2010年6月11日金曜日

財政改善へ「与野党の検討会議を」 菅首相が所信表明―江戸時代と同レベルの日本の経済対策?

財政改善へ「与野党の検討会議を」 菅首相が所信表明(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)

衆院本会議で所信表明演説をする菅直人首相=11日午後1時8分、国会内

菅直人首相は11日午後、衆院本会議で、就任後初の所信表明演説を行った。先進国で最悪レベルの財政事情を改善するため、超党派の「財政健全化検討会議」の設置を呼びかけた。「まず無駄遣いの根絶、次に成長戦略」という道筋を示す一方で、「税制の抜本改革」への着手が不可避だと表明。ただ、「消費増税」には言及しなかった。

所信表明演説の要旨
菅首相は衆院後、参院本会議でも演説する。冒頭で「政治とカネ、普天間飛行場移設をめぐる混乱で、政権への期待が大きく揺らいだ」として、前政権で副総理を務めた自らの責任を認めた。鳩山由紀夫前首相の退任を、小沢一郎前民主党幹事長も含めた問題に「自らけじめをつけた」と位置づけ、再出発をアピールした。ただ、「政治とカネ」をめぐる問題への具体的な対応策には触れなかった。

菅内閣の政策の3本柱として、「戦後行政の大掃除の本格実施」「経済・財政・社会保障の一体的立て直し」「責任感に立脚した外交・安全保障」を挙げた。

過去20年の経済政策について、公共事業中心の「第1の道」、行き過ぎた市場原理主義の「第2の道」が低迷を招いたと批判。政権の目指すべき「第3の道」として、環境や社会保障など、社会が抱える課題への取り組みを新たな需要や雇用創出につなげ、成長を促す政策を主張した。

その上で、「強い経済、強い財政、強い社会保障」の実現への決意を表明。「経済」では、2020年度までの年平均で名目3%、実質2%を上回る経済成長を目標に掲げた。「財政」はギリシャの経済危機を例に引き、「公的債務の増加を放置し、国債市場における信認が失われれば、財政破綻(はたん)に陥るおそれがある」と指摘。「与党・野党の壁を超えた国民的な議論が必要ではないか」と、検討会議設置を呼びかけた。

外交・安全保障については「現実主義を基調とする」と表明。普天間問題については、移設先を沖縄県名護市辺野古とした日米合意を踏まえる一方、沖縄の負担軽減に取り組む決意を強調。その際、「長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから始めたい」とした。

裕福な政治家一族だった鳩山前首相とは異なる「庶民性」も前面に出した。サラリーマン家庭に育ち、市民運動に参加した半生を紹介。政治浄化を訴えた故・市川房枝参院議員の選挙応援から始まり、何度も落選を経験した自らの政治活動を振り返り、「志をもって努力すれば誰でも政治に参加できる。そういう政治をつくろう」と呼びかけた。

江戸時代と同レベルの日本の経済対策?
菅総理、「強い経済、強い財政、強い社会保障」の実現への決意を表明しましたが、これって、少しまえにどこかで聴いたような台詞です。要するに、今年の4月に経団連が実施した、政府への申し入れとほぼ同じです。要するに、財政改革すること、そのためには、増税が必要であること、要するに消費税をあげることです。さらに、法人税減税についても検討していると見られます。

菅さんは、権力のためなら何でもやるというリアリストでもありますから、このようなこと、それ相当の考えがあって、経団連の要望に沿って、政策をすすめようとしていると考えられます。それは、ある意味簡単なことですね。民主党が経団連の意向に沿って政策運営を行えば、どういうことになるかといえば、自民党の存在意義がなくなるということです。

菅さんの目指しているところは、こうして、二大政党ではなく、民主党一党体制を築こうとしていることが見て取れます。これに関しては、ニュース番組アンカーの青山繁晴さんも言っていたので、おそらくそうは外れてはいないと思います。しかし、この試みは、うまくはいかないでしょう。なぜなら、経団連は、企業経営者の集まりであり、企業経営などには詳しいかもしれませんが、国の経済政策という面では、特に能力が優れているとはいえないと思います。なにせ、国は、企業と異なり、貨幣や紙幣、国債を自由に刷ることができます。さらに、税金を徴収することができます。

事業活動によって、収益をあげるという経済活動を行う企業とは根本的に異なります。さらには、輸出産業が幅をきかせているようですが、日本においては輸出産業は少数派だからです。(日本の輸出がGDPに占める割合は、金融危機直前で16%、ドイツや中国などは40%以上、よって、日本は輸出大国ではなく、内需大国。10年前は、8%に過ぎなかった)だから、企業経営に優れた人の意見だからといって、国の経済対策に対して優れた意見を出せるかといえば、そんなことはありません。本来的には、素人の意見と同程度と考えて差し支えない事と思います。

もし、経団連側が本当に国の経済のことを考えるならば、現在のデフレを克服するため、マクロ経済学の基本中の基本である、公共工事などを大目に行うことが重要です。このブログにも、前に書いたように、「公共工事=悪」などという考えは、間違いですし、幼稚です。かつて、自民党がやってきた、公共工事は、それなりに、日本の経済成長にかなり大きな役割を果たしたきたことは間違いありません。それが、なければ、日本はインフラも整わず、いまの経済大国日本など存在しなかったでしょう。

確かに、ハコモノ行政による、何も役にもたたないような施設を、次から次へと建てるなどの馬鹿真似はやめるべきですが、公共工事すべてが駄目などということはありえません。はっきりいいますが、日本が景気が悪い特に、デフレなどになっている理由はあまりにも簡単なことです。

それは、日本は世界第一の金満大国なのですが、そのお金が市中に出回らないことが原因です。その中の一つの背景としして、現在の日本の公共工事の水準が10,年前よりも落ちているということがあります。これは、先進国中で最低水準です。日本の場合は、地震が多いとか、多湿であるなどのことから、欧米と比較すると、道路、橋、ダムなどの施設は、耐用年数が短いです。このまま、財政改革などの大義名分で、公共工事を控えていると、あと5年くらいで、そろそろ大陥没する道路がでてきたり、決壊橋、、ダムなどがでてくることは必定です。今の日本の公共工事の水準は、本当にそのレベルです。

結論から言ってしまえば、このブログでも何回も書いているように、デフレギャップを埋めるために、公共工事等を多目に行い、そのための財源に関しては、国債であてれば良いのです。それから、公共工事に関しては、道路などもありますが、他にもいくらでもあります。やるべきこと、やって、将来に役立つ工事はいくらでもあります。過去にやったように、無理に必要もない空港をつくらなくてもいくらであります。新幹線や、情報インフラや、通信インフラ、医療関係のインフラ、少子高齢化対策用のインフラ、教育インフラなど考えれば、将来の日本を良くすためのインフラ整備はいろいろあります。その中でも、即効性のある公共工事等をすぐにも大掛かりに実施する必要があります。

さて、こうして、公共工事などすれば、市中にお金が回るようになり、企業の設備投資も増え、雇用も増えます。そうして経済が上向きになります。そうして、デフレが克服され、今度はインフレ基調なります。そうなれば、今度は、公共工事など控え、増税を行えば良いのです。このときなって始めて緊縮財政を行えば良いのです。

以上が大学などの初等のマクロ経済学にも書いてあるような、古典的な経済対策のあり方です。デフレの時に、増税をするなどとは、マクロ経済学では教えていません。なぜなら、それは、間違いだからです。なぜなら、デフレでものの値段が下がっているときに、増税、特に消費税などあげれば、ますます、消費が冷え込むからです。消費が冷え込めば、いくら、企業が熱心に頑張ったとしても、モノやサービスが売れなくなります。そうすると、せっかく増税しても、税収が増えないということになります。まさに、亀井さんが、今回の組閣のときの就任の記者会見で語った「経済が冷え込んでいるときに、増税をしたとしても思うように税収が増えない」という事態に陥ってしまうということです。

こんな初歩的なことをブログに長々と書くのは、気がひけますし、今更という感じがしますが、これが古典経済学でいうところの対策の常道です。しかしながら、日本では、この逆が行われることが往々にあります。景気の良いときに、どんどん、公共工事など行い、バブルになってしまったとか、今度は景気が悪いときに緊縮財政をするとか、何か、マクロ経済学の基本からすれば、逆をやってきたというのが日本の今までの姿だったのではないかと思います。

さて、私は、菅さんのことをさんさんぱら批判してきました。特に、酷いマクロ経済音痴であることを批判してきました。しかし、これは、何も菅さんにだけあてはまることではありません。実は、谷垣さんだって、まずは、財政再建ありきの考え方です。というより、日本で、バブル崩壊後経済対策で奏功したような政策、すなわち、上記で示したマクロ経済にのっとった正攻法で実施したのは、小渕政権と、麻生政権のみでした。これを、マスコミに単なるバラマキと形容しました。確かに、無駄なものへの投資もあったかもしれませんが、大局的には正しい政策だったと思います。

小渕政権のときは、株価は2万円台に回復しましたが、それ以降一度もそのようなことはあませんでした。残念ながら、小渕氏は、仕事半ばで、総理大臣在職中にお亡くなりになりました。今から考えれば、かえすがえすも、残念なことです。小渕さんが任期をまっとうできれば、日本の経済もかなり良くなっていたでしょう。それから、現在景気は上昇基調にありますが、これは、麻生政権のときに行った対策が奏功したものです。

麻生政権があと1年も続いていれば、かなり経済は回復したことでしょう。麻生政権のときに、来日したノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、その当時与謝野氏とのインタビューで与謝野氏に「日本の経済対策を同思う?」と問われて、「方向性としては正しい、ただし、投資額が少なすぎ、このままでは退院するのに5年から10年かかってしまう」と述べていました。彼の目からすれば、マスコミからバラマキ政策と批判された「麻生政権」の政策ですら、手ぬるいと感じられたのだと思います。

これは、アメリカなどの金融危機の時の対策など見ていれば良くわかります、当時のアメリカは、プライマリーバランス(財政均衡)や、貿易収支など全く無視して、というより、全く問題にせず、巨額の投資を行い、それまではなかった、民間企業の一時国営化まで実施して、素早く経済を立て直しました。これらを実施するとき、さすがに民間企業の国営化には反対した人もいましたが、プライマリー・バランスや、貿易収支など話題にもならなかったですし、マスコミ批判など全くしませんでした。

にもかかわらず、日本ではデフレから完全に脱却できていない状況で、結局は緊縮財政をしようとしています。このような国は、先進国では日本だけではないかと思います。日本では、経済対策などというと、昔から緊縮財政が頭をもたげるようです。たとえば、江戸時代にはその典型的な例が山ほどあります。

これに関しては、最近非常に面白い記事を見つけたので、是非ご覧になってください。それは、江戸の財政改革についてまとめた、あるブログの記事です。

http://coopkyosai.coop/column/money_090220.shtml


ただし、この記事、やはり、十分を気をつけて読む必要があります。

江戸の財政改革は、三回行われているのですが、結局田沼意次の行った改革だけが成功しています。他の改革は失敗しています。

このブログ記事には欠陥があります。

結局、江戸幕府の財政難は、幕藩体制を維持するのに相当の費用がかかっていたためとしていますが、田沼の改革については、以下のように書いています。

彼の政策は、商業の発展を重んじる”重商主義”で、倹約や引き締めの政策はとらなかった。たとえば、都市経済の刺激のために株仲間を増やし、幕府の財政の基盤となる諸藩経済を支える貸付金制度を設けた。また、海外の金、銀を確保するために長崎貿易を促している。こうした政策は、農産物の商品化を活発にして農民の生産意欲を向上させた。また、情報統制をしなかったことから文化も発展し、平賀源内、杉田玄白などの学者もこの時代に多く輩出していった。

成功した田沼の政策に関しては、倹約や引き締め政策は行わず、要するに経済が活発化する対策を行ったとしています。にも関わらず、幕藩体制を維持するために相当の費用がかかったことを財政難の理由としてあげています。

これは、明らかな矛盾です。私自身としては、幕藩体制の維持にかなり経費がかかったとしても、それ自体は外に流れていくわけですから、むしろ、今でいえば、中小企企業対策のようなもので、それになりに経済にも寄与していたのではないかと思います。さらに、大奥の維持にも莫大な経費がかかったとされていますが、これには、未亡人などの雇用対策という意味もあったそうです。

ただし、このような社会保障のようなことだけでは、財源が細る一方であったことも間違いない事と思います。やはり、田沼流の、経済を活性化させる方式が功を奏したのだと思います。しかし、田沼流の経済活性化策を行わず、ただ、引き締めや、倹約などを行っても何の効果もなかったということです。

それに、この記事には書かれていませんが、田沼は、消費を美徳としたということも記録に残っています。引き締め、節約をせず、消費を美徳とし、経済を活性化されるようにした田沼の政策のみが、江戸の財政再建で成功を収め、あとの引き締め、上米(今でいえば、増税)、倹約などの政策はのきなみ失敗しているということです。

日本では、昔から、経済対策というと、すぐに緊縮財政を考えたり、増税などして、経済活性化の反対をやって、失敗したきたということです。先のブログの著者も頭の中には、経済対策=緊縮財政という強い観念があるため、先のような矛盾を平気で書いてしまうのだと思います。それだけ、日本人の中には、経済対策=緊縮財政という観念がDNAの中に強く刻み込まれているのだと思います。これに関しては、日本だけではないようです。過去において他国においても、経済対策として緊縮財政をやって、失敗している例がごまんとあります。しかし、これは、今日の本題からはずれてしまうので、いずれ機会があれば、掲載することとします。

なにやら、経団連の政府に対する申し入れや、菅さんなどの経済対策の話をきいていると、本当に、日本では、こと経済対策に限っていえば江戸時代から変わっていないと思ってしまいます。皆さんは、どう思われますか?

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