ラベル けん制 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル けん制 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年8月8日木曜日

トルコ軍のシリア侵攻が切迫、クルド、“ISカード”でけん制―【私の論評】トルコ軍のシリア侵攻はもはや、確定的なったとみるべき(゚д゚)!

トルコ軍のシリア侵攻が切迫、クルド、“ISカード”でけん制

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

トルコ軍のシリア侵攻が切迫してきた。シリア北東部からトルコが安全保障上の脅威とみなすクルド人を排除するのが目的だが、クルド人と共闘を組んできた米国が侵攻しないよう土壇場の説得を強めている。だが、エルドアン・トルコ大統領はあくまでも侵攻の構えを崩していない。クルド人は臨戦態勢にあり、新たな大規模戦闘勃発の危機が高まっている。

シリアに侵攻したトルコ軍戦車、写真は2018年

数万人が2週間以内に進撃か

 現地からの情報などによると、トルコ軍はすでに数万人がシリアとの国境地帯に集結し、侵攻の準備を整えつつある。「2週間以内に侵攻するだろう」(ベイルート筋)との見方も出るなど緊迫の度合いが高まっている。トルコ軍の作戦には、トルコ配下のシリア反政府アラブ人勢力1万4000人も合流する見通しだ。トルコがシリアに侵攻するのは3回目となる。

 これに対して、迎え撃つシリアのクルド人の武装組織「人民防衛部隊」(YPG)4万人は塹壕やトンネルを建設するなど臨戦態勢。トンネルには野戦病院も設置された。米国と連携してきたYPGは過激派組織「イスラム国」(IS)との地上戦の主力を担い、米国が訓練し、武器を供与した。

 ベイルートからの情報によると、反政府アラブ人勢力はクルド人がISとの戦いの中で、シリア北東部を実効支配し、アラブ人を締め出したと非難しており、「クルド人対アラブ人」という民族的な対立にもなっている。この対立を「トルコがうまく操っている」(ベイルート筋)というのが今の状況だ。

YPGの女性戦闘員たち(2015.1.30)

トルコ軍が侵攻すれば、こうした民族的な対立もあって大規模な戦闘に発展、シリア内戦に新たな戦線が生まれる恐れが強い。そうなれば、米国にとっての同盟者であるクルド人が窮地に陥る他、シリアから米部隊を撤退させるというトランプ大統領の公約が破綻しかねない。このため、米政権は現在、国防総省の代表団をアンカラに派遣、トルコとの土壇場の協議を続けている。

 トルコはテロリストと見なすクルド人の勢力拡大が自国の脅威に直結するとして米国にクルド人支援をやめるよう要求。国境のシリア側に「安全保障地帯」を設置し、トルコ軍がその一帯に進駐し、クルド人を国境地域から排除する構想を米側に提案してきた。米国は「安全保障地帯」の設置を認める代わりに、米・トルコ部隊による合同パトロールの実施と、トルコ軍がクルド人を攻撃しないよう保証を求め、この対立が解けていない。

 「安全保障地帯」の規模についても、米側は長さ約140キロ、奥行き14キロと主張しているのに対し、トルコは奥行き30キロ以上を要求し、難航している。トルコは現在、国内にシリア難民360万人を抱えているが、これら難民の一部の帰還場所として「安全保障地帯」を活用したい意向を持っており、できるだけ広大な一帯を確保したい考えだ。

IS戦闘員1万人脱走の恐れ

 エスパー米国防長官は6日、日本訪問の途中、「トルコの侵攻は受け入れ難い。われわれがやろうとしているのはトルコの一方的な侵攻を食い止めることだ」と強く警告した。だが、両国の交渉がうまくいかない理由の1つはトルコが7月、米国の反対を押し切ってロシア製地対空ミサイルシステムS400を導入したことにある。

 米国はトルコのこの決定に対し、最新鋭ステルス戦闘機F35の多国間共同開発計画からトルコを排除、100機の売却も停止するなど、関係悪化が修復する兆しはない。エルドアン大統領が米国からロシア寄りにシフトしたのは対米不信を示すためだ。

 その対米不信の大元は、2016年のクーデター未遂の首謀者としてエルドアン大統領が引き渡しを要求する在米のギュレン師の送還を、トランプ政権が拒んでいることにある。エルドアン大統領は国内で5万人を超えるギュレン派を逮捕、約20万人を職場などから追放した。それだけに、ギュレン師引き渡しに応じない米国に対する疑念を強めた。

 だが、トルコ軍が侵攻した場合、実はもう1つ深刻な問題がある。それはクルド人が仮設の刑務所に収容している約1万人のIS戦闘員の扱いだ。クルド人は学校を改造した刑務所などにこれら戦闘員を拘留しているが、裁判などの法的手続きは全くなく、その扱いは放置されたままだ。

 米紙ワシントン・ポストによると、戦闘員の内訳は約8000人がシリア人とイラク人で、残りの2000人は他の国からISに参加した若者らだ。ISには世界80カ国から戦闘員が集まった。だが、こうした拘束されたIS戦闘員については、各国とも引き取りを拒否、その扱いは宙に浮いたままだ。

 同紙によると、クルド人の政治家の1人は「トルコと戦うか、ISの囚人を警護するかの2つに1つだ。われわれは両方に対応することはできない。トルコが攻撃してきたのを彼らが目撃すれば、刑務所を破壊して逃亡するだろう」と指摘し、“ISカード”をちらつかせてけん制している。

 確かに、1万人のIS戦闘員が脱走すれば、トルコにとっても、また米国にとっても大きな厄介事を抱えることになる。米国防総省の監察官は8月6日、「シリアでISが復活しつつあり、イラクでは実際にテロなどを引き起こしている」との報告書を発表した。トルコの侵攻はISとのテロとの戦いにも深刻な問題を提起することになるだろう。

【私の論評】トルコ軍のシリア侵攻はもはや、確定的なったとみるべき(゚д゚)!

トルコのエルドアン大統領の求心力の低下が囁かれています。最大の理由は、6月23日に再投票された最大都市イスタンブールの市長選で、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマームオール候補者が、得票率で約9ポイント、得票数で約80万票もの大差で与党候補のユルドゥルム元首相に勝利したことです。

エルドアン大統領

3月31日に行われた市長選では、イマームオール候補者が得票率にして0.2%強、得票数にして1.3万票の僅差ながら勝利していました。

ところが、その後、エルドアン大統領が党首を務める公正発展党(AKP)の主導する与党陣営が、明らかな組織的不正があったとして投票のやり直しを求めた結果、最高選挙管理委員会(YSK)が同投票を無効と宣告しての今回の再投票でした。それだけに、再投票での大差での敗北は大統領にとり痛手となりました。

エルドアン大統領の党内の掌握力が弱まりつつあることを示す今一つの動きが、AKP創設メンバーのババカン元首相とギュル元大統領による新党結成の動きです。既にババカン元首相筋は、今秋を目途に新党結成の可能性の高いことを明らかにしています。

エルドアン大統領は外交面でも難問に直面しています。最大の課題は、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」の導入を巡り悪化した米国との関係をいかに修復するかです。

トランプ米大統領とエルドアン大統領は6月29日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開催された大阪で会談し、ロシア製ミサイルの購入に関して意見交換しています。

トランプ大統領は、同会談冒頭でトルコがロシア製ミサイル・システムを導入した場合に制裁を発動するかを記者団に問われ、検討していると答えるに留めました。その上で会談後の記者会見において、トルコが同ミサイル・システム購入を決定したことに懸念を表明し、トルコに対して、北大西洋条約機構(NATO)の同盟強化につながる対米防衛協力の推進を要請していました。

他方、トルコ大統領府は同会談後、トランプ大統領は両国関係を害することなく問題の解決を図りたいとの願いを口にしていたと発表していました。

今のところ、ロシア製ミサイル・システムのトルコ導入が始まっていないこともあり、米国の制裁も発動されていません。

ただし、米国は既に6月中旬時点で、ロシア製ミサイル・システムの購入を撤回しない限り、米国の最新鋭ステルス戦闘機「F35」をトルコに納入しないと表明しています。また、仮に導入となった場合に備えて3種類の制裁が検討されていることも明らかにされていまか。

求心力が低下するなか、内憂外患に陥ったエルドアン大統領が、次の手がトルコ軍のシリア侵攻のようです。

シリア北部でアメリカと連携して構築される予定の「安全地帯」に向けて、アメリカ軍当局と行われた会談により、トルコで合同作戦局が直近で設立されることで合意がなされています。

トルコ国防省から出された声明によると、シリア北部で米国と連携して構築される予定の安全地帯に向けて、8月5-7日にトルコ国防省でアメリカ軍当局との間で行われた会談が終了しました。

会談で、トルコの安全保障への懸念を解消するための最初の段階の措置を一刻も早く講じること、その枠組みで安全地帯の構築がアメリカと連携して行われること、その管理のためにトルコで合同作戦局が直近で設立されることで合意がなされました。

トルコ軍とアメリカ軍当局は、安全地帯を「平和回廊」とすること、住む場所を追われたシリア人の帰国のためにあらゆる追加の措置を講じることでも合意に至りました。

シリア北部への「安全地帯(secure zoneあるいはbuffer zone)」設定という案は、以前からシリアの反政府勢力から要求されており、トルコも繰り返し提案してきました。

2012年10月ごろに報じられた、その当時トルコが意図した安全地帯はこの地図のようなものだったとされています。一部の報道では現在の問題を議論する際にもこの地図が流用されていますが、トルコと関係諸国との議論で同じ領域が念頭に置かれているかどうかは定かではありません。



アレッポ県では、ANHA(8月7日付)によると、トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団が、北・東シリア自治局とシリア政府の支配下にあるタッル・リフアト市近郊のマルアナーズ村を砲撃しました。

この砲撃に先立って、トルコ軍戦闘機2機が、タッル・リフアト市一帯地域(いわゆるシャフバー地区)に飛来、上空を旋回しました。

一方、アフリーン解放軍団が声明を出し、6日にタッル・リフアト市近郊のシャワーリガ村、マーリキーヤ村に侵攻を試みたトルコ軍と反体制武装集団を迎撃し、戦闘員(シャーム戦線、北の嵐旅団)7人を殲滅したと発表しました。

トルコ軍のシリア侵攻はもはや、確定的なったとみるべきでしょう。

【関連記事】

【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃―【私の論評】世界にとって通貨危機よりもはるかに危険なトルコ危機の本質(゚д゚)!

2017年5月2日火曜日

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも―【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも

海上自衛隊最大の新型ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の引き渡し
式を終え、飛行甲板に整列し敬礼する乗組員ら
2015年03月25日
 朝鮮半島の高度な緊張状態が続くなか、強固な「日米同盟の絆」が示された。海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が1日午前、海自横須賀基地(神奈川県)を出港、米海軍補給艦の防御を行った。昨年3月に施行された安全保障関連法に基づく米軍の「武器等防護」は初めて。加えて、日米英仏4カ国による初の合同訓練も3日から実施される。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に圧力を加える一方、東・南シナ海で強引な海洋進出を続ける中国を牽制(けんせい)する狙いだ。

 「いかなる事態にも、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重要な責務だ。そして、大切なことは『有事を事前に防ぐこと』だ」「平和安全法制(安全保障関連法)では、あらゆる事態に隙間のない対応ができる態勢を完備した」

 安倍晋三首相は先月末、夕刊フジ「GW特別号」(2日発行)の単独インタビューでこう語った。その強い信念と覚悟が表れたといえるのが、海自史上、最大級の護衛艦である「いずも」の動きだ。

 政府関係者によると、「いずも」は、護衛艦「さざなみ」とともにシンガポールで今月開かれる国際観艦式に参加するため、1日に横須賀基地を出港。東京湾を出たところで、米海軍補給艦と合流して西へ向かう。補給艦は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮に対する警戒で、日本周辺に展開している米軍艦艇に燃料などを届ける。

 「いずも」は基準排水量1万9500トン、全長は248メートルと、東京都庁(243メートル)より大きい。最大14機のヘリコプターを搭載できる。多くの哨戒ヘリを一気に投入することで、潜水艦捜索能力が強化される。米補給艦に近づく他国軍潜水艦の警戒・監視に当たる。

 ただ、防空能力や攻撃能力を必要最低限しか装備していない。このため、「いずも」以外の護衛艦も米艦防護に加わる可能性もある。日米の連携を実際の任務でも示し、「世界規模の脅威」となった北朝鮮の暴発を阻止する。

 韓国で行われていた米軍と韓国軍による合同野外機動訓練「フォールイーグル」は4月30日に終了したが、朝鮮半島の緊張状態は続いている。

 朝鮮人民軍の創建85年の記念日「建軍節」(同25日)に合わせて、南東部にある元山(ウォンサン)一帯で、300門余りの長距離砲などを投入した過去最大規模の火力訓練を行った。同29日には、平安(ピョンアン)南道、北倉(プクチャン)付近から弾道ミサイル1発を発射した。

 米韓両軍は警戒態勢を緩めていない。

 世界最強の米原子力空母「カール・ビンソン」と、韓国海軍の共同訓練は同29日から始まった。韓国からはイージス駆逐艦「世宗(セジョン)大王」などが参加。巡航ミサイル「トマホーク」を154発も搭載する、米海軍最大の原子力潜水艦「ミシガン」も、半島周辺にとどまっている。

カールビンソン
釜山港に入港した「ミシガン」
 アジア太平洋地域の平和と安定を守る、新たな動きも明らかになった。

 日米英仏4カ国による合同訓練に参加するため、フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」も先月29日、海自佐世保基地(長崎県)に寄港したのだ。訓練は3日から22日まで、米領グアムなどで実施される。

フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」
 「ともに手を携えて訓練することで、相互運用性を高められる」

 艦長のスタニスラス・ドゥ・シャルジェール大佐は、こう語った。

 「ミストラル」には、英海軍ヘリコプターを搭載しており、水陸両用作戦を担う陸上自衛隊の西部方面普通科連隊員や、米海兵隊員らも乗せて5日に佐世保を出港する。海自の輸送艦「くにさき」と、共同訓練を行いながら南下し、グアム周辺では4カ国で上陸訓練などを行う。

 ドナルド・トランプ米大統領は4月29日、米CBSテレビのインタビュー(同30日放映)で、北朝鮮が「6回目の核実験」を強行した場合、軍事行動に踏み切るのかと聞かれ、次のように答えた。

 「分からない。そのうち分かるよ」

 軍事的選択肢を排除しない考えを明確にした。

【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

以前このブロクで北朝鮮有事の8つのリスクについて掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
先月終了した米韓合同演習「フォールイーグル」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、朝鮮半島リスクのうちの中国がらみのリスクをこの記事から以下に引用します。
 日米韓三か国が朝鮮半島有事対応に追われている隙をついて中国が例えば尖閣諸島に海上民兵――米軍はLittle green menと呼ぶ――を送り込んでくる可能性がある。日本としては、朝鮮半島からの避難民対応で海上保安庁の巡視船を日本海に配備しなければならず、尖閣諸島周辺はがら空きになる。もちろん自衛隊も朝鮮半島対応に追われている。 
 その隙を衝こうと中国なら考えているはずだ。正規軍を送れば国際社会から非難されるが、漁民を装った「民兵」が荒天を避けるために尖閣諸島に避難し、そのまま居座るケースが考えられる。
このリスクに関しては、あり得ると私は思っていましたが、朝鮮半島付近にこれだけまるで武器の展覧会のように、空母などの艦船や潜水艦が集結しているのですから、仮に中国がこのような野望を抱いていたとしても、実行するだけの勇気はないことでしょう。

これだけの大量の武装集団が控えているそのすぐそばで、そのような素振りでも見せれば、まずは激しく牽制されるだろうし、本当に尖閣付諸島に海上民兵でも送り込むようなことをすれば、日本側もこれに厳しく対処するでしょう。

それにこれはどの国からみても、火事場泥棒のように見えますから、米国などもこれに対処しやすいでしょう。米国も南シナ海の中国への牽制として、これを見過ごすことしないでしょう。

そうして、北朝鮮有事でも米軍はこれだけの武装集団を送り込んでくるわけですから、これが中国有事ともなれば、とんでもないことになると、考えていることでしょう。

それと、在日と米軍は、現在の北朝鮮への対応そのものとは直接関係なく、日本国内の米軍の再編を勧めていました。

在日米軍は、元々海兵隊や海軍の最先端航空戦力を中国と北朝鮮に近い日本の西部地域に集中させる再編作業を今年中に終える予定でした。この改編作業が終われば、山口県に位置する米海兵隊の岩国基地は、日本本土から中国と北朝鮮を牽制する前哨基地として生まれ変わることになります。

F35B戦闘機が到着し、関係者らによる式典が行われた=今年1月20日午後、山口県岩国市
昨年8月23日、武井俊輔・外務大臣政務官や宮沢博之・防衛大臣政務官などが、山口県岩国市で福田良彦・岩国市長に、来年1月から米国の最新鋭ステルス戦闘機F-35Bを在日米軍岩国基地に配備する計画を伝えたと公表しました。この計画に基づき、来年1月に10機、8月に6機のF-35Bが岩国に追加配備されます。この機種は一般空軍用F-35A、艦載機用F-35Cとは異なり、垂直の離着陸が可能です。

さらに、日米両国はこれまで進めてきた在日米軍の再編計画に基づき、現在、米第7艦隊の母港である横須賀に配備された空母「ロナルド・レーガン」などで運用される艦載機59機(FA-18ホーネットとスーパーホーネットなど)を神奈川県厚木基地から岩国に移転します。
FA-18スーパーホーネット
在日米軍はこれまで横須賀に近い厚木基地において艦載機の整備と訓練のための陸上基地として活用してきたのですが、中国や北朝鮮などに近い西部地域に拠点を移すことになります。これに先立ち、在日米軍は2014年8月に沖縄に配備されていた航空給油機KC-130の15機を岩国に移転しました。

こうした一連の動きは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威と中国の海洋進出への対抗を迫られている日米同盟にとって、自然な選択と言えます。米国は、日本の集団的自衛権について初めて「歓迎」の立場を明らかにした2013年10月、日米安全保障協議委員会(2+2会議)で、当時開発がまだ終わっていなかったF-35Bを「2017年に(米)国外では初めて日本に前方配備する」計画を明らかにしました。

現在も岩国には米海兵隊のFA-18ホーネットとAV-8ハリアーなどが配備されています。F-35Bはこれらの機種に代わるものとして、昨年1月から新たに配備されました。

岩国基地へのF-35Bの配備は日米同盟と中国の激しい力比べが続けている東アジア情勢に複合的な影響を及ぼすものとみられます。F-35Bは、高いステルス性能を備えている上、行動半径が1000キロメートルを超えます。

また、機体に射程距離が370キロメートルに達する「空中発射巡航ミサイル」(JASSM)を搭載できます。F-35Bが岩国から発進した場合、日本海の公海上で北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を原点打撃する能力を備えることになります。


さらに、F-35Bは、有事の際、いずもなど日本の軽空母に離着艦し、弾薬の提供と給油を受けることもできます。日本政府は、米国に対するこのような後方支援ができるように、一昨年9月、安保関連法を改正しました。実際このようなことが行われる可能性も十分にあります。

F-35Bは、中国牽制にも活用されます。この戦闘機を運用する予定の米海兵隊の強襲艦LHD-6 ボノム・リシャールは、長崎県佐世保に駐留しています。米海兵隊の強襲艦がF-35Bを乗せたまま、東シナ海と南シナ海の広い領域を監視し、中国の海洋進出を牽制できるのです。さらに、岩国にはKC-130空中給油機が15機も配置されており、F-35Bの活動範囲は飛躍的に拡大することになります。
強襲艦LHD-6 ボノム・リシャール
現在の北朝鮮有事に備えた行動とは別個に、米国は日本国内でこのような軍事的な再編を行っているのです。

さらに、最近の北朝鮮に備えての日米の緊密な連携ぶりは、中国にとってはかなりの脅威だと認識されていることでしょう。

北朝鮮有事に備えてでさえ、現状の規模の展開がなされているわけですから、これが中国に対するとなれば、この数十倍になることも予想できます。日米英仏どころか、世界中の武装集団が集結することになるかもしれません。

ただし、尖閣の危機が完璧に去ったというわけではありません。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月30日、中国海警局の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されたのは2日連続でした。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載していました。領海に近づかないよう巡視船が警告した。29日は4隻が確認されましたが、1隻は同日午後6時半ごろに接続水域の外に出ました。

日本側としては、中国が火事場泥棒のような真似をしたら、排除や逮捕するなどして、すぐにこれに対処した上で、全世界に向かって中国の火事場泥棒的行動を非難し、その無法ぶりを世界に強く印象づけるべきでしょう。占拠された後で、これを非難しても後の祭りです。

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...