて、それを適用したもらいたいがために、財務省におもねり、再増税などに反対するのは小数派であるということがあります。これを前提としなければ、上のツイートは理解できません。

日本の特に大手新聞がそのようなスタンスであったのは、随分前からのことであり、このブログでも何回かとりあげたことがあります。その典型的なもののURLを以下に掲載します。
「米国債はデフォルト危機」と大騒ぎする日本の新聞は「財政破綻」「増税」は好きだが、自分たちだけ「軽減税率」求める浅ましさ ―【私の論評】消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益だが、アメリカの利益にはならない!!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は、2011年7月26日火曜日に掲載したものです。このころから、大手新聞は増税に前のめりで、こと増税に関しては、まともな報道をしたことがありません。

とにかく、最初から増税ありきの論調がほとんどてず。それも、その時々で手を変え品を変え財務省の指導どおりの報道を繰り返すばかりです。

このブログ記事の当時の2011年頃には、野田政権の頃でしたが、当時の野田首相や安住財務大臣が、財務省の諜略にあって、日本は財政破綻するかもしれないということを国会などで語っていた時期にあたります。

特に当時の野田総理大臣は、国民すべて、それこそ赤ん坊も全部合わせて、一人あたり700万円の借金があるなどと途方もない戯事を言っていた時期にあたります。

マクロ経済音痴の野田元総理大臣と、安住元財務大臣

これは、正しくは、政府による国民からの借金ということであり、これがどうして国民の借金になるのか、理解に苦しむ発言でした。日本国はそれ自体は、借金があるどころか、長い間デフレであったことも手伝い、外国に最もお金を貸し付けている国です。

日本という国においては、国の借金=政府の借金=国民の借金ではありません。世界はに、国の借金=政府の借金=国民の借金という国々もあるにはあります。たとえば、ギリシャとか最近の韓国などは完璧にそうです。政府も、国民も、外国からお金を借りており、まさしく政府も、国民も、国そのものも借金だらけです。

しかし、日本は違います。政府は確かに国債という形で、国民や企業から借金をしていますが、すべて国内から借りています。つまり、外国からの借金などありません。それどころか、日本が外国に貸し付けているお金は、過去20年以上も、世界一です。

それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
対外純資産、過去最大の296兆円 2位中国の2倍、22年連続「世界一の債権国」―【私の論評】対外金融資産が世界一の国日本が、財政破綻すると思い込むのは狂気の沙汰、そんなことをいい触れ回る輩は大馬鹿かスパイに決まり(゚д゚)!
日本は過去20年以上も世界一の金貸し国家(゚д゚)!

この記事そのものは、昨年の5月28日のもので、この時にはすでに野田さんは、総理大臣でもないし、安住さんは財務大臣でもありませんでしたが、この記事タイトルでもわかるように、この時点で過去22年わたり、「世界1の債権国(すなわち、世界で最も外国に金を貸している国)」だったわけですから、どう考えても、日本が借金大国でありようがないわけです。

確か、マスコミがほとんど報道しないので、細かい数値までは忘れてしまいましたが。昨年も、日本は世界一の金貸し大国であることには変わりありませんでした。

しかし、これも、野田氏や安住氏は、財務省から諜略されて日本は大借金国であると、信じ込んていたということです。

そうして、これはたまたま民主党の野田、安住両氏を例にあげたのですが、自民党の中にも財務省に諜略される人も多数います。本当に困ったものです。

しかし、この日本の財政破綻ということは、財務省により数十年前から言われてきたことですが、何回も言い続けても、日本は財政破綻する様子もないし、これはさすがに、政治家はもより、多くの国民も信じなくなってきているので、財務省も諜略の道具には使わなくなったと見えて、最近では、新聞もそのような記事は、掲載しなくなりましたし、政治家などでもそういう発言をする人にはほとんどお目にかからなくなりました。

財政破綻は効き目がなくなったせいか、財務省は、最近また、新たな与太話で、国会議員などを諜略して回っているようです。それに関しては、このブログでも、以前掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、デフレなどで景気が落ち込めば、自殺者が増えるということで、経済学者の田中秀臣氏が、"財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない"とツイートしたことを掲載し、いかに財務省のなどの主張が間違っているかについて、掲載しました。

特にこの記事では、最近の財務省のやり口については、経済評論家の上念司氏の記事を取り上げました。特に学者など、いわゆる識者という人たちの、財務省に諜略されたとんでない発言に関しては、産経新聞社特別記者・編集委員兼論説委員である田村秀男氏の記事を掲載させていたただきました。

日本では、新聞そのものが、出鱈目記事を掲載するし、あるいはいわゆる識者という人が新聞にとんでもない経済記事を掲載して、しゃにむに再増税路線を突っ走ろうととしています。

4月の増税以来明らかに消費が落ち込んで、日本経済はアベノミックス(金融緩和)の成果を破壊し、経済指標などは、金融緩和前の水準に戻ってしまっています。

それでも、増税しようとする財務省です。完璧な狂気の沙汰です。

しかし、安倍総理としては、再増税することにでもなれば、また日本経済が落ち込み、デフレ・スパイラルの底に静んでしまえば、支持率は下がり、安倍長期政権など考えられなくなってしまいます。

だから、自分の考えを何とかして、多くの人々に理解してもらいたいということで、本来は日本の新聞やテレビで話をしたいと思ったのでしょうが、いかんせん、日本の大手新聞は上記の通り、財務省に諜略されています。テレビなども似たようなものです。

であれば、イギリスの報道機関は、そのようなことがないので、まずは英国経済誌などの取材に応じたということだと思います。

だからこそ、村上尚己氏は、以上のようなツイートをしたのです。確かに、財務省によって諜略された日本の新聞となど、消費増税についてはまともな報道をするわけがありません。これは、確かに、消費税については日本のマスコミは使わないという安倍総理のメッセージなのだと思いす。

フィナンシャル・タイムズを皮切りに、おそらくこれからは、アメリカの新聞社などのインタビューにも多く応じていくでしょう。

なぜなら、日本では、多くの政治家や、財界人、官僚、マスコミなどが財務省の諜略にあって、デフレのときの増税などという非常識きわまりないことを政府に実行させようとしています。

海外メデイアは少なくとも、そのような非常識は、非常識以外の何ものでもなく、また、財務省がいくら諜略しようにもされないからです。

特に、アメリカはそうです。まずは、リー米財務長官が、日本に対して増税は控えるようにと求めています。これに関しては、以前このブログに掲載したことがあります。そのURLを以下に掲載します。
消費増税 米もダメ出し 財務長官が「失望」表明―【私の論評】日本のマスコミが伝えない真実!ルー米財務長官吠える!日本の増税DQNどもをそのまま放置するな(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からルー米財務長官の日本の増税に関する発言を以下に掲載します。

日本の経済政策に失望を表明したルー米財務長官
日本の消費増税に米国からノーが突き付けられた。4月以降の成長鈍化について、ルー米財務長官が「期待外れとなった」と表明したのだ。増税推進派は「消費増税は国際公約」というのだが、再増税を強行すれば世界に迷惑をかけることになりかねない。 
ルー財務長官は21日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後の記者会見で、日本とユーロ圏を名指しして、最近の成長鈍化を指摘した。日本については、消費税率を4月に8%に引き上げて以降、個人消費と投資が落ち込んでおり、「経済活動の縮小による困難に直面している」と懸念を示した。 
G20初日の世界経済についての討議で、麻生太郎財務相は、議長に求められる形で、日本経済の現状や成長戦略などを説明。麻生財務相は「日本に対する期待の高さを実感した」と胸を張る一方、「日本経済は緩やかな回復が続いている」と各国の懸念解消に躍起だった。 
アベノミクスで長年のデフレから脱却しつつあったが、消費増税をきっかけに変調がみられる日本経済。その先行きに米国が警戒しているのは明らかだ。 
このところ急速に進んでいる円安についても、本来なら米国の自動車産業などにとって打撃となるはずだが、ルー長官はクギを刺すどころか、17日の講演会で「強いドルは良いことだ」と述べ、円安ドル高を事実上容認した。G20でも「為替の議論はなかった」(会議筋)という。 
ルー長官は、19日には麻生財務相に「内需拡大を維持するための政策」を要請。政策を総動員して景気の底割れを回避すべきだと迫った。
アメリカとしては、日本が再増税してしまえば、日本はこれからもなかなかデフレから脱却できず、経済が低迷して、アメリカからの輸入などもできなくなるし、安全保障上にも問題であると考えているのです。だから、日本の増税はアメリカの国益になるものではないと考えているのです。

それに、最近では、あのノーベル経済学賞を受賞した、ポール・クルーグマン氏も、日本再増税に反対する旨を日本の週刊誌に公表しました。以下、その週刊誌の紙面です。


日本のマスコミ、識者、政治家など多くは増税まっしぐらですが、ポール・クルーグマン氏は、「日本経済は消費税10%で完全に 終わる。増税どころではなく、できれば5%に戻すべき」(週刊現代2014年9月13日号)とまで警告しています。

安倍総理にとっては、日本の政治家、マスコミ、識者などはほとんど財務省に諜略されているとみなしていると思います。実際、昨年はこれらの圧力により、長期安定政権を目指す安倍総理は、増税せざるを得ない状況に追い込まれました。

総理は、今後アメリカの新聞や、政府に対して働きかけをし、日本の増税は、世界経済に悪影響を及ぼすということで、反対の世界的世論を盛り上げてもらうようになるかしれません。

しかし、そんなことで良いのでしょうか。省益を再優先に追求する財務省は、そんなことは、おかまいなしに、増税に突き進み自殺者を増やし「殺人マシーン」と化してしまうのでしょうか。

本来は、このような問題は日本の国内で解決すべき問題と思います。外圧によって、増税が延期されるようにでもなったら、本当に情けないことだと思います。

日本のことは、日本でまともに、常識的にできるようになるべきと思います。この記事では、財務省ばかりに非があるような書き方をしていますが、私はこのようなことになるのは、多くの政治家にも問題があると思います。

財務省が出鱈目を言ってきたら、その場で論破してやれば、財務官僚も、赤っ恥をかき、ブライドの高い彼らは、二度とそのようなことはしなくなると思います。そうして、これは何もそんなに難しいことではないと思います。マクロ経済を大括りで知っていれば良いだけです。経済の専門家のように、細かいことまで知る必要はないし、何も細かい計算や、シミレーションができなくても、おかしなことは指摘できるはずです。そのくらいのことは、勉強して欲しいです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年3月26日火曜日

「マルチタスク習慣」は日常生活にどう影響するか―【私の論評】レストランはマルチタスクの一大決戦場だ!!これなしに成り立たない!!

「マルチタスク習慣」は日常生活にどう影響するか:



心理学の研究ではこれまで、マルチタスク人間を肯定する結果が出ていませんでした。ほとんどどんな場合でも、2つのことを同時にやろうとすればパフォーマンスが低下します。例外とされているのは、音楽を聴きながら別のタスクをするケースですが、その人の性格や音楽の種類によっては、やはりほかのタスクの妨げになるようです。ところが最新の研究で、場合によってはマルチタスク派が実生活で有利になる可能性が浮上しました。

この記事の続きはこちらから!!



【私の論評】日本のレストランはマルチタスクの一大決戦場だ!!これなしに成り立たないし、心理学のマネジメントへの適用は弊害のあることもある!!


上の記事、結びに「例えば、書類作成の最中などであっても、音に気がつきやすい傾向のある人がいたとしましょう。この人は、騒がしいオフィス環境であっても、メールの受信音を聞き逃す可能性が低いでしょう。また、運転中に、警察車両のサイレンやランプに気づきやすいのではないでしょうか。このような仮説は成り立つものの、筆者の知る限りでは、それを検証した実験はまだ行われていません」とありますが、検証した実験はないというのは本当でしょうか?これは、実験で実証されていないというだけで実は世の中にゴマンとあるのではないかと思います。

上の記事ある意味、はっきり言ってつまらないです。マルチタスクについては、以前からライフハックにはいろいろな形で掲載されてきました。そのたびに思ったのですが、本当のマルチタスクは百害あって一利なしです。しかし、実質上のマルチタスクが効果をあげている場合もあるし、マルチタスクなしには、競争に勝てない現場もあります。心理学者はもとより、こんな当たり前のことになぜ多くの人々が気づかないのかとかねてから思ったので、本日はそのことについて掲載させていただきます。

ものを考えるときは、一度に二つ以上のことを考えるのは不可能です。考えているように思っても、そうてはありません。しかし、ものを考える以外の事柄、特に作業については複数を並列して行うことは十分可能です。それをマルチタスクと呼ぶことができるなら、その典型事例は、レストランです。

リストランテ・ル・ブォンの厨房

以前、私は100席以上もあるレストランを担当していたときもあります。このブログの昔からの読者の皆様であれば、イタリアン・レストランである、リストランテ・ル・ブォンのことは覚えていらっしゃると思います。そのレストランを担当していたときの経験から、レストランはマルチタスクで動いているということができます。というより、マルチタスクでなければ、成り立ちません。競争に負けてしまいます。

昔、タイに長期滞在していた同僚が、その頃のタイのマクドナルドのことを語っていたことがあります。それは、タイのマクドナルドの従業員はそれこそ、完璧にシングルタスクをしていたということです。たとえば、コーラなど清涼飲料水を注ぐ係りの人は、そればかりやっていて、レジ係はレジ係で、常に同じ行動を繰り返していたというものです。その同僚も当時レストランを担当していましたが、その光景は実にコミカルに見えたことを語っていました。

タイのマクドナルド
その頃のタイは、人件費も安かったので、そのようなことができたのだと思います。現在では、そのようなことはないと思います。そうして、その同僚が語っていたことの背景には、昔から日本のレストランの厨房はマルチタスクであったことがあったと思います。

私自身もレストランを担当したときに、厨房の中を点検したときなど、まさにマルチタスクができなければ、レストランは成り立たないことを身を持って知りました。そんなこと当然ですね。1人や、1卓だけのお客様のためにだけコックが料理を作っていたら非効率この上ないことになります。

注!!リストランテ・ル・ブォンにはこんなセクシーなウエイトレスはいませんでした(笑)!!以下同じ

複数の卓の料理を数人で一度につくることはいうまでもありません。厨房では、仕込み作業がありますが、それを開店前に実施して、とにかくお客様がきたらすぐに、料理ができる状態にしておきます。ローストビーフなど、早いうちに大量に焼成しておいて、保温器に入れるなどのこともします。それに、スープのもととなる、フォンド・ボーなど一日中に煮込んでいます。そうして厨房にも役割分担がありますが、洗い場などは別にして、役割分担をしていても、注文が立てこんでくれば、全員が複数の作業を並行して行うのは当たり前になります。

こんなことは、家庭でも同じだと思います。たとえば、ご飯を炊いたり、オーブンで何かを焼きながら、フライパンで他の付け合せなどを調理したり、サラダを作ったりと同時並行でマルチタスクで料理をするのは全く当たり前のことと思います。


レストランで、こうしたマルチタスクを行わなければ、レストランそのものが成り立ちません。これは、厨房のことなのですが、ホール係だって同じことです。余程の最高級レストランの個室でのお客様などは別にして、普通のレストランなら、複数の卓を担当します。コースメニューの場合は、複数の卓の水を出したり、ワインを出したり、皿を下げたり、新たな料理を出したり、最後にはデザートを出したりと、複数の卓の複数のお客様の様子をうかがいながら、肉の焼き加減などのお客様の要望を厨房に伝えなければなりません。これって、立派なマルチタスクではありませんか?

このようなマルチタスクは、別レストランでなくても、宅配ビザでも同じことです。店舗のチーフは、作業しつつも、現在の宅配車がもどってくる時間も計算にいれながら、各方面の注文をまとめます。同じ方向の注文をいくつかまとめて、車両に搭載できるようにすれば効率的です。しかし、それにも限界があります。その限界を計算しながら、注文をまとめて作成します。そうして、2件、3件とまとめてドライバーが配達します。こうすることによって、効率の良い宅配が可能になります。

リストランテ・ル・ブォンのロースト・ビーフ調理教室の一コマ
また、うちのビザ宅配テンフォーでは、ピザを作る人、配達する人、受注をする人(ただし、受注は現在は、コールセンターがすべて行なっています、コールセンターから店に伝票が発信される仕組みになっています)というような役割分担はしていません。誰もがどの作業もできるように教育訓練しています。だから、手が少しでも手が空いていれば、何かの作業をします。そう考えると、ピザ宅配だってマルチタスクです。

ライフハック系の、心理学関係の記事はつまらないことも多いです。最近心理学で、発見されたことなどが発表されたりしますが、わざわざ実験しなくても、常識的に判ることが多いです。それに実証されていなくても、マネジメントでは、大昔から経験上知られていることも多々あります。場合によっては、マネジメント上悪い心理学の応用もあります。


心理学とマネジメントというと、有名なのが、「X理論」と「Y理論」です。これは、ダラス・マクレガーという人が、提唱したものです。これについては、詳細は、以下のURLをご覧になってください。

ダグラス・マグレガーX理論とY理論


この理論の詳細は、上のURLをご覧いただくものとして、以下に簡単に説明します。
X理論では、人間は本来仕事をするのが嫌いであり、強制や命令がないと働かないと捉える。Y理論では、仕事をするのは人間の本性であり、自ら設定した目標に対しては、その報酬により積極的に働くと捉える。

現実的には、この2種類のどちらかにすべての人を明確に分類することは難しく、この両極端のX-Yを結ぶ範囲のどこかに、すべての人が位置していると考えるべきである。

自己尊厳欲求の強い部下組織に対しては、リーダーの部下に対する認知や信頼、つまり、Y理論に基づく意識や行動が大きな魅力となる。

リーダーとしては、部下組織の自己尊厳欲求に対応して、意識的にY理論型行動を実践することが、X理論・Y理論の現実的な活用法となる。 
 ドラッカーは、この理論をマネジメント的な側面から否定しています。
X理論は人を未熟な存在とし、Y理論は人を成熟することを欲する存在であるとする。 エターナルコレクション版『マネジメント』(1973年) P.286
X理論は、人は怠惰で仕事を嫌い、自らの責任を負うことのできない存在だとします。したがって仕事を強制させるためにアメとムチによるコントロールが必要だとします。これに対してY理論は、人を働く欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲する存在だとします。そのために必要なものは、主として動機づけです。

以下非常に理解しやすいので、「ドラッカー図解」というサイトから引用させていただきます。
ドラッカーは、ダグラス・マグレガーのX理論とY理論はどちらもマネジメントではなく、「支配」が基礎になっていると言います。

X理論とY理論とはどんなものか、それから、それらに代わるものは何なのか、図解してみます。

図39: 人と労働のマネジメント

ドラッカー「マネジメント」図解39

ドラッカーはY理論は「心理操作による支配」だと言っています。
極端かもしれませんが、Y理論は「人は意欲的」と定義することで、人を心理的に追いつめます。「機会」を与えたのだから、それを活かせないのは君の問題だよ、と。
たとえば、ある人に権限や予算を与えたなら、あとは良い方向に進めてくれるはずだ、悪い方向に進むとすればそれはその人に欠陥がある、マネジメントは悪くない、と思えるのがY理論で、ドラッカーはY理論の見方は「根本において人をばかにしている」と表現しています。
X理論も同様で、「人は怠惰」と定義し、人を「ばか」にしています。
そこでドラッカーは人を「ばか」にするのではなく、「尊敬」を基礎とすべきだと述べています。
仕事のうえの人間関係は、尊敬に基礎を置かなければならない。

図40: 尊敬に基礎を置いたマネジメント

ドラッカー「マネジメント」図解40
Y理論との違いは、「尊敬」と「責任の組織化」です。
上の図から「尊敬」が抜けたり、「責任の組織化」ではなく「権限の組織化」を目指したのであれば、「Y理論」よりも不完全なものとなります。
 そもそも、ドラッカーは、X理論、Y理論は、心理的先制であり、病理心理学の応用であり、マネジメントの対象である健康な労働者を最初から弱者として扱っているとして否定しています。

確かにそうだと思います。労働者をすべからく最初から精神的弱者であるという論理は成り立ちません。そのように見る経営者は尊大だと思います。X理論、Y理論という考え方ではなくても、性悪説、性善説を語る経営者もいます。これも、同じ間違いを犯していると思います。

フーターズのウエイトレス

これに対して、性弱説をとる経営者もいます。要するに、人間は、悪くも良くもないが、弱い存在であるという見方です。しかし、これも間違いです。そもそも、最初から自分は強い存在であり、労働者を弱い存在とみているからです。 やはり、「仕事のうえの人間関係は、尊敬に基礎を置かなければならない」のです。責任にもとづき、現場に職務を編成させることにより、マネジメントが成り立つのです。

それをしないで、X理論、Y理論や性悪説にもとづきマネジメントをしても、マネジメントが育たないか、混乱をもたらすだけです。

以上のように、心理学の適用が間違うと、かえって現場に混乱を招く場合もあります。心理学関係の記事を読むときには、このことを念頭に置き、取り入れるものは取り入れれば良いですし、そうでなければ、取り入れないようにすべきです。私は、そう思います。皆さんは、どう思いますか?

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