2019年6月30日日曜日

財務省がぶち上げた「希望的観測」が、世界中からバカにされる理由―【私の論評】企業の目的は「顧客の創造」であり、財務官僚に便宜を図ることではない(゚д゚)!

財務省がぶち上げた「希望的観測」が、世界中からバカにされる理由
消費税10%が悲願なのはわかるけど…

表と裏

日本初開催となったG20財務大臣・中央銀行総裁会議。6月8日の討議で、麻生太郎財務相は10月1日に消費税率を10%へと引き上げる方針を説明した。


福岡で開かれた本会議では、世界経済の先行きについて「様々な下方リスクを抱えながらも年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」との認識を共有した。海外の経済首脳たちは、日本の消費増税をどのように評価しているのか。

一般的にいえば、国際会議の場において、会期中に議長国を批判することはまずない。したがって表向きでは日本政府の消費増税路線について異を唱える国は存在しない。そもそも国家にとっての税(に関する取り決め)は、各国が持つ主権そのものであり、他国が四の五の言うことはまずない。

では、世界のエコノミストたちはどのように考えているのだろうか。

2016年、官邸で世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」があった。それに出席したノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、「世界経済は難局にあり、'16年はより弱くなるだろう」との見解を示した。そのうえで、「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」と述べ、'17年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。

ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授

この意見を'19年の現状に照らし合わせると、'20年の世界経済は米中貿易戦争の影響が予想され、'16年より深刻な状況にあるとみてよい。今スティグリッツ教授に意見を求めても、同じ答えが返ってくるだろう。

財務省の大きな勘違い

'17年に来日したクリストファー・シムズ米プリンストン大教授も、「消費増税は財政再建のために必要であっても、2%の物価目標達成後に実施するのが望ましい」と主張した。ちなみにポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授も、今年に入り消費増税は見送るべきだと発言している。これら経済学の権威の回答が、消費増税に対する海外の本音と見るべきだ。


このところグローバル経済は軟調だ。次の消費増税のタイミングと、経済の下り坂に入る瞬間が重なったらどうなるか。前回消費増税時に起きた景気失速が繰り返されるかもしれない。

今後の世界経済の減速は、IMF(国際通貨基金)も警告し、中国などは減税措置の経済対策を打ち出そうとしている。その時に消費増税とは、各国の経済首脳も耳を疑ったに違いない。ところが財務省は、開催国には批判が及ばないことを見越して、財務大臣に消費増税を言わせた。これで世界各国の「お墨付き」を受けたとするわけだ。

会議で発した「年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」という言葉は、あまりにも希望的観測すぎる。経済政策は最悪の場合を常に想定するのがセオリーだが、政府は大きな勘違いをしている。

先のクルーグマン教授も、世界経済の見通しはかなり不透明で、その要因の一つが米中貿易戦争であると指摘している。アメリカではトランプ大統領が関税率を設定する完全な自由裁量を持ち、その先行き不安がリーマン・ショック級の事態を引き起こす可能性を控えている。財務省の希望的観測を信じていたら、日本経済は深刻なダメージを受けるだろう。

『週刊現代』2019年6月22・29日号より

【私の論評】企業の目的は「顧客の創造」であり、財務官僚に便宜を図ることではない(゚д゚)!

これまで、ブログでは現状の消費税増税は、以下に政策として握手中の握手7日、さらに消費税がいかに欠陥だらけの税制なのかをご説明してきました。

総務省の「家計調査」によると2002年には一世帯あたりの家計消費は320万円をこえていたが、現在は290万円ちょっとしかありません。先進国で家計消費が減っている国というのは、日本くらいしかないのです。これでは景気が低迷するのは当たり前です。

この細り続けている個人消費にさらに税金をかけたらどうなるでしょうか。景気がさらに悪化し、国民生活が大きなダメージを受けることは火を見るより明らかです。実際に、消費税が上がるたびに景気が悪くなり、消費が細っていくという悪循環を、日本は平成の間ずっとたどってきました。


日本では、個人消費がGDPの6割以上を占めているで、これではGDPが伸びないのは当然のことです。

だから、上の記事にあるように、海外のノーベル賞級の経済学者が消費税増税をすべきではないというのは当然であり、誰が考えても消費税増税は日本の経済にとって良くないのは、明白です。

この欠陥だらけの消費税を一体だれが推進してきたのでしょうか。その最大の推進者が財務省なのです。政治家が消費税を推進してきたように思っている方が多いかもしれないが、それは勘違いです。

政治家は、税金の詳細についてはわかりません。だから、財務省の言いなりになって、消費税を推奨してきただけです。むしろ、政治家特に与党の政治家は、消費税の導入や税率アップには、何度も躊躇してきました。増税をすれば支持率が下がるからです。

それを強引にねじ伏せて、消費税を推進させてきたのは、まぎれもなく財務省です。なぜ財務省は、これほど消費税に固執し、推進してきたのでしょうか?

財務省が、主張するように「国民の生活をよくするため」「国の将来のため」などでは、まったくありません。それは、国民や政府などは全く関係なく「財務省の省益」を維持するためです。

まず財務省のキャリア官僚にとっては、「消費税は実利がある」ということです。消費税が増税されることによって、彼らは間接的にではありますが、大きな利益を手にするのです。なぜなら、大企業と財務省は、根の部分でつながっているからです。


ただ財務省といっても、財務省の職員すべてのことではありません。財務省の「キャリア官僚」のみの話です。なぜ財務省のキャリア官僚が、消費税の増税で利益を得るのかというと、それは彼らの「天下り先」に利をもたらすからです。天下り先が潤うことで、財務省のキャリア官僚たちは、間接的に実利を得るのです。

財務省のキャリア官僚のほとんどは、退職後、日本の超一流企業に天下りしています。三井、三菱などの旧財閥系企業グループをはじめ、トヨタ、JT(日本たばこ産業)、各種の銀行、金融機関等々の役員におさまっているのです。

しかも、彼らは数社から「非常勤役員」の椅子を用意されるので、ほとんど仕事もせずに濡れ手に粟で大金を手にすることができるのです。まさらに、天下りで、リッチなハッピーライフを送っているのです。

財務省キャリアで、事務次官、国税庁長官経験者らは生涯で8億~10億円を稼げるとも言われています。この辺の事情は、ネットや週刊誌を見ればいくらでも出てくるので、興味のある方は調べてください。

つまり財務キャリアたちは将来、必ず大企業の厄介になる、そのため、大企業に利するということは、自分たちに利するということなのです。

消費税は大企業にとって一見非常に有利にみえます。というのも、消費税の導入や消費税の増税は、法人税の減税とセットとされてきたからです。

消費税が導入された1989年、消費税が3%から5%に引き上げられた1997年、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年。そのいずれも、ほぼ同時期に法人税の引き下げが行われています。その結果、法人税の税収は大幅に減っています。

法人税は、消費税導入時の1989年には19兆円ありました。しかし、2018年には12兆円になっているのです。つまり法人税は、実質40%近くも下げられているのです。

「日本の法人税は世界的に見て高いから、下げられてもいいはず」と思っている人もいるかもしれません。が、その考えは、財務省のプロパガンダにまんまとひっかかっているのです。

日本の法人税は、名目上の税率は非常に高くなっていますが、大企業には「試験研究税制」「輸出企業優遇税制」などの様々な抜け道があり、実質的な税率はかなり低いのです。

日本の法人税が実質的に低いことの証左は、日本企業の内部留保金を見ればわかります。日本企業はバブル崩壊以降に内部留保金を倍増させ446兆円にも達しています。

また日本企業は、保有している手持ち資金(現金預金など)も200兆円近くあります。これは、経済規模から見れば断トツの世界一であり、これほど企業がお金を貯め込んでいる国はほかにないのです。

こんなことを言うと米国の手元資金は日本の1.5倍あるという人もいるかもしれませんがが、米国の経済規模は日本の4倍です。経済規模で換算すると、日本は米国の2.5倍の手元資金を持っていることになるのです。世界一の経済大国であるアメリカ企業の2.5倍の預貯金を日本企業は持っているのです。

だから、本来、増税するのであれば、消費税ではなく、法人税であるべきなのです。にもかかわらず、なぜ法人税ではなく消費税を増税するのかというと、先ほども述べたように財務省のエリートたちは、大企業に天下りしていくため、彼らは財界のスポークスマンになってしまっているのです。

官僚の天下りは、昔から問題になっていたことであり、何度も国会等で問題になり改善策が施されたはずです。官僚の天下りはもうなくなったのではないか、と思っている人もいるようです。

確かに、財務官僚以外のキャリア官僚たちの天下りは、大幅に減っています。ところが、財務官僚の天下りだけは、今でもしっかり存在するのです。なぜ財務官僚だけが、今でも堂々と天下りをしていられるのでしょうか。

実は、現在の天下りの規制には、抜け穴が存在するのです。現在の公務員の天下り規制は、「公務員での職務で利害関係があった企業」が対象となっています。が、この「利害関係があった企業」というのが、非常に対象が狭いのです。

たとえば、国土交通省で公共事業の担当だった官僚が、公共事業をしている企業に求職をしてはならない、という感じです。が、少しでも担当が違ったりすれば、「関係ない」ことになるのです。

また、バブル崩壊以降の長い日本経済低迷により、企業たちも天下り官僚を受け入れる枠を減らしてきました。だから、官僚の天下りは相対的には減っています。しかし、財務官僚だけは、ブランド力が圧倒的に強いために、天下りの席はいくらでも用意されるのです。

財務省は、本来政府の一下部組織にすぎません。会社でいえば、本来は部のようなそんざいです。ところが財務省は一般の人が思っているよりはるかに大きな権力を持っています

財政だけではなく、政治や民間経済にまで大きな影響を及ぼしているのです。日本で最強の権力を持っているとさえいえます。そのため、その権力をあてにして、大企業が群がってくるのです。

しかも、企業にとって、財務官僚の天下りを受け入れるということは、税金対策にもなります。財務省は国税庁を事実上の支配下に置いており、徴税権も握っています。そのため各企業は、税金において手心を加えてもらうために、競うようにして財務官僚の天下りを受け入れているのです。

つまりは、大企業が税金対策のために財務官僚を天下りで受け入れていることが、国民全体に大きな損害をもたらしているといえるのです。

もし財務官僚を「上場企業への天下り禁止」などにすれば、国の税制は大きく変わるはずです。少なくとも、今のような大企業優遇、消費税推進などの流れは必ず変更されるはずです。

しかし、これはなかなか難しいことです。もし政府がそのような動きをみせれば、財務省はありとあらゆる手を使って、妨害するからです。何しろ、財務官僚のOBは、マスコミ各社にも存在しており、その他大手企業の天下りしたOBもあわせて、財務省は徹底抗戦するからです。

これには、並みの政治家にはなかなか制御できません。昨日の記事の結論でも述べたように、日本では財務省が政治のネックになっていることは確かです。財務省は、本来会社でいえば、財務部のようなものであり、会社の一部門にすぎません。ところが、これが実質的に金の力で、取締役を支配しているような歪な構造になっています。これはいずれ何とかしなければならない最大の課題です。


そうして、大企業の経営者も良く考えていただきたいです。そもそも、企業の目的とは「顧客の創造」です。それ以外にありません。財務官僚の失策により、景気が悪くなれば、多くの顧客の個人消費が減ります。

そうなると、大企業とて苦しいことになります。わずか数年前には、どの企業も超円高・超デフレで苦しんだばかりではありませんか。日本を代表するような企業が、とんでもないことになっていたではありませんか。

大企業とて、顧客に見放さされれば一夜にして、市場から消えるしかありません。大企業が顧客から見放されても、財務省は救ってはくれません。企業にとって顧客と財務省のいずれが大事かといえば、顧客に決まっています。

顧客が喜んで、企業のサービスや製品や商品を使ってくれるからこそ、企業は成り立つのです。その精神を忘れてしまえば、大企業とて存続できなくなります。そのことを大企業の経営者は再度しっかりと認識すべきです。顧客を軽視していると、いまにとんでもないしっぺ返しを食らうことになります。

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