2019年6月29日土曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 参院選の自民議席、数量分析から予測すると...―【私の論評】次内閣改造で麻生氏が財務大臣にならなければ、官邸は財務省に挑戦し始めたとみなせ(゚д゚)!


解散恐怖症で党首討論を無為に費やした野党

    2019年6月26日、国会が会期末を迎えた。これで、7月4日公示、21日投開票が確定した。

    今国会での法案提出は新規57本、そのうち54本が成立した。与野党の対決法案は少なく、今国会はいつでも「解散可能」な状態だった。このため、野党はかなりビビった。19日の党首討論でも、解散せよと迫る野党はほぼなく、党首討論で安倍首相が解散しないと確信すると、形式的に内閣不信任決議案を後出しで出す始末だった。

    はっきりいって、党内事情から解散を迫れない野党は、自民党にとってはこわくない。それは、党首討論において安倍首相が余裕綽々だったことからもわかる。

マスコミが年金問題を「煽る」理由

自民党にとって恐ろしいのは世論である。消費増税を10月と決めたので、選挙では逆風もあるだろう。マスコミは消費増税を賛成し軽減税率をほしいので、年金問題が自民党にとって逆風要因と書くだろう。しかし、年金で老後のすべてを面倒見るとは不可能であることを国民は知っている。「年金」と煽っているのは、消費増税を目立たなくしたいマスコミなのだ。

年金問題を煽るマスコミ

ともあれ、消費増税が決まったので、いくらマスコミが書かなくても、国民には不満がたまってくる。実際、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の少し前から、テレビで軽減税率を見込んだCMが出始めた。これから、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。

そうなると、国民の怒りがでてくる。実際、21~23日にNHKが実施した世論調査までは、内閣支持率は前回調査より6ポイント減少し42%、自民党支持率は5.1ポイント低下し31.6%になった。

筆者は、数量分析を専門としているので、経済のみならず、外交軍事から感染症流行まで幅広く分析対象としているが、選挙も例外ではない。いわゆる選挙予測である。この分野は、日本では政治評論家が地道に足で調べた結果ばかりである。足で調べたというものの、ごく少ないサンプル調査でしかない。マスコミはそうした人からの「独特の分析」を掲載している。各政党も独自に調査をしているが、はっきりいってコストパフォーマンスはそれほど良くない。筆者はそうした調査を否定する者ではないが、別のアプローチで選挙予測をする。それは、内閣支持率と自民党支持率から統計的に算出するものだ。

「青木方程式」を活用してみる

政界には、「青木方程式」というものがある。自民党の青木幹雄・元参院議員会長の持論で「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を切ったら、政権は終わり」というものだ。内閣支持率と政党支持率は、過去の国政選挙の自民党の議席獲得率ともかなり密接な関係があるので、それを活用して、選挙予測に使うのだ。

直近の調査でなく前月の調査結果から、予測される議席数は50台の半ばだったが、今は40台の後半にまで落ち込んでいる。これから、消費増税がさらに露出すると、さらに獲得議席は落ち込む可能性も否定できない。

今週はG20で安倍首相のテレビ露出はかなり大きくなる。ただし、投開票の7月21日まで、消費増税の露出が大きくなる中で、どこまで持ちこたえられるか。補正予算などの追加措置をいうだろうが、となるとなぜ消費増税なのかという不満がさらに増すかもしれない。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「日本の『老後』の正体」(幻冬舎新書)、「安倍政権『徹底査定』」(悟空出版)など。

【私の論評】次内閣改造で麻生氏が財務大臣にならなければ、官邸は財務省に挑戦し始めたとみなせ(゚д゚)!

国会は26日に会期末を迎えました。25日に野党側から衆議院に提出された内閣不信任決議案は否決されました。与野党の攻防の舞台は7月の参議院選挙に移りました。

今国会に提出された法案を見ると、5月以降はほとんど法案の審議がない状況でした。そのためいつでも解散できるような状態でしたが、結果的に安倍総理はしませんでした。なぜかということは、安倍総理しかわかりません。

ただし推測すると、これは解散するときに消費増税は延期もしくは凍結という話が出るでことになったでしょうが、麻生財務大臣としては、消費増税を実施したいという強い意向があり、これ優先したのだと思います。

結局、安倍総理は、財務省の文書変更、書き換えがあっても、普通ならば大臣の首は飛ぶところですが、それでも安倍総理は麻生財務大臣を守りました。次官のセクハラがあったときも守りました。

昨年の財務省の不祥事と人事をめぐる動き

徹底的に安倍総理は麻生大臣守ったのです。政権運営のためには、麻生大臣は切れなかったのでしょう。財務省もそれをよく熟知し、そこにつけ込みし消費増税の話を仕込んだのではないでしょうか。そう考えないと筋が通りません。

国会開催中でないと衆議院解散はできませんから。国会が終わったら衆議院は開かれないので、解散ができませんから、衆院解散、衆参同時選挙の芽は完全になくなったとみるべきでしょう。

消費増税の内容は、骨太の方針に先週21日に掲載されました。行政手続き論的には、骨太の方針の6月21日に閣議決定して、消費税増税もう決まりです。

その前にそういう動きになっていて、あとは手順だけでした。今回のこの動きは、財務省の影響力がかなり大きいです。

財政審議会の建議というものがあります。昔は財政審の建議が出て、それが経済運営の基本だったのですが、2001年から「骨太の方針」が出て、建議の意味があまりなくなりました。

「骨太の方針」のだいたい3週間くらい前に建議出すことになっていたのです。前に出さないと意味がないですから。いままで最短でも2週間、多くは1ヵ月というときもありましたが、3週間が普通でした。でも今年(2019年)は何と、建議が6月19日でした。そうして、骨太の方針が閣議決定されたのが、21日でした。

21日、19日、これはほとんど同時です。ということは、完全に財務省の官僚が予算のコントロールできて、それを実行したということです。

従来予算編成は財務官僚が完全握っていた時期がありましたが、それを大枠だけでも政治主導でやって行こうというのが「骨太の方針」の趣旨でした。

財務省の財政審の建議が3週間前に行われていたということが、財務省があまりパワーを持っていなかったことの証左でした。ところが、今回は21日と19日、ほぼ同時です。もう完全に財務官僚が予算編成のパワーを持ったということです。

メディアの報道を見ていると、安倍政権は長期政権となり、官邸主導だから行政が歪められているようなことを報道してますが、むしろ逆行してしまいました。2000年からの財政審の建議の日と骨太を見れば、3週間前という綺麗な関係があるのに、今年に限って2日です。こうなってしまうと、消費増税増税も確実に実施されることになります。

麻生氏は、安倍政権のなかの政権運営のための重要人物ですからから、財務大臣である麻生氏を経由して様々なことを財務省ができたのではないでしょうか。

安倍総理と麻生財務大臣

消費増税をして、経済は当然冷え込むだろうと多く人が指摘しています。少しでも冷え込みを回避するために補正予算を組もうと思っても、それすら財務省が緊縮路線ということになるととんでもないことになる可能性もあります。

補正予算でいちばん簡単なのは、国債費を積み増しして、だいたい2兆円くらい余計に積んでいます。それをそのまま使うことです。国債費をたくさん積んでも金利は低いですから、実は不要だと使わなくなるのが普通です。そうなると後で減額修正しなければならなくなります。

減額修正するのだったら、それを補正で使うのが普通のパターンです。これがいちばん簡単なやり方です。ただし、そもそも2兆円では焼け石水ですし、さらに財務省がそうするかどうかはなはだ疑問ですし、もし財務省がそうしなければ、とんでもないことになります。無論経済は悪化し、デフレに舞い戻るのは必至です。

いずれにしても、現在内閣支持率が落ちているところにきて、与党は増税を前提として、参院選を戦わなければならなくなります。そうなると、冒頭の記事にあるとおり、「前月の調査結果から、予測される議席数は50台の半ばだったが、今は40台の後半にまで落ち込んでいる。これから、消費増税がさらに露出すると、さらに獲得議席は落ち込む可能性も否定できない」ということになりかねないです。

さらに、今後自民党総裁の任期が満了する21年9月末までの間で「解散カード」を切る時期は限られてきます。しかも、これが増税の後に行われることになれば、やはり政権の支持率が落ちかなり不利な情勢になります。

参院選後の10月には消費税率が10%に引き上げられます。党内には「増税前にやらないと難しくなる」(中堅議員)との見方があります。しかし、7月21日投開票の見込みの参院選後には議長をはじめとする参院人事や内閣改造が行われます。

このようなことが予め予想されているのですが、政権運営のためには麻生氏切りで財務省の力を鈍化させることはできないという、ジレンマに安倍総理はさらされているのです。

こうなると、参院選挙後の内閣人事が注目されます。このときに麻生氏が財務大臣にならなければ、安倍政権は何らかの活路を見出して財務省に対して戦いを挑み始めたということです。

何らかのウルトラCで、10月増税を阻止するか、それができなくても、ひよっとして短期間のうちに、10%増税から減税するかもしれません。

仮に、今回の参院選挙後の内閣改造でなくても、その後の内閣改造で、麻生氏が財務大臣にならなければ、その芽はでてきます。そうでないと、経済は悪化の一途をたどり、憲法改正もできず、おそらく安倍内閣はレイムダックになることでしょう。

それと同時に、財務省の実体も最近では一部のメディア様々に報道されるようになってきたため、財務省に対する国民の不満もつのることになるでしょう。最近は、テレビをワイドショーで以前は財務官僚を「リスペクト」すると言っていた、弁護士のコメンテーターが、財務官僚を批判していて、時代の変化を感じました。そのことは、安倍総理が一番知っていることでしょう。なんとかして、安倍総理に活路を見出していただきたいものです。

それにしても、日本では財務省が政治のネックになっていることは確かです。財務省は、本来会社でいえば、財務部のようなものであり、会社の一部門にすぎません。ところが、これが実質的に金の力で、取締役を支配しているような歪な構造になっています。これはいずれ何とかしなければならない最大の課題です。

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