まとめ
- ルビオ米国務長官がパナマを訪問し、中国関連企業の排除を求め、排除しない場合は米国の権利を保護する意向を示した。
- 中国共産党の影響力が運河に対する脅威であり、条約違反であると指摘した。
- ムリノ大統領は会談を友好的と評価しつつ、条約の有効性に脅威を感じていないと述べた。
また、彼はトランプ大統領が指摘している不満を繰り返し、「現状は容認できず、直ちに変更されなければ、米国は条約に基づく権利を保護するために必要な措置を取らざるを得ない」と明言した。一方、ムリノ大統領は会談後に記者団に対し、「敬意に満ちた、友好的な」会談だったと述べつつ、条約の有効性に対する脅威を感じていないと表明した。
【私の論評】パナマ運河の真実: 米国だけでなく、日本にも迫り得る影響とは!
まとめ
- パナマ運河は米国の外交政策や国際関係において重要な役割を果たしており、1904年から1914年にかけて米国の支援で建設された。
- 運河は1999年にパナマに返還され、パナマは国際物流の重要なハブとしての地位を確立した。
- 最近、中国がパナマのインフラプロジェクトに積極的に投資しており、米国の影響力が低下するリスクがある。
- パナマは中米から北米への不法移民の通過点となっており、2021年には約13万人が通過した。
- パナマの情勢は日本にも影響を及ぼし、運河の安定した運営やエネルギー供給にとって重要な要素となっている。
パナマ運河 |
1904年、米国がパナマの独立を支援し、パナマ政府と運河建設のための条約を結んだ。米国は運河の建設に約4000万ドル(現在の約1400億円)を投資した。この資金はインフラ整備や疾病対策に使われ、特に衛生環境の改善に力を入れた。米国は、蚊の駆除や病院の設立など、徹底的な対策を講じた結果、運河建設を成功に導いた。
運河の建設には約10年かかり、1914年に開通した。開通後、米国は経済的および戦略的利益を享受したが、1960年代から70年代にかけてパナマでの運河返還を求める声が高まった。1977年、カーター大統領とパナマのトリホス大統領が運河の返還に合意し、1999年に正式にパナマに返還された。この返還により、パナマは運河の管理権を持つことになり、国際的な物流の重要なハブとしての地位を確立した。
最近、中国企業がパナマのインフラプロジェクトに積極的に投資している。2016年には中国企業が「バルボア港」の運営権を取得し、港の拡張や設備の近代化を進めている。この動きは、中国の「一帯一路」イニシアティブの一環として位置づけられ、パナマの経済を強化し、国際貿易の重要な拠点としての役割を果たすことを目指している。
大統領時代のカーター氏 |
中国のパナマへの関与が深まることで、米国の影響力が低下し、両国の関係が緊張する可能性がある。トランプ大統領は在任中に「米国の船に法外な通航料を課している」と批判し、特に米国の軍艦や商業船舶にとって通航料が高すぎることを指摘した。実際、パナマ運河の通航料は船舶のサイズや種類に応じて異なり、商業船舶には高額な料金が課せられることがある。米国の艦艇には特別な減免措置があり、通常の商業船舶よりも低い料金で通航できるが、それでもなお、全体的な負担が大きいとの意見もある。
さらに、パナマは中米から北米への不法移民の重要な通過点となっている。特に、南米や中米の国々からの移民が、パナマを経由して米国に向かうケースが増えている。国連の報告によると、2021年には約13万人がパナマを通過し、米国を目指す不法移民の数が急増した。パナマ政府は、移民の流入に対処するために、国境警備を強化し、国際的な支援を求める動きも見せている。
米国は今、昨日もこのブログで述べたように内需拡大に舵を切り、国際貿易の競争から距離を置こうとしている。中米からの不法移民問題や中国の影響力の増大が絡む中で、米国がどのように自国の経済と安全を守るのか、国益を守るための戦略がどう進化するのか、その行方に注目したい。
パナマの行方は、米国のみならず日本にも大きな影響を及ぼす。パナマ運河は国際貿易の要であり、日本は米中に次ぐ利用国として、運河を通じて米国東部と多くの輸出入を行っている。そのため、運河の安定した運営は日本企業にとって重要だ。
日本はパナマ運河経由で米国からLNGを輸入している |
さらに、パナマはエネルギー輸送の重要な拠点であり、運河を通じて供給される液化天然ガスや石油が日本のエネルギー安全保障に直結している。仮にパナマ経由のLGNとロシアからのそれが断たれれば大きな影響がある。パナマの情勢が不安定になれば、エネルギー供給に大きなリスクが生じる。
このように、パナマの情勢は日本にとっても決して無視できない問題であり、国際的な競争が激化する今、我が国は柔軟かつ迅速な戦略を講じる必要がある。日本の未来を守るために、パナマの動向をしっかりと見極めなければならない。
【関連記事】
アラスカLNG開発、日本が支援の可能性議論 トランプ米政権が関心―【私の論評】日本とアラスカのLNGプロジェクトでエネルギー安保の新時代を切り拓け 2025年2月1日
トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動―【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは? 2025年2月2日
コロンビア、送還を一転受け入れ 関税で「脅す」トランプ流に妥協―【私の論評】トランプ外交の鍵『公平』の概念が国際関係を変える 、 コロンビア大統領への塩対応と穏やかな英首相との会談の違い 2025年1月27日
「米国第一主義は当然、私もジャパン・ファースト」自民・高市早苗氏、トランプ氏に理解―【私の論評】米国第一主義の理念を理解しないととんでもないことになる理由とは? 2025年1月24日
【米中新冷戦】中国では報道されない「パナマ文書」 人民が驚きも怒りもしないワケ ―【私の論評】パナマ文書が暴く、図体の大きなアジアの凡庸な独裁国家に成り果てる中国 2016年4月12日
アラスカLNG開発、日本が支援の可能性議論 トランプ米政権が関心―【私の論評】日本とアラスカのLNGプロジェクトでエネルギー安保の新時代を切り拓け 2025年2月1日
トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動―【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは? 2025年2月2日
コロンビア、送還を一転受け入れ 関税で「脅す」トランプ流に妥協―【私の論評】トランプ外交の鍵『公平』の概念が国際関係を変える 、 コロンビア大統領への塩対応と穏やかな英首相との会談の違い 2025年1月27日
「米国第一主義は当然、私もジャパン・ファースト」自民・高市早苗氏、トランプ氏に理解―【私の論評】米国第一主義の理念を理解しないととんでもないことになる理由とは? 2025年1月24日
【米中新冷戦】中国では報道されない「パナマ文書」 人民が驚きも怒りもしないワケ ―【私の論評】パナマ文書が暴く、図体の大きなアジアの凡庸な独裁国家に成り果てる中国 2016年4月12日
0 件のコメント:
コメントを投稿