2017年10月17日火曜日

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く―【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く
 毎日新聞の記事で、20代以下と30代の若者に内閣や自民党の支持者が多かったという調査結果が紹介されている。「政治的な知識不足」「現状維持を望む」といった解釈のほか、「雇用の売り手市場」なども要因とされているが、若者は保守的なのだろうか。

 この種の調査では現時点での傾向はつかめるが、変化については経年的な調査の方が分かりやすい。

 そこで、内閣府で継続的に行われている「外交に関する世論調査」を参考にしてみよう。

 日本で「保守化」や「右傾化」とされる代表的な特徴は、中国への態度である。この調査では「中国に親しみを感じる」割合について、年代別の経年変化が分かる。全世代でみると、中国に親しみを感じる割合は、1978年の調査開始以降、85年6月には75・4%だったが、それ以降低下し始め、95年10月に5割を切り、直近の2016年11月では16・6%(20歳以上)まで下がっている。

内閣府が2016年12月26日に発表した外交に関する世論調査より グラフはブログ管理人挿入以下同じ
 世代別の数字をみると、1999年10月では全世代で49・6%、20代で48・9%、60代で47・4%と、ほとんど差はなかった。しかし、直近の2016年11月では、全世代で16・6%、20代(18、19歳を含む)で31・1%、60代で12・8%と世代間の差が大きい。このデータでは若い世代ほど「保守化」「右傾化」していないことが分かる。

 一方、自民党支持についてみてみると、若い世代ほど支持する割合が高くなっている。より正確にいえば、若い世代は、それほど「保守化」していないが、自民党支持が強いと説明することができる。

 もっとも、これは自民党というより、第2次安倍晋三政権の特徴だといえる。実際、民主党への政権交代を許したときや、第1次安倍政権の際にも、若い世代は自民党支持は多くなかった。

 なぜ、それほど「保守化」していない若い世代に自民党支持が多く、「保守化」している老齢世代で自民党支持が少ないのか。筆者が思うに、若い世代は雇用を重視し、情報はネットなどテレビ以外から入手する。一方、老齢世代は雇用の心配がなく時間はあるが、情報を主にテレビに頼っているからではないだろうか。

昨年の結果より作成、「もりかけ問題」で一時、内閣支持率は
下したが最近はこのグラフに近いかたちになっている
 大学教員をしている筆者には切実な問題だが、大学生にとっての最大の関心事は就職である。初めての就職がうまくいくかどうかが、その後の人生を決めるともいえる。

 民主党政権時、残念ながら就職率は低く、就職できない学生が多かった。ところが、安倍政権になってから就職率は高まり、今では就職に苦労していない。正直なところ学生のレベルが以前と変わっているわけではなく、政策によってこれほどの差があるとは驚きだ。

 しかも、今の学生の情報入手はネットが中心で、左翼色が強く政権批判が多いテレビをあまり見ない傾向がある。そうした意味で老齢世代と若い世代は正反対だ。

 安倍政権の金融緩和と表裏一体の雇用重視は本来、左派政策なので、「保守化」していない若者にも受けるのだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者が、内閣を支持する理由として、高橋洋一氏は若者は雇用が良くなったことを評価し、情報入手はネットが中心であることをあげています。そうして、中国への態度から若者は決して保守化しているわけではないことを主張しています。私もそう思います。

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の記事にでてくる、毎日新聞の記事を以下にそのまま引用します。
<衆院選>若者層は保守的? 内閣・自民支持多く…世論調査  
 衆院選公示を10日に控え、国政選挙では、昨年夏の参院選から選挙権を得た、18歳以上の10代の若者が今回初めて衆院選に臨む。総務省によると、前回参院選で10代は40歳前後の世代と同程度の46.78%が投票し、投票意欲は決して低くはない。各党とも新たな票田として注目しているが、各種の統計や専門家の分析によると、10代から30代までの比較的若い世代で政治意識が保守化していると言われる。全国各地の10代有権者10人にその背景を聞いてみた。【大隈慎吾、水戸健一、野原寛史】 
 毎日新聞が9月に2度実施した全国電話世論調査(9月2、3日と同26、27日)によると、全体として20代以下(10代を含む)と30代は、40代以上の高齢層に比べて内閣支持率も自民党支持率も高い傾向を示した。 
 最初の調査では20代以下の内閣支持率5割弱に対し、70歳以上や40代は4割台、他の世代は3割台どまりで、20代以下の高さが際立った。2度目の調査でも20代以下と30代は4割台で、40代以上は3割台にとどまった。 
 年代別の自民党支持率も、最初の調査は20代以下が4割弱と最も高く、30~60代の2割台と好対照。2度目も20代以下は3割程度で、30~60代は2割台だった。 
 こうした傾向について、10代有権者の多くは「何も知らないままなら、有名な候補に」などと政治的な知識不足を背景にあげた。福岡市の男子大学生(19)は「知らないし、わからないと現状維持で問題ないと考えるからではないか」と話す。 
 「関心のない人がとりあえず名前を知っているから入れている」「自分の主張がないから、支持者の多い方に流される」などと同世代に厳しい指摘もあるが、「民主党政権はマニフェストも達成できず、インターネットの発達で失敗も隠せない」「安倍(晋三)首相はリオ五輪閉会式のスーパーマリオの演出など見せ方もうまい」といった声も聞かれた。 
 世代間の違いを指摘する声も出た。北海道の男子大学生(19)は「自分たちは子供のころから雇用難。安倍政権で景気や雇用が改善し、わざわざ交代させる必要もないと考えているのでは」と話す。 
 大阪市の予備校生(18)は「私の祖父母は野党側の考えに近いが、若い世代は安保闘争のような大きな政治運動の経験がない。野党の政策はどこか理想主義的で、現実的な対応をしてくれそうな自民がよく見える」と解説した。 
 有権者の政治意識や投票行動を研究する松本正生・埼玉大社会調査研究センター長によると、他の各種世論調査でも10代を含む若い世代で内閣や自民党の支持率が高い傾向にあり、男性が女性よりも高いという。松本さんは「安倍首相のきっぱりとした物言いや態度に若者が好感を抱き、ある程度の固定ファンがいるのではないか。大企業や正社員を中心とする雇用の売り手市場や株高の現状が続いてほしいという願望が、若い世代で強いのだろう」と話す。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171009-00000010-mai-soci
若者は保守的と指摘する毎日新聞の記事は、若者はモノを知らない馬鹿者と言っているようなものです。モノを知らないのはどちらなのかと言いたくなります。

このような批判をすると、以下のようなグラフを提示して、2010年半ばからエンゲル係数が急上昇しているなどの批判をする人もいます。

これについては、いろいろ調べたところ、田中秀臣氏が最も理解しやすい反論をしていました。それを以下に掲載します。
エンゲル係数の推移を見ると、平成元年から平成16年(2004年)にかけて低下していましたが、平成21年(2009年)以降上昇しています。これは、エンゲル係数が、世帯主が60歳以上の高齢の世帯では高い傾向があるため、高齢化に伴って高齢の世帯の割合が上昇していることなどが全体のエンゲル係数の上昇にも関係しているのです。 
それと所得が上昇して外食が増えるとエンゲル係数が上昇したりもするのです。エンゲル係数は基本的に高齢化の進展でこれからも上昇トレンドにあると思いますが、その他の要因でも影響がおこるといえます。 
 エンゲル係数という一部分を取り出して、現在よりも民主党政権時代の方が暮らし向きがよかったという見方は、 
1)民主党政権時に失業率が高率(見かけ失業が減る傾向が始まったかのようにみえてもそれは求職意欲喪失者が増えたため=景気の悪化が深刻で職をさがすこと自体をあきらめたから)であったことをみていない 
2)民主党政権時に経済的自由での倒産件数の比較にならないほどの多さを無視 
3)現段階での自殺者数の減少を無視(民主党政権時よりも安倍政権の下の方が減少率はるかに拡大) 
4)最低賃金の上昇も無視などさまざまに列挙できるものを無視しています。さらに最近では、雇用回復の中での実質賃金上昇もみられます。民主党政権時では、雇用悪化の中での実質賃金上昇があったのですが、それは採用コスト増加で失業者増加をもたらしました。 
安倍政権を批判するならば、現在のアベノミクスのうちリフレ政策をさらに意欲的に実行せよ、というのがまともな批判の方向でしょうが、そういう話にはならず、批判のための批判しかできない人達が多いようです。
以上、田中秀臣氏の反論にでてくる指標のグラフを以下に掲載します。

就業者数については、どうみても安倍政権になってから増加しています。

倒産件数も、安倍政権になってから持続して減っています。


自殺者数も、安倍政権になってからかなり減っています。


実質賃金については、安倍政権になってから下がっています。直近では多少あがっています。

これは、反安倍派にとっては、格好の突きどころですが、これも先程のエンゲル係数のように、反安倍派は他の重要なことを見落としています。

それまで、金融引締めで雇用が悪化していた状況でご存知のように、2013年から日銀は金融緩和に転じました。そうすると、何がおこるかというと、比較的低賃金のパート・アルバイト、正社員も比較的低賃金の新卒や若年層から雇用が増えます。

そのため、マクロ経済学では、金融緩和をした直後には、雇用は増えるものの、実質賃金が下がるということが知られています。まさに、安倍政権になってからの実質賃金の低下はこれで説明ができます。

これは、大企業が業容を拡大するときにも似たような現象がおこります。たとえば、流通関係の企業で、景気が良いので、さらに利益をあげようと、店数を増やせば、店に配置する相対的に低賃金のパート・アルバイト、新卒を増やすことになります。

そうなると、どうなるかといえば、会社全体での平均賃金は下がります。金融緩和をして、実質賃金が下がるのはこれと同じようなものです。

新卒や非正規(主婦パート・アルバイト、高齢者再雇用)などの人たちが増えればその人たちの名目賃金は低いです。これらの雇用が増えていれば、インフレ率との見合いで実質賃金が下がることは明白です。実質賃金の低下で政府の経済政策は失敗と判断するのは明らかに間違いです。

しかしけ現状どおり金融緩和政策が続けば、次の段階では、人手不足となり、安定して人員を確保しようとすれば、当然のことなが、企業も賃金があげなければならなくなります。その動きが多くの企業にまで広がれば、全体の実質賃金もあがることになります。

一つ付け加えておくと、本来は実質賃金は今頃は確実にあがっていたはずなのですが、残念ながら2014年4月から、消費税増税をしてしまったため、個人消費が冷え込み、それが企業業績にも悪い影響を与えたため、雇用情勢は良くなりましたが、実質賃金上昇にまではいたりませんでした。

しかし、この状況は長くは続きません。最近実質賃金が多少あがっているのはその予兆です。しばらく、雇用者数が増え、実質賃金が減少する状況が続きしまた。いずれ、女性や高齢者などの雇用にも限界がくるでしょう、そうなると企業としては、人材を確保するためには、賃金を上げざるを得なくなります。その時期は近いです。

最後に、安倍総理が10%増税を前提として、増税分の税収の使いみちについて言及したことをもって、安倍総理は10%増税すると早合点している人もいるようですが、安倍総理は税収の使いみちについて言及しただけであって、増税するとはっきり言及したわけではありません。

このブログでは、8%増税分の税収が、社会保障にあまり使われることなく、財務省がありもしない政府の借金返済につかわれている実体をあげて、安倍総理はこれを批判しているのだという見方を紹介しました。実際そうだと思います。

次の10%増税の時期まで、北朝鮮情勢の悪化が続いていれば、政府としては北朝鮮情勢悪化のため、増税は延期ということで、三党合意による増税法案を廃案に追い込むのはたやすいことでしょう。

さらに、もし北朝鮮情勢にかたがついていたとしても、三党合意の一党である民主党が、現状では民進党と名称を変更し、半分消滅したような状況にあり、2年後には完全消滅しているかもしれません。そうなると、増税法案を廃案に追い込むのはたやすくなります。

いずれにせよ、10%増税は今から二年後のことです。安倍総理も朝鮮半島有事が間近に迫っていることから、現在は今でも政治勢力として強大な財務省と事を構えるのは避けたいと考えているのでしょう。財務省も、北朝鮮有事に備えることに協力して欲しいと考えているのでしょう。

そんなことから、現在の選挙では増税は争点と見るべきではないことを最後に付け加えたいと思います。

現在、増税凍結宣言を早々と行った、維新が苦戦しているのをみると、実際そうなりつつあるようです。

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↑この記事少し前の記事ですが、維新が苦戦していることから、今回の選挙ではやはり消費税凍結が争点とはなっていないことがうかかわれます。

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