2011年1月29日土曜日

菅首相の施政方針演説の原稿が小学生レベルな件 【画像あり】―【私の論評】まさしく、お粗末で勉強不足がありありの演説!

菅首相の施政方針演説の原稿が小学生レベルな件 【画像あり】


ねじれ状態の下で2011年度予算案などを審議する通常国会がいよいよスタートし­た。菅総理は、就任後初めての施政方針演説を行い、社会保障と税制の一体改革をめぐっ­て、「国民の負担増は避けられない」と理解を求めるとともに、野党側に協議を呼びかけた。

ところで、首相が読み上げた原稿は今週発売の週刊新潮によれば、以下のようなものだった模様だ。

今週の新潮にのってた管首相の原稿
菅直人首相は27日の衆院本会議で、言い間違いを連発させたほか、2度も答弁漏れで陳謝した。

法人税実効税率の5%引き下げについて「雇用と投資につながる保証があるのか」とする志位和夫共産党委員長の質問に、法人税「引き上げ」と2回も発言。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も「IPP協定」と読み間違えた。

一方、26日の小池百合子自民党総務会長の代表質問に対して「2つの答弁漏れがあったことをおわび申し上げる」と述べ、再答弁した。だが、この後の井上義久公明党幹事長の質問にも答弁漏れをしてしまい、再登壇して「おわび申し上げる」と陳謝した。

26日の本会議は、小池氏への首相の答弁が終了後、自民党が答弁漏れがあったとして追加答弁を求めた。しかし民主党が応じず、そのまま散会となった。

27日の参院本会議では、前原誠司外相が、自民党から「下を向いて早口で原稿を読むだけで、国会軽視だ」と反発を受けた24日の参院での外交演説について「参院軽視の意図は全くないが、丁寧さを欠き、おわびする」と陳謝した。

【菅首相施政方針演説内容】(読むに値する内容ではないため、読みたくない方は読み飛ばしてください、ただし、【私の論評】の部分では、突っ込みどころを解説してありますので、こちらはおみのがしなく!!)

【1・はじめに】
演説に先立ち一言申し上げます。一昨日、宮崎県において高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されました。政府は当日中に、鳥インフルエンザ対策本部を開催し、初動対応を行ったところです。本件も含め、感染拡大の防止など、対応には万全を期してまいります。

発足から半年、私の内閣は、元気な日本の復活を目指し、「経済」「社会保障」「財政」の一体的強化に全力で取り組んでまいりました。これを推し進めた先に、どのような国を造っていくのか。そのために国政はどうあるべきか。本日は、改めて、私の考えを国民の皆さま、そして国会議員の皆さんに申し上げます。

私が掲げる国造りの理念、それは、「平成の開国」、「最小不幸社会の実現」、そして「不条理を正す政治」の三つです。変化の時代の真っただ中にあって、世界中が新しい時代を生き抜くにはどうすればよいか模索しています。日本だけが、経済の閉塞(へいそく)、社会の不安にもがいているわけにはいかないのです。現実を冷静に見つめ、内向きの姿勢や従来の固定観念から脱却する。そして、勢いを増すアジアの成長をわが国に取り込み、国際社会と繁栄を共にする新しい公式を見つけ出す。また、社会構造の変化の中で、この国に暮らす幸せの形を描く。今年こそ、こうした国造りに向けかじを切る。私のこの決意の中身を、これから説明致します。

【2・平成の開国-第1の国造りの理念】
第1の国造りの理念は、「平成の開国」です。日本は、この150年間に「明治の開国」と「戦後の開国」を成し遂げました。不安定な国際情勢にあって、政治や社会の構造を大きく変革し、創造性あふれる経済活動で難局を乗り切ったのです。私は、これらに続く「第3の開国」に挑みます。過去の開国にはない困難も伴います。経験のない変化。価値観の多様化。その中で、安易に先例や模範を求めても、有効な解は見つかりません。自ら新しい発想と確固たる信念で課題を解決する。その覚悟を持って「平成の開国」に取り組みます。

(包括的な経済連携の推進)
開国の具体化は、貿易・投資の自由化、人材交流の円滑化で踏み出します。このため、包括的な経済連携を推進します。経済を開くことは、世界と繁栄を共有する最良の手段です。わが国はそう強く認識し、戦後一貫して実践してきました。この方針に沿って、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド交渉妥結による国際貿易ルールの強化に努めています。一方、この10年、2国間や地域内の経済連携の急増という流れには、大きく乗り遅れてしまいました。そのため、昨年秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に先立ち、包括的経済連携に関する基本方針を定めました。今年は決断と行動の年です。昨年合意したインド、ペルーとの経済連携協定(EPA)は着実に実施します。また、オーストラリアとの交渉を迅速に進め、韓国、欧州連合(EU)およびモンゴルとのEPA交渉の再開・立ち上げを目指します。さらに、日中韓自由貿易協定の共同研究を進めます。環太平洋連携協定(TPP)は、米国をはじめとする関係国と協議を続け、今年6月をめどに、交渉参加について結論を出します。

(農林漁業の再生)
そして、「平成の開国」を実現するため、もう一つの大目標として農林漁業の再生を掲げます。貿易を自由化したら農業は危うい、そんな声があります。私は、そのような二者択一の発想は採りません。過去20年で国内の農業生産は2割減少し、若者の農業離れが進みました。今や農業従事者の平均年齢は66歳に達しています。農林漁業の再生は待ったなしの課題なのです。昨年の視察で夢とやりがいに満ちた農業の現場に接し、私は確信しました。商工業と連携し、6次産業化を図る。あるいは農地集約で大規模化する。こうした取り組みを広げれば、日本でも、若い人たちが参加する農業、豊かな農村生活が可能なのです。

この目標に向けた政策の柱が、農業者戸別所得補償です。来年度は対象を畑作に拡大し、大規模化の支援を厚くします。また、安全でおいしい日本の食の魅力を海外に発信し、輸出につなげます。中山間地の小規模農家には、多面的機能の発揮の観点から支援を行います。農業だけではありません。林業が中山間地の基幹産業として再生するよう、直接支払制度や人材育成支援を充実させます。漁業の所得補償対策も強化します。そして、内閣の「食と農林漁業の再生実現会議」において集中的に議論を行い、6月を目途に基本方針を、10月を目途に行動計画を策定します。

(国会における議論の提案)
われわれは、経済連携の推進と農林漁業の再生が「平成の開国」の突破口となると考え、以上のような方針を定めました。国民の皆さまは、この問題に高い関心を寄せています。自民党は、TPPについて、3月中に党の賛否をはっきりさせる意向を明らかにしています。そうした各党の意見を持ち寄り、この国会で議論を始めようではありませんか。

(開国を成長と雇用につなげる新成長戦略の実践)
さらに、この「平成の開国」を成長と雇用につなげるため、新成長戦略の工程表を着実に実施します。既に、前国会の所信表明演説でお約束した政策が決定され、実行に移されています。国内投資促進プログラムを策定し、法人実効税率の5%引き下げを決断しました。中小法人の軽減税率も3%引き下げます。観光立国に向けた医療滞在ビザも、約束した通り創設しました。地球温暖化問題に全力を尽くすため、長年議論された地球温暖化対策のための税の導入を決定しました。再生エネルギーの全量買い取り制度も導入します。鉄道や水、原子力などのパッケージ型海外展開、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の供給源確保は、閣僚による働き掛けで前進しています。

私自らベトナムの首相に働き掛けた結果、原子力発電施設の海外進出が初めて実現します。米国、韓国、シンガポールとのオープンスカイ協定にも合意しました。こうした行動に産業界も呼応し、10年後の設備投資を約100兆円とする目標が示されました。新事業と雇用を創造する野心的な提案を歓迎します。その実現を後押しするため、大学の基礎研究をはじめ科学技術振興予算を増額します。日本をアジア経済の拠点とするため海外企業誘致も強化します。中小企業金融円滑化法の延長や資金繰り対策など、中小企業支援にも万全を期します。有言実行を一つ一つ仕上げ、今年を日本経済復活に向けた跳躍の年にしていきます。

【3・最小不幸社会の実現-第2の国造りの理念-】
次に、「平成の開国」と共に推進する、2番目の国造りの理念について申し上げます。それは、「最小不幸社会の実現」です。失業、病気、貧困、災害、犯罪。「平成の開国」に挑むためにも、こうした不幸の原因を、できる限り小さくしなければなりません。一人ひとりの不幸を放置したままで、日本全体が自信を持って前進することはできないのです。われわれの内閣で、「最小不幸社会の実現」を確実に進めます。

(雇用対策の推進)
最も重視するのが雇用です。働くことで、人は「居場所と出番」を見つけることができるのです。特に厳しい状況にある新卒者雇用については、特命チームで対策を練り、全都道府県に新卒応援ハローワークを設置しました。2000人に倍増したジョブサポーターの支援で、昨年12月までに約1万6000人の就職が決定しました。私が会ったジョブサポーターは、「誠心誠意語り合えば、自信を取り戻し、元気になる学生がたくさんいる」と話してくれました。学生の皆さん、ちゅうちょせずに訪ねてみてください。ジョブサポーターがきっと味方になってくれるはずです。企業に対しても、トライアル雇用を増やし、卒業後3年以内を新卒扱いとするよう、働き掛けを強化しています。12月現在、大学新卒予定者の内定率は68.8%にとどまっており、引き続き全力で支援していきます。
そして、雇用対策全般も一層充実させていきます。一つ目の柱は、雇用を「つなぐ」取り組みです。新卒者支援は、今申し上げた取り組みに加え、中小企業とのマッチングも強化します。また、雇用保険を受給できない方への第2のセーフティーネットとして、職業訓練中に生活支援のための給付を行う求職者支援制度を創設します。

二つ目は、雇用を「創る」取り組みです。新成長戦略の推進で潜在的需要の大きい医療・介護、子育てや環境分野の雇用創出を図るとともに、企業の雇用増を優遇する雇用促進税制を導入します。そして三つ目は、雇用を「守る」取り組みです。雇用の海外流出を防ぐため、既に雇用効果が出ている低炭素産業の立地支援を拡充します。雇用保険の基本手当の引き上げも行います。これら三つの柱による雇用確保に加え、最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業を支援します。労働者派遣法の改正など雇用や収入に不安を抱える非正規労働者の正社員化を進めます。

(社会保障の充実)
「最小不幸社会の実現」のために何といっても必要なこと。それは、国民生活の安心の基盤である社会保障をしっかりさせることです。来年度は社会保障予算を5%増加させます。基礎年金の国庫負担割合は、2分の1を維持します。また、年金記録問題の解消に全力を尽くします。医療分野では、医師の偏在解消や、大腸がんの無料検診の開始、乳がん・子宮頸(けい)がんの無料検診の継続を盛り込みました。B型肝炎訴訟における裁判所の所見には前向きに対応し、国民の皆さまのご理解を得ながら早期の和解を目指します。介護分野では、24時間対応のサービスなど、一人暮らしのお年寄りに対する在宅介護を充実させます。子ども・子育て支援は、現金給付と現物支給の両面で強化します。3歳未満の子ども手当は月2万円に増額し、保育や地方独自の子育て支援のため500億円の交付金を新設します。障害者支援サービスは法改正を踏まえて拡大し、今国会には障害者基本法の改正を提案します。また、総合的な障害者福祉制度の導入を検討します。

(社会保障制度改革の進め方)
厳しい財政状況ですが、来年度については、このように国民生活を守るための予算を確保できました。公共事業の絞り込みや特別会計の仕分けなど最大限の努力を重ねた結果です。昨年決めた財政健全化の約束も守りました。しかし、こうした努力だけで膨らむ社会保障の財源を確保することには限界が生じています。制度が想定した社会経済状況が大きく変化した今、わが国は社会保障制度を根本的に改革する必要に直面しています。この認識に立ち、内閣と与党は、社会保障制度改革の五つの基本原則をまとめました。第1は、高齢者をしっかり守りながら若者世代への支援も強化する「全世代対応型」の保障です。第2は、子ども・子育て支援による「未来への投資」、第3は地方自治体による「支援型サービス給付」の重視です。第4として、制度や行政の縦割りを越え、サービスを受ける方の視点に立った包括的な支援を挙げました。

そして第5が、次世代に負担を先送りしない安定的財源の確保です。公正で便利なサービスを提供するため、社会保障と税の共通番号制度の創設も必要です。これら五つの基本原則を具体化し、国民生活の安心を高める。そのためには、国民の皆さまに、ある程度の負担をお願いすることは避けられないと考えます。内閣は、今年6月までに社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示します。国民の皆さまに十分に考えていただくため、検討段階からさまざまな形で議論の内容を発信していきます。

(国民参加の議論に向けた提案)
負担の問題は、触れたくない話題かもしれません。負担の議論に当たって、行政の無駄を徹底排除することは当然の前提であります。それに加え、議員定数削減など国会議員も自ら身を切る覚悟を国民に示すことが必要だと考えます。国会で議論し、決定すべき問題であることは言うまでもありません。本日は、一政治家、そして一政党の代表として、この問題を与野党で協議することを提案致します。そうした努力を徹底した上で、今の現実を直視し、どう乗り越えるか、国民の皆さまにも一緒に考えていただきたいのです。1年半前、自公政権下で設置された「安心社会実現会議」は、持続可能な安心社会の構築のため、社会保障給付と負担の在り方について、「与野党が党派を超えて討議と合意形成を進めるべき」と提言しました。

さらに昨年12月、自民党は、「税制改正についての基本的考え方」において、税制の「抜本改革の検討に当たっては、超党派による円卓会議等を設置し、国民的な合意形成を図る」としています。同じ時期に公明党が発表した「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめは、「健全な共助、健全な雇用こそ、福祉の原点」とした上で、充実した「中福祉・中負担」の実現を主張し、制度設計を協議する与野党の「社会保障協議会」の設置を提案しました。問題意識と論点の多くは既に共有されていると思います。国民の皆さまが最も関心を有する課題です。各党が提案する通り、与野党間で議論を始めようではありませんか。経験したことのない少子化・高齢化による生産年齢人口の減少は、かなり前から予測されていました。この大きな課題に対策を講じる責任は、与野党の国会議員全員が負っている。その認識を持って、熟議の国会を実現しましょう。よろしくお願いします。

(生き生きと暮らせる社会の形成)
こうして、社会保障の枠組みをしっかり築くとともに、国民の皆さまが生き生きと暮らせる社会の形成に向け、具体策を充実させていきます。子どもたちに夢を実現する力を与えるため、幼保一体化をはじめ子ども・子育て支援と教育を充実させます。小学1年生は、1学級35人以下にします。高校授業料の実質無償化を着実に実施し、奨学金も拡充します。

女性の積極的な社会参加も応援します。育児などで就労をちゅうちょする女性が200万人います。そこで、内閣の特命チームは、2万6000人に上る待機児童を解消するプロジェクトを用意しました。これに沿って、来年度は、認可外保育施設の補助など、柔軟で多様な保育サービスの整備に200億円を投じます。家庭を持つ女性や子育てを経験した女性が、働く意欲を持って職場に参加する。あるいは、仕事人間だった男性が、家庭に参加する。どちらも得られることがたくさんあります。男女が共同で参画できる社会に向け、職場や家庭の環境を整えていきましょう。

暮らしの安全強化も重要です。サイバー犯罪や国際犯罪の取り締まり強化、消費者行政の体制強化、さらに防災対策の強化を進めます。また、児童虐待防止に向けた民法改正も提案します。

(「新しい公共」の推進)
こうした「最小不幸社会の実現」の担い手として「新しい公共」の推進が欠かせません。苦しいときに支え合うから、喜びも分かち合える。日本社会は、この精神を今日まで培ってきました。そう実感できる活動が最近も広がっています。われわれ永田町や霞が関の住人こそ、公共の範囲を狭く解釈してきた姿勢を改め、こうした活動を積極的に応援すべきではないでしょうか。そこで来年度、認定NPO法人など「新しい公共」の担い手に寄付した場合、これを税額控除の対象とする画期的な制度を導入します。併せて、対象となる認定NPO法人の要件を大幅に緩和します。

【4・不条理を正す政治 -第3の国造りの理念-】
「平成の開国」、「最小不幸社会の実現」と並ぶ、私の三つ目の国造りの理念は「不条理を正す政治」です。これは、政治の姿勢に関する理念です。私がかつて薬害エイズ問題に全力で立ち向かった原動力は、理不尽な行政で大変な苦しみが生じている不条理への怒りでした。当時、この問題に共に取り組んだ一人が山本孝史議員でした。山本さんは、カネのかからない選挙を展開して国政に飛び込み、「命を守るのが政治家の仕事」と社会保障問題に一貫して取り組みました。5年前に胸腺がんに襲われた後も、抗がん剤の副作用に耐え、痩せ細った身を削りながら、がん対策基本法、そして自殺対策基本法の成立に尽くしました。党派を超えて信頼を集めた彼の行動力、そして世の中の不条理と徹底的に闘う情熱。私はそれを引き継いでいかなければならない。先月、山本さんの3回目の命日を迎え、決意を新たにしました。

(特命チームによる不条理の解消)
この国には見落とされた不条理がまだまだ残っています。一人でも困っている人がいたら、決して見捨てることなく手を差し伸べる。その使命感を抱き、いくつかの特命チームを設置しました。

成人T細胞白血病(ATL)ウイルス(HTLV-1)対策の特命チームは、この問題が長年解決されていないことを菅付加代子さんをはじめとする患者の皆さまから伺い、直ちに設置しました。その3カ月後、妊婦健診時の検査・相談や治療研究を進める総合対策をまとめることができました。このウイルスが原因の病気と闘う前宮城県知事の浅野史郎さんは、「特命チームに感謝し、闘病に勝利を収めたい」とメッセージを送ってくれました。

また、硫黄島遺骨帰還の特命チームは、4年前に硫黄島を訪問して以来、温めてきた構想でした。国内であるにもかかわらず、硫黄島には今も1万3000柱ものご遺骨が収容されずに眠っています。そのご帰還は国の責務として進めなければなりません。特命チームが米国で大量の資料を調べ、ご遺族や関係者のご協力をいただいた結果、新たな集団埋葬地を見つけることができました。

(「社会的孤立」の問題への取り組み)
そして先週、「社会的孤立」の問題に取り組む特命チームを、現場の実務家も参加して設置しました。「無縁社会」や「孤族」と言われるように、社会から孤立する人が増えています。これが、病気や貧困、年間3万人を超える自殺の背景にもなっています。私は、内閣発足に当たり、誰一人として排除されない社会の実現を誓いました。既に、パーソナル・サポーターの普及や、自殺・うつ対策を強化しています。新しい特命チームでは、改めて孤立の実態と要因を全世代にわたって調査します。そして、孤立した人を温かく包み込む「社会的包摂戦略」を進めます。

(政治改革の推進)
国民の皆さまは、政治改革に対して不断の努力を求めています。政治家、そして政党は、この要求に応える責任があります。政治資金の一層の透明化、企業・団体献金の禁止、そして個人寄付促進のための税制改正は、多くの政党が公約に掲げています。与野党がそれぞれの提案を持ち寄って、今度こそ国民が納得する具体的な答えを出そうではありませんか。

【5・地域主権改革の推進と行政刷新の強化・徹底】
(地域主権改革の推進)
以上の国造りの三つの理念を推進する土台、それが内閣の大方針である地域主権改革の推進です。改革は、今年大きく前進します。地域が自由に活用できる一括交付金が創設されます。当初、各省から提出された財源は、わずか28億円でした。これでは地域の夢は実現できません。各閣僚に強く指示し、来年度は5120億円、2012年度は1兆円規模で実施することとなりました。政権交代の大きな成果です。そして、われわれの地域主権改革の最終目標はさらに先にあります。今国会では、基礎自治体への権限移譲や総合特区制度の創設を提案します。国の出先機関は、地方による広域実施体制を整備し、移管していきます。既に、九州や関西で広域連合の取り組みが始まっています。こうした地域発の提案で、地域主権に対する慎重論を吹き飛ばしていきましょう。

(行政刷新の強化・徹底)
地域主権改革を進め、そしてまた、「平成の開国」や「最小不幸社会の実現」の具体策を実施するため、政治主導を強化した上で、行政刷新は一段と強化・徹底します。一昨年の政権交代以降、行政刷新、とりわけ無駄の削減には、従来にない規模と熱意で取り組んできました。しかし「もういいだろう」という甘えは許されません。1円の無駄も見逃さない姿勢で、事業仕分けを深化させます。さらに、公務員制度改革や国家公務員の人件費2割削減、天下りや無駄の温床となってきた独立行政法人や公益法人の改革にも取り組みます。また、規制仕分けにより、新たな成長の起爆剤となる規制改革を実現します。マニフェスト(政権公約)の事業については、既に実現したものもありますが、公表から2年を一つの区切りとして、国民の皆さまの声を伺いながら検証していきます。透明で公正な行政に向け、情報公開法改正により「国民の知る権利」の強化を図るとともに、検察改革を進めていきます。

【6・平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策】
一方、世界に視点を移せば、国際社会が大きく変化している中、わが国周辺には依然として不確実性・不安定性が存在します。こうした情勢にあって平和と安定を確かなものとするためには、現実主義を基調にして世界の平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策の推進が不可欠です。

(日米同盟の深化)
日米同盟は、わが国の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界にとっても安定と繁栄のための共有財産です。既に、オバマ大統領とは、安全保障、経済、そして文化・人材交流の3本柱を中心に、日米同盟を深化させることで一致しています。これを踏まえ、今年前半に予定される私の訪米時に、21世紀の日米同盟のビジョンを示したいと思います。また、米国とは、アフガニスタン・パキスタン復興支援など世界の平和をけん引する協力も強化します。

(沖縄の振興強化と基地負担軽減)
沖縄には今、若者の活力があふれており、観光の振興や情報通信産業の集積などを通じ、日本で最も成長する可能性を秘めています。その実現を沖縄振興予算で支援するとともに、沖縄に集中する基地負担の軽減に全力を尽くさなければなりません。本土復帰から約40年が過ぎましたが、沖縄だけ負担軽減が遅れていることはざんきに堪えません。昨年末の訪問で沖縄の現状を自ら確かめ、この思いを新たにしました。米国海兵隊のグアム移転計画を着実に実施し、米軍施設区域の返還、訓練の県外移転をさらに進めます。普天間飛行場の移設問題については、昨年5月の日米合意を踏まえ、沖縄の皆さまに誠心誠意説明し、理解を求めながら、危険性の一刻も早い除去に向け最優先で取り組みます。

(アジア太平洋諸国との関係強化)
アジア太平洋諸国との関係強化にも努めます。中国の近代化の出発点となった辛亥革命から、今年で100年になります。革命を主導した孫文には、彼を支える多くの日本の友人がいました。来年の日中国交正常化40周年を控え、改めて両国の長い交流の歴史を振り返り、幅広い分野での協力によって戦略的互恵関係を充実させることが重要です。同時に、中国には、国際社会の責任ある一員として建設的な役割を果たすよう求めます。韓国とは、昨年の首相談話を踏まえ、韓国の意向を十分尊重しつつ、安全保障面を含めた協力関係を一層強化し、これからの100年を見据えた未来志向の関係を構築していきます。ロシアとは、資源開発や近代化など経済面での協力、そして、アジア太平洋地域および国際社会における協力を拡大します。一方、北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの日ロ関係の基本方針を堅持し、粘り強く交渉していきます。東南アジア諸国連合(ASEAN)、豪州、インドなどとも関係を深め、開かれたネットワークを発展させていきます。

(欧州・中南米諸国との関係強化)
基本的価値を共有するパートナーである欧州諸国とは、引き続き緊密に連携します。また、国際社会で存在感を高めるブラジル、メキシコなど新興国をはじめとする中南米諸国とは、資源開発を含む経済分野を中心に関係を深めていきます。

(北朝鮮)
北朝鮮に対しては、韓国哨戒艦沈没事件、延坪島砲撃事件やウラン濃縮活動といった挑発的行為を繰り返さないよう強く求める一方、日米韓の連携を強化していきます。わが国は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図るとともに、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求します。拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、全力を尽くします。

(平和創造に向けた貢献)
国際社会が抱えるさまざまな問題の解決にも、世界の不幸を最小化する観点から貢献します。私が協力をお願いした延べ26人の非核特使の皆さんが、被爆体験を語るため世界各国を訪れています。唯一の被爆国として、核軍縮・核不拡散の重要性を引き続き訴えていきます。環境問題、保健・教育分野での協力やアフリカなどの開発途上国に対する支援、包括的な中東和平、テロ対策や国連平和維持活動(PKO)を含む平和維持・平和構築にも、各国と連携して取り組みます。国連改革・安保理改革も主導していきます。

(防衛力や海上保安の強化)
現在の日本を取り巻く安全保障環境を踏まえ、昨年末、安全保障と防衛力の在り方に関する新たな指針として「防衛計画の大綱」を決定しました。新大綱では、日本の防衛と並び、世界の平和と安定や、人間の安全保障の確保に貢献することも、安全保障の目標に掲げています。この新大綱に沿って、即応性や機動性などを備え、高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力の構築に取り組み、いかなる危機にも迅速に対応する体制を整備します。その際、南西地域、島しょ部における対応能力を強化します。また、海上保安強化のため、大型巡視船の更新を早めるなど体制の充実を図ります。海上警察権の強化も検討します。(ブログ管理者注:本日ブログの冒頭の写真に相当する部分。以下同じ)

【7・結び】
本日、国会が開会しました。この国会では、来年度予算と関連法案を成立させ、早期のデフレ脱却により、国民の皆さまに安心と活気を届けなければなりません。また、前国会では、郵政改革法案や地球温暖化対策基本法案、日韓図書協定など、残念ながら、多くの法案・条約が廃案や継続審議となりました。これらの法案などについても十分な審議をお願いすることとなります。

国民の皆さまは、国会に何を期待しているのでしょうか。今の危機を脱し、将来の日本をどう築いていくのか、建設的に議論することを求めていると思います。先送りせず、結論を出すことを求めていると思います。国会質疑や党首討論を通じ、その期待に応えようではありませんか。今度こそ、熟議の国会となるよう、国会議員の皆さんに呼び掛け、私の施政方針演説と致します。

【私の論評】まさしく、お粗末で勉強不足がありありの演説!
菅さんの施政方針演説など読む人はほんどいないでしょうが、読んでみると、突込みどころ満載です。皆さんも、是非読んでみてください。

少し読んだだけでも、おかしく感じられるとこがいくつもあります。

菅さん第1の国造りの理念として平成の開国をあげていて、日本は150年間に、明治の開国と戦後の開国を成し遂げてきており、第三の開国平成の開国に挑むとしていますが、この開国という言葉が奇異です。

明治の開国という概念は、多くの人が一般的としていますが、最近の歴史研究ではこの認識は間違いであるとしています。江戸時代の日本は鎖国していたのではなく、江戸幕府が一手に、貿易と日本人の渡航管理をになっていたというのが、最近の歴史研究が教えていることです。このような大事な演説に古い認識のままというのは大変疑問を感じるところです。

それに、戦後の開国とは、一体どういうことなのでしょうか?明治に開国したものが、明治、大正、昭和の間のいつにまた鎖国したのでしょうか?もし、昭和期の日本が鎖国していたというなら、戦争など起きるはずがないではありませんか?

日本が戦争が負けたことによって、進駐軍からいろいろなシステムを持ち込まれたという事実はあったとしても、開国したということは断じてありません。これを開国と呼ぶのは、菅さんによる独自の珍説であると考えられます。

さらに、平成の開国に至っては、珍説の域を超えて、これはもう、異説の類です。敗戦直後の日本は、海外貿易で生きてきました。戦後の開国どころではなく、昔から大開国しているわけです。

それでも、菅さんの考えを善意に解釈すれば、農業分野では鎖国だったとでも、いいたいのかもしれませんが、これも世界を見渡せば、その認識がおかしいことはだれでもわかることだと思います。日本だけではなく、EUでも、アメリカでも、農業は政府によって徹底的に守られています。

日本と違うのは、消費者の負担において行うのか、政府の負担によるかであって、日本においては、消費者の負担によるところが大きかったということです。それが論議になっているわけで、日本が農業分野で鎖国をしてきたという事実はありません。

基本理念の内容が、あまりに独自すぎて、というより一般の説とはかけ離れた異説になっていて、広く国民がうなずけるものになっていません。まさに、民主党の勉強不足を露呈しています。

基本理念に関してはこのくらいにして、今の社会の関心事は、雇用だと思います。特に若い人の就職に関することだと思います。ところが、菅さんの施政方針演説は、雇用のところに入ると、突然話が細かくなって、新卒者を応援するために、ジョブサポーター制度のサポーターを2000人に倍増したため、去年12月までに1万6000人が就職することができました、などと語っています。しかし、このような内容は、施政方針演説で語るような内容ではないです。

そうして、その後に続く新卒だけではなく、全体の雇用をどう考えるかという段になると、急に話が抽象的になって、雇用をつなぐ、雇用をつくるとか、雇用を守る、といって、さらっとおえてしまって、何も具体的な話はありません。

そうして、その後に続くのは、新卒だけではなく、全体の雇用をどう考えるかという段になると、急に話が抽象的になって、雇用をつなぐ、雇用をつくるとか、雇用を守る、といって、さらっとおえてしまっている。

以前このブログにも掲載しましたが、ジョブサポーターを設置したからといって、急に雇用が増えるわけではありません。まず、当面の雇用を改善するためには、景気を回復させるというのが常道です。でも、菅さんの演説ではそんなことには微塵も触れていません。

まずは、景気を良くするこにより、短期的に雇用も問題は解消されますが、長期安定的に日本の雇用を守ったり作ったりするためには、国内の産業構造を変えていかなければないらないはずです。大量に生産して、大量に販売するような製商品では、もう日本国内では売る場があまりありません。それに、こうしたものは、中国などの新興国がやっていることです。

良く日本国内で、グローバル企業がもてはやされていますが、今の日本でグローバル企業だけが儲かっても雇用には全く影響はありません。グローバ企業は海外で生産するので、国内の雇用にはつながりません。これは、日本の若者や、働く人を外に出してしまうということにつながります。そうなると、さらに日本の景気が落ち込み、日本国内の雇用は摩耗することになります。日本国内で、高くても、あるい少量でも、売れて、利益がしっかりでる製商品をつくる産業構造に転換することが肝要なはず。そうでなければ、長期的に日本で雇用を守ったり新しくつくっていくことはできない。そんなことは、菅さんの演説には、どこにも触れられていません。

さら、外交・安保となると、多くの人の関心事は、最近尖閣問題もあったので、中国とはどうするのかということです。しかし、菅さんは、こうした問題には何も語らず、ただひとこと、中国には、国際社会の責任ある一員として、建設的な役割を求めますというだけです。

ジョブサポーターのことは、詳細に話しても、尖閣問題に全く触れないということは、今の日本の女医を考えれば、驚きですし、国民の重大関心事に正面きって向かい合っているとはいえません。

北朝鮮に関しても、「不幸な過去を精算し」とさらりとのべていますが、これにもとづいて、北朝鮮は現金を要求してくることになると思います。これは自民党政権時代から大きな問題ですが、菅さんこれを施政方針演説の内容に盛り込むことによって、自民党を取り込むために活用しているような気配があります。

日本はこれまで、拉致問題が解決されない限り、日朝国交正常化はありえないとしてきたのが、菅さんの今回の演説は、それを切り替えるものと受け取られても仕方のない内容で。さらに、この演説に先立って、すでに前原外務大臣が、北朝鮮との水面下の接触を認めたという報道もありました。

菅さんの施政方針演説、突っ込みどころ満載です。私は、いい加減なところでやめましだか、皆さんも、よく読んで、新たな突っ込みどころがあれば、是非コメントなど入れてください。それにしても、こうした演説に必要であると思われる打てば響くような言葉が全くありませんね。

このブログには、わずか2年前の同じ月に当時の麻生総理の施政方針演説を掲載したことがあります。麻生内閣短命に終わりましたが、このブログにも再三掲載してきたように、ここ20年間、歴代の内閣のほとんどが、いろいろと理由や理屈を並べ立てながら、緊縮財政ばかりやってきました。その例外は、小渕氏と麻生氏の二人のみで、今読み返して見ると、麻生さんが、“景気回復を最優先”強調していました。当時としては、当然のことだと思います。

しかし、あの頃から今にいたるまで、日本経済が浮揚しそうな気配が見えた時期もありますが、それに関しては民主党は全く関係ありません。麻生氏による経済対策が奏功しかけていたというのが実態です。景気対策は本日を手を打ったから、すぐに効果が出るというものではありません、1年や2年くらいはかかるのが普通です。しかし、その効果も当然ながら、最近では薄れています。

今年においては、来年、アメリカでは大統領選挙があります、そのため、オバマ大統領は本年中に手を打ちせがひでも、来年の頭あたりには景気を良くして、雇用なども改善しなければなりません。その前の年である今年は、強力な手を打って、経済を上向かせるでしょう。そのため、日本もそれに引きずられて景気が若干上向くと思います。しかし、それは、アメリカの景気にひきづられて、輸出などによって、上向くということであって、日本国内の経済や、産業構造が変わるということではなく、金融危機直前に言われていた゛実感なき好景気"と同様なものとなります。残念ながら、雇用はほとんど改善されないでしょう。

これでは、長続きしないとは誰の目から見てもあきらかです。いま振り返ると、この二人の総理大臣の政権が短命だったことが、残念でなりません。ご存知のように、小渕さんは、総理大臣であったときに、お亡くなりになり結局短期政権で終わりました。麻生氏は、ご存知のように、麻生おろしにあっても最後まであきらめずに、総選挙まで持ちこたえましたが、短命政権であったことには変わりありません。

政権交代がなく、麻生総理が任期をまっとうしていれば、少なくとも日本経済はいまごろ復活基調となり、次の展開を考える余裕ができていたはずです。しかし、そんなこととは、つゆ知らず、大部分の国民は、政権交代の道を選んでしまったということです。とても残念なことです。これは、麻生氏が良いとか、悪いとか、自民党が良いとか悪いとか、左、右がどうのということは全く関係なしに、マクロ経済的にみたものの道理を述べているにすぎません。

どうしようもありませんね。いずれにせよ、この有様では、菅政権も長いことはないでしょうし、とてもじゃないですが、長い間政権を担わせてはいけません。

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2011年1月28日金曜日

「中国は虚偽報道が多すぎる」、中国記者協会幹部が苦言―SP華字紙―【私の論評】中国虚偽報道は建国以来のものであり、最近はじまったことではない!!

「中国は虚偽報道が多すぎる」、中国記者協会幹部が苦言―SP華字紙

27日、中国記者協会の幹部が「中国には虚偽報道が多すぎる」
と指摘した。写真は「記者の日」に中国各地で行われたイベント。
2011年1月27日、中国記者協会の[羽/隹]恵生(ジャイ・ホイション)党組書記は「中国には虚偽報道が多すぎる」と指摘した。最近3カ月で各省や委員会による否定や釈明を要した記事は20本。そのほとんどが国の経済や人民の生活に直結した内容だったという。シンガポール華字紙・聯合早報が伝えた。

同書記は「これほど短期間にこれほど多くの虚偽報道が出るのは、建国以来めったにないこと」と危機感を示した。虚偽報道の範囲も芸能やスポーツが多かったのが、最近では政治、経済、社会、文化にまで拡大。報道元も小規模の新聞・雑誌だったのが、都市報や経済報などの大手新聞にも広がり、さらには党の新聞や雑誌にまで及びつつあるという。

こうした現状を受け、「国民は新聞や雑誌などのメディアから中国共産党指導部と政府の権威を感じている。メディアは中国共産党と政府の声と言っても過言ではない。虚偽報道の頻出が国民に与えるマイナスの影響は計り知れない」と警告した。

中国政府は虚偽報道、有償報道、低俗な報道、有害広告を報道界の「4大公害」と呼び、2010年11月23日からこれを是正するための「三項学習教育」活動を展開している。「三項学習」とは、江沢民前国家主席が発表した「3つの代表」の重要思想、マルクス主義新聞(報道)観、職業精神、職業道徳について学習すること。

同書記は「教育活動が始まってもいまだに複数のメディアが堂々と虚偽報道をしている」と指摘。例として、国家発展改革委員会が物価の抑制と安定に着手したことを受け、複数のメディアが「製糖会社が生産を減少したり停止したりしている」と報じた問題を取り上げ、「こうした報道は国民の混乱を引き起こす。しかも事実ではないため、同委員会が釈明する羽目になった」と苦言を呈した。

【私の論評】中国虚偽報道は建国以来のものであり、最近はじまったことではない!!
中国の虚偽報道に関しては、建国以来行われていることであり、上記の記事は何今更という感じです。少なくとも、中国でも、知識人なら全員そう思っていることでしょう。

たとえば、毛沢東が大量虐殺を行ったことは、ほとんど報道されていません。これは、確かに虚偽報道ではありませんが、現実にあったことを発表しないということは、虚偽であることにかわりはありません。これに関しては、以前このブログにも、「共産主義黒書」に書かれてある内容として紹介したことがあります。
毛沢東は、昭和32年(1957)2月27日、「49年から54年までの間に80万人を処刑した」と自ら述べています。(ザ・ワールド・アルマナック1975年版)。周恩来は、同年6月、全国人民代表大会報告で、1949年以来「反革命」の罪で逮捕された者のうち、16%にあたる83万人を処刑したと報告しています。また、42%が労働改造所(労改、強制収容所)に送られ、32%が監視下に置かれたと述べています。
毛沢東は、その後もさまざまな権力闘争や失政を続けましたが、丁抒らの研究によると、大躍進運動と文化大革命によって、2,000万人が死に追いやられたとされています。  
『共産主義黒書』では、ジャン・ルイ・マルゴランが、ほぼ信頼できる数値として、内戦期を除いた犠牲者の数を、次のように総括的に提示しています。
・体制によって暴力的に死に至らしめられた人
700万~1,000万人(うち数十万人はチベット人)
・「反革命派」としてラーゲリに収容され、そこで死亡した人
約2,000万人
・昭和34~36年(1959~61)の「大躍進期」に餓死した人
2,000ないし4,300万人

すでに毛沢東が死去してから、50年以上も経過したというのに、未だに中国はその真相を明るみにだしません。それに、最近では、天安門事件の数字など虚偽のものしか発表されていないのは明らかです。

それに、極めつけは、尖閣問題でしょう。中国領土でもないものを中国領土と言い張るあの、傍若無人さをみれば、中国の報道などほとんどが虚偽であることがわかるはずで。

それに、このブログでは、中国の発表するGDPの数字はほとんど虚偽であることを再三にわたって、その査証もあげつつ掲載してきました。だから、ここでは、再度詳細を掲載はしませんが、下の【関連記事】のところに、URLを貼りつけておきますので、まだ、読まれていない方は是非ご覧になってください。

このような国の報道は、いわゆる、事件・事故の類、それも、政府に直接関係のない報道以外は、全くの虚偽か、あるいは何らかの意図が組み込まれていると解釈するのが普通だと思います。

それに、中国では、建国以来毎年平均で、現在に至るまで、2万件の暴動が発生していますが、その事実も一切発表されません。しかし、大暴動の場合などは、最近では隠しおおせないせいですか、ある程度は発表されるようにはなっています。それこそ、インターネットがない時代でも、中国の大規模暴動はたまたま、その場にいた外国の記者などのレポートで垣間みることができていました。あるいは、観光客が現地をおとずれて、現地の人から知ることができたりしたものです。まさに、人の口に戸はたてられないという事だと思います。

では、何故いまさら上のようなことが、報道されるのかといえば、やはり、最近の通信インフラの踊るべき進展によるものだと思います。一昔まえなら、政府が発表したり、報道機関が報道した内容でも、ほとんどの人がその真偽を確かめようにも、そのすべがなかったのだと思います。

しかし、最近では、ご存じのようにインターネットがあるし、それに、携帯電話も普及しました。携帯電話では、話だけではなく、メールなども送ることができます。ほんの少し前なら、中国の奥地であれば、普通の人が通信設備にアクセスしようと思っても、ほとんどできないし、アクセスして、情報を発信したとしても、簡単に遮断することができました。今は、そうはいかないということです。

だから、上の記事は全く間違いであり、中国では建国以来虚偽報道が蔓延していたのですが、昔は、それを確認する手段がなかったので、虚偽であるとは確認できなかっただけで、今では、インターネットや、携帯電話などがあるので、多くの人が虚偽であると確認できるようになったということです。

さて、中国の虚偽報道に関しては、もともとがそうなので、そんなものだとして、あまり気にかける必要もないとは思います。

しかし、中国発の、「まだまだ発展し続ける中国経済」などのいわゆる中国幻想には注意しておく、必要があるでしょう。最近、多くの人が中国のバブル崩壊などをいう人が増えてきていますが、私自身は、もうすでに2年くらい前から中国のバブル崩壊は始まっている可能性すらあると思っています。

なぜ、そのようなことを言うかといえば、私たち日本人には、バブル崩壊の経験があるからです。ただし、バブルと一口に言っても、数値的に確認できる「バブルの崩壊」と、体感的な「バブルの崩壊」にも最大で数年程度のずれがあったという事実です。

データ上、バブルの崩壊は1990年11月頃始まりましたが、必ずしも誰もが直ちにそれを体感したわけではありません。バブルの崩壊を経済学的現象ではなく深刻な社会問題ととらえるとき目安となる時期は、全国的に地価の下落が明確となり、有効求人倍率や新卒の求人倍率が大きく低下し、企業の業績悪化により学生の内定取り消しも相次いだ(就職氷河期も参照)1993年頃から、不良債権問題や株価低迷によって大手金融機関が次々と破綻に追い込まれた1997年頃にかけての間であり、それまでは(事実としてバブル崩壊が始まっていたにもかかわらず)それを認識できずに楽観的でいたり、そうでなくても、まだ持ち直すかもしれないと期待していた人々がほとんどだったと見られれます。

また、経済政策の失敗によって1997年以降の景気が極端に悪化し、リストラや採用抑制が一層激しくなっているため、本格的に実害をこうむった1990年代後半~2000年代前半を特にバブル崩壊による景気悪化と振り返って捉えている人も多いです。

中国幻想にとりつかれている人たちは、日本のバブル崩壊を真摯に振り返ってほしいです。現実に日本で、バブル崩壊が始まったのは、1990年です。

ジュリアナ東京2008
あのバブルの申し子といわれる、ジュリアナ東京は、バブル景気崩壊直後の1991年5月15日に総合商社・日商岩井(当時)とイギリスのレジャー企業・ウェンブリーの共同出資により設立されました。正式名称は「JULIANA'S TOKYO British discotheque in 芝浦」。芝浦1丁目の「第三東運ビル」の1階と2階の吹き抜けを使用し、総面積は1200m²で、最大3,000人以上を収容できる規模でした。上の写真は、2008年に一日限りの復活ということで催されたときの、イベンとの模様です。

この施設ができたときのことは、はっきり覚えています。当時、バブルの崩壊を数字的には把握していた私はは、かなりの違和感を覚えたものでしたが、世の中そんなものです。このあたりでは、その後失われた20年が待っていることなど予期できた人はほとんどいなかったでしょう。一時景気が悪くなっても、半年、1年で元に戻るくらいの感覚でいた人が多かったと思います。

日本では、こうした感覚の問題でしたが、中国では違うかもしれません。まさに、官製による好景気バーチャルワールドが展開されていて、本当はすでに数年前に、バブルが崩壊しているにも関わらず、ひたらすら、政府によってその事実が糊塗されているだけかもしれません。

このブログにも掲載したように、中国の公表するGDPなどの統計数値はかなり疑問です。それに、大量の大学生が就職できないでいる現実をみてください。中国では、少なくとも、GDP成長が8%を切ると、新規に生まれる労働者の雇用を吸収できなくなるといわれています。であれば、数年前から、大量の学生が就職できないということは、8%を切っていたと考えるのが当たり前だと思います。

中国幻想に酔って、中国に投資、中国で事業などはり切っている会社や、人、ジュリアナ東京のお立ち台で踊っている女の子のようなものかもしれません。さて、いつまで、踊り続けていられることやら?

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2011年1月27日木曜日

Google Japan Blog: Google マップの不動産検索について―【私の論評】情報過多の時代に人の果たす役割は?

Google Japan Blog: Google マップの不動産検索について

グーグル・マップ不動産検索の画面
Google不動産検索は、昨年の夏に始まったばかりですが、もう、中止ということになりました。
詳細はは、以下のURLをご覧になってください。

ここでは、その要旨を掲載しておきます。
2009 年 7 月に米国で、2010 年 8 月に日本でも開始した Google マップの不動産検索機能は、「多くの物件情報を一度に地図上に表示する」というコンセプトを非常に高く評価していただきました。しかしながら、実際のサービスの利用増加にはなかなか繋がらず、様々な側面から検討した結果、断腸の思いではありますが、本年 2 月 11 日をもって、サービスを停止することになりました。サービスの停止は、日本を始め、今日同サービスを提供しているすべての地域(米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国)が対象となります。
Google Japan Blog: Google マップの不動産検索について

【私の論評】情報過多の時代に人が果たす役割とは?
このサービスが登場したばかりのときには、素晴らしいと思いましたが、結局はほとんど利用もしてないうちに、本日の中止の正式発表です。GoogleやAppleに関しては、成長企業なので、あまり失敗に関して報道されることもありませんし、実際失敗なども少ないですから、このような失敗は滅多にないことです。私たちは、こうした情報過多の時代にこのGoogle Mapの不動産検索が失敗した理由について、その背景を謙虚に見定めておく必要があると思います。

このニュースは他のものにまぎれてしまって、あまり大きな扱いがされていませんが、かなり大きなものであると認識すべきものであると考えます。このようなサービスがでてきたときには、従来からある不動産業とも競合して、不動産業自体の存続の危機につながるのではないかと危惧もしましたが、結局はこの結果です。グーグルの持つ、情報処理能力からすれば、このサービスも拡大し、グーグルの大きな収益の柱になると、グーグル自身もそう考えたでしょうし、他の人々もそう考えたに違いありません。

Googleのビジネスモデルは、昔から広告であり、今でもそれは変わらず、収益の95%以上が、広告の収益によるものであることは、以前からこのブログでも、再三にわたり掲載してきました。Googleのあらゆる情報を、整理し統合し、ユーザーに検索しやすくして、検索ユーザーを多く集め、そこで広告を掲載して収益をあげようという目論は不動産情報では失敗に終わったわけです。おそらく、思ったほどには、集客することができず、そのため広告をしても、収益とはならず、これからもその見込がないという判断なのだと思います。

不動産物件というものは、生き物です。だから、不動産を買おうとした場合は、それが、スペインにあろうが、イタリアであろうが、買い求めようと思えば、やはり、自分の足を運んで、その物件まで赴く必要があります。それが、たとえ、投資目的であったとしても、最低限騙されないようにするためにも、自分もしくは、少なくとも代理人に現地に赴むかせて、入念に物件を調査してもらう必要があります。

いわゆる、単純な製商品や、サービスであれば、サイトを見ただけでも判断がつきます。最近では、自家用車の新車や、中古車など、サイトでみただけで、購入する人もいますが、不動産はそうではありません。不動産にはいろいろな要素がからみあっていますから、その全体像を知るためには、データーのみでは無理があります、やはり、物件そのものを丹念に見る必要があります。日当たりから、傷み具合から、近所の施設、近隣の人々の様子、それに、購入の目的によっても、いくつも考慮しなければならない問題があります。そこに住むのか、商店などをたてるのか、あるいは他の目的なのかで随分異なってきます。住む人、利用する人の考えたや、趣味嗜好などでも随分考慮しなければならないことは星の数ほどあります。

こうした問題を解決するためには、やはり、最終的には物件の所有主もしくは、委託管理を請け負っている不動産会社を訪れて話をし、実際に物件を見ることになります。場合によっては、ユーザーの観点から複数の物件を徹底的に調査する必要があります。であれば、多くのユーザーは、物件そのものの情報が詳細に記されてるいるよりは、その物件を所有したり管理している個人や、法人の情報があれば良いということになります。不動産を購入する人は、そういう人に会って、実際に話をしたり、物件のある当該地を訪れ、独自でも調査して最終的に意思決定します。

なかなか、うまいたとえが見つからないのですが、グーグルの失敗は、本来は、あまり提供すべきではない情報を提供したということではないかと思います。本来、グーグルの果たす役割は、あまくで、ディレクトリーなど情報検索のための入り口なのですが、入り口以上の情報を提供して失敗したということです。たとえば、糖尿病の人が治療のための方法を探そうとしたときに、病院、医師、健康法の入り口を提供するべきものを、グーグル自身が、糖尿病そのもののいろいろな型や、その型にそった健康法や薬の内容まで、提供してしまったようなものです。

上では、不動産とユーザーとの関係を医師と、患者の関係にたとえましたが、まさに不動産に関してはそのようなところがあると思います。医師といっても、今では、様々なタイプがいます。外科、内科、小児科の専門もありますし、内科だって、消化器専門とか、循環器が専門などとわかれています。不動産業も、無論そうです。全国一律で情報を提供するなどは不可能で、地域の不動産業はあくまで、地域の専門家です。さらに、不動産業といっても、その中でも専門性もあります。

このように専門性を問われる分野では、いままで、Googleが提供してきた全国一律的な検索エンジンでは限界があります。

グーグルが情報を提供するにしても、こうした情報であれば、まずは、ユーザーの病歴などをあらかじ、知って、その人に相応しい治療法も知った上で情報を提供すべきでしょうが、そこまでは、できません。だから、医師から聴いたりできる情報からすれば、はるかに劣るものしか提供できないわけです。それでは、意味がありません。

不動産についても、医師のように高度で専門的な知識までは必要はないですが、やはり、実際に、ユーザーの声をきき、そこから、取捨選択して、いろいろアドバイスが必要です。検索サービスでは、ここまでは提供できないので、結局Googleも失敗したのだと思います。それだけではなく、個々の物件が全部表示されてしまうので、最初からゲンナリという感じです。無論、検索機能があるのでそれを用いれば良いということになるのでしょうが、それでも、なかなかうまくはいかないです。

たとえば、私は現在函館の柏木町に住んでいますが、そこの物件を探したときのことを考えると、まずは、価格、面積、日当たりなどで条件検索をしたと思いますが、別にどうしても柏木町でなくても、もっと遠くに良い物件があれば、それでも良かったわけなので、また、価格にしたって、自分にとって良い条件がよりみたされていれば、多少高くてもそれでもいいわけです。また、柏木町でなくても、近くに物件があり、そこが条件を満たしていて、低価格であれば、そちらのほうが良いということになります。そうした自分の考えなどを勘案していくつか物件を提示していただける人がいたほうが良いということになってしまいます。

それに今の不動産屋さんだと、車で実際に現場までつれて行ってくれて、説明をしてもらえるので、物件を移動していくうちや、物件を見ているうちに、話をしながら、最初は茫漠とした物件への認識がだんだんまとまって最終的に意思決定に至ることができます。

普通の人はこのようにして、物件を求めるものです。だから、この過程を検索でも再現できるようなシステムがあれば良いのでしょうが、残念ながら今のシステムではそこまでは対応していません。結局は検索システムを見るよりは、不動産屋に直接足を運んだほうが良いということになります。まだまだ、技術的イノベーションがなければ、現在のままでは不動産検索システムはうまくいかないでしょう。

それと、敗因のもう一つの背景は、グーグルが比較的不得意としているSNS機能がなかったことかもしれません。不動産そのものの、あまり細かい情報そのものを提供するよりは、SNS機能をとりいれて、たとえば、複数のユーザーや特定のユーザーと不動産業者が地図を共有できるようにして、ユーザーが見る地図自体は不動産業者が作成し、様々な情報の中から取捨選択したものにするとか。また、不動産情報そのものは、地域SNSの中に含まれているものであり、ユーザーが住もうとする地域の地域情報も様々な人から入手できるとか、複数のユーザーが住みたいと思っているところが、あれば、そのユーザー同士が、実際にその場所に住む前に、SNSを通じてご近所さん同士になってしまっているだとか・・・・・・。あるいは、ユーザーと当該地域の住民との間で交流を促進して、ユーザーがそこに住む前から、親しい関係を築いて、気持ちの上では、ご近所さんになっているとか・・・・。さらに、ソーシャル機能によって、不動産業者がユーザーの好みをより深く知ることができるようにするとか・・・・・。このような配慮に欠けていたように思います。

やはり、今のような情報過多の時代であっても、最終的には人、特に専門的な知識を持った人の果たす役割は大きいということです。

さて、このような情報提供、グーグルですら失敗しているわけですから、他の企業などがやっても望み薄でしょう。世の中にはこのようなことが多くあると思います。これから、情報を最大限活用た事業を目論んでいる企業なども、このような落とし穴にはまらないように気を付けていく必要があると思います。グーグルほどの大手企業になってしまえば、この失敗はさほど大きな問題ではなく、さらに新たな検索エンジンへの参考や、次のステップへの準備への投資ともなりますが、小さな企業にとっては、命取りになりかねません。

情報を高度に活用するにしても、どの程度まで活用するのか、また、どのような情報をどの程度まで提供していくのか、見定める必要があると思います。

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2011年1月26日水曜日

Facebookが導入しようとしている「ソーシャル認証」がわりと良いのではないか?―【私の論評】極度の匿名性は、社会を破壊する!?

Facebookが導入しようとしている「ソーシャル認証」がわりと良いのではないか?
いわゆるCAPTCHAのかわりにFacebookが「ソーシャル認証」を導入しようとしているらしいですね。

これ、なにかというと「ここから先は認証が必要です。さて、この写真に写っているのはあなたの友達の誰さんでしょう?」というものだ。


↑ この写真の人は誰でしょう?という認証方式です。

これ、わりといいな、と思うのは、こういう方式が普及することで「顔も知らない人を登録しないようになる」ということですかね(いろいろ賛否両論やら抜け道やらあるだろうけど)。

よりリアルなソーシャルグラフを認証アルゴリズムを通じて実現してくれるのではないか、と。いろいろすごいなぁ、Facebook。

» Nevermind CAPTCHA, Facebook Asks If You Know Your Friends

IDEA*IDEA 百式管理人のライフハックブログより引用

【私の論評】極度の匿名性は、社会を破壊する!?
フェイスブックの創始者の話が、映画「ソーシャル・ネットワーク」になり、この映画がアカデミー賞の候補になりました。日本は、別として、世界で最大となったSNSである、フェイスブックです。いろいろと、話題も豊富です。

フェイスブックに関しては、実名でないと登録できないということが、日本で会員数が増えないことの要因にもなっているようですが、私は、フェイスブックが世界最大のSNSになったことの理由の一つが匿名性の排除だと思います。無論、実名で登録とはいっても、抜け道はいくらでもあるでしょうが、それでも、ある程度の付き合いをすれば、すぐにそんなことは分かってしまいます。

フェイスブックの上の認識機能が取り入れられれば、さらに、匿名性は低くくなると思います。私自身、世の中にいろいろなSNSがあって良いと思うので、このような機能がつくことは歓迎です。


私は、以前日本のネットの世界における極度の匿名性について、このブログでも掲載したことがありすま。その時の結論を下にコピペしておきます。
どんな世界でも、それが、現実世界であろうと、バーチャルの世界であろうと、まともな付き合いをするのであれば、自分の素性や、考えや、嗜好など表にださなければ、できない事だと思います。それが、表に出ると困るというのなら、ソーシャルメディアは一切使うべきではありません。人とと関わっていく中で、自分と他の人との考えや趣味・嗜好が異なったり、相反するのは当たり前であって、それを避けて通っていては、もともと人間関係など構築できません。その違いを乗り越えて、妥協点を見出すというのが、人間関係というものです。どうしても、自己を偽らないと他者との付き合いが出来ない人は、すでに自分の精神が崩壊しているとみなすべきです。
そうして、インターネットの匿名性が、日本で新たな社会的イノベーションが起こらないことの背景にあるのではないかということも掲載しました。その内容を以下にコピペします。
 日本のように、あまりに匿名性ばかりにこだわっていては、まともな付き合いもできないし、有用な情報も入ってこないということになります。それに、Facebookの中で行われているようなビジネスチャンスをつかむこともできないと思います。ビジネスチャンスまでいかなくても、SNSのなかにいろいろと転がっているべき機会など、受けることも提供することもできなくなります。そうして、ただのバーチャルワールドの中で時間つぶしにすぎなくなると思います。  
日本では、いわゆる技術的なイノベーションは世界トップクラスですが、社会的イノベーションについては今一歩というところがあります。だからこそ、最近では、日本ではアップルがひきおこしたようなな社会的イノベーションもあまり見かけなくなったのだと思います。私は、その原因の一つとして、上記のような匿名性による弊害もあるのではないかと危惧しています。 
匿名に関しては、相手が良くわからないうちとか、安全を危惧してのことであれば、問題はないですが、どこまでも、自己を偽ってでないとインターネットを使えないような人は、すくなくとも、twitterやその他のSNSなどのソーシャル・メデアは使うべきではありませんね。そういう人は、ソーシャル・メディアの中では、この女子大生と変わらず、他の人に迷惑をかけるだけの存在だからです。
極度の匿名性に関しては、上記でも述べたように、社会の破壊につながると思います。精神が崩壊した人同士が、SNSで共倒れになるのはいた仕方ないにしても、まだ精神的に幼い子どもやそうではない人まで巻き込むことには問題があると思います。日本でもこのような認識機能などが、多くのSNSに取り入れられ、匿名性が低いSNSも出てくることを期待します。

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2011年1月25日火曜日

「忠臣蔵で抜けちゃった侍」石原氏が与謝野氏批判―【私の論評】道理を知らない小心者に日本の経済を復活させることは出来ない!!さらに悪化させるだけだ!!

「忠臣蔵で抜けちゃった侍」石原氏が与謝野氏批判―【私の論評】道理をしらず、肝っ玉のないものに日本の経済を復活させることは出来ない!!さらに悪化させるだけだ!!


東京都の石原慎太郎知事が23日、テレビ朝日の番組に出演し、応援団長を務める「たちあがれ日本」を離党し経済財政担当相に就任した与謝野馨氏について「忠臣蔵で抜けてしまった侍」と批判した。

与謝野氏が政策通とされることにも「あの程度の識者はたくさんいる」とし、「心配?心配していない。軽蔑しているだけだ」と吐き捨てた。

石原氏は14日の定例会見で与謝野氏の祖母、与謝野晶子の詩「君死にたまふことなかれ」を引き合いに出して「君恥かきたもうことなかれだ」と批判。13日にも記者団に「ばかじゃないかね。これで彼は終わりだ」と話していた。


【私の論評】道理を知らない小心者に日本の経済を復活させることは出来ない!!さらに悪化させるだけだ!!
与謝野さんは、たちあがれ日本全体を率いて、連立政権協議を民主党と行い、その結果政策で合意できれば、政権参加ということは、何の問題もなかったと思います。ところが、たちあがれ日本を離党して無所属で「単騎入閣」ということなので、様々な批判をよんでいるのです

一人であっても、重要閣僚である以上、菅首相と与謝野氏がどのような政策協議を行ったのか、そしてその結果どのような合意に達したのかを明らかにすべきです。そして、その政策合意が民主党のマニフェストと異なる場合、どうするのでしょうか。

マニフェストを修正するのなら、そのマニフェストで政権交代を実現した以上、解散総選挙で「修正マニフェスト」について国民の信を問うべきであったと思います。

それに、与謝野さんの場合、財政再建ばかりに力点を置きすぎることは、以前にもこのブログで指摘しました。

これに関して、高橋 洋一氏が現代ビジネスに『「消費税増税」賛成の裏側に大新聞の「非競争的体質」あり20年間成長なき日本の病巣』という内容で興味深い記事を書いていたことを掲載します。
2008年のセンター入試試験にもこんな問題が出ている。 
中央銀行が行うと考えられる政策として最も適当なものを以下から選べ 
1.デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2.インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3.不況期に市中銀行から国債を買い入れる
4.好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる 
もちろん正解は3。ところが、2000年代の現実の日銀は1をやった。この問題は普通の高校生はできるが、日銀総裁や日銀の御用学者やマスコミには難しいらしい。実際に日銀のやったことは、センター試験も落第のデタラメだったので、日本のデータを一見しただけでは、ベースマネーと物価上昇率の関係がよく見えない。 
この話は、与謝野氏の「インフレは悪魔」という発言に関係する。 
2006年3月、日銀が量的緩和を解除したとき、与謝野氏は小泉政権で経済財政担当大臣だった。私は竹中総務大臣補佐官として総務省にいた。量的緩和の解除は消費者物価が安定的にゼロ以上になることだった。その当時、0.5%程度の統計数字がでていた。ところが、消費者統計には上方バイアスという高めに数字がでるクセがある。総務省は物価統計を所管しており、そのクセを知っていたので、竹中大臣は安定的にゼロ以上になっていないと主張し、量的緩和解除に反対だった。ところが、与謝野氏は、それを無視して、量的緩和解除に賛成した。 
要するに、デフレのままでいいと言ったわけだ。それは名目成長はいらないと同じで、与謝野氏の経済成長は失われた20年の継続である。 
与謝野氏も、この問題には正解を出せないのだと思います。ようするに、日本では、多くの関係者が、バブル崩壊によって、インフレの恐怖が心底刻みこまれ、「インフレは悪魔」という観念を持ってしまったのです。これに、関しては、あの経済学者のボール・クルーグマン氏が、このような観念を持つ人々を揶揄して、「日本の現状は、まるで、車で人を轢いてしまい、人を轢いたことをおそれるあまり、そのまま通りすぎれば良いものを、恐ろしさのあまり、車をバックさせ、人を二度轢いているのとおなじような状況だ」と酷評していました。与謝野氏はその急先鋒ということです。

実は、日本では、デフレが20年も続いており、その間、マクロ経済がデフレのときにこうしなさいと教えていることを、歴代のほとんどの政権が、やっていなかったのです。この間、何かをやったとすれば、小渕さんと、麻生さんが、大規模な財政出動を行ったのみです。

多くの人が、財政出動では日本の経済は浮揚しないとしていますが、この20年間で、わずかの期間で、しかも日本の経済の規模からみれば、わずかの出動では焼け石に水です。残念ながら、ご存じように、小渕さんは、政権担当中にお亡くなりなり、麻生政権も短命に終わってしまいました。他の政権はいろいろ理由を並べ立てたりしていますが、結局は緊縮財政ばかりやってきました。

だから、これをもって財政出動は効果がないなどとは言えないと思います。それは、過去にアメリカがやってきた財政出動の規模と比較すれば明らかだと思います。

無論、金融政策も重要ですが、金融政策だけでは、デフレは克服できません。大規模な財政出動と、金融緩和策の両方がうまくかみあって、デフレ克服は成就するとマクロ経済学でも教えています。

石原さんの動画を出したので、ここでついでに掲載しておきますが、東京都の新銀行東京の失敗は、「中小企業にお金を貸す銀行がないから、中小企業は苦境に陥っている、だから、中小企業にお金を貸す銀行があれば、中小企業は苦境に陥らずに済む」という基本的な理念に沿って設立されたものです。

しかし、私は、この仮定は、間違っていたと思います。「中小企業は銀行からお金を借りることができないから、苦境に陥っているのではなく、わかりやすくいえば、仕事がないから苦境に陥っているのです」だからこそ、新銀行東京は失敗したのです。

いくら金融的な支援があったとしても、仕事がなければ、中小企業は救われないのです。だからこそ、財政出動も必要なのです。財政出動するから、中小企業に仕事ができる、仕事があるなら、銀行からもお金を借りる。このあたり、うまく、まわせば、各方面で、仕事が増え、銀行からのお金も市中にまわり、デフレから克服できるのです。財政再建など後回しで良いのです。まして、増税などとんでもありません。やることが逆です。デフレの最中に実施すべきは、減税です。以上の話は、かなり、大雑把にまとめていますが、マクロ経済学的には正しいと思います。

冷静に考えれば、与謝野氏は、小心物なのです。与謝野さんにかぎらず、谷垣さんをはじめ、この日本のデフレの状況を見て、財政再建ばかり、叫ぶ連中は、まるで、おくびょうなサラリーマンが、癌を患っているのに、会社の仕事ばかり心配して、癌の手術が怖い、会社の仕事が心配で、癌の手術などしたくないといっていると何も変わりません。小心物がいくら頑張っても、日本の経済を復活させることはできません。今の日本には、もっと肝っ玉の座っていて、道理のわかる政治家が必須です。無論菅さんでは、無理ですね。


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2011年1月24日月曜日

山形県が5,600台のPCをOpenOfficeに移行 - アシストが研修用コンテンツ提供―【私の論評】このような商売もあるということに、改めて驚き、そして、日本人より日本人らしいトッテン社長に敬意を評します!!

http://journal.mycom.co.jp/news/2011/01/24/081/index.html


【私の論評】このような商売もあるということに、改めて驚き、そして、日本人よりも、日本人らしいトッテン社長に敬意を評します!!


アシスト社長、ビル・トッテン氏
山形県が、OpenOfficeに移行ということで、このこの動きは、他県にも広まっていくと思います。以前は、確か、3年くらい前に、秋田県の大館市でOpenOfficeに移行したことが、雑誌に掲載されていたのを覚えてます。

その雑誌でも、いっていたのですが、MSOfficeと、OpenOfficeの違いは、表計算でてOpenOfficeのほうが、点線を書くことができないというくらいなものだったと思います。どちらも、高機能なものですから、細かなところまで確かめれは、他にも違いはあるのでしょうが、マクロも関数も、ほとんど互換性がありますし、通常役所で使うのなら、OpenOfficeで十分です。

MSOfficeは、通常、パソコンにバンドルされて販売されているので、あまり価格を意識したことがない人が多いようですが、いまでも、高価格パソコンには通常MSOfficeが搭載されているのが普通で、これは、パソコン本体の価格に上乗せされているのか普通です。それに、無論、今なら、Windows7などのOSもそういうことです。

しかし、OppenOfficeなら、無料でインストールができます。だからこそ、山形県のような事例これからも、どんどん出てくると思います。何も、わざわざ、MSofficeブリインストールの高いパソコンなど購入する必要はありません。

そもそ、マイクロソフトが、提供しているSKYDRIVEというストレージ・サービスでは、オンラインて、Office同等の機能が使えるようになっています。これに、先立つこと、数年まえから、グーグルでは、Docs & Spreadsheetなどのクラウドサービスを提供していて、特に、最近では、ワープロも、表計算も、オンラインで使えるようになっていますし、それに、かなり高機能になっているうえ、さらに、MSoffice、Openofficeとも互換性があり、これらのドキュメントをクラウドにアップロードしたり、クラウドにあるドキュメントを、これら両方のOfficeの形式でダウンロードすることもできます。

ようするに、別にMSofficeがなくても、それと同等のものが、ダウンロードできたり、オンラインで、クラウドで使えることができるということです。それに、これらはすべて無料です。であれば、普通は、山形県のようにするのが当たり前だと思います。

しかし、MSと、Openは、互換性はかなりありますが、微妙な操作の違いがあることも事実です。そのことが、普及を妨げてい可能性もありますが、さすが、アシスト、こんなところに目をつけたんですね。

ビル・トッテン氏最近、テレビなどであまり見かけないので、どうなさっているのかと思っていましたが、久々に見かけたので掲載させていただきました。アシストは、以前、まだ、Web2.0や、クラウドなどが日本でも使われるようになる前に、格安のソフトで大変お世話になった覚えがあります。名刺管理ソフトや、ちよっとした管理用データーベースなど、普通に買うのと比較すると、数分の1から1/10くらいで販売されていたのを良く覚えています。

このかた、確かアメリカ人なのに、日本にかなり前から進出してきていて、かなり親日的な方です。というより、日本人よりも日本人らしいです。

まずは、一旦雇用した社員は絶対にリストラしないとして、いまの厳しい時期に頑張っておられます。

それから、アメリカの完全自由主義経済に関しては、昔から否定的で日本的経営の良さを強調しておられました。

アメリカや日本でも、巨大な資金を動かすファンドマネジャーなどがもてはやされた時代がありましたが、トッテン社長はあるテレビ番組で、「ファンドマネジャーが尊敬に値するのですか、皆さん、賭博師を偉いとおもうのですか・・・・・」と否定的でした。そうして、金融危機がおこる何年も前から、このような危機を予測しておられ、いずれ破綻が訪れることを事あるごとに語っておられました。いまから、思えば素晴らしい見識の高さです。

ビル・トッテン氏は、いわゆる社長ブログも書かれています。その内容、また素晴らしいです。一般的な日本人よりも「はるかに日本のことを愛し、悩み。考え抜いている」と感じてしまうのは、おそらく私だけではないでしょう。


プロフィールにもありますように、氏は,1969年に初来日し,1972年に株式会社アシストを設立しました。そして、2006年には、日本への帰化が認められ、国籍までも日本人になったのです。

氏のブログを読んでいると、私たちが忘れつつある「古きよき美徳」を思い出させてくれるような気がします。そして、日本は遅れているとの思い込みのもとで、気がつけばグローバリズムに巻き込まれて、物質的にも精神的にも貧しくなっていることにも気づかされます。

海外から来た人の言葉にはとりわけ素直に耳を傾ける日本人にとって、氏の存在と説得力は格別てす。ビル・トッテン氏の情報発信のおかげで、同社のイメージは、「外資系」と聞いた時に多くの人が感じるイメージのとは異なる、日本的な美徳に溢れています。

先日は、このブログで、アップルのCEO、スティーブ・ジョブスに関して、彼の「死を意識する」生き方から、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」という日本人の理想を体現しているという内容のものを書きました。ジョブスの場合は、死を意識する生き方が、昔の日本人の理想を体現していると思いますが、さりとて、当然のことですが、彼自身が日本で長く生活したこともなく、彼のライフスタイルそのものは、やはり、アメリカ人であり、思考形態も、物言いも、やはり、アメリカ人です。

しかし、トッテン氏は、国籍も日本ですし、今の日本人と比較すると、考え方や、物言いが本当に日本人そのもののようというより、それを超えて、日本らしさを体現していると思います。皆さんも、是非このブログ是非読んでみてください。

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2011年1月23日日曜日

強硬な中国と友好的な中国=2つの中国が存在する理由とは?―米誌―【私の論評】中国はもともと一枚岩の国家ではない!!

強硬な中国と友好的な中国=2つの中国が存在する理由とは?―米誌



中国共産党万歳と書かれた建物

2011年1月18日、米誌タイム(電子版)は「中国の全く異なる2つの顔=強硬さと友好」と題した記事を掲載した。21日付で環球時報が伝えた。以下はその内容。

胡錦濤(フー・ジンタオ)中国国家主席の訪米を、米国側は多くの具体的問題を解決するチャンスにしたいと考えていた。一方、中国側は首脳会談の意義をむしろシンボル的なものととらえており、長年の懸案の解決には否定的な姿勢。こうして訪米をとりまく友好的な雰囲気はまたたく間に失われていった。

「中国は世界を見ている。世界に中国を広めたい」とは、ある中国外交官の発言。自国の魅力を伝えたいという中国の姿勢は多くの人に深い印象を残した。こうした友好的な顔を持つ一方、南シナ海問題や尖閣諸島問題で中国は絶対に譲歩しない、あくまで強硬姿勢を貫く顔をも持っている。

この二つの顔をどう理解するべきか?カギは誰が発言したかにある。かつて中国の声は一つだったが、今や政治的決定者は単一ではない。特に外交分野においては。外交部のみならず、商務部や国家安全部、財政部、そして国家発展改革委員会など異なる利益主体が外交政策に口を出している。そればかりか国有企業や地方政府もまたその中に加わっている。

ストックホルム国際平和研究所は昨年発表したリポートで、「中国外交政策の権力はすでに分散化している。外国人はある決定がもたらす利益が、どのような機関と関連しているか、見極めなければならない」と指摘した。

一つの例として、中国の深海潜水艇が昨年、南シナ海海底に到達した時のことが挙げられる。中国英字紙は深海潜水艇開発という科学的成果として報道したが、一方で中国語メディアは潜水艇が海底に立てた中国国旗に注目した。中国外交を見る時、あらゆる事件について2つの顔があるべきだと理解しなければならない。

【私の論評】中国はもともと一枚岩の国家ではない!!
この米誌タイムの上記の記事、私には、全く理解できません。なぜなら、中国という国は、最初から二面的どころか、分裂国家であり、もともと一枚岩であった時期など建国以来一度もなかったからです。

中国は長期一党独裁の国家です。しかし、党内における権力争いは、熾烈を極めています。代表なのは、共産主義(毛沢東忠実派)と、改革開放派の争いです。そのほかにも、利権をあさる長老・二世らと、汚職の撤廃を考える者の対立です。

また、「軍事・経済ともに大国」になったように見えるあるいは、見せかけている、中国、2つの考えに分裂しています。
一つは、アメリカのように、国際的義務を果たし、一人前の先進国の誇りを得ようとする勢力。
もう一つは、アメリカのように、国際社会に我を通し、覇権主義に走ろうとする勢力があります。

「竹のカーテン」から漏れ聞く政局は掴みどころがないですが、あらゆる面において、中国政治が一枚岩でないことが窺えます。

加えて、増長する軍部もあり、権力・利権の争いはまるで、バトル・ロワイアルの様相です。それに、増長する軍部ではありますが、実は正式に中国には存在しません。そうなのです、中国の人民解放軍は、そもそも、中国以外の他の国との軍隊とは全く異なります。

そもそも、人民解放軍は、共産党の私兵であり、共産党が直轄している組織です。

中国人民解放軍の軍区
人民解放軍の組織としては、中華人民共和国軍事委員会の下に総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の四総部があり、その下に海軍、空軍、第二砲兵(戦略ミサイル部隊)および七大軍区が置かれています。 また国防科学技術工業委員会、軍事科学院、国防大学なども軍区級組織です。国務院の国防部は外国との軍事交流などを担当しているだけで、人民解放軍に対する指揮権を持っていません。国務院の管轄下にない解放軍はあくまで党の軍隊であり、国家の軍隊ではありません。

党と軍の関係については、憲法で中央軍事委員会の指導下にあると規定されているが党主席とは記載されていない。そのため、毛沢東など歴代の最高指導者は中央軍事委員会主席を兼任している。

それに、この七大軍区というのが曲者で、法律はともかく、現実には、この軍区の上に、地方の共産党があり、これらの軍は、地方共産党の私兵というのが実体です。こうして、地方の共産党の直下にある、人民解放軍が、独自に私兵軍団をもっており、そのなかには、核兵器を持つ軍区が複数あったり、海軍を持つ軍区が複数あるという具合です。全く普通の国の軍隊とは、根本からして異なるのです。

このような、かなり多くの価値観が存在して、分裂していて、統一国家としてのまとまりのない中国、それは、当然中国の「外交のブレ」にもつながっています。

あの尖閣問題で、中国が傍若無人とも受け取れる対応をしたのは、私の類推では、おそらく、2012年の人民代表大会における、代表者の選挙、すなわち、次の主席選びに標準をあわせた、保守派の揺さぶりと見ています。これは、以前のブログにも書いたことですが、たとえ、この類推が外れていたとしても、似たような構図の中でおこったものと思われます。

ただ、どこのどの派閥であれ、いったん起こってしまったものに関して、あそこで日本政府にたいして軟弱な姿勢をみせれば、反対派につけいる隙を与えることになってしまうことを恐れて威圧的な態度をとったというのが真相だと思います。その背景には、何等の深謀遠慮もなく、ただただ、日本を含む他国のことなど考える余裕もなく、即物的に反応していたというところだと思います。

尖閣問題を冷静に振り返ってみてほしいと思います。この問題で中国が得たものは、国際的な批判だけです。オリンピックや、万博で、一定の国家の威信を高めることに成功したにもかかわらず、ふたたび異質な中国の実態が暴かれてしまいました。世界を相手にして、中国が勝ち取れたものは、何もありません。それに、最近では、中国が対外的に外交で成功した試しなどほとんどありません。長年の中ソ国境紛争の火種となっていた、領土問題に関しても、結局は中国はロシアに対して、ほとんど一方的といえるほど、譲歩して解決したばかりです。このことは、日本でもほとんど報道されませんが、中国国内では、皆無といって良いほど、報道されていないようです。これを知ったら、多くの中国人民は憤激することでしょう。

日本とのイザコザでも、結果として、尖閣列島を奪ったわけでもなく、何かしらの既成事実を得たわけでもありません。民主党のミスジャッジで行った「船長の解放」は、それ自体が日本の主権を譲ったことにはなりません。それが国内外にどう取られたかはともかく、少なくとも中国は、日本および他国に警戒されるようになり、逆に目立った強硬策を取れないようになっています。特に、アメリカの態度を硬化させ、終戦後日本の自衛隊も含んだ、演習では最大規模の演習であった「キーン・ソード」を実行させる結果となりました。この戦後最大級の演習にたいして、中国の軍区レベルや、一部のマスコミからは抗議の声明が一部からはあったようですが、上層部からは目立った抗議はありませんでした。

現実には、分裂した中国が、「右往左往」したあげくに、強硬措置を取らざるをえなくなってしまったことを、日本政府がそうとも知らずに、勝手に、翻弄されていたというのが真相です。

このような背景を知って対処していれば、日本政府としても、翻弄されず、冷静に受け止めるなり受け流すなりしていたと思います。そんなところで、慌てるから、多くの国民が、本来外交ベタの中国に対して、「中国のほうが日本よりも外交が数段上手」などと見られる結果を招いてしまったのだと思います。全く、民主党困ったものです。自力でできないというのなら、外務官僚の優秀な人間にでも任せておけば、これほどの醜態を晒さずにすんだことだと思います。この問題実際には、政府が懸念したような、戦争になるとか、日本国民が憤激するとか、中国との関係が悪化するなどの心配など杞憂といっても良かったと思います。

さて、上のタイムの記事に戻りますが、どうして、いまさふって湧いたように、二つの中国があるなどという記事を掲載したのか、その意図がよく見えません。アメリカでも、多くの人は、このような実態を知る人が少ないので、2012年に開催される党大会を視野にいれて、これから、また中国の論理的・理性的には、理解不能の異常行動が多発する危険があるので、翻弄されないように気をつけましょうくらいの趣旨で警鐘を鳴らしているというのなら、直裁にそう伝えれば良いと思うのは私だけでしょうか?

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2011年1月22日土曜日

海外進出進めば「日本で雇用、5分の1」 シャープ会長―【私の論評】本当の国際競争力をつけるには今や日本国内の内需を拡大すること、消費拡大をすることにつきるだが・・・・・?!

海外進出進めば「日本で雇用、5分の1」 シャープ会長


シャープの町田勝彦会長
シャープの町田勝彦会長は21日、副会頭を務める大阪商工会議所の記者会見で、国内の雇用について「電機業界は日本のウエートをどこも5分の1ぐらいにしか考えていない。海外進出を進める限りは雇用も5分の1になる」と語った。円高や負担の重い法人税、貿易自由化の遅れなど国内生産の障害が解消されなければ、雇用は維持できないとの見方を示した発言だ。

12月1日時点の大学生の就職内定率が過去最低の68.8%となったことなどへの感想として述べた。4月に定期採用を行う慣行についても「海外では新卒とかは関係ない。拠点が海外に移って現地採用が増えるなかで、国内での定期採用が何人かと聞かれても、そういうことは考えなくなった」と話した。

来年度の税制改正で、法人税減税が研究開発減税の縮小とセットになったことについては、手代木功副会頭(塩野義製薬社長)が「国内に雇用を残すなら国際競争力のある分野しかないが、研究開発減税を減らされると『研究も米国で』となる」と語った。

【私の論評】本当の国際競争力をつけるには今や日本国内の内需を拡大すること、消費拡大をすることにつきるだが・・・・・?!
法人税減税が、研究開発減税とセットになったことについては、あまり知らない人も多いのではないかと思います。もともと、法人税や、研究開発減税など中小企業などにはあまり縁がない事なので、無理もない事だと思います。

しかし、民主党のやること、何でも似通っているようです。子供手当てなども、マニフェストで公言しておきながら、結局財源不足で満額支給しないとか・・・・。昨年暮に出された、税制改正大綱に関しても非常に評判が悪かったです。将来に向けた改革の姿を描けていないため、場当たり感が強いです。

「とりやすいところを狙った」との批判も多いです。

政府税制調査会が「格差是正」を掲げ、こうして税による所得再分配の機能を生かそうとしていますが、法人税の5%幅引き下げの財源も、なお5千億円ほど不足したまま、見切り発車のような税制改正大綱の決定となりました。これは、今回の税制改正の大きな欠陥の表れであるといえます。


菅政権が消費税の引き上げを含む税制の抜本改革の全体像を描けていないため、財源確保のめどすら立たず、国民が負担を分かち合う構図も見えてこない、ということです。

税制は国民生活の重要な基盤です。どんな社会にするために、どのような税制をめざすかがあいまいなままでは、社会保障の将来像も描けません。

その場しのぎでツギハギを重ねる手法は、いよいよ限界に来ました。やはり抜本改革と 正面から向き合うしかないことは、もはや明らかです。

こんな様子をみていて、多くの経営者が上記のシャープの会長のような考えを持つことは、ある意味致し方のない事だと思います。

しかし、このままでは、雇用もますます悪化、さらには、本来日本の良さを活かして、中国などの新興国にはできない、先進国でありそのなかでも、特に基本的インフラが整っている日本国内での内需拡大、消費拡大などをするなどのことができなくなります。

私は、確かに、多くの企業が海外を志向することになるのは、無理からぬところがあると思いますが、本来的には、もし海外、しかも中国などの新興国での市場にばかり目を向けていては、結局その市場は先進国の50年前の市場のようなものであり、いくら市場を獲得できたとしたって、結局は先進国にとっての新たな展開やイノベーションの機会はなくなる事と思います。

先進国が、仮に、新興国の市場のすべてを席巻できたとして、それが良いことかといえば、決してそうとはいえません。仮に、それに成功したとしても、技術的にはすでに陳腐化したものを展開できるだけで、21世紀の先進国の社会を変える大きな展開を期待することはできません。それに、新興国の市場のみが、先進国が成長できる唯一の市場になったとすれば、新興国の都合などによって、いつも振り回されることになります。

さらには、新興国も技術力をつけてきているので、いずれ自分の国の市場に必要なものは、先進国に頼らなくても、自前で市場に投入できるようになるし、そうすることでしょう。そうなれば、新興国のほうが、はるかに人件費が安いですから、いずれその分野で、逆に、先進国に進出してくることになります。そうなれば、先進国は新興国の後塵を拝するしかなくなります。このことは、このブログでも、再三にわたって掲載してきました。

現在では、先進国は自国の内需拡大、消費拡大を行うべきです。そうすることによって、先進国の進んだ社会におけるイノベーションを期待することができます。

私は、こうしたイノベーションについては、具体的にこのブログで掲載したことはありませんが、少し思いつくだけでも、そのような分野はたくさんあると思います。高度に進んで、ユビキタス化したITを活用して、さらに、家電などスマート化するとか、家屋自体をスマート化、交通システムをスマート化するなど、夢のような分野は沢山あります。さらに、先進国で顕著な少子高齢化に対応することで、大きなイノベーションが期待できると思います。

たとえば、検針メーターなどすべて、スマート化した場合、電気もガスも検針業務がいらなくなるばかりではなく、リアルタイムで、電気の使用量、ガスの使用料がわかるため、地域や、日本全体での電力やガスの供給に対して様々な手を即座に打つことが可能になり、これによってもたらされる、利益は計り知れません。しかし、21世紀のイノベーションは、20世紀末から変化していて、21世紀に顕著になった先進国の大きな社会的大変化に対応する形でなければ、進めることはできないでしょう。このことに、ついては、再度このブログにも掲載していくつもりです。

しかし、新興国の市場では、まだまだ、これを導入するなどの域に達していません、たとえば、中国などでは、沿岸部のごく一部では、その域に達しつつあるところもありますが、少しでも奥地に入ってしまえば、まだまだ、遅れていてその域には達していません。このようなところで、スマート化するといっても、無理があります。部分的スマート化などをするしかないでしょう。

というより、多くの人が、先進国では当たり前になっている、情報端末なども持っていないというのが、実情だと思います。こうしたことに対処して、いわゆるBOPビジネスを展開するのも企業のありかたとして、まともな生き方のひとつである事には違いないと思います。

しかし、本来であれば、日本にこそ、21世紀の特に都市社会のイノベーションの中心となるべき、挑戦の場が至るところにあるはずです。本来であれば、政府はこのようなことのために税制をも含む、インフラを整備すべきです。

私自身は、目先のことを考えて、多くの企業が新興国などにシフトするのは致し方ないことであると考えますが、それでも、日本の市場での開発なども着実に進めていくところが、次代の覇者になると思います。それを忘れた企業には、明日はないでしょう。

それから、かねてから、大企業の経営者の方々の発言にも疑問に思うことがしばしばあります。その典型は、中国幻想であったりしますが、それよりも何よりも、日本国政府に対して、直裁に、マクロ経済学的見地や社会的な観点から、大規模な財政出動をしろ、大規模な金融緩和措置をとれと言わないのでしょうか?なぜ、法人税減税程度のチマチマしたことしか言わないのでしょうか?仮に、法人税減税がたとえば、研究開発促進税制などが廃止されないで、実現したとしても、このデフレ基調ままでは、企業にとっても何らの抜本的解決にはならないはずです。

なぜ、消費税増税など、このデフレ基調が続いている最中に実施するとか、、財政再建をするのは間違いだとはっきり言わないのでしょうか?今の日本では、過去20年間も、失われた20年ということで、基本的にデフレがつづいていて、これは、財政再建などよりもよほど深刻な、人間でいえば癌のような病状にあります。少しでも、デフレ解消の方に傾けば、国内景気も今よりは良くなり、日本国内での、事業展開はやりやすくなるし、それに、雇用も改善できるはずです。本来、このような声が、産業界の大勢を占め、ことあるごとに政府に大して厳しい要求があっても良いはずなのにそうはならないというのはどうしてでしょうか?

残念ながら、大企業の経営者の方も、企業という枠の中では、ものが考えられても、マクロ経済や世界規模の経済などまでには目が向かないということなのでしょうか?不思議です。

最近『ハーバードの「世界を動かす授業」』がビジネス書としては日本国内で7万部以上と破格の売れ筋となった著者のリチャード・ヴィトー氏も最近WBSに取り上げられていて、日本に対して、以下のような提言をしていたことは、このブログでも以前に掲載しました。
日本国内の消費を拡大する。 
海外の事例をみること。
この言葉の持つ意味は深いです。ヴィトー氏は、やはり、日本国内の消費を拡大することを強調しています。そうして、これは、現状のままでは困難なことです。やはり、政府による手助けも必要でしょう。財政再建ばかり注目している場合ではないということです。それに、個々の企業や、経営者の努力も必須であると思います。

それから、海外の事例を見るということは、各国の経済、社会を具体的な数字を見て全体像を理解するということです。そこから、たとえば、その国でビジネスをどのうよにすれば良いのか全体像がみえてくるということです。無論、外国の事例をそのまま日本で実施するわけには、いきませんが、根本を見ることにより、日本での事業も理解できるようになるということだと思います。

逆説的ではありますが、私は、このようなことを通じて、大手企業が日本国内で何をすべきか、それこそ、政治や経済、社会なども含めて、さらに海外のそれをも具体的に理解し海外、特に新興国の市場に進出すれば、成功することもあると思いますが、それなしに海外に短期的利益を求めて進出しても、長期的には成功はおぼつかないと思います。ヴィトー氏の、MBAで教える教科書は、最初の頃から、そうして今日に到るまで、日本の奇跡の経済成長から始まっています。このことは、今日の私たち日本人に意義深いものであり、示唆に富んでいると思います。

こうしたことから、私は、日本国政府に対して厳しい注文をつけない、大企業の経営者の物の見方には疑問を持たざるをえません。現在の大企業の経営者の多くは、80年代までの考え方から変わっていないのではないかと懸念しています。無論、例外はありますし、さらには、あまり報道もされないこともあって、私も含めて、多くの人が気がつかないだけで、実は優秀な企業経営者が沢山いて、もう海外の事例や日本のそれなどの研究など十分にしていて、日本での消費拡大の機会を虎視眈々と狙っているのかもしれません。あるいは、海外の優れた經營者がそれを狙っているのかもしれません。一昔前の、明治維新や、終戦直後の日本のように、近い将来新興勢力が旧い勢力にとって変わるのかもしれません。政治も、産業も本格的な新旧交代(年齢、経験を意味するのではなく、新たな考えと旧い考えの交代という意味)の時代を迎えているのかもしれません。

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政治主導、反省・行き過ぎ… 菅首相「脱・脱官僚宣言」―【私の論評】おしゃべり空き菅に明日はない?!

政治主導、反省・行き過ぎ… 菅首相「脱・脱官僚宣言」



菅直人首相は21日午前、内閣改造を受け各省事務次官らを首相官邸に集めて訓示し、民主党が掲げる政治主導について「現実の政治運営の中で反省なり、行き過ぎなり、不十分なり、いろいろな問題があった」「いい形の協力関係をお願いしたい」と述べた。

事務次官会議の廃止や政務三役中心の政策決定といった政権運営のスタイルは変更しないものの、政策決定などで官僚を排除するのでなく、協力や協調を求める「脱・脱官僚」宣言と言える。

首相は訓示で「(官僚と)政治家との関係は試行錯誤があった。政治家も、『自分たちだけで大丈夫』では物事が進まないことを理解してきている」と発言。首相の言葉に、うなずく次官もいた。

菅政権は鳩山前政権に比べて官僚と共存する姿勢を強めており、昨年末には仙谷由人前官房長官が、政務三役会議に次官や官房長が同席するよう求めている。

【私の論評】おしゃべり空き菅に明日はない?!
民主党の政治主導は、最初から頓挫していました、やはり、思った通りになりました。菅さんは、財務大臣になったときから、もう完璧に財務官僚に取り込まれていたと思います。あの頃から、自らの方針などがないため、何でも財務官僚にいわれたことを、さも自分が考えたかのように語っているだけです。

いろいろと、学者などもアドバイスしているようですが、何人もの学者などの意見で、良いと思ったことをつまみ食いして何やらやってみたり、発言してみたりして、結局失敗や、失言に終わっているようなので、結局は、財務官僚考えが最も強く反映されているに違いありません。

その最たるものは、参議院議員選挙で敗因の一つにもなった、唐突な「消費税増税発言」だと思いす。これに関しては、マクロ経済的な観点からすれば、デフレ・ギャップの最中に実施すべき筋合いのものではありません。これは、以前にもこのブログの記事で掲載しました。

このことに関して、昨日WSJについて掲載しましたが、このWSJが消費税に関して面白い記事を掲載していたので、その部分を下にコピペしておきます。
財政再建のタカ派だが、デフレではハト派-。簡単に言えば、菅直人首相が14日の内閣改造で経済財政担当相に任命した与謝野馨氏はそういう考え方の持ち主だ。
経済拡大もまた大切だ。経済拡大なき財政再建は、抜本的な支出削減と増税なしにはほとんど不可能だ。それが与謝野氏には欠けるところだ。同氏は財政という国の問題の一部に集中しているだけで、もう一つの決定的な課題を無視しているからだ。それは名目成長率を金利以上に押し上げる必要があるというものだ。 
これにはデフレを終息させることが決定的に重要だ。与謝野氏の任命の結果、政府と協調して物価下落を克服するためもっと行動すべき日銀に対する圧力が弱まる可能性がある。2006年の経済担当相時代、与謝野氏は政府の月例経済報告から「デフレ」という言葉を早々と削除し、日銀に対する行動の圧力を弱めた経緯がある。
このデフレの最中に、財政再建だけに注力するのは、明らかに間違いです。このことは、私もこのブログに掲載しましたが、さすが、一流紙WSJだけあって、明瞭に簡潔に、スタイリュにまとめています。与謝野氏は、結局は、マクロ経済的な見方ができず、経済のほんの一側面であるプライマリー・バランスに拘泥している、年寄りにすぎません。

菅さんは、与謝野さんはもともと自民党の人間であり、財政改革は自民党の谷垣総裁も自民党の政策として掲げているものであり、与謝野さんを入閣させれば、自民党が歩み寄ってくる可能性が高いと判断したのだと思います。しかし、これは大きな誤算です。なぜなら、自民党も民主党と同じ寄り合い所帯であり、現行のデフレの最中に、財政再建を優先すれば景気が大きく落ち込むという、マクロ経済的にいえば、当たり前のことを懸念する人も数多くいます。

政権末期になると、与謝野氏は過去においては、いつも当該政権に入閣するということを繰り返しています。政権末期になると、政権内での主導権争いもあり、またさらに泥舟なので、閣僚というエサをまいてもなかなか政治家は寄ってこなくなります。その一方で、政権側は、末期であることを糊塗するために、それなりの人物をそろえなくてはいけません。こういうときに、与謝野氏もあわよくば政権を乗っ取りたいという思惑があるのだろうか、過去においては何とかして政権にもぐりこみ閣僚の席を獲得しました。しかしいままでのところ、その直後に政権は崩壊しています。

これは、小泉政権の末期から繰り返された光景なので、自民党関係者から与謝野氏は「墓堀人」と呼ばれています。

財務官僚など、本気で日本の経済のことなど考えていないと思います。自分たちの既得権益を守るためだけに、行動しているのです。だからこそ、財政再建を強力に推進しようとしているのです。これが、菅総理の目前の目標である、子ども手当の完全給付などマニフェストを実行するための財源探しなどと利害が一致しただけだと思います。それに、与謝野さんが入閣して、ますますこの路線を強化することになりました。

今度の改造内閣では、「増税すれば景気回復する」という菅総理、根っからの財政再建タカ派の与謝野財政担当大臣、「利上げすれば景気回復する」という枝野官房長官、「円高指向、財政再建指向」の藤井副長官と、デフレ・増税論者のそろい踏みです。もしそれが実行されたら、与謝野氏が昨年1月に書いた本の題名通り、「民主党が日本経済を破壊する」ことになるでしょう。

それと、菅さんは、日本の官僚の本質も判っていないと思います。ちなみに、経営学の大家ドラッカー氏は、最後の著書「ネクスト・ソサエティー」において、「日本の官僚に関する異説」を述べています。それを下に引用します。( )内は、ブログ管理人の注釈です。これに関しては、このブログに過去にも何回か引用したことがあります。
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第一が、日本の官僚の優位性はほとんどあらゆる先進国で見られるとの仮説である。アメリカといくつかのあまり人口の多くない英語圏の国、すなわち、オーストラリア、ニュージーランド、カナダのほうが例外である。日本の官僚の優位性は、他の先進国、特にフランスに比べるならまだまだ劣っている。(日本の官僚の数が多いという認識は全くの間違いです。確かにニュージーランドの役人数は少ないですが、ニュージーランドは人口そのものが数百万です。人口比で比較すれば、日本のほうが少ないです。英語圏以外の国では、フランスなどのように役人の権力は日本よりも強大です) 
第二が、日本の官僚は、われわれが考えるよりもはるかに耐久力があるというものである。日本の官僚は、長年の不祥事と無能の暴露にもかかわらず権力を維持してきた。(諸外国に例を見ない、特別会計が100年前から温存されてきたこと自体が、日本の官僚の権力維持能力が強固であることの査証です。民主党はこれを甘くみすぎている) 
第三が、先進国では、アメリカを別として、社会の維持にはエリートの指導力が必要されているというものである。後を継ぐべき者が現れないかぎり、既存の指導層に頼らざるを得ない。今日の日本には、官僚の後を継ぐものは現れそうにない。(残念ながら、今の民主党では、官僚のやっていることを統治することは困難である。政治主導とは幻想に過ぎず、現在の民主党は自らをあまりにも買いかぶりすぎている) 
第四が、日本では先送り戦略が有効であるというものである。日本は、この40年間、解決不能とされていた社会的な問題を、問題の解決よりもむしろ先送りによって二度までも解決してきた(前近代的農業人口の都市部への流入、前近代的な流通システムの改革)。もちろん今日の金融システムにおける構造上の脆弱さと資金的な余力を考えれば、今度ばかりは先送り戦略はうまくいかない(日本の金融機関は豊富な資金力が故に改革が困難である)。しかし経験的には、日本の先送り戦略には一概に不合理とはいえないものがある。(現在の民主党は、とにかく何かをやろうとする、それは、拙速で乱暴でさえある。しかし、今後も何もしないということのほうが、より合理的で、効果のあがる戦略である事案もある。たとえば、普天間問題など)
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このドラッカーの異説より、私は、民主党の政治主導、脱官僚は実際にはかなり難しいと思っていました。実際には、民主党は、政権交代をしてから、ただの一回も政治主導も、脱官僚もできなかったと思います。

それから、政治家と官僚の関係は、企業でいえば、トップ・マネジメントとミドル・マネジメントのような関係にあると思います。トップとミドルの間には、大きな溝があります。トップ・マネジメントは、無論経営者です。ミドル・マネジメントは、たとえ、大所帯のトップであったとしても、従業員であることには変わりありません。

トップ・マネジメントの仕事と、政治家の仕事を対比しつつ以下に掲載します。(  )内が政治家の仕事。

・会社(日本国)のミッション・ビジョン・ゴールの設定と実行

・組織(行政組織)を作り上げ、それを維持する役割‥明日のための人材を育成すること、トップの価値観を示し組織の基準とすること、組織構造を設計すること

・渉外の役割、顧客、取引先、金融機関、政府機関などとの関係を取り結ぶこと。(国内、外国との渉外)

・儀礼的役割、規模の小さい企業ほど逃れることのできない時間のかかる仕事となる。(国や世界の儀礼的役割)

・重大な危険に際して自ら出動する役割(これは政治家もトップマネジメントも同じこと、最近では、口蹄疫での政治家の役割が注目された)

ドラッカーは、これらの仕事は、それぞれ全く性格が異なるので、会社の規模が大きくなれば、経営者が一人で行うのは、不可能としています。そのため、トップ・マネジメント・チームをつくることが重要であるとしています。政治の世界も同じことです。

官僚の仕事は、本来は政治家が行う仕事を補佐するようなものです。それは、企業においては、トップマネジメントが事務や、営業活動を直接行わず、従業員にやらせ、自らは、上記のようなことを行なうのと同じことです。

まともな会社であれば、経営者と、従業員が対立するのではなく、互いに一つ目的に沿って協調するのが当たり前であって、どちらかがいらないなどというものでありません。経営者が存在しなくても、大変なことになりますし、従業員が存在しなければ、経営者も何もできません。

政治家と、役人の関係も同じことです。要するに、民主党は、会社でいえば、人を使えない、経営者ということになると思います。というより、彼らの行動をみていれば、人を使えない管理者にも成りきれていないようです。

しかし、国のあり方として、政治主導は当たり前のことであり、それが、現実に実現されているのか、そこなわれているのかは別にして、本来であれば、わざわざ最初から政治主導とか、脱官僚などという愚かなことは言うべきではなかったはずです。今回の菅さんの発言は、先の愚かな発言に対して、さらに恥の上塗りをしたにすぎません。

菅さんまた、失言してしまいましたね。わざわざ、「脱・脱官僚宣言」などすべきではなかったです。黙って、上記の経営者と従業員のような関係を官僚との間につくるべきだったと思います。いつものように、軽く口でいってしまい、後悔することもなく、おそらく、財務官僚たちを大喜びさせたと思います。

このような幼稚な判断しかできない、菅さん、それに民主党自体ももう、先はありませんね。次の選挙では間違いなく、敗北です。それに、このまま財政再建にのみ地道をあげれば、与謝野氏の著書『民主党が日本経済を破壊する』を実現することになり、多くの国民が離反することになります。このまま、生き恥を晒すくらいであれば、さっさと、衆院を解散して選挙をして自らの去就を国民に問うべきです。

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