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2020年4月2日木曜日

【国家の流儀】マスク2枚?ふざけるな! 国民熱望“消費税減税”なぜやらないのか! 「国民は俺たちに従っていればいい」官尊民卑の意識まる見え―【私の論評】終戦直前の軍官僚の物資隠匿体質DNAを、強く引き継いだ財務省の動きを封じよ(゚д゚)!


安倍晋三首相(右)は,岸田氏や財務省が反対する消費税減税{を突破できないのか

 中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が、日本経済を直撃している。生産や消費に甚大な影響が出ており、日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)の大企業製造業の景況感は7年ぶりのマイナスになった。東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5都府県では「医療崩壊」の危機が近づいており、もし事態が深刻化・長期化すれば、さらなる打撃は必至だ。政府は、リーマン・ショック時を上回る、かつてない規模の経済対策を断行する方針だが、マスク2枚は配れても、国民が熱望する「消費税減税」は盛り込まれない見通しという。どうして、政治家や官僚は減税を嫌うのか。評論家の江崎道朗氏が集中連載「国家の流儀」で迫った。


 共同通信社が3月26~28日に実施した全国緊急電話世論調査によると、望ましい緊急経済対策は「消費税率を引き下げる」が43・4%でトップだ。だが、政府与党の間では、減税は不評で、給付や和牛券のようなクーポン券が好まれている。

 例えば、自民党の岸田文雄政調会長は同月22日のNHK番組で、与野党内にある消費税減税論について、「下げるときも大きなコストと時間を要する。事前の買い控えが生じてしまう逆の効果も想定される」と否定的な考えを示した。

 公明党の石田祝稔政調会長も同番組で、「現金とクーポン券のハイブリッドが良い」との考えを示した。

 その理由は簡単だ。給付やクーポン券だと、「困った国民を政府が助けてあげた」という構図になり、政治家や官僚たちは優越感を維持できるからだ。もっとも、彼らは給付の原資が国民の税金であることをすっかり忘れているのだが。

 一方、減税となると、国民から取る税金が減って政府の権限が弱まってしまうと感じて嫌なのだ。要するに、増税派と減税拒否派たちからは、自覚しているかどうかは別にして、「俺たちが福祉、手厚い社会保障を構築して国民を守ってあげているのだから、国民は俺たちに従っていればいい」という官尊民卑の意識が垣間見える。

財務省


 この「福祉国家」の名のもと、増税を繰り返す政治家と官僚たちは必然的に国民生活と民間の経済活動にあれこれと干渉するようになる。よって「福祉国家は隷属への道なのだ」-。こう警鐘を鳴らした経済学者がいる。オーストリア人のF・A・ハイエクだ。

 彼は1944年に『隷属への道』を上梓し、福祉を名目にした増税は、官僚組織の肥大化と、国民の自由に対する抑圧を生むと訴えた。このハイエクの政治哲学に基づいて減税と民間の企業活動への規制緩和、つまり「小さな政府」を求める人たちのことをリバタリアン(libertarian)と呼ぶ。

 米国の保守派の一翼を担う彼らは「福祉や環境を名目に、いろいろと規制を設け、民間ビジネスを妨害する官僚組織のために高い税金を払うなんて真っ平ごめんだ。貧しい人の支援ならば教会に多額の寄付をした方が効果的だ」として政治家を突き上げ、減税を要求する。彼らは保守でありながら、増税を認めた「保守」政治家に対しても容赦なく「落選」運動を仕掛ける。

 そうした政治家と納税者たちとの厳しい緊張感の中で、リバタリアンに支援されたドナルド・トランプ大統領は今回、早々に大規模「減税」を含む2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策を決定したわけだ。

 日本にもリバタリアンがいれば、「いざというときに役に立たないのなら税金を減らせ。政治家と官僚は、われわれ納税者の雇用者に過ぎないことを忘れるな」と、政府と政治家を一喝しているに違いない。リバタリアンからすれば、減税は政府に対する要望ではなく、納税者としての権利なのだ。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(PHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』(扶桑社)など多数。

【私の論評】終戦直前の軍官僚の物資隠匿体質DNAを、強く引き継いだ財務省の動きを封じよ(゚д゚)!

世界最大の資産運用会社ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は2019年の年次報告書をこのほど公開し、「新型コロナウイルス終息後の経済は、政府と中央銀行の経済支援策が奏功して順調に回復する」との見方を示しました。

これまでの金融危機時には政府の対応の遅れが景気回復の足かせになったのですが、2兆ドル(約220兆円,GDPの10%)の経済刺激策や金融市場への流動性供給という迅速な対応で、今回の危機を乗り切ると指摘しました。

フィンク氏は年次報告書冒頭の投資家に宛てたメッセージで「金融市場で働いてきた44年間でこんな経験は初めてのこと」と新型コロナが生命や金融市場、企業に及ぼしている打撃について驚きを込めて語りました。「景気や金融市場が好転するのがいつになるのかは誰にもわからない」としつつ、「景気は着実に回復すると信じている」と強調しました。

その背景として、米連邦準備理事会(FRB)が金融市場への流動性供給で素早く対応したことや政府による2兆ドルの経済対策の迅速な投入が奏功するとみています。政府の対応が遅れて危機が深刻化した08年の金融危機の「教訓が生かされた」と指摘しました。同時に当時の危機は金融市場の構造的問題が根底にあったが、今回はそれがない点も政府の対策がこれまで以上に効果を発揮する理由と説明しています。

運用資産が7兆ドル超と世界最大のブラックロックは今回の相場急落で、運用する上場投資信託(ETF)の一部が急激な資金流出に見舞われました。フィンク氏は「世界中の市場で働く当社社員の9割は在宅勤務になっている。顧客投資家と電話やテレビ会議で密に連絡をとり、市場の混乱を乗り切りたい」と強調しました。

米国では、悲観的な考えの人が多いようですが、私自身は、このローレンス・フィンク氏の見方に賛成です。もし、新型コロナウイルスが今年の夏あたりに終息した場合、その後の経済の伸びは凄まじいものになり、年度末においては、年間を通して経済だけみるとコロナウイルス禍などなかったかのような状況になるのではないでしょうか。

ただし、コロナウイルス禍が長引いたとき、そうはならないでしょうが、コロナウイルスの感染が終息した後には猛烈な勢いで経済が伸び、比較的短期に回復するでしょう。

なぜこのようなことを自信を持っていえるかといえば、まずは、ローレンス氏が指摘しているように、2兆ドル(約220兆円、GDPの10%)の経済刺激策や金融市場への流動性供給という迅速な対応があるからです。

さらに、以前このブログでも示したように、香港がSARSに見舞われたときの事例があるからです。当該記事のリンクを以下に示します。
【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくもとして、一部を引用します。
 参考になるのは、SARS流行時の香港と広東省の経済動向だ。グラフはSARSの流行前から消滅時にかけての香港の個人消費と広東省の省内総生産(GDP)の前年同期比の増減率推移である。香港では、ふだんは喧騒に包まれている繁華街に出かける人の数が少なくなったと聞いた。広東省は上海など長江下流域と並ぶ「世界の工場」地帯で、生産基地が集積している。 
 香港の個人消費は、SARS発症前の01年後半から前年比マイナスに落ち込んでいる。これは米国発のドットコム・バブル崩壊の余波と9・11米中枢同時テロを受けた米国のカネ、モノ、人への移動制限による影響のようだ。 
 低調な消費トレンドが、SARSの衝撃で03年半ばにかけて下落に加速がかかった。しかし、SARS騒ぎが収まると、個人消費は猛烈な勢いで上昇に転じた。
 対照的に広東省の生産はSARSの影響が皆無のように見える。むしろ、流行時の02年秋以降から生産は目覚ましい上昇基調に転じている。
 今回への教訓はシンプルだ。本来、景気は循環軌道を描くわけで、基調が問題なのだ。弱くなっているときに新型ウイルスという経済外の災厄に国民や市民、企業が巻き込まれても、災厄自体は一過性で、基本的な景気のサイクル軌道が破壊されることはない。
一言で言えば、基本的な経済政策に間違いがなければ、経済外の災厄に見舞われても、災厄自体は一過性であり、経済はすぐに回復するのです。

これについては、この記事でもあげように経済以外の災厄として、戦争もあります。経営学の大家ドラッカー氏は、経済統計をみただけでは、後の歴史家は、第二次世界大戦があったことに気づかないかもしれないと言っています。

なぜなら、米国では戦時中には、戦争遂行のために、大量に様々な兵器などが製造され、それらがGDPに計上されるため、経済統計ではさほど、落ち込みは見られません。戦争が終わると、兵器製造なとは低調となりますが、今度はある程度制約のあった消費が伸びます。だから、年度で見た場合は、戦争の痕跡がみつからないほどに、経済は悪くはならなかったのです。

ヨーロッパや日本の場合も同じです。ただし、ヨーロッパや日本の場合は、米国のように経済が大きくはなかったので、国民はかなり耐乏生活を強いられましたが、それにしても、兵器等の製造は、かつてないほどの勢いで実施されたため、それがGDPに計上され、国民の生活実感からはかけ離れていたのですが、GDPだけみていると、さほど落ちたように見えないのです。

ただし、この記事でも解説したように、日本だけは特殊事情がありました。日本でも、終戦直後には凄まじい勢いで国民の消費意欲は高まったのですが、それは暫く満たされることはありませんでした。それは軍(陸軍省、海軍省などの官僚による、外務省等も隠匿していたとされている)による大量の物資の隠匿があったからです。

とはいいながら、隠匿物資も国富の中には統計上では存在したわけですから、多くの人が想像していたよりは、終戦直後の日本は本当は窮乏していたわけではなかったのです。事実統計上では、戦前の7割の国富が温存されていたのです。

確かに、日本の都市部は爆撃などで焼け野が原になっていたのですが、地方では生産拠点が残されていたため、多くの人々が考えているように、日本全土が焼け野が原となって、日本はゼロからスタートしたわけではないのです。周辺国などから比べるとはるかに有利な条件からスタートしたのです。

ただし、大量の物資(米、小麦粉、金塊、その他ありとあらゆるもの)が隠匿されていたので、暫くの間耐乏生活を強いられたため、多くの人々がゼロからのスタートと思ってしまったのです。もし、官僚が物資を隠匿していなければ、国民は当初から生活にあまり窮することなく、ましてや裁判官が餓死するなどの痛ましいことはおこらず、戦後をスタートすることができたはずです。

そうして、この官僚の隠匿という姿勢は今も変わっていないようです、特に財務省にはその姿勢がいまでも強いです。

昔の官僚は、隠匿という厳密には非合法のやり口を使ってまで、単純に大量の物品や金塊などを隠匿しましたが、現在財務官僚は、日本国の貸借対照表でいえば、右側の負債ばかり強調して、左側の資産については何もいわず、日本国は借金まみれだという言説を流布し、挙げ句の果てに、税と社会保障の一体改革などと、ぬかしてなにかといえば、増税をしたがります。

そのおかけで、古今東西日本だけで行われた、震災の復興に復興税などというあり得ない増税をし、その後も8%、10%と増税を繰り返してきました。これは、終戦末期の官僚が大量に物資を隠匿したのと変わりありません。

   終戦直前に物資隠匿を行った官僚らの、DNAを強く引き継いだと
   みられる財務省事務次官岡本薫明氏

ただ、大蔵省、今の財務省の官僚がスマートに合法的に実行しているだけの違いです。どうも、日本の官僚にはこうした体質が染み付いているようです。これは、いずれ何とかしなければならない重大問題です。

10%増税で、個人消費が落ち、昨年10月から12月の、GDPが7%台のマイナスになっていたところに、今回のコロナウイルス禍です。それに、このブログに以前示したとおり、真水の経済対策ということでは、全く不十分です。

このままだと、日本は米国のようにコロナ禍が終息しても、経済がすぐに回復することはありません。そのようなことを避けるためにも、減税は必須ですし、経済対策ももっと大きなものにする必要があります。

このようなことを言うと、すぐに「安倍政権が悪い」「安倍総理が悪い」などという人もでてくるでしょうが、たしかにその側面は否めないものの、政権ばかりをせめていれば、終戦直後から続いている官僚の物資隠匿体質引き継いだかのような、財務省の現状の隠匿体質はいつまでも是正されないでしょう。

官邸と、財務省の戦いはこれからも続くでしょう。これは、安倍政権後もそうなるでしょう。ただし、今は官邸と財務省の戦いで官邸側が勝利するまで待っている余裕などありません。

今のままでは、徐々に経済がかなり悪くなるだけです。おそらくリーマン・ショックのときのように、震源地の米国やその悪影響を受けた英国が、リーマン・ショックからいち早く回復したにもかかわらず、日本だけが回復せず一人負けしたように、コロナショックからの回復でも日本だけが遅れてしまうことになります。

そのようなことにならないためにも、安倍総理は現状ではできる対策をなるはべく早く実行した上で、次の衆院選で減税と、大型景気対策を公約に掲げて、大勝利して、財務省の動きを封じて日本の景気回復を米国なみにはやくできるようにしてほしいものです。

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2020年3月29日日曜日

中国 陽性でも無症状は感染者に加えず 感染拡大に懸念の声―【私の論評】中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつある(゚д゚)!

中国 陽性でも無症状は感染者に加えず 感染拡大に懸念の声


中国では新型コロナウイルスに感染して陽性反応が出ても症状がないことを理由に感染者の統計に加えず、公表もされていませんが、「無症状」の感染者から感染した可能性があるケースが出ていて、感染が広がることに懸念の声が上がっています。

中国 河南省の保健当局は28日、国内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者45人のうち、省内の女性1人について、陽性反応が出ても症状がない人と濃厚接触していたと発表し、「無症状」の感染者から感染した可能性があることを明らかにしました。

中国政府は無症状の感染者について、隔離して2週間の経過観察の対象となるものの、せきなどの症状がないため感染させる確率は比較的低く、公表する必要がないとして感染者の統計に加えていませんが、香港メディアは非公開の記録として、先月末の時点で無症状の感染者が4万3000人以上に上っていたと伝えています。

国民からは公表されていない「無症状」の感染者から感染が広がることに懸念の声が上がっていて、李克強首相は今月26日に開いた会議で情報公開や対策を強化する方針を示しました。

【私の論評】中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつある(゚д゚)!

中国は感染の初期段階でも、感染の事実を隠蔽したため、多くの国々の人々が感染しました。これは、すでに多くの人が知っている事実です。

中国の統計データは2月に3度も統計変更がありました。通常は変更後と変更前の複数時系列が発表されるべきですが、公表もそうした措置は見当たらず、全く信用ができません。

陽性反応が出ても症状がないことを理由に感染者の統計に加えなかったとしても、感染者として追跡をしたり、囲い込みをしたり、自宅療養させるなどの隔離の措置をとっていれば、防疫体制にはあまり問題がないかもしれませんが、もしこれを通常の感染していない人と同じ扱いをしていたとしたら、とんでもないです。

しかし、とにかく習近平政権としては、武漢ウイルスの感染が中国では終息したことをアピールしたいようですから、感染していない人と同じ扱いをしている可能性は高いです。

そうなるとさらに、かなりの人に感染がこれからも広がる可能性が高いです。これでは、日本としても、中国からの入国制限を当面緩めることはできません。

非常時には人の本質が顕になると昔から言われていますが、今回の非常時において、習近平や中国共産党の本質が顕になったのが、この統計の操作です。

とにかく自らの落ち度にならないように、自ら無謬でありたいがため、統計のとり方まで兵器変えてしまうのが、中共なのです。統計の操作といえば、もともと中国のGDPの値もほとんど信じられていません。まずは、地下経済を完璧に無視したものになっています。

さらには、伸び率などほとんど出鱈目です。これらは、貿易相手国の正確な数字を用いて、実際輸出入の数字とGDPに相当乖離があることや、人工衛星からの中国の夜間の灯りの推移を観察した結果などからも、かなり出鱈目であることが実証されています。

中国の統計数値は、正確なデータではなく、「政治的メッセージ」であるとみなすのが正しいです。要するに「武漢ウイルスを根絶せよ」「GDPをこのくらい伸ばせ」という号令のようなものとみなすべきなのです。

このようなことを、平気でするのが中共です。非常時には人の本質が顕になるというのは、無論中共だけではなく、日本の中でも見られることです。

たとえば、最近では広島県の県立広島大は29日、新型コロナウイルスへの感染が確認された今春卒業の女子学生(20歳代)について、欧州を旅行後、症状があったにもかかわらず、卒業式に出席していたと発表しました。大学側は1月以降、全学生に海外旅行を自粛するよう求めていました。

大学によると、学生は今月5~13日、英国などを旅行。帰国後、のどの痛みや鼻水などの症状が出たにもかかわらず、23日に学科別に開かれた卒業式にマスクをして出席しました。学生は福岡県在住で、同県が28日にこの学生の感染を発表しました。


少し古いもので記憶に残るものとしては、2月18日午後8時頃の福岡市営地下鉄内で、同じ車両の席でマスクをせずに咳をしている人がいるというので、非常通報ボタンを押し、電車を止めた男がいました。

テレビでも放映されたが、優先席に座っているので高齢者のようです。車内はガラガラでした。それほど嫌なら席を変えるかいったん下車すればよいです。“迷惑爺”としか言いようがないです。

しかも、この男は偉そうに足を組んで座っているのです。マナーも知らないようです。この現場に居合わせた青年によると、車内では「頭おかしいんじゃない」という声が上がっていたそうです。

2月28日には、山手線でもマスクした女性が咳をしたところ、女性に対して「コロナウイルスの可能性があるから、隣の車両に移れ」と怒鳴る男がいて、それを注意した男性と怒鳴り合いになる場面がテレビで放映されていました。傑作だったのは、この場面を撮影した高校生の「大人気ないなあ」というコメントでした。この男も恥ずかしい姿をさらしてしまいました。




トイレットペーパーをめぐっても恥ずかしい行動が相次ぎました。あるスーパーでは、デマ情報に踊らされた相当高齢だと思われる男性が12ロール入りのトイレットペーパーを4つもカートに乗せていました。この恥ずかしい映像は全国に放映されました。今の時代、どこで誰に撮られているか分かったものではありません。

先月末から今月にかけてトイレットペーパーがスーパーの棚から消えてしまいました。原因はSNS上で「トイレットペーパーなどの製造元である中国が、生産をしていないので品薄になる前に購入したほうがいい」というデマ情報が拡散したためです。

このデマ情報を拡散させた1人が米子医療生活協同組合の職員だったことが判明し、同生協が謝罪会見を行いました。この職員は、「伝え聞いた情報を確認せず投稿してしまった。転売目的ではない」などと釈明しているようですが、無責任きわまりない行為です。

愛知県・蒲郡市では、陽性だと判明した50代の男性が「コロナウイルスをまき散らしてやる」と言って、飲食店やパブに行っていたことが判明しました。正気の沙汰ではないです。当人は、すでに亡くなったそうですが、言語道断の行為です。

静岡県・焼津市から選出されている諸田洋之県議が大量のマスクをインターネットオークションに出品していたことが判明した。3月9日に本人が行った記者会見によれば、888万円の売り上げがあったそうである。もともと会社で持っていたものなので転売ではないから、悪いことをしたとは思っていないと開き直ったそうです。

1枚せいぜい数十円のものを何倍、何十倍もの値段で販売するというのは、マスク不足につけ込んで金儲けをしたということです。こういう他人の危機につけ込んでやる金儲けをするというのは、卑しいやり方です。県議以前に、人間として批判されるべきです。

以上のように、日本国内でも非常時には人の本質が顕になるという例がかなりみられました。これからも、怒るかもしれません。人の振り見て我が振り直せという格言もあります。私も、このような愚かなことをしないように気をつけたいです。

しかし、この現象は財務省にまで及んでいます。このブログでも、以前指摘したように、今回のような非常時には、経済の大停滞と未曾有の危機であり、かつ、消費税増税で景気が低迷しているわけですから、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指す給付金の支給と景気の底上げを目指す、消費税減税の両方を実行すべきです。

すぐに、効果がでるように、給付金を支給し、その後消費税減税を行い、その後も何度も様々な政策を実行すべきです。そうして、それを実行するには国債を発行すればよいです。国債発行により、金利が上昇することがあれば、日銀が金融緩和をすれば良いのです。今の日本ではやりようはいくらでもあります。

しかし、財務省は減税は頑としてやりたくないようで、政府に足して減税か給付金かの二者択一を迫っているようです。これは、はっきりいって財務省の越権行為です。減税と給付金を実行するしないかあくまで政府が決めるべきものです。

経済危機や不況の時の不十分な経済政策は、死者を生み出すことがスタックラー&バス『経済政策で人は死ぬか?』草思社で説得的に解説されています。これについては、このブログでも解説しました。その意味では長期停滞の主犯である財務省と旧日銀は人殺し組織といっても過言でないです。失業率と自殺者数の負の相関(オークンの法則)は明瞭なその証拠です。


仮に非常事態宣言を出せば経済への損失はさらに拡大するのは間違いないでが、それは経済対策をうまく実行すれば乗り越え可能です。国民一人当たり現金給付、消費減税などを行えば十分可能です。

これは、杞憂であってほしいのですが、といいつつ、その可能性は十分あると思うのですが、非常事態宣言による経済の悪化に対処するための経済対策に財務省の抵抗があり、政府がなかなか非常事態宣言に踏み切れないとすれば、財務省は本当に誰がみても人殺し組織ということになります。

このようなことを述べると、「政治家が悪い」「安倍政権が悪い」とかいいだす人も多いのではないかと思います。確かにその側面はないとはいえませんが、この種の愚劣な意見こそが、政権をまたいでずっと30年超も財政再建を無意味に唱える財務省を放任してきたともいえます。

中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつあります。無論中国共産党と比較すれば、日本の財務省の官僚など、はるかにスケールが小さく「プチ死神」とでも呼ぶべきなのかもしませんが・・・・・・・。死神は死神です。

これからも、国でも、組織でも、個人でも、非常時にはその本質が顕になることが多いものです。顕になれば、顕ではなかったときよりは、その本質を見極め、良いことなら、それを応援し、悪いことなら、糾弾すべきです。糾弾されなければ、組織でも個人でも、ますます腐り、さらに悪さをするようになります。

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2020年3月28日土曜日

東京五輪延期の裏で官邸内部に異変…消えた“菅総理”の目、7月に“減税総選挙”か―【私の論評】国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物のような財務省(゚д゚)!

東京五輪延期の裏で官邸内部に異変…消えた“菅総理”の目、7月に“減税総選挙”か
文=渡邉哲也/経済評論家

東京五輪の延期を発表する安倍晋三首相

 東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることになった。これは、アメリカなど国際社会の要請を受ける形での決定であり、日本にとってはベストな選択といえるだろう。そして、史上初の五輪延期という決定を通して、安倍政権の内部で起きている変化が見えてくる。

 新型コロナウイルスの感染拡大が取り沙汰されていた2月下旬、永田町周辺では飯島勲内閣官房参与の姿が見え隠れし始め、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の動きが変化した。2月29日に安倍首相は記者会見を行い、感染拡大防止策をはじめ、学校の一斉休校要請、緊急の経済財政対策、立法措置などについて発表し、自ら指揮を執る形での危機対応に転換した。

 また、3月5日に行われた未来投資会議では、産業界の中国依存の是正や生産拠点の日本回帰などについて述べている。これらの動きは、大規模な政策転換であり、内部政治の大きな変化を意味するものだ。

“菅首相”の可能性が消滅した理由

 安倍首相は2019年9月の内閣改造の際、派閥均衡人事を行い、次のリーダー候補を競わせる形をとった。加藤勝信厚生労働大臣、茂木敏充外務大臣、岸田文雄自民党政務調査会長、河野太郎防衛大臣らが、そうである。

 一方で、二階俊博自民党幹事長をあえて据え置き、菅義偉官房長官も留任させた。菅官房長官は自派閥の創設に有利になる幹事長を希望していたが、そのポストには二階氏を続投させたわけだ。菅氏は官房長官という要職に就いている限り、自派閥を立ち上げることはできない。この人事には、安倍首相の菅官房長官に対する本質的な懸念があったとも言われている。

 代わりに、菅官房長官に近い人物に3つの大臣ポストが与えられた。菅原一秀経済産業大臣、河井克行法務大臣、小泉進次郎環境大臣だ。しかし、菅原・河井の両大臣はスキャンダルで辞任し、初入閣を果たした小泉環境相も株が急落している。これらの現状を見る限り、一時は「ポスト安倍の最有力候補」とも言われた菅氏に次期首相の目はなくなったと言ってもいいだろう。

 また、IR(統合型リゾート)の問題をめぐっても、事実上の旗振り役を務めていた菅官房長官と二階幹事長についてさまざまな噂が飛び交い、実質的に暗礁に乗り上げていることで、カジノ利権による利益は期待できなくなった。さらに、新型コロナウイルスの対応で自民党内からも反発が生まれ、安倍首相がどのような判断を下すかが注目されていたわけだ。

 党内政治は「派閥の論理」と「数合わせ」で決まる。現政権は安倍・麻生の二派閥と二階派による数合わせでできており、それにより党内の圧倒的過半数を維持し、党内運営を潤滑にしてきた。ただし、一方では、二階幹事長の中国寄りの姿勢などが保守層の反発を招いていたわけだ。

首相官邸の内部で起きていた“異変”

 そうした空気を一変させたのが、安倍首相の2月末の会見であった。菅・二階切り――これには党内的なリスクはあるが、そのままでは時間切れになるだけであったため、自派閥に応援を求め、官邸内部にも手を入れた。そして、経済産業省出身の今井尚哉氏首相補佐官、警察庁出身の北村滋国家安全保障局長が主導する体制に切り替えたわけだ。

 同時に、安倍・麻生に東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長を加えた3人体制で、国際社会との連携を強めていった。それは、新型コロナウイルスの対応に関しても、東京五輪の延期においても同様だ。いずれも非常に舵取りが非常に難しい問題であるが、現時点ではベストな方法を選択できている。

 東京五輪の延期に伴い問題は山積しているが、今後はもちろん新型コロナウイルス感染症への対策も加速すべきだ。治療薬の確定と治療ガイドラインの早期確立が実現すれば、季節性インフルエンザの水準までリスクを軽減できるだろう。

 そうなれば、その後は現金給付などの消費喚起策を実施するとともに、消費税減税と憲法改正を争点にして、7月頃に解散総選挙というシナリオを描くこともできる。その場合は、安倍首相の自民党総裁4選とセットで悲願の憲法改正も現実味を帯びてくるだろう。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物のような財務省(゚д゚)!

政府の経済対策は、消費減税なしで所得制限現金給付ということに落ち着きそうです。事業費でリーマン超えでも、真水は15兆円程度でしょう。真水で20兆円程度までお終いになる可能性が台大です。これは、せいぜいGDPの4%なので、米国のGDP10%などと比較するとかなりお粗末な対策です。


経済対策には大別すれば(1)公共事業(2)減税・給付金(3)融資・保証-があります。真水としては、(1)のうち用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分と(2)の全額、(3)は含まないことが多いです。

実際の政策としては、(2)でも消費に回らないと短期的にはGDP創出につながらないし、(3)がないと企業倒産につながり雇用の喪失を通じてGDPへ悪影響が出ます。その意味では、全ての政策が相まって重要なのですが、真水の考え方はマクロ経済政策としての有効需要増をGDPに対する比率で表すことができます。

今回のような経済ショックがあると、GDPの一定割合の有効需要が失われ、GDPが低下します。それは、GDPが減少すると失業率が上昇する「オークンの法則」から分かるように、雇用の喪失を意味します。雇用を確保するために、どの程度の経済対策が必要かを検討する際、真水の考え方は好都合です。

「オークンの法則」とは、、一国の産出量と失業の間に経験的に観測される安定的な負の相関関係のことです。いずれの国でも成り立っている法則です。

たとえば、米国では、おおよその傾向はGDPの2%減少が失業率の1%上昇になっています。日本の場合、雇用は比較的安定しているので、さらに大きなGDP減少でないと失業率は1%上昇しません。例えば、最近ではおおむねGDPの8%減少が失業率の1%上昇になっています。

オークンの法則

どの先進国でも、雇用の確保はマクロ経済政策の基本中の基本です。経済ショックが各国のGDPに与える悪影響も均一ではなく、またそれが失業に与える悪影響も同じではありません。しかし、雇用の確保という観点からみれば、経済ショックに対する各国のマクロ政策はおのずと「相場観」が出てきます。そうした議論のためにも真水の考え方で経済対策を見た方が適切だといえます。

日本では、事業費の数字を出し、経済対策を大きく見せる傾向があります。しかし、真水の数字を使ってGDPに対する割合で見たほうが、より適切に日本の世界の中での位置付けが分かりやすくなるはずです。それでみると、日本の経済対策は欧米諸国より一桁違っており、コロナ・ショックを甘く見ていると言わざるを得ないです。

そうして、なぜそうなっているかといえば、省益しか頭にない、愚鈍な財務省が盲目的に増税と緊縮財政をすることのみに固執し、多くの政治家やマスコミがこれに惑わされ、コロナ・ショックや増税10%の悪影響があってもお粗末極まりない経済対策でも、何とかなると思い込まされているからです。

増税の悪影響は凄まじく、このブログでも掲載したように、実質GDP成長率は前期比年率▲7.1%に第1次速報値同▲6.3%から下方修正となっています。

これは、消費税増税への対策としてポイント還元を実施したのですが、これが完璧に失敗したことを示しています。

これに関しては、もしコロナウイルスの問題がなければ、かなり大きな話題になっていた可能性がありますが、現状はコロナウイルスの問題が大きく、その影に隠れてあまり大きな話題にはなっていません。財務省としては、胸をなでおろしていることでしょう。

しかし、この大失敗と、今回のコロナショックで日本経済が未曾有の大ショックに見舞われるのは明らかです。

今回の、減税なしのお粗末な給付金対策等では、景気の悪化を食い止めることはできないでしょう。

安倍総理としても、これについては遅かれ早かれ気づいていると思います。多くの無能ではない政治家達も気づいているか、気づきつつあるものと思います。

これが、今後4月、5月となるにつれて明らかになるでしょう。それでも、愚鈍な財務官僚が考えを変えず、省益に拘泥していれば、それを断ち切るしかありません。

愚鈍で利省的な財務官僚の思い通りさせないため、安倍総理は消費税減税と、他の積極財政を公約に掲げ7月に解散総選挙を実行すべきです。

入省したての頃は善良だったはずの彼らがなぜ歪んだ怪物になるのか?

省益しか頭にない、しかも省益を考えるにしても最悪の悪手しか打とうとしない愚鈍財務省には、最近ではさすがに東大生も就職先としてあまり重視していないようです。さもありなんです。現状の財務省に入省してしまえば、馬鹿になるだけです。正しい判断です。

今のままでは、財務官僚というだけで、マクロ経済を理解しない愚鈍で常識なしであるとか、国民生活のことなど全く考えず省益だけを追求する歪んだ怪物であるとみなされるようになるかもしれません。いや、すでにもうそうなりかけています。

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2020年3月26日木曜日

国際的にも異常!財務省をサポートする「使えない学者」たち 震災でもコロナでも増税路線 マスコミも「アメ」与えられ…情けない日本の現状 ―【私の論評】異次元の積極財政と金融緩和を迅速に実行し、増税・コロナによるダブルパンチ不況をいち早く抜け出すべき(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方


 新型コロナウイルスによる景気後退がいよいよ現実のものになってきた。欧米では外出禁止などの行動制限や規制が行われ、実体経済がどんどん縮小しており、2008年のリーマン・ショック級になりつつある。

 米国では、200兆円規模の経済対策が検討されようとしている。しかし、日本では消費回復の起爆剤になる消費減税を有力政治家が否定している。その背後には財務省がいるからだ。

 財務省には、実は多くのサポーターがいる。それらは、学者、マスコミと財界だ。

 一部の経済学者が、コロナ・ショック対策として経済政策を発表した。提言では、消費増税による悪影響がまったく言及されず、消費減税は完全に否定されていた。経済政策の提言としてはまったくお粗末だといわざるをえない。

 しかし、提言者の名前を見ると納得する。11年の東日本大震災後の復興増税から、昨年10月の消費増税まで、増税一本やりの人たちだったのだ。

 本来、大震災のような500年に1度の危機の際には超長期国債で対応し増税しないというのは基本中の基本だ。日本の復興増税のような悪手は、古今東西でほぼ見当たらない。

 今回のコロナ・ショックは、リーマン・ショック級のインパクトを経済に与える。各国の政策担当者は、そうした認識だろう。

 そうした学者たちを持ち上げ、財務省の宣伝記事をしばしば書くのが日本の大半のマスコミだ。日本の財政事情が悪くないのに財政再建の必要性をたれ流し、減税政策にも否定的だ。

 日本の場合、日刊新聞紙法により新聞社の株式には譲渡制限があるので、新聞社を中核としてマスコミグループが形成されるケースが多い。財務省はその新聞社に消費税の軽減税率という「アメ」を与えた。このため、新聞業界は消費減税に賛成と言いにくい事情があるのだろう。

 経済界も、消費増税の代わりに法人税の減税を主張する財務省を支持している。また、社会保障の充実のためには、社会保険料負担が不可避であるが、財務省は企業にも負担が及ぶ社会保険料ではなく、消費者に負担が及ぶ消費税を推してくれている。そこで財界も目先の利益のために、財務省支持になっているのだと思われる。

 このように、財務省は、学者、マスコミと財界の支持を得て緊縮財政を行っているので、政治家としても簡単には財務省に反対できない。

 マスコミと財界が自分の利益で行動するのはどこの世界でもある話だが、それにしても日本の学者の体たらくぶりは、国際的にみてもちょっと尋常ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】異次元の積極財政と金融緩和を迅速に実行し、増税・コロナによるダブルパンチ不況をいち早く抜け出すべき(゚д゚)!

3月14日夕、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で声を張り上げた

「現在はあくまで感染拡大の防止が最優先ですが、その後は日本経済を再び確かな成長軌道へ戻し、皆さんの活気あふれる笑顔を取り戻すため、一気呵成かせいにこれまでにない発想で思い切った措置を講じてまいります。その具体的な方策を政府・与党の総力を挙げて練り上げて参ります」

3月14日夕、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で声を張り上げました。今の経済状況は極めて深刻です。会見から3日後の17日には日経平均株価(225種)の終値は1万7000円レベルでした。既に「危険水域」を突破しており、大胆な経済対策は待ったなしの状態です。

本来であれば新年度予算案の国会審議が続いている時に追加経済対策や補正予算の議論をするのはタブーだったかもしれません。野党側から「ならば本予算案を組み替えればいい」と横やりを入れられて予算案審議がストップする恐れがあるからです。しかし、今は、そんな悠長なことは言っていられない状況です。野党も審議を拒否すれば、自分たちに批判が集まることを知っているでしょう。

現段階で経済対策の柱として語られているのは、キャッシュレス決済時のポイント還元の延長・拡充や、子育て世帯などへの現金給付などがあります。ところが、これらはいずれも「想定の範囲内」の対策です。特に「ポイント還元」については、昨年10月に消費税率が10%に上がった際の景気冷え込み策と目されていたが、その期待を見事に裏切ったことは実証済みです。今は「異次元」の対応が求められているのです。

そこで浮上したのが消費税減税論でした。消費税は1989年に導入されて以来、約30年の間に3%、5%、8%、10%と税率が上がってきました。1度も下がっていません。

それは、財務省が消費税減税に絶対反対の立場を貫き、多くの自民党議員も財務省に同調するだけではなく、上の記事にもある通り、多くの経済学者やマスコミまでが同調しているからです。

財務省は、少子高齢化が進み社会保障費の増大が避けられない状態の中、安定的な税源である消費税は、税率を上げる議論をすることはあっても、下げる議論はあり得ないかのごとく、世論を操作し、実際世論はその方向に動きました。この議論に反対するのは、少数派という状況になっていました。

財務省にとっては、消費税は税率を上げる際、大変な政治的エネルギーを費やしてきました。1度下げると、再び上げるのは途方もない苦労がいる。それは回避したかったのでしょう。

破綻した山形県の老舗百貨店、大沼。コロナショックは構造不況業種の百貨店の淘汰も加速させる

しかし、それが許されたというか、なんとか財務省が抑えつけられたのは、コロナショック前のことです。それにしても、10%増税後の景気の落ち込みは酷く、内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減でした。

昨年10月の消費税の10%増税に対処するため、ポイント還元制度などを導入したのですが、これらは全く何の役にもたたかなかったことが実証されたのです。

それに、今回のコロナウイルスによる打撃は、リーマンショック以上といわれるのですから、消費税減税もタブーとせずに議論すべきなのです。

そうして、無論そのような動きは自民党の中でも起こりました。自民党の安藤裕衆院議員ら若手有志は11日、西村康稔経済再生担当相と面会し「消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目に適用する」よう提案しました。形式的には軽減税率の拡大だが、実質的には「消費税を0%にする」という意味になります。

「消費税0%」は、昨年の参院選、れいわ新選組の山本太郎代表が主張したことで知られています。当時は他の野党でも荒唐無稽と受け止められたものです。しかし新型コロナ問題が起きてからはにわかに現実味を帯びてきました。

安藤氏ら以外にも、自民党若手・中堅を中心に消費税率の一時引き下げ論が高まっていました。

安倍総理は14日の会見で消費税減税について問われ「自民党の若手有志の皆さまからも、この際、消費税について思い切った対策を採るべきだという提言もいただいている。今回(昨年10月)の消費税引き上げは全世代型社会保障制度へと展開するための必要な措置ではあったが、今、経済への影響が相当ある。こうした提言も踏まえながら、十分な政策を間髪を入れずに講じていきたい」と発言。わざわざ若手の提言を口にして思わせぶりなことを語りました。

安倍総理はもともと財務省の「増税史観」に懐疑的で、消費税率アップを先送る決断も二度経験済みです。自民党内では消費税増税には最も慎重な考えの1人ともいえます。もし、昨年の今ごろ「新型コロナ」がまん延していたら、昨年10月の「消費税10%」は先送りしていたかもしれません。であれば、時限的に8%に戻す選択をしてもおかしくないです。

ところが、麻生太郎財務相は19日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気対策として浮上する消費税減税論について「現段階で消費税を考えているわけではない」と述べました。国民に現金を配る「現金給付」についても「今の段階で検討しているわけではない」と否定的な考えを示しました。

麻生財務大臣 19日日閣僚会議記者会見で

3月前半に大型経済対策の検討が伝わると、真っ先に動いたのは財務省でした。消費喚起策として、消費税率を5%程度に引き下げるべきとの主張が与野党の一部から出始めたため、その火消しに回ったのです。

消費税率引き下げについては、自民党の岸田文雄政調会長らも慎重な姿勢です。財務省の火消し作業は官邸や与党内で一定の成果を上げており、消費減税の可能性はかなり低くなってしまいました。

ただ、安倍首相は経済対策の考え方として「前例にとらわれた対応では、前例なき危機に対応できない」という言葉を繰り返しており、それが財務省との駆け引き材料として使われているようです。安倍首相は消費減税の可能性は排除していません。

そこで、消費減税に代わる経済対策案の目玉として浮上したのが、財務省自身も否定しない現金給付案です。目下の議論では、リーマンショック後の2009年4月の経済対策で配った1人当たり1.2万円(子どもと高齢者は2万円)を大幅に上回るのは確実です。最大で国民1人当たり10万円とする案が出ています。

しかし、これは明らかに財務省の政治的越権行為です。いつの間にか、消費減税と給付金が財務省の中でいずれをとるかの選択肢となっています。

これに沿った論評をする経済学者もでてきました。たとえば、Yahooニュースにもでていた、以下の記事です。
新型コロナショックに対しては、生活下支えが目的なら給付金、景気浮揚なら消費税減税が望ましい
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事で著者は、経済対策の選択肢とそのシミレーションをあげ、以下のような結論を述べています。
このように、消費税減税が得になるか、給付金の支給が得になるかは、その人が置かれた所得水準やライフステージに依存することが分かります。つまり、誰もが納得する所得支持策はないのです。 
強いて言えば、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指すのであれば給付金の支給が望ましく、景気の底上げを目指すのであれば高所得階層に有利な消費税減税が望ましい、ということになるでしょうか。 
蛇足ながら付け加えれば、金持ちに給付金を渡すぐらいなら消費税減税の方が望ましいという意見も一部に見られますが、実際には消費税減税の方がお金持ち有利な政策であるということが明らかになります。
現状は、コロナによる経済の大停滞と未曾有の危機であり、かつ、消費税増税で景気が低迷しているわけですから、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指す給付金の支給と景気の底上げを目指す、消費税減税の両方を目指すべきなのです。

財源は、国債を大量に発行すれば良いだけです。これは、以前もこのブログに掲載したように、現状の日本では将来世代のつけにはなりません。それについては、以前のブログに掲載したことがあります。
政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み―【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!

詳細は、このブログをご覧いただくものとして、この記事では、「国債は将来世代のつけにはならない」というラーナーの議論を掲載しました。

さらに、この記事ではマイナス金利の国債を大量に発行すれば、政府は国債で利益が得られることも掲載しました。

現状では、国債を大量に発行しても何の問題もないので、大量に発行し100兆円基金を創設べきことを掲載しました。この状況は現在もあまり変わってません。とにかく、現状はためらうことなく、国債を大量に発行し、異次元の積極財政を行うときなのです。

それと、先日もこのブログで述べたことですが、我が国のような変動相場制の国において、財政政策の効果は非常に低くなるので、金融緩和を同時に行う必要がります。

とにかく、現状では、減税・給付金による異次元の積極財政と異次元の金融緩和が必要であり、これらを迅速に実行して、いちはやく増税とコロナウイルスによるダブルパンチの不況をいち早く抜け出すべきなのです。

財務省の省益などに、かかずらわっている場合ではないのです。米国のように、挙党一致で、真に効果のある経済対策を打つときなのです。

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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2020年2月15日土曜日

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か ―【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か 

西村康稔経済再生相

 17日に公表される昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値はマイナス成長になるとの見方が出ている。西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」を理由に掲げているが、消費増税を理由にしないのは不可解だ。

 西村再生相は、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要はそんなに大きくはなかったし、その後の落ち込みもそんなに大きくないとみていたが、10月から12月の期間は台風や暖冬の影響がある」と述べたという。

 1月にスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が、「日本経済は昨年第4四半期にマイナス成長に陥った。これは主に2回の台風被害に見舞われたことに起因する」と発言している。

 昨年10~12月期の落ち込みは、各種の経済指標で裏付けられている。総務省が公表している家計調査の2人以上世帯の実質消費支出について、昨年10月で前年同月比5・1%減、11月で2・0%減だった。業界団体の12月のデータでは、全国食品スーパー売上高(既存店ベース)で前年同月比1・0%減、全国コンビニエンスストア売上高(既存店ベース)で前年同月比0・3%減となっている。日銀が発表している消費活動指数でみても消費の落ち込みは明らかだ。

 これらの要因は台風被害ではなく、消費増税であることは誰の目にも明らかであろう。
 経済産業省が発表している鉱工業生産指数の地域別数字でみても、各地域ともに低下している。台風の影響が比較的少なかった近畿も、関東と同じように低下しているので、やはり経済減速を台風のせいとはできないだろう。

 これまで、消費増税は創設時を含めて4回ある。税率は1989年4月に3%、97年4月に5%、2014年4月に8%、19年10月に10%となった。

 このうち89年4月は、個別物品税廃止との引き換えだったので、悪影響は少なかった。しかもバブル景気の最中なので、問題にならなかった。しかし、その後の消費増税は景気に悪いタイミングであるとともに、ネット(純額)での増税だったので、予想通り景気は悪化した。

 こうした予想は、消費増税により可処分所得が減少し消費が落ち込むという標準的な経済学を理解していれば容易に分かることだが、財務省とその走狗(そうく)のエコノミストは「影響は軽微だ」と口をそろえる。消費の減少は「増税前の駆け込み需要の反動減」という説明もなされるが、一面的でしかない。本質的には可処分所得減少による消費の落ち込みであるが、それは説明されない。

 前述の西村再生相の説明も、駆け込み需要の反動減はないというもので、可処分所得減少による消費落ち込みの説明を避けている。

 なぜ、西村再生相や黒田総裁がこのような発言をするのだろうか。筆者の答えは、消費増税の影響を隠したい財務省やマスコミへの「忖度(そんたく)」というものだ。これまでの消費増税と同様に、景気の悪影響があっても、別の理由にされてしまうのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長になったのは、減税したためであるということは明らかです。それを台風と暖冬のせいにするとは、全く笑止千万と言わざるを得ません。

内閣府が昨年11月11日発表した10月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが前月から10.0ポイントの大幅低下となりました。その原因として、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとしています。

さすがに、消費税増税の直後だったので、この落ち込みの原因として、台風だけにするにはどう考えても無理があるので、台風以外に消費税増税もあげたのでしょう。

しかし、今回の昨年10~12月期の国内総生産(GDP)のマイナスなるとの見方が出関して西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」だけを理由に掲げました。

しかしおそらく、このような言い訳をするのは十分に予想できました。ただ、何を理由とするのかは、わかりませんでしたが、「台風と暖冬」とは思いもよりませんでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

この記事では、香港の個人消費を例にあげて、まともというか、デフレから脱しきれていないうちに消費税をあげるというような馬鹿マネさえしなければ、SARSの蔓延のような事態があっても、それが終息すると消費が飛躍的に伸びることを主張しています。

であれば、台風や暖冬などがあったにしても、元々それによる被害は日本全体からすればわずかであり、しかも台風などの被害があっても、被災地においては、その後は様々な消費が急激に伸びるはずであり、それが景気に及ぼす影響はほとんど相殺されるはずです。

では、他に何が原因があるかといえば、やはり消費税以外にないのです。

この記事では、台風どころではなく、大東亜戦争のような大きな戦争ですら、経済統計を年度ベースでみていると、後世の歴史家は、大戦争があったことを気づかないかもしれないということを述べました。以下に簡単にまとめてそのことを再掲載します。

これは、日本でも欧州でもそうだったのですが、戦時中の末期に近い頃ですから、欧州でも日本ても、爆撃を受けようが何があろうが、戦争遂行のために兵器などを生産し続けるため、戦争中のGDPは、いかに生活物資が不足し国民が耐乏生活を送っていたとしてもさほど低くはなかったのです。

そうして、戦争が集結すると、戦争に勝とうが負けようが、今度は国民生活に必要な、民需が逼迫して、その解消に向けての大増産が起こり、年ベースの経済統計では、戦争があった年も、なかった年でも、GDPにさほど違いはなく、ほんの少し減ったくらいにしか見えないのです。

だからこそ、第二次世界大戦中の経済統計をみていても、後世の歴史家はそれだけみている限りでは、戦争があったことに気が付かないかもしれないのです。

日本もそのような状態だったのです。実際統計上でみれば、日本は戦争をしても直後には戦争開始時の国富の70%もが温存されていたのです。

ちなみに、国富は再生産可能な生産資産である「在庫」、「有形固定資産(住宅・建物、構築物、機械・設備、耐久消費財など)」、「無形固定資産(コンピュータソフトウェア)」と、「非生産資産(土地、地下資源、漁場など)」を足し合わせたものに「対外純資産」を加減して求められる。国民総資産から総負債を差し引いたものと同じとなります。日本の正味資産としての国富は、この10年ほど概ね3000兆円前後で推移しています。

良く、終戦直後には、日本は全部が焼け野が原になり、すべてがゼロになり、ゼロからのスタートだった等という人もいますが、統計上からみれば、日本の中核都市などは確かに焼けのヶ原になりましたが、地方都市やその他の町や村には、生産設備や田園などが、残り、そこからの出発だったのです。

だから、他のアジアの諸国などから比較すれば、はるかに有利なスタートを切ることができたのです。

大戦争のときですら、このような状況なのですから、ましてや台風や暖冬の被害など微々たるものであり、これがマイナス成長の原因とするのは、甚だしい間違いです。その原因は、はっきりしています。それは、消費増税による個人消費の落ち込みです。

戦争、そうして台風や暖冬などで、消費が落ち込んだとしても、それは一過性のものであり、戦争や台風・暖冬などで、被害があったにしても、それはすぐに回復します。そうして、年ベースでみるとさほどではないのです。

しかし、デフレから回復しきっていない時期での消費増税など、経済政策を間違ってしまえば、その影響は甚大であり、GDPの中で60%以上を占める個人消費を減衰させ、結果としてGDPが落ち込むのです。

そうして、日本ではあがった消費税は二度と下がることはないという固定観念もあり、戦争、新型肺炎などよりさらに悪影響があり、なかなか消費は回復しないのです。

現状の日本にとっては、戦争や新型肺炎よりも、消費税の増税のほうが悪影響をもたらすのです。

ちなみに、先に日本では、戦争直後でも戦前の国富の70%が温存されていて、他のアジア諸国などと比較すれば、ゼロあるいはマイナスからのスタートではなく、かなり有利なスタートきることができたと述べました。

ただし、これには日本ならではの特殊事情がありました。それは、旧軍部等による様々な物資の隠匿でした。旧軍部は、終戦直前に、金塊、医療品、食料、燃料、衣料品など莫大な物資を隠匿したのです。これは、当然のことながら、70%の国富に含まれていました。

この物資が国民すべてに、終戦直後から回されていれば、多くの国民は国富70%からのスタートを実感できたでしょう。しかし、そうではなかったため、終戦直後からしばらく、多くの国民は、耐乏どころか衣食住の食でする満足に得られない窮乏生活を強いられたため、ゼロからのスタートというイメージが定着したのです。

物資の隠匿に、多くの軍人も関わったとみられますが、それらは単に命令に従っただけで、多くは旧陸軍省・旧海軍省の高官、すなわち官僚が実行したものです。このあたりは、闇に埋もれてわからないことも多いようですが、是非とも明らかにして欲しいものです。

      NHKスペシャル「東京ブラックホール」で紹介された、1948年
      米軍に発見された日本軍の隠匿物資の夥しい量の金塊

そうして、この記事でも主張したのですが、隠匿という点では、昔の官僚も現在の官僚も変わりません。現在の財務省の官僚は、物資を隠匿はしていませんが、様々な形で資金を隠匿しています。それこそ、いっとき盛んにいわれていた財務省の埋蔵金というものです。

これは、いわゆる特別会計という複雑怪奇で一般の人にはなかなか理解できない、巨大な会計の中に隠蔽されていたりします。それは、戦時中の隠匿物資のように、一般人には見つからないように隠匿されています。

しかし、それは、終戦直後に大多数の国民が窮乏生活を送っていたときに、国富が70%もあったというのと同じく、現在でも統計資料を見ると理解できます。

まずは、政府の負債です。これについては、財務省は1000兆円などとしていますが、これは負債だけをみているわけであり、一方では日本政府はかなりの資産を持っています。これを相殺すると、日本政府の借金はさほどではありません。米英よりも低い水準です。

これについては、このブログにも何度が詳細をのべてきました。詳細を知りたいかたは、その記事をごらんになるか、高橋洋一氏、田中秀臣氏などの記事をご覧になってください。

さらに、もう一つの隠匿手段があります。それは、統合政府ベースの見方です。統合政府とは、政府と日銀などを一つにした見方です。民間企業でいうと、連結決算など連結ペースでみる見方です。

現在では、大企業は連結決算を作成し、公開する義務を追っているのですが、なぜか政府に関する統計では、連結ベースではだされていません。

しかし、統合政府ベースでみると、政府による借金は近年現象傾向にあり、2018年あたりからは、赤字どころか黒字になっているくらいです。

しかし、財務省はそのことは表に出さず、それどころは、政府の資産についても触れず、政府の借金はほとんど問題ないのに、あるように装って、消費税増税などを実行しています。

まさに、戦中の軍部の官僚が夥しい物資を隠匿していたのとそっくりです。結局日本の役人の腐った根性は、戦争中も今も変わらないようです。

日本の一番の問題は、このような腐った官僚の根性を叩き直すこともなく、放置しておいたということかもしれません。

日本の政治家もこのあたりに、そろそろ手を付けてないと、日本はとんでもないことになりそうです。

財務省の走狗?

財務省とその走狗達は、昨年の段階では景気の落ち込みは、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとせざるを得なかったものを、現時点では、西村再生相や黒田総裁が台風のせいとか、暖冬のせいだけにしたのと同じように、今後も続く景気の落ち込み増税とは全く関係ないとし、新型肺炎だけのせいだとするでしょう。

このままでは、いつまでたっても日本ではまともな機動的な財政政策ができなくなります。

【関連記事】

新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか―【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

2020年1月23日木曜日

「健全財政」にこだわる不健全 財務省に飼い慣らされている「諮問会議」は専門家の仕事をせよ ―【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(右から2人目)=17日午前、首相官邸

 内閣府が経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支が2025年度に3・6兆円程度の赤字になるという中期財政試算を示した。消費税率を引き上げても財政の悪化が続き、目標とする25年度の黒字化は遠のいたと報じられている。

 最近の指標は軒並み悪化しており、結局昨年10~12月の日本経済はかなり悪かったという結果となった。一応、補正予算を打ったが、東京五輪・パラリンピック後の秋口にも再び景気対策の必要性が出てくるのではないか。そのときに、財務省の「緊縮病」が気になるところだが、これは中期財政試算にも垣間見える。

 政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字転換する目標を掲げるが、実現はさらに厳しくなったと強調する。試算の成長実現ケースで、25年度のPBは3・6兆円の赤字。昨年7月時点の試算(2・3兆円の赤字)より悪化したとし、麻生太郎財務相も17日の閣議後の記者会見で「歳出改革の取り組みをさらに進めなければならない」と語った。

        政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を
        25年度に黒字転換する目標を掲げる

 なぜ、PBを目標としているかといえば、PBの動きが、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比の動きを規定するからだ。ネット債務残高対GDPがどんどん大きくなれば(数学的な表現では「発散」すれば)、財政破綻とも言えるような状況になるわけで、そのためにPBを管理しなければいけない。

 試算では、成長率の高い「成長実現ケース」と成長率の低い「ベースラインケース」がある。PB対GDPは、成長実現ケースで25年度均衡化は無理だが、27年度均衡化するくらいに改善するが、ベースラインケースでは、1・3%程度の赤字を続ける。その結果、グロス債務残高対GDPは成長実現ケースで低下傾向になるが、ベースラインケースでは高止まりするとされている。

 この結果を、ネット債務残高対GDPでみれば、成長実現ケースで現在のゼロ程度がマイナス、つまり純資産がプラス状態になるが、ベースラインケースでもゼロ程度を維持できるとなる。

 はっきり言えば、国の場合、ネット債務残高が多少のプラス、つまり債務超過でも問題なく、ネット債務残高をマイナスにする必要はない。例えば、日本でPB対GDPが2%程度の赤字を10年間継続しても、せいぜいドイツと同じ程度になるだけで、財政状況は悪いわけではない。こうした状況にもかかわらず、目標とする25年度の黒字化ができなくなったのは問題だというのは、おかしな議論である。

 特に、今のマイナス金利を生かして、将来投資をするのは、ネット債務残高対GDPを悪化させない意味でも優れている。今の状態で、PB黒字化はほとんど意味がないにもかかわらず、教条的に「目標順守」というのは、健全な経済政策ではない。経済財政諮問会議の専門家は、財務省の走狗(そうく)になるのではなく、もっとしっかりすべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!
日本の財政を考えるときに、良く出てくる言葉が「財政破綻」です。日本が財政破綻しないことはこのブログでも何度か述べてきました。それについては、過去のこのブログの記事か、まともなエコノミストである高橋洋一氏や田中秀臣氏の記事などを読んでいただきたいと思います。

日本では、大手新聞も財務省の走狗に成り果て、「財政破綻」を煽っている

本日は、今後数百年もしかすると、数千年の間には、「日本政府が破産する」と投資家たちが信じて国債を投げ売りし、国債が暴落して日本政府の資金調達が困難になる場面があるかもしれませんが、しかし、それでも大丈夫であることを掲載しようと思います。

日本政府が破産すると信じる投資家は、国債を売るだけではなく、円をドルに替えるはずです。政府の子会社が発行した日本銀行券が紙屑になることを恐るからです。それにより、超ドル高になるでしょう。

そうなると政府は、外貨準備として保有している巨額のドルを高値で売却し、受け取った資金で暴落した国債を買い戻すことができます。1兆ドルの外貨準備を1ドル300円で売却し、300兆円の資金を得て、それを用いて額面の3割に暴落した日本国債を買い戻すと、発行済み国債1000兆円がすべて買い戻せることになるのです。

発行済み国債をすべて買い戻した日本政府は、破綻するどころか、無借金の超優良財務体質を手にするわけです。

こうして考えると、元々統合政府(政府+日銀)の借金ということでは、米国や英国、フランスよりも借金が少ない上に、日本の投資家らが、万が一日本が財政破綻すると信じて、日本国債を投げ売りするようなことが起こっても、日本の財政が破綻する可能性は非常に小さいことがわかります。

もちろん、南海トラフ大地震で日本経済が破綻してしまうケースなどを考えれば、財政も実質的に破綻するのかもしれませんが、しかし、そうなったらそうなったで、政府は膨大な建設国債などを発行して、インフラの復旧などを数十年という長い年月かけて行うでしょう。

さすがの財務省も、このような大地震が起こったときには、「赤字国債は将来世代へのつけとなる」などという、世迷言はいってはおられなくなって、膨大な国債を発行するはすです。もし、それでも世迷言をいうなら、財務省などこの世からなくしてでも、政府は国債発行に踏み切るてしょう。

そうなれば、このブログにも掲載したように、日本は外国からお金を借りているわけでもなく、完全雇用でもないので(関連記事:   消費増税の「悲惨すぎる結果」が判明…日本の景気、打つ手はあるのか―【私の論評】令和年間には、日本の潜在能力を極限まで使い、超大国への道を歩むべき(゚д゚)!)参照)将来世代へのつけということもなく、復興に成功して、全く新しい国に生まれ変わることになるだけです。財政は破綻しないでしょう。

財政赤字は巨額だから、早急に緊縮財政を実施しないと、将来の財政破綻が防げなくなるという人がいますが、そうではない、ということは、はっきりしています。

そのため、性急に増税して景気を悪化させるリスクを負うくらいなら、増税を急がず、増税しても失業が増えないようなタイミングを狙って増税をすれば良かったと思います。



まあ、それでも増税してしまったのですから、マイナス金利の現状では国債を100兆円くらいは、大量に発行しても、うまくいけばゼロ金利かほんのわずかプラスになるだけですから、政府は発行で2兆円儲けて、残りは基金として様々な経済対策を行えば良いのです。

こう考えると、日本が財政破綻するというのは、ほんとに杞憂もしくは世迷言としか考えられません。


2019年11月30日土曜日

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応

テレビで報道されたゲオルギエワIMF専務理事の声明

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。

 こうした発言については日本の財務省の影響が大きいことはこれまでにも本コラムに書いてきたが、この時期に出てくる背景は何だろうか。

 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わせたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見した。

 対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策について政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。

 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧を使ってでも消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシもある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとなる。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。

 なお、日本のマスコミが「ワシントン発」としてIMFのニュースを流すときは、IMF理事室がソースであることが多い。そこでは財務省からの日本人出向者が勤務しており、日本語で対応してくれるので、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されている。

 今回の専務理事の発言も財務省からのレクの結果だろうが、今は補正予算で「真水」10兆円という意見が、自民党と公明党から出ている。

財務省からレクを受ける共産党議員団ら

 自然災害が相次ぎ、予備費の枠では抜本的な対応ができないことも理由の一つだが、本コラムでも指摘したように国土交通省の公共投資の採択基準が時代に合わなくなっていることもある。つまり、公共投資の費用便益基準の算出に必要な将来割引率が4%と高すぎるのだ。これを15年も見直さなかった国交省の怠慢もある。この見直しが大型補正予算を後押ししている。

 市場金利はマイナスなので、絶好の将来投資機会という主張に財務省は防戦一方だ。冒頭のようなIMF専務理事の発言を利用したいと思っても不思議ではない。さらに、補正予算は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭という時間延ばし戦術もありだ。後は、来年度予算との取引で沈静化を図るのだろう。

 もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

冒頭の記事で高橋洋一氏の結論部分の「もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる」という結論は非常に興味ぶかいです。

高橋洋一氏は、年内の解散はないと見ているということだと思います。あるとすれば、来年の通常国会の冒頭であるとみているということです。

では、実際衆院の解散はあるのでしょうか。

公明党の山口那津男代表は27日、東京都内で講演し、年内や来年1月の通常国会冒頭での衆院解散に否定的な見方を示しました。12月に中国で予定される日中韓首脳会談をはじめとする外交日程を挙げて「重要な外交課題がめじろ押しだ。すっぽかして解散というわけにはいかない」と述べました。

開催国・チリの治安悪化で中止となった今月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を代替地で開催する可能性にも触れて「時期は予測がつかないが、日本の都合だけでは解散しにくい」と指摘しました。

山口氏は憲法改正論議を巡り、野党が主張する首相の解散権制約には慎重姿勢を表明しました。

その山口代表が29日の党会合で、28日夜に安倍晋三首相と会食したことを報告しています。「(国会)会期末、政府・与党で緊張感を持ってしっかり当たっていこうと確認し合った」と説明。両氏が一対一で夕食を共にするのは珍しく、公明党内では衆院解散などが話題になったのではないかとの臆測も出たそうです。

公明党幹部によると、28日の会食は首相からの呼び掛けで約2時間行われました。山口氏は首相と昨年11月に政権幹部らとともに夕食を共にしたことがあります。ただ、第2次安倍政権発足後の7年間近くで両氏が夜に2人で会食するのは初めてといいます。定期的な昼食会は首相官邸で行われています。

山口公明党代表と安倍総理

無論、「解散は時の首相の専権事項」で、安倍首相も訪米中の9月下旬の記者会見では「頭の片隅にも、真ん中にもない」とこれまでどおりの表現で年内解散を否定していました。

ところが、2夜連続で開催された衆参与党国対幹部との懇親会では、「あいさつと解散は急に来る」(10月8日)、「12月の選挙に勝ったことがある」(10月9日)と述べ、出席者をざわめかせました。

確かに、第2次安倍政権発足直前も含めた3回の衆院選のうち、2012年は12月16日(11月16日解散)、2014年は12月14日(11月21日解散)が投開票日で、いずれも自民が圧勝しています。このため、それまでは「単なる与太話」とされてきた12月15日衆院選説が、にわかに現実味を帯びてきました。

ただし、12月中旬選挙となると、11月には解散していなければならず、本日はもう11月30日なので、その目はほとんどなくなったと見るべきでしょう。

消費税増税を受け、衆院解散・総選挙は遠のいたとの見方が広がっています。政府・与党内では、来年秋以降との観測も多いようです。一方、増税の影響が顕在化する前の今年12月か来年1月の通常国会冒頭の解散も一部では取り沙汰されています

消費税は時の与党に国政選挙での苦戦を強いてきました。導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。

そこで有力視されるのが来年秋以降です。「増税直後の選挙は負ける」とみて、東京五輪・パラリンピックを間に挟み、増税の影響を薄める狙いがあります。年明けからは五輪準備が本格化し、物理的にも解散が難しくなります。公明党が要請した軽減税率の仕組みは複雑で、「混乱が生じれば支持者が離れる」(同党関係者)との懸念もあり、こうした見方を後押ししています。

ただし、増税の影響が表れる10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表されるのは来年の2月17日です。このため「数字が出る前に解散を打った方がいいのではないか」(自民党関係者)との声もあります。野党側は立憲民主、国民民主両党が会派合流を決めたものの、離党の動きが出るなど臨戦態勢が整わず、与党にとっては好条件です。

1月解散となると、まさに選挙戦の最中にGDPの速報値が発表されることになるわけですが、その時に何の経済対策も打っていなければ、与党が大敗北となることが予想されます。

総選挙の開票開始後間もなく、自民党大敗の趨勢が判明、当選者もまばらな
ボードをバックに質問を受ける同党の麻生太郎総裁=2009年8月31日

しかし、そのときに真水の10兆円の対策を打つことを公約とすれば、話は随分と変わってきます。特に、先日もこのブログでも説明したように、現状では国債の金利はマイナスであり、国債を大量に刷ったとしても何の問題もありません。これは、多くの人に理解しやすいです。10兆円どころか、もっと多くを刷れる可能性もあります。

この対策とともに、日銀がイールドカーブ・コントロールによる現状の引き締め気味の金融政策をやめ、従来の姿勢に戻ることになれば、このブログにも以前掲載したように、マクロ経済的には増税の悪影響を取り除くこともできます。

安倍政権がこれを公約として、丁寧に政策を説明すれば、十分勝てる可能性はあります。来年秋以降ということになると、経済がかなり悪くなっていることが予想され、自民党の勝ち目は半減する可能性が大です。秋以降でなくても、選挙が後になれば、なるほど増税の悪影響がでてきます。

そうなると、いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高いのではないでしょうか。

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