2017年4月23日日曜日

日本郵政 豪物流事業の業績悪化で巨額損失計上か―【私の論評】財務省御用達人材が、東芝、日本郵政を駄目にした(゚д゚)!

日本郵政 豪物流事業の業績悪化で巨額損失計上か



日本郵政はおととし買収したオーストラリアの物流企業について業績が悪化していることから資産価値を見直し、数千億円規模の損失の計上を検討していることがわかりました。

日本郵政は、傘下の日本郵便を通じて、おととし海外での物流事業を強化するためオーストラリアの物流最大手「トール・ホールディングス」をおよそ6200億円で買収しました。

関係者によりますと、トールは鉄鉱石など資源の価格の下落を背景にオーストラリアでの物流事業が伸び悩み、業績が悪化していることから、日本郵政はこの会社の資産価値を見直し、来月発表する予定の昨年度の決算で数千億円規模の損失の計上を検討しているということです。

日本郵政は昨年度の決算で最終的な利益を3200億円と予想していましたが、損失を計上すれば業績の大幅な下方修正を行うことになります。

日本郵政は「トールの業績が計画に達していないことから、損失の計上をするかどうかを含め現在検討中だ」とコメントしています。

海外企業の買収については、東芝がアメリカの原子力事業の拡大を狙って買収したウェスチングハウスをめぐって巨額の損失を計上したばかりで、買収にあたって企業の価値をどう判断するかが問われています。

トール・ホールディングスとは

日本郵政が傘下の日本郵便を通じて買収したトール・ホールディングスは、1888年に創業されたオーストラリア最大手の物流企業です。

企業向けの物流サービスから家庭向けの宅配事業まで総合的な物流事業を展開しています。また、オーストラリア国内だけでなくアジアを中心に日本を含む世界50か国以上に1200か所の拠点があり、事業の地域も世界各地に広がっています。

日本郵政は、年々、郵便物の取り扱いが減少し、国内の事業環境が厳しくなる中で、新たな活路を見いだそうと、これまで手がけていなかった国際物流の事業に参入するためトールを買収しました。しかし、買収後、鉄鉱石などの資源価格が大きく下落した影響で、オーストラリア国内の景気が低迷し、トールの業績も悪化。去年4月から12月までの9か月間の決算では、営業利益は前の年に比べて163億円の減益となりました。

このため、日本郵政は、ことしに入ってトールの会長と社長をともに交代させたほか、経営の効率化を進めるために、人員の削減も行って業績の立て直しを図っています。

巨額損失招く「のれん」とは

日本企業が海外の企業を買収したものの、当初、見込んだ成果が上がらずに巨額の損失を計上するケースが相次いでいます。

こうしたケースでは、実際の事業による損失ではなく、「のれん」と呼ばれるブランド力や事業の将来性など形のない資産の価値が減ったため、企業の会計上、損失として計上することが要因となっています。

のれんは、当時の買収額と、買収した企業の純資産の差額で計算されます。日本郵政が買収したトールの場合は、買収額は6200億円だった一方で、去年12月末時点の純資産から算出した、のれんは3860億円でした。

しかし、日本郵政は、業績の悪化や将来の事業の成長性が当初の見込みどおりにならないと判断し、のれんの金額を引き下げて決算で損失として計上する見通しとなっているのです。

特に、買収額が大きくなった場合は、その分、のれんの額も大きくなるため、買収したときの見込みどおりに買収先の企業の価値が高くならなければ、損失として計上する額も巨額になるリスクがあります。このため、買収にあたって、いかに買収先企業の事業の将来性などの形のない資産価値を見極めるかが大きな課題となります。

海外企業買収で相次ぐ巨額損失

最近、日本企業が海外の企業を買収したあとに巨額の損失を計上するケースが相次いでいます。

経営再建中の東芝は、2006年にアメリカの原子力事業会社、ウェスチングハウスを6200億円で買収しましたが、今月11日に発表した去年4月から12月までの9か月間の決算で、ウェスチングハウスがさらに買収した別の企業の分も合わせて7166億円の損失を計上しました。

キリンホールディングスは、2011年にブラジルの大手飲料メーカーを3000億円で買収しましたが、業績の低迷が続き、おととし1140億円の損失を計上し、結局、ことし2月には会社をオランダのビール大手のグループ会社におよそ770億円で売却しました。

楽天は、2013年に買収した動画配信サイトを手がけるアメリカの子会社について、競合する他社との競争が激しくなった結果、去年の決算で200億円を超える損失を計上しています。

【私の論評】財務省御用達人材が、東芝、日本郵政を駄目にした(゚д゚)!

トール社買収は結局日本郵政の「高すぎる買い物」、「ガバナンスが欠如」を露呈しました。もし、日本郵政が純粋な民間企業だったとしたら、ステークホルダーからの猛反発に遭い、おそらくこの買収は実現しなかったことでしょう。

日本郵政の社長は、元東芝の社長であった西室泰三氏です。東芝も西室氏のころから危なくなりました。日本郵便は事業や投資に関しては、官僚だけの素人集団です。これでは先行きかなり厳しいです。ちなみに西室氏が日本郵政社長になった当時の日経はかなり高く評価していましたが、どうしてそうなるのか理解できません。以下にその紙面を掲載します。


郵政民営化を簡単に振り返ると、小泉政権の時に民営化法成立し、民営化が実施されました。ところが、民主党政権になって民営化を否定し実質上「再国有化」されました。

郵政民営化のときには西川氏が本当に民間会社にするつもりで、大量の民間人を引き連れてきました。ところが、再国有化されると、西川氏とその仲間の多量の民間人は追いだされ、財務省御用達の西室氏だけがトップで来て、周りはほぼ官僚だけとなりました。これでは、海外投資業がうまくいくはずがありません。

官僚だけでは、海外投資事業などかうまいかないのは当然のことで、これは以前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!

この記事は、まだ民主党政権だった頃の2012年7月24日のものです。この記事では、かつて携帯電話のチャンピオンだったNOKIAが、スマホやタブレットPCのプロトタイプを開発し、市場に出す準備をしていながら、AppleのiPhoneやiPadに先を超され、辛酸を舐めることになったことを例に出し、民間企業でさえこのように大失敗をするのに、役人にはこのようなことは全く不可能であることを主張しました。

以下に、一部を引用します。
民間企業ですら、このような失敗をすることがあるわけですから、政府が成長する産業を見極めることなどほとんど不可能です。特に自由主義経済下では、そのようなことは誰もわからないというのが事実です。いろいろなタイプの企業が種々様々な工夫をして、その結果いずれかの事業がその時々の市場に適合うして、それが産業として伸びて行くというのが普通です。 
本来自由主義経済下の政府の役割は、こんなことをすることではありません。政府の役割は、新産業などが生まれやすいように、経済活動が活発になるように、法律を整えるだとか、規制を撤廃するとか、逆に規制を強化するとか、さらに、公共工事をするとか、安全保証などをして、いわゆるインフラ(基盤)を整えることです。このインフラづくりが政府の本命の仕事です。このインフラ上で活動して、成果をあげるのが、民間企業営利企業、非営利企業、その他の組織ということです。間違っても、政府が、インフラの上にのっかって、様々な事業を展開するようなことがあってはなりません。 
それを大規模に行ってきたのが、旧ソ連邦をはじめとする社会主義国であり、部分的に行ってきたのが、自由主義陣営による高福祉国家でした。旧ソ連邦をはじめとする、社会主義国家は、今日では全滅しました。また、ソ連邦に脅威を感じて高福祉国家をめざした国々は、その本家本元のイギリスでも財政負担があまりにも大きくなりすぎたので、取りやめました。一部まだ続けている国もありますが、それは、スウェーデンなどの人口数百万の比較的規模の小さい国々だけです。
旧ソ連邦に関しては、その破綻は、すでに1950年代にアメリカの経済学者が予測していました。統計資料などからみて、その頃のソビエトの経済はいたって簡単で、いわゆる、投入物=生産物という具合で、付加価値がほとんどなく、戦後のソビエトの繁栄は、結局戦後に敗戦国からの資源などを大量に投入し、大量の生産物を得ていたというだけであって、このようなことは長くつづくはずがないと予測したのです。まさに、その通りになりました。
社会主義国の時代のソ連といういうと、私が覚えているのは、アイロンです。当時アイロンは、ソ連の独占国営企業がつくって市場に投入していて、ソ連国内では、輸入ものでないかぎり、ほぼすべて同じものが使われていました。しかも、確か、崩壊する直前のものでも、30年前につくられたそのままです。 
計画経済なので、顧客ニーズやウォンツなどとは全く関係なく、政府による来年はいくつ必要になるであろうという予測のもと、それに従って生産して、市場に投入していただけだったのです。競争も何もないため、結局30年にわたって、モデルチェンジも行われなかったのだと思います。 
政府がインフラづくりだけでなく、実際に産業活動をしても、できるのは、このようなことだけです。ソ連邦の計画経済ほどは規模は大きくありませんが、政府が、重点施策を実行して、投資をするのも、結局は社会主義国政策と同じようなものであり、結局失敗します。
ほぼ官僚出身者だけの郵政は、かつての共産主義のようなものです。郵政が海外事業などにも成功するというのなら、かつての共産主義もことごとく成功したはずです。しかし、皆さんご存知のように共産主義はことごとく失敗しました。

さて、西室泰三氏を財務省御用達というのは、西室氏がかつて財政審会長だったからです。西室市は、東芝の社長の時に原子力への集中と称して米WH社買収も実施しました。それがのちのち東芝の命取りになりました。日本郵政でも豪トール社買収は西室時代の負の遺産です。というわけで西室氏は海外買収では地雷ばかり踏んでいます。

西室泰三氏
当時は国民新党も共同歩調をとっていました。そうして郵政は「再国有化」のまま上場してしまいました。マスコミなどは民主党政権下でも「民営化」には変わりなしとしていましたが、これは似て非なるモノであり、民主党政権以降の郵政はとてもじゃありませんが、民間企業と呼べるような代物ではありません。

財政審といえば、最近新たな動きがありました。経団連の榊原定征会長が、財務相の諮問機関である財政審(財政制度等審議会)の会長に就任しました。経団連の会長が財政審会長に就くのは、2001年1月から2年間務めた今井敬氏以来、実に16年ぶりのことです。

予算編成に大きな影響を与える財政審ですが、財務省のこの人事にはどのような思惑があるのでしょうか。

財政審会長に就任した経団連の榊原定征会長
まず、今井氏が就任した'01年当時を振り返ります。財務省(旧大蔵省)は、'90年代後半に次々と明るみに出た官僚の接待スキャンダル(例えば、ノーパンしゃぶしゃぶ)で、世間から猛烈な批判を浴びていました。そのなかで、旧大蔵省は、中央省庁等改革基本法により金融庁と財務省に解体され、'01年1月に「財務省」へ名称が変更になりました。

ちなみに、この名称変更は旧大蔵官僚には最大の「屈辱」でした。省庁の前に掛かる看板は、当時の大臣が揮毫するのが通例ですが、大蔵官僚出身で「最後の大蔵大臣」となる宮沢喜一氏はそれを拒み、コンピュータの楷書体になったといわれているほどです。

そのような財務省の誕生とともに、経済財政諮問会議が設置されました。'01年4月に発足した小泉政権では、竹中平蔵氏が経済財政担当相に就任しました。このとき官邸には、竹中氏管轄の経済財政諮問会議を軸に、財務省から予算編成方針を奪い取るという思惑がありました。

一方、財務省はこうした新しい動きに対抗。財界で圧倒的に顔がきき、ある意味で竹中氏よりも「上手」といえる経団連会長を財政審のリーダーに据えたのです。

しかし、この財務省の思惑は小泉政権にねじ伏せられました。竹中氏は、小泉首相の強い支援を受け、新しい経済財政諮問会議を舞台に「骨太の方針」を打ち出し、事実上予算編成方針を財務省から奪い取ることに成功したのです。その結果、小泉政権下では、財務省の「悲願」である消費増税をうかがう機会は一切封じられてしまったのです。

ようやく財務省が本格的に消費増税を進めはじめたのは、民主党へと政権交代した'09年以降です。民主党政権発足当初から財務副大臣、財務大臣を歴任し、「財務省色」に染まり切った野田佳彦氏が総理になると、'12年3月に消費増税法案の提出にこぎ着けました。

野田佳彦氏
こうした歴史を振り返ると、今回経団連会長という「大物」を据えるところには、財務省の「危機感」が見え隠れします。というのも、安倍政権が長期化して、さらなる消費増税の機運が遠のいているからです。

安倍政権下で'14年4月から消費税率を8%へと引き上げると、それまで復調の兆しを見せていた経済は腰折れしてしまいました。その結果増税への否定的な世論が高まり、再増税は'19年10月まで延長されているのが現状です。

こうした世間の変化に、財務省は危機感を持ち、消費増税の際に頼りになる経団連の力を持ち出してきたのです。経団連は自民党に政治献金を行うなど、「蜜月」関係を保っています。

一方で財務省と経団連は、法人税を減税する代わりに、消費増税路線に同調すると融通していてもおかしくない関係にあります。つまり、安倍政権にとって、経団連の存在はひとつの「圧力」になるのです。

これから安倍政権は消費増税路線で財務省に押し切られてしまうのかどうか、正念場であるともいえます。

こうしてみると、東芝や郵政の問題にまで、なにやら財務省が影を落としているよう見られます。

ブログ冒頭でも、かつて財政審会長だった西室氏は、東芝の社長の時に原子力への集中と称して米WH社買収も実施しました。それがのちのち東芝の命取りになりました。日本郵政でも豪トール社買収は西室時代の負の遺産です。というわけで西室氏は海外買収では地雷ばかり踏んでいます。

西室氏は当然のことながら、東芝の社長時代から、増税派でした。無論これは、財務省の意向に沿ってのことでしょう。というより、財務省の官僚からご説明資料などで増税の必要性を刷り込まれて、すっかりデフレの最中でも、増税が必須と思い込んでしまったのでしょう。

言い方は、悪いですが、この程度の頭なので、東芝で海外投資に失敗し、郵政においてはこの程度の頭の社長と、官僚出身者だけの組織で、海外への投資事業が失敗したのは必然なのです。

さて、現在の財政審会長である、経団連の榊原定征会長はどうなのでしょうか。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか―【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!
経団連の榊原定征会長
詳細は、この記事をご覧いただものとして、この記事では、東レ株式会社相談役最高顧問でもある、榊原氏が、8%の消費税増税により消費が低迷している事実は全く無視して、「賃金上昇でも消費伸びない」という発言をしていることについて掲載しました。以下に結論部分のみを掲載します。
日本は、貿易立国だなどとする人々もいますが、それは事実ではありません。実際、20年ほど前までは、日本のGDPに占める割合は8%に過ぎませんでした。現在は、11%程度です。 
日本は、昔から内需大国だったのです。スロートレードの現在、大企業は輸出の伸びはあまり期待できないわけですから、日本の内需が拡大したほうが良いはずです。 
中小企業も、財務省からの補助金があったにせよ、まずは内需が伸びないようでは死活問題です。補助金があっても、内需が低迷すれば、中小企業は成り立ちません。 
増税すれば、個人消費が低迷して内需は低迷します。これは、決してすべての企業にとって良いはずはありません。 
これを考えれば、経団連などの企業の団体こそ、消費税延期、消費税減税、さらなる量的金融緩和を主張すべきです。とにかく、日本国内の内需を拡大する方向にもっていくべきであると主張するのが当然です。ましてや、デフレを放置したり、デフレスパラルにどっぷりと再びはまることになる消費税増税などとんでもないです。
やはり、榊原氏も財務省御用達人材と呼ぶにふさわしいです。榊原氏は、どちらかといえば、炭素繊維などにより、東レの業績を向上させていますが、これは炭素繊維という素材産業ということで、海外企業の買収などの事業とは性格を異にします。

しかしながら、現在の東レは、3Q経常6.7%減益になっています。炭素・繊維事業等の不振が響いたようです。以下に、東レの第三四半期連結損益概要を掲載しておきます。

当第3四半期の売上高は5,352億円、前年同期比で3パーセントの減収となり、営業利益は379億円と、11.8パーセントの減益となりました。経常利益は394億円と、前年同期比で6.7パーセントの減益。四半期純利益は235億円と、12.2パーセントの減益となりました。

榊原氏がこの減益そのものに関係するかいなかはわかりません。

しかし、財務省御用達の証しと言っても良い財政審会長を勤めた西室泰三氏が、東芝と日本郵政を窮地に追い込むきっかけを作ったこと、それに、財務省御用達の野田総理の民主党、のだ政権末期には支持率が、10%を割り6.6%にまで落ちたことは記憶にとどめておくべきでしょう。

そもそもノキアのような企業でも窮地に追い込まれるような、民間の市場の厳しさに、財務官僚等が太刀打ちできるはずがありません。財務官僚は、本来国民の信託を受けた政党による政府の定めた目標に従い、それを実行するのが筋です。

この原則を忘れた財務省に鉄槌を下し、これからも消費増税延期路線で押し切るように安倍総理には頑張って頂きたいです。

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