日本を守る
世界最強の米原子力空母「ロナルド・レーガン」。 正恩氏率いる北朝鮮の「海上封鎖」に乗り出すのか |
米中間で“関税合戦”による死闘(貿易戦争)が始まった。その脇で、いま中東が爆発しそうだ。米中間のデスマッチの幕が上がる一方、北朝鮮危機がどこかへ行ってしまったように、見える。米朝両国はここ当分の間は、交渉を続けてゆくのだろうか。
8月初めに、シンガポールで東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議が催された。
北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は「米国が同時並行する措置を取らなければ、わが国だけが『非核化』を進めることはあり得ない」と演説した。にもかかわらず、マイク・ポンペオ米国務長官は「北朝鮮の非核化」について、「北朝鮮の決意は固く、実現を楽観している」と述べ、李氏と固い握手を交わした。
日本は、6月にシンガポールで「歴史的な」米朝首脳会談が行われてから、しばらくは緊張が解けたものと判断した。北朝鮮からのミサイル攻撃に備えて、東京の防衛省、北海道、島根、広島、愛媛、高知の各駐屯地に展開していた、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊が撤収した。
北朝鮮は、米国から「南北平和協定」「制裁の緩和」など段階的な見返りを求めて、ドナルド・トランプ政権をじゃらしている。北朝鮮はワシントンを甘くみているのだ。
だが、トランプ政権は北朝鮮をあやしながら、北朝鮮に鉈(なた)を振るう瞬間を待っている。
もし、11月初頭の米中間選挙の前までに、北朝鮮が「非核化」へ向けて、米国の選挙民が納得できる成果を差し出さなければ、海軍艦艇を用いて、北朝鮮に対する海上封鎖を実施することになろう。米国民は何よりも力を好むから、喝采しよう。
私は、前回の「日本を守る」連載(4月掲載)で、米国が北朝鮮に対して海上封鎖を断行する可能性が高いと予想した。
海上封鎖という“トランプ砲”が発射されると、日本の政府と国会が激震によって襲われよう。米海軍が日本のすぐ隣の北朝鮮に対して、海上封鎖を実施しているのに、自衛隊が燃料や食糧の供給などの後方支援に役割を限定するわけにはいくまい。
米国-イラン関係の険悪化など、中東情勢も不安定化している。中東は日本のエネルギーの80%以上を供給している。
日本を揺るがしかねない危機が進行しているのに、日本の世論は目をそらしている。
■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『「美し国」日本の底力』(ビジネス社)、『新・東京裁判論』(産経新聞出版)など多数。
【私の論評】北の海上封鎖は十分あり得るシナリオ、その時日本はどうする(゚д゚)!
ブログ冒頭の記事では、海上封鎖について定義も何もあげずに、使用していますが、平和ボケ日本では、海上封鎖について良く知らない人もいらっしゃると思いますので、以下に簡単な定義をあげておきます。
海上封鎖とは、ある国が海軍力を用いて、他国の港湾に船舶が出入港することを阻止することです。封鎖行動は宣言によって開始され、その前には中立国の船舶の退避時間が設けられます。
海上封鎖は戦時封鎖と平時封鎖に分類されます。戦時封鎖の場合は通商破壊や攻勢機雷戦を伴います。平時では非軍事的措置の一環とみなされ、海軍部隊による臨検が主となりますが、封鎖を突破しようとする船舶が現れた場合には攻撃が避けられないです。
米国によ海上封鎖に関しては、今年の3月に米国が、米国沿岸警備隊を朝鮮半島に派遣してより強化することも検討していることが報道されました。それに関してはこのブログでも、今年の3月に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米、北に新たな一手“海上封鎖” 沿岸警備隊のアジア派遣検討 「有事」見据えた措置か―【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!
米国沿岸警備隊の艦船と航空機 |
軍艦を臨検することは滅多にはないでしょうが、もしそのようなことがあれば、当然イージス艦などの軍艦がこれにあたることになるでしょう。
しかし、それ以外の小さな艦船であれば、やはり沿岸警備隊の艦船が臨検などにあたるのか適当であると考えられます。
ただし、そこから一歩踏み込んで、戦時封鎖ということになれば、最初からフリゲート艦や、駆逐艦などが主に担当し、機雷敷設などのことも当然行うことになります。
機雷の敷設や、それを取り除く掃海に関しては、日本の能力は世界でもトップクラスというか、現実には他国を引き離し断トツで世界一といって良いでしょう。これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!
平成20年6月12日、海上自衛隊による機雷の爆破処理で 海面に噴き上がる水柱。後方は神戸市街=神戸市沖 |
この記事では、日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷であるという元記事について論評しましたが、論評の過程で日本の掃海の現状や、歴史について触れました。
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、日本の海上自衛隊による掃海能力は世界一です。もし、米軍が北朝鮮を海上封鎖するということにでもなれば、当然日本も、怪しい艦船の臨検などを米国側から求められるでしょう。
ただし、海上自衛隊はすでに戦後長い間踏み込まなかった黄海にまで、艦船を派遣して、監視活動にあたっています。
ただし、北朝鮮そのものを海上封鎖するということになれば、港を封鎖するのとでは規模が違います。これを機雷敷設なしで、行うということになれば、想像もつかないくらいの莫大な数の艦船が必要になることでしょう。
これは、現実的ではありません。現実的に北朝鮮を海上封鎖するとすれば、やはり機雷の敷設は避けられないでしょう。
ただし、機雷で封鎖ということになれば、かなり効果があげられるでしょう。北朝鮮のほとんどを機雷で封鎖してしまえば、艦船などで監視や臨検を行う部分はかなり限られてくるので、莫大な数の艦船は必要ありません。
空においても、日々哨戒活動にあたり、北や北に協力する航空機などが北と外国との間の行き来を完全に封鎖し、韓国も北との国境は完璧に封鎖し、さらに北と中国との間の橋梁や道路など破壊してしまえば、北を完璧に封鎖できます。
この状況にまで追い込めば、北には石炭や石油の供給が絶たれてしまいますから、軍隊をはじめほとんどの組織が、身動きの取れない状態になります。
その状態で、交渉に持ち込むか軍事攻撃をすれば、すぐにでも北朝鮮は音を上げることになります。
トランプ砲が炸裂して、北朝鮮を海上封鎖するというシナリオは十分にあり得る |
それにしても、ブログ冒頭の記事では「米海軍が日本のすぐ隣の北朝鮮に対して、海上封鎖を実施しているのに、自衛隊が燃料や食糧の供給などの後方支援に役割を限定するわけにはいくまい」と掲載していますが、まさにその通りです。
北朝鮮付近の海域に機雷の敷設や除去など、憲法上や法律上の制約があるので、できないと専門家などは言っていますが、これは時限立法を成立させてでも、少なくとも除去くらいはできるようにしておくべきものと思います。
そうして、海上封鎖をすることになれば、その後北の崩壊はかなり現実的になります。そのときに、拉致被害者や最近拉致された日本人の救出をするために、自衛隊を派遣できるように、これも憲法解釈の変更と、時限立法などでできるようにすべきです。
1962年のキューバ危機においては、米国はキューバ周囲を海と空から海上封鎖すると宣言し、実際にそうしました。
確かに、海上封鎖という“トランプ砲”が発射されると、日本の政府と国会が激震によって襲われることになるのです。日本の世論はこれから目をそらすべきではありません。
これを単に激震などとだけとらえるのでなく、日本が世界平和に大きく寄与するチャンスだと捉えて、必要な措置をとるべきです。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿