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2017年12月7日木曜日

韓国、利上げは実態見誤った? 半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐ思惑も―【私の論評】韓国政府は戦時・平時体制の違いを鮮明にして経済運営せよ(゚д゚)!

韓国、利上げは実態見誤った? 半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐ思惑も

韓国銀行
 韓国銀行は6年5カ月ぶりの利上げを決めた。家計の負債が急増する副作用が出ているためとの解説もあるが、どのような背景や影響があるのか。そして朝鮮半島有事が起きた場合、韓国経済はどうなるのだろうか。

 韓国もインフレ目標政策を採用しており、2016~18年の目標は2%である。10月のインフレ率は、全品目の消費者物価対前年同月比で1・8%、価格変動の激しい農産物と石油を除いた指数で1・6%だった。そこで11月30日の金融政策決定会合で政策金利を0・25ポイント引き上げ。1・5%とした。

 全品目のインフレ率の推移をみると、7月が2・2%、8月が2・6%、9月が2・1%とインフレ目標を上回っていた。しかし、農産物と石油を除いたものでは、それぞれ1・5%、1・4%、1・4%で、農産物と石油の変動によって全品目の指数が上振れしていたことがわかる。はっきりいって、インフレ目標の運営として、利上げするような状況ではなかった。

 それを裏付けるかのように、12月に入って公表された11月のインフレ率は、全品目のインフレ率で1・3%、農産物と石油を除いたもので1・4%だった。

 これは、インフレ率の基調を見誤った金融政策の変更ではないかと筆者は思っている。

 思い返せば、日本でも同じことがあった。06年3月の量的緩和解除である。その当時に公表されたインフレ率が0・5%程度であったが、実はこれは物価統計の上方バイアス(実際よりも高めになること)に基づくものであった。

 当時、総務省にいた筆者は竹中平蔵総務相を通じて、上方バイアスによって見かけ上はプラスだが、実際はマイナスの可能性もあることを指摘した。ところが、何が何でも金融引き締めに転じたい日銀は、量的緩和の解除に方向転換した。

 当時、政府・与党内でこの方向転換を誤りだというのは、竹中氏と中川秀直政調会長しかいなかった。政府内では与謝野馨経済財政担当相ら大勢は金融引き締め容認派だったので、日銀に対して政府から議決延期請求権の行使もできなかった。

 その結果、筆者らの予想通りに、半年後から景気が悪くなった。しかも、上方バイアスが改訂された後、当時のインフレ率もマイナスだったことが判明した。

 こうした時には、経済指標ではなく、別の思惑があるものだ。当時の日銀は何が何でも量的緩和を脱するという実績が欲しかったのだろう。

 今回の韓国銀行の金融引き締めにもその匂いを感じる。経済データを虚心坦懐(たんかい)にみれば、金融引き締めのタイミングではない。しかし、朝鮮半島の緊張が高まる中で、もし有事になれば、韓国からの資本移動が怖い。これは、1997年のアジア通貨危機で韓国が国際通貨基金(IMF)管理になったことを彷彿(ほうふつ)させる。

 特に、今の日韓関係を考えると、当時のような日本からの支援融資も期待できない。となると、今の時期に利上げして韓国からの資本移動を未然に防ぎたい欲求にかられても不思議ではないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】韓国政府は戦時・平時体制の違いを鮮明にして経済運営せよ(゚д゚)!

今の韓国の状況では、利上げをするような状況ではないことははっかりしています。本来実行すべきは量的金融緩和です。

韓国銀行の政策金利の推移
しかし、韓国では元々、思い切った金融緩和をやりにくい経済事情があります。韓国の対外債務は短期のものが多く、大胆な金融緩和で韓国の通貨ウォンが安くなると、外資が韓国から資金を引き揚げやすくなるためです。

ちなみに、日本は対外資産が対外債務よりかなり大きく、国内総生産(GDP)比でみて6割程度の純債権国ですが、韓国は5%程度の純債権国にすぎないのです。

韓国は過去においてもインフレ目標を実施していましたが、2013年から15年までのインフレ目標は2・5~3・5%でした。

ところが、12年6月以降、この目標はまったく達成されていません。15年2月のインフレ率は0・5%でした。結局期間中に一度も目標達成しませんでした。

韓国CPI(物価指数)の推移
しかしこの間、インフレ目標を達成できないような大きな要因は見当たりません。ということは、金融緩和が不十分だった公算が大きいです。利下げはしていますが、そもそも為替が安くならないように、つまり経済効果があまり出ない範囲での、言い訳程度の利下げしかしていないのです。

本来であれば、ゼロ金利政策にした後で、日米欧のように量的緩和しないと韓国経済の浮上はあり得なかったのです。米国の量的緩和はようやく出口に向かいましたが、日欧はいまだに真っ最中です。

このため、この時点で韓国が多少利下げしても、対ユーロも対円でも韓国ウォン安になっていませんでした。韓国ウォンは、ユーロや円に対して「刷り負けている」状態だったのです。その結果、輸出がさっぱり伸びず、韓国経済は低迷しています。

韓国経済は輸出が伸びないと苦しいです。なぜなら、韓国経済は輸出依存度が高いからです。輸出額のGDP比で見ると、最近時点では45%程度になっており、世界平均の25%、日本の15%程度と比べてかなり高いです。

それでは、数年前までは、どうして韓国経済がうまく回っていたのでしようか。それは、アベノミクス以前、日銀がデフレ志向で、日本が「刷り負けていた」からです。

日本と韓国は輸出構造が似ていて、家電、自動車が輸出の主力商品です。商品の内容、性能も似ているので、最終的には価格競争力がものをいいます。日本が金融緩和せず円高傾向だったので、韓国ウォンは相対的に円に比べて安く、その分、韓国の価格競争力に寄与しました。その結果、数年前までは韓国が国際市場において有利だったのです。

最近の円安で、日本の自動車・家電業界は復活していが、その一方、韓国の自動車・家電は不振に陥っています。金融政策をうまくやるかどうかで、天国と地獄の差が出てしまいます。もっとも、単に国内をデフレにしないように、うまく金融政策を行うだけであるので、通貨安競争でないことはいうまでもないです。

韓国は、本来なら遅くとも日本が金融緩和に転じた2013年くらいから、本格的な量的緩和を実施し、日本のように消費税をあげるような余計な馬鹿真似はせずに、財政政策では積極財政をとっていれば、今ごろかなり楽な経済運営ができたでしょう。

その状況下において、現在利上げをするというのなら、半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐという思惑も達成できたかもしれません。

しかし、現状のまま利上げをすれば、さらにインフレ目標達成から遠のくことは明白です。

このままだと、さらに雇用は悪化して、若者が「ヘル朝鮮」と呼ぶような状況から脱することはできず、さらにとんでもないことになるでしょう。

「ヘル朝鮮」という言葉についてインタビューを受ける韓国の若者
朝鮮半島有事になったとしても、北が韓国領内に深く攻め入り、しばらくの間韓国内にとどまるような最悪の事態になりそうなときには、利上げをしていようが、何をしていようが、韓国内から資本流出することは否めません。

このようなときには、通常の経済ではなく、それこそ戦時体制と呼ばれるような体制にせざるを得ません。

戦時体制とは、近現代の戦争において、国家が戦争遂行を最優先の目標として、その達成のために各種の政策を行うことをいいます。

戦時体制は、多くの人々には悪いイメージばかりがあると思いますが、そればかりではありません。国家総力戦に勝つためには、戦時体制によって、国家のあらゆる物的・人的資源を最大限に動員し、活用する必要があるので、徴兵され戦地に送られた男性に代わり、女性がその穴埋めとして、労働現場で働くことになります。

第二次世界大戦中軍需工場に徴用された女性
それにより、性的役割分業という社会常識の変更と偏見の是正と、女性の技能習得と社会進出が進み、第二次世界大戦後の女性の地位の向上につながったという面があります。

その他、とにかく総力戦で敵に勝つために、時の政府により様々な統制や改革も可能になります。もし北の危機が現実のものとなり、韓国が多大な犠牲をはらい北との対決の最前線になった場合、韓国政府が戦時体制をとり様々な統制とともに、改革を推進することもできます。

たとえば、韓国内にある外国の資産を一時凍結したり、戦争遂行のために必要な物資を調達するために、韓国内にある非合理な商慣行などを廃したり、それこそ財閥を解体したりすることもできるかもしれません。それに戦時体制移行とともに、現状ではあまりに多すぎるGDPに占める輸出の割合を減らすということも可能になるかもしれません。平時にはできなかった、韓国の構造改革を戦争遂行、戦争から国民を守ることを理由に強力に推進するのです。

このようなことをすれば、韓国内外から様々な批判の声があがることも考えられますが、韓国が多大な犠牲を払って、北と戦争をしなけれぱならないことを考えれば、多くのことが許されるに違いありません。

このようなことも視野に入れれば、半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐために現状のように物価目標も達成できないうちに、利上げするという考えにはならないはずです。

韓国としては、今の時期に利上げなどはやめ、雇用改善、物価目標達成のために量的金融緩和を実施し、同時に積極財政を実施し、韓国経済を少しでも良くしておき、半島有事勃発時には、すみやかに戦時体制に入れるように今から準備しておくべきでしょう。

多くの人は、日本は大東亜戦争後に、爆撃などで日本全土が焦土になり、日本は戦後ゼロからスタートしたなどという幻想を抱いていますが、それは事実ではありません。実際には、地方には農業や工業の生産拠点が残っており、終戦直後の日本には戦争突入直前と比較して、7割の国富が温存されていました。

これは、確かに多くの人名が失われたり、爆撃により都市部が焼け野が原になったなどの悲惨なことはあったにせよ、経済的に見れば他のアジア諸国と比較すると、かなり良い条件からのスタートということで、日本が戦後急速に発展したのは当然といえば、当然です。

こういうと、多くの人は、「いや、終戦直後は多くの人が餓死した」などと主張するかもしれませんが、それは、終戦直後に旧日本軍などが大量の物資を隠匿したからであり、これがなければ、終戦直後の日本は餓死者を出すこともなく順調にスタートできたはずです。その後進駐軍がこれらの隠匿物資を発見したため、そこからは比較的順調にスタートできました。

終戦前の日本では、本土決戦に備えて、陸軍も海軍等は大量に備蓄をしました。そのために、日本国内から物資が消えました。そうして、この隠匿物資を戦後に不正入手して、自分のものとして金持ちになった悪人が大勢いました。このようなことがなければ、終戦前後の物資不足もかなり緩和されていたはずです。


上の写真は、終戦直後の日本で米の欠配は続き、夏の暑いさなか、栄養失調状態で、ただ寝ているだけの母子。昭和21年度の稲作は、戦前の平年作の半分余という不出来で、日本の戦後は飢えとの闘いから始まりました。

主食の欠配・遅配が続いたが、ヤミ市場では牛乳もバターも砂糖も手に入りました。「1000万人餓死説」の流れる中、生きてゆくために、庶民はその糧を、買い出しとヤミ市に頼る「タケノコ生活」を余儀なくされました。

韓国政府も、たとえ半島有事が勃発したとしても、韓国内になるべく多くの国富を温存しておきそれを隠匿することをしなけれぱ、戦後は余裕を持ってスタートすることができるはずです。

戦時体制と、平時体制を区別して考え、しっかり準備しておくべきです。どのような状況になった場合、戦時体制に入るのか、また戦時体制から平時体制に戻るにはどのような時なのかをあらかじめ考えておくべきです。そうして、これには安全保障の面だけではなく、経済的な面も考慮するのは当然のことです。

両者を曖昧に考えるからこそ、現在利上げするなどという経済的にどうみても、悪手としか思われないような手を打ってしまうのです。

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2016年5月26日木曜日

サミットとオバマ大統領の広島訪問 「中韓との違い」演出する好機―【私の論評】「霊性の支配する日本」を象徴する伊勢志摩でのサミットの意義は大きい!

サミットとオバマ大統領の広島訪問 「中韓との違い」演出する好機

伊勢志摩サミットが、きょう(2016年5月26日)から開幕した。サミットでの世界のトップ間の議論ももちろん重要だが、その前後に日米首脳が会うのもポイントである。米大統領選はトランプ対ヒラリーになりそうであるが、不透明感が充ち満ちている。その前に、日本としても日米関係をできるだけ確固たるものにしておく必要があるのだろう。

ところが、その直前に沖縄の元米兵による遺体遺棄事件が起こった。これは最悪のタイミングである。この機に、沖縄の翁長知事は「オバマに会わせろ」と、安倍首相に要求してきた。もちろん、その要求は筋違いであるが、安倍首相はオバマ大統領との25日夜の会談で、米に「強く抗議」といった。外交専門家の間には、個別事件で異例の言及という見方もあるが、それだけ今の日米関係が良好という証だ。会談の詳細な中身はわからないが、沖縄の在日米軍は出て行けという政治主張が増長しかねないので、政治的に「強く抗議」と言わせてもらうと安倍首相はオバマ大統領の了解もとっているだろう。

広島の原爆ドーム
 長年の日本外交の勝利

さらに、沖縄での米軍犯罪率は、沖縄県民より低く、来日中国人や来日韓国人に比べるともっと低いこと、沖縄の在日米軍に出て行けということは日本の安全保障リスクを高めることも日本政府は承知していることを伝えているだろう。ひょっとしたら、トランプが、日本だけではなく韓国などからも米軍を撤退させるという主張は、どの程度実現するのかを、安倍首相はオバマ大統領にこっそり直接聞いているかも知れない。

サミット前の日米首脳会談で、「強く抗議」と出ざるをえなかったのは日本政府としても誤算であっただろうが、サミット後の27日夕方のオバマ大統領による被爆地・広島訪問では友好ムードを盛り上げる。

日本人なら、一度は広島・長崎の被爆関係地を見ているだろう。それらを見れば、普通の人間なら理屈抜きに核根絶と思うはずだ。アメリカ大統領が広島を訪問するのは、長年の日本外交の勝利である。

 加害者」や「被害者」というレッテル貼り

一部の人から、日本はアメリカに謝罪を求めないのはおかしいという議論がある。

世界の普通の国、過去の戦争では、未来志向で「加害者」や「被害者」というレッテルを貼らない。特にヨーロッパは旧植民地帝国が集まっていて、旧植民地からみれば悪の枢軸ばかりである。とても誰も謝罪すべきとは言い出せないわけだ。ドイツの場合でも、その罪をヒトラーとナチスにかぶせることで、ドイツを「加害者」といわないのが普通だ。

日本は深い悲しみを持っているが、それを抑制しながらもてなすのがいい。これは、中韓に対して日本は違うという戦略にも通じる。

オバマ大統領の広島訪問について、多くの国では歓迎しない理由はない。ところが、中韓は世界の国とはまったく違う。日本の集団的自衛権について、世界のほとんどの国は賛成であるが、中韓だけは反対との奇妙な対応だったことが思い出される。

中韓は、日本を「加害者」として扱ってきたので、日本が「被害者」になっては中韓にとって都合が悪いのだ。こうした中韓の態度には辟易している国も多い。この際、日本は先進国の一員として、サミットに便乗して中韓との違いを演出するのは長期的には得策であろう。

++ 高橋洋一

【私の論評】「霊性の支配する日本」を象徴する伊勢志摩でのサミットの意義は大きい!

上の高橋氏の記事では、日本はアメリカの原爆投下に対して謝罪を求めるべきではないとしています。私も、そう思います。こう考える人は多いようです。

たとえば、歴史小説家の塩野七生さんも、そういう考え方をする一人です。朝日新聞のインタビューに応じて、その意見を表明していました。

詳細は、朝日新聞の記事をご覧いただくものとして、その一部を以下に朝日新聞から抜粋します。
 「謝罪を求めず、無言で静かに迎える方が、謝罪を声高に求めるよりも、断じて品位の高さを強く印象づけることになるのです」

「ただ静かに、無言のうちに迎えることです。大統領には、頭を下げることさえも求めず。そしてその後も、静かに無言で送り出すことです」 
 「原爆を投下した国の大統領が、70年後とはいえ、広島に来ると決めたのですよ。当日はデモや集会などはいっさいやめて、静かに大人のやり方で迎えてほしい」 
 「われわれ日本人は、深い哀(かな)しみで胸はいっぱいでも、それは抑えて客人に対するのを知っているはずではないですか。泣き叫ぶよりも無言で静かにふるまう方が、その人の品格を示すことになるのです。星条旗を振りながら歓声をあげて迎えるのは、子どもたちにまかせましょう」
私も、まったくこれらの意見に賛成です。直接の言葉による謝罪などなくても良いのです。これを声高に要求すれば、日本の品位は著しく損なわれることになりますし、ブログ冒頭の記事で高橋氏が主張しているような、中韓との違いを演出することは不可能になります。

広島の精霊流し
そうして、日本には、中韓の反日活動のように声高に、大げさに演出するまでもなく、
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」があります。それについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
式年遷宮「遷御の儀」で現正殿から新正殿に向かう渡御行列。
伊勢神宮は日本人と心のふるさと、未来への道しるべだ
=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮



この記事は、平成14年1月18日のものです。この記事では、この前の年に三重県伊勢市の伊勢神宮で行われた「式年遷宮」に関して説明した記事を元記事にして、日本人独自の精神世界を説明したものです。伊勢志摩サミットの初日だった本日、安倍総理はこの伊勢神宮の鳥居の近くでサミットに参加する首脳陣を出迎えました。

伊勢神宮に集結したG7首脳
この記事は、今から2年以上前の記事ですが、今でも良く読まれている記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から日本人の「精神世界」に関する部分を以下に引用します。
霊性の根源に万世一系の天皇
フランスの作家で、ドゴール政権の文化相を長く務めたアンドレ・マルローは自著各編で、こんな趣旨のことを書いています。

アンドレ・マルロー
「21世紀は霊性の時代となろう。霊性の根源には神話があり、それは歴史の一面を物語っている。世界の神話が現代なお生きているのが日本であり、日本とは、それ自体、そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性である。霊性の根源に万世一系の天皇がある。これは歴代天皇の連続性であるのみならず、日本文化の継続性の保証でもあるのに、戦後日本はそのことを忘却してしまった。しかし、霊性の時代が、今や忘却の渕から日本の真髄を取り戻すことを要請している。また文化は水平的に見るのではなく、垂直的に見るべきだ」 
確かに、中国や朝鮮文化の影響を過大に語る一部日本の文化人には大きな誤解があるように思えます。知る限り、英仏独の文化人、史家には、後生大事にギリシャ・ローマを奉る人など皆無であり、米国の識者がイギリスをむやみにもてはやす事例を耳目にしたこともありません。日本文化・文明と日本人は、中華文明や長年にわたりその属国であり続けた朝鮮文明とは全く異質であり、むしろアジアの中でも、もっとも遠い存在であるといえます。日本人の氏神、天照大御神に思いを致すのは今でしょう。 
キリスト教中心の西洋文明の終末 
スイスの心理学者グスタフ・ユングも「キリスト教中心の西洋文明の終末は20世紀末から21世紀初頭にかけて到来する。そして次の文明は、一神教や独裁専制ではなく、霊性の支配する時代となるであろう」と期せずしてマルローと同じ予言をしております。

カール・グスタフ・ユング
要するに、カネ・モノに執着する物質依存世界から、人間の理性と精神世界を重視する義と捉えるならば、超大国アメリカや金と軍事力で餓鬼道に陥った中国を痛烈に批判・否定しているように思えます。それに比して、多神教日本は、古来、山や川に霊性を感じ、自然を畏れ、神を尊ぶ心を抱いてきたわけで、その代表が伊勢の森だったといえるのです。 
考えるに、人類文化の危機は「画一化」にあり、文明が衝突するのではなく、文明に対する無知が紛争の根源となるのだと思います。思考のプロセスを自省し、他にかぶれたり迎合させられたり、徒に自虐的になることから一歩距離を置いて、確信されてきたものを再吟味し、忘れ去っていた古き良きものへ思いをきたし、一方で他民族との交流においては、異質なもの・新たなものを受容し合う-。こうしたことが、文明間の対話で重要だと思います。 
国家的文化戦略は、長期構想として構築し、粘り強く世界へ向けて発信してゆくことが最重要です。世界的有識者の言説を待つまでもなく、21世紀が霊性の時代へと向かうならば、日本人としても1300年間継承されてきた伝統精神を矜恃し、発信・交流してゆくことが、自らの背骨を正すとともに、世界平和への貢献に資することにもなると確信いたします。
このように、神話が現代なお生きているのが日本であり、日本それ自体が、神話そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性を保つ国が日本であり、霊性の根源に万世一系の天皇がある国が日本なのです。

そうして、日本では、過去が現在に現在が未来につながっているのです。そうなのです。霊的に時間を超越してつながっているのです。私たちの霊は、そうして私達の先祖の霊、未来に生まれる私達の子孫の霊はこの悠久の流れにつながっているのです。それどころか、石や木や山や川などの自然にも霊は宿り私達とつながっているのです。

このような霊性の精神世界は、かつて世界中に存在していました。ところが、イスラム教、仏教、キリスト教などの宗教ができると、この精神世界は世界各地から消えてしまいました。

原始社会の世界には、いわゆる宗教以前にアニミズムやシャーマニズムの形で霊性の時代がありました。今でも、宗教の洗礼を受けなかった少数未開民族の中には、残っています。そうして、この霊性を重んじる精神は、なぜか日本では失われることなく連綿として受け継がれてきて今日に至っています。それどころか、日本では今日の神道という形にまで昇華されました。

アニミズム、シャーマニズムを信奉する人たちは、未開の地ではまだみられる

日本の多くの人々は、霊性の支配する日本を普段は意識しないかもしれません。しかし、私達日本人の精神には幼少のころから、この霊性を重んじる精神がいつの間にか深く刷り込まれてしまっています。だからこそ、毎年かなり多くの人々が、初詣にでかけるとか、2014年1年間の伊勢神宮の参拝者数が1086万5160人(内宮680万9288、外宮405万5872人)となったりするというとてつもないことが起こったりするのです。

このようなことは、世界でもかなり珍しいことです。アメリカのホワイト・ハウスの年間訪問者数も150万人程度と聞き及んでいます。このようなことは、アジアでも日本だけです。中国では、この霊性の世界は継承されていません。韓国もそうです。例外的に民間伝承などで、ほんの一部は生き残っているものもありますが、呪術やまじないとして残っている程度で、日本のような式年遷宮のような形式が残って今も継続されているのは日本だけです。

今年の初詣
このような霊性の支配する国であり、歴史の古い日本に、新興国米国は70年前に原爆を投下したのです。

しかし、霊性が支配する日本では、霊性を顧みない中韓と同じように、米国に直接的な謝罪などを要求すべきではありません。

そんなことよりも、私たち日本人は、このような国日本に誇りを持ち、自信を持ち、世界に日本の素晴らしさを伝えていくべきです。日本の霊性を重んじる精神が、世界伝わりそれが理解されれば、世界は変わります。世界中の国々が、日本のように、様々な宗教のその土台に霊性の精神が宿るようになれば、世界は変わります。

霊性が支配する世界になれば、霊性が支配しない現在の世界ではほんどと困難と考えられていたような様々な事柄が、成就できるようになります。その中の一つに核廃絶があるかもしれません。



このように考えると、今回のサミットが伊勢志摩で開催されたことには本当に深い意義があると思います。無論安倍総理は、こうしたことも配慮に入れて、伊勢志摩でサミットを開催したのでしょう。

しかし、世界政治に関係するこのサミット、ひよっとすると安倍総理はそこまでは、想定していないかもしれませんが、霊性の支配する世界への端緒になるやもしれません。

あの原子爆弾による惨禍からも日本は力強くたちあがりました。1,000年に一度といわれた東日本大震災も、最近の熊本の震災も、ほんの一時のことに過ぎません。このような災厄からも日本は再び力強くたちあがることでしょう。朝廷をはじめとする私たち日本人の日本の伝統文化は、亡くなられた方々の霊、これから生まれてくる霊とともに、これからも悠久の歴史の中に燦然として輝き続けるどころか、さらに輝きを増すことでしょう。そうして、いずれ世界を変えていくことでしょう。

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