2017年11月26日日曜日

中国は絶望的「格差」国家、民衆の怒りが爆発する日―【私の論評】新たな脆弱性を抱えた習近平体制(゚д゚)!

中国は絶望的「格差」国家、民衆の怒りが爆発する日
「中国の特色ある社会主義」は19世紀の帝国主義にそっくり

中国の農村の風景。中国では都市住民と農民の間に圧倒的な格差が存在する(資料写真)

 10月に中国・北京で第19回中国共産党大会が開催された。内外の注目は人事に集中し、話題は汚職摘発の先頭に立った王岐山の去就や、チャイナ7(政治局常務委員)に次の総書記になる可能性がある50代が入るかどうかなどに集中した。

 王岐山はチャイナ7に留まらなかったものの、その他の人事は習近平の思惑通りとなったことから、マスコミは一斉に「習近平への権力集中が進んだ」と報じた。

 習近平は3時間以上にも及ぶ演説の中で2つの指針を示した。1つは「新時代の中国の特色ある社会主義」であり、もう1つは「中華民族の偉大な復興」である。この2つの目標は、その底流において深く関連している。

生まれ落ちた時から格差がある

大手マスコミは全くと言ってよいほど非難しなかったが、習近平が「新時代の中国の特色ある社会主義」と言っているものは、とても歴史の審判に耐えうる代物ではない。まさに噴飯ものである。

 そもそも社会主義は人々の権利の平等と所得分配の公平を謳う思想であろう。根底に平等がなければ社会主義とは言えない。

 中国にはものすごい格差が存在する。共産党幹部と深いつながりを有する一部の富裕層が天文学的な富を蓄えた。そして、それに連なる人々も裕福になった。その子弟は海外に留学するとともに、ショッピングバックを抱えて銀座を闊歩している。

 だが、日本に観光旅行に来て銀座で爆買いできる層は、多く見積もっても13億人の1割程度であろう。だから日本に来る観光客の数が、人口が5000万人の韓国を少し上回る程度でしかないのだ。

 中国には都市住民と農民を峻別する戸籍制度が存在する。この制度は中国がものすごい格差社会になった原因の1つである。現在、都市戸籍の保有者は約4億人であり、農民戸籍は9億人。

 都市戸籍になるか農民戸籍になるかは、「おぎゃー」と生まれ落ちた時に決まる。都市戸籍を持つ親から生まれると都市戸籍、農民戸籍を持つ親から生まれると農民戸籍になる。それは武士と農民を分けていた日本の江戸時代にそっくりだ。21世紀になっても中世さながらの制度が存在する。

 農民戸籍を持つ9億人の中の約3億人が都市に働きに出ている。しかし、都市戸籍を有さないために、子供を都市の学校に通わせることができない。最近は都市郊外に農民工の子供のための学校が作られているが、これはまさにかつて南アフリカで行われていたアパルトヘイト(隔離政策)そのものと言ってよい。

 中国の都市の住宅価格が高騰し、バブル状態を呈していることはよく知られている。普通のサラリーマンが住宅を手に入れようとすると、勢い郊外に目を向けざるを得ない。だが、いくら安いと言っても、農民工が多く住む周辺には住みたくないと言う。それは子供を農民工が通う低いレベルの学校に通わせるわけにはいかないからだ。そのために少々狭くとも中心部に住む。これは中国で不動産バブルが崩壊しない原因の1つになっている。

維持される戸籍制度

中国共産党は戸籍制度が格差の原因になっていることをよく認識している。そのために、胡錦濤政権では「和諧社会」なるスローガンを作って、格差の是正に取り組もうとした。しかし、胡錦濤の政治力では分厚い既得権益の壁を崩すことはできなかった。格差は胡錦濤の10年間で一層拡大した。

 このような状況にあるから、もし習近平が本気で社会主義社会を建設したいのであれば、政権基盤が強くなった第2期目において、「和諧社会」の建設に邁進すべきであった。それこそが共産党の使命なのだ。

 しかし、習近平は格差是正に舵を切らなかった。「新時代の中国の特色ある社会主義」では戸籍制度を維持するつもりのようだ。

 また、現在、中国には不動産に対する固定資産税や相続税が存在しない。このことが都市に住む富裕層に、富を不動産に移して効率的に蓄えることを可能とさせている。固定資産税や相続税をかけることは、戸籍制度の廃止とともに格差是正の切り札になる。しかし、それは都市の富裕層から激しい反撃を受けることになろう。だから、それについての言及もない。

 つまり、「新時代の中国の特色ある社会主義」とは、ものすごい格差を固定し、それを維持する体制を言う。それによって強い中国を作るということだ。

 それは「社会主義」と言うよりも「絶対王政」と言い換えた方がよい。ビスマルクが唱えてもおかしくない「軍国主義」であり、「中華民族の偉大な復興」とは、格差に苦しむ庶民に対して国威を誇示して不満をそらすことを言う。まさに19世紀である。

共産党は民衆の反逆を恐れている

習近平の今度の演説は、中国共産党が都市に住む富裕層の利益を代表する政党であることを明言したものである。

 しかし、いくらきれいな言葉で糊塗しても、虐げられた庶民はその本質を肌感覚で見抜いている。その結果、共産党は民衆の反逆を恐れる政党になりさがってしまった。強権的に市民をコントロールし続けており、治安維持に要する費用が軍事費を上回っている。また、インターネットを通じて共産党批判が広がることが恐れ、それを押さえることに血道を上げている。中国ではビックデータとは、共産党に批判的な者をあぶりだす手法を言う。

 歴史的な視点に立つとき、習近平は第2期目において19世紀の帝国主義路線に舵を切ったと言ってよい。それは、日本の今後に対しても大きな影響を及ぼすことになろう。

【私の論評】新たな脆弱性を抱えた習近平体制(゚д゚)!

中国共産党の第19回党大会が開幕。政治報告をする
習近平総書記=18日午前9時6分、北京の人民大会堂

18日に北京の人民大会堂で開幕した中国共産党第19回党大会で、習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)が行った政治報告は3時間半近くに及びました。かつての共産圏の指導者をほうふつとさせる長時間の演説は、「反腐敗闘争」を通じて党内の権力基盤を固めてきた習氏の自信の表れとも言えそうです

「同志のみなさん」。この日、人民大会堂の演壇に立った習氏がそう呼びかけたのは午前9時すぎ。習氏は時折せき込んだり水を飲んだりしたことはあったが、休憩を挟むことなく午後0時半まで話し続けました。

長時間にわたる報告に、壇上に並んだ党代表たちの中には急ぎの報告を受けたりトイレに行ったりするためか、たまらず中座する姿も。習氏の隣の席に座った江沢民元総書記(91)は報告中に大きなあくびをしたり、何度も腕時計に目を落としたりしていました。

習氏の右隣に座った胡錦濤(フーチンタオ)前総書記(74)が2012年の前回大会で報告にかけた時間は、習氏の半分以下の1時間30分余り。胡氏は報告を終えて自席に戻った習氏に自身の腕時計を示して、「長かったよ!」と言わんばかりにアピール。習氏は苦笑いを浮かべていました。

習近平は、今回の党大会で華々しく自らの支配を見せつけましたが、一部の観察者は、習近平が実は背伸びしているのではないかと考えています。

習近平は、第19回党大会という舞台を完全に支配していたし、彼の権力は集団指導体制を崩し、毛沢東や鄧小平のような存在になろうとしている。「習近平思想」は、今や「新時代」の指導原理となったのです。

習近平思想の書籍『習近平氏国政を語る』
習近平政権の最初の五年における反腐敗キャンペーンで、153万の党員が調査を受け、27万8千人が起訴されました。その中には、440人の部、省レベルの幹部、そして43人の中央委員が含まれています。

軍も、1万3千人の幹部がクビにされ、50人を超える将校が汚職によって投獄されました。習近平は、その結果、空席となったポストを埋めています。習近平によって補充された幹部は今や中央委員会の20%を占めます。

習近平は派閥闘争でも優位に立っています。25人の政治局委員のうち、17人が彼の仲間です。政治局常務委員会では、7人のうち、4人が習近平派に属します。そして、ここ数十年で初めて、後継者となる人物が常務委員会に入らなかったのです。このことは、習近平が2期10年の定年制を無視しようとしていることを示しています。

このような急速な権力の強化によって、何が起きるのでしょうか。一部の分析者は、習近平の支配が完全となった結果、それが脆弱性になると論じています。習近平は経済と外交を完全に司るため、いかなる挫折も彼個人が責められることになります。

習近平は、自らに対する反対を懸念しており、最近、ある党内文書が、党の指導、共産党の歴史、中国の伝統文化と国家の英雄に対する批判を禁止したといいます。それはつまり、習近平に対する批判を禁止するのと同義です。

習近平の野望は国内あるいは個人の権力に限りません。彼は党大会で中国が2050年までに技術、金融、安全保障において支配的な「近代化強国」になることを目標としてあげました。5年前、中国が目指していたのは地域強国でした。それが今や習近平は中国が新たなグローバル秩序を作ると言っているのです。

トランプの米国は難しい問題に直面しています。習近平は今やトランプの好意に報いるつもりだし、トランプ訪中を盛り上げ、盛大な歓迎儀式の後には、双方の家族を含めた写真写りの良い会合を開きました。トランプ=習会談の「達成事項」は北朝鮮問題と貿易でした。

トランプ訪中
中国の戦略家は伝統的に、実際の勢力よりも自らを弱く見せることで敵を驚かせるのが賢明であると論じてきました。このやり方は今や君主のように君臨する習近平には不可能です。彼は、表面の派手な強さの内側にある脆弱性を自覚しなければならなくなりました。

【関連記事】

【習独裁の幕開け】「ポスト習近平」は習氏…抱く“世界の覇者”への野望 次世代のホープはチャイナセブン“選外”―【私の論評】習近平による新冷戦が始まった(゚д゚)!

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」―【私の論評】北朝鮮版「ヤルタ会談」のキーマンは安倍総理(゚д゚)!

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」―【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

日本の“海軍力”はアジア最強 海外メディアが評価する海自の実力とは―【私の論評】日本は独力で尖閣の中国を撃退できる(゚д゚)!

0 件のコメント:

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...