2016年12月3日土曜日

【日本の解き方】日銀の赤字で騒ぐ的外れ報道 子会社の決算気にするな 重要なのは日本経済の改善―【私の論評】これで騒ぐ輩は経済を語るな報道するな、解説するな(゚д゚)!

【日本の解き方】日銀の赤字で騒ぐ的外れ報道 子会社の決算気にするな 重要なのは日本経済の改善だ

グラフ、写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 日銀の中間決算で当期剰余金が2002億円の赤字になったと発表された。保有する国債の利回りが低下し、利息収入の減少による財務悪化が懸念されるとの報道もあるが、果たして問題なのだろうか。

 日経新聞では「日銀財務 緩和が圧迫」というタイトルで、まるで金融緩和が悪いことのように書かれていた。まず、中央銀行の決算の基本をおさらいしておこう。実際の決算は複雑になっているが、その基本的なところはかなりシンプルだ。

 日銀のバランスシートの基本は、資産側に国債、負債側に日銀券と日銀当座預金だ。負債側はマネタリーベース(日銀が供給する通貨)となる。つまり、資産側には有利子債権、負債側は無利子債務である。
(出処)日本銀行「営業毎旬報告(平成28年4月20日現在)」のデータをもとに作成
 現状では、日銀当座預金250兆円のうち210兆円程度には0・1%の付利、20兆円は無利子、20兆円には0・1%のマイナス金利だが、日銀券との代替が基本であるので、すべて無利子が本来の姿だ。民間銀行の当座預金が無利子であることを考えればわかるだろう。

 このように、資産が有利子債権、負債が無利子債務が中央銀行の基本構造である。無利子債務は、常識的な意味では「借金」ではない。

 そして、収益は総資産に金利をかけた利子収入になる。この意味で、金利が低下すれば、毎年の日銀の収益は少なくなっていく。これが将来にわたって続くわけだが、それらの現在価値の和は、高校レベルの等比級数の和の公式を適用すれば、日銀が購入した国債の額面金額になることがわかる。これが通貨発行益である。

 もちろん、この通貨発行益は、日銀納付金として国庫に入るが、政府と日銀を合算した統合政府で見れば、統合政府のものだ。

 日銀が法的に政府の子会社である以上、統合政府で考えるべきであるが、日銀官僚はそう考えずに、日銀だけで決算をみる。そうした情報がマスコミに流れて、マスコミ報道はトンチンカンなものになる。

 民間企業なら、グループ決算が重要で、個別会社の決算はあまり意味がないだろう。しかし、日銀官僚は、日銀が保有する国債の評価損が出る、引当金が必要だといって騒ぐ。統合政府でみれば取るに足らないことなので、政府も日銀の好きなようにしろという態度のようだ。

 仮に日銀保有国債の評価損が出た場合も、評価損は必ず国債の額面金額(通貨発行益)より小さい。つまり、一定の長期損失補填(ほてん)契約を日銀と政府で結んでも、国民負担はないということである。

 この政府と日銀の契約は、かつて日銀官僚があまりにつまらない財務問題を主張するので、米連邦準備制度理事会(FRB)議長も務めたベン・バーナンキ氏が言及したものだ。米財務長官を務めたローレンス・サマーズ氏も、財務問題をくだくだと説明する日銀官僚に対して「So what」(それで何が問題?)とあきれていた。

 はっきりいえば、政府の子会社である日銀の財務は気にする必要はない。むしろ親会社の日本を根っこで支える日本経済が良くなることが重要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀の赤字で騒ぐ輩は経済を語るな報道するな、解説するな(゚д゚)!

最近は、ようやっと、政府の借金1000兆円とか、貿易赤字が、経常収支の赤がなどと騒ぐメディアが少なくなったと思った矢先に、今度は日銀の剰余金が赤字という報道です。

やはり、メディアとにかく赤字とかマイナスは全部良くないこと、黒字とかプラスは全部良いことと単純に考えているのだと思います。

このようなことは、日本銀行券、日銀当座預金という負債は、無利子債務であり無利子債務は、「借金」ではないということを理解していれば、別に経済学的な難しいことを理解していなくても、小学生にでもわかるような事柄です。

日銀が債務超過になる理由は、政府に低利で貸出している(低利の国債を保有している)ことです。つまり、その分だけ政府は利払い負担が軽減されているのです。したがって、日銀が債務超過に陥って、政府がそれを増資で補ったとしても、「本来利払いとして支払うはずであった金額を増資として支払っただけ」なのです。

こんなことを理解できない日本のメディアは異常です。一般企業の財務の知識もないということです。

一般企業の会計でも、有利子負債と無利子負債があります。その典型例を以下にあげましょう。
・無利子負債の典型例:仕入債務(支払手形、買掛金)
・有利子負債の典型例:借入金や社債等
無利子負債とは、買掛金・支払手形など利子を払う必要のない負債のことをいいます。日本銀行券、日銀当座預金も利子を払う必要のない負債です。これが増えたからといって、何の問題があるのか、さっぱり理解できません。

私には、理解できない人がいるという事自体が理解できません。本当に疲れます。とにかく、何の統計数値でも、マイナスとか赤字になる何でも悪いことと考える人がいるようですが、少なくとも報道機関の人間くらいはこのようなことは理解して欲しいです。

このような報道をするようでは、まさにサマーズ氏のように「So What ?」言いたくなってしまいます。

ローレンス・サマーズ氏
この程度のことも理解できない人間は、経済に関する報道などすべきではありません。この程度のことを理解できない人間には、統合政府としての連結決算などということをいえばますます混乱し、困惑するのでしょう。

企業関しては、小会社と親会社を統合した、連結決算が当たり前になりました。それは当然のことです。

なぜそのようなことになったかといえば、たとえばかつて日本にはイトマングループなる企業がありました。

その会社は、日本の商社であり1990年までは伊藤萬株式会社と表記していました。住友銀行頭取の磯田一郎から平和相互銀行の内紛株買戻しの資金援助要請を受け泥沼に入り込み、平成初期に発覚した一連の伊藤萬事件(イトマン事件)の影響で経営破綻しました。1993年に住金物産(現:日鉄住金物産)に吸収合併され110年間の歴史に幕が下ろされた。

このイトマン事件の捜査で、イトマングループの経理が不正に行われていて、本社の赤字をすべて子会社に載せる形で、経理処理されており、本当はこのグループ全体では赤字なのに、本社は黒字で健全経営されているように装われていることが判明したのです。

このようなことでは、グループ全体ではどうなっているかわからないので、その以降会社単体の決算書を提出するのは無論のこと、グループ全体での連結決算を提出することも義務付けられるようになったのです。

巨大企業グループの中には、親会社のほか連結子会社や関連会社など複雑な構造を持つものも多い

このような事件もあったので、ひよっとすると、メディアの人間も、"日銀の赤字=小会社の赤字=本社の赤字=日本政府の赤字"のような奇妙な等式が頭の中に浮かんだのかもしれません。このような混同をするようでは、家庭の主婦感覚とあまり変わりありません。

無論、家庭の主婦は、家計を守るために節約などの努力をすべきであり、それはそれで良いことなのですが、だからといって、国の経済を家計のようにみるようなことでは正しい認識はできません。メディアもこんな頓珍漢な報道をするくらいですから、日本の経済を家計のように認識しているのではないでしょうか。

だとしたら、滑稽です。なぜなら、企業の小会社と政府の小会社でもある日銀との間には、とてつもない大違いがあるからです。その決定的な違いとは、一般企業の小会社はお金を刷って発行できないのですが、日銀は発行できます。

だからこそ、負債が日本銀行券、日銀当座預金などの無利子負債になるのです。このようなことを理解できなければ、統合政府の連結決算などといっても理解が覚束ないでしょう。


とにかく、日本の新聞などのメデイアの連中がこれを理解できずに、頓珍漢な報道をするのですから、本当に困ったものです。

このような有様ですから、統合政府ベースでは、すでに今年中に政府の借金はなくなり、来年からは、借金はマイナスすなわち、政府は貸付があるだけで、借金はなくなるなどということを資料や、計算過程を示して提示したとしても、一般にはなかなか理解されないのも無理もないのかもしれません。

来年以降は、マスコミや多くの政治家などは無理にしても、多くの国民にこれを理解していただいて、日本の将来への道の選択を誤らないようにしていきたいものです。

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