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2019年5月13日月曜日

米中貿易戦争の激化が「消費増税延期判断」に与える本当の影響―【私の論評】今年の10月にわざわざ消費税増税をする必要はない(゚д゚)!

米中貿易戦争の激化が「消費増税延期判断」に与える本当の影響

リーマン級は、いたるところに…?







米中貿易戦争、日本経済への影響は?

先週のコラムで、これから日本の景気に関する悪い統計数値が出てくると予測したが、ここ一週間で発表された統計をみても、おおよその傾向は変わりないようだ。

5月10日に発表された3月の毎月勤労統計では、「実質賃金」が2015年6月以来の下げ幅となったことが報じられた。これひとつでも景気の悪さを印象付けるが、この数値は、景気動向指数の一致指数を算出する個別系列には指定されていない。

指定されているのは「事業所規模30人以上の季節調整値の所定外労働時間指数(調査産業計)」だ。その数字をみると、3月は95.3と前月比▲2.6の大幅減である。ということは先週に予測した景気動向指数より悪い数字が出るかもしれない。となると、20日に公表されるGDP一次速報も、予想よりさらに悪い数字になることが予想される。

また、海外経済環境もさらに悪くなりつつある。米中貿易戦争の先が見えなくなっているからだ。アメリカは、対中追加関税を25%に引き上げた。それまで米中交渉には楽観的なムードが出ていたが、土壇場で中国が外国企業への技術移転強要を是正する法整備の約束を反故にしたようで、一気に先行きは暗くなった。

筆者の本コラムを含め、いろいろな著作を読んでいただければ、米中貿易戦争は貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、背景には米国が軍事覇権を保つために技術優位を維持しようとする戦略があることがわかるだろう。今回の米国の姿勢は、その米国技術を盗み取るような中国の行為を許さないという強い意志の表れであり、究極的には中国の国家体制そのものを問題視しているということだ。

米国が怒りを示している中国の行為とは、中国の国家体制に由来するもの。すなわち、①知的財産の収奪、②強制的技術移転、③貿易歪曲的な産業補助金、④国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行である。

なぜ、アメリカがこの4つを問題視していることが明確に分かるかというと、中国とは名指しされていないが、なんと昨年9月の日米共同声明(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf)に、これらを許さないとすることが盛り込まれているからだ。これらの文言は、米交渉担当者が対中戦略としてこれまでも語ってきたものだが、それが公式の外交文書にまで登場していたのだ。

このアメリカの戦略を理解していれば、米中貿易戦争の抜本的な解決にはかなりの時間を要するということは、前から分かりきっていた。その意味で、「米中貿易戦争はどこかで歯止めがかかる」という市場関係者の楽観的な見方は、単なる希望的観測だったと言わざるを得ない。

政治的にみても、来年11月にはアメリカ大統領選が控えている。中国に対して厳しい姿勢をとることは、おおむねアメリカ国民に支持され、トランプ大統領に有利に働いているようだ。トランプ大統領の支持率は、現時点で45%程度と、歴代大統領の再選時に比べて遜色のない高い数字を維持していることから、それがわかる。

トランプ大統領の支持率(ギャロップ)

では、今後はどうなるか。米中の関税報復合戦は、貿易量を考えても中国に不利だ。特に、中国からアメリカへの輸出品はほとんどが代替可能なものであるので、これにアメリカが関税を課しても、米国国内物価への転嫁が難しくなり、結果として中国の輸出企業が苦しくなるのだ。

こうして中国経済が悪くなると、中国国内の消費や輸入が減る。となれば中国に依存している国ほど経済が落ち込むだろう。無論、日本への影響も避けられないが、それはどの程度のものか。中国向けの輸出業は大変になるだろうが、アメリカで中国製品にかわる代替需要も出てくるので、一部は負の影響が帳消しされるかもしれない。問題は、そのプラスマイナスが国全体でどうなるかだ。

リーマンショック級だらけ

こうしたトランプ大統領およびアメリカ政府の対中戦略について、安倍総理はかなり以前からつかんでいたに違いない。その結果、世界経済への悪影響もある程度は読んでいたはずだ。

そのため、日本は今のところ、世界の中では比較的米中貿易戦争の影響の少ない国であると言えるだろう。

ただし、いずれにしても経済二大国の戦争が、世界経済にとってよくない結果をもたらすことは明白である。その上、欧州のブレグジット問題はいまだに先行きが不透明である。

このようなことを鑑みると、世界経済を見渡せば「リーマンショック級の出来事」を探すのは容易な状況なのである。

さて、安倍総理は、6月28・29日に大阪で開かれるG20サミットの議長である。世界経済が問題山積の中、日本だけがぬけぬけと「10月から消費増税します」と言えるかどうか。国内経済と海外経済事情から考えたらわかることだ、と筆者は思う。

それでも、財務省は「財政再建が遠のくから、消費増税延期なんて許されるはずがない」というだろう。「社会保障の問題も、消費増税が先送りされると大変なことになる」ともいうだろう。

本コラムで何回も繰り返している「消費税を社会保障目的税としている国はない」という事実だけで、いかに「社会保障整備のための消費増税」という主張がセオリーから外れたものであるかが分かるのだが、消費増税によって、本来なら労使折半である社会保険料負担を企業が免れることになるので、経済界は消費増税を推進している。

財務省は経済界をさらなる味方にするたために、社会保険料負担だけではなく、消費増税のタイミングでの法人税減税という「おまけ」も付ける気でいる。また、財務省のポチ学者も「財政再建のためには消費増税が必要」という間違ったロジックを相変わらず唱えている。マスコミも、新聞の軽減税率を受けたいから、消費増税推しである。

バランスシートをみれば一目瞭然だが…

これら経済界、学会、マスコミはすべて「日本の財政危機」をすり込まれている。確かに「財政危機」は、国家の財布を握っている財務官僚が言うので、学者を含めた部外者がこれに疑問を抱くのは難しい。

そこで、筆者は日本の財政状況を分かってもらうために、きちんとした財務諸表(とりわけバランスシート)を作り、それで説明するしか方法はないと思い、25年前ほどにバランスシートを作成した。これは財務省(大蔵省)の部内者以外に作りようがないので、筆者が担当していた財投改革の一環として作成した。

これらの経緯は、2018年10月15日付け本コラム<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する>にも書いた。筆者がいつも言うのは、「国の財政状況をバランスシートでみれば(つまり、負債だけでなく資産も見れば)日本の財政に問題がないことは分かる」というものだ。



ところが、財務省は相変わらずバランスシートの右側の負債(の一部)のみを発表して、日本の財政危機を訴えている。たとえば去る10日にも、こんな報道発表をしている(https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/3103.html)。

上に掲げたIMFの記事のなかにある資料は、基本的には、筆者が大蔵省時代に作った、日銀を含めた連結バランスシートの数字だ。しかし、現在公表されている連結バランスシート(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2017/20190328houdouhappyou.html)には、日本銀行が含まれていない(筆者の主張は、当然日銀を連結バランスシートに加えたうえでのものだ)。

なぜこんなことになったのか、その経緯はちょっとわからない。このバランスシートを公表しはじめた当時、筆者は財務省を離れ内閣府、内閣官房に在籍していた。

小泉政権の時、財務諸表を公表するまでの段取りはつけた記憶があるが、その中身まではチェックできなかった。結果として、後で連結バランスシートに日銀が含まれていないことに気がついたが、後の祭りだ。

おかしな言い分

財務省が作成したガイドブック(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2017/guidebook.pdf)には、「日本銀行については、省庁の監督権限が限定されているうえ、政府出資はあるもののその額は僅少であり、補助金等も一切支出していないことから、連結対象としていません。」と、日銀をバランスシートから除外した理由が書かれている。

今もその当時と同じ考えであるようだが、いま読んでもこの理由は噴飯ものだ。①監督権限が限定的、②出資額が僅少、③補助金なしというが、どれも的外れだ。

まず①について。財務省の日銀への監督権限が限定的、とはいえない。財務省は日本銀行法を所管(金融庁共管)している。日本銀行の独立性に配慮した必要最小限のものというものの、総裁などの国会同意人事、内閣の任命権(24条)、他業の認可(43条)、経費予算の認可(51条)、決算の承認(52条)、剰余金の処分(53条)、財務大臣又は内閣総理大臣の求めによる監査(57条)など、かなり広範にわたっている。これで「監督権限が限定的」と言うのは無理がある。

次に②出資額は僅少というが、出資割合は50%超だ。もちろん出資割合が50%超だからといって、株式会社における議決権のようなものはないが、政府による広範な監督権限であるので、日銀が政府方針とまったく別の業務を営めるはずない。

最後に③補助金なしというが、事実上、日銀には各種の優遇措置がある。日銀の利益の源泉は通貨発行益である。そして負債は基本的に無利子無償還の日銀券である。毎年負債見合いの資産の収益が利益になり、その将来の現在価値は発行した日銀券総額になる。これが通貨発行益だ。

その利益処分は、財務省の裁量の範囲だ。例えば、日銀職員給与を「(公務員並みではなく)銀行員並みにする」とすれば、収益(通貨発行益)の一部は日銀職員のものとなるが、これは裁量的な「補助金」ということもできる。つまり、補助金が一切ないというなら、日銀職員の給与その他の待遇も公務員並にしなければいけない。

そうした均等扱いがない以上、日銀は「補助金がない」とはいいがたいだろう。やっぱり財務省の言い分には、無理があるのだ。

さて、日銀を含めた連結ベース(これを統合政府という)は、いろいろなことを見やすくする。財政危機だという財務省の言い分も、標準的なファイナンス理論を知っている人が統合政府のバランスシートをみれば、そのウソが一発でわかる(これは、2018年10月15日付け本コラム<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する>を読んでほしい)。

そして、「日銀が量的緩和して大量に国債を資産として購入すると、金利が上昇したときに国債価格が低下し、評価損が出て、日銀が債務超過に陥る」と煽る話も、統合政府から見れば、デタラメとわかるのだ。バーナンキ元FRB議長が言っていたのは、日銀の資産が評価損ということは、発行者の国からみれば評価益であり、統合政府でみれば両者は打ち消し合って何も問題ではない、ということだ。

日本のみならず世界経済が悪い方向に向かおうとするなか、消費増税について、どんな判断が下されるのか。そのときには、今回述べたようなことも議論の材料とすべきだろう。
【私の論評】今年の10月にわざわざ消費税増税をする必要はない(゚д゚)!

内閣府が3月の景気動向指数で基調判断を6年2カ月ぶりに「悪化」に引き下げたことで、国内の景気後退の可能性が一段と高まりました。米中貿易摩擦などを背景とした想定以上の中国経済の減速で、国内の輸出や生産が打撃を受けました。政府は今年1月で今回の景気拡大期が戦後最長になったとみられるとしていましたが「幻」だった可能性もあります。



内閣府によると、一致指数の基調判断の公表を始めた平成20年4月以降、基調判断が「悪化」とされた期間は、平成20年6月~21年4月の11カ月間と、24年10月~25年1月の4カ月間の2回。ともに、事後で認定された景気後退期(20年3月~21年3月の13カ月間、24年4月~24年11月の8カ月間)と一部重なります。

景気拡大期のピークである「山」や、景気後退期の底となる「谷」を判断する上では、さまざまな経済データの蓄積を待つ必要があります。山や谷と推測される時点から1年~1年半程度後に、有識者でつくる内閣府の景気動向指数研究会の議論を踏まえて決めます。

 政府は今年1月の月例経済報告で、24年12月に始まった景気拡大の期間が「いざなみ景気」(14年2月~20年2月、6年1カ月)を超え、戦後最長になったとみられるとしていました。ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「恐らく昨年10月が『山』で、11月から後退局面に入った可能性がある」と指摘していました。こうした見方は民間の有識者の間に多く、実際にそうであれば、1月の「戦後最長の景気拡大」は達成できていなかったことになります。

ただ、小林氏は「短期間で回復すれば、景気後退ではなく、(拡大期の)一時的な落ち込みと評価されることもある」とも話しています。

政府の正式な景気判断となる5月の月例経済報告は下旬に発表されるほか、安倍晋三首相に近い萩生田光一自民党幹事長代行が先月言及した6月の日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)も7月1日に公表されます。

政府は「月例経済報告」で、国内の景気回復は続いているという判断を維持しています。

しかし、貿易摩擦をめぐる米中の攻防激化などで、先行きに不透明さが増す中、戦後最長の景気回復を続けているとされる日本経済は、正念場を迎えることになります。

今の景気回復は、平成24年12月から始まりました。

デフレ脱却を目指した「アベノミクス」と呼ばれる経済政策のスタートとほぼ時を同じくしています。

政府は、先月の月例経済報告でも「景気は緩やかに回復している」という判断を維持し、今の景気回復の期間は戦後最長となった可能性が高いという見方を変えていません。

しかし、ことしに入って日本にとって最大の貿易相手国、中国の経済の減速で、中国向けの輸出が落ち込むようになりました。

ことし3月の日本から中国への輸出は、金属加工機械や液晶部品などを中心に去年の同じ月より9.4%減りました。

さらに懸念されているのが、激化する一方の米国と中国との貿易摩擦です。

米政府が2000億ドル相当の中国製品に対する関税を25%に引き上げることで、中国の成長率が0.3―0.5%ポイント引き下げられます。現在は関税を課していない3250億ドル相当分にも拡大した場合、加えて0.5%ポイント低下することになり、合計で1%ポイント低下します。



中国の成長率は明確に6%を割り込み5%に近付いてしまうため、相当大きなインパクトになるでしょう。欧州や台湾、日本は中国経済に対する感応度が高いため、大きな影響が出てきます。

今後、協議を続けて何らかの合意に達したとしても、米国が中国に対して輸出を増やすことになります。これによって、欧州や日本が割を食う可能性が高いです。こうした問題も時間を経て出てくることになるでしょう。

中国の成長率が低下してしまう場合、中国政府は何らかの政策を発動する可能性があります。インフラ関連投資などの財政拡大かもしれないですが、余地は限られています。預金準備率引き下げなど金融緩和を行う可能性や、人民元下落を容認する可能性が出てきます。

国内のデフレ圧力を人民元の下落で相殺することを容認することで、秩序ない形で人民元が下落すれば、日本でもドル安/円高が加速度的に進む可能性があります。

今後短期間で急ピッチに円高が進行する可能性もあります。日銀は「金融政策でとる手段はありません」などと、対岸の火事に備えることを怠ることも十分ありえます。

どのような手段をとるかは、どの程度緊急性があるかによりますが、日銀としては大々的な金融緩和にはもって行きたくないでしょう。フォワードガイダンスの強化など緩和色をかもし出すことで何とか対応していくことになる可能性が高いです。

日本でデフレが顕著になったのは、バブル崩壊直前の時に、確かに土地や株価は上昇していましたが、一般物価が上昇していなかったにもかかわらず、日銀が金融引き締めをしたことでした。その後も、日銀は引き締め状況を崩さす、さらにそれに消費税増税が追い打ちをかけ、日本はデフレスパイラルのどん底に沈むことになりました。

現状では、日本経済は回復しておらず、いつデフレに舞い戻ってもおかしくない状況です。この状況で増税してしまえば、米中の貿易戦争ともあいまって、上でも述べたように、とんでもないことになってしまうかもしれません。

消費増税をベースに教育無償化などの政策が組み立てられていますが、これをもって、増税を見送ることはできないと主張する人もいますが、そんなことはありません。最悪の場合も想定して、今回は消費税増税を見送るか、できれば凍結もしくは減税をすべきです。

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2019年4月6日土曜日

不安出ずる国、日本の消費増税(ウォール・ストリート・ジャーナル)―【私の論評】WSJの記事には、間違いもあるが概ね正しい。増税はすべきでない(゚д゚)!

不安出ずる国、日本の消費増税(ウォール・ストリート・ジャーナル)


日本は、経済成長の鈍化に直面する世界の多くの国々の仲間入りをしつつある。しかし、ある点において日本は異彩を放つ。安倍晋三首相は年内に消費税率を引き上げ、景気を悪化させると固く心に決めているように見えるのだ。

 日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、警戒感を助長する内容だった。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業・製造業でプラス12となり、昨年12月の19から悪化。7ポイントの悪化は2013年以降で最大となった。中小企業の業況判断も同様に暗くなった。これより先に発表された2月の小売売上高と鉱工業生産もさえない内容だ。鉱工業生産指数は1月までは数カ月連続で低下していた。2018年の国内総生産(GDP)成長率はかろうじて0.8%増となったが、今年は同様の水準を達成するのも難しいかもしれない。

 アジア経済を巻き込んでいる米中貿易戦争を含め、外圧は日本の助けになっていない。輸出依存型の日本経済は依然として、欧州や中国の経済減速の影響を受けやすい。

 加えて、国内問題もある。安倍首相の経済再生計画「アベノミクス」は8年目に入るが、いまだに完全には実施されていない。財政支出の増加や異次元金融緩和は行われたがが、アベノミクス「第3の矢」だったはずの政策改革は全く始まっていない。これが投資と生産性の伸びを圧迫している。

 安倍首相は、今年10月に消費税率を現行8%から10%に引き上げることで日本経済に大打撃をもたらそうとしている。企業も家計も、かつての経験から消費増税がどんな結果を生むか知っている。1997年以降、政府が消費税率を引き上げるたびに景気低迷、あるいは景気後退が到来した。安倍首相は2014年の消費増税(5%から8%)で経済が停滞した後、さらなる引き上げを延期した。しかし、財政規律強化を求める財務省は安倍氏に対し、財政赤字および政府債務の削減のための増税でプレッシャーをかけている。どういうわけか、増税後も債務は増え続けている。景況感指数が悪化するのも無理はない。

 日本はこれまで、毎年のようにケインズ主義的な財政支出やマイナス金利など金融政策の力で景気停滞からの脱却を目指してきた。しかし、思うような効果はあげられていない。世界の経済成長が加速し、米国発の貿易摩擦が緩和すれば、日本を後押しするかもしれない。しかし、安倍首相の増税は自分で自分の首を絞めることになるだろう。

(The Wall Street Journal)

【私の論評】WSJの記事には間違いもあるが概ね正しい。増税はすべきでない(゚д゚)!

昨日も消費税がらみのことをこのブログに掲載したのですが、この記事はかなり気になりましたので、本日も消費税がらみを掲載させていただきます。

名門経済紙と言われるウォール・ストリート・ジャーナルにここまで書かれては、さすがの財務省も気になるかもしれません。

上の記事で、あえて反論するところといえば、日本は輸出依存型の経済ではないことと、本当は財政赤字ではないというところでしょうか。

そもそも、国内総生産(GDP)とは「国内消費(C)+政府支出(G)+国内投資(I)+輸出(X)-輸入(M)」と定義されます(支出項目別の場合。なお、本当は在庫品調整なども含まれるのですが、金額的に大きくないので、ここでは考慮しません)。

GDP=C+G+I+X-M

つまり、大きく内需部分(C+G+I)と外需部分(X-M)から構成されているのですが、外国に輸出する金額(X)の比率が大きければ、外国から貿易関税などを突きつけられた場合の打撃が非常に大きい、ということがよくわかるでしょう。

また、外需の純額(X-M)が低くても、XとMのそれぞれのGDPに対する比率が高ければ、その分、貿易依存国家であるといえます。たとえば、外国から半製品や資本財を買ってきて国内で加工し、製品化して外国に輸出しているようなケースだと、XとMがともに大きくなります。

以上を踏まえ、総務省統計局が公表する『世界の統計2018』によれば、米国、中国、その他の主要国のGDP比率は、次のとおりです(図表)。

(【出所】総務省統計局『世界の統計2018』図表3-5/図表9-3より作成。ただし、Xは輸出依存度、Mは輸入依存度であり、計算方式の違いなどにより、合計しても100%にならない)

日本の輸出(X)は13.1%であり、これは米国よりは高いですが、他国よりは低いです。これでは、日本はどう考えても、輸出依存度が高い国とはいえません。昔は、依存度が高かったと思う人がいるかもしれませんが、過去に高かったという事実はなく、8%程度のこともありました。

以下に日本の貿易依存度のグラフを掲載しておきます。



2015年あたりまでは、輸出依存度が高まる傾向にありましたが、近年はまたもとの水準に戻っています。いずれにせよ、日本は貿易立国などと思いこんでいる人は、考え方を改めるべきです。

内需(C+G+I)の比率は、米国が103%と100%の水準を超えているのですが、これは米国が貿易赤字国である以上は当然のことです。要するに、「国内の生産力が足りないから、外国から輸出している状態だ」、と言い換えても良いでしょう。

一方、「輸出立国」と呼ばれる日本については、内需の合計はほぼ100%であり、純輸出(X-M、つまり貿易黒字の比率)もGDPの0.8%に過ぎません。このため、日本は米国ほどではないにせよ、諸外国と比べ、内需の比率は高いということです。

これに対し、中国、韓国、ドイツの3ヵ国の事例は極端です。いずれも内需を合計すると100%になりません(中国は95%、韓国は94%、ドイツは93%)。ということは、これらの国は貿易黒字によってその差額を埋めているということを示しています。

さらに、輸出依存度だけで見ると、中国は20%近く、韓国とドイツに至っては40%近くに達しており、これらの国が「貿易戦争」の影響を強く受けることは明白です。日本は、これらの国ほど「貿易戦争」の影響を受けることはありません。

次に、財政赤字ですが、これについてはこのブログでは以前IMFのレポート等で紹介しましたが、日本の財政赤字だけをみると、とんでもないと思いがちですが、日本政府の負債だけではなく、資産(現金・預金が7割を超えている、他の不動産なども超優資産ばかりで、現金に替えやすいです)も加味すると、政府の借金はゼロに近いというものです。

以下に、その記事のリンクを掲載します。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになると、IMFは指摘している。

IMF Fical Motitor 2018に掲載されたグラフ
一方で、財政黒字を誇るドイツの場合、純資産はマイナスだ。
資産も含めれば、日本の資産はプラマイゼロということです。これは、英米よりも良い状況です。

以上の2点は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は間違いだと思いますが、その他はすべて正しいと思います。

この状況を踏まえると、安倍晋三首相は年内に消費税率を引き上げ、景気を悪化させると固く心に決める必要など全くありません。

そのようなことより、さらに積極財政と金融緩和を行い、デフレから完全脱却と、世界経済の悪化に備えるべきです。

現状で、消費税を上げると、消費が減って内需を減らすということになります。日本ではGDPに占める個人消費の割合は6割台です。これが減れば、GDPも低迷するのは当然です。

現在日本経済に必要なのは、増税という緊縮財政ではなく、積極財政です。さらに現状実質的に引き締め傾向である、金融政策を改めて、さらなる量的な金融緩和策を実行することです。

どう考えても、増税などすべきではありません。そのことを理解してるからこそ、ウォール・ストリート・ジャーナルは安倍総理を揶揄するような記事を掲載したのでしょう。

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2019年3月9日土曜日

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」―【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」

このまま増税すると大変なことになる。安倍総理の決断は?

内閣府7日、1月の景気動向指数(速報値)を発表した。景気の現状を示す一致指数は前月比2・7ポイント低下の97・9で、3カ月連続の悪化となった。世界経済の先行き不安も広がるなか、永田町では、今年10月の消費税率10%への引き上げへの慎重論が目立ってきた。専門家も「楽観視してはいけない。4月に増税回避の判断をしないと間に合わない」と力説した。 

 政府の基調判断は「足踏みを示している」から、数カ月前に景気後退入りした可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正した。同様の表現は14年11月以来、4年2カ月ぶりという。

 やはり、中国経済の減速に伴う輸出不振の影響が大きいという。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスは今春以降、国内の主要6工場で2カ月間、生産を停止する。主な原因は車載半導体の中国向け需要の減少で、在庫調整の狙いがある。

 政府は、景気拡大期が1月で「戦後最長の6年2カ月に達した」との暫定的な見解を示してきたが、疑問符が付く結果となった。

 安倍晋三首相は10月の消費税増税について、「2008年のリーマン・ショックのようなことがない限り」との条件付きで実施する考えを示している。中国だけでなく、欧州経済の先行きにも不安があるなか、政府はどう判断するのか。

 「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「景気の現状を楽観視して、消費税を増税するシナリオは間違いだ。世界経済の不透明感が増しており、増税すれば日本経済の悪化が顕在化していくことになるだろう。引き上げ率が2%と前回より低く、さまざまな増税対策も取られているが、前回と比べて消費が盛り上がっていない。消費税増税の可能性は半々だろうが、自民党内にも慎重な判断を求める声がある。4月に決断をしなければ間に合わない。夏の参院選で(増税凍結の)信を問うことが手っ取り早いだろう」と語っている。

【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

金融緩和を実施している現在、増税をするということは、車の運転でいえば、アクセルを踏みながら(金融緩和しながら)、ブレーキを踏む(緊縮財政の一手法である増税)を実行するようなもので、非常に矛盾しています。

本来ならば、金融緩和と積極財政を実施し、景気が加熱しインフレ率が上昇した後に、金融引き締めをしたり、緊縮財政を実行して、景気を沈静化させるというのが王道です。

(金融緩和政策+積極財政)もしくは、(金融引き締め+緊縮財政)が、まともなマクロ経済政策であり、金融緩和しつつ緊縮財政であるとか、金融引き締めしつつ積極財政するなどは、邪道以外の何ものでもありません。

そうして、現在はデフレから完璧に脱却していないのですから、(金融緩和+積極財政)をすべきです。積極財政といえば、公共工事、減税、給付金などいくつか方法があります。

古いタイプの政治家は経済対策=公共工事と考える政治家もいるようですが、オリンピックにあわせて公共工事が増えている現状では、公共工事を増やしたとしても、公共工事の供給制約になるだけで、まともな経済対策にならないのは明らかです。

であれば、減税、給付金等の経済対策を実施すべきです。マクロ経済対策の観点からは、増税などとんでもないと言わざるを得ません。

ロンドンオリンピックのビーチバレーの試合

日本では、東京オリンピックの直前に10%の消費税増税を予定していますが、これと似たようなことは以前英国で実施されており見事に失敗しています。

英国でもオリンピック直前に、アクセルを吹かしながらブレーキを同時に踏み込こんだことがありましたが、当然ながら大失敗しました。

英国は2008年9月のリーマン・ショック後、中央銀行であるイングランド銀行が米国を上回る速度でお札を大量に刷り続け、量的緩和政策によって、ポンド安に成功。2010年秋までに景気が回復基調にありました。

ところが、個人の消費意欲を示す「消費者信頼度指数」は、2010年後半から急速に悪化し、皮肉にも五輪聖火リレーが始まるころから再び下落します。

ロンドン五輪の経済効果が出なかった理由は、キャメロン政権が「緊縮財政路線」を決め、「付加価値税率(日本の消費税にあたる)」を17.5%から20%へ引き上げたからです。

2010年5月に発足したキャメロン保守党・自由民主党連立政権は、さっそく付加価値税率17.5%を11年1月から20%に引き上げる緊縮財政政策を決定しました。他にも銀行税を導入するほか、株式などの売却利益税の引き上げ、子供手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。他方で法人税率を引き下げ、所得税控除額も12万円程度引き上げ、成長にも多少配慮しました。

こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1.1%まで圧縮する計画でしたが、結果は無残でした。

これは以下のグラフをご覧いたたげれば、ご理解いただけると思います。付加価値税収は11年から激減し、2012年5月までの1年間でも前年同期比でマイナス8.4%減です。個人消費動向を示す消費者信頼指数は09年9月のリーマン・ショック時よりもっと冷え込んでいました。景気の悪化を受けて、所得税収、法人税収とも前年同期比マイナスに落ち込みました。だ政府債務残高のGDP比は11年末で85.7%(10年末79.6%)と増え続けました。


窮余の一策が、中央銀行であるイングランド銀行(BOE)による継続的かつ大量の紙幣の増刷(量的緩和)政策でした。BOEといえば、世界で初めて金(きん)の裏付けのない紙幣を発行し、フランスなどとの戦争費用を政府に提供した中央銀行であり、その大胆さは世界でもずぬけています。

BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込んでいました。BOEはリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切ったのですが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。

インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっていられず、12年5月にはリーマン前の3.7倍にまでマネタリーベース(MB)を増やしました。幸い、インフレ率は需要減退とともに同年5月には2.8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。

英国のインフレ率

英国のお札大量発行は増税に伴う経済災害を最小限に食い止める大実験なのですが、財政政策面ではブレーキをかけたまま、金融政策でアクセルを踏むわけで、効果ははかばかしくありませんでした。

量的緩和政策を渋る日銀が、今後仮に英国のように政策転換したとしても、脱デフレや景気てこ入れ効果は限られるかもしれません。

自動車など主要企業は国内生産に見切りをつけることになるでしょう。若者の雇用機会は失われ、慢性デフレで細った勤労者の家計はジリ貧になります。税収は減り、財政悪化に加速がかかることになります。

英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。

その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。

それについては、昨年のIMFのレポートでも裏付けられています。このレポートの内容を掲載した記事を以下の【関連記事】の一番最初に掲載しておきます。

これを知れば、増税など絶対にすべきでないことは明らかです。

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2018年12月27日木曜日

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない


 25日の株価は大荒れだった。東京株式市場では日経平均株価が1000円超下落し、2017年9月15日以来1年3ヵ月ぶりに2万円の大台を割り込んだ。

 24日の米国ダウの653ドル(2.9%)の下落を受けたものだが、日経平均は1010円(5.0%)の下落であり、米国を上回る下げだった。

 米株価急落は世界的な景気減速や米中貿易戦争への懸念が市場を覆う中で、米連邦政府の一部閉鎖やマティス国務長官の辞任など、トランプ大統領の政権運営への不安が広がったのが背景だが、日本では株価だけでなく、来年はさまざまなリスクが予想される。
日経平均株価が2万円台割れ12月では69年ぶりの下落率

 12月に入って、米国ダウは3日の25,538.46ドルから24日の21,792.20ドルまで、3746.26ドル下がった。下落率は14.67%だ。

 月内の下落率は、大恐慌の1931年(17%)に迫る歴史的な下げ幅だ。

 日経平均株価の12月の下落幅も、3日の22,574.76円から25日の19,155.74まで3419.02円、下落率は15.14%とほぼパラレルに下落している。
 
 過去の日経平均でも、1949年5月から今年12月までの836ヵ月で、、今月1ヵ月の下落率15.14%は、21番目に悪い数字だ。12月に限ってみれば、1949年12月に19.55%下落して以来、69年ぶりに悪い数字だ。(図表1)


 836ヵ月の1月間の値動きのデータをみると、平均は0.69%、標準偏差は8.02だ。
来年はもう一回、大幅下落あれば、「リーマン級の事態」

 株価急落を受けて、菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅調だ」と述べ、来年10月の消費税率引き上げに向けて「経済運営に万全を期していきたい」としている。

 また、消費税増税については「リーマンショック級の事態が起きない限り、法律で定められた通り来年10月から引き上げる予定だ。引き上げる環境整備が政府の大きな課題だ」と述べた。

 たしかに、今の時点では「リーマンショック級の事態」とは言えないだろう。12月の株価の変動は、リーマンショック直後の2008年10月の36.99%、11月19.09%、2009年1月16.85%ほどではない。

 だが、来年にもう一回、大幅急落が来れば、リーマンショック級になるだろう。

 もう一回来るかどうかは、わからないが、その確率が以前に比べて高まったのは事実だ。

南海トラフと首都圏直下地震5年以内の発生確率は2割

 また来年のリスクは、経済変動に限らない。筆者が心配しているのは、自然災害である。

 これは、確率計算が可能だ。南海トラフ地震について、今後30年間での発生確率は70~80%というのが、政府の見解である。また、首都直下型地震についても、今後30年間が横浜市で78%となっている。

 今後30年間で8割程度の発生確率となると、今後5年に引き直せば、2割強の発生確率になる。

 そうなると、関西の南海トラフ地震か関東の首都直下型地震のいずれかが、今後5年以内に起こる確率は2割強になる。

 いずれかが起こるというのは、1から両地震が起こらない確率を引いて得られるが、両地震の起こらない確率は9割弱×9割弱で8割弱になるからだ。

 2割強というとどの程度の確率かと言えば、プロ野球で規定打席に達した選手のうち最下位レベルの打者の打率である。規定打席に達しているので、一応レギュラークラスの野手であるので、投手よりはもちろん高い。

 巨大地震が起こるリスクはかなりの“打率”と考えたほうがいい。

北朝鮮問題などで有事のリスクも

 このほかにも、日本には有事のリスクもある。これはなかなか定量的に表せないが、極東アジアは、これまでの歴史の中で紛争が比較的多い地域である。

 筆者は、米国プリンストン大留学で国際関係論を学んだ。指導教官は、民主平和論の大家であるマイケル・ドイル教授だった。

 ドイル教授は、民主的な国同士は戦争をしないというカント流の考え方を現代に復活させたが、筆者はドイル教授の意見を統計的に示した。

 つまり、(1)民主国同士、(2)民主国と非民主国、(3)非民主国同士はそれぞれ戦争確率が増加する傾向があるのだ。

 これを極東アジアに当てはめると、(2)のケースになるので、戦争確率は決して低くはない。もちろん、この戦争確率は、外交努力などによって下げられるので、その努力は必要だ。

 今年は、シンガポールで行われた米朝首脳会談での「非核化合意」で、極東アジアでの紛争確率は一応は低くなった。

 しかし、北朝鮮は核を依然として手放していない。アメリカも慎重派のマティス米国防長官の辞任が決まっている。今回の株価急落にトランプ大統領はいらついているようだ。

 戦争の確率を考えたくはないが、不満や閉塞状況を打開する手段として、軍事オプションの可能性が、少なくとも今後は高まるようにみえる。

 このように、来年は、経済、自然現象、安全保障のすべての分野でリスクが高まる状況ではないか。

財政破綻のリスクはない増税はやめるのが合理的

 そうした状況で消費増税をやっている余裕があるのか。

 本コラムでは、政府の財政について、負債だけではなく、資産も含めたバランスシートで考えなければいけないと、何度も書いてきた。筆者は20年以上もこのことを繰り返してきた。「統合政府論」というファイナンス論の基礎でもある。

 この考え方をもとに、大蔵省(現財務省)勤務時代に、単体のみならず連結ベース政府のバランスシートを作成した。それをみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。

 国の徴税権と日銀保有国債を政府の資産と考えれば、資産が負債を上回っていることも分かった。この財政の本質は、現在まで変わっていない。

 また資産といっても、一般に考えられている土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度だ。大半は売却容易な金融資産で、政府関係機関への出資・貸付金などだ。

 その当時、筆者は上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(日本の財政)はそれほど悪くないことを伝え、もし借金を返済する必要があるのであれば、まずは資産を売却すればいいと言った。

 それに対し上司から、「それでは天下りができなくなってしまう。資産は温存し、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた体験もいろいろなところで話してきた。

 ちなみに、日銀を含めた連結ベース、つまりいわゆる統合政府のバランスシートに着目するのは、その純資産額が政府の破綻確率に密接に関係するからだ。

 これもファイナンス論のイロハである。IMF(国際通貨基金)も、統合政府の純資産に着目して、日本では実質的に負債はないといっている。

 純資産額の対GDP比率は、その国のクレジット・デフォルト・スワップ・レートと大いに関連する。それは破綻確率に直結するからだが、日本の破綻確率は今後5年以内で1%にも満たない。

 この確率は、多くの人には認識できないほどの低さであり、日本の財政の破綻確率は、無視しても差しつかえないほどである。

 一方で、来年は上述したような経済や自然災害、安全保障のリスクが考えられるのだ。

 消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断だろう。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)
【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?
ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、「消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断」と締めくくっていますが、全くそのとおりです。
しかし、増税をやめるべき理由は高橋洋一氏が述べる国内事情にとどまるものではありません。それは、トランプ政権による反対です。
これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリストを以下に掲載します。
G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしてる日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、トランプ大統領がなぜ消費税増税に反対するのかを説明した部分のみ以下に引用します。
日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。
本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。 
この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。 
これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。 
そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。 
なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。 
しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

消費税の引き上げにおいては、国内での議論とは別に日本が無視することのできない「巨大な外圧」があるのです。

来年以降、『アメリカ・ファースト』(アメリカ第一主義)を掲げるトランプ政権との貿易交渉が本格的にスタートするこのタイミングで、日本が消費税10%引き上げへ向かえば、アメリカの強い反発を招くことは避けられないでしょう。

日本やヨーロッパなど、約140の国と地域で採用されている消費税(日本以外では付加価値税と呼ばれる)ですが、実はそこに連邦国家アメリカは含まれていません。

ただし、米国には商品の小売り段階でのみ消費者に課税する『小売売上税』という州税があります。しかしこれは、原材料の仕入れから、製造、流通、卸売り、小売りに至るまで、すべての商取引の段階で課税される『消費税』や『付加価値税』とは根本的に異なるものです。

以下に消費税と小売売上税(売上税)の違いを示すチャートを掲載します。



米国でも過去何度も消費税導入が議論されたことがありますが、そのたびに退けられてきました。その背景には、上での述べたように消費税や付加価値税を『不合理で不公正な税制』ととらえる米国の考え方があります。そのため、この税制に関して、米国は一貫して否定的なスタンスを取り続けてきたのです。

もちろん、消費税を採用している国から見れば、米国は『少数派』ということになりますが、多くの政策で独自路線を突き進み、公平な市場環境を訴えるトランプ政権が『こちらに歩調を合わせるべきだ』と言いだしても不思議はないです。

しかし、米国が消費税導入に否定的だとしても、彼らが他国の税制に「不公正だ」「非関税障壁だ」と不満を訴えているのはなぜなのでしょうか。

その最大の理由は、上でも述べたように日本も含めた消費税導入国が自国の輸出企業に対して行なっている「輸出還付制度」の存在です。米国はこれを「自由競争の原則を歪(ゆが)める制度」だとして問題視しているのです。

消費税は仕入れから小売りまで、すべての段階で課税されます。そして事業主は基本的に、最終的な売り上げにかかる消費税(購入者から預かった消費税)から、その前の段階の仕入れなどにかかる消費税を差し引いた額を税務署に申告することになります。ただし、インボイス制度未採用(*)の日本で正確に計算ができるのかという問題がまずあります。

仕入れから製造までを国内で行なう企業がその製品を海外に輸出する場合、消費税は実際に消費が発生する輸出相手国の税制に沿って課されることになります。

仕入れの段階でも日本の消費税を払っているので、このままでは輸出相手国と国内とで2度消費税が課されることになります。そうした『二重課税』が起きないよう、輸出製品については仕入れなどにかかる消費税が国から還付されることになっています。これが『輸出還付制度』です。

(*)日本の消費税は、ヨーロッパの付加価値税のように取引に関する個々の請求書、領収書ベースで消費税額を計算するインボイス制度を採用していません。


例えば、日本の自動車メーカーが国内から部品を調達していれば、そのメーカーは国内の下請け企業に「部品代+消費税」を支払っていると見なされ、そのクルマを輸出して海外で販売した場合は、国内で払った消費税分が全額還付されるのです。これは消費税制度のない米国に輸出する場合も例外ではありません。

米国はこの還付金を、政府が輸出企業に与える『実質的なリベート』だと見なしていて、強い不満を訴えています。消費税制度のある国からアメリカに輸出する企業は消費税免除により『輸出還付金』の形でリベートを受け取るのに対し、アメリカ国内の企業にそうした制度はなく、輸出先の相手国の消費税を課税されています。これが米国からすると『不公正だ』という主張です。

ではアメリカにとって日本の消費税引き上げはどんな意味を持つのでしょうか。

もちろん、こうした米国側の主張については、さまざまな異論もあると思います。しかし、あくまで米国側の立場で見れば、日本の消費税の8%から10%への引き上げは、『日本の輸出企業へのリベートの引き上げ』と『日本向けアメリカ輸出企業への実質的な課税強化』ととらえることになります。当然、米国が強く反発するのは避けられないでしょう。

米国は日本だけ目の敵にしているわけではありません。欧州の付加価値税や日本の消費税のような間接税については還付制度を認め、直接税では認めないWTO(世界貿易機関)のルール自体を変えるべきだと主張しているのです。

「日本自動車工業会」会長豊田章男氏

実は、そうしたアメリカ側の空気に最も敏感に反応しているのが、日本の自動車メーカーによる業界団体で、トヨタ社長の豊田章男氏が会長を務める「日本自動車工業会」(自工会)です。

これまで基本的に政府の「消費税引き上げ」という方針を支持してきた自工会が、今年9月20日に発表した「平成31年度税制改正に関する要望書」では増税反対という明確な表現は避けながらも、消費税10%への引き上げについて国内市場縮小への懸念を強く訴えています。

こうした自工会の消費税に対する姿勢の変化に、彼らの日米関係に対する「シビアな現状認識」が表れているようです。

韓国とのFTA(2国間貿易協定)の見直しに続いて、10月にはメキシコとカナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新たな協定(USMCA)の合意にこぎ着けたトランプ政権が、『次のターゲット』として日本を視野に入れるのは当然でしょう。

日本はこれから、自動車関税25%への引き上げをチラつかせるトランプ政権と、2国間貿易協定の交渉に臨みます。しかし、前述したように米国は日本の消費税に対して、強い不満や不信感を抱いています。

そんな状況で日本が消費税の引き上げを強行すれば、日米交渉のテーブルでは米国側が態度をさらに硬化させ、場合によっては自動車関税25%発動という、自工会にとって最悪のシナリオを招きかねません。

今年9月25日、国連総会出席のため訪米した安倍首相に同行した茂木敏充経済再生担当大臣がUSTR(アメリカ通商代表部)のライトハイザー代表と会談しましたが、このライトハイザー氏は消費税の『輸出還付制度』を一貫して不当なリベートだと訴え続けてきた人物として知られています。

安倍首相の訪米直前のタイミングで、自工会があえて『消費増税への懸念』を表明したのも、アメリカ側に配慮した自工会のメッセージではないかとみられます。

また、先ほど述べたUSMCAでは、アメリカへの関税が免除される製品に関して『部品の現地調達率』などの条件が大幅に強化されており、これまでメキシコでの現地生産でNAFTAの恩恵を受けていた日本企業にとって、かなり厳しい内容になっています。

日本の自動車メーカーにとってはトランプ大統領の言う『メキシコ国境の壁』がつくられたも同然で、今後アメリカ市場での拡大があまり期待できないことを考えれば、『消費税引き上げで国内市場まで縮小されてはたまらない』というのが自工会の本音ではないでしょうか。

もちろん、税制は日本の「内政問題」です。それに消費税を採用せず、輸出還付制度を不公正なリベートと見なす米国の考え方が必ずしも正しいとは限らないです。

しかし、世界には米国のように消費税に対して否定的な超大国もあるということです。そして、その米国の姿勢がさまざまな形で日米関係に大きな影響を与えかねないという現実があることは理解する必要があるでしょう。

日本の税制をめぐる大切な議論が、日米貿易交渉の「取引材料」に使われる可能性は大いにあるということだけは認識すべきでしょう。

消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスク、さらには米国による自動車関税25%のほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断です。

ムニューシン米財務長官

ムニューシン米財務長官は10月13日、日本との新しい通商交渉で、為替介入をはじめとした競争的な通貨切り下げを防ぐ「為替条項」を要求する考えを示しました。インドネシア・バリ島で記者団に語りました。日本政府は通貨政策や金融政策を縛られるため受け入れがたく、日米交渉の新たな火種になる可能性が出てきました。

日米は9月、安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談で、農産物や工業製品の関税引き下げに向けた「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉開始で合意しました。ムニューシン氏は今回、この交渉に絡み、「今後の貿易協定に(通貨安への誘導を禁止する)為替条項を盛り込むことが目標だ」と発言しました。

今後の交渉では、消費税がやり玉にあがる可能性はかなり大きいです。米国は自動車関税を皮切りに他の製品や、鉄鋼や部品などにも関税をかけてくる可能背もあります。さらに、「為替条項」まで強制されれでば、とんでもないことになります。このような危機を招く消費税増税は絶対にすべきではありません。

為替条項などは、経済学の常識で、「一国が為替操作のために、意図的に金融緩和策を採用しつづけると、今度はハイパーインフレに見舞われる。そのため、為替操作を続けることはできなくなる」という一般論で十分切り抜けられると思いますし日本は実際為替操作などしていません。しかし、消費税に関してはなかなか、合理的に説明するのは難しいです。米国も納得しないでしょう。

ふたたび増税すれば、個人消費が落ち込み、また日本はデフレにまいまどりとんでもないことになります。過去においては、デフレの原因などあまり明るみにされませんでしたが、今後は多くの識者がその原因を詳細にわたって解説することでしょう。そうして、その現況となった財務省は当然のことながら糾弾され、やがて全国民から恨まれることになります。

財務省は、本当に国民経済を破壊し国民から恨まれるだけではなく、さらに米国を敵にまわしてまで増税するつもりなのでしょうか?

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2018年11月4日日曜日

コラム:消費増税は時期尚早、将来世代に回るツケ=嶋津洋樹氏―【私の論評】財政再建は既に終了、増税で税収減るので必要なし!財務省はバカ真似は止めよ(゚д゚)!

コラム:消費増税は時期尚早、将来世代に回るツケ=嶋津洋樹氏

各種報道を見る限り、2019年10月の消費増税はほぼ既定路線になったようだ。財務省を始め財政再建を訴える人たちは、とりあえず胸をなでおろしていることだろう。世論も消費増税を支持しているようで、日本経済新聞とテレビ東京による世論調査(10月26─28日実施)では47%が賛成と、反対の46%を上回った。

10月のロイター企業調査に至っては、「実施すべき」との回答が57%と、「実施しない方がよい」の43%を大幅に上回った。ロイターはその理由として、「財政健全化を先送りすべきではない」というのが「代表的な意見」と報じている。「少子高齢化が進行する中で、『(増税しなければ)社会保障制度が維持できない』」、「これ以上の先送りは、国民の先行き不透明感をあおるだけ」などの意見も取り上げている。

筆者も財政再建を先送りすべきではないと考えているし、その際に消費増税が安定した財源となることにも異論はない。しかし、それが来年10月で良いのかは問われるべきだ。少なくとも最近の経済指標は、国内景気が増税を乗り越えられるほど強い状態でその時期を迎えられない可能性を示している。

2カ月ぶりに減少した9月の鉱工業生産は、小幅な落ち込みにとどまるという市場の予想をあっさり裏切り、前年比1.1%低下した。7─9月期は前期比1.6%減と、3%減少した14年4─6月期以来の大幅な落ち込みを記録した。主因は台風や地震などの自然災害が相次いだことだろう。日銀の黒田東彦総裁が10月31日の記者会見で述べた通り、そうした影響は「基本的には一時的で」、「政府、民間企業も復旧の投資を行い、むしろ成長率を押し上げる」可能性もある。

<経済指標は6月ごろから弱含み>

しかし、8月の本コラムで指摘した通り、経済指標は6月ごろから弱さが目立つ。たとえば、工作機械受注は18年1月(48.8%増)以降、9月まで8カ月連続で伸びが鈍化。とくに中国向けは17年8月に前年の2.8倍増加していたものが、18年3月にはマイナスへ落ち込み、9月は前年比22%減と、7カ月連続で減少した。



日本を訪れる外国人の数も9月は前年比5.3%減と、13年1月に1.9%減って以来のマイナス。季節変動をならしてみると前月比5.7%減となり、6月以降、4カ月連続で前月の水準を下回った。

インバウンドで湧く大阪府のシティホテルの客室利用率(全日本シティホテル連盟)は、同じく季節変動をならしてみると、18年5月の88.9%が直近のピークで、6月は83.2%へ急低下。それ以降、4カ月連続で低下し、9月は73.5%と12年3月以来の低水準となった。

重要なのは、こうした経済指標の悪化が9月のみならず、それ以前から見えるということだ。そうした前提に立つと、景気の代表的な先行指標である新規求人数が9月に前年比6.6%減と16年10月以来の減少に転じたこと、そのマイナス幅が金融危機の影響を引きずる10年1月に13.4%減少して以来であることを、「一時的」と簡単に結論付けるわけにはいかない。国内景気は9月の自然災害で「一時的」に落ち込んだというよりも、それ以前からの弱さが露呈してきた可能性がある。

日本経済を取り巻く環境も、決して良好とは言えない。中国は今春以降、習近平国家主席が掲げるデレバレッジ(債務圧縮)方針への忖度(そんたく)が行き過ぎ、地方を中心に金融危機をほうふつさせるほど信用収縮が進んだ。金融当局などが迅速に対応して大事には至らなかったが、景気に急ブレーキがかかった状態にある。ハードランディングは回避できるとみているが、習主席が方針転換を明示しない限り、中国景気の足取りは重いままだろう。

米国は減税の追い風もあり、景気の回復が続く可能性は高いものの、プラス3─4%だった4月から9月の成長ペースを維持できるとは考えにくい。11月6日の中間選挙で共和党が上下両院とも制し、一段の減税など拡張的な財政政策が選択されるシナリオはゼロではない。しかし、その場合は米連邦準備理事会(FRB)に早期の金融政策正常化を促したり、ドル高がトランプ米大統領が推進する輸出振興を妨げたりするだろう。金利上昇に敏感な住宅市場に減速感があることも気がかりで、堅調な個人消費に水を差しかねない。

こうした状況で無理に消費増税に踏み切れば、日本の景気が失速するのは不可避だろう。安倍晋三政権は負担軽減策を講じ、万全の態勢で臨む姿勢を示すが、前回増税した14年4月を振り返るまでもなく、効果は未知数と言わざるを得ない。増税は一時的ではなく、恒久的に所得を減少させる。本気で影響を最小化しようとするのであれば、その減少分のいくらかを恒久的に補てんする必要があるだろう。

「そんなことを言っていたら、いつまでたっても財政再建などできないだろう」という声が聞こえてきそうだ。繰り返すが、筆者は財政再建の必要性を否定しているのではない。なぜデフレからの完全脱却を待てないのか、と主張しているだけだ。財政再建には、需給ギャップが明らかにプラスへ転じ、物価が2%で安定的に推移するようになってから取り組むべきである。

<若者の人生を左右>

内閣府と日銀の推計値によると、確かに需給ギャップはプラスに転じている。しかし、国際通貨基金(IMF)の試算値では、17年がマイナス0.864%、18年がマイナス0.749%と、明らかなマイナス圏にある。需給ギャップを用いて議論をするに当たっては、相当の幅を見ておく必要があるという常識に従えば、IMFの数値も考慮に入れるのは当然だ。

ロイターによると、IMFのラガルド専務理事は10月4日にインドネシアで麻生太郎財務相と会談した際、日本の消費税率の引き上げに支持を表明した。一方で、5%から8%に引き上げた4年前の増税に言及し、景気への影響には注意を払うよう伝えたという。ラガルド氏の発言を筆者なりに解釈すれば、IMFに理事まで派遣している国が下した判断を尊重しつつも、需給ギャップがマイナスの状態で増税をするのだから影響は大きくなる、くれぐれも慎重に、ということだろう。

そのIMFの分析によれば、日本の政府債務は名目GDP(国内総生産)比で235.6%、いわゆる「GDPの2倍以上」であるが、資産を勘案した純債務では5.8%に過ぎない。IMFが試算した31カ国中、最も大きな純債務を抱えるのはポルトガルで135.4%。125.3%の英国がそれに続く。統計が揃わないイタリアを除いた先進6カ国では、カナダのみが資産超過で、フランス、ドイツ、米国はそれぞれ42%、19.6%、16.7%と、日本よりも純債務が大きい。

日本では財政の話になると、なぜか急に「将来世代にツケを回すな」という声が出て、増税は当然という結論になる。しかし、需給ギャップがマイナスのまま財政再建を急げば、景気に大きな負荷がかかり、デフレに陥るリスクすらある。若者が希望通りの仕事に就けない、それどころか仕事がないという、つい最近まで日本が経験していた縮小均衡の世界である。

今も日本企業の多くは新卒を一括採用し、社会人としてのスキルは就職後に時間をかけて習得させるのが基本だ。つまり最初に正社員として就職できないと、その後の選択肢は大きく制限される社会である。増税先延ばしが将来世代にツケを回すという議論だけでなく、デフレから完全に脱却しないまま来年10月に増税すれば、将来世代の人生を大きく左右しかねないという議論もすべきだろう。

嶋津洋樹氏

嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)


【私の論評】財政再建は既に終了、増税で税収減るので必要なし!財務省はバカ真似は止めよ(゚д゚)!

私は典型的なリフレ派であり、すでに財政再建は終わったと考えています。そのため、消費税の10%への増税は全く必要ないと考えています。それについて、このブログで何回も掲載しています。その典型的なもののリンクを以下に掲載します。

1000兆円の国債って実はウソ!? スティグリッツ教授の重大提言―【私の論評】野党とメディアは、安保や経済など二の次で安倍内閣打倒しか眼中にない(゚д゚)!

スティグリッツ氏

政府の連結資産に含められるのは、日銀だけではない。いわゆる「天下り法人」なども含めると、実に600兆円ほどの資産がある。これらも連結してバランスシート上で「相殺」すると、実質的な国債残高はほぼゼロになる。日本の財務状況は、財務省が言うほど悪くないことがわかる。
 
スティグリッツ氏は、ほかにも財政再建のために消費税増税を急ぐなとも言っている。彼の主張は、財務省が描く増税へのシナリオにとって非常に都合の悪いものなのだ。 
彼の発言は重要な指摘であったが、残念ながら、ほとんどメディアで報道されなかった。経済財政諮問会議の事務局である内閣府が彼の主張をよく理解できず、役所の振り付けで動きがちなメディアが報道できなかったのが実際のところだろう。
この記事は、2017年4月2日のものです。広い意味での財政再建はこの時点で終了していたといっても良いです。この状況では、増税などする必要性は全くありませんでした。

これが、いわゆるリフレ派というか、日本ではリフレ派というと異端のようにみられますが、世界標準でごく当たり前の見方です。日本の財務省の官僚などは、日本が本当に増税する必要があり、その明確な根拠があるとすれば、スティグリッツ氏と意見が異なるわけですから、もし財務省の見方が正しければ、ノーベル経済学賞を受賞できる可能性があるはずです。しかし、そのような話は全く聴いたことはあません。これは、日本の財務省の官僚の誤謬です。

日本ではなぜかリフレ派は少なく、日本は財政再建からはまだ遠い状況であるとする人が多いです。ブログ冒頭の記事を書かれた、嶋津洋樹氏もそのような見方をしています。

そうして、嶋津氏が語るように、たとえ日本が財政再建からまだほど遠い状況であるという立場からも、現在は増税などすべきではないです。

本日は、この立場から、データをあげつつ増税をすべきでない理由を以下にあげます。

図1 財務省データより作成

財務省が発表した、2016年度の税収が、7年ぶりに前年度を下回ったことが、話題を呼んでいました。

全体の税収は、前年度より0.8兆円少ない55兆4686億円でした。法人税も5000億円減り、所得税も2000億円減り、消費税も2000億円減っている。各税収項目が、軒並み下がっていました(上図)。 

2017年7月7日付日経新聞の朝刊は、税収が減った理由について、「財務省は税収の大幅減は『特殊要因が大きい』と説明する」と報じていました。

法人税が下がった理由として、「年度前半の円高で企業業績に陰り」と説明されていました。「イギリスのEU離脱などの影響で、円高になったので、企業の輸出が減ったせい」という理屈です。しかし、日本の経済規模(GDP)に占める、輸出(純輸出)の比率は1%ほどに過ぎないです。

また所得税が減った理由については、「株価伸び悩みで譲渡所得減る」と書かれていました。「株価が上がらないので、株を売った時などの収入にかかる税金が減った」ということだ。しかし、所得税収における、「株式等の譲渡所得等」の内訳は、5%程度に過ぎないです。

財務省も各新聞も、税収が減った原因を、円高や株価など、経済全体にとっては"些細"なものばかりに求めているように見えました。

一方、様々な経済指標を見てみると、経済規模(GDP)の60%近くを占める消費が、悲惨な状況になっていました。

下の図は、世帯ごとの消費支出の推移です。2014年から、2017年の間に、各世帯の消費は年34万円も減ってしまっています。こはサラリーマンの月収、1カ月分に近いです。
図2 総務省統計を元に編集部作成。「1世代1カ月間の収支(2人以上の世帯)の各年1月の名目消費支出額を、消費者物価指数(2017年1月基準)を用いて実施値とし、年間の消費に調整。

こうした「消費が弱い」「デフレから抜け出せない」という指摘は、GDPが発表されたり、日銀の失敗を語る時には、各新聞とも書いていることです。にもかかわらず、なぜ税収の話になったとたん、「消費」の二文字が消えるのでしょうか。これは、かなり不自然です。

動機はある程度、察しが付きます。財務省には、「2019年秋の消費税10%への引き上げを、再延期させない」という目標があるのでしょう。

内閣が昨年6月に発表する、財政政策の方針のベースとなる「骨太の方針」から、前年まで書かれていた「消費税」についての言及が消えたことが、話題になりました。「消費税がいけなかった」ということを、政治家は知っていたのでしょう。今後、「消費税10%」を巡る、内閣と財務省の水面下の対決は、本格化してくるでしょう。

そうして今年の「骨太の方針」には、「消費税」という言葉が復活しました。今年に入ってから財務省が攻勢を強めたことがうかがえます。

そうした中で、財務省が「消費税のせいで、税収まで腰折れした」という認識を、持たれないようにしているようです。

各メディアも、財務省の公式発表を表立っては否定しません。日本中の経済情報を握っている財務省の機嫌を損ねてしまえば、経済記者は「商売上がったり」なのでしょう。それに、財務省から貰えるはずのスクープ情報も、もらえなくなるのでしょう。さらに財務省らから睨まれると、出世ができなくなるのでしょう。また、10%に上がったときの軽減税率の対象から、新聞を外されては困るという事情もあるのでしょう。

今後、税収減の傾向はさらに続く可能性があります。というのも、今回の税収は2016年度のものでしたが、図2を見ると、2017年の消費はさらに落ち込んでいます。
下のグラフは、1989年、すなわち消費税を導入した年から2017年までの税収の推移です。どの税収も若干上がっています。これは増税はして消費は落ち込んだものの、幸い輸出などが増えたことによるものです。



この推移を見ると景気動向に合わせて上下の変動はありますが、消費税導入以来随分税収が減ってきました。

一方消費税収の推移をみてください。こちらは逆にどんどん増えてきています。今や消費税収は17.5兆円で法人税収(約12兆円)を上回っています。

消費税を上げたダメージは、年々じわじわ積み重なって、3年後くらいから本格化すると言われています。「消費が減る→企業の売り上げが減る→給料が減る→さらに消費が減る」という悪循環が、少しずつ進行していくからです。

消費増税の本当の怖さは、直接消費を減らすこと以上に、その負のスパイラルの引き金を引いてしまうことだと言えます。2017年度は上記にもあげたように、輸出の増大があり、税収は増えていますが、もしそうでなかった場合を想定すると、税収の推移は以下のようになったと考えられます。





1990年に消費税を導入した時も、1997年に消費税率を5%に上げた時も、景気が絶好調の時に増税したので、税収は一瞬だけ上がりました。しかし、それから1~3年の間に徐々に景気が傾き、税収も落ち込み傾向に向かっていきました(下図)。




今回も、税収の推移のグラフが、同じようなカーブを描く可能性が高いです。

本当に、将来的に安定した税収を確保したければ、消費税率を5%に戻すべきです。ましてや、10%に上げることなど言語道断です。

以上は、財政再建などとは全く別にいえることです。税収という点からみても、10%増税などとんでもないということです。

財政再建という観点からはそもそも終了しているので増税の必要がないですし、税収という観点からも10%増税は全く正しくないのです。

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2018年10月12日金曜日

IMF「対日4条協議」の内幕 財務省が言わせる「日本は消費増税すべきだ」 ―【私の論評】愚かなIMFを緊縮財政に利用する屑組織財務省は解体すべき(゚д゚)!

IMF「対日4条協議」の内幕 財務省が言わせる「日本は消費増税すべきだ」 


IMFのラガルド専務理事(右)と会談する麻生太郎財務相(左)=4日、財務省

国際通貨基金(IMF)は、日本に対する「4条協議」が終了したとして、報告書を公表した。IMFの分析はどのように行われるのか。その内容は妥当なのか。

 IMFは、IMF協定第4条に基づき、原則年1回加盟国の経済状況、財政・金融・為替などの政策を調査するが、これを「IMF4条協議」という。

 IMFのスタッフが加盟国を訪問し、加盟国政府・中央銀行などの担当者と協議する。この「協議」は、英語で「consultation」であるが、かつては「対日審査」などと訳され、あたかもIMFが日本に対して指導するような表現だった。

 ただし、IMFのスタッフといっても、その中には財務省からの出向職員の日本人もいる。筆者も役人時代に「4条協議」に加わったこともあるが、彼らに、内閣府、財務省、日銀の担当者が日本経済の現状を説明するというのが実態に近い。IMFのスタッフがまとめるペーパーには、当然のことながら、日本の事情に詳しい財務省からの出向職員の知見が大きく反映されるだろう。

 財務省にとっては、IMFの名前で自らの見解を述べることで外圧として利用できる。最近の4条協議で、IMFが「日本は消費増税すべきだ」という意見を述べているのは、まず財務省がそう言わせていると思って間違いないだろう。

 これは、ワシントン在住の日本のマスコミにも好都合だ。IMFのペーパーに関与した財務省からの出向職員に直接日本語で取材できるからだ。

 IMFとしても決して悪いことでない。IMFペーパーの内容について日本政府と見解が大きく異なると問題になりかねないが、財務省が事実上書いたことなら、そうした心配はない。

 しかしながら、IMFの信用を損なうおそれがある。というのは、IMFは1990年代から2000年代にかけて緊縮一辺倒であったことを12年に間違いだったと認めているからだ。今さら日本に対して消費増税という緊縮財政策をアドバイスするのは矛盾している。

 英国では最近まで緊縮指向で頑張っていたが、ついにメイ首相がリーマン・ショック後に導入された歳出削減などの緊縮政策を廃止すると報じられた。

 このニュースは海外では大きく扱われているが、日本のマスコミではほとんど報じられていない。今のタイミングでメイ首相の発言を報じれば、来年10月に予定されている10%への消費増税に悪影響が出て、新聞業界で待望している消費税軽減税率が吹っ飛んでしまうことを恐れているのだろうか。

 一方でIMFが日本に消費増税をアドバイスしたということについては日本のマスコミで報じられている。よく言われることであるが、これはいわゆる「報じない自由」ではないのか。

 しかし、これではマスコミが軽減税率欲しさで財務省に忖度(そんたく)しているのではないかと思われても仕方ないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】愚かなIMFを増税に利用する屑組織財務省は解体すべき(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「IMFは1990年代から2000年代にかけて緊縮一辺倒であったことを12年に間違いだったと認めている」とありますが、その時の経緯を以下に掲載します。

過去に国際通貨基金(IMF)の緊急融資プログラムを実施して景気悪化の痛みを味わった国々は、2012年になってIMFが緊縮策のコスト計算を間違っていたとを認めたことで、憤懣(ふんまん)やる方ない気持ちでした。

アルゼンチン、インドネシア、韓国といった国々はかつて、IMFによる数百億ドルの融資と引き換えに厳しい財政支出の削減を義務付けられました。これらの国々は、IMFがようやくアジアや中南米の経済危機の際に犯した過ちから学びはじめました。

当時のインドネシアのギタ貿易相は「彼らは過去の出来事から学んでいる。我が国が1998年に経験したことは間違いなく過酷だった。その時期を生き延びた私は、われわれが被った困難が教訓となるよう期待する」と話しました。

当時のインドネシアのギタ貿易相

インドネシアはアジア金融危機が勃発した1997年に100億ドルのIMF融資に調印し、財政支出削減、増税、銀行閉鎖、引き締め的な金融政策といった経済プログラムに着手しました。IMFは、これらを実施すれば景気の悪化を抑制できると主張していました。

インドネシア経済は結局、98年に13%ものマイナス成長に陥り、IMFの予想した3%のプラス成長とは程遠い結果になりました。

IMFのストロスカーン前専務理事は2010年、IMFがアジアにおいて「過ち」を犯したことを認めました。

IMFのストロスカーン前専務理事 売春あっせんの罪に問われたが、後に無罪を言い渡された

IMFは2015年に発表した調査報告書で、厳しい財政緊縮策による経済への打撃は以前想定していた規模の3倍に及ぶ可能性があると指摘しました。

ラガルド専務理事は 2012年10月12日に東京で開かれたIMFと世界銀行の年次総会全体会合の冒頭で「助言というのは、受け取るのも与えるのも時として難しい」と述べました。

調査報告書と並行してIMFは、ユーロ圏債務危機に対処するため財政緊縮を促す従前の姿勢を緩和し、ギリシャその他の重債務国に早急な財政赤字削減を強いれば副作用を招くとの主張に転じました。

<緩衝剤>
IMFの報告書は、2009年の前後で緊縮策が先進国に及ぼす影響が著しく変化したことを示していました。09年以降、大半の主要先進国は政策金利をゼロ近くまで引き下げています。

通常なら、財政政策を引き締めても中央銀行が利下げという緩衝剤によりその打撃を和らげることができます。しかし現在は金利が限界まで下がったため、財政引き締めを相殺するために打ち出せる金融政策は乏しいです。

IMFのブランシャール調査局長は「現在は多くの国々が流動性の罠に陥っている。これは周知の通り、金融政策を使えないことを意味しないが、平時に比べて金融政策には大幅な制約がある。こうした場合、金融政策によって相殺されずに財政健全化の影響が直に出ることになる」と述べました。

1997年のインドネシアでは、IMFは財政赤字の削減と金融引き締めの両方を勧告。これが景気悪化を深刻化させたとの批判を招いてきました。

IMFは99年、インドネシア経済が予想よりはるかに悪化していることが明らかになった時点で、もっと素早く政策の緩和を許す余地があったことを認めました。しかし同時に、インドネシア政府がIMFの計画を適切に実行しなかったことを批判しました。

当時アジアにおけるIMFの評判には今でも泥が塗られたままで、アジア諸国は二度と救済を仰ぎたくないという理由もあって、総額約6兆ドルの外貨準備を積み上げていました。

<失敗が約束された戦略>
当時のアルゼンチンのロレンシノ経済財務相はIMFが失敗を認めたことについて、ユーロ圏危機に対する姿勢を改める「最初の一歩」になるはずだと語っていました。

経済財務相はIMFに寄せた公式声明で「IMFはまたしても失敗を約束された政策条件や改革戦略を支持している。これらは対象国における景気後退を深刻化させ、失業率を押し上げ、債務は持続不可能な道をたどって社会的な失敗も招くことになる」と訴えました。

アルゼンチンは過去10年間にIMFから合計約230億ドルの融資を受け、それを返済。現在はIMFが融資対象国に課す条件を声高に批判していました。

韓国は1997年にIMFから210億ドルの融資枠を与えられ、成長率が97年の5.7%から98年には3%に減速することを前提とした改革プログラムに合意しました。実際には韓国経済は98年に6%近くのマイナス成長に陥りました。

97年のIMFとの交渉で韓国代表団を率いた鄭徳亀氏は、IMFは通貨危機の診断を誤り、財政政策の問題だとして間違った改革案を処方したと指摘。「すっかり手遅れになってから消防団が到着したが、十分な水を積んでおらず火事の性質も正確に把握していなかったようなものだ。その結果、火事はますます大きくなった」と話した。

現在NEAR財団理事長の鄭徳亀氏 現在は文在寅政府の
一輪車政策」では経済問題は解決できないと批判している

IMFの示した処方箋から離れることによって成功を収めた国が少なくとも1つありました。

ボリビアの当時のアルセ経済・財務相は、IMFが他の国々で失敗を犯したのを見たため、ボリビア政府はIMFの勧告を無視することを決めたと説明。IMFの勧告と正反対の政策を実施したことにより、2005年に38%を超えていた貧困率を11年には24%強に抑え、一人当たり国内総生産(GDP)はこの間に倍増したと述べました。

財務相は「ボリビアでは国家の介入を強めることで、より良い富の配分を成し遂げた。われわれは市場をまったく信頼しておらず、2006年に市場主義経済を捨てた」と指摘。「IMF理事らの志は良いのだが、一部の局はIMF内で実施すべき改革にまったく耳を貸さない。ラガルド専務理事ができる最良の行動は、彼女の良い志を下のレベルまで浸透させることだ」と述べました。

過去にIMFは、経済が落ち込んでいる国に対して融資する条件として緊縮財政を課しましたが、これは上で示すようにことごとく大失敗しました。

経済が落ち込んでいる場合には、金融緩和と積極財政を適切に組みあせて実行すべきというのは、マクロ経済の基本中の基本です。両方とも実行すべきなのです。両方を実行していく過程において、その時々で、両者の効果にはそれぞれ特有のタイムラグがあるため、両者をうまく組みあせる必要があるのです。

しかし、経済が落ち込んでいる国々に対して、IMFは融資の条件として、緊縮財政で財政をたて治すという名目で、緊縮財政を強要したのです。しかし、これはことごとく失敗しました。

そうして、現在のIMFも日本の財務省の口車に乗って、日本に対して消費税増税を勧告する有様です。IMFの勧告など全く信用ならないと認識すべきです。

さらに、2013年には、財政切り詰め策の根拠となった唯一の論文が間違いであったことが明らかになっています。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「ごめんなさい」では済まされない! 財政切り詰め策の根拠となった論文に誤り 欧州連合の方針に疑問―【私の論評】 これは経済学者というか、科学者として許すまじ行為!!世界を日本を惑わした罪は大きい!!見せしめのために、学会から追放せよ!!日本は、消費税増税絶対にみあわせようぜ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
2009年にギリシャ問題が発覚し、それが欧州財政危機問題へと拡大した際、欧州委員会は危機を回避する政策を策定するにあたってひとつの論文を参考にしました。 
それはハーバード大学のケネス・ロゴフ教授とハーバード・ケネディ・スクールのカーメン・ラインハート教授による「Growth in a Time of Debt(国家債務時代の経済成長)」という論文です。 
ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハート

ロゴフ教授とラインハート教授は『国家は破綻する』という本の著者でもあり、日本でも知られています。
ところがマサチューセッツ大学アマースト校の博士課程に学ぶトーマス・ハーンドンがこの論文に書かれている結果を再現しようとしたところ、ロゴフ教授とラインハート教授が主張するような、「国家負債が90%を超えるとGDP成長が著しく鈍化する」という結果が得られませんでした。そこで彼の指導教授であるマイケル・アッシュ教授ならびにロバート・ポーリン教授とともに「結果がそうならなかった」という指摘をしました。

これが両者の間で論争を巻き起こしましたが、結局、ロゴフ教授とラインハート教授がエクセルのスプレッドシートを操作する際、コーディングのミスをした為、一部のデータが演算に反映されていなかったことが判明しました。 
ロゴフ教授とラインハート教授がエクセル操作上の凡ミスを全面的に認め、謝罪の声明を出すということで論争には終止符が打たれました。 
しかし切り詰め政策を強要されているギリシャやスペインの国民からすれば「間違いでした、ごめんなさい」ですまされることではありません。
この記事には、「ロゴフ教授とラインハート教授がエクセルのスプレッドシートを操作する際、コーディングのミスをした」などと掲載されていますが、それこそコピーをし間違えた程度のかなり杜撰なものだったそうです。

この記事には、当然IMFも影響されていました。しかし、これは完璧に間違いであったことが明らかになり、やはり従来からマクロ経済学の教科書に掲載さている「経済が落ち込んだときには、金融緩和と積極財政を適宜組み合わせて実行」ということが正しいということが再確認されています。

愚かなIMFを増税に利用する財務省。本当に屑組織です。こんな省は解体すべきです。

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2018年6月5日火曜日

経済合理性はない消費増税 撤回のチャンス乏しいが…延期する政治判断が正解だ ―【私の論評】消費税を5%に戻せば、日本は再び世界第二の経済大国に返り咲き安倍政権は長期政権に(゚д゚)!

経済合理性はない消費増税 撤回のチャンス乏しいが…延期する政治判断が正解だ 

安倍晋三首相

2019年10月の消費税増税に備え、安倍晋三首相は19、20年度の当初予算を大型にする意向を示し、6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に景気対策の必要性を明記すると報じられている。消費増税を止めることはもうできないのか、一時的な景気対策で増税の悪影響を食い止めることは可能なのか。

本コラムで何回も指摘してきたように、統合政府のバランスシート(貸借対照表)を見れば、ネット債務残高はほぼゼロである。すでに財政再建をする必要は乏しいので、経済政策としてみれば、あえて消費増税を実行する必要はない。

それでも、政治的な理由で実施するというのであれば、そのときの対応策は増税効果を打ち消すような理論的な最善策に可能な限り近づけるべきだ。

最善策とは、8%から10%への消費増税を行うと同時に、全品目を8%の軽減税率の対象として適用することだ。笑い話のようだが、理論的に考えるとこうなる。筆者は、実際にこの話を国会で参考人として答弁したことがある。

これができない場合、何にも増して、景気を過熱させておくことが必要だ。そのために即効的な対策は、有効需要を高める減税を含む意味での財政出動である。一度きりの補正予算より恒久的な本予算でやるほうがいいが、少なくとも複数年度は必要である。手法としては広い範囲で財政出動をしたほうがいい。所得税減税と給付金の組み合わせであれば、全品目軽減税率適用に近い経済効果になる。

規模としては、恒久的な措置であれば増税額に見合う数兆円規模でもいいが、一時的な措置であれば10兆円以上を行って景気を過熱させることが必要になる。現在の需給ギャップなどから、こうした規模の財政出動であれば、景気は過熱するであろうから、増税によって冷や水をかけてもいいだろう。

そこまでして消費増税を行う経済政策上の合理性はない。消費増税が政治的に撤回できないので、増税分も政治的に使ってしまうというもので、あくまでも経済政策としての判断というより、政治的な判断だといえる。

政治的な判断というのなら、いっそのこと、財務省の公文書改竄(かいざん)などの不祥事から政局になりかかっていることもふまえて、国民の行政に対する信頼が回復するまで、当分の間、消費増税を延期するというのが、国民生活をかんがみても正解ではないだろうか。

もっとも、実際の政治スケジュールをみると、今年は大きな国政選挙が行われない可能性が高く、その場合には、消費増税の撤回を政治的な争点にする機会がなくなり、既に法律で決まったものとして、増税が実施されてしまう。

秋に予定されている自民党総裁選で消費増税の是非でも争点になれば、撤回のチャンスも出てくるが、そうならない場合、客観的にみて今の政治スケジュールでは苦しいところだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】消費税を5%に戻せば、日本は再び世界第二の経済大国に返り咲く(゚д゚)!

2019年10月に予定される税率10%への消費増税をめぐり、自民党の若手議員らが11日、増税凍結と、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化目標の撤回を求める提言を発表しまた。首相官邸の後押しを受けたもので、消費増税をすでに2度延期している安倍晋三首相の政策判断や、秋の自民党総裁選に影響をログイン前の続き与える可能性があります。

提言をまとめたのは「日本の未来を考える勉強会」(呼びかけ人代表・安藤裕衆院議員)。増税凍結などの理由として、前回14年の増税(5%→8%)の影響が残り、「再デフレ化の危機に直面している」と主張。全派閥の衆院1~3期生と参院1期生、前職の計39人が賛同の署名をしました。

以下に彼らの提言の内容を示す動画を掲載します。動画のタイトルは、「デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、財政再建を果たすために必要な財政政策に関する提言(Ver.2)」記者会見です。 平成30年5月11日にYouTubeに掲載されたものです。



提言は近く、首相と二階俊博幹事長に申し入れるますが、提言には首相の意向が働いています。首相は今年2月、公邸で若手議員と会食。その際、参加者がPB黒字化への異論を唱えると、首相は理解を示し、「党の方でどんどん議論を盛り上げてよ」と応じたといいます。

また、提言の文案は当初、増税「凍結」を「必須」としていましたが、官邸幹部と調整し、「当面の『凍結』を検討」という表現に落ち着いた経緯もあります。勉強会メンバーの一人は「官邸がOKと言わない提言は出せない」と話したそうです。安藤氏は提言発表の記者会見で、「大きな政策変更だ」と述べ、総裁選の争点になるとの認識を示しました。

この動きからすると、自民党総裁選で消費増税の是非が争点になる可能性はあると考えられます。

安倍首相はこの動きだけではなく、党内で様々な「増税見送り」の動きを期待しているでしょうし、実際にそのような動きをする人々を支援するのではないでしょうか。

2018年9月の自民党総裁選で誰が勝者となるのか。安倍晋三総裁の対抗馬として誰が立候補するかもまだ明白にはなっていない状況ですが、私は、安倍氏と岸田文雄政調会長の一騎打ちになる可能性が高いと予想しています。

岸田氏

そうして、こと日本経済にとっては、安倍氏の勝利が望ましいです。

岸田氏が勝って岸田政権が誕生すれば、消費税の8%から10%への引き上げが2019年10月から予定通りに行なわれるはずです。その結果は、火を見るより明らかです。前回の消費税率引き上げ後と同様に、日本の景気が大きく失速することは間違いないです。10%増税ともなれば、切りがよくて計算しやすく、8%増税のときよりもさらに個人消費が落ち込むことが考えられます。

一方、安倍氏が勝てば、少なくとも消費税が上がることはないと考えられます。安倍氏はおそらく、自民党総裁選前に再び消費税の凍結、あるいは引き下げを表明すると、私は見ています。なぜなら、内閣支持率の急落という逆境から一発逆転勝利を狙う最後の切り札は、それしかないと思われるからだ。

日本経済にとって最良のシナリオは、安倍氏が消費税率の引き下げを総裁選の争点にして勝利することです。その結果、たとえば消費税が5%に引き下げられれば、日本の株価も一気に上がるはずです。

そうして、実は上記の「日本の未来を考える勉強会」も過去に同じような提言をしています。8%増税で大失敗したのですから、その失敗を取り返すには消費税を5%に戻すというのは自然な流れです。しかし、そうなると決まって出てくるのが、財源の問題です。

しかし、財源はすでに潤沢にあります。消費税を5%に引き下げても、通貨発行益を財源として利用すれば、財源的には何の問題もないはずです。日銀は量的金融緩和で国債を大量に買い増し続けていますが、日銀が保有する国債は、元利の返済が実質不要です。

日銀が国債を買い入れるということは、国債を日銀が供給するお金にすり替えることを意味します。日銀券は元本返済も利払いも不要なので、日銀保有の国債は借金にカウントする必要がないです。それが通貨発行益です。

2017年度ベースの日銀の国債買い入れ額は、約31兆円に上りました。ということは、通貨発行益が2017年度ベースで約31兆円出たということです。一方、2017年度のプライマリーバランスの赤字額は約19兆円なので、2017年度の日本の財政は実質的に約12兆円の黒字だったのです。

それに対して、消費税を5%に引き下げるために必要な財源は約8兆円なので、問題なく可能なのです。これについては、このブログでも政府の日銀の統合政府ベースではすでに、財政は黒字であることを何度かとりあげてきました。


これを語ると、反アベノミクスの方々は、そんなのインチキだと言うのですが、彼らの頭の中は静的で、動的な金融政策を無視しています。景気が悪ければ、日銀が市場(銀行など金融金)から国債を買い取って、市場に大量の銀行券を流通させることによって景気は良くなります。

このままであれば、景気は加熱しっぱなしなりますが、景気が過熱すれば、今度は日銀が市場(銀行などの金融機関)に国債を売り、市場から銀行券(お金)を吸い上げて、景気の行き過ぎを抑制します。これが、中央銀行のオープンマーケットオペレーションというものです。

このようなダイナミックな動きをする機動的金融政策を実施することを前提とすれば、大量の国債を日銀がいつまでもため込んで離さないということではないので、何の不都合も生じません。

反アベノミクスの方々は、過去の日銀が動的に引き締めや緩和政策をその時々実行するという動的な金融政策をとらず金融引締めばかり実行してきたので、日銀風の静的金融緩和(引き締めたら引きしめぱなし)という金融政策を前提でものごとを考えるようになってしまったのかもしれません。そもそも、なぜ日銀が買いオペをしなければならないのかといえば、過去の日銀が頑なに金融引締めばかりを実施してきたからに他なりません。

確かに、日銀が国債をいつまでも市場から国債を買い取る(買いオペ)ばかりをしていれば、いずれ市場にお金が溢れ、ハイパーインフレになることになります。そうなる前に、今度は日銀は市場で国債を売って、市場からお金を引き上げれば良いのです。これが売りオペです。過去の日銀は、このダイナミックな動きをしなかったので、金融政策に失敗し続けてきたのです。

話を元に戻します。もし安倍氏が総裁選に勝って消費税率が8%に据え置かれた場合でも、岸田氏が勝って消費税率が10%になった場合を比べれば、日経平均株価は5000~6000円の差、あるいはそれ以上の差が出ることになるでしょう。一般の個人投資家にとっても、安倍氏の勝利が望ましいです。市場は間違いなく、安倍総裁再選を歓迎しています。


ところで、2108年1~3月期の実質GDPは、2年3か月ぶりのマイナス成長となっています。「リーマン・ショック並みの経済危機がくれば、消費税凍結を考える」と総選挙で発言した安倍総理が、消費税の凍結あるいは引き下げを断行する環境は整ってきています。

安倍総理が3選され、安倍総理が10%増税延期するどころ、消費税を5%に戻すようなことになれば、財政政策は金融政策よりは即効性があるので、あっと言う間に景気が回復して、物価目標も達成され、日本経済は盤石となり、数年後には低迷している中国の経済を追い越し、再び世界第二位の経済大国になることも夢ではありません。それだけ、日本の経済の潜在能力は高いのです。

そうして、無論安倍政権が長期政権になるのも確実です。

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