2017年4月24日月曜日

トランプ大統領に「揺さぶり」? 日本が「米国抜きTPP」模索―【私の論評】TPP11で日本が新たな自由貿易のリーダーになる(゚д゚)!


オバマケア廃止法案の可決に失敗した後、ホワイトハウスで記者会見するトランプ
トランプ米大統領が「離脱」を宣言した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡り、日本政府は米国を抜いた11か国での発効「TPP11(イレブン)」を目指す方向にかじを切った。これまでは米国を説得し、翻意するのを待つ構えだったが、アジア太平洋地域の自由貿易を推進する重要性や米国との2国間交渉を有利に進めるうえで、TPPイレブンが得策と判断した模様だ。

TPPは2015年10月、日米やオーストラリアなど12か国が大筋合意し、各国がそれぞれ国内で批准に向けた手続きを進めていた。しかし米大統領に就任したばかりのトランプ氏が2017年1月、離脱の大統領令に署名。TPPは、12か国GDP(GDP)合計の85%を占める6か国以上が批准しなければ発効できない取り決めになっており、約60%を占める米国の離脱で事実上、発効できない状況に陥っていた。

 米国に対する「防波堤」にする狙いも

日本は「市場規模の大きい米国が抜けたTPPは意味がない」との立場から、米国が将来、翻意するのを待って発効を実現したいとの立場だった。しかしTPPは先進国や途上国も含め、知的財産保護など従来の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)と比べ「画期的なルール作りで合意できた」(経済産業省筋)という自負がある。複数の通商関係者は、世界的に保護主義的な動きが広がる中、日本がTPP発効を目指す姿勢を明確にすることが自由主義を守る立場として重要だと判断したという。

また、TPP11が発効すれば、豪州などは米国より低い関税で牛肉などを日本に輸出でき、米国の農産物の競争力は相対的に低下する。そうなれば米国の農業界は黙っていないはずで、トランプ政権がTPPに戻る可能性も出てくるとの期待もある。

一方、TPPを離脱した米国は今後、日本に対し、2国間のFTA交渉を求めてくるのは必至だ。特に、農業分野で厳しい要求が突きつけられる可能性は高く、TPP11を目指す姿勢を打ち出しておくことで、米国に対する「防波堤」にする狙いもある。

 ベトナムなどは再交渉を求める可能性

ただ、TPP11が実現するか否かには不透明要因も多い。まず、事実上、米国抜きで発効できないとの要件については、11か国の合意で条文から削らなければならない。また、そもそもTPP参加の最大の狙いが米国市場への参入だったベトナムやマレーシアにとって、TPP11は意味がないものに映りかねない。国有企業改革など厳しい条件をのんだベトナムなどは再交渉を求める可能性もある。各国が次々と再交渉を求める事態になれば、まとめるのは至難の業ということになる。

TPP11か国の中でメキシコやカナダは米国との北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を控え、どこまで米国抜きのTPP発効に積極的になれるかも見通せない。

2017年5月後半にはベトナムで閣僚会合が開かれる。麻生太郎・副総理兼財務相は4月19日、ニューヨークでの講演で、「(閣僚会合で)米国なしで11か国だけでやろうという話が出る」と言明しており、各国の動向が注目される。
【私の論評】TPP11で日本が新たな自由貿易のリーダーになる(゚д゚)!

トランプ大統領は、TPPの離脱を決定しました。その一方米国内では、選挙キャンペーン中から公約の最も大きな柱としてきた、オバマケア廃止法案の可決には失敗しました。

このブログで何度か掲載してきたように、三権分立が厳密に適用されていることもあり、アメリカの大統領は平時には世界で最も権限のない権力者なのです。だからこそ、オバマケアの廃止法案の可決に失敗したのです。

日本国内では、米大統領というとかなり大きな権限を持っていて、何でも決めることができると誤解している人もいます。しかし、それは明らかな間違いです。こういう人から見ると、なぜトランプ大統領が、オバマケア廃止法案の可決に失敗したのか理解できないものと思います。オバマケア廃案に関しては、共和党の中にも反対する人々が多数いたので、廃案にはできなかったのです。

TPPに関しては、共和党の中にも反対者はいたのですが、圧倒的に多数が反対だったので、トランプ大統領がTPP離脱の大統領令を発して、それに反対したとしても、議会で勝つ見込みがないので、すんなりと通ってしまったということです。

こういうことを考えると、TPPに関しても、TPP11が発行すれば、米国が後から入るという可能性もあながち全く否定はできないです。

メキシコのグアハルド経済相
TPP11に関して、メキシコのグアハルド経済相は18日、環太平洋連携協定(TPP)から米国が離脱した場合でも、合意文書の文言を修正することで、発効は可能との見方を示しました。

日米の主導でアジア太平洋の12カ国が大筋合意に至ったTPPの合意文書には、米国抜きでは発効しないとする文言が含まれています。

グアハルド経済相は、日本がリーダーシップを発揮すれば、その文言を含む条項は「問題なく」削除でき、メキシコなど他の参加国は米国抜きでTPPを発効させることのメリットとデメリットを評価することが可能だと発言。米国を除く11カ国でTPPを推進させる考えを示しました。

トランプ米大統領は今年1月の就任直後、TPPから正式に離脱する大統領令に署名しました。

TPP参加国は、ベトナムで今年11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で貿易に関する踏み込んだ協議を行う予定。閣僚らは5月に準備会合を開始します。

トランプ大統領は18日、米国人の雇用と、政府調達における米国製品の購入を促すことを目的とした大統領令に署名しました。

グアハルド経済相はこの大統領令について、影響はまだ明らかではないですが、北米自由貿易協定(NAFTA)に違反する可能性があると指摘しました。



TPPというと、日本ではかつて、民主党政権時代に「TPPは亡国の協定」とか、「国民皆保険がなくなる」とか、「日本の農業が壊滅する!」とか、面白いことを言って拍手喝さいを受けた人たちがいます。これを、今ではTPP芸人と予備揶揄する人もいます。

と安倍政権が誕生し、2013年にTPPへの参加を表明すると、この芸人たちは「表明した瞬間にすべてはアメリカの思い通り決まっている!」などと言っていました。しかし、残念ながら一発芸人の命は短いものです。

トランプ氏が「TPPから離脱」を宣言したことにより、TPP芸人バブルは完全に弾けてしまったようです。

そうして、もはや「死に体」とも見られているTPPですが、いつか生き返るかもしれない。そんな望みにかけているのが今の日本政府です。しかし、そのような日はそもそもやって来るのでしょうか。

トランプ大統領がーが翻意するわけがないというのが大半の見方です。万が一、米国が対応を変えるにしても、トランプ政権が続く最低4年間は無理というのが、大方の見方です。

しかし、そんな中で、TPP11への期待が高まっています。TPP11は日本にとっても望ましい結果を招くことになります。まず、米国の農産物が日本市場から駆逐されることになります。TPPが発効すれば、加盟国が日本に牛肉を輸出する際の関税は、現在の38・5%から将来は9%になります。

米国が非加盟なら関税は高いままですが、米国のライバル、オーストラリアやカナダが加盟すれば9%になります。他にも牛肉を生産する国はあります。日本の消費者は豪州牛やカナダ牛や他国の牛肉を安く買えるし選択の幅も広がります、米国牛は競争力を失います。米国は世界有数の輸出量を誇る小麦でも不利になります。

そうなれば米農業界は必ずトランプ氏を突き上げることになります。TPP11を使って米国を不利な状況に追い込み、自ら『加入させてほしい』と言わせるように持って行けば良いのです。

もし日本などがTPP11を発効させた後、米国が加入を求めれば、米国は日本など既加盟国の要求に応じねばならなくなります。米国が日本に輸出する自動車関税はゼロですが、日本が米国に輸出する際は現在2・5%です。TPP交渉では、2・5%を25年もかけて段階的に撤廃することでしかまとまらなかったのですが、今度は即時撤廃も夢ではありません。

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟する際、中国の交渉担当者が「私たちは一切要求できないのに、なぜ既加盟国は一方的に要求するんだ」と怒ったら、米国の担当者は「それが加入交渉というものだ」と答えたといいます。日本も米国に同じことを言えば良いのです。まさに、米国に対する上手からの交渉ができる千載一遇のチャンスです。
TPP反対派が問題とした内容。今では、これはすべてデマであったことが発覚している
米国抜きでも発効する意味は大いにあります。あそこまで自由化の高い国際ルール作りは前例がなく、他の交渉に与える影響は大きいです。それに、発効しなければ各国の自由化も全部元に戻ってしまうことになります。

TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになるのです。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、最後にTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。このような要望が出てきた場合、米国は焦るものと思います。これによって米国のTPP加入を促すという手も考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。

このあたりを理解すれば、トランプ氏も意外とTPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していないだけなのかもしれません。しかし、理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり態度を改めるかもしれません。

やはり、中国もTPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

このような可能性を見ることができなかったトランプ大統領は後に後悔の臍を噛むことになります。

このようなことを掲載すると、「いやそのようなことはない。日本は米国の属国だから、米国の言いなりになるしかないし、そもそもTTPに米国が入ることもない」などと言う人もいるかもしれません。しかし、そのような人は、TTP芸人らの末路はどうなったのかと、言い返してやりたいです。

いずれにしても、上記で示したようなことを前提に、安倍総理にはまずはTPP11発効に向けて頑張って頂きたいものです。

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