2017年8月3日木曜日

【日本の解き方】政権の受け皿になれない民進党 “カギ”は経済政策も前原、枝野両氏には期待できず…結局は自民党内の争いに―【私の論評】有権者の真の声が聴けない政党も政治家も滅ぶ(゚д゚)!


代表辞任を表明した蓮舫氏。民進党が党勢を回復する可能性はあるのか
 民進党は蓮舫代表が辞任を表明し、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が代表選への立候補の意向を示しているが、民進党が党勢を回復する可能性はあるのか。

 まず今後のスケジュールを検討しておこう。1年前の民進党代表選は8月2日に公告され、選挙日は9月15日だった。今回は9月1日投開票で調整されている。

 代表候補者は、民進党国会議員の推薦人を20人以上確保する必要がある。今のところ、前原氏、枝野氏のほか、第3の候補を模索する動きもあるようだ。

 こうした民進党の動きは、安倍晋三政権の支持率が落ちていることと無縁ではない。

前原氏と枝野氏
 7月2日に行われた東京都議選では、自民党敗退の陰で目立たなかったが民進党も惨敗している。2009年都議選で54議席、13年に15議席、今回は5議席と10分の1に縮小している。こうした状況なので、安倍政権で解散風が吹いても、今の民進党では受け皿にもはけ口にもならないわけだ。

 そこで、民進党内の一新が求められていた。都議選の敗戦を受けて、野田佳彦幹事長が辞任した。そのとき、蓮舫代表は続投の意思を示していたが、野田幹事長がいないと何もできなかったのだろう。後任の幹事長を引き受ける人がいなかったともいわれている。そこで一転して蓮舫代表が辞任となったようだ。

 これは遅きに失したとはいえ、野党の行動としてはまずまずだ。しかし、当面国政選挙がないと思われるなか、国民の受け皿にはならない。10月に衆議院青森4区と愛媛3区の補欠選挙が行われるが、10月10日告示、22日投票という予定だ。これらの選挙区では自民党が2つとも議席を持っていたが、そこで民進党が勝てるかどうかがポイントとなるだろう。

そこで重要なのが安倍政権との差別化だ。安倍政権の外交は、歴代政権の中でも海外渡航でも図抜けている。長期政権だったので、世界の首脳の中でも経験豊富で外交実績も挙げている。

訪問先のイスラエルで生命を発表する安倍総理大臣
 内政では、本コラムで指摘するように雇用などで実績がある。唯一の弱みとしては、最近の一部メディアの戦略にはまってしまったことだ。森友、加計学園ともに、首相の関与が問題とされていたのに、次々と論点がすり替えられ、今では国会などでの答弁で信頼性を欠いているとされた。首相の関与を示すものは一切ないが、結果として政権支持率は低下してしまった。

 ただし、これだけで民進党が受け皿になるわけではない。やはり経済政策がカギである。ところが、有力とされている前原氏は、財政再建・緊縮財政路線であり、消費増税を掲げている。また枝野氏は、かつて筆者とテレビで議論した際、金利を引き上げることを経済成長の条件としているなど、両者ともに、マクロ経済政策による雇用の確保はできないだろう。

 これでは、政権支持率が低下しても、代わりに民進党というわけにいかない。このまま政権支持率低下が続くと、いずれ自民党内での争いになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】有権者の真の声が聴けない政党も政治家も滅ぶ(゚д゚)!

上の記事では、民進党の再生には経済政策がカギであるとしています。しかし、前原氏も枝野氏も、酷いマクロ経済音痴です。

どのくらい音痴かというと、二人とも見当違いともいえるような経済観を持っています。これについては、あとでも述べますが、自民党の議員も五十歩百歩のところがありますが、それにしても、この二人は図抜けて酷いです。

まずは、前原氏の驚きの発言を紹介します。2013年1月13日、当事民主党の前原氏は以下のようなことを語っていました。

前原氏
デフレの原因は人口減である。それから、(当事の日本の)急激な円高は、震災によるサプライチェーンの分断によるものである」という驚くべき発言です。

デフレ、インフレとは貨幣現象です。人口の増減は関係ありません。こんなことは簡単に論破できます。たとえば、少し物騒なたとえですが、中性子爆弾が日本落ちて人口が半減したとします。これで、インフレになるのかデフレになるのか考えれば、すぐにわかります。

ちなみに、中性子爆弾とは核兵器の一種。核爆発の際のエネルギー放出において中性子線の割合を高め、生物の殺傷能力を高めたものです。建物・インフラなどにはあまり被害を与えず、人間をはじめとする生物を殺傷します。

ここでは、中性子爆弾は建物やお札や貨幣など一切破壊せず、生物の命を奪うものと仮定します。この爆弾が日本全国に落とされ、一気に人口が半分に減ったとします。ただし、お金はそのまま残ったとします。そうなると、これはインフレでしょうか。デフレでしょうか。

無論、人口が半減しお金がそのまま残ったのですから、これはインフレです。これでおわかりでしょう、デフレの原因は人口減であるという説は、全くのトンデモ説なのです。

そうして、このようなことは、上記のような物騒なたとえをしなくても、以下のグラフをみればすぐにインフレと人口減は関係ないことがわかります。


このグラフにも掲載されている相関係数をみればわかりますが、人口増加率と一人あたりGDP伸率との間の相関係数は0.09です。この相関係数1であれば、完璧に相関関係があるとみなすことができますが、1より小さければ、小さいほど相関関係は低いということです。0.09ではどうみても、相関関係はないとみるべきです。

次に、円高は震災によるサプライチェーンの分断によるものという珍説ですが。これも全くいただけないです。ちなみに、サプライチェーンとは個々の企業の役割分担にかかわらず、原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロセスの繋がりのことをいいます。

円高になる要因は、様々な要因がからんでいて、予測するのはかなり難しいですが、日本が金融引締めをしていて、他国が金融緩和をしている状況では、円高になる傾向が強いです。

それは、簡単な理屈です。日本が金融引締めをしていて、日本以外の国々が金融緩和をしていれば、円は少なくなり、他国お金は多くなります。そうなると、円の価値があがります。すなわち、これが円高になります。

為替の予想、特に短期の予想は他にも複雑な要素があり非常に難しいのですが、それでも6割がたはこれで説明がつきます。この状況が長期にわたれば、円高になる確率はさらに高くなります。

当事の日本を振りかえつてみると、2013年1月13日当事には、まさに日本はこの状況であり、米国をはじめとするほとんどの国々が金融緩和をしていたにもかかわらず、日本は金融引締めをしていました。

さらに、自然災害などがおこると、発展途上国などの場合は別にして、日本のような先進国の場合は、復興のために、自国通貨への需要がかなり高まります。需要が高まるということは、これすなわち通貨高になります。これは、日本だけではなく、オーストラリアの水害のときにもみられた現象です。

再度まとめると、2013年1月あたりまでの日本の超円高は、他国が金融緩和をしていたにもかかわらず、日本では日本銀行が頑なに引き締めを実行していたことと、震災からの復興のための資金需要の高まりによるものです。

これは、その後4月から日銀が金融緩和に転じてから、円安傾向になったことからみても、確かです。

前原氏の震災によるサプライチェーンの分断によるものという説は、多少はそのようなこともあったかもしれませが、それが主要因ではありません。

このように、前原氏経済観は、根底から狂っています。

枝野氏
次に枝野氏ですが、ブログ冒頭の記事にもあるように枝野氏が「金利を引き上げることを経済成長の条件としている」ということで、これもトンデモ理論を信奉しているとしかいいようがありません。

枝野氏は2008年9月下旬のテレビ朝日系列の「朝まで生テレビ」の番組中でこの珍説を披露していました。当時はもちろんリーマン・ショックが世界中で顕在化していました。

通常は、経済危機や深刻な不況のときは、金利を引き下げることが重要です。もし金利を引き下げる余地がないときは、今度は中央銀行が供給するマネー自体を増やしていく、さらには物価安定目標(インフレ目標)の導入で人々の予想をコントロールしたりすることが重要です。

なぜ金利を引き下げるかといえば、経済が落ち込んでいるときは、民間の消費や投資が振るわないときです。例えば、住宅ローンでも車のローンでも金利を安くした方が借りやすくなります。

もちろん金利が変動型であればそれだけ返済負担も少なくなる。消費だけではなく、企業の設備投資のための金利負担も軽くなります。

どんな教科書にも経済危機や不況に、金利を引き上げて景気回復が行うべきなどということは、書かれていません。当たり前のど真ん中ですが、そんなことを経済危機の時に行えば、経済は壊滅的な打撃を受けることになります。それをリーマン・ショックの時期に行えなどと主張するのは、完璧なマクロ経済音痴と言っても過言ではありません。

枝野氏は雇用に関しても、全く見識がありません。昨年1月8日、衆院予算委員会で当事民主党の枝野幸男幹事長が質問に立ち、物価の変動を考慮した実質賃金について、民主党時代は高かったが、安倍晋三政権で低くなっていると批判しました。

確かに、実質賃金については、枝野氏のいうとおりですが、就業者数では民主党時代には30万人程度減少し、安倍政権では100万人以上増加しています。

そうして、名目賃金は物価より硬直的ですが、金融政策は物価に影響を与えられます。このため、金融緩和すると当初は実質賃金は低下し、就業者数が増加します。さらに金融緩和を継続すると、ほぼ失業がなくなる完全雇用の状態となります。そうなると今度は実質賃金も上昇に転じてきます。

経済の拡大によって就業者数は増加しますが、逆に金融引き締めを行うと、実質賃金が高くなり、就業者数が減少。完全雇用からほど遠くなります。


民主党政権と安倍政権の実質賃金と就業者数のデータは、民主党政権では事実上の金融引き締め、安倍政権では金融緩和が実施され、枝野氏の批判は、その通りの効果が現れてきたことを示しているだけであり、雇用政策から見れば、安倍政権の方がはるかに優れています。

民主党政権時代に就業者数の減少を招いたにもかかわらず、実質賃金の高さを誇るのは、雇用政策からみれば噴飯ものとしかいいようがありません。就業者数が減り、実質賃金が上昇することで喜ぶのは「既得権雇用者」たちです。つまり、既得権者保護の政治を民主党は公言していることになります。非正規雇用者、新卒者、失業者という「非既得権雇用者」の利益は考えていない、ということです。

以上のことから、どちらが代表になったにしても、民進党が再生するということはありません。もう一人、代表戦の候補者が出そうですが、これが馬渕氏あたりであれば、彼は民進党内ではただ一人経済にも精通しているので、見込みもあるかもしれませんが、馬淵氏にはその気はないようですから、どうにもなりません。

では、自民党はどうなのかというと、安倍総理とその側近は例外として、経済に精通している人はいません。一作日は、ポスト安倍の有力候補となった岸田外務大臣について、このブログに掲載しました。

しかし、その岸田氏にしても、前原氏や枝野氏それから、自民党内の石破氏よりは酷くはありませんが、経済に精通しているとはいえません。

一昨日のこのブログにも掲載したように、都内で開いた岸田派のシンポジウムで、岸田氏は、4年半のアベノミクスの成果を強調する一方、格差の問題点に言及しました。派閥創設者の池田勇人元首相が所得倍増論を進める中で、中小企業や地方対策といった格差是正にも努めた事例を紹介。アベノミクス修正の必要性を指摘しました。

岸田氏は来場者から政権を取った場合の政策を問われ、「閣僚なので内閣不一致になっちゃいけないと思いつつ覚悟して来た」。言葉を選びつつ、「これだけはやりたいのは何か。成長と分配のバランス」。アベノミクスが成長戦略に偏りがちであることに懸念を持っていることを示唆しました。

しかし、格差の是正をするためにも、まずは経済を良くすること、さらに雇用の面でも、所得をあげるためには、まずは現状の失業率の3%台では、まだ不十分であり、構造的失業率である2%半ばまでもっていかなければ、実施賃金はなかなか上がりません。そのために、物価目標2%が達成させていない現在追加の量的金融緩和は絶対に実施しなければなりません。

そのことを岸田氏は理解していないようで、まずはマクロ的な政策で、雇用や経済が十分に回復していないうちに、ミクロ的な政策を打ったとしても、ほとんど成果をあげられないという現実を理解していないようです。

しかし、岸田氏はアベノミクスを完全否定しているというわけではなく、石破氏などと比較すれば、まだまともです。

しかし、自民党の中でも年配の議員のほとんどや、若手であってすら小泉進次郎議員などのような一部の議員は、積極財政とか、金融政策などという考え方は及びもつかず、経済対策というと、とにかく公共工事をやれば良いくらいのことしか考えていないようです。そうして、あろうことか、公共工事がだめなら、増税すれば良いなどと考えているようです。減税や、給付金などの対策は思い浮かばないようです。

公共工事を増やすにしても、公共工事の供給制約があることや、供給制約を克服できたとしても、工事を過大にすればクラウディング・アウトの危機に見舞われることなど眼中にないようです。クラウディングアウト(英: crowding out)とは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

現在の日本は、雇用はかなり改善されたのですが、実質賃金もあまり上がらないし、物価目標はなかなか達成できていません。これは、さらなる量的追加金融緩和が必要なのはいうまでありません。

そうして、2014年の8%増税を期に、個人消費は冷え込み、全国の百貨店が相次ぎ閉店しています。

2017年2月28日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のそごう・西武が運営する茨城県つくば市の西武筑波店と大阪八尾市の西武八尾店が閉店。その前日には、さくら野百貨店仙台店を運営するエマルシェ(仙台市)が仙台地裁に自己破産を申請して営業を停止するなど、閉店ラッシュが止まりません。

さらに、地方のコンビニの閉店ラッシュも止まりません。

これらの地方の生の声を真摯に聴けば、消費税増税は完璧な失敗であり、効果のある経済対策をするには、まずは消費税を5%に戻すこと、さらに実質賃金や格差を是正するためにも、追加金融緩和すべきことは明らかです。

流通大手イオンの岡田社長は12日の決算会見で、「脱デフレは大いなるイリュージョンだった」と述べ、消費の厳しい現状を指摘しました。

イオンの2月までの1年間の決算は、本業のもうけを示す営業利益が前の年度に比べて4.4%増え、1847億円となりました。

一方、岡田社長は、これまでの経営方針には課題もあったと指摘しました。

イオン・岡田元也社長「“脱デフレ”というのは大いなるイリュージョン(幻想)だったと思いますが、これをきちんと見抜いて対処することに著しく欠けた」としています。

確かに、雇用は良くなっているのですが、8%増税の破滅的な大失敗によってGDPの伸びは少なく、未だ韓国以下の伸びです。

岡田社長は、消費税の増税などで値上げ圧力に屈したと指摘した上で、インターネット通販の拡大で低価格化がすすみ、消費者にも依然、節約志向があることから、今後は、ディスカウント事業に力をいれるとの考えを示しました。

安倍総理は外野の声に惑わされることなく初心に帰るべき
こうした変化を謙虚に分析して、経済に対して適切に対応していかなければ、本来政治家など勤まらないはずです。にもかかわらず、トンデモ経済論を信奉したり、経済対策といえば、公共工事や増税しか思い浮かばないような政治家は、政治家として失格です。

民進党であろうが、自民党であろうが、他の党であろうが、こうした経済の現実を知らなければ、どの政権でも短命に終わります。

それに、政治家個人でも、いつまでもトンデモ経済論にしがみついたり、有権者の生の声を聴いてそれに正しく応えることができないというのであれば、現在では多くの人が経済や雇用に関しても、わかりやすく説明時代には、いずれ有権者の怨嗟の対象となり、今後の選挙では当選できなくなるかもしれません。

地方の百貨店や、コンビニ(フランチャイズが多い)も過去のデフレや、8%増税に耐えに耐えてきたわけですが、もう堪忍袋の尾がきれかかっています。他の業界でも、そのようなところは多いです。

結局有権者の真の声が聴けない政党も政治家も滅ぶということです。このような状況では、安倍総理は初心にかえって、構造改革やミクロ手法の前に、量的追求緩和や、積極財政に大きく舵を転じていただきたいです。

そうして、ポスト安倍に関しても、もし安倍総理がそれが可能なら、後継の人に因果を含めて、まともな金融政策、財政政策をしない限り、民進党の再生が全く困難になったように、自民党もその運命を辿ることを理解させ、因果を含めるへきです。

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