「現在の統計では消費の実態を示せていない」
財務省が突如、GDP統計を算出する際に用いる各種統計を「見直せ」と各省庁に求め、霞が関で波紋を呼んでいる。
これまで誰も問題視していなかったGDP統計を唐突に見直せとは、あまりにも不自然。財務省は「経済の実態より統計が弱含んでいる」というが、はたして、要求の裏にはどんな思惑が隠されているのか。
10月16日の経済財政諮問会議で、麻生太郎財務相が見直しを指示した統計は次のとおりだ。
家計調査(総務省)、毎月勤労統計(厚労省)、消費者物価指数(総務省)、建築着工統計調査(国交省)。
家計調査は高齢者の消費動向が色濃く反映されているため、消費の数字が低めに出ている。毎月勤労統計は調査対象の入れ替えが頻繁なため、賃金の数字が正しく表せていない。消費者物価指数はインターネットを通じた取引の販売価格が加味されていない。建築着工統計調査はリフォーム・リノベーションがカバーされていない・・・。
というのが、財務省の主張。要するに、「現在の統計では消費の実態を示せていない。実際はこれほど落ち込んでいない」と、言いたいのだ。
なぜ、財務省はこれほど強引に統計の見直しを求めているのか。
財務省の「人事パワー」は侮れない
あれこれ理由をつけているが、「マイナスになりそうな2015年7-9月期のGDPをどうにかしたい」というのが本音だろう。'17年4月に予定される、消費再増税ができなくなることを恐れているのだ。
'14年4月の消費増税の際、財務省は増税の景気への影響は軽微としていたが、大外れだった。増税後のGDPは2四半期連続のマイナス成長。さらに今年7-9月期もマイナス成長ということになれば、その「負の影響」が現在まで続いていることが、誰の目にも明らかになる。
それを避けるために、財務省は「そもそもGDPを推計する各種統計が信用できない」と言い出したわけだ。
この動きは実に滑稽である。だが、恐ろしいのは、財務省の霞が関における「人事パワー」を侮れない、ということだ。
GDP統計を発表する内閣府の幹部名簿を見ると、事務次官は内閣府プロパーであるが、ナンバー2の内閣府審議官は財務省出身者。局長級の政策統括官にも財務省出身者がいる。
前述した各種統計を作成する各省庁も同様の有り様。財務省出身者が霞が関を支配している、と言っても過言ではない。
幸いなことに、「GDP統計の作成部署」は、内閣府プロパーで固められている。経済財政担当相にも、作成に関する事前の説明はほとんど行わないなど、情報管理はしっかりしているという。
だが各種統計の見直しを指示したということは、作成部署にまで財務省が手を突っ込んでいるとみて間違いないだろう。財務省の焦りは相当なもののようだ。
お隣中国のGDP統計がかなり怪しく、政府の意向で数字がいくらでも変わると、11月7日号の本誌で書いた。
だがどうやら、日本の財務省も同じ考え方をもっているようだ。中国共産党と日本財務省の共通点が、人事パワーが強烈で独裁的に政権運営することであるとは、本当に洒落にならない。
『週刊現代』2015年11月21日号より
【私の論評】日本の「政治主導の夜明け」は、まるで中国のように政治活動する財務省が壊滅した後に始まる(゚д゚)!
財務省はなんとかして、7-9月のGDPが回復基調にあることをでっちあげ、来年はGDPがプラスに転じて、増税機運を盛り上げ、17年春の増税を確実なものにしたいと考えているようです。
それにしても、本当に異常なことです。国民生活などないがしろにして、とにかく財務省の省益を再優先して、何が何でも増税することを最優先課題と考えているようです。そうして、財務省は増税のための屁理屈を政治家、他省庁、マスコミなどに対して徹底的にキャンペーンを張って、完璧に越権行為をして、政治活動を実行しています。
しかし、財務省がなぜそこまでして、増税にこだわるのか、全く見えてきません。無論、財務省はそれについて、政治家などに説明はしているようですが、全部出鱈目です。そうして、どうしても増税しなければならないような、天下国家論は聞こえてきません。
政治家、マスコミ、識者を籠絡し、役所の中の役所もいわれる財務省の省益を確かなものにするだけとしか見えません。
そもそも、デフレから脱却していないうちに、増税したとしても、税収が増えることなどありません。そんなことは、経済を少しでもまともに勉強した者なら誰でもわかります。それに関しては、このブログでも何度か解説しています。
その典型的なものの記事をのリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
まずは、税収=名目GDP✕税率✕税収弾性値ということを念頭においていただき、時を金融緩和を実施しはじめた2013年に戻して、考えてみます。
この時点で平成14年4月から増税など決定せずに、増税をせずに現在まで金融緩和のみを続けていれば、2年連続、毎年名目5%程度の経済成長は十分あり得ました。ここで仮に税収弾性値を3(倍)とすれば毎年歳入の15%、6〜7兆円の増収が見込まれ、二年で消費税5%相当の約12兆円となり今頃増税自体不要になっていたはずです。
下のグラフ2012年のG7諸国の名目GDP成長率の平均値です。ここからデフレ日本を除いた6カ国平均値は3.3%です。日本もデフレを脱却すれば、当時の△0.6%から3.3%程度の名目成長率は十分可能であったはずです。
この名目GDP平均値と、税収弾性値として3を用いると、上記で掲載したような名目5%成長前提ほどではないですが、それでも毎年歳入の約10%、4兆円で、二年で8兆円程度の増収が見込めたはずです。これでも、昨年4月の増税など全く必要がありませんでした。
各国の名目GDP成長率 (1997-2012) 出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント |
税収弾性率を低く見積もれば、当然このようなことは考えられないということになります。しかし、現実にはブログ冒頭の高橋洋一氏景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低下し、1・1程度に近くなるとしているように、昨年や今年あたり増税さえしていなければ、少なくとも3くらいにはなっていたはずです。このようなことを知ると、そもそも、財務省は実は日本の経済成長などどうでも良いと思っているようにしか見えません。そうして、先にも述べたように、"増税しなければならないような、天下国家論は聞こえてきません"。上の事実を知った上で、財務省から国民生活を苦しめるような、増税のいいわけではなく、天下国家論がないということになれば、誰もが増税には反対するものと思います。
天下国家論といえば、例えばどんなものかといえば、「軍事力増強」です。最近の世界情勢とりわけ、南シナ海の状況をみれば、当面の国民生活を多少犠牲にしても、将来の日本の安全保障を確かなものにするなどの理由をあげて増税して、それを本当に軍備拡張に当てるなどとすれば、確かに筋が通ります。
また、軍備拡張するのに、米国などから武器を購入するのではなく、国産にすれば、それは積極財政をしているのと同じになり、増税による経済成長を和らげることになります。
しかし、今のままでは、財務省の言い分には全く正当性がありません。似非識者も、マスコミも、財務省の意向に沿ったことはいいますが、このようなことは言いません。だから、マスコミも似非識者も全く正当性がありません。
だから、多くの人が、財政再建や福祉の維持のために、増税は絶対にしなければならないと、頑なに信じこんでいます。その頑なさには、時折twitterやFacebookでお目にかかり、本当に驚くことが度々あります。
私自身は、財務省のこのような出鱈目を封じ込めるには、政府はやはり報復人事をすべきものといいます。無論、報復人事とはいっても、民間企業であるような、私怨を人事で晴らすなどということではなく、政府の一下部機関に過ぎない財務省の高級官僚が、国民生活をないがしろにして、安倍総理のいうことも聴かずに、まるで財務省を政治集団のような振る舞うように仕向ける高給官僚に鉄槌を食らわすという意味です。
この報復人事としては、次の二段階が考えられます。
まず一段階目としては、上記のリンク記事にも掲載した内容です。
例年は大型連休明けに始まる中央省庁の「出世レース予想」が、早くも騒がしくなっている。国家公務員は年功序列型の人事システムで「10年先の異動・配置先まで決まっている」(政府高官)のが当たり前だったが、いまや出世街道を突き進むには「3つの壁」を乗り越えなければならない。女性職員の幹部登用や省庁間人事を推し進める首相官邸は、今夏の定期人事で政治主導を本格化させる構えで、いつにも増して「官僚たちの夏」は熱くなりそうだ。
最大の注目は財務省
今夏の注目は財務省だ。厳しい国家財政の中、予算編成を事実上担ってきた主計局長の田中一穂氏は、事務次官への就任が確実視されている。昨年の人事で主税局長から異例の転身を遂げ、「次官待ちポスト」の主計局長として新たな財政健全化計画の策定を牽引(けんいん)している。
現在の香川俊介次官、その前の木下康司元次官と同じ昭和54年入省で、同期3人が次官を経験することになりそうだ。官僚の世界では、出世レースでトップを走る同期が次官に就任するまでの間、ほとんどの同期は退官するか外部に転出する。
だが、安倍晋三首相は第1次政権時に首相秘書官を務めた田中氏の能力や人柄を高く評価。休日も首相とゴルフしたり酒を交わしたりする首相の側近中の側近で、「『田中次官』以外ありえない」(政府関係者)との声も漏れている。
・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・
内閣人事局が初めてゼロベースから練り上げる今年夏の幹部人事。そのキーワードは「官邸との距離」「女性の幹部登用」「片道切符」だ。キーマンである菅官房長官は「権力というのは人事が大切」と漏らしており、それを伝え聞いた官僚たちは早くも戦々恐々となっている。この記事に出てくるような片道切符で、財務省の高級官僚のうち、増税推進派を何人か他の省に送り出すのです。
しかし、これには弊害もあります。片道切符で他省に異動させられた、高級官僚は、財務省とのパイプ役となり、財務省の意向を他省庁に徹底する役割を担うようになるからです。
それでも、上から順番に、10人くらいの高級官僚を他省に片道切符で異動させれば、財務省はそれこそパニック状態になり、政府や安倍総理に表だって逆らうものは誰もいなくなるでしょう。しかし、それもつかの間のことでしょう。
時がたてば、他省に異動させられた高級官僚が、財務省の若手に働きかけて、また自分の意に沿った財務省の運用を図るようになります。そうして、他省庁をいずれ財務省の植民地にして、財務省の意向に沿って動く省庁にしてしまいます。今でも、そのようなところがありますが、おそらくさらにそれを強化することになります。
また、単純に財務省を分割すると、財務省は10年くらいかけて他省庁を植民地化して、財務省管轄の分野を拡大する手段に使うことになります。財務省とは、元々一筋縄でいくような組織ではないです。だからこそ、他省庁はもとより、政治家や、マスコミ、識者などを籠絡できるのです。
かつて、大蔵官僚はノーパンしゃぶしゃぶ問題で、国民の多数から侮蔑の対象にされました。しかし、国民の侮蔑は、官僚には一時は、へこんだことでしょうが、国民は直接役人を選ぶわけではないので、これも効き目は薄くこの後、大蔵省は財務省と日銀に分割されましたが、財務省の政治活動は見事にすぐに復活し、デフレの真っ最中に増税が行われるというとんでもない状況を財務省が主導しました。
バブル崩壊直後 大蔵官僚のスキャンダルが明るみに |
ノーパンしゃぶしゃぶ接待で、大蔵官僚は国民から侮蔑された |
そんなことを封じるためにも、次の二段階目が必要になります。
第二段階目は、第一次安倍政権の挫折の原因ともなった、財務省の公的金融部門の廃止をして、全く新しい省庁にするか、他省庁に併合するようにします。次に、財務省官僚が目下においてる他省庁に併合するさいには、他省庁の下部組織に財務省を分割の上で編入するのです。
これで完璧に、財務省を解体できます。さすがに、解体された財務省は他省庁の下部組織に成り下がるわけですから、解体されて下部組織に入った高級官僚など、当該省庁では、メインストリームなることなどあり得ませんから、当該省庁の次官になるものもいなくなるでしょう。
そうして、元財務省出身者であるということが、他省庁の官僚からみれば、自分たちを目下にみて、国民を蔑ろにして、財務省の省益をばかり考えた、官僚にあるまじき人間ということで、侮蔑の対象になることでしょう。
こうして、本来政府の一機関に過ぎない、財務省の歪んだ政治活動を永遠に封じることができます。
さらに、こうした大蔵省完全解体は、他省庁の官僚にも大きな影響を及ぼすことになります。
ドラッカーは、組織(むろん政治組織も)において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。
それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを明らかにする。
人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにする。
組織内の全員が、息を潜めて人事を見ている。小さな人事の意味まで理解している。意味のないものにまで意味を付ける。この組織では、気に入られることが大事なのか。
“業績への貢献”を企業の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならない。致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日のトップマネジメント(政治の世界では高級官僚)が選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。
そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら組織としての価値観に基づいて行なわれなければなりません。
「重要な地位を補充するにあたっては、目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、全体のために働く意欲を重視し、報いなければならない」(『創造する経営者』)以上のドラッカーの箴言を理解すれば、いかに人事、特に高級官僚の人事が重要であるか理解できます。
ドラッカー氏 |
官僚は、選挙で選ばれた人たちではありません。しかし、特に高級官僚への昇進は国民社会や経済に大きな影響を及ぼします。であれば、信託を受けた人が関与する内閣人事局などの組織がそれを決定するのがより良い決定方法です。そうして、政府は内閣人事局に対して、上記で示したような財務省の解体をするように命じて、実際にそのようにさせれば良いのです。
このくらいの規模で人事を行わないと、大蔵省は生き残り、今後も政治活動をやめることはありません。
官僚が、跋扈する国はまともな国ではありません。ブログ冒頭の記事では、財務省のことをまるで中国共産党と揶揄していましたが、中国には政治家は一人も存在しません。政府に存在するのは、官僚のみです。
なぜなら、中国は建国以来いちども選挙が行われていません。中国の政府は、政治家が存在せず、官僚だけが存在します。そもそも、日本などの先進国でいう、国会もありません。そもそも、選挙で選ばれた政治家が一人も存在しないのですから、たとえ全国人民大会などか開かれるなどといっても、所詮官僚の会議にすぎないものです。
最近では、多くの人々がようやっと、中国の歪さに気づきつつあるようですが、その歪さの根源が完全官僚主導の政治なのです。
選挙で選ばれない官僚が、政治を行い、官僚の人事も行うのです。これでは、当然のことながら、人民などをないがしろにして、官僚の都合で政治を行うことになります。
日本の場合は、選挙もあり、中国ほど酷くはありませんが、それでも、政府の一下部組織に過ぎない、財務省が、役所の中の役所といわれるように、君臨して、政治活動を続けています。そのため、「官僚主導」などといわれる部分も多いです。
これは、どんなことをしてでも、改めなければなりません。民主国家においては、「政治主導」でなければならなのは、いうまでもありません。政府の方針は、官僚が決めるのではなく、あくまで選挙で選ばれた政治家が意思決定し、官僚は政府の方針を実行に移すというのが正しいありかたです。しかし、日本ではまだまだ「官僚主導」がまかり通っています。
民主党は、「政治主導」にすることを公約として、政権交代しましたが、彼らの「政治主導」とは、せいぜい「官僚主導の打破」とキャッチフレーズを並べたり、政治家が役人のするべき分野に踏み入ったり、「事業仕分け」をすることでした。
民主党の事業仕分けでは「政治主導」など達成できず、混乱を招いただけ |
しかし、本当に「政治主導」をするというのなら、今の日本ではまずは、財務省の解体は避けられません。まるで中国のような、財務省による政治活動を粉砕しなければ、「政治主導」は達成できません。
上記で私があげたような人事を断行し、財務省を解体した後に初めて、日本の「政治主導の夜明け」が始まります。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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