2020年3月4日水曜日

五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す―【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!

五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す訳

総理の記者会見

2月27日に安倍首相が突如発表した全国一斉休校が、各方面で大きな波紋を呼んでいます。なぜ政府は、混乱が予想されるこのような判断をするに至ったのでしょうか。米国在住の作家・冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、今回の対策の真意、すなわち「国策」をあぶり出すとともに、もしも日本がこの先韓国のようにPCR検査を拡大した場合、経済崩壊に追い込まれる危険性があることを指摘しています。

全国小中高一斉休校、問題を抱えたギャンブルか?

それにしても唐突でした。改めて振り返ってみると、

2月25日(火)……基本方針発表、重症者増加回避策を最優先
2月26日(水)……基本方針に追加してイベント自粛要請
2月27日(木)……全国一斉休校方針発表
2月29日(土)……総理会見

という順序だったわけですが、いかにも急な判断であったという印象です。イベント全面自粛や全国一斉休校というのが、予め決定されていたら、25日の基本方針と一緒にまとめて発表すればよかったわけですが、日に日に厳しくなる情勢判断のもとでは仕方なかったのかもしれません。

良かったのは、この4つの発表には矛盾がないことで、1つの一貫したストーリーにはなっていることです。仮に、この4つの発表に矛盾点があるようですと、社会は大混乱に陥った可能性があり、少なくともそれだけは回避されたのは良かったと思います。

矛盾がない一貫したストーリーというのは、以下のような考え方です。
  • 市中感染は全国で相当に拡大していると見ている
  • また、若年層においては感染しても軽症でインフルと見分けがつかないか、無発症のケースも相当に出ているであろう
  • 市中感染が拡大し、その多くが無発症のケースだとすれば、これを放置すればどんどん拡大する。この点についてはSARSよりも、インフルよりも厳しい条件だと考えられる
  • その結果として、重症者が増加して医療機関が対応できなくなり、救命できる重症事例が救命できないケース、これが最悪シナリオであり、このシナリオを避けるのが国策の最優先事項である
この点に関しては、少なくとも2月25日以降の政府は「ブレて」はいません。例えば、加藤勝信大臣は、この25日の時点で「先手先手」ということを言っていました。この点に関して言えば、例えば春節時における膨大な入国許可とか、「ダイヤモンド・プリンセス」での防疫といった点に関しては「後手」であり、弁明の余地はありません。

ですから、この25日の「先手先手」という加藤発言は批判を浴びたわけですが、この発言に限って言えば、加藤大臣は「後手に回った過去の失態」を否定したり、ウヤムヤにしようとしたわけではないと思います。「医療機関の受け入れ体制が崩壊して、救命できるケースの救命ができない」という最悪シナリオに対しては、「まだ間に合うので先手を打っていく」という趣旨での発言であり、この点に関しては理解できますし、29日の総理会見に至る一連の施策との整合性もあると思います。

そこまでは良いことにしましょう。と言いますか、これは決定された国策であるばかりか、極めて大人数の生死のかかった判断であり、その対策の効果が見えないうちから否定したり妨害するべきものではないと思います。

問題は次の2点です。

1.子供は重症化しないという報告がある一方で、子供は無発症のまま感染を拡大させる可能性があり、高齢者や基礎疾患を持つ成人に感染させて重症患者を発生させるのを抑止するために、学校の一斉休校は有効と考えられます。

ところが、そのような説明は「結果を得られない」可能性があるため「子供の命と健康を守る」という説明に「言い換え」をしています。その判断が吉と出るか、凶と出るかはギャンブル性が高いと思います。

2.PCR検査については、キャパに限界がある中で軽症者、無症者が検査のために医療機関に殺到すると、必要な患者の検査ができず、治療体制を潰すことになります。また、医療機関こそ感染の場になりうることもあり、若年者や軽症、無症状の人を対象とした検査は最小限としたいわけです。

更に言えば、ウィルス量が少ない患者の場合は陰性判定となりますが、それで本人が100%安全と誤解するとかえって危険です。また韓国のように徹底的に検査しても一定程度以上感染拡大した場合は、制圧にはつながりません。従って、隠された国策としては、PCR検査の大規模化には消極的とならざるを得ません。

ですが、検査に消極的だなどという方針は明快に説明はできないので曖昧な説明をせざるを得ません。けれども、それが政府不信やモラルダウンを招くと感染拡大につながる可能性があり、この意図的な曖昧姿勢それ自体にもギャンブル性があるわけです。

この2つの問題は非常に重たい課題を含んでいます。

まず1.ですが、一斉休校をするにあたって、仮に「お子さんは重症化しません。ですが無症状のままクラスター化することが回避できれば、結果的に多くの人命を救うことができます」という言い方にしたらどうでしょう?この説明の方が誠実と思いますが、どう考えても「回りくどい」わけです。

ですから、対策を徹底するには「お子さんの健康と命を守るため」という「言い換え」をした方が「結果が得られる」という判断になるのはわかります。更に言えば、安倍政権(の周辺)では、アンチ安倍の世論というのは比較的高学歴・高収入であり、ここまで人命のかかった問題には「ヘソを曲げて来ることはない」という判断があったのかもしれません。仮にそうなら、(そうだとは絶対言うはずはないですが)それも分かります。

しかし、この「言い換え」作戦には問題もあります。今回の休校が「子どもの健康と命を守るため」だと100%真に受ける世論もあり、その中では「無症状なら健康」だという判断の元で、塾に行くのはいいだろうとか、満員電車に乗せて職場に子連れ出勤してもいいだろうという判断を誘発してしまうからです。

反対に対策の真意が理解されている、つまり「無症状の子どもが隠れたクラスターを形成して、静かなパンデミックを誘発、気づいたら重症者が溢れて救命がお手上げに」というシナリオを回避するということで、それが理解されていたらどうでしょうか?塾へ行こうとか、子連れ出勤を認めるのはいい会社という判断は、また別のものとなって行くのではないでしょうか。

一点だけ思うのは、学童保育については、余り批判しなくていいようにも思います。学童に行かざるを得ない子どもというのは、少なくとも「相当に高い率」で「高齢者とは同居していない」からで、仮にそこで自覚のない感染が起きても、直接的に重症者を生み出す可能性は低いからです。

反対に、ベビーシッター代わりに地方から祖父母を呼び寄せて一時同居というのは、ちょっとマズいのではないかとも思います。

この問題は2.も重なって来ます。つまり政府としては、
  • 無症状者や無症状の子どもは、PCR検査をしない
  • 従って、無症状の子どもによるクラスターが発生する可能性はあるが、それは可視化できないし、しない。
  • だからこそ、一斉休校措置により統計的に感染の可能性を抑え込むしかない
というのを国策としたわけです。一連の発表には一貫性があるというのは、そういうことです。現時点では、国としてはこの政策に賭けることにしたわけです。つまり、これが国策です。そして、繰り返しになりますが、その最大の問題はギャンブル性ということです。

勿論、このコロナウィルスの新型については、分からないことも多いわけで、そう考えるとどんな政策も100%正しいわけではなく、ギャンブル性があるわけですが、それはさておき、「高齢者、基礎疾患のある人は重症化する」「反対に子どもは重症化しないばかりか、無症状のまま感染源になることもある」ということを前提とした場合に、「全校一斉休校」「PCR検査は積極的にはしない」「軽症者、軽症疑い者は自宅療養」というのは理にかなっていると考えられます。

問題は、そこを「言い換える」、つまり「一斉休校は子どもを守るため」「PCR検査は拡大へ向けて努力中」と言う言い方にすることで、果たして世論が正しく反応するかは、そこにギャンブル性があるという点です。

この点に関しては、ヒヤリとさせられる事件がありました。

というのは、3月2日に開かれた参議院予算委員会で立憲民主党の村田蓮舫議員が、

「高齢者施設などに対して、イベント自粛や学校の一斉休校と同等の対応をしないのはなぜなのか」

一方で、この村田議員の質問に対しては、報道によれば自民党の松川るい議員による不規則発言(ヤジ)があったそうです。これは、加藤勝信厚労大臣が回答している間のことだそうで、

「高齢者は歩かないから」

という発言だったようです。更に驚いたのは、村田議員は、これに対して、

「自民党席から、高齢者は歩かないから、と松川議員が野次りましたけど、こんな認識でご高齢者の命を守るという認識を与党議員が持っているのに驚きました」

と怒ったようですから、こうなると村田議員が国策の趣旨を全く理解していないことは明白です。政党間の駆け引きとか、野党としてのアンチ権力という伝統というような話の遥かに以前の問題で、とにかく全く伝わっていないわけです。これは怖いことです。


ちなみに、別の報道では、松川議員は「あくまで小中高生と高齢者を比較の問題として発言した」と弁明したそうで、「誤解を与える表現だった」として謝罪したそうです。

これも全く別の意味で怖いことです。村田議員と比較するわけではありませんが、松川議員という人は、自民党議員団の中でも頭脳明晰な政治家だと思います。松川議員の発言は、この国策が何よりも「高齢者の重症化を抑止し、救命できるケースは全て救命する」ということを目的としているという点とは矛盾しませんし、恐らくはその国策を正確に理解しているように見受けられます。

怖いというのは、にもかかわらず(というのはあくまで推測ですが)松川議員の頭脳をもってしてもとっさに国策の正確な説明ができなかったというのは、やはりこの政策を世論に伝えるのは難しいと思ったからです。

もしかすると、松川議員は内閣の閣僚たちよりも正確に国策の趣旨を理解した上で、「これをストレートに世論に説明するのは不可能だし危険」という判断の元でピエロ役を買って出たのかもしれませんが、仮にそう(まさかとは思いますが)だとすると、やはり政策遂行の上でのギャンブル性は明白ということになります。

もしかすると、村田議員にしても全てを分かった上で、あくまでアンチ安倍の野党パフォーマンスというスタイルに徹したということなのかもしれませんし、そうなると、村田=松川の掛け合いもシナリオのある出来レースということになります。仮にそうだとしても、これだけ多くの人命のかかった大問題に対するアプローチとしては不適切です。

ところで、こうしたギャンブル性を一切外して、全く別のアプローチに転じるというオプションも勿論あります。

それは韓国方式とでも言うべきもので、民間の企業も幅広く対象としてPCR検査を思い切り拡大するという方法です。そうなれば、陽性の人の隔離を徹底することで問題が可視化して封じ込めが容易になる、そんなイメージがあります。

ですが、その場合も、無症状の若者や子どもがウィルスを持っていても検査には引っかからず、後日クラスターを作ってしまうというようなケースが出るようですと、これは抑え込めません。反対に、前述したように「100%の確度ではないにも関わらず、陰性だと安心しきってしまう」という中で相当な副作用もあると思います。

それ以前の問題として、猛烈な数の検査が可能になって、その結果として猛烈な数の陽性者が出てしまうと、これは五輪の延期などという話だけでなく、ただでさえ弱くなっている日本経済がボロボロになってしまう危険性もあるわけです。更に言えば、軽症の陽性者を安心して自宅療養させるのは難しく、結局は医療体制を潰してしまうことにもなる可能性があります。

そうなると、100%可視化した透明性のある施策のように見える「ニーズに応えたPCR検査」というアプローチも、それ自体が大きなギャンブルになるということです。ちなみに、現時点でのアメリカは「余計な検査はしない」という姿勢で、本日(2日の月曜日)の現時点ではNY株が大幅に反発しているのも、その効果と言えるように思います。

コロナウィルス問題に関する議論としては、現時点、つまり3月2日時点での論点はそのあたりになるのではと考えます。

冷泉彰彦

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!

上の記事の分析はかなり鋭いと思います。安倍政権のギャンブルなどとしているところは、いただけないと思いますが、安倍政権が現在まで、コロナウイルスに関する知見から、感染をなるべく広げず、高齢者の重篤化を防ぎ、なるべく多くを救命するということで、大きな賭けに出たのは間違いないです。

そうして、こうした政策に関しては、現在我々は協力できることは協力すべきです。ワイドショー等では、責任論を問う声もありますが、ワイドショーにでてくる専門家、識者などはこの政策に責任を負える立場ではありません。責任論は後からで良いです。

それに、すべての情報が整った上でないと責任など問えないです。あまりに責任論に特化した、ワイドショーなど百害あって一理なしだと思います。

それにしても、つい先日このブログでも指摘したように、毎年インフルエンザに1000万人が感染して、直接間接が原因で年間1万人が死亡しているのです。だから、新型コロナウイルスに過度に脅威を覚えるべきではないですが、何しろ未知のウイルスですから、過度に楽観的になることなく、政府や自治体の規制に従いつつ、様子を見るというのがペストと言えると思います。

その上で、デマに煽られないようにすべきです。その意味では、上の冷泉氏の記事も、全部が正しいとか、間違いなどというのではなく、参考にすべきものと考えていただきたいと思います。無論私のこの記事もそうです。

デマというと、最近ではトイレットペーパーの不足です。これは、鳥取県の米子医療生活協同組合は、組合運営の事業所職員がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して「トイレットペーパーが品薄になる」などと誤った情報を投稿したことなどを起因として発生したものです。

今後、このようなデマが多く出回ることでしょう。以下はデマとまでいえるかどうかわかりませんが、日本での感染者数はかなり多いと認識されているようですが、そうともいえないデータがあります。それを以下に掲載します。

以下の表は、武漢肺炎感染者数の人口比率(2020/03/03)です。


感染に限らず統計は、客観的に見ないと理解できませんし、見方を誤ってしまいます。上の表は、感染者➗人口の比率で比較した表です。

この表でみると、現在では韓国が世界で一番感染率が高いです。少なくとも、韓国の防疫体制が優れているとはいえないことがわかります。それと、中国の統計は単純に信じることはできないと思います。中国の経済統計はデタラメです。コロナウイルスの感染者数だけが、正しいということはできないと思います。

この表によれば、日本は16位ということで、19位の台湾とあまり変わりません。現時点では、特に日本が台湾などの他国と比較して、格段に防疫体制が格段に劣っているとは思えません。

こうしてみると、日本は世界的にみても人口の多い国であることがわかります。中国などは例外中の例外です。人口比でみると、韓国が一番感染していることになります。

このブログでは、数に関してはなるべく客観的であるように努めてきました。たとえば、中国で2010年あたりから、中国では毎年10万件ほど暴動が起こっているとされていますが、中国の人口13億人(最近14億人になりました)ですが、日本の人口は1億2千万人であることを考えると、中国で10万件というと、日本では人口が約1/10とみて1万件発生している勘定になります。

1万件というと、日本であってもこれはとんてもないことであるということが、ひしひしと伝わってきます。

これと同じく、どのような数字も客観的に見ないと、意味を持ちません。感染者数だけでみるというのは、あまりに非合理的だと思います。日本国内で比較するにも、都道府県単位の人口比率でみたほうが、より客観的になると思います。

ただし、人口比でみたとしても、東京は人口が約1千万、北海道は500万人ですから、東京と比較しても、北海道は突出して感染者数が多いです。

北海道では、新型コロナウイルスの感染者が今日までに82名に上っています。政府の専門家会議では、小規模な集団感染「クラスター」の発生が指摘され、25日には感染者数が東京都を上回って都道府県別で最多となりました。なぜ感染が相次ぐのでしょうか。統計データや専門家らの見解から「検査数が比較的多い」「冬の一大観光地」という要因が見えてきました。

北海道内の新型コロナウイルスの感染検査は道立衛生研究所(札幌)など2カ所で行い、1日最大で約60件の検査が可能です。1月25日正午現在では、全道で計170人に実施され、道の担当者よれば「許容量を超えずに、必要な検査ができている」といいます。

ただし、愛知県は検査態勢が「道内とほぼ同規模」(担当者)とされていますが、感染者は本日で49人です。

道内が国内有数の冬の人気観光地であることを踏まえ、人と人が接触する機会が増え、必然的にウイルスに触れる可能性が高まっていると考えられます。

冬場の観光需要は全国的に落ち込む傾向にあるが、道内はスキー場や流氷など冬ならではの観光地が多いです。2018年の観光庁の調査によると、道内の1~3月の宿泊客数は約457万人。集計済みの30都道県の中で東京都、千葉県に次いで3番目に多いです。

さらに冬場の観光地点や行事開催場所は1200地点と全国最多いです。雪を避けて屋内で楽しめる施設も少なくないです


2018年に北海道を訪れた訪日外国人客は298万人を記録しており、日本を訪れた3,119万2,000人のうち9.6%もの外国人が北海道を訪れていることになります。北海道単体で見ると、訪日外国人客数は前年比12.9%と順調な伸びを見せています。

北海道を訪れる外国人の特徴としては特にアジア圏からの訪日客が多く、中国からは71万9,500人、韓国からは67万7,600人、台湾からは60万3,900人が訪日しており、全体の9割近くがアジア圏からの訪日客となっています。これらも、感染の多いことの原因の一つにもなっているものとみられます。

デマが多い現状では、一番便りなるのは数字だと思います。テレビのワイドショーなどでは、特に数字も出さす、結果として不安を煽っているものも多数目にします。私達としては、武漢肺炎関連等でも、なるべく数値で見て、客観的に物事を判断すべきです。

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2020年3月3日火曜日

日本経済「コロナ恐慌」回避への“劇薬政策”投入あるか 日銀談話の影響は限定的 識者「10兆円補正」「消費減税」提案―【私の論評】コロナ対策で安倍総理がフリーハンドで経済対策に打ち込める状況が整いつつある(゚д゚)!


アベノミクスで長期政権を維持してきた安倍晋三首相の正念場だ

新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への打撃は深刻度を増している。発生源の中国では景気指標が過去最悪を記録、イベント自粛や一斉休校など非常態勢の日本も消費の大幅な落ち込みは避けられない。迫りくる「コロナ恐慌」を回避するためには、「消費税の事実上の減税」や「マイナス金利を活用した緊急融資」など劇薬政策を投入するしかない。


中国の2月の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)は35・7と節目の50を大きく下回り、記録が確認できる2005年1月以降で過去最悪。リーマン・ショック直後の08年11月の38・8よりひどい水準だ。

韓国やイタリアでも大規模感染し、米国でも初の死者が出た。米調査会社ムーディーズ・アナリティクスは世界経済が今年前半に景気後退に入る可能性があるとみる。

日本も政府の要請で全国的なイベントの中止や延期を余儀なくされている。観光やサービス、小売が低迷、企業業績の下方修正も続出するとみられ、昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)はマイナス成長となったが、今年1~3月期も上向きの要因はない。

政府がとるべき対応策として上武大教授の田中秀臣氏は、「まず20年度の本予算をすぐ通し、3月末ないし来年度初めまでに最低でも6兆円、できれば10兆円の第2次補正予算を猛烈な勢いで通すべきだ」と主張する。

具体的手段として「クーポン券などの配布や社会保険料の減免、臨時で所得税の大幅減税などの案もある」と提案する。

「消費税の軽減税率を全品目に拡大すべきだ」と強調するのは元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏。昨年10月に消費税率が10%に引き上げられた際、酒類や外食を除く飲食料品は軽減税率の対象となり、税率は8%に据え置かれた。これを全品目に拡大すれば、事実上の2%減税となる。

大和総研は、個人消費が2~5月の4カ月間で3兆8000億円程度減ると試算している。

高橋氏は「全品目軽減税率を導入すれば年率換算で5兆円弱の可処分所得を増やすことができる。2~5月で3兆8000億円の消費減少は年率換算では1・3兆円程度相当なので十分カバーできる」と語る。

制度導入は「今ある制度の枠内なので、法改正も簡明だ。トイレットペーパーの買い占めなど、デマに伴う不合理な購買が収まった後に政策を発動すべきだが、国会開会中の5月に改正案を通して、キャッシュレス決済によるポイント還元事業が切れる6月30日からのスタートもありうる」と指摘する。

日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は2日、「適切な金融市場調節や資産買い入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく」とする緊急談話を出した。

黒田日銀総裁

株式市場は好反応だったが、前出の田中氏は「談話は国民向けではなく、短期金融市場でやり取りする銀行や証券など狭い市場向けだ。本来は臨時の金融政策決定会合を開き、早急に対応を決めるべきだ」と冷ややかだ。

高橋氏も「談話はさほど強い意味はない。できることも限られるだろう」とした上で、「この際、『マイナス金利緊急融資制度』を作るほうが、より効果的だ」と提言する。

日銀は14年から短期金利の目標をマイナス0・1%とする政策を導入している。

マイナス金利下で政府が国債を発行して資金調達する際、金融機関が額面価格と利払い比の合計よりも高い額で入札するケースが多く、浮いた分が国の“儲け”になっている。

高橋氏は「政府はマイナス金利で資金調達可能という利点を生かして、政府系金融機関を通じてマイナス金利で企業に融資することが可能だ。財政投融資の仕組みを生かせば、国に損はないので法改正がなくても導入できる」と解説する。

マイナス金利融資となると、利息を払うどころか、借金すればするだけ儲かるという前代未聞の状態となる。企業としてはいくらでも借りたいところだが、そんなうまい話があるのか。

「民間銀行は当然、民業圧迫だと反対するだろうし、財務省もやりたがらないはずだ。だが、新型コロナウイルスによる経済への打撃は深刻で、現状は非常時といえ、国の儲けを民間に還元しても問題はないはずだ。融資に上限を設けたり、ある程度業種を絞ることで、国民の理解を得られるのではないか」と高橋氏。

異次元の金融緩和を軸としたアベノミクスから約7年。新たな異次元政策が必要なときだ。

【私の論評】コロナ対策で安倍総理がフリーハンドで経済対策に打ち込める状況が整いつつある(゚д゚)!

安倍晋三首相は1月28日午前、衆院予算委員会で、玄葉光一郎委員(立国社)の質問に答えて、新型コロナウイルスの内外での感染拡大による日本経済への影響について、予備費もあり、直ちに予算が不足することはないとの認識を示し、事態の推移を注視する考えを示した。その上で、日本経済に大きな下振れリスクが生じないよう、「必要なら思い切った対策をしていきたい」と語りました。

まさに、今は危急存亡の時です。すぐにでも、できる経済対策を実行、さらに時間のかかるものもあわせて、2重、3重の構えで、できることは全部実行していただきたいものです。もしそれで景気が加熱したとしても、どうにでもできます。まずは、加熱させることが重要です。

安倍晋三首相は2月29日の夕方、緊急の記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の取り組みなどを説明しました。



2月27日夕に、全国の小中高校に対して3月2日から春休みまで臨時休校するよう要請したことについて、
何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。
とし、国民に理解を求めました。

この29日の会見で注目すべきは、「新型コロナ対策」を理由に、「何でもあり」の景気対策に道を開いたことです。

学校の一斉休校に伴って保護者が休職した場合の所得減に、「新しい助成金制度を創設」し、
正規・非正規を問わず、しっかりと手当てしてまいります。
と明言しています。また、
業種に限ることなく雇用調整助成金を活用し、特例的に1月まで遡って支援を実施します」
とも述べました。

さらに、中小・小規模事業者の強力な資金繰り支援なども行うとしました。政府が個人や企業に直接、所得補填するのは政策的には「禁じ手」で、平時ならば「ばら蒔き」との批判を受けかねないです。

今後、制度や法律を作る段階で、どこまでを新型コロナによる影響とするかなど、難題が出てくるでしょうが、それも「非常時」ということで、許容されるのでしょうか。

実のところ、新型コロナ対策を「理由」にできることは、深刻な景気減速に直面しつつあった安倍内閣にとっては、救いの船とも言えるかもしれません。

2019年10-12月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、年率換算でマイナス6.3%と大幅なマイナス成長になりました。前の消費増税直後である2014年4-6月期はマイナス7.1%、東日本大震災の影響が出た2011年1-3月期はマイナス6.9%だったので、これに次ぐ激震に見舞われたことになります。


もちろんこの段階では新型コロナの影響はあまり出ていません。2019年10月からの消費増税に伴う家計消費支出の大幅な減少が響いたのです。

そうでなくても弱い国内消費が、消費増税によって一気に悪化した格好になったのです。

そこに、さらに新型コロナによる経済停滞が加われば、国内消費は「底が抜ける」のは明らかです。消費を下支えする「唯一の期待」だったインバウンド消費が激減することは火を見るよりも明らかです。

たとえば、日本百貨店協会が発表した1月の全国百貨店売上高は、前年同月比3.1%の減少となりましたが、それでも春節による中国人訪日旅行客の増加で、免税売上高は20.9%も増加したのです。1月の全体の売上高は4703億円で、そのうち免税売上高が316億円なので、6.7%を占めたことになります。もちろん免税対象品以外も買われているので、インバウンド消費の効果は大きいです。

逆に言えば、免税売上高が2割も増える中で、全体は3.1%も減ったわけで、昨年10月の増税から4カ月たってもいかに国内消費が弱いかということが分かります。

また、春節期間(1月24日〜30日)の免税売上高は2ケタのマイナスだった百貨店が目立ったと報道されましたが、それでも1月全体のインバウンド依存は大きかったわけです。何しろ、1月の中国からの訪日旅行客は92万4800人と、前年同月に比べて22.6%も増えています。

ちなみに、春節後の2月1日まで、日本政府が武漢を含む湖北省などからの旅行者受け入れを停止せず、その後も中国からの旅行者を規制していないことにも批判が集中しています。

しかし、仮に春節前に中国からの旅行客をブロックしていたら、消費は目も当てられない悪化ぶりになっていたことは容易に想像が付きます。

なお、昨年は2月に春節があったので、対前年同月比では2月のインバウンド消費が落ち込むのはもちろん、これに新型コロナ問題が加わったことで激減することになりました。百貨店大手4社が3月2日に発表した2月の売上高速報は、大丸松坂屋百貨店が21.8%減、三越伊勢丹が15.3%減など、軒並み2ケタのマイナスになりました。

また、様々な行事が中止になっている3月は、訪日客が激減していることもあってさらに消費が落ち込む懸念が強いです。

インバウンド消費で最も影響が大きいのは、4月です。ここ数年、中国などアジア各国の人たちの間で、日本の桜を見るツアーが人気を博してきました。4月の訪日客は、実は春節の月よりも多いです。

たとえば2019年の場合、春節の2月は260万人だったが、4月は292万人。多くの国が夏休みの7月(2019年は299万人)に次いで、4月がインバウンドの稼ぎ時なのです。

現状では、4月の旅行計画を組むのは難しいでしょうし、今年の「桜の時期」は例年になく外国人観光客が少なくなるに違いないです。

2019年の訪日外国人旅行消費額は、観光庁の推計によると4兆8113億円。うち36.8%に当たる1兆7718億円が、中国からの旅行者です。まだ訪日客も増えてインバウンド効果もあった今年1月はともかく、2月以降の数値では、確実にインバウンド効果が減少しているはずです。

しかも、いまや訪日客減は中国からだけではなく世界傾向であるため、仮に全体の旅行消費が半減したとすると、2019年実績数値から単純計算すれば、2月からの3カ月間で6000億円の消費が消えることになります。

こうした消費の減少で中小企業の収入が激減し、資金繰りが悪化した場合、政府がそれを支援する、というのが今回の会見で安倍首相が示した方針です。これを融資で支援するのであれば通常の危機対応でもあるので、それほどの混乱はないかもしれないです。

しかし、収入の減少や雇用の確保に向けた人件費の負担を政府が行うことになれば、その財政負担は大きいです。それでも考えられる限りの支援を安倍首相は行うつもりに違いないです。そうして、それはこのブログで過去に主張してきたように可能です。

経済が猛烈な勢いで縮小しかねない時に政府が財政支出をするのは、伝統的な経済対策です。しかし、土木工事を中心とする公共事業では経済を底上げする力が弱くなってきていることは明らかです。政府の支出額以上に経済効果が大きくなる「乗数効果」、特に短期的な効果は下がっているのです。

経済全体のサービス化が進み、消費がGDPの55%近くを占める中で、土木や建築などの工事に従事する人の数も減り、全国的に消費を押し上げることが難しくなっているのです。

今回、「非常事態」ということで、消費産業や働く個人に直接、国の財政支援が行われる仕組みができれば、予想外に景気下支えの効果を引き出すことができるかもしれないです。

さらに新型コロナが終息した直後からの景気の立ち上げを力強くするためには、本格的な消費支援策を打ち出す必要が出てきます。

もっとも効果があるのは、「消費税の減税」でしょう。消費税だけではなく、所得税等他の税制の減税も充分に考えられます。そうなると、このブロクでも紹介してきたような、米国のトランプ減税のようなことも多いに考えられます。

このブログにも過去に掲載してきたような、減税などの一見「奇抜な案」は実現不可能とみられがちでしたが、「非常時」に乗じれば、安倍政権が実行に移すことも可能になるはずです。

平時であれば、財務省やその走狗達は、徒党を組んで、これらに大反対キャンペーンを展開し、財務省の官僚はご説明資料を持参して、マスコミ、財界、経済学者や民間エコノミストに日参して、緊縮の必要性をとき、増税を繰り返し、マスコミ、財界、エコノミストラがそれに追随しました。現状そのようなことをすれば、批判の的になるのは明らかです。

多くの国民、企業は、コロナ対策で実際に被った損失をなんとかしたいと思うはずで、それに対して財務省が国の借金がどうのこうの、国債は将来世代へのつけという嘘八百を並べ立てても、今回ばかりは共感は得られないでしょう。

まさに、安倍総理がフリーハンドで経済対策に打ち込める状況が整いつつあるのです。今後日本でも、様々な積極財政のあり方が模索されることになるかもしれません。そうして、日本でも機動的な財政政策が実行される契機となるかもしれません。

財務省とその走狗らで気をつけなければならないのは、コロナ対策で景気がコロナ直前の水準に戻った時です。緊縮脳の彼らは、もう戻ったから対策はやめるべきと主張するでしょう。そのとき、彼らの口車にのって経済対策をやめてしまうことです。

コロナ直前は決して良い状況ではなかったのですから、良い状況になるまで、経済対策を続けるべきなのです。

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2020年3月2日月曜日

「国会質問で不当な人権侵害」原英史氏が森ゆうこ参院議員を提訴 国会議員の「免責特権」どこまで許されるのか? 作家・ジャーナリスト、門田隆将氏が緊急寄稿―【私の論評】国会での誹謗中傷は、処罰しないと野党は認知症になるだけ(゚д゚)!


門田隆将氏

国民民主党の森ゆうこ参院議員の国会質問によって、不当な人権侵害を受けたとして、政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長代理の原英史氏が25日、東京地裁に損害賠償訴訟を起こした。作家でジャーナリストの門田隆将氏が緊急寄稿した。


 この件をひと言で表現するなら「国会議員による国民に対する誹謗(ひぼう)中傷・住所公開事件」となる。

 森氏は昨年11月15日の参院予算委員会で、毎日新聞の記事を根拠に、原氏が特区提案者から金銭を受け取ったとして、「国家公務員なら斡旋(あっせん)利得、収賄で刑罰を受ける」と発言し、自身のホームページで原氏の自宅住所を公開した。

森ゆうこ参議院議員

 だが、森氏の質問の根拠となった毎日新聞は昨年6月、原氏から損害賠償訴訟を起こされている。同紙は法廷で、原氏が金銭を受け取ったという報道をしたつもりはないと答弁をしている。あぜんとする主張である。

 にもかかわらず、森氏は国会の場で、原氏を糾弾した。

 原氏は「事実無根の誹謗中傷」として謝罪・訂正を求めたが、森氏は応じなかった。国会議員が議院で行った演説や討論、表決は、憲法第51条に定められた「免責特権」の対象となるのだ。

 これで納得できるはずがない。免責特権がある以上、「国会内」で自律的に対処するのが筋として、原氏は参院に対して、6万7000人分のネット署名を添えて「森氏の懲罰」を求める請願を行った。

 ところが、原氏の請願に応えたのは日本維新の会だけだった。それ以外の与野党は完全無視し、森氏も、原氏の度重なる謝罪・訂正要求を無視し続けた。

 原氏は泣き寝入りか、一個人として国会議員と戦うかという“二者択一”を迫られた。

 最終的に、原氏は提訴に踏み切った。森氏が原氏の自宅住所情報をネットで拡散したことなどは「国会外での不法行為」にあたり、免責特権で保護されないとの主張だ。

原英史氏

 多くの国民は、野党議員の傍若無人な振る舞いや、新聞や週刊誌をもとにした「事実の裏取りもしてもいない」質問内容にあきれている。国政調査権を有する国会議員による国会での質問は、新聞や週刊誌の“下請け”であってはならない。

 原氏はさらに、「国会での言論を検証する独立機関」をつくる構想も持っている。国会議員の言論について、中立・客観的で、事実に基づく検証・提言を行う、「国会版BPO」である。

 こうした組織ができれば、国会にも緊張感が生まれる。国民への名誉毀損も「平気だ」といった言動も減るはずだ。国民のために動いた、原氏の果敢な決断を評価したい。


 原氏の提訴について、森氏は28日、事務所を通じ、「まだ訴状を見ておりません。特別申し上げることはございません」とコメントした。

【私の論評】国会での誹謗中傷は、処罰しないと野党は認知症になるだけ(゚д゚)!

原 英史(はら えいじ、1966年)は日本の文筆家で、政策コンサルタント、元通産省・経産省職員。フェイクニュース研究所副所長と称しています。株式会社政策工房代表取締役社長で、大阪府市統合本部特別顧問です。

以前、経産省の職員であったことはありましたが、今では純然たる民間人です。森ゆうこ参議院議員は、その民間人を侮辱するだけではなく、住所を公開したりしたのですから、これはもう良識の範囲を完璧に逸脱しています。

Change.orgでは、原氏を支援するキャンペーンを実施しています。その内容を以下に掲載します。なおこのキャンペーンでは、趣旨に賛同するとともに、支援金を寄付できるようになっています。
賛同いただける皆さまに署名お願いいたします。 
【発起人】
朝比奈一郎、生田與克、池田信夫、岩瀬達哉、上山信一、加藤康之、岸博幸、鈴木崇弘、髙橋洋一、冨山和彦、新田哲史、原英史、町田徹、八代尚宏、屋山太郎
(敬称略、五十音順)
=======
参議院議長殿 
 憲法第51条では、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」とされています。 
 しかし、だからといって、誤った報道に安易に依拠した名誉毀損など、国会議員による不当な人権侵害は許されるべきでありません。 
 この観点で、森ゆうこ参議院議員に対し、以下の理由から、除名などの懲罰を検討いただくことを求めます。 
 あわせて、こうした事案の再発防止のため、さらなる対策を国会において検討いただくことを求めます。

【理由】
 森ゆうこ議員は、10月15日参議院予算委員会で、原英史・国家戦略特区 ワーキンググループ座長代理が不正行為を行ったかのような発言を繰り返したうえ、「(原氏が)国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける(行為をした)」、すなわち「原氏が財産上の利益を得た」との事実無根の虚偽発言をしました。
 森ゆうこ議員は、発言の根拠として、6月11日の毎日新聞一面記事をパネル化して提示・配布しました。しかし、この記事が虚偽報道であることは、原氏が根拠を挙げて繰り返し説明しています(別紙:10月14日の公開記事、これまでの毎日新聞への反論)。 
 同氏は毎日新聞社に対して名誉毀損訴訟を提起しており、訴訟の中で毎日新聞社は、「原氏が金銭を受け取ったとは報じていない」と弁明していることも、すでに明らかにされています。 
 その状況下で、森ゆうこ議員がNHK中継入りの予算委員会において、十分な事実関係の調査もなしに、何ら根拠のない誹謗中傷を行ったことは、許されるべきでない人権侵害です。

(別紙)
http://agora-web.jp/archives/2042082.htmlhttp://agora-web.jp/archives/author/haraeiji
このほか、必要に応じ、さらに理由を追加します。
このような議員の傍若無人な振る舞いは決して許されるものではありません。私自身は、このような振る舞いが許されているからこそ、国会での不毛な論議がいつまでも継続されるのだと思います。

国会をまともな場にするためにも、このようなキャンペーンは有意義だと思います。

さらに、森議員は、国会審議の場では「国家公務員だったら斡旋利得、収賄で刑罰を受ける」と発言した一方で、ツイッター上では「仮に金銭の授受があれば、特区WG委員に公務員と同等の倫理規定がないため、刑事罰を課されないないものの、脱法行為ではないのか」と発言しています。


一見、同じような表現に見えますが、実は微妙に表現を使い分けています。国会では事実があったとほぼ断言している一方で、ツイッター上では“仮に金銭の授受があれば”と仮定の話に変えています。

かつ、国会では“あっせん利得、収賄”と犯罪行為であるかのように決めつけているのに、ツイッター上では“倫理規程“と弱い話にすり替えられています。

森議員は、国会では免責特権があって責任を問われないので意図的に激しい表現で原氏を誹謗中傷し、ツイッター上では訴訟リスクがあるので表現を弱めたとしか考えられません。憲法第51条がある中で、こうした狡猾な使い分けが行われているのが現実なのです。

私は、憲法改正で第51条を大幅に弱めることが必要と思いますが、それは難しいでしょう。しかし、その場合でも、たとえば国会議員が国会審議の場で他者の誹謗中傷、名誉毀損、人権侵害につながる発言を行なった場合、両院が当該懲罰を課すとともに、被害を受けた者に国会の中で事実確定と名誉回復の機会を与えるなど、知恵を出せばやりようはいくらでもあります。

今回の訴訟が、単なる法定論争に終わることなく、なにかこのような動きにつながることを期待しています。

そうでないと、日本の野党は国会で弛緩して、頭をつかわず、楽に楽を重ねて、現在の馬鹿の次元から認知症にすすむのではないかと思います。ツイッターの投稿よりも、頭を使わないですむ国会であってはいけないです。

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2020年3月1日日曜日

コロナウイルスの情報洪水に飲み込まれないために―【私の論評】過度に神経質にならず楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベスト(゚д゚)!

コロナウイルスの情報洪水に飲み込まれないために

大野智氏(島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授)

大野智氏
ヘルス・リテラシーという言葉を聞いたことがあるだろうか。

 リテラシーはメディアリテラシーのような形で使われ、通常は「読み解く力」と訳されることが多い。ヘルス・リテラシーは、「人間の健康や安全、人命に関わる情報を読み解く力」とでも訳せばいいだろうか。どんな分野でもメディアや誤情報に乗せられないためにリテラシーを鍛えることは大事だが、とりわけヘルス・リテラシーはこれが低いと容易にパニックが起きたり、誤った治療法や薬によって健康を害したりするなど影響が命に関わる場合が多いので、リテラシーの中でも最重要なものとなる。

 マル激では9年前の原発事故で科学の市民化と市民の科学化の両方が不足していることを痛感し、その視点から諸問題にアプローチしてきた。そして、巷がコロナウイルス情報で溢れかえる今、われわれはあらためて市民の科学化が問われる局面を迎えているのではないだろうか。

 つい3日前までは大規模な集会などは避けるように言われていた程度だったところが、27日になって突如として首相が全国の小中学校、高校の休校を要請するにいたり、コロナウイルス問題が未曾有のパンデミックにでもなったかのような空気が漂い始めている。

 たしかに既存の季節性インフルエンザ並の強い感染力を持ち、罹患した高齢者や糖尿病や高血圧など既往症のある患者には一定の死亡者が出るなど、恐ろしい感染症ではある。しかし、ここまでわかっているだけでも、新型コロナウイルス(COVID-19)は感染力、致死性ともに、既存のインフルエンザと大差はない。

 実際、日本でコロナウイルスの感染が始まった昨年12月末から2月までの約2ヶ月の間、既存の季節性インフルエンザの罹患者は1,000人を優に超えている。昨年1月のインフルエンザの罹患者は約90万人で、死亡者も1,600人を超えていた。コロナウイルスによる日本での感染者は今のところ234人(2月28日現在)、死亡者はダイヤモンド・プリンセス号の乗船者を除くと5人(同上)だ。今年はうがいや手洗いの徹底などのおかげで季節性インフルエンザの罹患者数が例年の半分程度に抑えられているが、それでもその間、80万人あまり(12月~2月末)が季節性インフルエンザに罹患し、最終的な死亡者数は約1,000人は超えるだろう。繰り返すが同時期の罹患者が80万人あまりと200人あまり、死亡者数が1,000人と5人(それぞれクルーズ船乗船者を除く)だ。

 無論、新型コロナウイルスにはまだ未知の部分もあり、単純に季節性インフルエンザと比較はできない。しかしながら、既に日本でも罹患後回復している人が33人もいるし、罹患者の大半はほとんど症状が出ないことも指摘されている。今のところ死亡者は高齢者と既往症のある患者に限られる。

 その一方で、これが世界的に広がれば、既存のインフルエンザと同様、多くの人の命を脅かす危険性はある。特に発展途上国のような医療体制が完備されていない地域では、インフルエンザが直ちに命の危険につながる。だからこそWHOなどではこの問題を非常に深刻に受け止めているのであり、日本のような医療の行き届いた先進国でこれが直ちに生命に関わるほどの深刻な問題になるとは考えられていない。

 ところがここ数日の日本の反応はどうだろう。

 島根大学医学部附属病院の教授でヘルス・リテラシーに詳しい大野智氏は、一般の市民にとって、今回は「新型コロナウイルス」という呼称が恐怖を助長した面があったと指摘する。なんといっても「新型」なので未知の部分が多く、またコロナウイルスという名前も、必ずしもわれわれの多くにとって馴染みがあるものではなかった。実際、一般的な風邪の1.5~2割程度はコロナウイルスが原因だし(4種類)、過去のSARSとMERSもそれぞれ別のコロナウイルスによるものだった。現在猛威を奮っているコロナウイルス(COVID-19)が、人類にとっては7つ目のコロナウイルスということになる。

 未知の物に対しては、誰も怖れを持つのは当然だ。しかし、とは言え今回のコロナウイルスは感染力としては既存の季節性インフルエンザ並かそれ以下であり、致死性ではSARSやMERSを遙かに下回ることが既にわかっている。また、各都道府県の医師会などがガイドラインを出しているが、手洗いやうがいなど既存のインフルエンザ対策が有効であることもわかっている。咳やくしゃみが出る人は、コロナであろうが何であろうがマスクをすべきだし、熱が出たり具合が悪い人は仕事や学校に行かずに家で安静にしているべきだ。インフルエンザが流行っている時期はあまり人混みには行かない方がいいだろうし、風邪気味だったり、糖尿などの既往症がある人、妊婦、高齢者もその時期は人が多く集まるところは避けた方がいい。

 何だかあまりにも当たり前のことを列挙してしまったが、結局、コロナであろうが季節性インフルであろうが、あるいは通常風邪であろうが(かぜの2割前後はコロナウイルスが原因だが)、こういう常識的なことをやっていればある程度の蔓延は防げる。逆に言えば、どんなに沢山の情報を集めても、市民一人ひとりができることは、その程度のことしかないのだ。

 一方で、政治や政府には、また別の心配事がある。今回PCR検査が進まないことで、日本が感染症に対する備えを怠ってきた実態が露呈してしまったが、もし大量感染が起こり、感染者、とりわけ重篤な症状を呈する患者が現在の日本の医療のキャパシティを超えてしまえば、いわゆる医療崩壊が起きる。その「崩壊レベル」が思った以上に低ければ、医療体制の整備を怠ってきた政治の不作為が露呈することになり、その責任が問われることになる。

 そこで政府は大量感染を起こさない、あるいは起きたとしても、発現のタイミングをできるだけ遅らせることで、医療体制の拡充を進め、「崩壊レベル」をあげることに時間を稼ぐ必要が出てきた。

 また、IOCの理事の一人が、5月末までに収束しなければ東京五輪は中止もあり得ると発言したことも、明らかに政府を焦らせ、今回のやや唐突とも思える措置の遠因となっているように見える。万が一五輪が中止になどなろうものなら、政府の責任が問われることは必至だからだ。

 このように政治は政治で、いろいろ心配しなければならない問題がある。しかし、それはわれわれ市民の問題ではない。そうした政治的な動きや、それに乗っかり、悪戯に危機を煽ることで数字を稼ごうとするメディアによる情報洪水に巻き込まれると、実際は国産シェアが97%もあり品不足になる理由がまったくないはずのトイレットペーパーが品薄になるような、いつもの馬鹿げたパニックが起きてしまう。

 今まさに市民のヘルス・リテラシーが問われている。情報洪水の中から、自分にとって意味のある情報だけを拾い上げる作業は骨の折れる作業かもしれないが、それをせずに真偽不明の怪しい情報に踊らされることのコストの方が実際には遙かに大きいはずだ。今こそリテラシーを発揮して、これまで何度も政府やメディアに踊らされてきた苦い経験を活かそうではないか。

 今週のマル激では大野智・島根大学教授と、情報洪水の中で誤情報に踊らされパニックしないための方策をジャーナリスト神保哲生、社会学者宮台真司が議論した。

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大野 智(おおの さとし)
島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授
1971年静岡県生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。博士(医学)。同年同大学第二外科(消化器外科)入局。2018年より現職。共著に『「がんに効く」民間療法のホント・ウソ―補完代替医療を検証する』など。
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【私の論評】過度に神経質にならずに楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベスト(゚д゚)!

昨日の記事にも書きましたが、私自身はここ20年ほどは風邪やインフルエンザになったことはありません。無論、鼻水が出たとか、咳が出る程度のことはありますが、熱が出るとか、体調不良などの症状は出たことはありません。ましてや、風邪、インフルで会社を休んだなどのこともありません。

このような話をすると、「なぜ」と多くの人に聞かれるのですが、冬季間はいつもマスクをしていること、手洗い、うがいを励行したくらいのことしかありません。もう一つは、加湿機能付き空気清浄機を特に冬季間には使っているということもあるかもしれません。

マスクに関しては、以前から特に冬は寒いので、寒さ対策のためにマスクをしていました。実際、マスクを着用しただけで、一枚余分に衣服をつけたような感覚で、特に風邪、インフル防止という意識はありません。

マスクでは感染症を防ぐことはできないという専門家もいますが、多くの専門家はきっぱりと否定しているわけではありません。

「Face touching: a frequent habit that has implications for hand hygiene.」(PMID: 25637115)によれば、平均して一時間に23回も、人は自分の顔に触れていることがわかりました。

ウイルスの多くが病気を引き起こす経路は飛沫感染であり、接触感染です。この論文の結果から、マスクをすればウイルスが手指についても口や鼻の粘膜からの感染を防げる可能性があるといえます。


ただし、マスクがないからといって、パニックになって街中を探し歩いたりすれば、感染する率は高くなります。マスクがないならその分、手洗いやうがいの頻度を増すなどのことで充分対応できると思います。それに専門家の中には、マスクはどちらかというと、感染舌人が他にうつさないためのものと捉えている人もいます。

湿度に関しては、私は比較的敏感なほうで、40%以下になれば、必ず加湿します。加湿機能付空気清浄機は、自宅では2台使っています。それに、もう一つ、あまり湿度の下がらない部屋には、空気清浄機を一台設置しています。これも、あまりインフルエンザや風邪を意識して用いているわけではありません。

これ以外には、特に食べ物に気をつけたとか、サプリなどを意識して飲んだということもありません。運動もとくに他の人よりも多くしているなどということもありません。また、人混みを避けることにに関しては、普通の人と同程度だと思います。

こうしてみると、冒頭の記事にもあるとおり「結局、コロナであろうが季節性インフルであろうが、あるいは通常風邪であろうが(かぜの2割前後はコロナウイルスが原因だが)、こういう常識的なことをやっていればある程度の蔓延は防げる。逆に言えば、どんなに沢山の情報を集めても、市民一人ひとりができることは、その程度のことしかないのだ」ということなのだと思います。

そうして、上にはそれを裏付けるような事実を列挙されていますが、さらにわかり易い事例もあります。新型ウイルス対処により、日本では通常インフルエンザ感染者が昨年よりも400万人も減少しているという事実があるのです。以下にこの記事のリンクを掲載します。
インフルエンザ昨年比400万人減 新型ウイルス対策と暖冬の効果か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、なぜインフルエンザが400万人もへったかといえば、

新型コロナウイルス騒ぎで以下のことをする人が増えたからです

・まともに手洗いする人
・咳エチケットが浸透

過去には、インフルエンザ対策はまるで放置だった人たちがまともに手洗い、マスクなどで咳エチケットをするようになったからでしょう。

もし新型ウイルス騒動がなければ暖冬とはいえ何十万人〜何百万人もの人たちがインフルエンザにかかって高熱だしたりしていたはずです。

新型コロナウイルスの騒ぎは行き過ぎの感もありますが、それに伴い400万人もインフルエンザ感染者が減ったということはすごいことです。通常のインフルエンザは今シーズンは400万人も減ったとはいえ、695万人が感染しているのです。

例年であれば、1000万人程度が感染しインフルエンザによる直接間接が原因で年間1万人が死亡しているのです。
出所:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

1000万人が感染し1万人が死んでいる通常のインフルエンザが毎年起きていても2週間も全国一斉休校にならないしイベントも中止にならないですし、時差通勤も在宅勤務もないしライブが中止になることはないです。

一方現時点で新型コロナウイルスは国内感染者230名で死亡は5名。
*河野太郎氏がツイッターで詳細を逐次報告
https://twitter.com/konotarogomame/status/1233727963666894848


検査体制が十分とはいえないところもあるので、感染者はさらにいるのかもしれませんが、それにしても230名です。通常のインフルエンザは695万人です。通常は、インフルエンザで毎年1万人がなくなっているのに現時点で新型コロナウイルスでは5名です。

もちろんこの先新型ウイルスが猛威をふるい多くの感染者や死者数がこれから出るかもしれないですが通常のインフルエンザ感染者1000万人で死亡1万人にまでなったとしても通常のインフルエンザ程度ということです。

通常のインフルエンザで1000万人もの感染者がいて1万人もの人が死んでも何の自粛もされず国民の多くは無関心で、手洗いもろくにしてこなかったということです。

ただし、過度に楽観的になるべきでもないと思います。通常のインフルエンザは素性がわかっているし、治療法も確立しています。それでも亡くなる人はいるわけですが、それにしても未知のウイルスへの対処法は慎重にしなければなりません。

ウイルスなどによる感染症は常に新たなタイプが出現します。今後どのような新たなタイプが出現するのかは定かではありません。現状では、新型コロナウイルスが過去に生じた新型ウイルスと比べてどの程度危険かも分かっていません。

重要なのは、一つの事実からでも異なる判断を引き出せる点を自覚することでしょう。今後、感染が増えていくのはほぼ確実です。その中で、専門家は厚生労働省や世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報を収集し、できることを見極めていくべきです。一般の人もできること、するべきことを考えると、現状では手洗いなどが重要であり、ある意味それで充分ともいえます。というより、一般の人は、それ以外にできません。

現状は過度に神経質にならずに、過度に楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベストであると考えます。ただし、この当たり前のことが、結構難しかったり、難しいときもあります。

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2020年2月29日土曜日

台湾の新型コロナ対策が「善戦」しているワケ―【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!


早川友久 (李登輝 元台湾総統 秘書)

新型コロナへの対応を高く評価され、支持率が急上昇している台湾の蔡英文総統。その政策を支える土台にあるものとは――?

蔡英文総統

 李登輝が台湾社会に大きく貢献したもののひとつに、全民健康保険制度がある。1995年にスタートした「全民健康保険」は、全国民はもちろん、居留証(外国人登録証に相当)を持つ外国人も加入が義務付けられる。それまでの台湾では、軍人や公務員、教師だけが社会保険制度を享受してきたが、その制度から漏れていた約4割の国民にも安心して医療を受けられる国民皆保険の環境を整備したのである。

 それと同時に、健康保険カードも導入した。このカードはのちにICチップが内蔵され、様々な情報を収められるようになった。氏名や生年月日などの個人情報のほか、いつ、どこの病院で診療を受けたのか、処方箋や薬物アレルギー、過去の予防接種記録、女性の場合は妊娠や出産に関する記録なども収められている。

マスクの「買い占め」を防止

 目下、日本も台湾もコロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大防止に躍起になっている。台湾は2003年にSARSを経験したこともあり、政府がとった動きは迅速かつ厳格だった。中国の感染拡大が報じられると、中国人の団体旅行客の入国を拒否したことを手始めに、矢継ぎ早に入国制限(現在は、中国籍の人間は一律入国拒否)した。

 また、折悪しく旧正月とぶつかったため、マスク工場が稼働しておらず、マスク不足のパニックかと思われたが、政府は即座に備蓄を放出すると発表。その後、買い占めや転売を防ぐため、台湾国内で製造されたマスクはすべて政府が買い取ったうえで「記名制」によるマスク販売を行った。

 この「記名制」で活用されたのが健康保険カードである。政府は身分証(外国人の場合は居留証)の末尾によって購入できる曜日を指定し、購入間隔を7日以上空けなければならないと定めた。薬局には必ず処方箋を処理するための健康保険カード読み取り機が設置されているため、ICチップに購入履歴が残る。一人が代理購入できるのは他の一人分までと決まっており、イカサマがやりにくい、公平性のある制度になっている。

 現在ではマスクの増産も順調で、来週あたりから購入できる枚数が増えるものと報じられている。台湾でマスク不足が叫ばれていた旧正月前は、日本から大量にマスクを持ち込む人の姿がニュースで流れたが、もう少し経てば、今度は台湾から日本へマスクが売られていく事態になるかもしれない。

感染拡大地域への「渡航歴」も登録

 また、2月21日には、感染拡大地域として指定されている日本や韓国などへの渡航歴を健康保険カードに登録すると発表された。仮に体調を崩して診察を受けた際、医師がその場で患者の渡航歴を確認できるようにするものだ。こうした取り組みは「性善説」でなく「性悪説」に立つものだ。患者のなかには、自宅隔離を嫌うなどして虚偽の申告をする場合もあるという。こうした「悪意」を出来うるかぎり排除して、徹底的に防疫しようという台湾政府の真剣さがうかがえる。一方、日本政府は中国から日本に入国する旅客に、(感染発生源とされる)湖北省への滞在の有無を自己申告させているという。国家の非常事態に、あまりにもお人よし過ぎるのではないか。

台湾と中国の「決定的な違い」

 中国は今回のコロナウイルス騒動で、東アジアどころか、全世界をパニックに陥れた。感染はむしろますます拡大している。それでもなお、中国は台湾がWHOに参加することを「『一つの中国』の原則のもとで許可」と発言した。SARSのときと同様、人命や健康よりも、イデオロギーを優先する国家なのだ。

 李登輝は2018年に訪れた沖縄での講演で次のように語った。

「中国の覇権主義に直面する台湾は、自主的な思想を持たなければならない。自分たちの道を歩む必要があるのだ。(中略)民主改革を成し遂げ、民主国家となった台湾は、もはや民族国家へと後戻りするべきではない。私たちは、幻の大中華思想から、脱却しなければならないのだ。台湾の国民が持つ共通の意識は『民主主義』であって『民族主義』ではないのだ」

 中国は「一つの民族に二つの国家はいらない」と明言している。中華民族には、中国はひとつだけ(中華人民共和国だけ)存在すればよく、中華民国は存在しない、という論法だ。李登輝は「民族主義」に走るべきではないと主張するが、個人的には、台湾が中国のいう「一つの中華民族」に入らない、別の「台湾民族」を打ち立てるべきではないかと考える。

 例えば、コロナウイルスの感染拡大の問題が報じられた当初から台湾政府の行動は素早かった。今のところ、台湾社会は冷静を保ち、感染者数も抑えられているようにみえる。ネット上では「我OK、你先領」というスローガンが踊った。「私たちは大丈夫だから、マスクが必要なところに優先して届けて」という意味である。

 政府が情報を公開し、国民の安全健康第一を掲げるとともに、国民も公徳心を発揮して行動する姿は、中国のそれと対をなすものである。これがまさに「台湾民族」を「中華民族」と決定的に異ならせる価値観になるだろう。台湾と中国の決定的な差を国際社会に示しつつ、やはり台湾が誇るべき最大の価値観は、李登輝が打ち立てた「民主主義」ではなかろうか。


早川友久(李登輝 元台湾総統 秘書)
1977年栃木県足利市生まれで現在、台湾台北市在住。早稲田大学人間科学部卒業。大学卒業後は、金美齢事務所の秘書として活動。その後、台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に3度の李登輝訪日団スタッフを務めるなどして、メディア対応や撮影スタッフとして、李登輝チームの一員として活動。2012年より李登輝より指名を受け、李登輝総統事務所の秘書として働く。

【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!

確かに今回の台湾政府の対応は、打てば響くような速さでした。衛生福利省の疾病管制署(CDC、疾病対策センター)は、1月15日に早くも同肺炎を法定伝染病に指定。20日にはCDCに専門の指揮所を開設しました。1月26日には中国本土観光客の台湾入りを躊躇なく禁止。2月6日には中国人全員の入国を禁止したほか、中国から戻った台湾人には、14日間の自宅待機を求めました。なお、CDCは米国にもありますが、日本にはないことも台湾で不思議がられています。

台湾・基隆に1月31日に寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から同肺炎の患者が出たことが2月1日に分かると、6日には国際クルーズ船の寄港を一切禁じました。8日夜には、台北などの住民約700万人の携帯端末に警報のショートメッセージを一斉発信。乗客約2700人の全遊覧先51カ所を赤丸で示した地図をつけ、乗客と接触した台湾人に、14日間の自己観察を求めました。

なお、陳時中・衛生福利相が毎日、出動服姿で記者会見を続けていることは、国民に安心感を与えています。台湾民意基金会が2月24日に発表した世論調査結果だと、蔡英文政権の感染対策を信頼する台湾人は85.6%に上っています。

陳時中・衛生福利相
ただし、運の良さもあります。今年1月の台湾総統選で蔡英文総統が圧勝し、中国当局が嫌がらせのため、中国人の台湾観光旅行を規制していました。この見方は、反政権側の国民もしぶしぶ認めています。国民党の対立候補、韓国瑜氏は観光を含む中国との交流強化を訴えていました。ある市民は「韓氏が当選して、中国の観光客が押し寄せていたら、今ごろどうなっていたか」と話しています。

それにしても、今回の打てば響くような台湾の反応は、今回の新型肺炎の直前にもみられらました。それについては、このブログにも掲載しています。当該記事のリンクを以下に掲載します。
台湾・蔡総統「一国二制度は信用破産」 新年談話で中国の圧力牽制―【私の論評】日本こそ、台湾のように『中国反浸透防止法』を成立させるべき(゚д゚)!
12月月31日、台北市内の立法院で、「反浸透法案」に反対し、本会議場で座り込む国民党の立法委員ら
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 台湾の蔡英文総統は1日午前、台北の総統府で新年の談話を発表し、「(台湾の)主権を守り民主主義と自由を守ることが総統として堅持すべき立場だ」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を改めて強調した。
    台湾の立法院(国会に相当)は12月31日の本会議で、中国を念頭に域外からの選挙運動などへの介入を禁止する「反浸透法案」を採決し、法案を提出した与党・民主進歩党の賛成多数で可決した。10日以内に蔡英文(さい・えいぶん)総統の署名を経て成立する。野党・中国国民党は、来月11日の総統選直前の立法は「100%選挙目的だ」と反発しています。
要するに、12月31日台湾立法院本会議で「反浸透法案」を採決、可決し、1月1日にはこの法律に関する内容も含めた、 蔡英文総裁による、新年の談話を発表したということです。

野党が反対しようがしまいが、とにかく必要とあらば、大晦日でも立法院で審議し、そうそうに法律を成立させ、元旦にはもう、それを発表するという超スビードぶりです。

日本の国会と、台湾の立法院を単純に比較するわけにはいかないと思いますが、いずれにしても、蔡英文総裁の並々ならぬ決意がみられます。

日本の国会といえば、野党は28日に衆院を通過した2020年度予算案について「新型コロナウイルス関連の予算が全く入っていない。考えられない」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と一斉に批判しました。3月2日に始まる参院予算委員会の審議では、初動態勢の在り方などを厳しく追及する方針だそうです。

安住氏は感染拡大に関し「安倍晋三首相がリーダーシップを取り、初期の段階から対応していれば後手後手に回ることはなかった」と酷評。国民民主党の玉木雄一郎代表は、野党が共同提出した予算案の組み替え動議が否決されたことに触れ「われわれの反対を一顧だにせず、数の力で成立させた」と指摘しました。

しかし、新型コロナウィルス対策には、新年度予算に計上されている予備費当面あてることにし、後から補正予算組めば良いことです。すでに組まれた2020年度予算は、すぐにでも実行しなければ、国政等に支障が出てしまいます。

このようなことは、予算に関する知識がある人なら、誰にでもわかることであり、野党の批判は、全くの筋違いです。野党は、コロナウィルスの撲滅よりも、これを政治問題にすることを企図しているとしか思えません。

それに、国会のはじめには、コロナウイルス関連ではなく、桜問題の追求をすると宣言していました。これでは、全く説得力がありません。野党としては、国会当初にはコロナウイルスよりも、桜問題のほうが重要だとしていたのですから、私はあの時点で全く呆れ返っていました。以下に、コレに関するフィフィさんと、世耕大臣のツイートを掲載しておきます。



野党は、長期間にわたる審議拒否を繰り替えたことでも、すっかり国民から信用を失っていることに気づかないのでしょう。台湾の野党は「反浸透法案」に大反対していましたが、さすがに審議拒否など思いもつかないことでしょう。

安倍政権も長期にわたったので、政権内にも足を引っ張る勢力が多くなったようですし、特に財務省とその走狗は安倍政権の邪魔ばかりしています。また、財界の親中・媚中派の蠢きが大きくなってきたようです。安倍政権としては、これらの勢力を弱体化させないとますます身動きがとれなくなるでしょう。

これらを弱体化させるには、まずは、目前のコロナウィルスの終息宣言をなるべく早くだせるようにし、大規模な減税なども含む十分な経済対策を行い、国民に安心感を与えたうえで、衆参両院同時選挙に打ってでるしかないでしょう。

日本の国会も台湾の立法府を見習ってほしいものです。

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2020年2月28日金曜日

北海道知事 道民に「緊急事態宣言」 外出控えるよう呼びかけ―【私の論評】デマにまどわされず、不要不急の外出は避け、うがい、手洗い等を励行しよう(゚д゚)!

北海道知事 道民に「緊急事態宣言」 外出控えるよう呼びかけ

北海道の鈴木知事は28日夕方、新型コロナウイルスの感染が道内で広がっているとして、28日から3週間の間、「緊急事態宣言」を出し、道民に向けて、特にこの週末の外出を控えるよう呼びかけました。



道は午後5時半から新型コロナウイルスに関する対策会議を開き、新型コロナウイルスの道内での感染拡大は深刻さを増しているとして「緊急事態宣言」を出しました。

期間は28日から3月19日までの3週間で、特にこの週末は道民に外出を控えるよう呼びかけました。

緊急事態宣言の内容

鈴木知事の名前で公表された緊急事態宣言は、次のような内容になっています。

「新型コロナウイルスの感染を防ぐため、オール北海道で取り組んできましたが、状況はより深刻さを増しています。早期の終息、そして皆さんご自身と大切な人の命と健康を守るため、お願いしたいことがあります。感染の拡大防止のため、この週末は、外出を控えてください。皆様のご理解とご協力を、よろしくお願いします」としています。


知事「まさに今が山場 この週末外出控えて」

鈴木知事は新型コロナウイルスに関する対策本部の会合で「北海道では現在までに63件の感染者が確認されており、感染拡大のスピードを抑える対策が必要になっている。まさに今が山場であり、1日も早く終息させる必要がある」と述べました。

また、「飲食店やスポーツジムなどでの接触の可能性が出てきいるので、週末については基本的には外出を控えてもらいたい」、「子どもたちには外出を控えてもらっており、大人も同じようにすることで、道民一丸となってこの週末、取り組みを進めていきたい。極めて深刻な状況であると認識し、行動してもらうようご協力をお願いしたい」と述べました。

知事「地域間での感染拡大のおそれ」

鈴木知事は対策本部の会合の後、臨時の記者会見を開き、北海道内の住民にこの週末の外出を控えるよう呼びかける「緊急事態宣言」を出したことを改めて説明しました。

そのうえで「きのう、集団感染の疑いがある6人が北見市で開催された展示会に参加していたことが判明し、札幌市からの参加者も確認されている。地域間での感染拡大のおそれが出てきている」と述べました。

また「緊急事態宣言を出したことを受けて、安倍総理大臣に日本で感染者が最も多い北海道の実情を直接伝える緊急の要望をしたい」と述べました。

さらに「北海道は全国で最も感染者が多く、今後は感染拡大防止のモデルを作り、国と一緒になって取り組んでいく」と述べました。

知事「観光客も行程変更を」

また道内を訪れる観光客に対しては「人がたくさんいる場所について行程を変更するなど、適切に判断してもらいたい」と述べました。

そのうえで「北海道は世界からすばらしいところだと認識され、観光客も多い。だからこそ早く終息させたい。あらゆる資源を投入し、全力で感染拡大の防止に取り組まなければならない」と述べました。

主な交通機関は通常どおり運行の見通し

北海道の主な交通機関は今のところ通常どおり運行される見通しです。

このうちJR北海道は「列車はビジネスなど様々な理由で利用する人がいて外出せざるを得ない人もいる。公共交通機関として列車を間引き運転するなどの対応は今のところ考えていない」として、週末も通常どおりのダイヤで運転する予定だとしています。

また全日空と日本航空も、週末に北海道を発着する便について、今のところ通常どおり運航する予定だということです。

4人感染確認の旭川市では…

旭川市では28日までに飲食店の経営者や保育士など4人が新型コロナウイルスに感染しているのが確認されています。

鈴木知事が「緊急事態宣言」を出したことについてJR旭川駅前を歩いていた、60代のアルバイト従業員の女性は「感染が広がっているので、緊急事態宣言を出すことはいいと思う。ただ、宣言を出すだけでなく、しっかりサポートもしてほしい」と話していました。

小売店 営業時間短縮の動きも

北海道の小売り各社の中には営業時間を短縮する動きがある一方で、通常どおり営業するところもあります。

このうち札幌市中央区のデパート「さっぽろ東急百貨店」は3月1日から18日までの間、開店を朝10時半と30分遅くするほか、閉店も午後7時半と30分早める方針です。

一方、「イオン北海道」は「道民の食生活を支える」として、週末は通常どおり営業する予定だとしています。

専門家「一定の効果 外出は必要最小限に」

感染症の予防対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫 特任教授は「今は非常に大事な時期なので、娯楽などで人の動きが活発になる週末に外出を控えることは、感染を抑制する観点から一定の効果があると考えられる。買い物や薬の補充などやむにやまれぬ理由で外出しなければならない場合は、外に出る人を1人に絞り、短時間ですますなど外出の機会、時間を必要最小限にしてほしい」と話しています。

【私の論評】デマにまどわされず、不要不急の外出は避け、うがい、手洗い等を励行しよう(゚д゚)!

私が現在住んでいるのは、札幌市です。北海道の感染状況は深刻です。愛別町で感染者が出たのは、私自身もショックでした。あの町、随分前に訪れたことがありますが、本当にのどかな田舎なのに、「なぜ?」と思ってしまいました。

あの町で感染者がでたのですから、いつどこで感染してもおかしくない状況だと思いました。この状況をみて、私は、行動を変えました。それまでは、外出時にマスクはしていたのですが、それ以外に医療用のゴーグルをつけるようにしました。

マスクに関しては、新型コロナウイルスが流行る前から、冬には外出時にいつもしていました。特に冬は、うがい、手洗いも励行していたので、そのおかげでしょうか20年近く風邪やインフルエンザにかかったことはありません。

少し前に、町内会の集まりがあるとされていて、それは明日土曜日に予定されていましたが、町内会長に中止を具申しました。これを中止しの運びとりました。

2月19日、北海道では道内3番目の感染者となる40代男性(Dさん)が「市中感染の疑いが高い」と発表されました。いつどこで感染したか把握できない状況を、「市中感染」と呼びます。

北海道と札幌市は28日、10歳未満の男児を含む計12人が新たに新型コロナウイルスに感染していたと発表しました。北海道で感染が確認されたのは66人となりましたた。(2月28日現在)。

このうち6人は、オホーツク海側の北見市で、今月中旬、生活関連用品の展示会に参加していました。6人のうち3人は食事をともにしていたとされています。北海道は感染者の集団「クラスター」が発生したものとみています。

生活関連用品の展示会があった「北見綜合卸センター」

釧路、旭川、苫小牧、そして札幌。ただでさえ広い道内で、まったく接点の見出せない感染者が増加しており、『調べようがない』と、北海道庁は頭を抱えています。ただ、札幌の『雪まつり』で、北海道内外に感染が広がったのは事実です。

1月31日から2月11日まで開催されていた雪まつりには、大勢の中国人が来ていました。湖北省の団体旅行客も入国していたことがわかり、このなかに感染者がいた可能性は否定できません。(札幌市役所関係者)

2月21日、中富良野町に住む小学生兄弟の感染が確認されました。北海道庁の聞き取り調査によると、二人は父母とともに会期後半の雪まつりを訪れていたといいます。

市中感染が疑われるDさんは、大手広告代理店の系列会社に勤め、雪まつり期間中は本部ブースにも詰めていました。

このブースで接触していたと見られる人は約130人。とはいえ、不特定多数が集まる会場ですので、全員と連絡が取れるかはわかりません。

雪まつりを訪れた道外の感染者も増えてきて、いくら調べてもキリがないです。実は、調査自体も徐々に難しくなってきています。

行動履歴を詳細に教えてくれない濃厚接触者がいますし、雪まつりの実行委員会もマイナスイメージになることを恐れています。

それでも、北海道内で本格的な流行を避けるためには調べ続けるしかないのです。

北海道の感染率が高いのは、北海道の特殊事情によるところが大きいとみられてます。観光庁の2018年調査によると、中国人旅行者の道内での宿泊者数は1~2月、延べ約60万人で、首位の東京都(約70万人)に肉薄しています。今年1~2月に開かれ、202万人が訪れた「さっぽろ雪まつり」では、スタッフ2人が感染したほか、道内外の複数の感染者が発症前に訪れたとされています。

会場は屋外のため感染リスクは高くないはずですが、札幌医大の横田伸一教授(微生物学)は「ホテルやレストラン、観光施設で感染が広がった可能性は否定できない」と語っています。寒さの厳しい北海道では、建物の気密性が高く、地下道が張り巡らされていることが感染リスクを高めたとの指摘もあります。

政府の専門家会議のメンバーで東北大の押谷仁教授は「当初は中国人中心だったが、現在は日本人の間で『クラスター』と呼ばれる患者の集団発生が複数起きていると考えられる。感染拡大を食い止めるには疫学調査を徹底し、クラスターを封じ込めるしかない」と話しています。

さて、今週週末は北海道の方々は、不要不急の外出はやめるべきです。北海道以外の方々もそうすべきだと思います。

それと、もう一つ気をつけなければならないのはデマです。石狩管内の50代女性は2月下旬、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で複数の知人から、ほぼ同じ内容のメッセージが届いたそうです。

文面は、中国湖北省武漢市で活動した医療関係者の情報とした上で「武漢ウイルスは耐熱性がなく、26―27度の温度で死にます。そのため、お湯をたくさん飲む、お湯を飲ませれば予防できる」などと書かれていました。

北大人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人(あやと)教授(ウイルス学)は「全く根拠がありません。人間の体温は通常、36度前後。仮にウイルスが27度で死滅するなら、症状が出ることはありません。お湯を飲んだとしてもウイルスは鼻の奥や肺でも増えるため、意味はありません」と否定しました。


LINEの文面には「冷たい水、特に氷水を飲まないでください」との呼び掛けもありました。高田教授は「冷たい飲み物が体温を下げてしまうことはありますが、飲むことでウイルスが増えることはありません」と説明。その上で、「喉には体内に入ったウイルスを押し出す機能があり、乾燥するとその機能が弱まります。風邪などの一般的な感染症と同じく、喉を潤したり室内の適度な湿度を保つことは一定の予防効果があります」と助言しました。

この類のデマはこれからも出回る可能性もあります。テレビなどでも、煽り報道もあります。このようなデマや煽りに惑わされることなく、手洗い、マスク、うがいなどを励行して、感染を防ぎましょう。

終息宣言が出るその時まで、ウイルスとの闘いは終わりません。

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2020年2月27日木曜日

まだ新型肺炎の真実を隠す中国、このままでは14億人の貧困層を抱える大きいだけの国になる=鈴木傾城―【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!


 2月中旬の北京の地下鉄

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。

最初から最後まで真実を隠し、今も規制を敷いている

新型コロナウイルスは中国でどのような状況になっているのか、誰も分からないと言っても過言ではない。

政府発表では2020年1月30日の段階で7,800人だったが、当時から現場は「10万人以上の患者がいる」と切実に訴えており、その乖離は壮絶なものがある(編注:2月24日現在、中国の保険当局によると感染者数は7万7,658人とされています)。

中国人ですらも中国共産党政権の発表など信じていない。中国共産党政権は、常に自分たちの都合に合わせて数字を歪曲し、情報隠蔽してしまう。中国では真実を言ったら公安当局に連行されてしまう。

日本でもアメリカでも政権に反対の人は堂々と反対運動を繰り広げて何事もなく日常生活を送っているのだが、中国では同じことをやったら無事に済まない。政権に不都合な人間は「みんな消される」のである。

新型コロナウイルスが封じ込められなかったのも、中国共産党政権は当初、情報を隠蔽していたからだ。いや、最初から最後まで真実を隠し、今もインターネットにも強い規制を敷いている。

情報を隠蔽する。都合の悪い真実はねじ曲げる。それが中国なのである。

中国の検索エンジンでは「絶対に検索できない言葉」もあって、たとえば「天安門事件」と検索しても何も引っ掛からない。それは中国政府は国民に知って欲しくない言葉だからだ。

そのため、今の若年層は天安門事件というものがあったことすらも知らない人もいる。

「何を知らないのか知らない」という状況になる

大陸に住む中国人は、中国政府が許可した情報だけアクセスできて、中国政府が隠したい情報は何も知らないままにされている。

「何を知らないのか知らない」という状況になるのだ。

都合の悪い情報はどんどん検閲されていく。この中国共産党政権の悪しき体質は新型コロナウイルスの蔓延で世界中が知ることになった。

中国はすべてにおいて、そうなのだ。中国では凄まじい大気汚染や環境破壊で癌で死んでいく人間が毎年数百万人レベルで出現している。しかし被害者は隠蔽されているだけで、今も依然として中国を覆い尽くしている。

中国共産党政権の都合の悪い事実は決して知らされない。消される。何も許されない。

次世代を作り出す技術革新は、その多くは自由な環境の中で生まれる。「あれは駄目、これは駄目、なぜ駄目なのか考えるな、政府に従え」という環境であれば、何も生み出せない。

政府が許可したものだけ、海外からパクリで持ってきてそれを運用するだけなので、すべてがワンテンポ遅れる。

そのパクリも、ハッキングやスパイ行為で情報を盗んで行われるので、情報が盗めなくなったら終わりだ。すべて盗んだものだから、そこから独創的な技術革新が生まれることもない。

そもそも下手に技術革新を進めていくと政府の都合の悪い領域に達する可能性もあるので何もできない。これが今の中国の現状なのである。

こうした情報統制や隠蔽体質は、通常の民主主義社会であれば、やがて薄まっていくのだが、中国は共産党の一党独裁なので逆にどんどん強まっている。

報道の自由などまったくない。北朝鮮と大差がない。

なぜ、中国政府は情報統制に走っているのか?

報道の自由と言えば、日本の報道の自由度も低いが、それもそうだろう。

日本では朝日新聞や毎日新聞などが捏造に歪曲に印象操作を行い、中国・韓国・北朝鮮の反日もまったく報道せず、誰が日本で売国スパイをしているのかすらも報道しないような体質なのだ。これで報道の自由が上がるわけがない。

しかし、中国の情報隠蔽というのは、もはやそんなレベルではなく、言論封殺と言っても良い状況だ。

中国では「国家安全法」で、中国にとって都合の悪い外国人もテロリストと決めつけたり、中国に不利な情報を報じる外国人ジャーナリストを国外追放したりしている。

それに飽き足らず、「反テロ法案」というものもあって、中国政府が「お前はテロリスト」と決めれば、その人物はテロリストになる。

たとえば、中国政府は海外から支援を受けたNGO団体の活動家を中国から追い出しているが、その根拠として「国家安全法」や「反テロ法」を持ち出している。

さらに習近平政権は「海外NGO管理法」を制定させて、中国のすべての人権向上のための活動を事実上、完全閉鎖に追いやった。

なぜ、これほどまで中国政府は情報統制に走っているのか。

言うまでもない。中国政府はもう政権運営に行き詰まっており、アメリカのドナルド・トランプとも対立して政治的にも経済的にもボロボロになっているからだ。

しかし、汚職・環境破壊・格差・経済不振を何としてでも隠し通して、中国共産党の一党独裁を維持し続けたいと思っている。

中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない

中国共産党では中国の未来はない。しかし、中国はこの共産党の一党独裁なので、政権交代ができない。共産党が駄目になったときの受け皿がない。つまり、中国共産党が終わるときが中国の終わるときだ。

中国は格差問題が解消できないどころかますます広範囲に広がっている。こうしたことから、中国の内陸部では頻繁に暴動が起きている。

しかし、中国は弾圧国家であり、こうした暴動も警察や軍隊の激しい暴力で鎮圧させている。この暴動が抑えきれなくなれば、中国は崩壊するが、もし北朝鮮のように弾圧が延々と続くとしたらどうなるのか。

中国は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくということになる。そうであった場合、中国という国は先進国に向かうのではなく、中進国から貧困国へと向かっていく。

14億人の貧困層を抱えるただの図体だけが大きな貧困国になってしまうのだ。

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。

中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。

中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になって崩壊してしまうので、絶対に民主化も自由も認めない。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、徐々に途上国へと戻っていくだけだ。

今のまま推移するのであれば、中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない。多くの日本人は漠然と中国が豊かになっていく想像ばかりしているが、実はその逆の動きもあることを知るべきだ。

【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!

中国経済は、新型コロナウィルスが蔓延する前から、成長の限界に直面していました。投資効率の低下、個人消費の伸び悩みに加え、輸出を増加させることも難しい状況でした。
米中貿易戦争の影響に加え、効率性が低下する中で投資が累積され、中国の生産能力は過剰になっていました。このブログでも何度か指摘してきたとおり、中国は貯蓄過剰となり、そのため世界経済全体で需要が低迷するという状況になっていました。
あらゆる商品・製品の需要に陰りが出始めたことに加え、そもそも、中国の最大の輸出相手である、米国経済が成長し続けることも難しい状況です。その上、中国では生産年齢人口が減少しています。労働力の減少は、中国では潜在成長率の下振れ要因ともなります。
常識的に考えると、この状況を打破するためには、中国政府は構造改革を進めなければならないはずです。急務なのが、不良債権の処理です。1990年代初頭の資産バブルが崩壊した後のわが国のケースを見ても、不良債権処理は経済の安定に欠かせません。
中国の4大国有銀行は、2016年1-6月期に合計1303億元(約2兆円)の不良債権を処理したが・・・

中国政府もその重要性はわかってはいるようです。同時に、国内の不満を抑えるために目先は投資を増やさざるを得ません。しかし、成長期待(期待収益率)が低下する中で中国政府が公共投資などを増やすことは、不良債権の増大につながるだけです。
中国では、不良債権問題という“灰色のサイ”が、どんどん大きくなっています。灰色のサイとは、発生確率は高いが、対応があまりに難しく見ているしかないリスクのことです。
昨年の、社会融資総量を見ると、シャドーバンキングの代表形態とされる信託貸出(ファンド経由の貸付)、銀行引受手形が急増しました。特に、信託貸出の増加は見逃せないです。
公の統計がないので推論によらざるを得ないですが、中国人民銀行による金融緩和や財政政策を通して供給された資金が行き場を失い、利ザヤを稼ぐためにシャドーバンキングに流れ込んでいた可能性があります。
中国経済の今後の展開を考えると、短期的には、インフラ投資や減税などから景気が幾分か持ち直すことはあるかもしれません。
しかし、長期的に中国経済は一段と厳しい状況を迎えることになるでしょう。リーマンショック後の経済が投資頼みで推移してきただけに、中国経済は成長目標に合わせて投資を積み増さざるを得ないです。その結果、中国の債務問題は深刻化し、灰色のサイは一段と大きくなるでしょう。
中国の「灰色のサイ問題」はかなり深刻だった

以上が、新型コロナウィルスが蔓延する、前までの中国経済の実体です。


多くのエコノミストが、この状況をみて、世界の工場として成長率を高め、投資によって成長を維持しようとしてきた中国が、“中進国の罠”を回避できるか否かに、関心を高めていました。
このブログでも何度が述べていたように、今後中国が中進国の罠に陥ることを回避するのは難しいでしょう。

中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。

中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。

しかし、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。日本は、60%台です。米国に至っては、70%台です。

中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施をしましたが、結局のところ、その目論見は失敗しました。中国商務省は昨年12月29、30の両日、2019年の商務行政を総括して20年の方針を決定する「工作会議」を北京市で開き、低迷する自動市場へのてこ入れを図っていくことなどを確認しました。

しかし、このような試みはことごとく、うまくいかないようです。これは、中国政府は国営企業の成長力を高めることを目指しているからです。市場原理に基づく効率的な資源配分よりも、中国では共産党政権の権能に基づいた経済運営が進んでいます。

それは、国有企業に富が集中し、民間部門との経済格差の拡大につながる恐れがあります。それは、民間企業のイノベーション力を抑圧・低下させることにもなりかねない。

歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、かなり難しいです。

本当は、この問題を解決するには、このブログでは、定番のように述べていますが、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けられないのです。

これらによって、かつての先進国が歩んできたように、中国も多くの中間層を生み出し、これら中間層が自由に社会経済活動を行えるようにするしか、経済を発展させる道はありません。

そのためには、この記事の冒頭の記事のように、情報の自由化は必須ですが、中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になり、統治の正当性を失い、崩壊してしまうので、絶対に認めません。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、中進国の罠にはまりこみ、そこから先は、徐々に途上国へと戻っていくだけなのです。

最近の新型コロナウイルスは無論、中国経済に悪影響を及ぼします。しかし、過去の歴史などをみると、戦争や大災害、疫病により経済がかなり低迷した国々においても、その災害や疫病が終息すると、復興など過程において、災害や疫病などが発生する前よりもはるかに大きな消費活動が生まれ、比較的短期間で経済は元通りになるのが通例です。

今回の新型コロナウイルスが終息した直後には、中国でも比較的はやく経済が復興するかもしれませんが、それは新型コロナウィルスの蔓延の前の状態にもどるというだけで、諸問題は何も解決しておらず、そこから先はしばらく横ばいか下がっていくことになります。

新型コロナウィルスが蔓延直前の中国が、これを隠蔽せずに、世界に向かって情報公開し、世界の力も借りて迅速にこれに立ち向かっていたとしたら、中国はかつて米国などが信じていたように、豊かになり発展する可能性もあるという見方になったかもしれませんが、そうではありませんでした。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

ここ数年で、中国は中進国の罠から抜け出ることはできず、その後は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくことになるでしょう。その果てにあるのは、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家です。

しかし、このアジアの凡庸な独裁国家は、軍事的には北朝鮮よりははるかに強大です。先進国のような過程を経て富を生み出すことのできない中国は、やがて八方塞がりとなり、それを解消するために、かつて中国が、東トルキスタンやチベットへ侵略したように、周辺国への侵略を開始するかもしれません。

あるいは、直接侵略しなくても、「一帯一路」などで、経済的に侵略して、周辺国の富を簒奪しようと試みるかもしれません。

そのようなことは、絶対に許すことはできません。我が国をはじめ、周辺諸国は、これから先中国が経済的に弱っても、安全保障面では油断すべきではありません。

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