2018年8月9日木曜日

“死神”ボルトン氏、北に重大警告「非核化に必要な措置を取っていない」 ―【私の論評】北軍事攻撃の前にイランの惨状を金正恩と習近平にみせつけるトランプ政権(゚д゚)!

“死神”ボルトン氏、北に重大警告「非核化に必要な措置を取っていない」 


非核化に消極的な正恩氏に、ボルトン氏(写真)が重大警告を発した

 北朝鮮に「死神」と恐れられているジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に“重大警告”を発した。6月の米朝首脳会談で約束した「非核化」について、北朝鮮が実行していないと批判したのだ。ボルトン氏は、正恩氏が4月の南北首脳会談で「1年以内の非核化」を言い出したことも暴露した。北朝鮮は確実に追い込まれつつある。

 「北朝鮮は非核化に向けた必要な措置を取っていない」

 ボルトン氏は7日、FOXニュースの番組に出演し、こう述べた。

 シンガポールで6月に行われた米朝首脳会談の共同声明で、正恩氏は「朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」と、ドナルド・トランプ大統領に約束した。

 北朝鮮がその後、具体的に核廃棄を進めている気配はまったくない。それどころか、「米国が『制裁・圧迫』という旧石器時代の石斧を捨てて、信頼と尊重の姿勢にどれほど近づくかによって未来の全てが決定されるであろう」(6日付、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」)などと、逆に米国を批判している。

 制裁解除を哀願する北朝鮮に対し、ボルトン氏は番組で、「真に必要なのは言辞ではなく行動だ」と指摘し、現段階での制裁緩和は一切検討していないと強調した。

 ボルトン氏の強気姿勢の背景には、非核化の実行を言い出したのが正恩氏自身という事情がある。

 ボルトン氏は5日、4月の南北首脳会談で、正恩氏が韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、「(非核化を)1年以内に行う」と約束したことを明らかにした。

 そのうえで、ボルトン氏は「1年以内に(非核化を)終わらせるというアイデアがどこから来ているのかについて多くの議論があったが、正恩氏から来ている」と述べ、「彼らが核兵器を放棄するという戦略的決断をすれば、1年以内にできるはずだ」と語った。

 トランプ政権の「我慢の限界」は近づきつつある。

 ボルトン氏は7日の番組で、マイク・ポンペオ国務長官が正恩氏との会談のため再訪朝する用意があることも明かした。訪朝が実現すれば、正恩氏自身が約束した「1年以内の非核化」を実行するよう、ポンペオ氏が迫る可能性もありそうだ。

【私の論評】北軍事攻撃の前にイランの惨状を金正恩と習近平にみせつけるトランプ政権(゚д゚)!

トランプ政権は、イランに対する制裁による窮状を北に見せつける腹であるのは明らかです。これにより、北を威嚇するだけではなく、その背後にいる中国にもかなりの脅威を与えることがトランプ政権の目論見であると考えられます。

イランの核合意離脱に伴いトランプ大統領は、「これまでで最も痛みを伴う制裁」を行うと表明しました。

トランプ大統領はかねてからイランと敵対関係にあることから、制裁は本格化し関係国にも大きな影響を与えるものと見られます。

これに対し、昨年の今頃は一触即発の危機にあった北朝鮮との関係は現在沈静化しています。それ自体は決してマイナス面ばかりとは言えないですが、では好ましい状況かと言えばそうも言えないです。

北朝鮮が本当に約束を守る国だと思っているのは、世界でも文在寅と日本の左翼くらいのものかもしれません。実際は現在でも北の軍拡が行われていると考えるのが自然です。

トランプ大統領もその辺りは百も承知でしょう。今度北朝鮮が約束を違反すれば、その時は中国もロシアも表面上は反対するかもしれませんが、それでも米国による北攻撃には反対できないでしょう。

米朝首脳会談でトランプ大統領がみせた融和的な態度

米朝会談のトランプ大統領の融和的な態度は、そのための「笑顔の」演出であったとみるべきでしょう。そうなると今回のイランへの制裁は北朝鮮と中国への見せしめでもあるみるのが妥当です。

トランプ政権は、核合意を離脱し、対イラン制裁を再開して、威勢よくイラン経済を追い詰めることにより、どれほどの損害と犠牲が出るかを北と中国に見せつけようとしているのです。

米国のドナルド・トランプ大統領は8月6日、対イラン制裁を再開する大統領令に署名しました。その前哨戦として米政府は今年5月、各国の反対を押し切って2015年に成立した核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)から離脱しました。

米政府は声明で「アメリカ合衆国は、すべての経済制裁が実行されるよう全力を尽くし、イランと商取引のある国々とも密接に連携し、制裁を完全なものにするつもりである」と述べました。

CNNの報道によれば、今後イラン政府は、米ドルの購入ができなくなります。また、イランと金(ゴールド)や貴金属の取引のほか、黒鉛、アルミニウム、鉄鋼、石炭の直接的・間接的な供給も制裁対象です。

イラン通貨取引の大きな部分は禁じられ、イランの自動車産業も制裁対象となります。米国と欧州で製造された航空機をイランに販売することもできなくなります。

11月5日までには、米政府はイランのエネルギー部門に対する「核関連制裁」を完全実施し、イラン産原油の輸入禁止と、外国金融機関によるイラン中央銀行との取引禁止も始まる予定です。

トランプ大統領は8月6日、核合意は「一方的でひどい取引」だったと述べ、「イランの核兵器保有への道を完全に絶つという根本的な目的を達成することができないどころか、虐殺や暴力、混乱を拡大し続ける残忍な独裁政権に、現金という援助を差し伸べるものだ」と新ためて批判しました。

今回の大統領令を受けて、イランのジャバド・ザリフ外相は次のようにツイートました。「トランプ政権は、イラン国民のことを案じているふりをしている。それでいて、最初に科した制裁は、200機を超えるジェット旅客機の輸出を止めることだが、これこそイラン国民が生きるのに欠かせないインフラだ。アメリカの偽善には際限がない」

2015年Timeが選ぶ最も影響力がある100人のうちの一人に選ばれたムハマド・ジャバド・ザリフ氏

トランプの大統領令に先立ち、フランス、イギリス、ドイツの外相と、欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表は8月6日に共同声明を発表し、アメリカ政府の決定について遺憾の意を表明しました。外相らはまた、ヨーロッパとイランの経済的な結びつきを守ることを約束しました。

実は、ルノーやプジョー、フォルクスワーゲンといったヨーロッパの自動車メーカーがイランに工場を持っていることから、イランの自動車生産台数は世界12位です。トランプ大統領は、イラン経済で最大かつ海外からの投資が最も多い部門に打撃を与えることになります。

イランの企業や政府と取引できなくなっても、米国企業はさほど困りません。イラン経済は米国に依存していないし、米国と強い結びつきを持っているわけでわもありません。影響が大きいのは、欧州の企業や政府のほうです。

トランプ大統領は、米国が彼らにとって最大の貿易相手国であることを盾に取り、イランとのつながりを断てと脅しているのです。

イランの通貨リアルは暴落しています。イランは外界に向けて完全に開放されていない最後の主要な新興市場です。8000万人の消費者を擁し、人々の教育水準は高く、貴金属など天然資源も豊富です。

米国による経済制裁は、少なくともトランプ大統領の任期が残っている間は、潜在力を発揮しようとするイランの取り組みにとって大きな打撃となることでしょう。

イランは自国に巨大な消費市場を持っており、3億人規模の消費者を擁する中東や北アフリカでは主要な工業国です。経済制裁は、原材料や主要部品へのアクセスを制限することで、イランの鋼鉄やアルミ、自動車といった産業に打撃を与えるよう計算されています。

過去数カ月の間に米国が経済制裁の再開に言及しただけで、2015年の核合意後に築き上げてきたあらゆる活気が勢いを失っています。

15年のリセッション(景気後退)後、イラン経済は16年に12.5%の成長を記録しました。今年も堅調な伸びを示すとみられています。国際通貨基金(IMF)の試算によれば、今年の経済成長率は4%です。しかし、これは、米国が核合意から離脱する前に計算されたものです。

核合意後は欧州の主要企業が数十億ドル単位の契約を次々と結んでいきました。しかし、資本調達と法人株主による投資の両方の観点から米金融街は重要であり、欧州企業は経済制裁第2弾のリスクに直面することはできません。

米国はイランの指導層と一般の人々との間に不和を引き起こし、最終的には政権交代を目指していると信じている人は多いです。米政府は政権交代について否定しています。

通過リアルの暴落は一般のイランの人々にとっては大きな打撃です。失業率は上昇し、特に若年層が厳しい状況に陥っています。輸入品のコストのせいでインフレも進んでいます。断続的な経済制裁が何年も続いていることでインフラへの投資が不十分なため水や電気が不足しています。

ハメネイ師を最高指導者とする政治体制は、穏健派とみられている政府と強硬派の軍とのバランスを取ろうとしています。人々からの圧力を受けるのは今後もロウハニ大統領ということになるでしょう。

ロウハニ大統領

米政府に対して強い不信感を抱いている強硬派が勢いづくのは間違いないです。強硬派はまた、国内のあらゆる場所に勢力を伸ばしていることから、イランが世界経済に対して完全に開かれた場合には失うものが最も多い存在でもあります。

テヘランなどの大都市では抗議デモが起きています。ところがその怒りは、トランプ大統領や米国ではなくハサン・ロウハニ大統領に向かっています。核開発より経済を優先してアメリカのオバマ前政権などと核合意にこぎつけたロウハニは今、イランの経済苦境の理由を国会で証言するよう、国会議員たちから迫られています。

イランの惨状はこれから、さらにエスカレートしていくことでしょう。ハメネイ師を最高指導者とする政治体制も崩壊するかもれしれません。そうなると、イランは混乱の巷になるはずです。

これは、北にとってはかなりの脅威となることでしょう。「核廃棄」をしなければ、北もイランと同じようなことになるということで、かなりの見せしめになるはずです。

このブログでは、米国の本命は米国を頂点する戦後秩序に挑戦しようとする、中国であると掲載してきました。また、米国と中国が直接軍事対決することは米国のドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)ですら、現実的ではないとみなしていることを掲載しました。

しかし、北朝鮮を軍事攻撃することは、非現実的とはいえないかもしれません。米国は、北がイランの経済制裁の結果をみせつけてもなお、「核廃棄」をしなければ、北に軍事攻撃をするかもしれません。

そうして、それは中国に対して、最大級の脅威となることでしょう。これを米国が実行した場合、米国は中国本土は攻撃はしないものの、元々中国の領土ではない、南シナ海の環礁埋立地を米国が攻撃するかもしれないと危惧させるには十分であるといえます。

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