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2020年2月27日木曜日

まだ新型肺炎の真実を隠す中国、このままでは14億人の貧困層を抱える大きいだけの国になる=鈴木傾城―【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!


 2月中旬の北京の地下鉄

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。

最初から最後まで真実を隠し、今も規制を敷いている

新型コロナウイルスは中国でどのような状況になっているのか、誰も分からないと言っても過言ではない。

政府発表では2020年1月30日の段階で7,800人だったが、当時から現場は「10万人以上の患者がいる」と切実に訴えており、その乖離は壮絶なものがある(編注:2月24日現在、中国の保険当局によると感染者数は7万7,658人とされています)。

中国人ですらも中国共産党政権の発表など信じていない。中国共産党政権は、常に自分たちの都合に合わせて数字を歪曲し、情報隠蔽してしまう。中国では真実を言ったら公安当局に連行されてしまう。

日本でもアメリカでも政権に反対の人は堂々と反対運動を繰り広げて何事もなく日常生活を送っているのだが、中国では同じことをやったら無事に済まない。政権に不都合な人間は「みんな消される」のである。

新型コロナウイルスが封じ込められなかったのも、中国共産党政権は当初、情報を隠蔽していたからだ。いや、最初から最後まで真実を隠し、今もインターネットにも強い規制を敷いている。

情報を隠蔽する。都合の悪い真実はねじ曲げる。それが中国なのである。

中国の検索エンジンでは「絶対に検索できない言葉」もあって、たとえば「天安門事件」と検索しても何も引っ掛からない。それは中国政府は国民に知って欲しくない言葉だからだ。

そのため、今の若年層は天安門事件というものがあったことすらも知らない人もいる。

「何を知らないのか知らない」という状況になる

大陸に住む中国人は、中国政府が許可した情報だけアクセスできて、中国政府が隠したい情報は何も知らないままにされている。

「何を知らないのか知らない」という状況になるのだ。

都合の悪い情報はどんどん検閲されていく。この中国共産党政権の悪しき体質は新型コロナウイルスの蔓延で世界中が知ることになった。

中国はすべてにおいて、そうなのだ。中国では凄まじい大気汚染や環境破壊で癌で死んでいく人間が毎年数百万人レベルで出現している。しかし被害者は隠蔽されているだけで、今も依然として中国を覆い尽くしている。

中国共産党政権の都合の悪い事実は決して知らされない。消される。何も許されない。

次世代を作り出す技術革新は、その多くは自由な環境の中で生まれる。「あれは駄目、これは駄目、なぜ駄目なのか考えるな、政府に従え」という環境であれば、何も生み出せない。

政府が許可したものだけ、海外からパクリで持ってきてそれを運用するだけなので、すべてがワンテンポ遅れる。

そのパクリも、ハッキングやスパイ行為で情報を盗んで行われるので、情報が盗めなくなったら終わりだ。すべて盗んだものだから、そこから独創的な技術革新が生まれることもない。

そもそも下手に技術革新を進めていくと政府の都合の悪い領域に達する可能性もあるので何もできない。これが今の中国の現状なのである。

こうした情報統制や隠蔽体質は、通常の民主主義社会であれば、やがて薄まっていくのだが、中国は共産党の一党独裁なので逆にどんどん強まっている。

報道の自由などまったくない。北朝鮮と大差がない。

なぜ、中国政府は情報統制に走っているのか?

報道の自由と言えば、日本の報道の自由度も低いが、それもそうだろう。

日本では朝日新聞や毎日新聞などが捏造に歪曲に印象操作を行い、中国・韓国・北朝鮮の反日もまったく報道せず、誰が日本で売国スパイをしているのかすらも報道しないような体質なのだ。これで報道の自由が上がるわけがない。

しかし、中国の情報隠蔽というのは、もはやそんなレベルではなく、言論封殺と言っても良い状況だ。

中国では「国家安全法」で、中国にとって都合の悪い外国人もテロリストと決めつけたり、中国に不利な情報を報じる外国人ジャーナリストを国外追放したりしている。

それに飽き足らず、「反テロ法案」というものもあって、中国政府が「お前はテロリスト」と決めれば、その人物はテロリストになる。

たとえば、中国政府は海外から支援を受けたNGO団体の活動家を中国から追い出しているが、その根拠として「国家安全法」や「反テロ法」を持ち出している。

さらに習近平政権は「海外NGO管理法」を制定させて、中国のすべての人権向上のための活動を事実上、完全閉鎖に追いやった。

なぜ、これほどまで中国政府は情報統制に走っているのか。

言うまでもない。中国政府はもう政権運営に行き詰まっており、アメリカのドナルド・トランプとも対立して政治的にも経済的にもボロボロになっているからだ。

しかし、汚職・環境破壊・格差・経済不振を何としてでも隠し通して、中国共産党の一党独裁を維持し続けたいと思っている。

中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない

中国共産党では中国の未来はない。しかし、中国はこの共産党の一党独裁なので、政権交代ができない。共産党が駄目になったときの受け皿がない。つまり、中国共産党が終わるときが中国の終わるときだ。

中国は格差問題が解消できないどころかますます広範囲に広がっている。こうしたことから、中国の内陸部では頻繁に暴動が起きている。

しかし、中国は弾圧国家であり、こうした暴動も警察や軍隊の激しい暴力で鎮圧させている。この暴動が抑えきれなくなれば、中国は崩壊するが、もし北朝鮮のように弾圧が延々と続くとしたらどうなるのか。

中国は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくということになる。そうであった場合、中国という国は先進国に向かうのではなく、中進国から貧困国へと向かっていく。

14億人の貧困層を抱えるただの図体だけが大きな貧困国になってしまうのだ。

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。

中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。

中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になって崩壊してしまうので、絶対に民主化も自由も認めない。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、徐々に途上国へと戻っていくだけだ。

今のまま推移するのであれば、中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない。多くの日本人は漠然と中国が豊かになっていく想像ばかりしているが、実はその逆の動きもあることを知るべきだ。

【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!

中国経済は、新型コロナウィルスが蔓延する前から、成長の限界に直面していました。投資効率の低下、個人消費の伸び悩みに加え、輸出を増加させることも難しい状況でした。
米中貿易戦争の影響に加え、効率性が低下する中で投資が累積され、中国の生産能力は過剰になっていました。このブログでも何度か指摘してきたとおり、中国は貯蓄過剰となり、そのため世界経済全体で需要が低迷するという状況になっていました。
あらゆる商品・製品の需要に陰りが出始めたことに加え、そもそも、中国の最大の輸出相手である、米国経済が成長し続けることも難しい状況です。その上、中国では生産年齢人口が減少しています。労働力の減少は、中国では潜在成長率の下振れ要因ともなります。
常識的に考えると、この状況を打破するためには、中国政府は構造改革を進めなければならないはずです。急務なのが、不良債権の処理です。1990年代初頭の資産バブルが崩壊した後のわが国のケースを見ても、不良債権処理は経済の安定に欠かせません。
中国の4大国有銀行は、2016年1-6月期に合計1303億元(約2兆円)の不良債権を処理したが・・・

中国政府もその重要性はわかってはいるようです。同時に、国内の不満を抑えるために目先は投資を増やさざるを得ません。しかし、成長期待(期待収益率)が低下する中で中国政府が公共投資などを増やすことは、不良債権の増大につながるだけです。
中国では、不良債権問題という“灰色のサイ”が、どんどん大きくなっています。灰色のサイとは、発生確率は高いが、対応があまりに難しく見ているしかないリスクのことです。
昨年の、社会融資総量を見ると、シャドーバンキングの代表形態とされる信託貸出(ファンド経由の貸付)、銀行引受手形が急増しました。特に、信託貸出の増加は見逃せないです。
公の統計がないので推論によらざるを得ないですが、中国人民銀行による金融緩和や財政政策を通して供給された資金が行き場を失い、利ザヤを稼ぐためにシャドーバンキングに流れ込んでいた可能性があります。
中国経済の今後の展開を考えると、短期的には、インフラ投資や減税などから景気が幾分か持ち直すことはあるかもしれません。
しかし、長期的に中国経済は一段と厳しい状況を迎えることになるでしょう。リーマンショック後の経済が投資頼みで推移してきただけに、中国経済は成長目標に合わせて投資を積み増さざるを得ないです。その結果、中国の債務問題は深刻化し、灰色のサイは一段と大きくなるでしょう。
中国の「灰色のサイ問題」はかなり深刻だった

以上が、新型コロナウィルスが蔓延する、前までの中国経済の実体です。


多くのエコノミストが、この状況をみて、世界の工場として成長率を高め、投資によって成長を維持しようとしてきた中国が、“中進国の罠”を回避できるか否かに、関心を高めていました。
このブログでも何度が述べていたように、今後中国が中進国の罠に陥ることを回避するのは難しいでしょう。

中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。

中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。

しかし、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。日本は、60%台です。米国に至っては、70%台です。

中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施をしましたが、結局のところ、その目論見は失敗しました。中国商務省は昨年12月29、30の両日、2019年の商務行政を総括して20年の方針を決定する「工作会議」を北京市で開き、低迷する自動市場へのてこ入れを図っていくことなどを確認しました。

しかし、このような試みはことごとく、うまくいかないようです。これは、中国政府は国営企業の成長力を高めることを目指しているからです。市場原理に基づく効率的な資源配分よりも、中国では共産党政権の権能に基づいた経済運営が進んでいます。

それは、国有企業に富が集中し、民間部門との経済格差の拡大につながる恐れがあります。それは、民間企業のイノベーション力を抑圧・低下させることにもなりかねない。

歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、かなり難しいです。

本当は、この問題を解決するには、このブログでは、定番のように述べていますが、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けられないのです。

これらによって、かつての先進国が歩んできたように、中国も多くの中間層を生み出し、これら中間層が自由に社会経済活動を行えるようにするしか、経済を発展させる道はありません。

そのためには、この記事の冒頭の記事のように、情報の自由化は必須ですが、中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になり、統治の正当性を失い、崩壊してしまうので、絶対に認めません。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、中進国の罠にはまりこみ、そこから先は、徐々に途上国へと戻っていくだけなのです。

最近の新型コロナウイルスは無論、中国経済に悪影響を及ぼします。しかし、過去の歴史などをみると、戦争や大災害、疫病により経済がかなり低迷した国々においても、その災害や疫病が終息すると、復興など過程において、災害や疫病などが発生する前よりもはるかに大きな消費活動が生まれ、比較的短期間で経済は元通りになるのが通例です。

今回の新型コロナウイルスが終息した直後には、中国でも比較的はやく経済が復興するかもしれませんが、それは新型コロナウィルスの蔓延の前の状態にもどるというだけで、諸問題は何も解決しておらず、そこから先はしばらく横ばいか下がっていくことになります。

新型コロナウィルスが蔓延直前の中国が、これを隠蔽せずに、世界に向かって情報公開し、世界の力も借りて迅速にこれに立ち向かっていたとしたら、中国はかつて米国などが信じていたように、豊かになり発展する可能性もあるという見方になったかもしれませんが、そうではありませんでした。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

ここ数年で、中国は中進国の罠から抜け出ることはできず、その後は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくことになるでしょう。その果てにあるのは、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家です。

しかし、このアジアの凡庸な独裁国家は、軍事的には北朝鮮よりははるかに強大です。先進国のような過程を経て富を生み出すことのできない中国は、やがて八方塞がりとなり、それを解消するために、かつて中国が、東トルキスタンやチベットへ侵略したように、周辺国への侵略を開始するかもしれません。

あるいは、直接侵略しなくても、「一帯一路」などで、経済的に侵略して、周辺国の富を簒奪しようと試みるかもしれません。

そのようなことは、絶対に許すことはできません。我が国をはじめ、周辺諸国は、これから先中国が経済的に弱っても、安全保障面では油断すべきではありません。

【関連記事】

2016年4月12日火曜日

【米中新冷戦】中国では報道されない「パナマ文書」 人民が驚きも怒りもしないワケ ―【私の論評】パナマ文書が暴く、図体の大きなアジアの凡庸な独裁国家に成り果てる中国(゚д゚)!


習主席に「パナマ文書」が直撃したが… 
 この1週間、世界を席巻しているトピックといえば「パナマ文書」である。史上最大の機密文書漏えいで、アイスランドのグンロイグソン首相は辞任を表明し、英国のキャメロン首相は政治生命の危機を迎えている。

「米国と中国がすでに新たな冷戦に入っている」「しからば日本はどうすべきか」を論じる当連載でも、触れずにいられない大事件である。

民主的な国家では、この種のスキャンダルは政治家にとって命取りになりかねない。だが、独裁国家におけるインパクトは限定的ともみられる。

「パナマ文書」に記載のある世界各国の法人、個人の情報1100万件超のうち、実は、件数が最多なのは中国である。習近平国家主席をはじめ、最高指導部7人のうち3人の親族がタックスヘイブン(租税回避地)に登記された会社の株主に名を連ねていることが、すでに報じられた。

しかし、こうした情報は中国国内では報道されないばかりか、発覚直後、中国のインターネットでは「パナマ」という単語すら検索不可能となってしまった。

筆者は先週、来日していた中国メディア関係者と会う機会があったので、「パナマ文書」についても聞くと、彼は次のように語った。

「報道はないが、多くの国民が『パナマ文書』について知っている。外国と行き来する中国人は多いし、在外の親族や友人から情報を得る人もザラにいる。策を講じて、『壁』(=中国当局によるインターネットの検閲システム)を超え、外国のサイトを見る者も少なくない」

ただ、習氏の親族の件を知っても、中国人はさほど驚いたり怒ったりしないという。日本では「腐敗撲滅キャンペーン」を実施してきた習氏自身が、親族名義で外国に財産を隠していたとなると、国民の怒りが爆発するのではないかと報じられたが、実際はさにあらずと。なぜか? メディア関係者は続けた。

「中国では『汚職をしない政治家や官僚は、この世に1人もいない』という人間界の真理を、皆が知っているからだ。資産を外国に移すことも、程度の差こそあれ、多くの国民がやっている。あなた(筆者)が追及している、中国人が日本の不動産を買いあさっている件も同じことでしょ」

彼は一笑に付しつつ、一方で中国メディアが連日、国内のショッキングな事件報道に力を入れ、「パナマ文書」が大きな話題にならないように陽動作戦を展開していることも明かしてくれた。

中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙「環球時報」は「『パナマ文書』流出の最大の利得者は米国だ」という趣旨の論説を掲載した。そのまま中国政府の公式見解とはいえず、米国の陰謀というのは早計だとしても、確かに現段階での米国のダメージは意外なほど小さい。まったく的外れな見立てともいえない。「パナマ文書」をめぐる、米中の情報戦の佳境はまさにこれから、であろう。

 有本香(ありもと・かおり)


【私の論評】パナマ文書が暴く、図体の大きなアジアの凡庸な独裁国家に成り果てる中国(゚д゚)!

最近は、中国のインターネット関連の情報遮断システムである「金盾」は周知の事実となったので、あまり報道されませんが、ブログ冒頭の記事でも『壁』という言葉で報道されているように、今回ものパナマ文書に関しても「金盾」は中国国内の情報統制にかなり活躍しているようです。

金盾(きんじゅん、中国語: 金盾工程、拼音: jīndùn gōngchéng)とは、中華人民共和国本土(大陸地区)において実施されている情報化された検閲システムです。

全体主義の危険性を訴えたジョージ・オーウェルのSF小説『1984年』に登場する監視システム「テレスクリーン」になぞらえられたり、「赤いエシュロン」「サイバー万里の長城」「ジンドゥンプロジェクト」などの呼び名も存在します。

中国国内のインターネット利用者に対して、中国共産党にとって都合の悪い情報にアクセスできないようにフィルタリングする金盾のファイアウォール機能は、"Great Wall" (万里の長城)をもじってGreat Firewall(グレート・ファイアウォール)と呼ばれています。

グレート・ファイアウォールの概念図(想像図)
このシステムに拒まれて、中国では今回パナマ文書について、多くの人は知らないようです。このシステムについて、以下にそれに関する動画を掲載しておきます。保守言論人の西村幸祐氏による解説です。



この動画は、2008/04/19 にアップロードされたものです。「金盾」は2008年に完成されたとしています。このシステムは、人工知能も含むシステムのようです。そうして、もともとは中国だけではなく、全世界の情報を統制するためにつくられたようです。

この当時は、日本のインターネットに関しても中国側が検閲を入れているような内容になっていますが、現在はそのようなことはないようです。現在では、中国側の検閲が他国にまで及ばないようにされているのだと思います。実際現在だと、日本国内でチベットなどを検索するとかなりの数がでてきます。

いずれにしても、中国国内では、今でも厳重な検閲が入っています。実際に中国では「パナマ文書」関係の検索は一切できません。

しかし、今回の震源地となったICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)のサイトには様々な情報が掲載さています。そのリンクとサイトのホームページのパナマ文書関連のリンクのバナーの画像を以下に掲載します。
https://www.icij.org/

このサイト、少し前までは見ることができたのですが、アクセスが殺到しているためでしょうか、ここ何日かは見られないようです。おそらく、一部の人のみが見られるようにしているのだと思います。

特に中国関連の中身をもう一度見ようと思っていたのですが、残念なが見られなかったので、このサイトから引用した記事はないかと探していたところ、以下のような記事が見つかりました。
習近平大ピンチ!? 「パナマ文書」が明かした現代中国の深い“闇”習近平一族の資産移転も載っていた

詳細は、このサイト(現代ビジネス)をご覧いただくものとして、以下にICIJのサイトから引用した内容を以下に引用させていただきます。

まずは、習一族の資産移転に関して、次のように記されていました。
鄧家貴は、不動産開発で財を成し、1996年に斉橋橋と結婚して、「紅い貴族」となった。斉橋橋は、かつての革命の英雄でトップ・オフィシャルにいた習仲勲の娘だ。斉橋橋の弟が、中国国家主席で中国共産党トップの習近平である。ブルームバーグ・ニュースは2012年、鄧夫妻が何百万ドルもの不動産を保有していて、他の資産も保有しているという調査レポートを暴露した。 
「モサック・フォンセカ」の内部資料によれば、義理の弟が政界の出世街道を駆け上がっていった2004年に、鄧家貴は英国領ヴァージン諸島に、オフショア・カンパニーを設立した。その会社名は、シュープリーム・ビクトリー・エンタープライズで、鄧家貴が唯一の取締役で株主である。だがこの会社は2007年に、英国領ヴァージン諸島の登記から削除された。 
2009年9月、鄧は別の二つの英国領ヴァージン諸島の「転売用会社」の単独の取締役兼株主となった。会社名はそれぞれ、ベスト・エフェクト・エンタープライズと、ウェルス・ミング・インターナショナル・リミテッドである。「モサック・フォンセカ」は、鄧がそれらの会社の「判子」を得るのを手助けした。これら2社が、何のために利用されたのかは不明だ。 
時を経て、習近平は中国を統治する党中央政治局常務委員のトップ9入りした。習が2012年の共産党大会で総書記に、また2013年に国家主席に選ばれた時までに、この英国領ヴァージン諸島の2社は、休眠状態となった。
このサイトにも掲載してありましたが、この記述を読むだけでは、この習近平主席の姉夫婦が実際に行った行為が、分かったようで分かりません。

習近平のファミリービジネスはこのブログにも以前掲載したことがあります。これについては、以下にその記事のリンクを掲載しておきますので、その記事をご覧になってください。
人民解放軍に激震 習政権が軍部のカネの流れを徹底調査 聖域を破壊 ―【私の論評】習の戦いは、中国の金融が空洞化し体制崩壊の危機状況にあることを露呈した(゚д゚)!
今度は人民解放軍にメス。習氏のもくろみは吉と出るか。写真はブログ管理人挿入。以下同じ。
このブログでは、習近平のファミリービジネスの詳細を記すとともに、チャートも掲載しました。以下にそのチャートを掲載します。


この記事は、2015年5月26日のものですが、この記事にも、習主席のファミリーが海外のタックスヘイブン(租税回避地)に蓄財している一端が、一昨年のはじめに国際調査報道協会(ICIJ)のジェームズ・ボール記者と英紙ガーディアンの報道で明らかになっていたことを掲載しました。

今回のパナマ文書は、これらの情報の物的証拠ともいえるものです。これが公表されたということは、単にICIJや英紙ガーディアンのスッパ抜きどころではなく、大激震であるということです。確かに中国人の多くは、もうこのような事実自体は珍しいことでもないので、表面上では今更あまり驚き、怒ったりしないかもしれませんが、反習近平派は、大いに勢いづいていることでしょう。

なお、このブログ記事で私は以下のように結論づけました。
中国では、建国以来毎年2万件もの暴動が発生していたとされています。それが、2010年からは10万件になったとされています。中国の一般人民の憤怒のマグマは頂点に達しているということです。 
それでも、今までは幹部や、富裕層は少なくとも、巨万の富を蓄えさせてくれたということで、中国の現体制を支持してきたと思います。しかし、習近平の反腐敗キャンペーンにより、幹部や富裕層も現体制を支持しなくなることが考えられます。 
そうなると、様々な不満分子が乱立し、現体制を変えるか、潰そうという動きが本格化する可能性が高いです。そうなれば、現体制は崩壊します。その日は意外と近いと思います。 
習のこの戦いは、中国の金融が空洞化し現体制の崩壊も含む危機状況にあることを露呈したとみるべきです。
現体制の崩壊は、パナマ文書が公になってさらに加速したものと思います。ブログ冒頭の記事では、結論として、これを米中の情報戦の一環として位置づけていますが、私はその側面は否定しないものの、この情報は中国の内情をよく示すものでもあると思います。

震源地パナマの国旗柄のビキニを着用する女性

ちなみに「パナマ文書」には、習近平主席の他にも、中国共産党の新旧幹部たちの親族のケースを暴露している。ICIJのホームページから、その要旨を訳出したものも、このサイトに掲載されていたので、それも以下に掲載します。
【現役幹部】 
〈劉雲山〉
共産党トップ7の劉雲山(序列5位)の義理の娘である贾Liqingは、2009年に英国領ヴァージン諸島に登記されたウルトラ・タイム・インベストメントの取締役兼共同経営者だった。

張高麗・常務委員、筆頭副首相〉
共産党トップ7の張高麗(序列7位)の義理の息子である李Shing Putは、英国領ヴァージン諸島に登記された3つの会社の株主である。3社とは、ゼンノン・キャピタル・マネジメント、シノ・リライアンス・ネットワーク・コーポレーション、グローリー・トップ・インベストメントである。

【引退幹部】 
〈李鵬・元首相〉
李鵬は、1987年から1998年まで首相を務めた。李鵬元首相の娘である李小琳と彼女の夫は、コフィック・インベストメントという1994年に英国領ヴァージン諸島に編入された会社のオーナーである。この会社のファンドは、産業部品をヨーロッパから中国に輸入するのをサポートするためのものだと、李小琳の弁護士たちは述べている。その所有権はは長年、いわゆる「無記名株」(日本では1991年に廃止)という手法で保管されてきた。

〈贾慶林・元中国人民政治協商会議主席〉
2012年まで中国共産党序列4位だった贾慶林元常務委員の孫娘であるジャスミン・李紫丹は、スタンフォード大学に入学した2010年、ハーベスト・サン・トレイディングという名のオフショア・カンパニーのオーナーになった。以来、ジャスミン李は、20代のうちに、驚嘆すべき巨額のビジネスを行った。彼女の英国領ヴァージン諸島にある二つのペーパー・カンパニーは、北京に30万ドルの資本金の会社を創立するのに使われた。この二つのペーパー・カンパニーを使って、彼女は自分の名前を公表せずにビジネスを行うことができた。

〈曽慶紅・元国家副主席〉
2002年から2007年まで国家副主席だった曽慶紅の弟、曽慶輝は、チャイナ・カルチュラル・エクスチェンジの取締役を務めていた。この会社は当初ニウエに登記され、2006年になってサモアに移された。

【死去・失脚幹部】 
〈胡耀邦・元総書記〉
1982年から1987年まで中国共産党のトップを務めた故・胡耀邦元総書記の息子、胡徳華は、フォータレント・インターナショナル・ホールディングスの取締役であり、実質上のオーナーだった。この会社は2003年に、英国領ヴァージン諸島に登記された。胡徳華は、父親が総書記だった時代に使っていた中南海の公邸の住所で登記していた。

〈毛沢東・元主席〉
1949年の建国から1976年の死去まで中国共産党のリーダーだった毛沢東の義理の孫息子である陳東昇は、2011年、英国領ヴァージン諸島に、キーン・ベスト・インターナショナル・リミテッドを登記した。生命保険会社と美術品オークション会社のトップを務めている。陳は、キーン・ベストの唯一の取締役であり、株主である。

〈薄煕来・元中央政治局員、重慶市党委書記〉
失脚した薄煕来元中央政治局員の妻、谷開来は、英国領ヴァージン諸島にペーパー・カンパニーを所有し、その会社を経由して南フランスに豪華な別荘を購入していた。2011年に、愛人だった英国人ネイル・ヘイウッドに、このペーパー・カンパニーのことを暴露されそうになり、ヘイウッドを殺害。その2週間後に、ペーパー・カンパニーのオーナーから退いた。

以上の9人である。これからマネーロンダリングの額を始めとする具体的な情報が、どんどん出てくるに違いない。特に、現役の習近平(序列1位)、劉雲山(序列5位)、張高麗(序列7位)の動向に注目である。
この現代ビジネスのサイトには、「パナマ文書」に関する世界各国のニュースとして、英BBCによる中国と関連した興味深いレポートを掲載していましたので、それも以下に引用します。
多くの中国人は、社会的に不安定な中国から、自分の資産を移そうと、四苦八苦している。中国共産党の幹部さえ、自分の財産を海外に移している。 
今週明らかになったモサック・フォンセカ社から流出した「パナマ文書」は、その実態の一端を明らかにした。同社の最大の顧客が中国で、1万6000社にも上る中国系企業の資産を管理していたのだ。 
資産をこっそり移しているのは、政府幹部ばかりではない。多くの中国人富裕層が、香港を経由して、資産をこっそり海外に移していた。そして移した資産の多くを、不動産に変えていた。中国人は昨年、およそ350億ポンドもの海外不動産を購入した。 
中国人は、国内の法律により、年間3万5,000ポンドしか海外送金できない。だが、減速する中国経済の影響で自分の貯蓄が消えることを恐れる人や、当局から財産を隠したい人にとって、資産を密かに国外に持ち出すことは、必要なリスクなのだ。 
中国政府は資金の国外流出を、間違いなくとても不満に思っているが、これを完全に阻止するのは難しい。そのため、中国の最も裕福な人々は、今日も資金を国外に持ち出して使っている。これは彼らにとって自己保身行為と言えるが、それによって中国は、より危うくなっているのだ。
今年に入って、中国国内では、「異変」が起こっていました。習近平政権が「爆買い」を阻止する措置に着手し始めたようなのです。

中国の出入国管理法は、一般国民にパスポートを支給するようになった'90年代半ばに制定されました。それによると、一人5000米ドル以上の海外への持ち出しを禁じていますが、そんな20年も前の法律は、これまで有名無実化していました。それを今年の1月から、空港で厳格に検査するようになったのです。

海外での『爆買い』に関しても、帰国時の空港で厳格にチェックし、どんどん課税していくようです。つまり、いくら海外で免税品を買っても、中国に持ち込む際に高額の課税をされる可能性があるわけです。

これにより、中国人が海外旅行で買った腕時計の関税は、30%から60%へ、化粧品やアルコール類に関しては、50%から60%へと引き上げられました。「爆買い」を防止し、国内消費を高めようという措置です。

それでも「爆買い」が止まらなければ、この関税率を今後、もっと上げていく可能性があります。本来なら、中国製品の品質を向上させたり、偽物をなくしたりすれば、「爆買い」など自ずとなくなるはずなのに、全くもって本末転倒の措置です。

現在の中国政府のキャッチフレーズは、「中国の夢」である。でも、庶民のささやかな夢は、そうやってどんどん制限されていきます。一方で、「中国の夢」を実現した中国人は、ペーパー・カンパニーを作ったり、不動産投資などで、資産を海外に移転させるようになりました。

「パナマ文書」は、そのような現代中国が抱える深い闇を、図らずも世界に露呈させたのだった。

そうして、この闇がある限り、中国は中進国の罠(中所得国の罠)からは逃れられないでしょう。


現在中国の個人消費は、GDPの35%に過ぎません。これが日本を含めたたの先進国では60%くらいが普通です。米国に至っては70%です。

個人消費の低さを今のまま放置しておけば、中国は中進国の罠から逃れることはできません。しかし、今の中国では放置する以外に方法はありません。

ゾンビ企業の退治をしても、それだけではこの状況は変えられません。そのためには、今の中国のように、富めるものから富めなどという、トリクルダウンのようなことを期待しても、無理です。

そのためには、このブログで過去に何度か掲載してきたように、経済的な中間層を数多く輩出し、彼らが自由に社会・経済活動ができるようにする必要があります。

そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通ることはできません。

他の先進国もこのような道を辿ってきました。日本もその例外ではなく、明治維新以降にそれを行ってきました。そのような素地があったからこそ、戦後の高度経済成長を達成できたのです。

現在でも、中国よりははるかに実体経済は強い国です。しかし、過去20年ほどは酷いデフレを放置してきたので、経済が低迷してきただけです。構造改革などせずとも、これから、追記金融緩和策を実施し、10%増税は見送り、積極財政に転ずれば、かなりの経済成長が期待できます。

しかし、中国は違います。民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革をしないかぎり、今後経済成長はできません。これは、相当困難というより、絶望的です。

そうなると、考えられる中国の将来は、「中国の夢」ではなく、いくつかの国に分裂して、そのうちの1つか2つの国が、中進国の罠から脱出するという将来と、分裂せずに、そのままの状態で、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になるという将来です。

「中国の夢」にはもうすでにかなりの綻びがあることが、パナマ文書で明らかになった

おそらく、中国の将来は、後のほうのアジアの凡庸な独裁国家になるということでしょう。なぜなら、中国は経済・社会は遅れる一方、人民を弾圧するための、人民解放軍、公安警察、城管などは、他の国などでは想像できないほど強力だし、情報操作・統制も格段に優れているからです。それは、これからさらにパナマ文書が解析されるうちに、より一層鮮明になることでしょう。

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2014年8月3日日曜日

【コラム】不振の原因を究明しないサムスン電子―【私の論評】原因ははっきりしすぎている! もともとサムスンは、戦術のみで戦略のない日本の下町の業績の悪い町工場のような凡庸な企業が図体がでかくなったというだけ(゚д゚)!

 【朝鮮日報コラム】不振の原因を究明しないサムスン電子

 
サムソン(左)とアップル(右)のスマートフォン

サムスン電子が再び「非常経営」に入った。今年第2四半期(4-6月)にスマートフォン(多機能携帯電話)事業が予想より不振だったことから、危機打開を目指した格好だ。飛行時間10時間以内の海外出張では役員もエコノミークラスを利用することとし、出張費用を20%カットすることも決めた。ソウル市瑞草区の社屋にある経営支援室所属の社員150-200人を水原市などの生産現場に投入する動きも進んでいる。

危機意識は現在のサムスン電子を生み出した力だ。サムスンの成長史を見ると、危機意識が経営の重要なキーワードだった。「女房と息子以外は全て変えろ」と命じた李健熙(イ・ゴンヒ)会長の「新経営宣言」は、変化がなければ滅ぶという危機意識の表れだ。「5年、10年後にどうやって食べていくかを考えると、背筋に冷や汗をかく」という発言も同様だ。

こうした危機意識は未来戦略室を経由し、系列企業にも広がっている。「順調なサムスンが騒ぎ過ぎだ」という反応も聞かれるが、経営環境の変化に非常体制で対応してきたことが成功の要因であることを否定はできない。

この記事の続きはこちらから(゚д゚)! 

チョ・ジュンシク産業2部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【私の論評】原因ははっきりしすぎている! もともとサムスンは、戦術のみで戦略のない日本の下町の業績の悪い町工場のような凡庸な企業が図体がでかくなったというだけ(゚д゚)!

サムスンのデジカメのキャンペーンガール1

朝鮮日報は、国外・国内共に工作資金尽きた。 韓国といえば、東芝の半導体の研究データが韓国のライバル企業に不正流出した事件で、半導体メーカーの元技術者、杉田吉隆容疑者(52)は転職先の韓国企業をわずか3年足らずで事実上、解雇されていた。海外企業が求める人材は二極化し、末端の技術者では技術だけを吸い取られ、“使い捨て”にされる実態が浮かぶ。

これについては、以下の記事が良くまとまっていますので、そのURLを以下に掲載します。
「狙いは技術」日本人は“使い捨て” 韓国企業、危うい引き抜きの実態 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にサムソン関係の部分のみコピペさせていただきます。
 東芝の半導体の研究データが韓国のライバル企業に不正流出した事件で、半導体メーカーの元技術者、杉田吉隆容疑者(52)は転職先の韓国企業をわずか3年足らずで事実上、解雇されていた。海外企業が求める人材は二極化し、末端の技術者では技術だけを吸い取られ、“使い捨て”にされる実態が浮かぶ。 
送検のため警視庁戸塚署を出る杉田吉隆容疑者 本年3月15日
 日本企業からの技術流出が顕在化したのは、20年以上前にさかのぼる。90年代には、週末のソウル行きの航空機に日本人技術者が大量に搭乗し、韓国のサムスン電子などで技術を伝授する見返りに高額の報酬や接待を受けていたという。 
 「日本型モノづくりの敗北」の著書がある元半導体技術者の湯之上隆さん(52)も知人経由で勧誘を受けたことがあり、「サムスンは次の技術開発に何が必要かを検討し、あらかじめリストアップした日本人技術者の中から適任者を探し、高額な年俸で引き抜いていた」と振り返る。 
 ヘッドハンティングを手がける会社関係者によると、日本人技術者の流出は日本企業でリストラが相次いだ約2年前がピーク。自ら海外企業に売り込む技術者も出始め、雇用条件は一時よりも下がっている。 
 一方で、マネジメント能力も備えた技術者には「年収は前職の2、3倍。車やマンション、通訳に、家族が訪れる際の往復航空券」といった好条件が用意されており、求められる人材は二極化しているという。
このように、サムソンは結局、日本はもとより、韓国内やその他の外国の技術者を高額な年俸で引き抜き、必要な技術をどんどん手元に引き寄せました。

しかし、これはアップルやGoogleのように、長期的戦略にのっとり、次の10年の戦略を成就するために、基本的技術で現状では自社にない部分を穴埋めするというようなものではなく、とにかくここ1~2年で販売する製品のため、もともとほとんどない技術を手元にひっばってきていたというのが実態です。

こうして駆り集められた技術者は、サムソンの業績が直近では悪いので、ほとんどが解雇されています。全くの"使い捨て"です。

このような技術力もない、長期戦略もない、人も大事にしない企業とは、どのように形容するが相応しいでしょうか?:結局、町工場の経営者の経営陣が運用する「凡庸な企業」だっということです。

そういわれてみれば、サムソンは、アップルのようなそれまでにない、全く新たな製品を市場に投入したことがあったでしょうか。

アップルや、マイクロソフトだって、何から何まで自分たちで全く新しいものを開発して市場に投入してきたわけではありません。そんな芸当は、とても現実社会では実施できるものではありません。

現在、アップルやマイクロソフトのパソコンに搭載されている、OSはともに、ゼロックス社のものが原型になっています。しかし、そうはいっても、最初に市場に本格的に投入したのは、アップルであり、その後さらに本格的に導入して、しかも、他社製品に搭載できるようにオープンにしたのは、マイクロソフトです。

このように、全く新しいものではなく、原型があったにしても、現在使われているパソコンOSの原型を最初に世の中に広めたのは、アップルとマイクロソフトであるということです。

さらに、iPadや、iPhoneなどのタブレット端末や、スマートフォンをこの世に最初に広めたのはアップルでした。

これにも原型があります、実はiPhoneやiPadがアップルにより市場に投入される5年ほど前に、すでにノキアではこれとほんど変わらない製品のプロトタイプを開発していました。ノキア、これらはまだ市場投入するには早過ぎると判断しました。

スマートフォンの市場投入でアップルの後塵を拝したノキア

市場への投入時期を間違えたため、アップルに先を越され、後塵を拝することになってしまったのです。

以上のように、アップルやマイクロソフトだって、最初に原型があって、その原型を改良して、使いやすいようにして、適切な時期に市場に投入して成功しています。

そうして、このようなやり方は、リミックスともも呼ばれていて、単なるモノ真似ではありません。

それについては、このブログにも掲載したことがありますので、そのURLを以下に掲載します。
『海賊のジレンマ』が教えてくれる「未来のアイデアを育てる」方法−【私の論評】単なる天才のひらめきで、イノベーションはできない体系的なRemixのみが社会を変える!!

レディー・ガガのアルバムの写真

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事よりリミックスについて一部分のみを掲載させていただきます。
新しいものが、全くの無から生まれてくることはありません。バッハも、同時代の先輩格のビバルディやコレルリの曲を何曲も編曲して新しい楽曲を生み出しています。特に、バロック時代にはそのようなことは、日常茶飯事に行われていました。今のように著作権法などはありませんでした。このようなことを行っていくうちに、バッハも自分独自の素晴らしい楽曲を作成するに至りました。 
アインシュタインだってそうです。彼自身が、自分がやったことは、過去の人がやったことに1%を付け加えたに過ぎないと言っています。その1%が素晴らしいことだったのです。彼でさえ、99%は、リミックスだったのです。 
特に、社会変革に関する企画に関してはそういうことがいえます。今まで社会でどの時代のものであれ、うまくいったことは、すべて手本にすべきです。近江商人など昔の商人のやったことだって、多いに役立ちます。だから、過去に行われたこと、現在多くの人が行っていることは、徹底的に調べて、まずは、著作権法、商標法などに違反しないかたちで、複写・変形・結合することによって、新しいものを生み出すべきです。 
複写・変形は、すぐに著作権侵害をしてしまう恐れがあります。ただし、誰が最初にやったのかわからない形で、世の中に広まってものは、そのようなことはありません。複数のものを結合して新しいものをつくってしまえば、それは最早、複写・変形の域を超えています。だからこそ、結合が重要なのです。そうして、努力を重ねて、さらに運がよければ、アインシュタインのように、1%の全く新しいものを付け加えられるかもしれないです。そのとき私たちは天才と呼ばれるのかもしれません。しかし、天才と呼ばれることがなくても、商売や事業は十分やっていけます。だから、凡人は、まずは、リミックスすべきなのです。 
リミックスは、今のIT企業の基本的な戦術です。リミックスをしない企業は、すぐにも敗退することでしょう。しかし、戦術は戦術であって、戦略ではありません。たとえば、スターバックスのCEOも語っているように、店数を増やすこと自体は戦術であって、戦略ではありません。基本的な戦略があって、はじめて戦術が生きてくるわけです。

現代では、リミックスという戦術がなければ、多くの企業は競争に負けてしまいます。しかし、優れた技術があっただけでは、それが自社製であろうが、他社製であろうが、必ず戦術面でも、他社に遅れをとってしまいます。

やはり、最低10年くらいを見通した、戦略が必要不可欠です。その戦略にあわせて、戦術を練り、リミックスをしていくのです。

サムソンは、戦略なしに、目先のリミックスだけ繰り返してきました。だからこそ、今日のような姿になってしまっのです。

そうして、それを後押ししてきたのが、日本のデフレ・円高政策です。戦略がなくても、戦術だけで、サムソンがやってこれたのは、これによるものです。これに関しても、このブログに掲載したことがありますので、そのURLを以下に掲載します。
特許権侵害に莫大な賠償命令で韓国パクリ商法に限界が到来か―【私の論評】韓国は、ウォン安、円高というぬるま湯に漬かってきただけ、技能工も育てられなく、部品・素材産業がない韓国経済に未来はない!! 

超円高・超ウォン安というぬるま湯に漬かってきた韓国経済?
これも、詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部、韓国の過去のぬるま湯ぶりを示す部分だけ以下にコピペさせていただきます。
サムスンや現代自動車など韓国のいわゆる超優良企業など、そもそも、最初から幻想にすぎません。韓国の優良企業のすべては、日本の水準からするとすべて凡庸な企業にすぎません。 
国内がかなりのインフレになることと引き換えに、ウォン安にして、しかもつい先日まで、日銀の円高・デフレ誘導により、超ウォン安、超円高により、ぬるま湯に漬かり、わが世の春を謳歌していたにすぎません。 
とにかく、超ウォン安・超円高ですから、部品や素材など日本から購入したほうが、自国で製造するよりもはるかに安く、楽に手に入り、それを組み立てることにより躍進してきただけで、韓国企業にまともな業績・成果などありません。韓国内のパクリでない産業もこの域を出ません。
私自身は、パクリそのものは、上でリミックスを肯定しているせけですから、否定はしません。しかし、戦略なきリミックスは、戦略のない戦術と同意語です。

最初は、うまくいっても最後は失敗に終わります。最近のノキアがまさにそうですし、現在のサムソンがそうです。

超ウォン安は、サムソンの失敗をはやめただけであって、仮にウォンが通常の範囲に収まっていたとしても、いずれ失敗したと思います。


サムソンのデジカメのキャンペーンガール2
再度結論をここで、述べますが、サムソンはもともと戦術はあるものの、戦略のない、日本の業績の悪い町工場のような凡庸な企業に過ぎなかったのであり、まともな戦略を持たない限り、生き残ることはできません。

そうして、現状の韓国では、先進国のこれからを思い描くことも出来ず、このままではサムソンの行く末は破綻でしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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