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2019年11月24日日曜日

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない

麻生財務相はわかっていない

不可解な「麻生発言」

「安倍晋三首相から経済対策の指示は出ておらず、現時点でその必要性も感じない」

11月1日の閣議後、会見でこう述べたのは麻生太郎財務相である。だがこの発言が密かに、周囲の混乱を生んでいる。


麻生財務大臣

というのも麻生財務相は、今年7月の参院選当時、10月の消費増税後に世界経済が大幅悪化した場合などを念頭に「必要な事態が起きれば、それなりの対応をしようと財政当局として考えている」と発言。

今秋に追加経済対策を実施する可能性を示唆していたからだ。

奇しくも同日付の日経新聞では、「安倍晋三首相は大規模災害や来年夏の五輪後の経済成長を底上げするため、経済対策の策定を近く指示する」と報じられた。

麻生氏の発言とは正反対の趣旨である。

おまけに、こんな数字も同日、厚労省から発表された。9月の有効求人倍率で、その数値は前月比0・02ポイント低下の1・57倍となった。これだけで景気後退は断言できないが、見逃していい数字でもない。ますます麻生氏の発言の真意を計りかねるところだ。


景気後退のサイン

景気停滞について、その兆候を示す調査がちらほらと出始めている。

NHKは、消費増税から1ヵ月が経過し、小売りや外食などの主な企業50社に調査を行った。その結果は、6割の企業が増税のあと、売り上げが前の年の同じ時期よりも減少したと回答したのだ。



また、日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査では、同じく消費増税から1ヵ月で、家計支出について「変わらない」と回答したのは76%、「減らした」と回答したのは21%だった。

ちなみに'14年の消費増税時は、「変わらない」は66%「減らした」は31%だった。今回の増税は8%から10%、前回は5%から8%と、増税割合は前回のほうが大きい。増税幅と消費減少の連動を示している数字といえよう。

さらに、総務省が発表した、10月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)も見てほしい。前年同月比0・5%上昇で9月から横ばいだが、増税による押し上げを除くと0・34%で、2年3ヵ月ぶりの低い伸びだった。

また、実質消費支出でいうと、'14年は前年比マイナス2・5%であった。

ここから今回の消費増税の影響を算出してみると、およそ1・8%の消費支出マイナスになることが想定される。

先の読めない金庫番

あまりインパクトを感じない数字かもしれないが、消費以外の需要項目、民間住宅、民間設備投資、公的部門、外需がかなり頑張らないと実質GDP成長率がゼロ近辺に落ち込むレベルといえる。

米中貿易戦争にブレグジット、ホルムズ海峡の緊張や日韓関係悪化と、地政学リスクは7月の参院選時より明らかに増えている。となれば、外需だのみは通用しない。

大規模の景気対策を打たないと、来年の中盤から、つるべ落としの景気悪化になるかもしれない。にもかかわらず麻生財務相が「経済対策は不要」と言い切るのは不可解としか言いようがない。

今の臨時国会は、経産相と法相の二人が辞任する異常事態だ。その中で、補正予算を通さなければいけない。財務相ならその厳しさをわかっているはずだが、どうも先の読めない金庫番、という顔をしているのは愚かだ。

『週刊現代』2019年11月16日号より

【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

さて、国内景気に関しては、もう一つ不安要因もあります。11月20日に発表された10月分の訪日外客数は前年同月比-5.5%と、8月分と同様に昨年の実績を下回りました。

訪日客によるインバウンド消費金額は2018年に4.5兆円と、2012年(約1兆円)から3.5兆円増えました。個人消費全体が約300兆円ですから、その1%相当を超える消費需要が過去6年で現れました。

インバウンド消費の拡大に加えて、訪日客到来によるビジネス機会の広がりが促した設備投資需要などの波及効果を含めると、インバウンド消費は2013年以降の日本経済の成長を支える牽引役となっていました。その牽引役が、足元で勢いを失っているといえます。

実際に、足元ではインバウンド需要の停滞により、旅行、化粧品関連などの企業で業績悪化が目立っています。個別企業、そして観光需要に依存している地方などには、無視できない悪影響がみられています。

ただ、韓国からの訪日客の大幅な減少だけで日本経済全体が失速する可能性は低いと、私は思います。日韓関係修復の時期は予想できませんが、訪日客全体に占めるシェアが最も大きい中国だけではなく、アジア以外からの訪日客数も順調に伸びています。足元で訪日客は一時的に減っていますが、年間ベースで減少に転じる可能性は低いとみています。

平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。

日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。



なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。



少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。

インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。

インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。

11月14日に判明した7~9月実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率+0.2%と、ほぼゼロ成長でした。個人消費は前期比+0.4%と消費増税前の駆け込み消費があったにも関わらず、低い伸びにとどまりました。

個人消費がやや伸びた一方で、在庫投資が成長押し下げ要因になっていましたが、これは駆け込み消費によって積み上がっていた在庫が大きく減少したことを示しています。このため、10~12月には個人消費が落ち込み、GDP成長率は大幅なマイナス成長になる可能性が高いとみられます。

なお、前述した訪日客の8月以降の急減は、GDP統計上では輸出にカウントされますが、輸出全体を前期比-0.3%ポイント押し下げ、7~9月の経済成長に関して若干足を引っ張った格好になります。

インバウンド消費という牽引役が勢いを失う中で、消費増税による悪影響によって2020年前半まで日本経済の停滞が鮮明になり、東京五輪の年となる2020年度のGDP成長率はほぼゼロまで減速する可能性が大きいです。ゼロどころか、マイナス成長になる可能性すらあります。

最近、一部の政治家から10兆円規模の補正予算を求める声があがっていますが、消費増税による緊縮財政を覆すような財政政策を、麻生財務大臣の発言からもうかがえるように、現在の安倍政権が行う可能性はかなり低いことでしょう。

このため、2020年にかけて日本国内には成長を押し上げる要因はほぼ見当たらず、停滞局面に入った日本経済の底入れは、米中を中心とした海外経済の減速に歯止めがかかるタイミングが決定的に影響するでしょう。10月以降勢い良く上昇してきた日本株の2020年にかけての先行きも、海外の経済・株式市場次第の状況が続くことになりそうです。

このような状況を麻生財務相はわかっていないようです。補正予算は真水10兆円で与党と財務省の間で攻防中です。この決着がつくのは、今の臨時国会か、年明けの通常国会冒頭かは今のところ不明です。

年明けになれば、通常国会の召集日が1月下旬から1月上中旬になります。現状の国債がマイナス金利なら真水10兆円なんてチマチマしたことをいわずに、国債を金利がゼロになるまで発行しつづければ、103兆円分は刷れるはずと高橋洋一氏が試算しています。

これは、以前の記事にも掲載したことなのですが、国債を擦りまくり100兆円基金を創設して、今後の有効需要確保するという手があり、実際それを実行すれば、たとえ増税したとしても、令和年間はデフレにならなくてもすむ可能性があるのですが、麻生財務大臣には、期待できそうもありません。

【関連記事】

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2019年3月14日木曜日

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ―【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ

高橋洋一 日本の解き方

景気動向指数は3カ月連続の悪化となり、基調判断も下方修正された。中国経済減速の影響と解説されているが、国内要因はなかったのか。

 以前の本コラムで、内閣府の景気動向指数研究会(座長=吉川洋・立正大教授)が、2012年12月から続く景気拡大期間がいまなお続いていると判定していることについて、異論があると書いた。正直にいって、景気動向指数(一致指数)のデータを素直に見る限り、14年4月の消費増税の悪影響がその前後ではっきり出ており、そこに景気の「山」があり、16年6月あたりで「谷」がある。

 研究会座長は、消費増税しても景気への影響は軽微だという主旨の発言をしていた。それは結果として間違いだったが、その後の研究会の意見が左右されたようにも思われ、すっきりしない印象だとも書いている。

 景気動向指数(一致系列)は、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業、前年同月比)、商業販売額(卸売業、前年同月比)、営業利益(全産業)、有効求人倍率(除学卒)を採用し、これらから機械的に算出している。景気動向指数研究会のような「解釈」は疑問であるが、景気の動きを素直に客観的にみるにはいい指標だ。

 1月はマイナス2・7ポイント、昨年12月はマイナス1・3ポイント、11月はマイナス1・8ポイントと3カ月連続のマイナスになったので、基調判断は下方修正された。

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 一方、月例経済報告といい、内閣府が資料を作るが、関係閣僚会議に提出された後了承という経過を経て公表される「政府の見解」がある。

 2月の月例経済報告では、基調判断は「景気は、緩やかに回復している」としており、景気動向指数のものと異なっている。月例経済報告は、さまざまな経済指数を分析するとともに指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案した結果であり、機械的な算出ではないからだ。

 筆者は、機械的な算出の景気動向指数をより重視しているが、これまでの動きを見ると、マクロ経済政策(金融政策、財政政策)と外的要因(リーマン・ショックと東日本大震災)で転換点の「山」と「谷」はほぼ説明可能だ。

 中国経済という要因は確かにあるが、17年12月あたりが「山」で、それ以降下降している。これは、効果ラグを考慮すると16年9月のイールドカーブコントロール(長短金利操作)による金融引き締めの結果とも読める。それに最近の中国要因が加味されたとみるほうがいいだろう。これまでの、00年8月のゼロ金利解除、06年3月の量的緩和解除の後、半年~1年半くらいの後に景気の転換点を迎えているからだ。

 国内要因で景気が落ち目になったときの外的ショックは、下り坂で押されるのと同じで、大きく景気が落ち込む悪影響になるので要注意だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

世界経済の先行き不安が広がりつつあります。中国経済の減速は続いており、米中新冷戦が拍車をかけかねないです。英国のEU(欧州連合)離脱の破壊的衝撃も懸念されます。

日本経済は景気拡大局面を続けてきましたが、国際情勢の懸念もあって足元は弱含みです。こうしたなか、政府は今年10月、消費税率10%への引き上げを断行できるのでしょうか。

永田町には「安倍晋三首相は最終的に増税を回避するのではないか?」と推察する向きも多いです。

総額で初めて100兆円を上回る2019年度予算案の審議が4日、参院予算委員会で始まりました。 当然、消費税も議論になりました。

茂木敏充経済再生相

茂木敏充経済再生相は、野党議員から消費税増税を考え直すように迫られて、「16年後半以後の日本経済は、プラス成長で推移するなか、 財政再建をしっかりやりながら、(人材に投資する)『人づくり革命』などをするためにも消費税率の引き上げは不可欠だ」と語りました。

今年10月の増税は法律で決められている。このため、閣僚は増税を「既定路線」とした答弁を続けています。

ただ、世耕弘成経産相は、増税対策について問われて、「国際経済状況が非常に不透明であることを鑑みながら…」と前置きして、「税率の引き上げ以上に消費を喚起したい」と答弁しました。

世耕弘成経産相

消費増税などやっている場合でないことはあまりにも明らかです。にもかかわらず、絶対に増税すべきという人たちがいます。そういう人たちの思考回路は一体どうなっているのでしょうか。特に財務省とマスコミの思考回路はどうなっているのでしょう。

彼らが、政治家やマスコミの増税論を主導する理由は、表向きには、いわゆるエコノミストらが正当化する増税の必要性です。ここでは、その必要性に関しては、マクロ経済的に見てあまりにもバカバカしいので、詳細は掲載しません。しかし、なぜそのような"必要性"を持ち出してまで、増税をしたいのでしょうか。

こうした疑問に対して、元財務官僚の経験を元に、財務省の批判をしている冒頭の記事を書かれている経済学者・高橋洋一氏は、著書でこう語っています。

「財務省では、せいぜい向こう三年間か普通は一年間という短期的な視野でしか経済を考えない。財務官僚の頭を支配しているのは、目先の財政収支の均衡なのである」「財政収支の均衡をはかるために最も確実で、手っ取り早いのは増税である。責任問題から見ても、増税のほうが心理的に楽である」(高橋洋一著『消費税「増税」はいらない!』)

高橋洋一氏
つまり、財務省は「増税が財政再建につながらない」ことを知りながら国民を偽っているというより、本気で「財政再建するなら増税がいい」と信じている部分があるのです。

「最も確実で、手っ取り早いのは増税」「増税のほうが心理的に楽」という指摘も、興味深いです。「税率を上げると、税収が下がる」という理論も、当事者にしてみれば怖い話なのかもしれません。

「想い人を追いすぎると、想い人が離れていく」ことが、当人には分からない……ようなものかもしれません。「想い人を追わないなんて、それこそ、離れていきそうな気がして不安……」。そんな気分なのでしょうか。

財務省が増税したい動機については、他にも「増税することで、一部業界への税率を軽減する権限が増える」という"悪代官"路線もあります。とにかく、財務省としては権限を増すことは省益につながると考えているようです。

次に、マスコミの多くが表立って増税に反対しない動機について触れてみます。

マスコミ、特に経済記者には、財務省に決して嫌われてはいけない理由があります。それは、「経済の特ダネは財務省が握っている」ということです。

経済情報という面で、財務省に勝てる存在は日本にいません。財務省は、全国の家計や企業のお金のやり取りを把握し、税金を徴収しています。

つまり、全国の経済活動に関わる膨大な情報が、霞ヶ関に集まってくるのです。一方、巨大マスコミである日経新聞がどんなに頑張っても、GDP(国内総生産)ひとつ計算できません。

特ダネを狙うことで出世競争をする新聞記者にとって、最強の情報源である財務官僚を、敵に回すわけにいかないのです。むしろ、心を開いてもらい、官僚の仕事に後押しになるような記事を書くくらい、"ずぶずぶ"の関係にならなければ、大事な情報は得られないのです。

これについては、元日経新聞のエリート記者であり今は産経新聞で増税の大批判をしている田村秀男氏は、自身が書いた記事について、財務官僚から「それでいいんでしょうかねえ、田村さん……」と何度も言われたり、幹部が財務省OBに「おタクの田村はひどいな」とささやかれたという話を告白しています(田村秀男著『日経新聞の真実』)。

田村秀男氏

ただし、財務省は客観的な経済統計データを発表する義務があります。そのデータを分析すれば、財務省が何を言おうと、あるいは何も教えてもらえなくても、日本の実体経済を理解することができますが、現在の大手新聞の経済記者の能力があまりにも低く、それがほとんどできないというのが実体です。

私の実感では、一部の例外を除いておそらくほとんどの大手経済記者の頭の中には、高校の「経済社会」で学ぶ経済知識すらないのではないかと思います。

信じがたいことですが、現在まともにデータと理論にもとづき分析できる大手新聞の経済記者は田村秀男氏を含めて数人しかいないでしょう。そのため、現在大手新聞の経済欄はほとんどが、財務省の発表もしくは増税派の識者の発言などを取材したものになっています。

また、役人が報道発表を「ハトの豆まき」と呼んでいたことがあったそうです。私も幼いころは、鳩の前に豆を並べて、歩かせたいルートを歩かせて遊んだこともありましたが、官僚は情報を与える対価として、メディアを思うように動かすこともできるわけです。

現在本当に消費税増税をしてしまえば、日本発の不況が世界を悩ますことにもなりかねません。このような消費税増税は絶対反対すべきです。

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2019年3月9日土曜日

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」―【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」

このまま増税すると大変なことになる。安倍総理の決断は?

内閣府7日、1月の景気動向指数(速報値)を発表した。景気の現状を示す一致指数は前月比2・7ポイント低下の97・9で、3カ月連続の悪化となった。世界経済の先行き不安も広がるなか、永田町では、今年10月の消費税率10%への引き上げへの慎重論が目立ってきた。専門家も「楽観視してはいけない。4月に増税回避の判断をしないと間に合わない」と力説した。 

 政府の基調判断は「足踏みを示している」から、数カ月前に景気後退入りした可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正した。同様の表現は14年11月以来、4年2カ月ぶりという。

 やはり、中国経済の減速に伴う輸出不振の影響が大きいという。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスは今春以降、国内の主要6工場で2カ月間、生産を停止する。主な原因は車載半導体の中国向け需要の減少で、在庫調整の狙いがある。

 政府は、景気拡大期が1月で「戦後最長の6年2カ月に達した」との暫定的な見解を示してきたが、疑問符が付く結果となった。

 安倍晋三首相は10月の消費税増税について、「2008年のリーマン・ショックのようなことがない限り」との条件付きで実施する考えを示している。中国だけでなく、欧州経済の先行きにも不安があるなか、政府はどう判断するのか。

 「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「景気の現状を楽観視して、消費税を増税するシナリオは間違いだ。世界経済の不透明感が増しており、増税すれば日本経済の悪化が顕在化していくことになるだろう。引き上げ率が2%と前回より低く、さまざまな増税対策も取られているが、前回と比べて消費が盛り上がっていない。消費税増税の可能性は半々だろうが、自民党内にも慎重な判断を求める声がある。4月に決断をしなければ間に合わない。夏の参院選で(増税凍結の)信を問うことが手っ取り早いだろう」と語っている。

【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

金融緩和を実施している現在、増税をするということは、車の運転でいえば、アクセルを踏みながら(金融緩和しながら)、ブレーキを踏む(緊縮財政の一手法である増税)を実行するようなもので、非常に矛盾しています。

本来ならば、金融緩和と積極財政を実施し、景気が加熱しインフレ率が上昇した後に、金融引き締めをしたり、緊縮財政を実行して、景気を沈静化させるというのが王道です。

(金融緩和政策+積極財政)もしくは、(金融引き締め+緊縮財政)が、まともなマクロ経済政策であり、金融緩和しつつ緊縮財政であるとか、金融引き締めしつつ積極財政するなどは、邪道以外の何ものでもありません。

そうして、現在はデフレから完璧に脱却していないのですから、(金融緩和+積極財政)をすべきです。積極財政といえば、公共工事、減税、給付金などいくつか方法があります。

古いタイプの政治家は経済対策=公共工事と考える政治家もいるようですが、オリンピックにあわせて公共工事が増えている現状では、公共工事を増やしたとしても、公共工事の供給制約になるだけで、まともな経済対策にならないのは明らかです。

であれば、減税、給付金等の経済対策を実施すべきです。マクロ経済対策の観点からは、増税などとんでもないと言わざるを得ません。

ロンドンオリンピックのビーチバレーの試合

日本では、東京オリンピックの直前に10%の消費税増税を予定していますが、これと似たようなことは以前英国で実施されており見事に失敗しています。

英国でもオリンピック直前に、アクセルを吹かしながらブレーキを同時に踏み込こんだことがありましたが、当然ながら大失敗しました。

英国は2008年9月のリーマン・ショック後、中央銀行であるイングランド銀行が米国を上回る速度でお札を大量に刷り続け、量的緩和政策によって、ポンド安に成功。2010年秋までに景気が回復基調にありました。

ところが、個人の消費意欲を示す「消費者信頼度指数」は、2010年後半から急速に悪化し、皮肉にも五輪聖火リレーが始まるころから再び下落します。

ロンドン五輪の経済効果が出なかった理由は、キャメロン政権が「緊縮財政路線」を決め、「付加価値税率(日本の消費税にあたる)」を17.5%から20%へ引き上げたからです。

2010年5月に発足したキャメロン保守党・自由民主党連立政権は、さっそく付加価値税率17.5%を11年1月から20%に引き上げる緊縮財政政策を決定しました。他にも銀行税を導入するほか、株式などの売却利益税の引き上げ、子供手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。他方で法人税率を引き下げ、所得税控除額も12万円程度引き上げ、成長にも多少配慮しました。

こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1.1%まで圧縮する計画でしたが、結果は無残でした。

これは以下のグラフをご覧いたたげれば、ご理解いただけると思います。付加価値税収は11年から激減し、2012年5月までの1年間でも前年同期比でマイナス8.4%減です。個人消費動向を示す消費者信頼指数は09年9月のリーマン・ショック時よりもっと冷え込んでいました。景気の悪化を受けて、所得税収、法人税収とも前年同期比マイナスに落ち込みました。だ政府債務残高のGDP比は11年末で85.7%(10年末79.6%)と増え続けました。


窮余の一策が、中央銀行であるイングランド銀行(BOE)による継続的かつ大量の紙幣の増刷(量的緩和)政策でした。BOEといえば、世界で初めて金(きん)の裏付けのない紙幣を発行し、フランスなどとの戦争費用を政府に提供した中央銀行であり、その大胆さは世界でもずぬけています。

BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込んでいました。BOEはリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切ったのですが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。

インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっていられず、12年5月にはリーマン前の3.7倍にまでマネタリーベース(MB)を増やしました。幸い、インフレ率は需要減退とともに同年5月には2.8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。

英国のインフレ率

英国のお札大量発行は増税に伴う経済災害を最小限に食い止める大実験なのですが、財政政策面ではブレーキをかけたまま、金融政策でアクセルを踏むわけで、効果ははかばかしくありませんでした。

量的緩和政策を渋る日銀が、今後仮に英国のように政策転換したとしても、脱デフレや景気てこ入れ効果は限られるかもしれません。

自動車など主要企業は国内生産に見切りをつけることになるでしょう。若者の雇用機会は失われ、慢性デフレで細った勤労者の家計はジリ貧になります。税収は減り、財政悪化に加速がかかることになります。

英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。

その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。

それについては、昨年のIMFのレポートでも裏付けられています。このレポートの内容を掲載した記事を以下の【関連記事】の一番最初に掲載しておきます。

これを知れば、増税など絶対にすべきでないことは明らかです。

【関連記事】

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2012年11月15日木曜日

マック、崩れた「勝利の方程式」:日経ビジネスオンライン―【私の論評】民間のデフレ対策もそろそろ限界、潔さではどうにもならない状況に!!

マック、崩れた「勝利の方程式」:日経ビジネスオンライン:


 2012年1〜9月期の既存店売上高が2.2%減となった日本マクドナルド。巧みな価格・商品戦略で外食の勝ち組に君臨していたマックに何が起きたのか。原田泳幸・会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)が真相を語った。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121112/239306/

【私の論評】民間のデフレ対策もそろそろ限界、潔さではどうにもならない状況に!!


皆さん、上の原田会長の語ったことをどう思われるでしょうか。私は、マクドナルドは、デフレになってからも努力をして、景気の悪さなどものともせず、ずっと好業績を維持してきました。素晴らしいことだと思います。



そうして、マクドナルドが、不況であっても成果を上げられたのには、それなりの背景があると思います。その背景とは、デフレとはいっても、強烈な円高であったため、世界中から食材を調達する日本マクドナルドに有利に働いてきたと思います。それから、デフレになる前から、店舗数もかなりあり、規模の利益を享受できる体制にあったことも幸いしていたと思います。

無論、これらが背景にあたことに付け加え、原田会長および、役員や、マクドナルドの社員たちの努力、創意工夫があったからこそ、ずっと好業績をあげられてきたのだと思います。詳細は、上の記事をごらんいただくものとして、以下に、原田会長自身の言葉をコピペさせていただきます。
10月からは店舗での商品提供のスピードを上げるために、レジカウンターのメニューをなくすという新たな策を打った。だが、この取り組みがインターネット上で批判的に取り上げられる騒ぎとなった。
レジカウンターのメニューに関しては、私も以前から、気にはなっていました。私は、大抵は、レジカウンターの上に掲示してあるメニューを見てから、注文するので、すぐ注文するのですが、確かに、レジカウンターにメニューが置いてあると、そのメニューを見てその場で考えるというお客さんも多く、それによって、お客さんの滞留がおこるということが、ままあったことは事実です。

そもそも、ファスト・フードで食事をするということは、高級レストランで食事をすることとは異なり、豊富なメニューからいろいろ選ぶとか、自分の拘りを満たすなどというものではなく、手軽に、素早く食欲を満たしたいというのが第一義であるので、こういうお客さんが、自分の前にいて、あれこれ時間をかけているのを見るとイライラしたこともあります。

確かに、外国のマクドナルドでは、カウンターにメニューはない。
私だと、ハンバーガーは、ハンバーガーだという考えですから、それなりのもので、美味しかったら、見つけものくらいの感覚で注文します。ファストフードの元来のありかたは、そういうことだと思います。だから、カウンター・メニューなどあっても、なくても良いです。混んだときに、ラミネート加工をしたメニューが見られるならそれでいいです。それに、諸外国のマクドナルドでは、カウンターにメニューを置いてあるところは、ありません。日本のマクドナルドだけが置いていたということです。

また、これからのこととして、新商品の絞込みをすることを語っています。
今後は新商品を絞り込み、マーケティングの手法も見直す。さらにビッグマックなど定番の既存商品の販促に力を入れることで巻き返しを図る。
これも、当然といえば、当然と思います。ファスト・フードでは、あまり新商品に力を入れることはないと思います。そもそも、ハンバーガーは、ハンバーガーですから、飽きない程度に時々新商品が出るとか、新商品が予想に反してかなり売れるというのなら、しばらく定番にするなどで良いと思います。そうして、できうるなら、既存メニューをさらに美味しくするなどのことも積極的にやっていただきたいものです。それに、諸外国やアメリカ国内でも、日本のマックのように新商品を頻繁に出していところはありません。

マックの新商品先行試食イベントのポスター
そうして、原田会長としては、市場に関して自分の見立て違いであると反省しておらるようですが、私は、現状では、それだけではなく、日銀のマクロ金融政策や、政府の財政政策に関しても、そろそろ、苦言を呈しても良い時期にさしかかっているのではないかと思います。

これは、経営者としては、格好が悪いです。景気が悪くても、胸を張って、「景気が悪くても、こんなに業績をあげています。こんなに頑張っています」という経営者のほうが、かなり格好は良いです。そうして、景気が少しくらい落ち込んだからといって、すぐに、景気のせいにする経営者など、格好も悪いして、自らの能力のなさを披瀝しているようなものでした。そうして、これは、10年くらい前までは、確かにしっかりあてはまったことだと思います。

しかし、現状では、かなり状況が異なってきています。すでに、デフレ傾向になってから、20年、統計上でも、はっきりとデフレとなってからも、10年以上継続しています。10年以上もデフレが続いた国など、歴史上はじめてではないかと思います。無論、日本では、まともな経済統計ができて以来はじめてのことです。



ちなみに、国際通貨基金(IMF)のデータベースをもとに、1980年以降に消費者物価が前年と比べて2年以上続けて下落した国を「デフレ経験国」とすると、ブルキナファソやマリ、中央アフリカなど、ほとんどが開発途上国です。先進国で、日本のようにデフレが続いた国はありません。

リーマン・ショック後の消費者物価をみると、2009年は米国やスイス、台湾、ポルトガルなどでマイナスでしたが、10年にはアイルランドと日本だけが「デフレ経験国」になりました。そのアイルランドも11年には物価が上がり、デフレから抜け出しています。最早、デフレは、主要な先進国では、日本特有の現象になりました。デフレとは、このブログにも過去に何度か掲載してきたように、経済の癌とも呼ばれるような、経済の病です。日本では、このようなデフレを過去20年にもわたって、放置してきたということです。

デフレを前提として、経済や、金融、そうして、企業活動などを考えるなどということは、根本的な誤りです。デフレ下では、企業がいくら努力しても、業績があげられない面があります。

シャープや、ソニーそうして、半導体のエルピーダなど、これだけの円高で、しかも、国内がこれだけ酷いデフレ状況では、最初から足枷、手枷をされながら、事業を営んでいるのと同じであり、これを異常なウォン安である韓国の凡庸なサムスンなどの企業と、単純比較するなど完璧な誤りです。

そうして、円高メリットや、国内で規模の利益を享受できる体制が整っていた、マクドナルドですら、とうとうこのデフレには、なかなか対応しにくくなってきたというのが、実情だと思います。ちなみに、マクドナルドでは、10月から、カウンターメニューを廃止したそうですが、その前の9月から、景気動向指数が、前月割れの状況にあり、景気後退局面に入っています。以下にそのグラフを掲載しておきます。マクドナルの不振の要因は、カウンターメニューがどうのこうの、新商品がどうのこうのと言う前に、こうした景気後退局面によるもののほうが、大きいのではないかと思います。


普通、大規模な自然災害があったような国では、自然災害によって、いっとき景気が落ち込みますが、復興で、国の公共工事はあるは、中央銀行は、復興のため、金融は緩和気味にするので、震災の次の年に景気後退局面がくるなどということはあり得ません。全く異常です。そうして、上の景気動向指数のグラフでは、さらに、12月に景気が落ち込むことを示しています。このままだと、マクドナルドも12月には、かなり業績を落とすことが予想できます。これは、異常中の異常です。日本のマスコミがこの異常状況を異常であると報道しないことは、ほんとうにどこか、とち狂っているのか、何かの陰謀ではないかとすら思えてくるほどです。本当に陰包かもしれません。

しかし、日本の場合は、政府は古今東西全く聴いたことのない(どこの国でも、建設国債などで賄うのが、当たり前のど真ん中)、復興税などという復興のための税金を導入しましたし、日銀は、先日も掲載したとおり、金融引締め路線を堅持しています。こんな異常な状況では、マクドナルドも、そろそろ限界が来て当たり前だと思います。

先日、このブロでは、上場企業の半分は、業績をあげていることを掲載しました。だから、日本の将来に悲観する必要はないという趣旨のことを掲載しました。しかし、半分の企業は、新たな事業をしているのであって、新規需要が見込めるため、成長しているという側面があります。これらの企業が将来を担っていくという側面は確かにあります。

しかし、だからといって、マクドナルドのような既存の事業も、工夫や努力次第で少しずつでも、伸びていける余地がないようでは、日本の先行きは、思いやられます。そうして、これは、何も企業の責任だけではなく、日銀の馬鹿な金融政策、政府の馬鹿な財政政策によるものが大きいです。なのに、マスコミは、民間企業の窮状をみて、上の記事のように、単なる企業経営者の見立て違いのようにしか報道しません。まったく、異常です。もう、普通の国のまともなマスコミの役割は、全く果たしていないと言っても過言ではないです。



この状況は、本当に異常です。多くの人々は、長く続くデフレ、異常になってから久しいマスコミ報道に慣れてしまい、なんとも思わなくなってしまっているのかもしれません。しかし、そんなことは、断じてありません。諸外国と比較すれば、日本の状況は、かなり異常です。私は、そろそろ、マクドナルドの原田会長はもとより、既存産業の経営者も、いわゆる格好良さ、潔さをかなぐり捨てて、政府の財政政策や、日銀の金融政策に苦言を呈しても良い時期に来ているのではないかと思います。主だった、日本の有名企業の経営者は、日銀や政府の政策のまずさを追求すべきです。こんなやり方は、民間営利企業などでは、許されないことであり、こんなことをつ告げているような企業は、すでに、市場から見放され、抹殺されているはずです。企業経営者も含めて、多くの人々による、まともな、世論形成をしていかなければ、失われた20年が、30年になることも十分考えられます。

そうして、自民党の安倍総裁は、現状では、一番こうした状況を理解していると思います。自民党の総裁選において、そのことは、十分理解できました。そうして、明日は、野田首相による、国会解散が予定されており、選挙も間近です。このように、国政に関しては、20年も放置された、デフレをまず克服する目処をつけることが、最優先課題です。しかし、この課題を克服することはたやすいことではありません。なぜなら、そこには、財務省や、日銀という官僚組織の高い険しい壁が立ちはだかっていて、結局古今東西にに稀にみる20年間もの間デフレ状況を放置してきたからです。もう、これ以上日本の既存企業が破壊され、日本人の雇用が奪われてく事態を座視するわけにはいきません。

デフレを克服するということは、この険しい壁を打ち砕くということです。私たちは、まずは、この経済の癌といわれる病を直し、官僚組織の最も険しい壁を打ち破るデフレ克服を第一義にあげる候補者に票を投じるべきと思います。そう思うのは、私だけでしょうか、皆さんは、どう思われますか?



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2012年8月13日月曜日

【五輪閉会式】景気後退、将来への懸念は消えず 政争の予感も―【私の論評】イギリスの今日の姿は、明日の日本の姿である!!

【五輪閉会式】景気後退、将来への懸念は消えず 政争の予感も:


【ロンドン=内藤泰朗】テロや警備員不足、ストなど多くの不安を抱えながら開幕したロンドン五輪は12日、無事その幕を閉じた。


英中央銀行のイングランド銀行は先週、英国経済が長期的なゼロ成長に突入したとの展望を発表した。景気後退期にどこまで変革をもたらすことができるのか、将来への懸念が消えたわけではない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しかも五輪の成功は、皮肉なことに開催地ロンドン市長で、キャメロン氏と同じ保守党の異色政治家として知られるボリス・ジョンソン氏の政治的立場を強化し、両者による政争を予感させている。

エリザベス女王を中心とした英国の伝統と、発展を求める若い世代の変革に向けた挑戦の物語は、第二章に入った。

レリン・フランコ。美女の国・パラグアイの女子槍投げ代表選手
この記事の詳細は、こちらから!!



【私の論評】イギリスの今日の姿は、明日の日本の姿である!!


大失敗した、英国の増税策の概要をみよう。2010年5月に発足したキャメロン保守党・自由民主党連立政権はさっそく付加価値税率17・5%を11年1月から20%に引き上げる緊縮財政政策を決定しました。他にも銀行税を導入するほか、株式などの売却利益税の引き上げ、子供手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切りました。

他方で法人税率を引き下げ、経済成長にも一応配慮しましたた。こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1%台まで圧縮する計画でしたが、このまま低成長と高失業が続けば達成は全く困難な情勢です。



窮余の一策が、中央銀行であるイングランド銀行(BOE)による継続的かつ大量の紙幣の増刷(量的緩和)政策に踏み切りました。BOEといえば、世界で初めて金(きん)の裏付けのない紙幣を発行した中央銀行だ。

上のグラフを良く見てほしいです。BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込みました。マネタリーベース(MB)とは中央銀行が発行した資金の残高のことです。BOEは08年9月の「リーマン・ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切りましたが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。


インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっておられず、今年5月にはリーマン前の3・7倍までMBを増やしました。そうして、この事実は、このブログでも以前紹介したように、反リフレ派がいう、「不況だかといって大量に増刷すれば、ハイパーインフレになる」というおかしげな理論を裏付ける格好のケーススタディーとなっていました。

幸いというか、全く当たり前のことですが、インフレ率は需要減退とともにこの5月には2・8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。

しかもポンド札を大量に刷って市場に供給するので、ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。それでも、イギリス経済は、未だ不況のままで、先日もこのブログで述べたように、EUの不況もあり、結局ロンドンは地元観光客も、EUの観光客も例年に比較しても少なく、閑古鳥が鳴いていたという状況で、経済波及効果はほとんどありませんでした。

ここで話を日本に話をもどすと、参院で消費増税法案が採決され、電力料金引き上げや来年からの東日本大震災復興増税などに加え、家計に負担がのしかかりますが、さっそく懸念されるのはデフレ不況のさらなる深刻化です。

このイギリスの状況をみれば、消費税増税など狂気の沙汰としか思えません。上で、見たように、わずか1年もしないうちに、経済が悪化して、イングランド銀行が、増刷せざるを得なくなっています。こんな事実をみても、増税一本で進む、民主党、自民党、公明党など、異常カルト集団にしか見えないのは、私だけでしょうか。それに、財務省も、日銀も、増税は経済に良い効果をもたらすなどと、とんでもないことを言っています。一体、日本の中枢はどうなってしまったのでしょうか?

リーマンショックは、2008年でしたが、その後増税に踏み切り緊縮財政を取ったイギリスは猛烈な不況に陥りました。しかし、メディアを含め政府、財務省、日銀、はこのことは発表しません。


現在、消費税増税法案が、参院を通過したばかりですが、このまま増税してしまえば、日本もイギリスと同じようになることでしよう。なんでこんな袋小路にわざわざはまらなければならないのでしょう。

イングランド銀行は、増税後に大増刷をやっていました。これは、順番が逆です。増税前に、大増刷をすべきでした。そうしていれば、大増刷により、インフ気味となり、景気が加熱します。そうなったときに、増税すれば、ベストのタイミングでした。そうすれば、景気の加熱も冷ますこともでき、税収も増え、財政再建もできたことでしょう。

順番を間違えれば、日本もイギリスと全く同じことになります。まずは、日銀あたりがデフレ対策として、大増刷を行い、政府も財政支出を増やし、インフレ傾向にして、インフレが加熱した後に、増税すべきです。



ものごとには、順番と、集中すべきことがあります。それを間違えれば、とんでもないことになります。その事例は、日本国内でも、このブログでも掲載したように、昭和恐慌のとき、国外では、上のイギリスの例が典型的です。そのような、例が世界にはゴマンとあるにもかかわらず、今や、マスコミなど、もうすでに、増税は規定路線であるかのような報道ぶりです。

消費税増税法案は、参院を通過したとはいえ、まだ、本決まりではありません。景気条項は、まだ生きており、再来年の4月に増税するためには、来年の秋にそのときに政権を担っている政府が決定する必要があります。

09年7月の衆院解散
来年の秋といえば、まだ、1年あります。その間に選挙があれば、有権者として、増税しないと公約する政党に投票すべきです。



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