2022年3月18日金曜日

中国〝豹変〟プーチン氏を見限り!? 「漁夫の利」ない…本音は「重荷」 ロシアの敗色が濃厚、軍事支援なら米欧を完全に敵に回す―【私の論評】ウクライナと結びつきが深い中国には、ロシアにだけに一方的に肩入れできない事情が(゚д゚)!

ニュースの核心

習主席(右)は、プーチン大統領とともに「世界の敵」になるのか

 ジョー・バイデン大統領は18日、中国の習近平国家主席と電話会談する。ロシアによる国際法違反の暴挙であるウクライナ侵攻などについて話し合う。欧米メディアは、ロシアが中国に対し、地対空ミサイルやドローン(無人機)、装甲車両などの供与を要請したと報じている。バイデン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」「人殺しの独裁者」などと糾弾しており、電話会談では「中国がロシアを支援すれば高い代償を払う」と警告することになりそうだ。ロシア軍の残虐非道な無差別攻撃が続くなか、習氏はプーチン氏と手を組むのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、中国の動向に迫った。


 ロシアのウクライナ侵攻で、中国はどう動くのか。私は「ロシアを応援したいのはやまやまだろうが、当面は時間稼ぎで様子見」とみる。それで、中国は最終的に「漁夫の利」を得るのか。ご心配なく。そうはならない。

 中国は開戦前、ロシアとの連帯を声高に唱えていた。北京冬季五輪の開幕に合わせて開いた2月4日の中露首脳会談では、ロシアが訴えてきた米国とNATO(北大西洋条約機構)の脅威に理解を示し、「無制限の友好関係」を強調したほどだ。

 ところが、いざ戦争が始まり、ウクライナの目を見張るような抵抗で、戦況が膠着(こうちゃく)状態に陥ると、微妙にスタンスを修正し始めた。

 国連の安全保障理事会と総会では、ロシア非難と即時停戦を求める決議に反対せず、棄権した。王毅国務委員兼外相は3月1日、ウクライナのドミトロ・クレバ外相との電話会談で、現状に「深い悲しみ」と、民間人の被害に「強い懸念」を表明し、7日には「必要なら、仲介に向けて国際社会と協力する用意がある」とまで表明した。

 なぜ、中国は態度を変えてきたのか。理由は明白だ。「ロシアの敗色」が濃厚になる一方、厳しい西側の経済制裁がロシアに予想以上の大打撃を与えているからだ。

 ロシアは当初もくろんだ電撃戦による短期決戦で勝利を得られず、開戦から3週間を過ぎたいまも、首都キエフを陥落させられずにいる。国内では、外資企業が続々と事業を停止し、ボーイングやエアバスの民間航空機も運行できなくなった。メンテナンス部品が手に入らないからだ。猛烈なインフレに襲われるのも、時間の問題である。

 そんななか、ロシアは中国に対し、地対空ミサイルやドローンなど軍事物資の提供と経済支援を求めた。中国は否定しているが、米国はメディアにロシアの支援要請をリークするとともに、NATOとアジアの同盟国に外交公電で情報を通知した。

 支援要請自体が、ロシアの苦境を物語っている。戦争の行方を世界に示唆するとともに、中国も牽制(けんせい)する「一石二鳥」の作戦だ。

 中国は、そんなロシアに手を差し伸べるのだろうか。

 もし、ロシアの要請に応じれば、これまで激しく対立してきた米国に加えて、欧州も完全に敵に回してしまう。欧州こそが、ロシアの脅威を肌身で感じているからだ。中国自身が経済制裁を受けるのも避けられなくなる。

 それだけではない。

 ロシアのタス通信によれば、セルゲイ・ラブロフ外相が16日、RBCテレビ(独立系)で、「ウクライナの中立化問題が安全の確約とともに、真剣に議論されている。私の見立てでは、合意に近づいている」と語り、停戦合意の可能性に言及した。ロシアが停戦に合意すれば、中国ははしごを外されてしまうのだ。

 かといって、いまさらロシアのプーチン大統領を切るのも簡単ではない。中国の習主席は同じ独裁者同士として、個人的にもプーチン氏に入れ込んできた。両国にとって「米国は共通の敵」という戦略構造は、ウクライナ戦争後も変わらない。

 結局、中国は身動きがとれないまま、当面は様子見するしかないだろう。だからといって、戦後に「漁夫の利」は得られない。戦争に負けたロシアを抱えていくのは重荷でしかなく、中国の下心と本音は、冒頭に紹介した首脳会談で明白であるからだ。

 追い詰められているのは、ロシアだけではない。いまや中国も同じである。

【私の論評】ウクライナと結びつきが深い中国には、ロシアにだけに一方的に肩入れできない事情が(゚д゚)!

中国には、ウクライナをないがしろにできない理由があります。なぜなら、米国を脅かすほどの軍事強国に成長した中国。その軍事力を作り上げるうえで「第一功臣」であると中国で呼ばれてきたのがウクライナなのです。

中国はソ連崩壊によるウクライナ独立後の1992年に世界で最も早く国交をウクライナと結んだ国の一つです。

ウクライナはソ連の「兵器庫」と呼ばれるほど軍需産業が集中したところで、冷戦後の独立後もソ連の35%の軍事産業を引きつぎました。ところが、ウクライナ軍単体に需要があるわけではなく、ウクライナ政府に軍需産業をとことん守る力もありませんでし。

問題は軍事関係の技術者や専門家と最新の技術でした。当然、ウクライナは世界の草刈り場となりました。経済力のある米国、イスラエル、ドイツ、シンガポールなども動きましたが、中国にはほかの国にはない優位性がありました。

ソ連時代からの社会主義国同士の交流で積み上げた人的ネットワークでした。中国はソ連との間で科学技術や工業技術の交流があり、中国の研究者とウクライナの研究者との間で分厚い個人的関係がありました。そうした人脈が、中国政府の要望でフルに動員され、ウクライナの人材獲得競争に乗り出したのです。

キーパーソンは当時の首相李鵬でした。天安門事件で悪名を響かせたが、李鵬はエネルギーや軍事に強い政治家で、「10年かけても育成できない優秀な人材を確保できることはわが国にとって千載一遇のチャンスである。決して逃してはならない」と号令しました。

立ち上がったのが「双引工程」と呼ばれるプロジェクトです。

ウクライナを中心に、旧ソ連圏の人材と技術という「双子の遺産」を引き込むことを目指しました。狙いはウクライナに向けられました。李鵬は、中国・ウクライナ関係において最大の功労者であると中国で今日広く認められています。

ウクライナの科学技術は、ロケット、宇宙航空産業、軍用艦船産業、燃料動力など、当時の中国が立ち遅れていた部門をことごとくカバーしていました。1994年にウクライナが国際圧力で核放棄を受け入れると、さらに核技術関連の人材が行き場を失いました。多くの軍事企業が倒産し、失業した技術者たちを中国は厚遇しました。

ウクライナの国営企業ユージュマシュは、安定した実績を誇ってきた

 2020年時点の中国メディアの報道では、この「双引工程」で合計2000項目の協力が行われ、その中で最も成功したものはウクライナ関係であり、ウクライナの専門家が招聘された人数は2000人に及んだといいます。
 
 中国がウクライナから手に入れた軍事技術でよく知られているのが、中国初の空母である遼寧です。ソ連がウクライナ(当時は連邦の一部)の企業に発注し、完成間際にソ連解体となって宙に浮いた船体を、マカオでカジノ船にするという口実で解放軍系のカバー企業が間に入って中国は手に入れました。

それをもとに中国は空母研究を続け、ワリャークは練習船を兼ねて遼寧号として就航し、さらに自主空母を作り上げるまでになっています。

遼寧

中国がウクライナから軍事技術を得たのは1990年代から2010年ごろまでです。以後は中国の技術が進歩し、ウクライナから学ぶものは少なくなりました。ところが、それ以後も友好関係は続いている。次のターゲットは交通と食糧でした。

12年に政権についた習近平が打ち出した「一帯一路」で、ウクライナを重要なパートナーとして位置付けたのです。13年には友好条約を締結しました。

ウクライナでは、親欧州連合(EU)と親ロシアの指導者による政権交代が相次ぎ、14年のマイダン革命やロシアのクリミア併合など、政治的に不安定になったが、中国は「我関せず」でウクライナとの関係を固め続けました。

その象徴は、中欧列班(トランス=ユーラシア・ロジスティックス)と呼ばれる中国・欧州を結ぶ貨物列車です。20年7月には中国・湖北省武漢市からウクライナの首都キエフが結ばれ、「シルクロード経済ベルト」のための重要拠点となっていました。地理的にウクライナはアジアと欧州を結ぶ位置にあります。鉄道網もソ連時代の遺産でしっかり整備されています。

「世界の食糧庫」と呼ばれる農業大国であるウクライナからは、飼料用のトウモロコシや小麦・大麦などを中国は買い付けており、中欧列班の中国への復路便に満載されていました。中国税関の資料によれば、ウクライナから輸入したトウモロコシは820万トンで、中国の全トウモロコシ輸入の3割を占めています。飼料は食糧生産に不可欠です。中国14億人の胃袋を満たすうえで、ウクライナは大切な飼料の供給源となったのです。

国交樹立30周年にあたる現在、強化されているのは経済関係で、ウクライナにとって中国は19年からロシアを抜き去り、輸出入とも最大の貿易相手国となりました。中国企業はウクライナの港湾、キエフの地下鉄、風力発電などに協力しています。ファーウェイ(華為技術)もウクライナで4Gのネットワーク施設に参加しています。

また、在ウクライナの中国人留学生数も常時5000人ほどいると言われ、欧州のなかで「最貧国」と言われるだけあって物価は安いですが、国民全体の知的水準や科学技術のレベルも高いウクライナは、中国人にとって人気の留学先でした。

甘粛省蘭州市の中川国際空港に着いた、ウクライナから退避した中国人留学生(2022年3月9日)

中国はロシアを戦略パートナーと位置づけ、侵略前にプーチン大統領と習近平国家主席が「無制限」の協力をうたったが、東欧という地政学的にも重要な地域への楔となるウクライナとの関係も中国にとって高い価値を有していました。

仮にロシアとウクライナの仲介を中国が果たすことができれば外交的に大きな得点となり、新しい超大国として国際社会に大きな存在感を示すことになります。

中国もその機をうかがっているでしょうが、現段階では火中の栗を拾うことになり、容易ではありません。ウクライナの破壊を惜しみながら、国際社会で悪者になる一方のロシアにあまりにも近づきすぎないよう配慮もしなくてはならないでしょう。

中国がロシアに味方すれば、欧州は厳しい目で見るでしょう。ウクライナ情勢の悪化を受けて、今後中国は確実に「一帯一路」を含めた欧州戦略の練り直しが求められるはずです。ロシアに与すれば、その代償の大きさはとてつもないことになるでしょう。

ロシアとウクライナの停戦協議について、フィナンシャル・タイムズ(FT)は16日、ウクライナの中立宣言を条件に、ロシア軍が撤退し、停戦する内容を含んだ15項目の暫定的平和協定に向けて「大きな進展があった」と報じました。

タス通信によれば、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は16日、独立系のRBCテレビで「安全の確約とともに、ウクライナの中立化を真剣に議論している。これはまさに、ウラジーミル・プーチン大統領が2月に言った内容だ。私の見立てでは、合意に近づいている。具体的な文言もある」と語りました。 

英スカイニュースによれば、プーチン氏も「我々は協議の用意がある」と語った、といいます。詳しい協議の中身は明らかになっていませんが、FTによれば「オーストリアやスウェーデンのように、中立化を条件に、ウクライナに一定の武装化を認め、米英トルコなどが安全を保障する」といった内容のようです。 

これまでの「中立化+非武装化要求」と比べれば、ロシアはあきらかに譲歩してきました。なぜかと言えば「戦場での戦いが行き詰まっているから」でしょう。

ノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏(ニューヨーク市立大学教授)は、3月7日付ニューヨーク・タイムズのコラムで「中国はロシアを救えない」と書きました。「中国はロシアが求める高性能半導体や航空機部品などを提供できない」「中国は制裁を恐れている」「両国は地理的に遠い」「ロシアは中国の従属国に成り下がってしまう。プーチンはそれを認めない」という4つの理由からです。

ポール・クルーグマン氏

 中国がロシアに味方するなら、今度は中国の「戦略的失敗」ということになるでしょう。結局、ロシアは必ず敗北するからです。たとえ、これからキーフなどの都市部に侵攻したとしても、人口288万の都市を一部でも制圧するのは、総勢20万程度のロシア軍には到底不可能です。

キーフを破壊して瓦礫の山としても、そこに立てこもるウクライナ軍を根絶やしにすることはできません。市街戦ということになれば、ロシア軍も大被害を被ることになります。

負けたロシアを抱きかかえていくのは、中国にとって大変な重荷になるに違いないです。

ここは、中国にウクライナ支持を鮮明に打ち出してほしいところです。

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2022年3月17日木曜日

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も―【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も


中国では武漢で感染拡大したおととしに匹敵する規模で新型コロナウイルスの感染が広がり、上海では建物の封鎖が相次ぎ、市民生活を圧迫しています。

中国全土では今週月曜の新規感染者数が5000人を超えました。感染が広がる中国最大の経済都市・上海はおとといの市中感染者が200人以上。市民の生活に大きな影響が出ています。

寺島記者
「こちらのマンションは感染者や濃厚接触者が出たわけではないのですが、きのうから48時間の封鎖となっています」

中国では感染者や濃厚接触者が滞在した場所は最大で14日間封鎖されます。

こうした中、上海市政府は新たに感染者や濃厚接触者が確認されていない場所でも48時間封鎖し、2回のPCR検査を行う「重点区域」を定め“ゼロコロナ政策”を強化しました。

封鎖ラッシュの上海。オフィスはもちろん、小学校が封鎖され一夜を明かす児童らや、ジムで運動中に閉じ込められた人も。

そして上海のシンボルともいえる建物も・・・

寺島記者
「中国で最も高い超高層ビルでも黄色い規制線が張られ、現在封鎖されています」

高さ600メートル以上、127階建ての「上海タワー」も一時封鎖されました。

相次ぐ封鎖で圧迫される市民の生活。しかし中国政府は“ゼロコロナ政策”の成功を強調してきただけに方針の転換はそう簡単ではなさそうです。

【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

中国の「ゼロコロナ政策」については、間違いだと指摘する識者は多いです。私自身も、このブログでそのように指摘してきました。しかし、富坂聰はそうではないことを主張しています。以下にその記事のリンクを掲載します。
中国のゼロコロナ政策はリスクではなく世界の防波堤
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より結論部分を以下に引用させていただきます。
もし中国が早期の消火に失敗すれば、瞬く間に医療崩壊が全国へと広がり、一定の期間放置される地域が出てくることは容易に想像される。そして新型コロナウイルスの特徴を考慮すれば、この次に浮上する悪夢のシナリオは、中国国内で多種多様な変異株が次々に誕生してくるという展開だ。

 これが世界にとってどれほどの脅威となるだろうか。

 かつて中国は、結核治療においてこのシナリオと近似した状況に陥った。農村によって病院が近くになかったり、あっても治療費が高くて負担できないといった理由から、結核にかかった患者が途中で治療を放棄してしまうケースが続出したのである。

 結核は完治するまで薬を飲み続けなければ新たな耐性を備えた菌へと進化してしまう病気である。結果、治療を中断した患者の体内で強力となり、最終的には多剤耐性を備え、薬の効かない恐ろしい結核菌を作り出してしまったのである。

 結核と新型コロナを簡単に比較すべきではないかもしれない。だが医療の手が届かない空白地帯は、いまも中国には多く、そして厳然と存在し続けている。だからもし、中国に医療崩壊が起き、全土で次々と変異株が生れるような状態に陥れば、日本の危機感は現在のレベルで済むはずはなかっただろう。

 つまり中国のゼロコロナは、単に自国のための感染対策という枠を超えて、世界にとっての防波堤の機能を果たしているといったのはこうした理由からである。

 独裁色の強い隣国が感染対策の成功を誇っているのを面白くないと思う心理は理解できる。それが読者にアピールすると考えることも分かる。しかし、一定の節度はあってしかるべきだろう。

一定の節度が必要かどうかは、別にして武漢で最初にコロナウイルスがを李医師が発見したのを握りつぶして隠蔽したことは絶対に許せません。それに、コロナウイルスは武漢研究所で人工的に変造されたものかもしれないという疑惑は、未だに晴れていません。

ただ、こういう事実とは別に確かに、中国は伝染病の温床というのは事実です。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

コロナだけじゃない、中国で次々に発生する感染症に世界は耐えられるか―【私の論評】中国は伝染病の温床!その理由と対処法はこれだ(゚д゚)!
2020年3月12日、武漢市に所在する病院の集中治療室を消毒する医療従事者

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

現在、世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスのような新興感染症が、中国を起点に多数登場しているのはなぜでょうか。背景には、20世紀末から急速に経済成長した中国が、人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほどの間で経験したことがあるとみるむきもあります。

ただ、この30年説は正しくはないかもしれません。それは、冒頭の記事で示されている日本軍の雲南省でどんな感染症が発生しているかを示した地図の存在からも明らかです。この地図は、1935年あたりに作成されたものです。

この頃は中国はまだ完全に発展途上国といって良い状況でした。となると、中国発の伝染病が多発する原因は、都市化以前に農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化するといった生態系への働きかけ(開発)によって流行したことが考えられます。そうして、今でもそのようなことが繰り返されている可能性があります。

ただし、今回のコロナに関しては、「世界の工場」となった中国が、国際貿易や人の移動の面でその存在感を高めていることも、新型コロナ感染症をグローバルに拡大させる要因となりました。

流行の中心地となった中国の武漢市や湖北省などでは、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々の活動を制限して感染症の抑え込みを行いました。流行の中心が欧州や米国に移ると、多くの国で外出制限や学校の休校措置がとられ、世界はなかば鎖国のような状態となりました。

ほぼ同時にこれほど大規模な活動の制限が求められたことは、感染症の歴史においても、経済社会の歩みの中でも初めてのことです。

「疫病史観」を紐解けば、私たちが想像している以上に、感染症が人類の歴史に大きな影響を及ぼしてきたことが理解できます。考えてみると、農業化や工業化、さらに都市化という人類史の基本的なトレンドは、人々が集まって大きく生産や消費を行うことを前提としてきました。

しかし、今回の新興感染症は、私たちがそうした行動をとることを許しません。経済社会を成り立たせている基本的な活動が、感染症流行の要因になっているのです。現在、起きていることは、経済社会のあり方が根本から変わる転換点と後に位置づけられるのかもしれないです。

ただ、現在の先進国の都市では、伝染病の発信源になることはほとんどありません。それだけ、先進国は、上下水道を整えたり、防疫・医療体制を強化してきたのです。

それよりも、同じ一つの国で、奥地では農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化する等といった生態系への働きかけ(開発)によって元々伝染病が流行しやすくなった中国が、20世紀末から急速に経済成長し、沿岸部では人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほど成し遂げたことが流行に拍車をかけたといえるでしょう。

まさに、中国は、伝染病の「ゆりかご」と言っても良い状況なのです。

この状況を解決するために、この記事ではいかのような解決策をあげさせていただきました。

これに輪をかけて、さらに中共政府が初期の段階で感染症の隠蔽をはかったことが、後にパンデミックの大きな要因となったことを考え合わせると、一つ浮かび上がってくる解決法があります。

それは、少しでも中国内で、新たな感染症の兆候があった場合、中国政府などの情報やWHOの情報などあてにせず、各々の国は自国民の命と財産と、自国経済を守るために、すぐに中国からの渡航制限をすることです。

そのためには、各国で協力のうえで、中国には公表せずに、中国内の感染症情報を得る体制を整えるべきでしょう。そうした体制を整えておき、少しでも兆候があれば、問答無用で中国からの渡航を禁じるのです。

 ただ、これによって完璧に中国発の感染症を防げるかどうか、今となると疑問です。確かに短期的にはこれですむかもしれませんが、長期的にはそうはできません。なぜなら、最近北京で五輪とパラリンビックが開催されたことをみても、現在では中国と完璧に人的交流を遮断することは不可能に近いからです。

仮にそうしたとしても、中国と隣接国との間では、国境溶解という現象が続いています。特にロシアとの間ではそうです。

ソ連の崩壊によってシベリアのロシア人社会は、直ちに危機に陥いりました。 政府は給与を支払うことができず、多くの労働者が引き上げていきました。 シベリアに市場はなく、シベリア鉄道もいたるところで寸断されようとしていました。 

だから、中国からの輸入が不可欠のものとなりましたが、一方で中国に売り渡すものを シベリアのロシア人社会は何も持っていませんでした。その結果、 中国人がシベリアに入り込んできて、役に立つものを探し出し、作り出してゆくしかなくなりました。こうして、国境溶解が進んていきました。

中国とロシア以外の他国との国境溶解もロシア・中国との国境のように規模は大きくはありませんが、進んでいるということもあります。

この国境溶解により、シベリアでは物資の不足などに悩むことはなくなりましたが、それにしても、伝染病などの伝播は避けられなくなったともいえます。

やはり、中国は伝染病関連の情報は包み隠さず、先進国に伝えるべきです。迅速な情報伝達があれば、はやめの対処もできます。

中国の現在のコロナ感染では、統計上では死者はほとんどありません。ただ、中国の過去の隠蔽体質を考えると、これが本当なのかどうかは定かではありません。


中国で新たな殺傷力の強い変異株が生まれており、それを中国が隠蔽していないとも限りません。もしそうなら、人類は再度コロナ感染症の脅威にさらされることになりかねません。

3月15日に中国政府が行った発表によると、この前日に新規確認された中国本土の市中感染者数は、無症状を含めて5154人。データをたどることが可能な2020年3月以降、最多を記録、3月13日の発表で記録更新したばかりだった3122人を大幅に塗り替えた。首都北京や上海でも感染者が日々報告されいる他、南部の大都市として日本人にとってもお馴染みの深圳では、今のところ3月20日までの期間限定ですが、事実上のロックダウンが実施されています。

なかでも特に感染拡大が深刻なのは、東北部にある吉林省です。最も感染者が多い吉林市の当局は3月9日、感染拡大中のウイルスについてオミクロン株の「BA・2」と発表。いわゆる「ステルスオミクロン」として日本でも問題になっている変異株です。

現地では3月15日午前から、今回の感染拡大後、実に9度目となる全市民対象のPCR検査を実施。市内にある2つの医療機関を新型コロナ患者の専用病院に指定、3つの臨時病院を開設して患者対応にあたる一方で、3月12日の未明には吉林省が市長の解任を発表して、感染拡大の責任を問う姿勢が鮮明に打ち出されました。

実はこの人事が発表される2日前にも吉林省はある人物の解任を発表しており、その背景が注目されています。

解任されたのは市内にある農業科学技術学院の院長で、日本でいう地元の大学のトップです。

中国メディアによると、この学院では3月6日に学生寮で陽性者が判明するなど、感染者が相次いで確認されていました。このため、学内の全面消毒と感染拡大を防ぐ目的で、3月10日午後になって全学生6500人あまりを大型バスに分乗させ、市内の隔離先などに移す大規模移送が実施されました。

大規模移送完了後の3月11日に香港メディア「香港01」は、感染対策の不備や物資の不足に加えて、学院側が感染情報を隠ぺいした疑いを報じました。

一方上海では、ある病院で医療スタッフが病院側に詰め寄る様子をとらえた動画が上位にあがっていました。スタッフの家族とみられる人物の投稿によると、病院内で感染者が出たにも関わらず、病院側がこれを隠した上、有効な措置が取られず院内感染に発展したといいます。

感染科の医師だけでは人手も物資も足りなくなり専門外の看護師までも動員され、中には防護服なしで対応させられたケースもあったことから、スタッフが病院側に詰め寄ったものです。病院側はこの動画が伝える騒動が、実際にあったこと自体は公式に認めていますが、詳しい経緯などは調査中としています。

中国随一の国際経済都市とされる上海は、コロナの感染対策においても“優等生”と言われてきたのですが、その上海でさえも混乱は確実に起き始めているのです。

吉林省で行わたPCR検査

この隠蔽体質は以前このブログでも述べたように、一言で言えば中国共産党中央政府が「ゼロコロナ政策」を掲げているため、下部組織はコロナ感染症が発生しても、上に報告しづらい状況になってるため起こっているのでしょう。

この状況は非常に危険です。もしコロナ感染症が深刻な状況になっても、上に報告されない可能性があります。このように中国ではいつ、感染症の爆発、それも多数の死傷者を含む爆発が起こってもおかしくはないのです。

このブログでは、国際政治学者イアン・ブレマーが社長を務める米調査会社ユーラシア・グループが1月3日に公表した2022年の「世界の10大地政学的リスク」を掲載しました。

これは日本でも大きく報じられましたが、目を引いたのは一位に予測されたのが中国だったからでした。しかも習近平政権が誇る「ゼロコロナ政策の失敗」が世界経済に深刻な打撃を与えるとい予測でした。

ユーラシアグループはロシアのウクライナ侵攻も予測していましたが、それは中国のゼロコロナ政策の失敗よりも下位に位置づけられていました。

現在日本ではウクライナ問題や、昨日起きた地震のことが多く報道され、中国のこの地政学的リスクについては、ほとんど報道されませんが、政府としてはこちらのほうにも気を配るべきです。日本国内のコロナ感染より、こちらのほうがよほど恐ろしいです。

そうしていくつの対策のシナリオを考えておくべきです。岸田政権は意思決定が遅い傾向がありますが、中国がゼロコロナ対策に失敗したり、死亡率の高いコロナウイルスの感染爆発が起こった場合に、意思決定が遅れれば日本は、ウクライナ危機どころではなく直接甚大な悪影響を被ることもあり得ます。

警戒を強めるべきです。無論これが、杞憂に終わればそれに越したことはないのですが・・・・・。

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2022年3月16日水曜日

「ウクライナを見捨てない」 東欧3首脳、キエフ訪問で連帯―【私の論評】第二次世界大戦の戦後の完璧な終わりを告げる3首脳の電撃ウクライナ訪問(゚д゚)!

「ウクライナを見捨てない」 東欧3首脳、キエフ訪問で連帯
  
  15日、ウクライナの首都キエフで、ゼレンスキー大統領(手前右)と握手する
  ポーランドのモラウィエツキ首相(左から4人目)ら東欧3カ国の首相

 ポーランド、チェコ、スロベニアの東欧3カ国の首相が15日、ロシア軍の包囲作戦と攻撃にさらされるウクライナの首都キエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。3首脳は「ウクライナは自分たちの自由と独立のためだけでなく、われわれのためにも戦っている」とたたえ、連帯とさらなる支援を約束した。

 2月24日のロシア軍の侵攻開始後、外国首脳がキエフを訪れたのは初めて。3人は15日午前に列車でウクライナ入りし、数時間の長旅を経てキエフ入りした。ロシア側にも訪問を事前通告していたという。3首脳は16日午前(日本時間同日午後)、ポーランドへ無事戻った。

 ゼレンスキー氏らと並んで記者会見したポーランドのモラウィエツキ首相は「ウクライナを
見捨てない」と強調し、ウクライナの欧州連合(EU)加盟への支持も明言した。チェコのフィアラ首相は「勇気ある戦いを称賛する。一段の支援を続けていく」と述べ、スロベニアのヤンシャ首相も「ウクライナが陸海空を守るため、防衛的・攻撃的な兵器を含むすべての武器供与が重要だ」と訴えた。

 首脳らは、ウクライナ語で「ウクライナに栄光を」と勝利を誓った。ゼレンスキー氏は「キエフが侵略者の標的になっている時に、何も怖がらず、われわれの運命を危惧して来てくれた」と謝意を表明。報道によると、会談では戦後を見据えたウクライナの復興支援や、ロシアの責任追及なども協議した。

【私の論評】第二次世界大戦の戦後の完璧な終わりを告げる3首脳の命を賭した電撃ウクライナ訪問(゚д゚)!

本日世界を駆け巡った超ド級の驚くべきニュースです。今日3月15日、ポーランド、チェコ、スロベニアの首相がウクライナを訪問しました。しかも列車で。爆撃が激しくなるウクライナの首都キエフでゼレンスキー大統領と会見するために。EU欧州委員会理事会の承認の下、彼らはキエフに到着しゼレンスキー大統領に会ったのです。


キエフで3首相を迎えたゼレンスキー氏は、メッセージアプリのテレグラムに投稿した動画で「あなた方がウクライナにとって困難な時期にキエフを訪問したことは支持の強い現れであり、心から感謝している」と述べました。

訪問したうちの一人、ポーランドのモラウィエツキ首相は会談の模様の写真をTwitterにアップした上で「ウクライナを失ったら、もはやヨーロッパではない」と欧州全体でウクライナをサポートすべきと投稿しました。

「ウクライナを失ったら、もはやヨーロッパではない」とウクライナで述べたモラウィエツキ氏

「もしヨーロッパがウクライナを失うことになれば、ヨーロッパは完全に別物になることは間違いありません。それは、もはやヨーロッパではありません。敗北して屈辱的で哀れなものになるでしょう。私は強くて毅然としたヨーロッパを望みます」

会談に同席したウクライナのシュミハリ首相によると、ウクライナ再建支援と、ロシアに破壊した全ての物を賠償させるための国際協力が議題になったといいます。 シュミハリ首相は「3人の首相がキエフにいることは、すべてのウクライナ人に対する限りない支援の証拠です。EUの評議会を代表する3人の首相の訪問は歴史教科書に記録されます」とツイートしました。

この会談が今後どのような影響を及ぼすか未知数のところがありますが、それにしても確実に新たな歴史の一歩飾る象徴的な出来事であることは間違いないです。

その新たな歴史とは何か、それは戦後体制の完璧な終了です。

ロシアは、第2次世界大戦で、旧ソ連が2000万人を超すおびただしい犠牲者を出すことによって得られた国連安全保障理事会常任理事国のステータスを失うことになるでしょう。今回の侵攻で、ロシアは権利を自ら放棄したとも言えます。それは『戦後の終わり』を迎えるという意味でもあります。

   左からスロベニアのヤンシャ首相、ポーランドのモラビエツキ首相、カチンスキ副首相、
   チェコのフィアラ首相。非公開の場所に集い地図を見る=15日


国連の常任理事国の拒否権は、今回のロシア・ウクライナ戦争のように、常任理事国が戦争に関わっていれば戦争を止めることができない異常な制度です。ウクライナもロシアも多くの死者を出しています。この戦争がどのような決着をむかえるのか、まだ未知数のところがありますが、平和のための新たな仕組み作りに向けた機運が高まることでしょう。

そうして、今回のポーランド、チェコ、スロベニアの東欧3カ国の現時点におけるウクライナ訪問は、それを促す象徴的な出来事として、歴史に残ることになるでしょう。

日本も将来を見越しながら行動するべきであり、安全保障をはじめ食糧、エネルギーなどあらゆる問題を率直に議論していかなければならないです。そうして、これは安倍元総理が語っていた「戦後レジームからの脱却」でもあります。

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2022年3月15日火曜日

ウクライナ大統領府顧問、5月初旬までの戦争終結を予想―【私の論評】ロシアは4月から6月までの間に国家財政破綻し戦争継続はできなくなる(゚д゚)!

ウクライナ大統領府顧問、5月初旬までの戦争終結を予想

14日、スムイ州Okhtyrkaで、砲撃で破壊された建物の前を歩くウクライナ軍兵士

ウクライナ大統領府の顧問を務めるオレクシー・アレストビッチ氏は14日遅く、ロシアが攻撃に使用できる資源は5月初めに枯渇する見込みで、それまでに戦争が終結する可能性が高いとの見方を示した。
  
ウクライナとロシアの停戦交渉はこれまでのところ、一般市民が避難する人道回廊の設定を除き、ほとんど成果が出ていない。 ウクライナの複数のメディアが掲載した動画で、アレストビッチ氏は、実際にいつ終結するかは、ロシア大統領府が軍事侵攻にどれだけの資源を費やすつもりかに左右されると説明。

 「5月初旬以前に和平合意があるだろう。それよりもかなり早いかもしれない」と述べた。 その上で、1─2週間内に和平合意が結ばれ、ロシア軍が撤退することになるか、例えばシリア軍がロシア軍に合流して戦闘が長引き、4月半ばから下旬に合意が後ずれするかの分岐点に現在あるとの認識を示した。 ロシアが1カ月間の訓練しか受けていない新たな徴集兵を派遣するという「全くクレージー」なシナリオもあるとした。

【私の論評】ロシアは4月から6月までの間に国家財政破綻し戦争継続はできなくなる(゚д゚)!

ウクライナに侵攻しているロシア軍の中に、訓練が不十分な徴兵者たちがいることが明らかになっています。

プーチン大統領は否定しましたが、彼らを派兵しているとの疑念は強く、ロシア国防省は関係者の処分を急ぐ考えを表明しました。

ロシアでは約30年前の内戦で、徴兵された若者たちが多数死亡し、彼らの母親が政権を激しく非難して厭戦ムードが高まったことがあります。今回も母親団体から懸念の声が上がり始めており、戦争継続への影響が注目されます。

徴収兵などは十分に訓練するか、戦争にすぐに派遣するなら、前線などではなく、補助的な業務か、後方支援をさせるべきです。もし前線に送り込めば、足手まといになるだけではなく、彼らをみすみす的の銃弾や砲弾の的にするだけです。

もし、十分訓練されていない徴収兵を前線に送り込むというのなら、これは非人道的であり、これは現代版督戦隊のようなやり方で残虐きわまりありません。この面からも欧米諸国はこれを糾弾し、ロシアがやめないなら更に制裁を強化すべきです。

健康診断を受ける徴収兵

ウクライナ大統領府顧問、5月初旬までの戦争終結を予想通りロシアは今のままだと戦争継続不可能になるでしょう。

ロシアの財務大臣は3月13日、「海外資産の半分が凍結されて利用できなくなっている」と述べたといます。

16日には、最初のロシアの外貨建ての国債の利払の時期がきます。ロシアは利払いをルーブルで、それもマーケットのレートではなく、公的為替レートで払うとしていますが、これを実施と、事実上の債務不履行(デフォルト)になります。

それが明日(16日)起こるのですす。起きたところで何が変わるわけではないのですが、4月~6月の間にロシアが正式にデフォルトとなり、経済的にかなり痛手を被ることになります。デフォルトしたからといって国家が消滅するということはありませんが、それにしても戦争をやめない限り、IMFもこれを救うことはできませんから、ロシアやむを得ず戦争を終結させることになるでしょう。

ですから6月までに、ウクライナはどれだけロシア軍の攻撃に耐え、欧米諸国はいかに制裁を持続できるかということが問われているといえます。

欧米諸国はロシアの海外の資産を凍結してしまったため、ロシアは為替の防御のための資産が枯渇してしまったため、ロシア中央銀行(日本の日銀に相当)が何をやったかと言うと、政策金利を9.5%から20%に大幅に上げたのです。

そうすると住宅ローンなど、銀行間、あるいは企業とのローンが跳ね上がります。それによって、経済活動がストップしてしてしまい、これはロシアにとってSWIFTよりもはるかに悪影響があり、相当効いているようです。

ロシアは、これに対する対抗策として、制裁国に対して「資産を没収する」としています。ロシアで活動している海外企業が撤退しています。ロシアは、こうした企業の資産を没収するとしています。 

さらにこうした企業に対して、利払いや債務を返済しないといった措置を取っています。そのため、ロシアにお金を貸している企業、金融機関は直接影響を受けいますが、金融システム全体への影響は限定的です。

ロシアの国債の残高は200億ドルくらいなので、それほど大きくはないのです。 ですから、これを発端として、 リーマンショックのような、あるいは1997年のロシア危機の時のように世界が金融不安に陥るというようなことはありません。

さらに資産凍結はプーチン政権を支えてきた「オリガルヒ」と呼ばれる富裕層の個人資産にまで及んでいます。これによってプーチンの周りの影響力のある人たちをターゲットにすることで切り崩すことができます。

ドイツで押収されたオルガリヒの「クルーザー」

ロシアはメディアを掌握していますから、プロパガンダで「戦争などは起きていません、ウク特別作戦を実行しているだけです」、「ウクライナがウクライナのロシア系住民を迫害したから、特別作戦を実施している」とか「ロシアが正しいのだ」として事実を隠すことはできますが、政策金利の暴騰や超インフレを隠すことはできません。

そうなると、さすがに国民は「何かおかしいぞ、何が起きているのだ」という状態になります。そういう意味でも、中央銀行への制裁の影響は大きいと思います。

ロシアでは、旧ソ連時代には物資が不足しており、そうしてソ連崩壊直前直後に、激しいインフレに見舞われたということが記憶に残っている人は多いでしょう。そうして、外国企業が撤退して行くと、そこで働いている人たちも職を失いかねません。そうなれば、国民も「これは何かおかしいぞ」と思うこになるでしょう。


そのうち制限はされているものの、SNSでいろいろな情報にある程度アクセスできると、「ロシア政府がやっていることは問題だ」となる可能性は高いです。そうなれば、プーチン政権の切り崩しにつながる可能性があります。

他方、イランへの制裁のときに、決済の抜け道として、中国が大きな役割を果たしたということがありました。欧米諸国がロシアを制裁すると自身も痛手を受けますし、ロシアはさらに大きな痛手を受けることになります。これは、相互にどこまで耐えられるかという持久戦なのです。

持久戦をしているところで中国がロシアを支えると、ロシアがより我慢できてしまい、欧米がらり我慢できなくなってしまう。ですから、中国のサポートをなくすことによって、ロシアを追い詰めて行くということになるでしょう。場合によっては、中国にも制裁を課すことになるかもしれません。

ただ、当の中国は「ゼロコロナ政策」が失敗しそうな風向きになってきたので、ロシアを積極的に支援することはできないかもしれません。当然、ロシアにはできるだけ痛い制裁を加え、欧米は痛手を緩和しつつ持続力を保つようにすべきです。

4月〜6月にはロシアはデフォルトして、戦争継続は不可能になることでしょう。おそかれ、はやかれこのようなことになるのは最初から見えていました。にもかかわらず、なぜプーチンは、ウクライナに侵攻したのでしょうか。本当に疑問です。

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2022年3月14日月曜日

「6月にロシアがなくなる?」木村太郎と4人の専門家が読み解く ウクライナ侵攻“結末のシナリオ”―【私の論評】ロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがない(゚д゚)!

「6月にロシアがなくなる?」木村太郎と4人の専門家が読み解く ウクライナ侵攻“結末のシナリオ”

ロシア軍に包囲されつつあるキエフ…停戦は

じりじりとロシア軍が迫るウクライナの首都・キエフ。首都攻防の行方とウクライナ侵攻の結末について、今後どのようなシナリオが考えられるのか。4人の専門家に話を聞くと、いずれも「すぐに停戦には落ち着かないだろう」という予測だった。

【防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏】
・キエフ包囲が阻止され、膠着状態が続けば“ワイルドカード”として、ロシア軍は生物化学兵器使用の可能性
・戦争に勝ったとしても、経済制裁は終わらずロシアは厳しい

【元産経新聞モスクワ支局長・大和大学 社会学部 佐々木正明教授】
・キエフが陥落したら280万人都市が火の海になり、21世紀最大の悲劇に。キエフ陥落は絶対にあってはならないシナリオ
・ポイントは停戦交渉。国際社会が一致団結してプーチンの戦争をやめさせるしかない

【日本大学 危機管理学部 小谷賢教授】
・キエフが陥落する可能性は高い
・ポイントは陥落後のゼレンスキー大統領の行動。国内にとどまってウクライナ軍の士気を上げ続けるしかない。国外脱出すればロシア側に「国を捨てた」とプロパガンダとして利用される

【防衛省 防衛研究所 兵頭慎治氏】
・中東の志願兵投入は、キエフ攻防の「長期化の覚悟」を意味する。プーチンはゼレンスキーが降伏しない限り諦めない
・ポイントはロシア国内の世論。制裁をはじめとする“違和感”に国民が気付けば事態が変わる可能性

そんな中、ジャーナリストの木村太郎氏が挙げたのが「6月にロシアがなくなる」というキーワードだ。

木村太郎氏:
これは僕が言ってるのではなくて、ロシアにFSB(露連邦保安局)という組織があって、そこの分析官が今後の戦争について匿名で分析を書いてるんです。今回の侵攻はまったく完全な失敗だったと。ロシアはいくら頑張ってもウクライナに勝つことはできないだろうと。なぜかというと、補給戦が延びてる。20万人を投入したが、例えば首都を制圧して大統領を殺したとしても、民衆を全部おさえるとすると50万人くらいの兵隊がいないといけない。それがいないうちに制裁が効いてきて、ロシアの経済は6月までに壊滅してしまう。それでロシアがなくなる。そういうことを言っている。


6月にロシア経済が破綻するということになれば、プーチン大統領の失脚もあり得るのか?

木村太郎氏:
それはまた別のシナリオがあるんですけど、プーチンはもしかしたら可能性として、クーデターでどこかに連れて行かれてしまうかもしれない。そういう可能性っていうのも考えておいた方がいいということを言ってる。これは可能性として高いかどうかは別にして、そういうオプションもあるんじゃないかと思うん

アメリカがウクライナの“目と耳”に デジタル情報戦で優位の理由

もう一つの戦争、デジタル情報戦についてはウクライナが圧倒的に優位だという見方もある。その理由について木村氏は「アメリカがウクライナの“目と耳”になっている」という。

木村太郎氏:
アメリカは情報戦でロシアを圧倒してるんですね。一つは大筋の情報を的確に、しかも先に出している。今度の戦争で「偽旗作戦」という言葉が出てきた。これは誰かに見せかける作戦。最近でもベラルーシで爆撃があって「ウクライナが爆撃したから、ベラルーシはウクライナに参戦しろよ」と。「こういうことを(ロシアが)言うぞ」とアメリカが言うわけですよね。すると、ベラルーシは参戦できなくなってしまう。そういうことをアメリカはうまくやった。

木村太郎氏:
もう一つ、目と耳になってるっていうのは、ウクライナの国境ギリギリのところを今、アメリカのスパイ機が飛んでるんですよ。それでロシア軍の通信とか、あるいは動きなんかをそのままウクライナ軍に伝えて、しかも命令まで出してるんですね。そういうことをやっているので、今のアメリカ軍はウクライナ軍にとって貴重な存在。ウクライナが頑張っているのはこの情報があってのことだと言われていますね。

このようにしてアメリカがウクライナの“目と耳”になることで、ウクライナ政府はいろいろな情報を得ることができているという。

狙わなくても当たるミサイル 米からウクライナへの武器提供も?

アメリカはウクライナに対して、情報の提供だけではなく武器の供給も行っているという報道もあった。それが「ジャベリン・ミサイル」という対戦車ミサイル。

木村太郎氏:
狙って撃つんじゃなくて、とりあえず適当に撃つと当たるというミサイルなんです。すごく恐ろしい対戦車砲。これを含めて1万7000の対戦車砲が、1週間以内にウクライナに送られた。エストニアでウクライナの輸送機に積み替えて、これからウクライナに飛ぶんだって言ってるんですが、ロシア側がまだこれに気がついてないからここまで手が回らないだろうな、ということまで記事に書かれてしまった。

この「ジャベリン・ミサイル」の報道によって、リビウの軍事関連施設が狙われてしまったという見方もある。また、木村氏は今回のロシアの作戦についてこう述べた。

木村太郎氏:
今回、戦車の補給部隊を連れていくのも少なかったし、食料も少なかった。もう一つは、まっすぐ道路に列をつくって戦車が走ることなんて、軍事専門家に言わせたらありえないって言うんですね。木の間に隠れるのが当たり前だと。そういう意味で非常に初歩的な戦車作戦っていうのも、ロシアはできてなかったんじゃないかと言われています。

ウクライナ侵攻の結末は…。日々変わり続ける情勢に注目したい。

(「Mr.サンデー」3月13日放送分より)

【私の論評】ロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがない(゚д゚)!

6月にロシアがなくなるというのは、どういう意味なのか、はっきりしないところもありますが、ロシア経済は6月にはとんでもない次元にまで、窮乏するということでしょう。そうして、無論ウクライナ侵略戦争も継続不能になるということだと思います。そうして、もしかすると、ロシアの現体制が崩壊するかもしれません。

このブログでは、以前からロシアのGDPは韓国を若干下回る程度であり、一人あたりのGDPでは韓国をはるかに下回るということを言ってきました。


韓国が、仮にロシア並の核や軍事力を持っていたとして、あの広大なロシアを守り、なおかつウクライナに侵攻したとして、早晩限界がくることは、目に見ています。

今日は、さらにロシア経済を他の視点からみてみます。以下に3つのグラフを掲載します。以下のグラフいずれもクリックすると拡大します。

ロシアの国内総生産(GDP)は20年で1.5兆ドルにすぎない(100掛けて150兆円と考えればだいたいの規模感が分かる)です。図1に主要国のGDPを示していますが、ロシアはイタリアの1.9兆ドル、韓国の1.6兆ドルよりも小さいです(グラフの国の順番は次の図2の軍事費の多い順である。選んだ国は21位の台湾までとロシアとヨーロッパで国境を接している国)。


ドイツ、フランス、イタリアのGDPを足すと8.4兆ドルとなってロシアの5倍以上となります。英国も足せば11.1兆ドルとなって、ロシアの7倍以上にもなります。

日本は5兆ドルでロシアの3.4倍であり、米国は20.9兆ドルでロシアの13.9倍です。太平洋戦争開戦時、日本の経済力は米国の10分の1以下と言われていました。ロシアは、もちろん、直接米国を攻撃した訳ではないですが、当時の日本以上に無謀な戦争に突き進んでいるのではないでしょうか。

中国に関しては、そもそも中国の出すGDP統計は李克強首相が自ら認めるように出鱈目であり、学者によっては、実際はドイツ以下であると指摘する人もいますが、ここでは詳細については触れません。

ロシアは、この小さな経済力ですべての西側諸国を敵に回しました。もちろん、貧しくても軍事力で圧倒することはある程度は可能ではあります。


図2は主要国の軍事費を見たものです。しかし、軍事費で見ても米国が圧倒的で7800憶ドル、ロシアは620憶ドルで米国の12.5分の1にすぎないです。ロシアにとって、GDPで見たときより多少はマシになりますが、それでも圧倒的に劣勢であることは変わらないです。

軍事費に関しては、誤解している人も多いのではないでしょうか、世界の軍事力ランキングとうものが、公表されますが、それによるとロシアは二位となっているものがほとんどで、ここから軍事費も当然二位であると思い込んでしまう人も多いのではないでしょうか。

軍事力ランキングはあくまで、軍隊の総合的な強さですから、軍事費とは直接は関係ありません。無論、ランキングには軍事費も大きな部分を占めますが、それだけが判断基準ではありません。ウクライナに侵攻した以降は、ロシアの軍事力ランキングは下がるのではないかと思います。

ドイツ、フランス、イタリア、英国の軍事費を合計すると1940億ドルですから、米国を入れなくてもロシアの3倍以上となります。なぜロシアはこれほど強気なのでしょうか。

これまで述べた数字は、為替レートで換算した各国のドルの値を示したものですが、為替レート換算の数字は必ずしも本当の軍事力を表さないということがあります。軍事力は軍装備の質×兵の数となる(もちろん、作戦の質や士気も重要ですが、これについては議論しません)。

軍装備のような財は自由に輸出入できるものですから、その価格は全世界であまり変わらないはずです。一方、兵士のコストはその国の一般的な賃金で決まります。賃金が安い国なら兵士のコストは安くつきます。だから、所得の低い国の軍事力は為替レートで換算した軍事費より高いはずです。

そう考えると、軍事力を支える経済力は所得の低い国では賃金で決まるサービス価格が安いことを考慮した購買力平価で見るべきだということになります。購買力平価で評価した各国GDPは図3のようになります。



これを見ると、ロシアのGDPは米国の5分の1,ドイツの9割、フランス、ドイツ、イタリア、英国合計の3分の1となります。プーチンは米国が前面に出て来なくて、逡巡するヨーロッパが相手なら、経済力が3倍でも恐れることはないと思ったかもしれないです。

覚悟があれば敵を恐れることはないというのは正しいかもしれないですが、そのための犠牲は大きいです。また、ロシアがドイツ並みの経済力を持つというのは人口が大きいからです。

それはすなわち、1人当たりで考えれば貧しいということです。生活水準を表す一人当たり購買力平価GDPは図4のようになります。


20年の一人当たり購買力平価GDPは、ロシアは2.8万ドル、ドイツは5.5万ドル、フランスは4.6万ドル、イタリアは4.1万ドルであり、ロシアはこれらの国の2分の1から7割の水準でしかありません。貧しい中で過大な軍備を保有し、なおさら貧しくなっています。

1990年代初め、ロシアもウクライナもポーランドも同じように貧しい国でした。しかし西欧に向いたポーランドは発展し、現在1人当たり購買力平価GDPは3.4万ドルとなって先進国の水準に到達しました。ウクライナは1.3万ドルです。西に向くことは自由と民主主義の国になることと同時に、豊かな国になることでもあります。

ロシアのような強権国家は、自国の数倍の経済力の国を脅し、自分の欲しいものを得ることはできるでしょう。しかし、ウクライナが降伏し、ロシアのものになるとして、それでロシアは何を得られるのでしょうか。

恐怖と敵意にみちたウクライナ人、破壊された都市、不発弾があるかもしれない肥沃な土地しか得られないです。それどころか、ウクライナの一部でも占拠するというのなら、そこに軍を駐留させなければなりません。

駐留軍には物資を補給しなければなりません。戦禍で疲弊したウクライナ人を放置するわけにもいかず、彼らにも復興するまで物資を補給しなければなりません。ロシアと国境を接する国々も恐怖と敵意を持ち、軍備と相互の軍事同盟関係を強化するでしょう。

ドイツ、フランスなども、ウクライナへの軍事援助をためらったことを後悔しているでしょうう。ロシアへの経済制裁は続き、海外投資は来なくなります。石油と天然ガスは中国に買いたたかれ、ハイテク製品は中国に高値で買わされることになります。現在も貧しいロシアは永久に貧しいままの国となります。

17世紀末、ピョートル大帝が夢見た近代化されたロシアは、皇帝プーチンの下では永遠に果たせない夢となりました。

ロシア経済は6月にはとんでもない次元にまで、窮乏しウクライナ侵略戦争も継続不能になるという読みは正しいと思います。そうして、ロシアは本当に消えてしまうかもしれません。

防衛省統合幕僚監部は14日、ロシア海軍の潜水艦3隻など艦艇計6隻が同日、北海道とロシア・サハリンの間の宗谷海峡を西向きに通過したと発表しました。2月に大規模演習のため日本海やオホーツク海南部に滞在した24隻の一部といいます。

こういう活動ができるのも今のうちだけかもしれません。6月以降には、このようなことすらできなくなる可能性もあります。

ソ連が崩壊した直後のロシアでは、空軍が定期パトロールをすることも不可能になったといいます。あまりの悲惨さに、米軍が支援してようやっと定期パトロールができたという逸話も残っているくらいです。

そもそも、今回のロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがないです。

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2022年3月13日日曜日

中国でコロナ感染者が過去最多、上海でも移動制限―【私の論評】日本は、ロシアのウクライナ侵攻だけではなく、中国の不安定化による悪影響にも備えるべき(゚д゚)!

中国でコロナ感染者が過去最多、上海でも移動制限

中国で都市封鎖により閉鎖された市場(11日、吉林省長春市)

中国で新型コロナウイルスの感染が全国規模で急拡大している。12日の感染者数は約3400人となり、過去最多を更新した。政府は感染を抑え込む「ゼロコロナ政策」を強化。東北部の吉林省長春市は都市封鎖を実施し、上海市も移動制限を敷いた。

国家衛生健康委員会の13日発表によると、香港・マカオを除く中国本土の新規感染者(無症状・海外からの訪問者を含む)は12日、合計3393人となった。データを遡れる2020年3月末以降、1日の感染者数として最も多い。


2月中旬までは毎日、数十~200人台で推移していた。「オミクロン型」など感染力の強い変異型が感染拡大の原因という。

東北部にある長春市の防疫当局は11日、全地域で不要不急の外出を禁止したと発表した。スーパーや薬局などを除く店舗や学校は休みとなる。バスやタクシー、地下鉄の運行も止まった。

重要企業などを除き、すべての企業活動を停止する。住友商事の長春事務所は「政府の指導に従って原則的に在宅勤務にする」(広報部)とした。

トヨタ自動車は合弁会社を通じて長春で乗用車の工場を運営し、多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」を生産している。広報担当者は12日に「工場は稼働している。政府の指示に従って対応する」とコメントした。

上海市政府は12日、必要な場合を除いて上海から出ないよう市民に呼びかけた。同市を離れたり訪れたりする人には48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の持参を義務付けた。上海市は12日から、市内の小中学校と幼稚園、塾などで対面式の授業を止め、オンラインに切り替えると発表した。

東北部の吉林市、東部の青島市、南部の深圳市や東莞市、天津市や北京市など広範囲で感染が広がった。感染者が増えた地域では大規模なPCR検査や移動制限を展開している。吉林省政府は12日、感染拡大の責任を問い、吉林市長の解任を発表した。

国務院(政府)は感染対策を強化している。11日、従来のPCR検査に加え、抗原検査を試験的に併用するよう各地方政府に通知したと発表した。陽性患者などを「早期に見つけ出す能力を高める」狙いという。

【私の論評】日本は、ロシアのウクライナ侵攻だけではなく、中国の不安定化による悪影響にも備えるべき(゚д゚)!

吉林省吉林市では大学で集団感染が起きたそうです。香港メディアによれば、所属する学生の告発から、大学当局が発熱した学生に解熱剤を与え、新規感染の情報を 隠蔽しようとしたとの疑惑も出ています。当局は12日、市長の免職を発表しました。感染拡大を許した責任を厳しく問い、全国の防疫担当者の引き締めを図る狙いとみられます。

中国本土の市中感染者は6日連続で500人を超え、11日の新規感染者は31の省・直轄市・自治区のうち20に及んでいます。

東北部の吉林省が全体の約7割を占め、2千人以上の感染を確認。長春市では事実上の都市封鎖(ロックダウン)が続いています。次いで感染者が多い山東省では青島市が12日、映画館などの営業を停止すると表明。必要な場合を除き市内から出ないよう呼び掛けました。

上海日本人学校の虹橋校は13日、原則全児童を対象にした異例のPCR検査を実施。学校前は日曜日にもかかわらず送迎の保護者らであふれた。(共同)中国政府は北京冬季五輪・パラリンピックの開催などに向け、感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ政策」を進めてきましたが、ほころびが出た形です。


これが中国国内だけで住めば良いのですが、最悪の場合はそうではなくなることも予想されるというが、年初にすで予想が発表されていました。それは、このブログにも掲載した、ユーラシア・グループによる毎年恒例の地政学的リスクの予測です。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界「10大リスク」1位は中国の「ゼロコロナ政策」失敗…各国の政情不安定化も―【私の論評】今年最大の地政学的リスクは、中国の対外関係ではなく国内問題(゚д゚)!
米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)を挙げた。中国が新型コロナウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。
報告書は冒頭で、米中という2つの大国がそれぞれの内政事情から内向き志向を一段と強めると予測。戦争の可能性は低下する一方で、世界の課題対処への指導力や協調の欠如につながると指摘した。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる同社は年頭に政治や経済に大きな影響を与えそうな事象を予測している。21年の首位にはバイデン米大統領を意味する「第46代」を選び、米国民の半数が大統領選の結果を非合法とみなす状況に警鐘を鳴らした。予測公表の2日後、トランプ前大統領の支持者らが選挙結果を覆そうと米連邦議会議事堂に乱入した。

22年のトップリスクには新型コロナとの戦いを挙げた。先進国はワクチン接種や治療薬の普及でパンデミック(感染大流行)の終わりが見えてくる一方、中国はそこに到達できないと予想する。中国政府は「ゼロコロナ」政策を志向するが、感染力の強い変異型に対して、効果の低い国産ワクチンでは太刀打ちできないとみる。ロックダウン(都市封鎖)によって経済の混乱が世界に広がりかねないと指摘する。

先進国はワクチンの追加接種(ブースター接種)を進めている。ブースター需要が世界的なワクチンの普及を妨げ、格差を生み出す。ユーラシア・グループは「発展途上国が最も大きな打撃を受け、現職の政治家が国民の怒りの矛先を向けられる」と指摘し、貧困国はさらなる負債を抱えると警告する。 

国際政治学者のイアン・ブレマー氏(ユーラシア・グループ社長)は2月24日、ロイターのインタビューに応じ、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は地政学的に極めて重要な出来事であり「第2次冷戦」の幕開けであると述べました。

かつてのソ連との冷戦が世界的なものであったのに比べて、現在のロシアの勢力圏は小さいと指摘する一方、意図しない緊張激化を防ぐための『ガードレール』を構築するための制度的な仕組みがあまり整っていないという点でより危険だと語りました。

イアン・ブレマー氏

ブレマー氏の発言要旨は以下のとおりです。
  ユーラシア・グループ イアン・ブレマー社長  私たちはこのことについて一生語り続けることになる。これはベルリンの壁崩壊やソ連が崩壊して以来、地政学的に最も重要な出来事だ。  

世界的に見れば、これは世界秩序における重大な転換点であり、新しい冷戦の誕生だ。グローバリゼーションのあり方を大きく変えるものであり、とても大きな大きなインパクトがある。 

 米国と同盟国、そしてロシアとの間の第2次冷戦の始まりだ。ある意味で、この新しい冷戦はかつての冷戦ほど深刻ではない。なぜなら、ロシアの経済規模はテキサスよりも小さく、現在のロシアは中南米やアジア、アフリカとは無関係だからだ。ソ連との冷戦は世界的なものだった。

  しかし、ある意味では第1次冷戦よりも危険だ。なぜなら、意図しない緊張激化を防ぐための『ガードレール』を構築するための制度的な仕組みがあまり整っていないからだ。

  またロシアは、特にサイバー攻撃や偽情報戦など、ある意味で実際の戦争を誘発しかねない手段を持っているからだ。第3次世界大戦になるとは言わないが、米国、NATO(北大西洋条約機構)、ロシアが直接対立することになり、その対立は大変危険なものになる可能性がある。われわれはそれを理解しなければならない。

  <プーチン氏の狙いは何か>  (侵攻によって)何万人ものウクライナ人が命を落とすだろう。ウクライナ政府は亡命を余儀なくされるか、逮捕あるいは処刑されるだろう。それこそが、いまここで私たちが話していることなのだ。

  プーチン氏は自分の意思を強制するために権力を使い、欧州における既存の安全保障体制を打破するために無理やり勢力圏を作ろうとしている。それこそが、彼がやろうとしていることだ。 

 つまり、彼がついたウソは驚くべきものでバイデン米大統領に直接、シュルツ独首相に直接、マクロン仏大統領に直接、侵攻の意図はなく部隊は撤収しているとウソをつきまくったのだ。

  だが、この1カ月間で私たちが見た唯一の「緊張緩和」とは、ロシア大統領がついたウソだけだった。彼らがやってきたことはすべてこの侵攻に向かっていた。完全に罪のない、ロシアと敵対したり、脅威となることは何一つしていないウクライナ政府を侵略するためだ。 

 <中国はどう動く?>  中国は冷戦を望んではいない。中国は、欧州が中国とビジネスをしなくなるような、米国人が中国に投資するのがさらに難しくなるような戦いに巻き込まれることを望んでいない。中国にとってバランスを取るのは難しいだろう。

  だが現実には、中国は米国が自分たちをアジアに封じ込めようとしていると見ている。ロシアも、米国が自分たちを欧州に閉じ込めようとしていると見ており、結果的にそれが中ロ両国の距離を縮めている。

  <経済への影響は>  おそらく先進工業国は今年のGDPが約1%ほど低下するだろう。ただそれは、さらなる大規模な情勢悪化がないと仮定した場合だ。

  この侵攻によって明らかに原油やガス価格は上昇している。サプライチェーンの面で大きな問題が発生するのは明らかだ。とりわけ黒海の港の混乱と、欧米が科すであろう制裁の影響だ。
世界のほとんどの国ではこの2年間コロナの猛威にさらされ耐えてきました。「ウイズコロナ」政策の元、多くの感染者を出し、多くの国、特に先進国では国民の8割程度がワクチンを2回以上接種しました。発症していない感染者も相当数いるでしょう。

一方発展登場国では、一部の特権階級を除いて多くの人がワクチンの2回接種はおろか、1回も摂取できていない人が多いです。ただ先進国も発展途上国も十分にコロナ感染が広まったがゆえに、今やっとそこから立ち直れる光が見えてきたところです。

一方、中国はどうかといえば。「ゼロコロナ」政策で人権無視の強烈なロックダウンによりこれまでほとんど感染者がいませんでした。14億の民がほとんど感染していないのです。そうして中国製ワクチンはほとんど効果がないといいます。

地球上で中国14億人だけが全く感染されておらず、その他の60億人はかなり感染してしまったのです。一瞬、感染していない中国の一人勝ちに見えましたが実はそうではないのです。コロナウィルスは決してなくならないです。

ほんとんど感染者のいない中国はこれからもずっと感染しないように頑張り続けなければならないです。あの人権無視のロックダウンにいつまでも耐え続けなければならないのです。そんなことができるでしょうか。そんなことはいつまでも続けられないです。そこに大きな中国の地政学的リスクがあります。

中国では、経済活動や市民生活を犠牲にしても新型コロナウイルスの市中感染を抑え込む「ゼロコロナ」政策の見直しに期待する声が出ていましたが、当面望み薄の状況です。 

北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に合わせるかのように国内の新規感染者は急増。今秋の共産党大会を控え、リスクを伴う軌道修正のハードルは高いままです。

 李克強首相は5日の政府活動報告で、「国内での再発防止を堅持する」と強調する一方、「感染症対策を不断に最適化する」とも言及しました。全人代に先立ち複数の専門家からは、「中国の実情に即したウィズコロナの模索」を求める意見も出ていましたた。 

習近平国家主席は6日の会合で「わが国の政治制度は、対新型コロナの実践の中で顕著な優位性を示した」と自賛しました。習氏の念頭には1日数万人規模の感染爆発を繰り返す民主主義国との対比があり、共産党独裁の正当性をアピールできる道具をやすやすと手放すとは考えにくいです。 

政協の郭衛民報道官は3日の記者会見で「医療条件の良い先進国ですら医療逼迫(ひっぱく)が起きている。14億の人口を抱える発展途上国が有効な措置を取らなければ、結果は想像できない」と本音を漏らした。医療資源の乏しい広大な農村部を抱える中国がいったん対策を緩めれば、大きな被害を招きかねないと警戒感は根強いです。 

このまま、中国が「ゼロコロナ」政策にこだわり続けると、いくら人権無視のロックダウンや、死亡者ゼロなどのキャンペーンを続けたにしても、早晩「ゼロコロナ」政策は行き詰まります。

そのとき何がおこるかといえば、中国共産党の統治の正当性が崩れかねないということです。そのようなことになれば、中国共産党は当然のことながら、中国共産党の統治の正当性を否定する人々を徹底的に弾圧するでしょう。

ただ、それはますます人々に中共の統治の正当性に疑義を抱かせることになります。そこで、中国共産党が、国民を説得して「ゼロコロナ政策」から「ウィズコロナ政策」に転換できれば良いですが、硬直した現在の中国共産党は、どこまでも弾圧を続けるかもしれません。

これは、まさにポジティブ(正の)・フィードバックとなり、中国は不安定となり、非安定平衡、すなわち、クーデターや内乱や内戦にいたるかもしれません。これが、現在の中国の地政学上のリスクです。

ウクライナの地政学的リスクは、ロシアなウクライナ侵攻へと結びつきました。中国の地政学的リスクが、クーデターや内戦に至れば、日本からは遠いウクライナですら、対岸の火事とは言えない状況になっているのに、日本も大きな悪影響を被るのは必至です。

内戦などが起これば、日本にも避難民が大挙して押し寄せる可能性もあります。当然のことながら、中国のサプライチェーンは麻痺することになります。

日本にとって一番恐ろしいのは、ロシアと中国の地政学的リスクが両方とも高まり、最悪の事態となり、それにより甚大な悪影響を被ることです。

日本は、こうした可能性にも備えるべきです。


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2022年3月12日土曜日

「プーチンは注視していた」:プーチン、習は「もう我々の国を尊敬していない」とトランプ―【私の論評】何がプーチンのウクライナ侵略を勇気づけたのか?日本人は真摯に学ぶべき(゚д゚)!

「プーチンは注視していた」:プーチン、習は「もう我々の国を尊敬していない」とトランプ

https://dailycaller.com/2022/03/10/putin-watching-trump-putin-xi-no-longer-respect-country/

<引用元:デイリー・コーラー 2022.3.10

ドナルド・トランプ前大統領は10日の「ハニティ」で、アフガニスタン撤退後、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は米国に対する尊敬の念を失ったと述べた。

司会のショーン・ハニティは前大統領に、ウクライナでのマリウポリの産院への爆撃、地域社会の破壊と何千名もの死者に対する前大統領の反応を尋ねた。

「これは非常に悪いことだというのが私の反応だ。なぜならこれは決して起こらなかったことだからだ。もしトランプ政権であったならこれは決して起こらなかったし、私は彼(プーチン)のことをよく知っているが、これはまったく起こりそうにないことだった・・・アフガニスタンでこの悲惨な状況が起きた時、これがどれほど重要であるか信じることもできなかった。何と呼びたいと思うかにしても、撤退あるいは降伏のやり方のことだ。我々の国にとって悪いことが起こり始めた」

「アフガニスタン撤退のやり方だが、完全な降伏のようだった。そして実に、プーチンは注視していたし、習首席は見ていたし、イランの指導者も金正恩も注視していた。全員が注視していた。そして悪いことが起こり始め、彼らはもはや我々の国を尊敬しておらず、そうやってこのことが起きたのだ」

バイデン政権は、8月の米軍のアフガニスタン完全撤退とタリバンによる掌握をめぐり、特にカブール空港での自爆攻撃により13人の軍人が死亡してから、相次ぐ非難を受けた。

政権は8日、ロシアの石油・天然ガスの輸入を完全に禁止することでロシアに対抗措置を取り、銀行と輸出についても複数の制裁を科した。トランプは2月22日の声明で、制裁を「弱い」とし、プーチンは高騰する石油・天然ガスによってますます裕福になるだけだと述べた。

前大統領は9日、米国人は核戦争について「心配すべき」であり、その可能性は「深刻」だと警告した。

【私の論評】何がプーチンのウクライナ侵略を勇気づけたのか?日本人は真摯に学ぶべき(゚д゚)!

今回のウクライナ侵略に向けて、ロシア軍集結は昨年秋ごろから始まっていました。プーチン氏はなぜこのタイミングで強硬策に踏み切ったのか。理由の一つとして、バイデン米政権が昨年8月末、米軍をアフガニスタンから撤退させたことが影響しているのは、それが大きいか小さいかは別にして、間違いないでしょう。

米紙ウォールストリート・ジャーナルでも社説で、「米軍のアフガン撤退とその後のロシア軍集結のタイミングは「偶然の一致ではない」と指摘。「バイデン大統領が国内問題を最優先とし、世界から撤退するのをプーチン氏は見た。ウクライナに侵略し領土を奪い取ることは可能だとの考えに賭けている」と分析していました。

プーチン大統領は昨年8月24日、政権与党の会合で演説し、イスラム主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンへの関与に関し、「様々な勢力が対立する紛争に我々の部隊を関与させることはない」と述べ、ロシア軍の派兵を明確に否定しました。

ロシアの前身であるソ連が1979年にアフガンに侵攻した後、紛争の泥沼化で10年後に撤退した歴史に触れ、「我々は必要な教訓を得た」と説明しました。

ロシアは2015年9月から中東シリアの内戦に軍事介入しています。約6年に及ぶ介入の負担は重く、アフガンに軍事関与する余裕はないのが実情でした。

にもかかわらず、ウクライナに侵略することを決断したのは、まずは中東とウクライナとでは、地政学的状況が全く異なることがあるでしょう。中東はロシアにとっては、過去に介入していたことはあるにしても、全く関係のない地域ですし、距離的にも遠いですが、ウクライナは隣国であり、軍事的にも文化的にも、ロシアにとっては裏庭のような存在です。

それに、ロシアとウクライナは両方ともソ連邦に属していたこともあり、軍事的にも経済的にも、文化的にも、ロシアはウクライナの実情を知り抜いているという自負もあったことでしょう。

これに加えて、米軍が20年間も介入し続けたアフガニスタンを離れる際に、撤退ではなく、無様な降参に近い離れ方をしたことにプーチンはチャンスを見出したのかもしれません。

離陸する便によじ登って脱出しようとする人たち(昨年8月16日、カブール国際空港)

トランプ氏が語るように、プーチンは注視していたし、習首席は見ていたし、イランの指導者も金正恩も注視していたのです。世界中が注視していたのです。

中国の国営メディアは、米軍によるアフガニスタンの放棄から台湾の命運に関する教訓が得られると指摘しました。つまり米国は同盟国にとって、いざという時当てにならない友人であり、張子の虎だというわけです。「カブール陥落で際立ったのは、米国の国際的なイメージと信頼の失墜である」。中国国営新華社通信は、そのような見解を示しました。

さらに、ロシアもNATOも実際のところウクライナのNATO加盟を望んでいないのは周知の事実です。なぜなら、もしウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアの侵略によって北大西洋条約の第5条が発動します。そうなると今度は逆に、NATO主導の対ロシア戦争が引き起こされます。核を巡る対立に発展する可能性も出てきます。


NATO諸国にはウクライナでの戦争に兵士を送る意欲など毛頭なく、バイデン大統領も米軍の現地派遣は一切行わないと述べていました。ただバイデン大統領は一方で、仮に戦争が拡大し、ロシアが東欧のNATO加盟国を攻撃する事態になれば米軍が介入するとも明言しました。

プーチン氏は、このような状況の注視から、今のうちならNATO加盟国ではないウクライナに侵略しても経済的にも、軍事的にもさほど罰を受けずに済むと踏んだのでしょう。

そうして、2月21日プーチン大統領は、安全保障会議を開き、ドンバスの2つの「共和国」(「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」)の独立を承認。両共和国との間に「友好相互援助条約」を締結しました。

そうして、ロシア軍の全面侵略が2月24日に始まりました。プーチンは、21日から24日の間の3日間で、ウクライナ侵略を決めたのでしょう。ドネツク・ルハンスク人民共和国を独立国家として承認することは、ウクライナのNATO加盟への道を開きかねないことを、プーチンは最初から自覚していたと考えられます。

2月21日の翌日にでも、新たに成立したドンバス両人民共和国をウクライナも国家承認したら何が起きるでしょうか。ロシアとウクライナの双方から承認された両人民共和国は国際法上安定した基礎をもつのみならず、残ったウクライナという国の民族的対立がほとんどなくなってしまうのです。

NATOの内規に基づく「民族紛争」がなくなれば、ウクライナのNATO加盟を妨げる要因はなくなるのです。だからこそ、ウクライナ攻撃を命じたプーチンが「今しかなかった」と述べていたのでしょう。

そうして、米ホワイトハウスは2月25日、バイデン大統領は単独でウクライナに派兵する意向は持っていないと表明しました。

ホワイトハウスは「バイデン大統領はウクライナに軍を派遣する意図も関心も持っていない。北大西洋条約機構(NATO)が東部のパートナー国を支援する機構となっており、焦点はNATOにある」と述べました。

この声明は、ウクライナに侵略を命じたプーチン氏にとっては、天佑神助とも思われたことでしょう。

自分の読みは当たっていたと、自信を深めたことでしょう。ウクライナ侵略当初のプーチン大統領の自信に満ちた不敵な態度は、こういう背景があったものと思われます。

しかし、その読みは当たり続けることはありませんでした。まずは予想以上のウクライナ軍の抵抗にあっていますし、NATO諸国は軍事面では直接支援はしないものの、武器の提供などでは一致して協力して、ウクライナを支援しています。

さらに、経済面でもロシアをSWIFTから除外するという厳しい措置を実行しています。これは、プーチンの誤算であり、この誤算により、ロシアはウクライナの一部を占拠することができたにしても、ひょっとすると初期の目的(何がなんでもウクライナにNATOに加入させない)ことには成功するかもしれませんが、長期的にはソ連崩壊直後のように経済が低迷し、深刻な打撃をうけて、軍事力も維持できなくなり、そもそもウクライナがNATOに入ろうが入るまいかなど無意味になることでしょう。

ただ、上記のことから、我々が学ぶべきは、まずは米国のアフガン撤退を降参のような形ではなく、文字通り「撤退」にすべきであったこと。バイデンのように、早々と米軍の現地派遣は一切行わないなどと安易に発言するべきではないということです。そうではなく、腹の中では、「欧州大戦や、核戦争になったら困る」などと思っていても「場合によっては派遣するつもりだ」と発言すべきだったのです。

そうすれば、「軍隊の派遣」も一つのオプションとして手元に控えさせておくことができます。そうすれば、これもカードとして使えたはずです。強いカードを持っている限り、交渉もやりやすくなります。これに関しては、バイデンは自ら自分の手足を縛ってしまったも同然です。

そもそも、バイデンがこの2つの間違いを犯していないければ、プーチンを勇気づけることはなかったかしれません。

そうして、私達日本人も、これを教訓としなければなりません。日本が今のままであり、米国が様変わりして何かの拍子に、「在日米軍を引きあげる」「在日米軍を縮小させる」などと軽率な発言をする大統領が出現した場合、プーチンのように「これこそ天佑神助」と思い込む輩が出てこないとは断言できないはずです。

であれば、安倍晋三元首相が言及した米国の核兵器の共同管理(核シェアリング、核共有)の議論なども検討すべきです。ドイツでも実現されている核シェアリングについて、日本では議論すらしないというのは、それこそバイデンのように自ら自分の手足を縛ってしまうことになりかねません


現在日本が戦争に巻き込まれないのは、憲法9条などとは全く関係なく、まずは米軍が日本に駐留していることが最大の理由です。日本に戦争を仕掛けた場合、駐留米軍を戦争に巻き込むことになり、米国と本格的な戦争になるのが怖いので、どこの国も攻撃しないし、できないのです。

日本は、憲法や法律でがんじがらめで、世界第5位の軍事力とも言われる自衛隊が、実際に戦争になれば、いまのままだとほとんど機能しません。これでは、自衛隊があっても災害のときの救援や、単なる「政治的メッセージ」にしかなりません。「政治的メッセージ」に意味はないとはいいませんが、実効的な防衛はできません。今のままだと、日本が戦争に巻き込まれないのは、米軍が駐留しているからだけということになります。

ロシアによるウクライナ侵略の前後で、まさに世界は変わったと言っても良いです。プーチンが世界を変えてしまいました。この数日間で、1945年後の世界秩序は完璧に変わってしまいました。現在であっても、自己に有利であると考えれば、他国に侵略する国があるということがはっきりしたのです。

無論ロシアは深刻な打撃を受けることでしょう。場合によっては、プーチン失脚するでしょう。ロシアが二度と戦争ができないように、多額の防衛費を捻出できなくなるまで、経済的に追い詰めるかもしれません、それによってロシアはいくつかの国に分割せざるをえなくなるかもしれません。

それによって、西側諸国は結果としては、勝利することになるかもしれません。しかし、それでも、未来永劫にわたって、第2のプーチン、第3のプーチンが出てこないとは誰も断言できません。

そうして、現在ロシアによるウクライナ侵略によって亡くなられた方々、侵略が続く限りこれから亡くなられる方々は、戻ってくることはないのです。

これを考えると、最初から戦争などなかった方が良いに決まっています。戦争を防ぐにはどうすば良いのでしょうか。それも、憲法9条によって平和が守られるというような、お花畑を通り越した単なる与太話のような話ではなく、現実問題としての戦争を現実的に具体的に起こらないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。

今後このようなことに対処するために、ウクライナは何らかの備えをするでしょうが、日本も憲法を改正し、それに基づき法律も変え、防衛費の現状の1%のくくりを撤廃するのは当然として、様々な防衛議論、安全保障論議をタブーなしに進めていくべきです。議論すらすることが許さないなどというような傲慢不遜な態度は許されません。

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2022年3月11日金曜日

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日本の解き方

独立広場。これまで何度も革命やデモの舞台となってきた場所だ

 ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。4日、ロシアがウクライナ南東部のザポロジエ原子力発電所を攻撃した。これには、さすがに中国を含む世界各国が非難した。

 筆者は直感的に、ウクライナをエネルギーで締め上げるとともに、ウクライナが核兵器を保有しているとのデマをでっち上げるためと思ったが、どうやら的外れでもなかったようだ。

 この後の最悪の展開は核兵器使用、またはウクライナ国内の原発を破壊してウクライナ全土を「チェルノブイリ化」、誰も住めなくし、非武装中立地帯を作るというものだが、プーチン大統領ならやりかねない。そもそも原発やダムなどへの攻撃は、ジュネーブ条約違反である。

 ロシアへの経済制裁では、国際銀行間通信協会(SWIFT)から一定のロシアの銀行を除外する措置が2月末にとられた。これは「金融核兵器」ともいわれ、一部銀行を除外したとはいえ、ロシア経済にはかなり効く。ロシア中央銀行への資産凍結も同時に実施され、両者の威力はかなり強力だ。

 暗号通貨による抜け穴、SWIFTに代わるロシア製決済ネットワークや中国人民元などによる決済もあるが、まだ実力不足で、金融制裁の効果を完全に相殺するまではいかない。

 これらの金融制裁が決まった2月27日以降、ロシアの通貨は1ドル=80ルーブルから一時、150ルーブル前後へと大きく下落した。ロシア政府の今後5年の破綻確率は、同28日時点で2割程度だったが、先週末には6割程度まで高まった。

 こうした金融制裁は今後じわじわ効いてくるが、その兆候もある。アップルやディズニーなど米国企業が相次いでロシアビジネスからの撤退を言い出した。サハリン開発においても、英石油大手シェル、英BP、米石油大手エクソンモービルなどが撤退の動きを示している。各社の経営判断であるが、決済代金をドルで入手できそうにないというのも大きな判断材料だろう。クレジットカードのビザとマスターも業務を停止する。

 ロシア国内の政策金利は20%とそれ以前から2倍強になった。各種の制裁の結果、インフレ率は20%以上になるかもしれない。ロシア国民にとってはいいことはなにもない。

 こうした動きは、ロシア国内での厭戦(えんせん)ムードを高める方向になるだろう。しかし、だからといって、金融制裁がプーチン大統領にウクライナからの撤退を決断させるようになると楽観視はできない。

 第二次世界大戦以降、軍事力を伴わない制裁措置が成功したケースは5%くらいという実証研究もある。ただし、バイデン米政権関係者は、今回の措置は史上最も大きな打撃を伴う制裁であり、過去の事例とは異なるとしている。

 英エコノミスト誌による2021年のロシア民主主義指数は3・24で、世界167カ国中124位の非民主主義国家であり、こうした制裁への耐性は強いともいわれる。

それでも何もしないよりは、制裁措置を発動する方が、政治的な交渉をするためにも望ましいのはいうまでもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められている(゚д゚)!

ロシアはもはや世界のマーケットから切り離されたといって良い状況です。ソ連崩壊の90年代のはじめのようにサプライチェーンが一気に崩壊し、その結果、大規模な企業倒産が起きるでしょう。これは非常に深刻な変化でしょう。

また、経済が悪化することで国民の所得は減り、国が住宅や公共事業などに多額の補助金を出すことになるでしょう。そうなれば、完全な経済の国有化であり、事実上の社会主義体制に回帰することになるでしょう。今やロシアは世界から閉ざされ、中国にだけ開かれた全体主義的な独裁国家になりつつあります。

ルーブルが大幅に値下がりするなか、プーチン大統領が対外債務を外貨ではなく、自国の通貨ルーブルで返済することを一時的に認める大統領令に署名していますが、これはデフォルト=債務不履行はすでに起きているとみるべきでしょう。ルーブルで支払うと決定したことがそれを意味しています。すでにロシアの債務支払い能力に深刻な懸念があるといえます。

露中央銀行は制裁で外貨準備6300億ドル(約73兆円)の約6割を凍結され、為替介入によるルーブルの買い支えは困難です。通貨安を食い止めるため、露中銀は9日、国内でルーブルから外貨への両替を禁じたほか、外貨建て銀行口座からの引き出しを9月まで最大1万ドルに制限する措置を発表しました。1万ドルを超えた場合、顧客はルーブルでの引き出ししか認められません。

ロシアはこれ以前にも、出国者が持ち出せる外貨を最大1万ドルに制限、輸出企業の外貨収益の80%を強制的にルーブルに転換、外貨建て債務のルーブルでの返済の容認など、なりふり構わない経済防衛策を導入してきました。しかし、ルーブルの信用低下という根本問題は手付かずで、通貨安は今後も進むとみられます

首都モスクワでは現時点で、目立つほどの商品の品薄や物価上昇は起きていないです。しかし、一部店舗は既に砂糖や植物油、缶詰などの購入制限を実施。今後、原料や在庫の減少でインフレが加速する見通しです。

ロシアのウクライナ侵攻に対抗する米欧の制裁で通貨ルーブルが急落したのは2月末のため、2月の物価への影響は限定的だったとみられますが、ロイター通信によると上昇率は7年ぶりの高水準。2月26日~3月4日の消費者物価指数は、前週に比べ2・22%上昇しました。国産車が17・1%、テレビが15・0%の上昇で、足元では急速にインフレが進んでいます。

経済制裁でルーブルは急落しており、輸入物価の上昇で3月はインフレが一段と加速する可能性があります。市場では、年内にインフレ率が20%近くまで上昇するとの見方が広まっています。経済制裁で輸入が滞り、物資が不足すれば、国民生活への打撃が大きくなりでしょう。


先行き不安と侵攻への非難を背景に、外国企業が続々とロシアからの撤退や事業停止を表明。その数は200社以上とされるとされていますが。これは、ロシアで今後ビジネスを展開したとしても、ドルで収益を得られなることがはっきりしていることが要因です。ルーブルで得たとしても、それは紙切れになる可能性が高いからです。

撤退企業の業種も資源や小売り、飲食、自動車、金融、IT、娯楽など多岐にわたり、失業者が多数出るとの指摘が出ています。


ロシアのウクライナ侵攻にともなう、戦費負担は一日あたり百数十億円ともいわれています。

ロシアの年間の予算約37.5兆円規模であり、名目GDP約200兆円でありこれは、韓国を若干下回る程度です。ただ、人口が韓国より多いので、一人あたりのGDPは韓国をはるかにしたまわります。大雑把にいうと、100万円程度です。

ちなみにロシアの一人当たりGDPは日本の4分の1で、マレーシアと同じくらいです。経済的には先進国ではありません。

ロシアの軍隊がウクライナに攻め込んで一部を占領したとします。すると治安維持や人心の掌握が必要となります。それから人々の生活も安定させないといけません。同時に、進駐している軍隊のためにいろいろな物資を調達する必要もあります。 それで何が最も必要かというと経済の安定です。まずお金がないといけません。

ロシアはとてもそのような状況ではありません。これでは、早晩ウクライナでの戦争は継続できなくなるとみるのが普通です。ウクライナ側は、10日で戦費が底をつくと試算していましたが、これは楽観的に過ぎます、実際すでに10日を過ぎています。ただ、数年ではなくおそらく、数ヶ月と考えます。

プーチン政権はウクライナ侵攻に対する国内の批判をかわすため、国営メディアによる宣伝やインターネットを規制して情報を統制している。市民たちが批判の声を上げることは難しくなっているが、ルーブル急落などによる混乱は市民の暮らしを直撃しており、政権への不信感は静かに高まっている。


ロシア経済への影響を軽減するのは、簡単なことです。停戦し、軍を撤退させ、ウクライナと何らかの合意に至るだけです。停戦することのほかに解決策はないでしょう。

中長期的に見れば、ロシアに対する経済制裁は、ロシアだけではなく国際社会に深刻な影響を与えるでしょう。ただ、ロシアのウクライナ侵攻を成功裏に終わらせることは絶対に避けなければならないです。プーチンの核の恫喝に妥協し、融和的解決を模索することは、将来の国際秩序に大きな禍根を残すことになります。まさに、ウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められているといえます。

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2022年3月10日木曜日

「世帯所得の減少」議論した経済財政諮問会議の読み方 マクロ経済失策には言及せず…金融所得課税強化への誘導も―【私の論評】参院選後には、本当は財務省カラー出すだけなのに岸田カラーを出したと悦に入るかもしれない困った総理(゚д゚)!

日本の解き方
経済財政諮問会議で令和4年度予算編成について議論する岸田文雄首相ら =3日午後、首相官邸

 経済財政諮問会議の中で、この25年間で、働き盛りの世帯の所得が100万円以上減少しているとして、非正規雇用の若年単身世帯の割合が大きく上昇していることなどが指摘された。

 経済財政諮問会議をめぐっては、筆者は小泉純一郎政権当時、竹中平蔵大臣の命を受け、民間議員ペーパーの下書きをしていた。当時、同会議はマクロ経済を首相に説明する唯一の機会だった。もちろんマクロ経済だけではなくミクロ経済の話題もあったが、それでも財政再建に関わるマクロ経済を議論する場として有用だった。

 だが、今の経済財政諮問会議の民間議員には、マクロ経済の専門家がいない。民間議員4人のうち2人は産業界代表枠、2人は学者・エコノミスト枠だが、後者枠では東大大学院教授の柳川範之はミクロ経済、BNPパリバ証券の中空麻奈氏はいわゆる「債券村」の出身だ。

 3日に開催された経済財政諮問会議の議題は、(1)マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)と(2)所得向上と人的資本の強化だった。開催時間は45分だけだが、その資料は大量で、ほとんど役人が書いたものを一部だけ委員が首相に説明しているのだろう。

 議題(1)に関する民間議員ペーパーで、「コロナ前のGDP水準を回復した今こそ」という記述があった。2021年10~12月期の実質GDP(季節調整済み)は541・4兆円だ。コロナ前とは19年10~12月期の542・2兆円を意味しているのだろう。

 しかし、その1期前の7~9月期は557・6兆円だったので、本来であれば、そこまで回復しないといけないが、マクロ経済のゴールポストを低く設定し、財政出動しないと誘導しているようにみえる。実際、民間議員ペーパーでは「公需から民需主導の持続的な成長経路への移行を図るときである」とされている。まんまと、政府・財務省のシナリオ通りである。

 冒頭の話は(2)に関係する。民間議員ペーパーでは、非正規雇用の割合が増えたことが所得減少の原因とはいわずに、現象面だけを書き、いきなり「賃金引き上げ、人材投資や働き方改革」という政策提言になっている。

 所得減少は、マクロ経済政策の失敗による「失われた30年」だ。それには言及せずに、「成長の果実を、賃金や人材投資に加え、配当・利払い等という形でも国民に幅広く還元し、好循環を拡大すべきである」としている。これだけなら支障はないが、その前後に、今後、政策誘導する布石も打っている。

 「若年世代、子育て世代は将来不安から消費を抑制し、依然、預貯金中心に貯蓄している」とし、その注釈で「我が国資産所得の格差は他の主要国と比べて大きく、例えば、家計資産総額約1億3000万円以上の高資産世帯が利子・配当金収入総額の約60%を占める状況にある」としている。

 これは、昨年の自民党総裁選以降、岸田文雄首相が「岸田ショック」をもたらした金融所得課税について、政府・財務省は諦めていないというメッセージである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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以下に、35歳~44歳の1994年と2019年の世帯・所得分布(内閣府作成)のグラフを掲載します。


この世代には就職氷河期世代(2019年時点で大学卒なら37歳~48歳)が含まれるため、全体的に所得の差が25歳~34歳より拡大しました。「全世帯」で所得の中央値が1994年の657万円に対して、2019年は565万円と、92万円低下しました、また「単身世帯」でも25年前に比べ、300万円以上~400万円未満の割合が2倍以上に上昇しているのが特徴です。

このため、単身世帯の所得の中央値が1994年の498万円に対して、2019年は400万円と、98万円も低くなりました。ただし、「夫婦と子」世帯では、中央値が1994年の670万円に対して、2019年は677万円と、若干だが7万円増えています。つまり、就職氷河期によって結婚しない単身世帯が増えたうえ、その人たちの所得が下がったため全体の水準を押し下げているといえそうです。

さて、マクロ経済政策はなにかという教科書的な内容を以下に掲載します。

マクロ経済政策とは、市場の失敗に対して政府が対処する政策のことです。これには、個々の産業に対する規制や課税、補助金等の政策や、福祉・労働等の社会政策がありますが、不況を防ぐことによって十分な総雇用を維持し、一般物価を安定させることも経済政策の重要な役割です。これが「マクロ経済政策」と呼ばれ、財政政策と金融政策に二分されます。
 
財政政策は政府によって担われ、不況からの回復には、政府支出の拡大や減税が行われ、景気の過熱を冷ますためには、政府支出の削減や増税が行われる。
 
金融政策は中央銀行によって担われ、通常は特定の利子率(「政策金利」)を目安として、経済に出回っている貨幣の量(「貨幣供給量」)を調節します。不況やデフレの時は、貨幣供給量の増加を目指して金融緩和を行い、景気が過熱してインフレの時は、貨幣供給量を減らすために金融引き締めを行います。
 
上の高橋洋一氏によれば、所得減少は、マクロ経済政策の失敗による「失われた30年」です。この失われた30年のほとんどの期間を政府は、政府支出の拡大や減税をすべきだったのに、増税や緊縮財政を繰り返しました。

日銀は、この期間本来金融緩和すべきだったのは、金融引締ばかり繰り返しました。

これが、所得減少の根本原因です。これ以外に理由はありません。本来マクロ経済政策とは、市場の失敗に対して政府が対処する政策なのですが、日本では失われた30年間のほとんどの期間にわたって、政府のマクロ経済政策が間違っていたのです。

なお、上のマクロ経済政策の説明は、教科書的としましたが、高校の「政治・経済」の教科書にも似たりよったりのことが書かれているでしょう。これ以外のことをいえば、「政治・経済」の試験では間違いとされます。

高校の「政治経済」の教科書

そうして、これは古今東西いずれの国でも成り立つ事実です。逆のことをして成功したという例はありません。財務省は過去に、不況時に増税で成功した事例を探したといわれていますが、そのような事例は未だ財務省からは公表されていません。そのような事例は皆無だったのでしょう。

そうして、このくらいの認識があれば、政治家もその時々で、財政政策や金融政策の方向性を間違うことないはずです。

財務省はこうした教科書にも書かれているような事実をまげて、高校の「政治経済」のテストであれば、間違いとされる、屁理屈をこねて増税に増税を重ね、緊縮財政を推進してきたわけです。それどころか、財務省の抵抗があまりに多くて、安倍政権において結局2回も増税せざるをえなくなってしまったのです。

財務省はとにかく増税さえできれば、良いと考えているのです。さすがに現時点の諸費税増税は国民からの反発が必至とみられるため、それよりは金融所得課税のほうが徴税しやすいと考え虎視眈々とねらっているのでしょう。

一方、日銀は2013年に黒田総裁に変わってから、異次元の包括的金融緩和に踏切り、まずは雇用が劇的に回復したのですが、2016年からいわゆるイールドカーブ・コントロールにより、抑制的な緩和に転じてしまいました。

岸田総理の基本的姿勢は、内閣支持率がコロナ感染と世論が連動していることから、世論が新型コロナの感染拡大しかみてないことと、最近ではロシアのウクライナ侵攻が話題となり、マスコミの批判が安倍・菅政権に比してないに等しいことから、とにかく参院選まではほぼすべて重要事項は、検討する姿勢を見せるだけで何もせず、それで参院選までやり過ごし、比較的高い支持率を維持するつもりのようです。


ただ、例外は米国等に注文をつけらたときに限られているようです。そうして、本格的に意思決定するのは参院選後と決めているような節があります。そうなると、参院選でも何とか勝利して、国民から信任を得たとして、参院選後に金融所得課税を含めた、財務省主導の経済対策を実行し始めるのではないかと思います。

そうして、マクロ経済大音痴の岸田首相は、本当は財務省カラーを出すだけなのに岸田カラーを出したと悦に入るのかもしれません。本当に困ったものです。ただ、目論見どおりいくかどうかは、定かではありません。


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