おととし、東京都知事選などに出馬した元航空幕僚長の田母神俊雄氏(67)が政治資金を流用した疑いがあるとして、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出しました。
業務上横領の疑いで特捜部の家宅捜索を受けたのは、東京・千代田区にある田母神氏の資金管理団体の事務所などです。
田母神氏は、おととし、都知事選と衆院選に立候補し落選。去年2月に、 「政治資金を会計責任者が使い込んでいた」などと発表し、資金管理団体の収支報告書で、「横領による使途不明金」としておよそ5000万円を計上していました。
しかし、去年12月、田母神氏の選挙対策本部長を務めた『インターネット放送会社』の社長らが、「田母神氏本人も政治資金流用に関与していた」として、田母神氏と元会計責任者らを東京地検に刑事告発していました。
「我々から見れば7000万~8000万円の使途不明金がある。私的な流用がメイン。その他にも自分の仲間に配ったのではないか」(都知事選の選対本部長「日本文化チャンネル桜」 水島 総 社長)
告発した社長は取材に対し、「都知事選後、田母神氏らの指示で、毎週50万円から100万円が引き出され、個人的な使途や選挙運動への謝礼などに使われた」としています。特捜部は押収した資料を分析し、不透明な政治資金の使われ方について、解明を進めるものとみられます。(07日17:42)
【私の論評】衆院選に出馬したことが田母神氏を狂わせた?
田母神氏の疑惑が、最初に表面化したのは、昨年の2月のことでした。これについては、このブログにも掲載したことがあるので、その記事のURLを以下に掲載します。
【田母神事務所不明金】「ショック。会計責任者に少なくとも3千万円横領された」…政治資金の使途不明問題で田母神氏が記者会見―【私の論評】戦後保守の終わりの始まりか?田母神氏と、水島氏の両氏にみる現代人に必要不可欠な"虚実皮膜の間"の真実(゚д゚)!
事務所スタッフによる政治資金横領について、 厳しい表情で語る田母神俊雄氏昨年2月19日 |
昨年(ブログ管理人注:2014年)2月の東京都知事選や12月の衆院選に出馬した元航空幕僚長、田母神俊雄氏(66)の政治資金の一部が使途不明となっている問題で、田母神氏は19日、都内で記者会見し「少なくとも3千万円が会計責任者に横領されていた。信頼していただけにショックだ」と話した。
田母神氏側の説明によると、田母神氏の政治団体 「田母神としおの会」には都知事選後に約6千万円の残金があったが、衆院選前には約1千万円に減少。調査の結果、会計責任者の50代男性が横領を認めた。横領したカネは高級クラブでの遊興費や生活費などに充てていたという。さて、このように記者会見をしていた田母神氏ですが、今回は東京地検特捜部が強制捜査ということで、昨年の2月からほぼ1年くらいの間をおいてからの強制捜査ということです。地検特捜部は、この1年間様々な調査を行い、立件のための準備を行った上で強制調査に踏み切ったのですから、容疑はかなり濃厚なものに違いありません。
上の記事で、『インターネット放送会社』の社長とでていますが、これはチャンネル桜の水島総(みずしまさとる)社長のことです。ブログ冒頭にもあるように、水島社長らが、「田母神氏本人も政治資金流用に関与していた」として、田母神氏と元会計責任者らを東京地検に刑事告発していました。
2010年2月、チャンネル桜と密接な関係にある政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」が設立されると、その会長として田母神氏が擁立されました。同会の実質的な運営は、幹事長に就任したチャンネル桜の創設者で社長でもある水島総(みずしまさとる)氏が指導的役割を果たしました。この団体の設立により、2014年2月の東京都知事選挙に田母神氏を候補として突き進んでいくことになりました。
水島氏は、田母神氏を刑事告発していましたが、ではなぜこのような人物の選挙応援をしたのか、それも遠い過去のことではなく、告訴よりも1年内外の都知事選、衆院選の応援です。選挙が終わって1年もしないうちに、田母神氏を告訴しています。
しかし、田母神氏を選挙で応援していた人たちは、水島氏だけではありません。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。
都知事選、台風の目は田母神氏 ネットで人気断トツ 応援団に著名人ズラリ―【私の論評】時代背景や、独特のキャラクターから田母神都知事が誕生する可能性はかなり高い(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、保守派の著名人がこぞって、田母神氏を応援していたことを掲載しました。
その部分のみ以下にコピペします。
「もし私が東京都民だったなら、田母神俊雄氏に投票する」
大ヒット映画「永遠の0」の原作者で、本紙でエッセー「大放言」(火曜)を連載する作家の百田尚樹氏は18日、自身のツイッターでこうつぶやいた。百田氏以外にも、田母神氏応援団には、日本維新の会の石原慎太郎共同代表や、同党の平沼赳夫国会議員団代表、評論家の西部邁氏、京都大学の中西輝政名誉教授、作曲家のすぎやまこういち氏、経済評論家の三橋貴明氏、ジャーナリストの大高未貴氏ら、著名人がズラリと並ぶ。
そうして、この田母神氏には、これらに限らず、保守論壇の多くの人々が応援していました。それは、都知事選の頃の下のポスターをご覧いただければわかります。
私も、このようなことから、当時は単純に田母神氏が都知事になるかもしれないという期待を持っていました。しかし、その期待は実現はしませんでした。しかし、その後の衆院選は無理だと思いました。何しろ、知事選で落ちているのですから、衆院選はさらに難しいと思いました。
しかし、それでも、水島社長と、「頑張れ日本!全国行動委員会」それに多くの保守論壇の人たちは衆院選へと突き進み、負けてしまいました。本来であれば、次の機会を待つべきだったと思います。
そうして、今回の強制調査です。保守論壇の方々は、田母神氏という人物を、見定めることができなかったということです。そうして、私自身も反省を含めて、先のブログにも掲載したように、私の座右の銘としている、"虚実皮膜の間"という言葉をあげたいと思います。
これは、原典は詳しくは知りませんが、もともとは芸は実と虚の境の微妙なところにあることを指し。事実と虚構との微妙な境界に芸術の真実があるとする論です。江戸時代、近松門左衛門が唱えたとされる芸術論だそうです。
そこから発展して、現在では、「虚実」はうそとまこと。虚構と事実。「皮膜」は皮膚と粘膜。転じて、区別できないほどの微妙な違いのたとえとされています。「膜」は「にく」とも読みます。
この言葉、非常に含蓄があるもので、現在正しいとされていることであっても、条件や状況が変われば、正しいとはいえない場合もおうおうにしてあります。だから、「これが絶対に何が何でも正しい」などということは、この社会ではあり得ません。
これは、企業などの組織の中でも同じことです。会社の中で職位が何であれ、私たちは、組織の中で一人ひとりが独立していなければなりません。自分の足で立っていなければなりません。自分の考えを持たなければなりません。しかし会社組織には、多数決という考え方がないことも事実です。責任範囲の狭い人と、責任の範囲の広い人の考え方が最終的に異なった場合、どんなに反対者が多くても、責任範囲の広い人である職位の高い人の意見が優先するのは言うまでもありません。
ただし、だからといって組織人として、自分の意見がないということも許されるものではありません。だから、上司を信じることは良いのですが、上司に頼りすぎるのも良くありません。また、部下をみる場合には、性善説でみる場合と、性悪説で見る場合とを臨機応変に変えていかなければなりません。性悪説でのみ部下と接すれば、そこには信頼関係がなくなります。そのような見方だけをする上司には、部下は誰もついていきません。
かといって、性善説だけで見れば、管理上のリスクが常について回ることになります。時と場合によって、臨機応変に変えなければなりません。片方の見方しかできないようであれば、管理者失格です。管理者や経営者の立場においては、いずれの立場からでも見られるようにしておかなければなりません。
だから、組織人は、組織と個、善と悪に関して、いつもこれらのバランスを図っていく必要があります。そうして、虚実皮膜の間という言葉どおりに、場合によっては個と組織、性悪説と性善説の間を揺れ動きつつ、その場、その場で判断をしていく必要があります。どんな場合にも、全体のためだけとか、個のためだけということはあり得ず、絶対善、絶対悪もないわけで、このバランスをとるという意味合いもこめて、私は「虚実皮膜の間」という言葉を座右の銘の一つとしています。
保守論壇の人々が、田母神氏を見る場合にも、"虚実皮膜の間"という見方ができれば、今回のような騒動にはならなかったと思います。
特に、水島氏やチャンネル桜、「頑張れ日本!全国行動委員会」の人々や保守論壇の人々も、このような見方ができていれば、少なくとも、都知事選で負けた田母神氏を衆議院議員選挙に担ぎあげるということはしなかったのではないかと思います。
冷静に考えれば、都知事選で負けたことで、もっとまともに反省していれば、そうして性善説と、性悪説のはざまに立って、田母神氏が本当に、国政選挙で勝てる人物なのか、そもそも、短い期間で準備ができるのかなどを虚心坦懐に反省して、衆院選に出馬することなど取りやめていれば、今回のような疑惑はそもそも、起こらなかったかもしれません。
そもそも、衆議院選挙に出馬しなければ、衆院選に向けて、選挙運動資金をさらに調達する必要性もありませんでした。短期間に、膨大な資金を集めたということが、今回の出来事を誘発してしまったかもしれません。
良く、「たらねば」の話をしても意味がないともいわれますが、今回の出来事を機に、保守論壇の人々や、私のように言葉の真の意味で保守的立場をとっていると考える人たちは、今回の出来事を他山の石として、今後の保守のあり方を再検討すべきと思います。
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そうして、今回の強制調査です。保守論壇の方々は、田母神氏という人物を、見定めることができなかったということです。そうして、私自身も反省を含めて、先のブログにも掲載したように、私の座右の銘としている、"虚実皮膜の間"という言葉をあげたいと思います。
これは、原典は詳しくは知りませんが、もともとは芸は実と虚の境の微妙なところにあることを指し。事実と虚構との微妙な境界に芸術の真実があるとする論です。江戸時代、近松門左衛門が唱えたとされる芸術論だそうです。
近松門左衛門の肖像 |
そこから発展して、現在では、「虚実」はうそとまこと。虚構と事実。「皮膜」は皮膚と粘膜。転じて、区別できないほどの微妙な違いのたとえとされています。「膜」は「にく」とも読みます。
この言葉、非常に含蓄があるもので、現在正しいとされていることであっても、条件や状況が変われば、正しいとはいえない場合もおうおうにしてあります。だから、「これが絶対に何が何でも正しい」などということは、この社会ではあり得ません。
これは、企業などの組織の中でも同じことです。会社の中で職位が何であれ、私たちは、組織の中で一人ひとりが独立していなければなりません。自分の足で立っていなければなりません。自分の考えを持たなければなりません。しかし会社組織には、多数決という考え方がないことも事実です。責任範囲の狭い人と、責任の範囲の広い人の考え方が最終的に異なった場合、どんなに反対者が多くても、責任範囲の広い人である職位の高い人の意見が優先するのは言うまでもありません。
ただし、だからといって組織人として、自分の意見がないということも許されるものではありません。だから、上司を信じることは良いのですが、上司に頼りすぎるのも良くありません。また、部下をみる場合には、性善説でみる場合と、性悪説で見る場合とを臨機応変に変えていかなければなりません。性悪説でのみ部下と接すれば、そこには信頼関係がなくなります。そのような見方だけをする上司には、部下は誰もついていきません。
かといって、性善説だけで見れば、管理上のリスクが常について回ることになります。時と場合によって、臨機応変に変えなければなりません。片方の見方しかできないようであれば、管理者失格です。管理者や経営者の立場においては、いずれの立場からでも見られるようにしておかなければなりません。
だから、組織人は、組織と個、善と悪に関して、いつもこれらのバランスを図っていく必要があります。そうして、虚実皮膜の間という言葉どおりに、場合によっては個と組織、性悪説と性善説の間を揺れ動きつつ、その場、その場で判断をしていく必要があります。どんな場合にも、全体のためだけとか、個のためだけということはあり得ず、絶対善、絶対悪もないわけで、このバランスをとるという意味合いもこめて、私は「虚実皮膜の間」という言葉を座右の銘の一つとしています。
保守論壇の人々が、田母神氏を見る場合にも、"虚実皮膜の間"という見方ができれば、今回のような騒動にはならなかったと思います。
特に、水島氏やチャンネル桜、「頑張れ日本!全国行動委員会」の人々や保守論壇の人々も、このような見方ができていれば、少なくとも、都知事選で負けた田母神氏を衆議院議員選挙に担ぎあげるということはしなかったのではないかと思います。
冷静に考えれば、都知事選で負けたことで、もっとまともに反省していれば、そうして性善説と、性悪説のはざまに立って、田母神氏が本当に、国政選挙で勝てる人物なのか、そもそも、短い期間で準備ができるのかなどを虚心坦懐に反省して、衆院選に出馬することなど取りやめていれば、今回のような疑惑はそもそも、起こらなかったかもしれません。
そもそも、衆議院選挙に出馬しなければ、衆院選に向けて、選挙運動資金をさらに調達する必要性もありませんでした。短期間に、膨大な資金を集めたということが、今回の出来事を誘発してしまったかもしれません。
良く、「たらねば」の話をしても意味がないともいわれますが、今回の出来事を機に、保守論壇の人々や、私のように言葉の真の意味で保守的立場をとっていると考える人たちは、今回の出来事を他山の石として、今後の保守のあり方を再検討すべきと思います。
【関連記事】
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