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2020年4月15日水曜日

コロナ禍で「増税」主張する学者…GDP減らして失業を増やす 東日本大震災でも失敗の“悪手” ―【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

復興税は未だに徴収され続けている

 2011年の東日本大震災の後、復興増税が行われた。今回のコロナ・ショックの際にも増税を主張している経済学者がいるが、危機の際に増税するというのは世界標準の経済政策なのか。

 経済政策を考える際、標準的なフレームワークは、総供給と総需要がどのように変化するかを考える。総需要は、民間消費、民間投資、政府需要、純輸出で構成される。総供給は、基本的には生産関数であり、人口、総資本、技術などが構成要素である。

 1973年と79年のオイル・ショックでは、生産基盤の一つであるエネルギー価格が外的要因で一気に上昇した。これは生産関数での価格上昇になるので「供給ショック」であり、国内総生産(GDP)の下落と一般物価の上昇という形になる。その場合、総需要を増加させる景気刺激策ではなく、供給に働きかける政策が主体となる。

 2008年のリーマン・ショックでは、不良債権問題に端を発する金融機関の倒産によって需要が一気に飛んだ。日本では金融機関の痛手は少なかったが、海外の需要減により輸出減少となった。これは「需要ショック」で、同時に一般価格の低下、失業の増加があった。

 こうしたショックに対しては、総需要を増加させるような財政政策と金融政策の一体発動が世界各国で行われた。ただし、日本では、十分な財政出動・減税が行われず、金融緩和も不十分だった。日本だけが金融緩和されなかったので、一方的な円高が進み、輸出が減少、内需増加の効果を外需減少で相殺してしまった。

11年の東日本大震災では、東日本の一部の生産設備に打撃があった。電力などの供給がネックになり、供給力は落ちると一部の経済学者は考え、供給ショックであるとした。供給ショックだと考えると、復興政策は、総需要を増加させる政策では適切ではないという結論になる。

 しかし実際には、東日本大震災は、供給政策にはほとんど影響を与えず、生産収縮を見越した需要減少が一気に生じた。要するに、供給減とともにそれを上回る需要減があったのだ。

 ここで必要だったのは、積極財政と金融緩和だったのだが、それと真逆な復興増税が行われた。

 さて、今回のコロナ・ショックも、世界的なサプライチェーンの分断という供給ショックの様相もあるが、やはり人の行動制限に伴う経済活動の縮小を通じて需要が一気に消滅したことの影響が大きい。要するに、供給ショックとともにそれを上回る需要ショックがあったと考えるべきだ。

 特に、日本ではコロナ・ショックの他に、消費増税ショックと東京五輪1年延期ショックがある。これらは需要ショックである。この点で増税を選択する余地はない。

 仮に供給ショックであったとしても、ほとんどの場合、増税は悪手であり、一般物価を上げない代わりにGDPを大きく減少させ、失業をさらに増加させる。そもそも経済ショックの際に増税することはありえないのだ。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!

東日本大震災で、復興税を推進した財務省とそのとりまきの経済学者らなど、中国ウイルス禍が収まった後に、またコロナ復興税などの名称で新たな増税を目論むかもしれません。これは、完璧に間違いです。今回は、何としてでも阻止すべきでしょう。

新型中国ウイルス問題が深刻化・長期化しつつある中、その経済的影響が強く懸念されています。世界中で都市封鎖が実施されており、各国の生産活動が一時的に停止することにより、株価は数年前に逆戻りして雇用は信じられない規模で失われました。

具体的には、世界経済の中心地である米国が3月26日公表した雇用統計において失業者数は跳ね上がり、ムニューチン財務長官が1929年の大恐慌以来初めて20%を超えるかもしれない、と警告する事態となっています。つまり、これは世界的に未曽有の経済危機がやってきたということを意味します。

ただし、米国は当面は深刻な事態であるものの、中長期的な視点に立つと底堅く回復していく見通しがあります。ホワイトハウス・上下両院は約220兆円に及ぶ緊急経済対策を既に可決しており、両者は更なる経済対策も視野に協議を行う構えを見せています。


また、トランプ政権が実現してきた減税と規制廃止は、米国の産業競争力を向上させて経済の底力を高めてきています。そのため、経済状況が一度上昇軌道に戻り始めればFRBの金融政策との相乗効果を発揮して、米国経済は劇的に復活する可能性があります。米国の現在の景気悪化は深い谷の中でも将来的な希望の光を見出すことできるものだと言えます。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に「ゼロ金利」への回帰などを決めた際の議事要旨が8日、公表された。一気に大規模な金融緩和を進めることへの異論も出たが、「米経済の見通しが急激に悪化し、著しく不確かになった」との認識のもと、空前の緩和策を決めていました。

しかし、将来的な見通しについて全く光明が見えない国が存在しています。それは我が国日本です。日本の直近の景気状況は2019年10~12月期GDP改定値は年率7.1%減となっています。

政府はGDP減少の理由について様々な屁理屈を述べていましたが、誰がどうみても10月1日から始まった消費増税が影響していることは明らかです。アベノミクスの第二の矢であった機動的な財政政策は逆方向に砕け散った上に、第三の矢である規制改革に至ってはまともに飛んだ形跡すら見当たりません。

第一の矢である金融緩和も、当初は異次元の量的緩和を実行し、かなりの成果をあげ、特に雇用は劇的に改善しました。しかし、日銀は緩和はしてはいるものの、イールドカーブ・コントロールを実施しはじめてから、緩和には抑制的です。いまのままでは、アベノミクスの唯一の成功事例である、雇用にも陰りが見えてくるのは必定です。

したがって、米国経済と違って日本経済はその足腰が弱った状態で新型コロナウイルスに伴う経済危機に直面していることになります。日本政府は自ら転んで骨折したところで、更に交通事故にあったくらい悲惨な状況です。

4月7日に示された危機意識の欠落した補正予算だけでなく、その陰で3月17日に政府から衆参議員運営委員会理事会で示された日本銀行政策委員会の審議委員人事案も注目すべきです。

退任する布野幸利氏に代わって消費税増税容認派と目される中村豊明氏が政府から人事案として示されたのです。同氏は日立製作所取締役を務めた人物であり、産業枠として経済界の代表として送り込まれる人物です。

中村豊明氏

日本銀行政策委員会の審議委員は金融政策決定会合の結果を左右し、一度任命された後は5年間の任期中にそのポストを追われることはありません。当然ながら、日本経済に与える影響は極めて重要なポストです。

米国ではFRB理事の承認プロセスでは連邦議会によって徹底的な振るいにかけられます。過去の金融政策に関する発言はもちろん、その素行についても細かく審査されます。

直近でもトランプ大統領が指名した人事案は人選の問題が指摘されて首尾良く運んでいません。現在の承認プロセスにある人物も過去の金融政策に関する発言と現在の金融政策に関する方針に関しての整合性について連邦議員から問題視されています。

日本のように産業枠などの割り当てではなく、理事候補者の見識・人物が公開の場で問われるのです。その影響力の大きさから行われるべき当たり前のプロセスが踏襲されているのです。

中村豊明氏は12年社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会において、日本経済団体連合会税制委員会企画部会長として出席しています。その際、消費税率の引き上げが伴う三党合意について、消費税増税派である経団連の税制改革の責任者として増税賛成の見解を述べた人物です。

20年3月24日参議院財政金融委員会において、浜田聡参議院議員が上記の公聴会での発言について問題視すると、政府は「経団連の立場を述べただけで中村氏の意見では必ずしもない」という趣旨の回答をしましたが、これほどふざけた回答はないでしょう。

同氏は経団連の税制委員会の責任ある立場にあったことは明らかだからです。百歩譲って立場に応じて財政金融政策の見識が左右される人物を国会に推薦すること自体があり得ないことでしょう。

日銀政策委員会の審議委員は政府の税財政政策に関して直接権限を持つわけではないですが、日銀の決定が日本政府の税財政政策に影響を与えることは自明です。

つまり、新型コロナウイルスに伴う経済危機が顕在化していた3月17日、日本政府はこの期に及んで増税派と見られても仕方がない人物を経済政策の重責を担うポストに推薦したのです。

昨年の消費増税はコロナウイルス問題と同様に日本経済に深刻なダメージを与えており、この政府人事案は示す行為は危機感がないというよりも社会常識が欠落した所業だと言えます。

また、政府与党の経済危機への対策案としての補正予算も極めてインパクトに欠けるものでした。政府は補正予算を取りまとめる過程において、その内容について何度も観測気球の報道記事を垂れ流してきました。

その際、未曽有の経済危機に際して、自民党農林部会や水産部会からは和牛商品券などの業界利権丸出しの主張が行われる姿は国民の眼からは極めて奇異なものに映りました。無論これは、立ち消えになりましたが、自民党の議員の中にも緊張感に欠けた愚かな連中がいるのか、白日のもとに晒された形となりました。

なぜ和牛券?

新型中国ウイルス問題が表面化した1月段階で準備を始めるべき経済対策について4月に入ってもまだ議論していることにも驚かされますが、日銀人事に示された程度の税財政策に対する問題意識なのですから、政府与党と国民の意識との乖離は著しいものだと想定するべきでしょう

自民党若手有志による消費減税を柱とする政策要望の記者会見も開催されましたが、執行部は与党案として消費増税減税並みの給付を行うことで応じただけでした。むしろ、政府与党として断固たる消費減税の拒否の姿勢を見せつけた状況となっています。

実際、これらの若手議員は消費税減税へのゼロ回答はもとより、今回の問題だらけの補正予算に賛成票を入れるだけの事実上マシーンでしかありません。実際、消費減税法案の作成を参議院法制局に依頼するという具体的な行動を起こしたのは、100人超存在するとされる自民党若手有志ではなく、僅か2名の会派でしかない前述のN国の浜田聡参議院議員だったことは何とも皮肉です。

仮に今回減税に失敗した場合、今後、消費減税は未曽有の経済危機の時ですら選択できなかった政治的な禁忌として扱われていくことになるはずです。緊急時ですら手も足もでなかったことは平時では尚更難しいものとして記憶されてしまうことになります。

むしろ、それが狙いで一連の与党内でのプロセスが行われているのではないかと穿った見方をしたくもなるくらいです。

せめて与党・野党を問わず減税を主張している国会議員は、政府が示した日銀人事に反対票を入れることくらいの筋を通すべきでした。この人事は目先の経済対策だけでなく、今後5年間の金融政策の方向性を左右するものです。



党議拘束を理由に減税派の国会議員らは過去に増税を支持した人物に対して賛成票を入れるなら、表面上は減税派だけれども本音は増税派とみなされても仕方ないてしょう。

世論調査では国民が経済対策として求める政策は消費税減税が圧倒的です。今、試されていることは、国会議員が消費減税を求める国民の真の代表であるか否かということです。誰のため・何のための政治なのか、明確になる瞬間だと言えるでしょう。

もし、与党・野党を問わず減税を主張している国会議員が、政府が示した日銀人事に反対票を入れることくらいの筋を通していれば、事態は変わる可能性もありました。

いずれ中国ウイルスは終息でしょう。終息したまさにその時、財務省とその取り巻きは、またコロナ復興税などを画策しはじることでしょう。その時、安倍総理は、コロナ復興税の見送りと復興税の廃止、消費減税、追加経済対策ならびに、憲法改正を公約として、衆院解散・総選挙に打ってでるべきです。

おそらく、現時点ではこれだけが、安倍総理の唯一の起死回生策と思われます。そうでないと、安倍総理は念願の憲法改正もかなわず、歴史には、消費税を二度あげ、コロナ復興税で日本経済を悪化させた総理大臣として歴史に名を刻まれることになるでしょう。

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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2019年10月15日火曜日

消費税12%への増税は数年内に来る! 海外の“反緊縮”の流れ無視して世論誘導を図る「総動員体制」―【私の論評】仰天電撃解散で、菅内閣樹立!安倍総理は財務大臣となり財務省改革を(゚д゚)!

消費税12%への増税は数年内に来る! 海外の“反緊縮”の流れ無視して世論誘導を図る「総動員体制」

悲願の増税を果たした財務省。これで打ち止めではないのか

  10月から消費税率が10%に引き上げられたが、財務省はこれで満足するはずもない。次の引き上げは、どのような形やタイミングを狙ってくるのか。

 これまでの消費税の歴史は、1989年4月に3%で創設され、97年4月に5%に、2014年4月に8%、そして19年10月に10%となった。30年間で3回、計7%の消費増税である。次は12%への増税を数年のうちに狙ってくるだろう。

 安倍晋三首相は消費税率について「今後10年は上げる必要はない」と述べたが、首相退陣後5年もたてば、その発言の効力はなくなるので、財務省は気にしていないだろう。

 10年くらいのスパンで考えると、自公政権は1度や2度は必ず弱くなり、その間に政権交代もあり得るかもしれない。そのときが財務省の狙い目である。政権運営に不慣れなところをつき、民主党時代の与野党合意による消費増税と同じ夢をもう一度と願っているだろう。

 現在のような長期政権も財務省にとっては増税の狙い目だ。政権運営のためには、財務省の予算作成能力は欠くことのできないものだからだ。

 財務省はマスコミや経済界に対してアメとムチを持っており、その能力を侮ることはできない。安倍政権は、経済産業省の官僚をうまく使うことで財務省の官僚に取り込まれないようにしてきたが、財務省は安倍首相の盟友である麻生太郎財務相を取り込んで、1つの政権下で2回という消費増税を成し遂げた。

 短期政権が続くと、財務省もかなり困るだろう。しかし、今回、軽減税率によってマスコミの頂点に立つ新聞を取り込んだので、マスコミをフル稼働し財政再建・財政緊縮(増税)キャンペーンを続けるだろう。

 財政再建・財政緊縮(増税)の思想は、成功した経営者と親和性があるので、一定の社会的な理解を得やすいだろう。

 ただし、海外では、過度な緊縮思想による経済運営は危険だとの意見が多くなっている。財務省お得意の論法は、「海外ではこうなっている」という事例を用いて世論を誘導することだが、おそらく海外での思想の変化には言及せず、欧州では消費税の税率が20%以上と高くなっていることを強調するだろう。

 そこでは、欧州以外では10%程度の国が多いという事実や、欧州の場合、国土が小さく、国を超えた人の移動が比較的自由なために、所得税では十分に対応できないので、結果として消費税に頼らざるを得ないという事実は無視される。

 こうした財務省の論法のおかしな点が報じられることは少ない。一般的なマスコミで重用されている学者、エコノミストや経済評論家は、税に関する知識などで財務省に依存している人も多いので要注意だ。

 筆者は既存のマスコミへの露出度合は大きくないが、ネット社会では引き続き指摘していくつもりだ。

 しかしながら、財務省は今後、軽減税率を新聞から書籍やネットメディアにも拡大してまでも、こうした自由な言論を抑えてくる恐れもゼロでない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】仰天電撃解散で、菅内閣樹立!安倍総理は財務大臣となり財務省改革を(゚д゚)!

ブログ冒頭の、高橋洋一の記事で「欧州以外では10%程度の国が多いという事実や、欧州の場合、国土が小さく、国を超えた人の移動が比較的自由なために、所得税では十分に対応できないので、結果として消費税に頼らざるを得ないという事実」ということが言われています。

これは、事実ですが、さらにEUと日本の違いがあります。それは、EUでは低所得層に対する支援が行き届いているということがあります。

このことを無視して「ヨーロッパの先進国に比べれば日本の消費税はまだ全然安い」消費税推進派の人たちは、よくこう言います。というより、このことを最大の武器にしてきました。

消費税の最大の欠点は、「低所得者ほど負担が大きくなる」ということです。年収200万円の人は、年収のほとんどを消費に使うので、年収に対する消費税の負担割合は、限りなく10%に近くなります。


一方、年収1億円の人はそのすべてを消費に回すことはあまりありません。2割を消費に回すだけで十分に豊かな生活ができます。2000万円の消費に対する消費税は200万円です。

そうすると年収1億円に対する消費税の負担割合は、2%に過ぎません。つまり、年収200万円の人からは年収の10%を徴収し、年収1億円の人からは年収の2%しか徴収しないのが、消費税なのです。このように間接税というのは、低所得者ほど打撃が大きいのです。

EUの先進国は、間接税の税率は高いですが、低所得者に対する配慮が行き届いています。EUでは、低所得者に対して様々な補助制度があります。

英国では生活保護を含めた低所得者の支援額はGDPの4%程度です。フランス、ドイツも2%程度あります。が、日本では0.4%程度なのです。当然、低所得者の生活状況はまったく違ってきます。

日本では、低所得者の所得援助というと「生活保護」くらいしかありません。しかも、その生活保護のハードルが高く、本当に生活に困っている人でもなかなか受けられるものではありません。

日本では、生活保護基準以下で暮らしている人たちのうちで、実際に生活保護を受けている人がどのくらいいるかという「生活保護捕捉率」は、だいたい20~30%程度とされています。

生活保護というと不正受給ばかりが取り沙汰されますが、本当は「生活保護の不受給」の方がはるかに大きな問題なのです。英国、フランス、ドイツなどの先進国では、要保護世帯の70~80%が所得支援を受けているとされています。

EUの先進国では、片親の家庭が、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度が普通にあります。また失業者のいる家庭には、失業扶助制度というものがあり、失業保険が切れた人や、失業保険に加入していなかった人の生活費が補助されるのです。この制度は、英国、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデンなどが採用しています。

たとえばドイツでは、失業手当と生活保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長18か月だけれど、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護のようなもの)が受けられるようになっているのです。

他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられるような制度を持っています。

また貧困老人に対するケアも充実しています。たとえばドイツでは年金額が低い(もしくはもらえない)老人に対しては、社会扶助という形でケアされることになっています。

フランスでも、年金がもらえないような高齢者には、平均賃金の3割の所得を保障する制度があり、イギリスにも同様の制度があります。

さらに住宅支援も充実しています。フランスでは全世帯の23%が国から住宅の補助を受けています。その額は、1兆8千億円です。またイギリスでも全世帯の18%が住宅補助を受けています。その額、2兆6千億円です。 日本では、住宅支援は公営住宅くらいしかなく、その数も全世帯の4%に過ぎません。支出される国の費用は、わずか2000~3000億円程度です。先進諸国の1~2割に過ぎないのです。

またヨーロッパ諸国では、軽減税率も細やかな配慮があります。日本でも、今回2019年10月の増税からは、軽減税率が適用されることになっています。が、軽減税率と言っても8%に据え置かれるだけですから、たった2%の軽減しかないのです。

一方、イギリス、フランスなどでは、軽減税率が細かく設定され、食料品や生活必需品は極端に税率が低いなどの配慮がされています。イギリス、フランスの付加価値税の軽減税率は次の通りです。
●英国の付加価値税の税率・標準税率20%
・軽減税率5%  家庭用燃料・電力の供給、高齢者・低所得者を対象とした暖房設備防犯用品等、チャイルドシート、避妊用品など
・軽減税率0% 食料品(贅沢品以外)、上下水道、出版物(書籍・新聞・雑誌)、運賃、処方に基づく医薬品、医療用品、 子ども用の衣料・靴、女性用衛生用品など

●フランスの付加価値税の税率
・標準税率20%
・軽減税率10% 惣菜、レストランの食事、宿泊費、旅費、博物館などの入場料
・軽減税率5.5% 水、非アルコール飲料、食品(菓子、チョコレート、マーガリン、キャビアを除く)、書籍、演劇やコンサート料金、映画館入場料
・軽減税率2.1% 演劇やコンサートの初演(140回目まで)、処方のある医薬品、雑誌や新聞
・非課税  医療、学校教育、印紙や郵便切手
ただし、私自身は、軽減税率には反対です。このような複雑なことをせず、減税、給付金、補助金などで対応すべきと思います。

とはいいながら、このように、軽減税率も含めてEU諸国は低所得者に手厚い配慮をした上での「高い消費税」なのです。しかし、日本では低所得者の配慮などほとんど行わないまま、名ばかりの軽減税率はあるものの、複雑で混乱を生じさせているだけです。

そうして、消費税をガンガン上げています。 最近、国際機関から「日本の貧困率、貧富の格差は先進国で最悪のレベル」という発表が時々されます。それは、こういう日本のお粗末な政策が数値としてはっきり示されているのです。

「日本の場合は深刻な少子高齢化社会になっているので、イギリス、フランス、ドイツなどとは状況が違う」と思っている人もいるでしょう。ところが、実は少子化という現象は、日本だけのものではありません。むしろ、欧米の方が先に少子化になっていたのです。日本の少子化というのは1970年代後半から始まりました。一方、欧米では1970年代前半から少子化が始まっていました。

そして1975年くらいまでは、欧米の方が日本よりも出生率は低かったのです。つまり、40年以上前から少子高齢化というのは、先進国共通の悩みだったのです。

ところが、この40年の間、欧米諸国は子育て環境を整えることなどで、少子化の進行を食い止めてきました。1970年代の出生率のレベルを維持してきたのです。だから、日本ほど深刻な少子高齢化にはなっていません。

一方、日本では、待機児童問題が20年以上も解決されないなど、少子化対策をまったくおざなりにしてきました。そのために、1970年代から出生率はどんどん下がり続け、現在、深刻な少子高齢化社会となっているのです(下グラフ参照)。これを見ても、日本の経済政策がいかに愚かだったかわかるはずです。



そんなところに、安倍政権が出現して、いっときは3本の矢の政策を打ち出し、増税も二度も先送りして、日本経済は随分回復しました。特に、雇用はかなり改善しまた。しかし、14年の8%増税に続き、今年10月には10%増税が実行されてしまいしました。

これでは、また日本はデフレだった頃の昔の日本に戻ることになってしまいます。 こういう愚かな日本の政治状況を、何の改革もせずに、ただただ消費税を上げるだけでは、日本は完全に壊れてしまうはずです。

それを財務省は実行しようとしているのです。そのような財務省の暴走はいずれ誰かが止めなければなりません。

今後、日本がデフレに舞い戻り、経済がかなり悪化した場合には、内閣支持率が下がり、今後の選挙では議席数をかなり減らし、安倍総理の念願である改憲どころではなくなるかもしれません。

このままだと、安倍政権は、民主党よりはましな政権として、そうして安倍総理は消費税を二度増税した総理として歴史に刻まれることになってしまいます。そうして、政権は完璧にレームダックになってしまうでしょう。

では、今後安倍政権はどうすべきなのでしょうか。一つのシナリオを考えてみます。

安倍首相が消費税の5%への減税を宣言します。さらには、 軽減税率の適用をやめ、低所得層への補助金・給付金制度を打ち出します。そうして、総辞職。電撃的に自民党総裁選を行い、一気に菅内閣を樹立。

菅官房長官が総理に?

そうして、その後の組閣で、麻生氏は財務大臣以外の大臣となり、安倍総理は、財務大臣に就任して、本格的な財務省改革を行うことを宣言するのです。

人心一新、過去の増税の単なる延期等ではなく財務省改革、景気回復までの政策を公約に総選挙を断行するのです。そうすれば大勝もありえます。ここまでやるシナリオなら多くの支持を集めることができるでしょう。経済も良くなり、憲法改正もできます。安倍晋三氏は偉大な宰相として、歴史に名を留めることになるでしょう。

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2019年9月17日火曜日

【社説】サウジ石油施設攻撃はイランの答え―【私の論評】原油輸入依存する日本、石油危機も!本当は、増税している場合ではない(゚д゚)!

イランを警戒していたボルトン氏は正しかった
ウォール・ストリート・ジャーナル

赤の囲みは、今回ドローン攻撃を受けた箇所

 ドナルド・トランプ米大統領が2015年のイラン核合意からの離脱を表明して以来、イランは中東各地で軍事的緊張を高め、米国の決意を試してきた。サウジアラビア石油施設への攻撃にイランが関与した疑いがあることは、この不安定化の動きが新たな段階に入ったことを意味する。トランプ氏がイラン政策の軟化を検討しているときに攻撃が起きたことは偶然ではない。

 14日の攻撃を受けて、サウジの原油生産量は日量約570万バレル減少した。イランの支援を受けるイエメンの反政府武装勢力「フーシ派」が犯行声明を出したが、マイク・ポンペオ米国務長官はツイッター上でイランの関与を主張し、「攻撃がイエメンから行われた証拠」はなかったと述べた。イランは攻撃への関与を否定しているが、直接的な衝突を避けるために代理組織を使うのがイランの常とう手段であり、他に思い当たる犯人もいない。

 今回の攻撃は2つの地域大国間の局地的紛争以上の意味を持つ。攻撃によって世界の1日当たりの原油生産量は約5%減少した。サウジは減少分を相殺するための備蓄放出を約束しているが、生産を早急に回復させることができなければ、原油価格が上昇し、既に不安定な世界経済が痛手を受ける恐れがある。

 米国のシェールオイル生産が不足分の一部を補うことは可能だが、それも時間がかかる。原油供給へのダメージが長期化すれば、米国は、トランプ氏が検討していたイラン産原油輸出制裁の緩和をさらに強く求められるだろう。

 今回の攻撃は、米国の重要な同盟国であるサウジとイランの激しい代理戦争の一環だ。被害の大きさを考えると、サウジが今後、ドローン攻撃から十分に自国を防衛できるかは疑問だ。サウジの情報体制と防空システムはその任に堪えられそうもない。原油生産の減少はサウジの歳入に響く。先行きが不透明になれば、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)に悪影響が及ぶだろう。

 攻撃を行ったのがフーシ派ではなかったとしても、イランはイエメンでアラブ有志連合と戦うフーシ派を支援している。フーシ派はサウジ国内や紅海を航行する石油タンカーへの攻撃を激化させている。もしサウジがイエメンをフーシに奪われれば、イランはアラビア半島をめぐる代理戦争にも勝利したことになる。サウジは理想的な同盟国とは言い難いが、サウジへの支援打ち切りを求める米上院議員は、イランに中東地域の覇権を握らせないための代替案を考えるべきだ。

 ホワイトハウスによると、トランプ氏はサウジのムハンマド皇太子と電話会談し、米国による支持を約束した。しかしホワイトハウスは言葉だけで終わらせるべきではない。

ムハンマド皇太子

 イランはサウジに対してだけではなく、トランプ氏にも探りを入れている。「最大限の圧力」をかけるというトランプ氏の決意を試し、弱みをかぎつけている。イランが夏に米国の無人機を撃墜したが、トランプ氏は軍事的報復の提案を拒否した。イランの対外工作を担うコッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官はこれまで、こうした抑制的な動きがあると、イラン側に分があり事態をエスカレートさせても問題ないと解釈してきた。

 トランプ氏はイランのハッサン・ロウハニ大統領との直接会談についても前向きで、ポンペオ氏は国連総会の場での首脳会談を提案した。トランプ氏はエマニュエル・マクロン仏大統領が提案したイランへの150億ドル(約1兆6200億円)の支援への支持も検討している。週末の攻撃はそうした米国の動きに対するイランの答えだ。

 米国による制裁でイランの原油輸出はダメージを受けたが、イランはまだ他の石油製品から1カ月当たり数億ドルの収入を得ている。米国のリンゼー・グラム上院議員はイランの原油生産に対する直接攻撃を検討すべきだと主張しており、イランはその選択肢がないわけではないことを知っておくべきだ。

 サウジ主導の有志連合も、フーシ派に対するイランの武器供給を遮断するには多くの支援が必要だ。米国がイエメンへの関与を深めることに慎重になるのも理解できるが、イランが勝利し、イエメンでヒズボラのような体制が台頭すれば、米国の安全保障上の利益が損なわれる。そうなればシリアとレバノンの二の舞だ。

 トランプ氏がジョン・ボルトン氏に謝罪することになるかもしれない。ボルトン氏は、イランがホワイトハウスの弱点を見つけてはそこを突いてくると繰り返し警告してきた。そのボルトン氏は先週、イラン政策などをめぐる意見の相違から大統領補佐官を辞任した。週末の攻撃はボルトン氏が正しかったことをはっきりと証明した。トランプ政権の圧力キャンペーンは効果を上げている。今それを断念すれば、イランはこれまで以上に軍事的リスクを取るだろう。

【私の論評】原油輸入依存する日本、石油危機も!本当は、増税している場合ではない(゚д゚)!

イラン製ドローン

今回のドローン攻撃でサウジアラビアが失ったものは、原油生産ばかりではありません。米CNBCによれば、サウジアラムコが被った被害額は310億ドルに上ります。

重要なのはフーシ派がドローン攻撃を行った地域が「サウジアラビアの石油産業の中心地」(アブドラアジズ新エネルギー相)だったことです。ブルームバーグは「今回の攻撃はサウジアラビアの心臓発作を誘った」と報じていますが、サウジアラビアへの心臓部への攻撃が続けば、サウジアラビアは突然死しかねないです。

さらに「ビジョン2030」を掲げ脱石油依存型経済に邁進するムハンマド皇太子の夢が水泡に帰する可能性すらあります。

原油価格の下支えに向けたOPECプラスの協調減産のため、日量1200万バレルの生産能力を有しているサウジアラビアの実際の原油生産量は、日量1000万バレル弱に減少していますが、原油価格は一向に上がる気配を示さないことから、原油収入が大幅に落ち込み、サウジアラビアは今年再びマイナス成長となるリスクが高まっています(9月5日付ロイター)。

国家財政の「穴埋め」を行い、なんとしてでも経済成長への道筋に戻さなければならないムハンマド皇太子が当てにしていたのが、サウジアラムコの新規株式公開(IPO)の早期実施でした。ムハンマド皇太子は8日、IPOに消極的だったとされるファリハ氏の首をすげ替える荒療治を行ったばかりでしたが、今回のドローン攻撃でIPOは振り出しに戻ってしまうでしょう。

サウジアラビアの安全保障環境が改善されない限り、サウジアラムコのIPOばかりか、サウジアラビアへの外国投資も一層低調になるのは火を見るより明らかです。

ムハンマド皇太子に対する王族の非難が高まり、「宮廷クーデター」が勃発するなど地政学リスクが一気に高まるというシナリオも現実味を帯びてきました。市場関係者の間では「サウジリスクが長期化すれば、原油価格は1バレル=100ドルに高騰する」との声が出ています(9月14日付OILPRICE)。

世界経済を支える米国ですが、過去5回の景気後退のうち4回(1973年、1980年、1990年、2008年)で直前に原油価格が急騰していました。このことを鑑みれば、サウジリスクにより原油価格が高騰すれば、先行き不安が強まり世界経済への大きな打撃になることは間違いないです。

では、米国はどのような手を打つのでしょうか。あるいは、何ができるのでしょうか。それが問題です。答えはもしかすると、「あまりなにも」かもしれないです。

米政府は断固として、サウジ政府を支持しています。しかし、サウジアラビアが主導するイエメン内戦への軍事介入は、米連邦議会ではすでに評判が悪いです。サウジによる空爆は無意味ですし、ただでさえ貧困にあえぐイエメンを人道危機に陥れているだけだという認識が、日に日に高まっているのです。

ところが、今回のようなインフラ施設への攻撃によって、奇妙な側面もあらわになりました。トランプ政権はしきりにサウジ政府を応援するし、イランへの「最大限の圧力」をしきりに強調します。しかし実際には、米政府がイラン政府に発するシグナルの内容は、とても玉虫色なのです。

それというのも、トランプ氏は実は近く開かれる国連総会にあわせて、イラン政府幹部と対面して会談する用意がありそうな様子ですし、ジョン・ボルトン氏を国家安全保障担当補佐官の職から更迭したばかりです。そしてトランプ政権で特にイランの政権変更を強硬に主張していたとされるのは、ボルトン氏でした。

ジョン・ボルトン氏

イランとフーシ派は、強大な敵に立ち向かう弱者として、典型的な戦法をとっています。軍事戦略の教科書が「ハイブリッド紛争」と呼ぶものです。否認性、代理の使用、サイバー作戦、情報戦など、ロシアが得意とする作戦の中から、様々な戦術を借りて使っています。

トランプ氏がどれほど大げさに騒いで予想もつかない振る舞いをしようと、実のところは厄介な軍事対立から撤退したいし、新しい武力紛争にアメリカを巻き込みたくないのが本音だと、イラン政府は承知しています。そのためイランはイランで、「最大限の圧力」を米国にかけることができるのです。

しかし、計算を間違えれば全面紛争につながる危険はあります。そのようなことは実際、誰も望んではいません。

原油価格高騰を防止するため、米国政府は「戦略石油備蓄(SPR)」の放出準備に入りましたが、原油輸入の4割をサウジアラビアに依存する日本も「国家石油備蓄」の放出の準備をただちに開始すべきです。

そうして日本では今回の出来事は、単なる石油価格の高騰だけではすまない可能性があることを認識すべきです。

日本経済に悪影響を与える可能性がある世界情勢としては、①米中貿易戦争、②ブレグジット、③日韓関係悪化、④ホルムズ海峡での偶発などが以前からこのブログでも強調していました。

これらが10月の消費増税の後の日本経済にかなり悪影響を与える可能性があると強調してきましたが、④ホルムズ海峡はできればなければ良いと望んでいました。まったくやっかいなことになってきました。臨時国会では、これらに対する対策を本気で議論し、何らかの対応をしておくべきです。

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2019年8月4日日曜日

財務省がいまひっそり仕掛ける「10月の消費増税」へのヤバい裏工作―【私の論評】下卑た財務官僚はすでに10%超増税、年金減額、その他大緊縮路線に向けて動いている(゚д゚)!


関係者はほくそ笑んでいる

財務省にとっての参院選

7月21日に行われた参院選の結果にいちばん安堵したのは、財務省だろう。10月の消費増税を確定的なものにしたからだ。

今回の参院選では、山本太郎氏の「れいわ新選組」が消費税廃止を訴えたのをはじめ、野党は増税反対の方向で一致した。

一方、自民党も「当面10%以上に消費税を増税することはない」と明言して選挙を進めていた。


安倍政権という長期政権のうちに消費増税を達成しておかないと、次の政権になったらいつ実現できるかわからない。そして安倍総理が財務省に対して、ある程度の警戒心を抱いていることも知っていたので、様々なルートを駆使して「攻略」することに腐心していた。

まず、安倍総理の「盟友」である麻生太郎財務大臣を徹底して財務省の味方につけた。消費増税は、憲法改正とともに麻生氏の政治的な使命だと、本人に言及させたのだ。

麻生氏を懐柔したことで、増税のみならず、戦後有数の「財務省危機」を乗り切ることに成功した。ここ数年で相次いだ、森友学園への国有地売却に関する決裁文書の書き換え問題や、福田淳一財務事務次官によるセクハラ問題は、下手をすると財務省の解体にまで発展しかねない、未曽有の懸念材料だった。

そのような状況で、麻生氏を軸に、永田町と霞が関の距離をうまく調整することで、財務省の組織解体を免れ、あくまで役人の個人的な問題として処理させたのだ。

おまけに今回の参院選により、財務省悲願の消費増税まで実現間近だ。福田氏の後任事務次官である岡本薫明氏は今年7月末から2期目に突入するが、これらの「偉業」により、省に名を残す次官となるだろう(あくまで省内目線での話だが)。

今回の参院選の大義名分が「増税選挙」であったとはいえないが、結果的に安倍政権は2度の消費増税に耐えたことになる。'89年の消費税創設(竹下内閣)、'97年の5%への増税(橋本内閣)では、それぞれ政権が倒れた。'14年の8%、そして10月の10%への増税でも政権が倒れなかったわけだから、財務省にとっては「希望の政権」に見えるのだろう。

「4選」の噂がないわけではないが、ひとまず'21年9月に安倍総理は任期満了だ。財務省としても、安倍政権での消費増税は「10%」でもう十分だと考えているはずだ。消費税は、30年間で3回増税した。均せば10年に1回で、参院選期間中、「今後10年くらいは消費税率を上げることはないだろう」と総理が発言したことにも符合する。


今後、財務省は消費税「10%超」を狙うための「10ヵ年計画」を仕込んでいくだろう。総理交代で財政方針も転換するかもしれないが、緊縮財政が進んで歳出がカットされるくらいなら、増税でも構わないと国民が納得するのを財務省は待つことになる。

緊縮財政を「ムチ」とすれば、「アメ」は軽減税率だ。実際、新聞は軽減税率の兼ね合いから、消費増税を争点化できなかったと見受けられる。ほかにも、一時的な財政支出が「アメ」として機能する。参院選後、安倍総理は増税後の景気対策で一時的な財政支出に言及している。緊縮路線での「アメ」は、さぞかし甘いことだろう。

『週刊現代』2019年8月3日号より

【私の論評】下卑た財務官僚はすでに10%超増税、年金減額、その他大緊縮路線に向けて動いている(゚д゚)!

上の記事には掲載されていませんが、財務省の人事をみても、財務省の今後の目論見が透けて見えてきます。

財務省はここ数年、異例とも呼べる人事が続いてきました。一般的に官僚組織というのは、人事に関する外部干渉を嫌うものですが、官庁の中の官庁と呼ばれた同省は特にその傾向が強く、終戦の混乱期においても基本的な人事パターンを変えなかったといわれています(当時は大蔵省)。

そんな財務省が、異例の人事を行ってきたのは、何としても消費増税を実現するためです。

同省は「10年に1度」の大物次官と呼ばれた勝栄二郎氏(75年入省)を3期も続投させ、消費税対策に奔走しました。その結果、勝氏の後任だった真砂靖氏(78年)が1年で退任し、その後、木下康司氏、香川俊介氏、田中一穂氏と79年入省の人物が連続して次官に就任するという異常事態が続きました。田中氏の後任として次官に就任した佐藤慎一氏(80年)も、35年ぶりの主税局長からの昇進だったので、やはり異例の人事といってよいでしょう。

官僚組織がひとたび人事のパターンを崩すと、政治の介入を招きやすくなり、組織の弱体化につながります。実際、一連の変則人事には官邸の意向が強く作用したともいわれており、結果的に財務省は、森友学園問題では自殺行為ともいえる文書改ざんに手を染め、立て直しを期待された福田淳一次官は(82年)は何とセクハラ問題で辞任してしまいました。

福田氏の辞任直後から、後任人事をめぐって様々な怪情報が飛び交いましたが、3カ月の空白期間を経て、2018年7月にようやく本命の岡本薫明氏(83年)が次官に就任し、2019年7月の人事では続投が決定しました。岡本氏の就任と続投は、消費増税を実現した財務省が、定常パターンに人事を戻し、次の施策にシフトするための布石と考えられます。ナンバー2、ナンバー3の人事を見ると、その意図はさらに明白になってきます。

岡本薫明氏

岡本氏は入省後、一貫して予算を扱う主計局を歩み、秘書課長、主計局次長、主計局長という重要ポストをすべて歴任しています。財務省的には文句なしのエリートといってよいでしょう。同省の場合、次官候補者はかなり前から絞られていることが多く、今回の人事が定常モードへの回帰だと考えれば、「次」の人物もすでに想定されている可能性が高いです。その人物とは、今回、官房長に就任した茶谷栄治氏(86年)です。

茶谷氏は、岡本氏と同様、秘書課長や主計局次長など、次官になるための主要ポストを歴任していまは。政治的な動きは見せず、典型的な財務官僚タイプと評されており、同省的にはまさに王道といってよいです。

茶谷氏が次官の最有力候補と仮定すると、来年の人事において官房長から主計局長に転じ、2021年に次官に就任する可能性が高いです。岡本氏が3期続投するとは考えにくいので、そうなると、来年の人事では、現在、主計局長の太田充氏(83年)が、1年だけ次官を務めるというシナリオが有力です。

岡本氏と太田氏は同期であり、太田氏は文書課長や秘書課長を経験していません。もし太田氏が次官に就任した場合、これも異例人事のひとつと見なせるかもしれないですが、その後、茶谷氏が次官に昇進すれば、勝氏以来、続いてきた変則的な人事はすべて終了となります。

本来の姿に戻った財務省は、これでようやくポスト消費税の施策に専念できるわけですが、同省の次の狙いが社会保障制度改革、つまり簡単に言ってしまえば、年金の減額であることは明白です。加えて言うと、安定財源を確保するため、10%以上への消費増税についてもすでに検討に入った可能性が高いでしょう。

今回の参院選では、年金2000万円問題という想定外の事態が発生したものの、このブロクでも以前解説したように、元々年金は保険制度であり、これは日本は及ばずどの国でも政治上の争点になりにくい制度です。そのため、今回の選挙でも結局大きな争点とはなりませんでした。

選挙後に記者会見に臨んだ麻生財務大臣は、消費増税について「消費税率の引き上げは最初から申し上げてきた。その意味では信任をいただいたと思う」と、増税しないという選択肢はなかったとも受け取れる発言を行っています。

また、今回の参院選で228万票を獲得した「れいわ新選組」が消費税廃止を訴えたことについては、「福祉は負担と給付のバランスの上に成り立っているが、給付が増えて負担を減らすことが成り立つと思っているのだろうか」と否定的な見解を示しています。

社会保障の財源を消費税とする議論は元々おかしな議論なのですが、その論議はおいておき、実は選挙前にも、財務省が主導する社会保障の財源である消費増税の見通しについて微妙なやり取りがありました。

7月3日に開催された党首討論会では、安倍首相が「(10%への増税を実現できれば)今後10年は消費増税は必要ないと思う」と述べたのですが、翌日には公明党の山口那津男代表が「責任ある発言とは受け取れない」とこれを否定したのです。政府内部の実務レベルでは、10%以上への増税がすでに既定路線となっていることを伺わせる出来事といってよいでしょう。

参院選に先立つ党首討論会でも、首相は今後10年は消費税増税は必要ないと明言した

では、今後、財務省主導で実施されようとししている社会保障改革とは、どのようなものになるのでしょうか。

来年、国会への提出が検討されている社会保障制度改革法案の内容は明らかにされていないのですが、マクロ経済スライドの強化が盛り込まれる可能性が高いです。現在のマクロ経済スライドは、物価上昇時にそれを打ち消す形で年金を減額する仕組みだが、政府内部では物価の上下にかかわらず、年金給付額を削減するプランが検討されています。

もう一つは、70歳からが上限となっている年金支給年齢の引き上げです。

現在、標準的な年金の支給開始年齢は65歳ですが、本人が希望すれば、年金を増額した上で70歳まで支給を遅らせることができます。これを75歳以上まで引き上げることで、稼ぎのある高齢者への支給を抑制したい意向です。

あくまで本人の希望ということですが、この施策の最終的な狙いは、標準的な年金支給開始年齢についても70歳まで引き上げることです。近い将来、年金は70歳からしかもらえなくなる可能性が高いです。

政府は参院選への影響を配慮したのか、本来、選挙前に出るはずだった「年金財政検証」の結果公表を遅らせています。今回の財政検証でどの程度までの減額が明記されるのか要注目です。従来よりも踏み込んだ数字が記載された場合、給付削減と消費再増税の確度は高まったと判断してよいでしょう。

財務省はすでに10%超増税、年金減額に向けて動いているのです。そうして、彼らの頭の中には、日本経済を伸ばして税収を増やすという考えはなく、とにかく緊縮で日本がデフレになってもおかまいなしで、財務省の配賦権益をできるだけ強化し、その結果として高級官僚の天下り先を確保し、老後のハーピーライフをより豊かで確かなものにしようと日々努力しています。それが彼らにとっての省益なのです。

省益にしたとしても、なんとスケールの小さいものなのかと言わざるを得ないです。国民の幸福と引き換えにするには、あまりに小市民的で下卑たものであると言わざるを得ません。こうしたことが見透かされているからこそ、最近は東大生もこの卑しい省を目指さなくなったのでしょう。

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2019年6月1日土曜日

【日本の解き方】著名エコノミストが主張する日本の「基礎的財政赤字拡大論」 財政より経済を優先すべきだ ―【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!


オリビエ・ブランシャール氏

 元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏が、日本の財政政策について、プライマリーバランス(基礎的財政収支)赤字を拡大すべきだというツイートを日本語で行ったことが話題になっている。

 ブランシャール氏と田代毅氏の連名によるペーパーも日本語で読める。筆者は田代氏と面識はないが、経済産業省の官僚という経歴のようだ。

 そのペーパーでは、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」との結論が書かれている。

 そこでは、中央銀行を含めた「統合政府」による分析がなされており、「総債務ではなく純債務が正しい概念です(少なくとも良い概念です)」との前提なので、財政省がしばしば行っている総債務について狭義の政府の分析から導き出す結論より筆者にとっては信頼できる。

 その内容も、筆者がかねてより主張している財政政策と金融政策の一体運用に基づいて、まだ財政政策の余地があるというもので、おおよその方向性について異論はない。

 インフレ目標に達していないという現実については、金融政策でまだ余地があるとともに、財政政策でも余地がある。というのは、インフレ目標は、新たな財政規律としての意味があるからだ。

 統合政府では、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債として国債とマネタリーベース(中央銀行が供給するお金)の交換でしかない。ここで、マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。この場合、国債発行がやりすぎかどうかはインフレ率に出てくる。インフレ目標が財政規律になりうるのだ。

 日本では、こうした政府と中央銀行の連携を、「財政ファイナンス」として、禁じ手だと断定するが、あまりに不勉強だ。インフレ目標の範囲であれば、実体経済に弊害はなく、否定する理由もない。現状の日本経済を考えると、プライマリーバランス赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長の成果を目指したほうが、結果として、経済やその一部である財政にとっても好影響になると思う。

 こうしてみると、財務省を中心にマスコミや一般国民に垂れ流された考え方は、「財政再建至上主義」ともいえることがわかる。財政が経済を動かすという世界観で、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。

 一方、ブランシャール氏らの議論は、財政は経済の一部であり、マクロ経済学の基本に基づいて経済運営すれば、財政はおのずと後からついてくるという経済主義だ。このため、日本経済にとっては一時的なプライマリーバランス赤字は問題ではなく、経済再建のほうが優先される。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!

オリヴィエ・ブランシャール氏 についてWikipediaでは「現在はIMFとのチーフエコノミストとして活躍している」とありますが、 2015年10月に退任しているようです。ブランシャール氏については、池田信夫氏が「超低金利では政府債務のコストは小さい」と主張していると紹介しており、あの池田氏も同様の主張を最近はしています。そのブランシャール氏の主張を、IMFが批判しています。
IMFはブランシャールの財政赤字提言を「危険なステップ」と批判。「低金利がいつまでも続く保証はない」。IMF warns nations to limit public debt | Financial Times http://ow.ly/6HNd30oueUM 


記事では、ポルトガルの経済学者でIMF財政局代表のVítor Gaspar氏が「財政赤字の拡大に警告(IMF warns nations to limit public debt)」しています。

要するに、低金利がいつまで続くか分からない。金融危機を起こす要因は複数あり、そのときに備えて「今は財政赤字は拡大すべきではない」ということのようです。そのときとは、リーマンショックのような世界的な金融危機のことを想定しているのだと思います。

記事中にもあるように、IMFは伝統的に正統派の財政政策を支持してきており、それを踏襲した発言のようです。世界経済の権威であるブランシャール氏や、最近話題になっている「財政赤字の提言」には反対の立場をIMFとしては取らざるを得ないのでしょう。

ところでブランシャール氏は、2016年時点では日本の財政へ警笛を鳴らしていました。



【新着記事】小黒 一正: オリヴィエ・ブランシャール教授の日本財政への警鐘 http://agora-web.jp/archives/2019301.html 

しかしながら、ブランシャール氏は今や立場をかえました。これに関しては、以下の2つの記事を読むとよくわかります。

長期停滞の時代には財政赤字が必要だ(池田氏ブログより)
マクロ経済政策再考(田中秀臣氏ブログより)

ブランシャール氏は「日本は今後もプライマリー赤字を続けることが望ましい」といいます。したがって今の日本で消費税を増税することは望ましくないということになります。

経済に関しては、大雑把に緊縮派、反緊縮派と別れていますが、 ブランシャール氏やリフレ派の主張するところの「金利/インフレ率が過度に上昇しなければ、財政赤字は問題ない」というコンセンサスはとれていると思います。

そうなった場合の問題は、本当に低金利、低インフレ率が今後も続くかどうかに絞られます。個人的には、先進国では史上最低水準の金利、インフレ率のときに暴騰するリスクを叫ぶのはいかがなのかと思います。それより、「人々がどうすればより豊かなで幸せな人生を送れるのか」に集中すべきときなのではないでしょうか。

ブランシャール氏の主張する、財政より経済を優先すべきとは、現実の世界では、財政が赤字になることをおそれるがため、緊縮財政や金融引き締めなどをしないで、まずは積極財政や金融緩和をして、経済を良くすべきだということです。

その結果経済が良くなれば、税収が増えて、財政赤字も自ずと解消されるということです。しかし、平成年間の日本はその逆ばかりやってきました。特に財政では、消費増税と復興税など緊縮財政ばかりやってきました。

一昨日は、国債の金利が極端にあがったりしない限り、財政破綻などすることはないことを日本国を4人の家族にたとえて解説しました。政府の信用がなくなれば、国債の金利が極端にあがって、財政破綻する可能性もでてきます。

では、実際の国債の長期金利はどのような推移をしているのか以下にグラフを掲載します。


このような状況では、どう考えてみても財政破綻などありえないです。ただし、「日本の国債発行残高はGDPの200%を超えており、破綻の危機にある」と危機を煽る人々も多いです。昨日の記事をご覧いたたげれば、そのようなことはないことがご理解いただけるものと思います。

しかし、現実に市場は10年先の国債を金利がほぼつかない状態でも買いたがっています。どうして破綻が危惧されているはずの国債が買われるのかを、メディアが報じないのかが大きな問題だと思います。

バブル崩壊後、日銀の金融緩和のあるなしに関わらず、金利は右肩下がりに低下してきました。その理由は簡単で、民間に資金需要がないため、銀行は国債でしか有り余る銀行預金を運用できないからです。いくら政府債務が膨らもうとも、株や外貨、外国の国債より日本の国債の方が相対的に安全性が高いと市場はみているのです。

昨年の最後の取引となった28日の東京債券市場で、長期金利の指標である10年物国債の流通利回りがマイナス0.010%に低下(債券価格は上昇)しました。これは、2017年9月8日以来、約1年3カ月ぶりの低い水準でした。

この長期国債のマイナス金利も、日本の株価が大幅に下がったことも影響しています。株価が下がれば、株式市場から逃げるお金がどこか別の投資先を求めることになります。高い利率が魅力の新興国に向かうお金もあるし、リスクを避け絶対に破綻などあり得ない米国国債や日本国債も買われます。

米中貿易戦争による景気減速が株下落の主因のように報じられていましたが、米国債の利上げも株から国債へお金を流入させる要因になっていました。それは、米国の株価と国債金利の動きをみれば明らかです。


国債金利の推移をみるだけで、「日本は財政危機にある」との認識がどれほど間違っているのかが理解できるはずです。それなのに、SNSでは「日本は終わった」と思っている人の多さに驚きます。有効な手段があるにも関わらず、その手段の有効性を多くの人が理解していないため、政策に結びつかないという馬鹿馬鹿しい状況にあるのが日本の今です。

国民の意見など関係ない一党独裁の中国は、景気の減速に伴い「財政出動」と「減税」という有効で当たり前の手段をとろうとしています。彼らは、日本のバブル崩壊後の失敗から十分学んでいるのです。

ただし、現在の中国はこのブログにも以前掲載したように、国際金融のトリレンマにはまってしまっているため、金融緩和はやりたくてもできない状況にあります。もし、金融緩和ができるなら、彼らは躊躇することなく実行するでしょう。

本当は日本も、彼らのように、デフレを完全脱却するためには、できることはなんでもやるという姿勢でなければならないのです。そうして、現在の日本にはできることはいくらでもあるのに、それをやろうとしていないという奇妙な状況にあるのです。

消費増税により自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとしている日本の現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは絶対避けなければなりません。

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