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2015年9月4日金曜日

中国、100兆円規模の資金逃避か “宴の後の厳しい現実”―【私の論評】中国経済を見れば、貿易・経常収支は黒が良いという認識は非常識であることがよくわかる!


「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念行事で閲兵する習近平国家主席=3日、北京
抗日戦争勝利70周年記念の軍事パレードで「強い中国」を強調した習近平国家主席。しかし、北京上空の人為的な青空は4日午前、再び汚染された。「閲兵ブルー」と同様、株や人民元を強権的に誘導する政策効果も長くは続かない。海外投資家は不信感を強め、100兆円規模の巨額資金も流出、“宴の後”には厳しい現実が待ち受けている。

 北京市内の微小粒子状物質「PM2・5」を含む汚染指数は4日午前、「不健康」レベルを示す155を記録。普段の大気汚染状態に戻った。

 上海株式市場でも、政府系とみられる資金で人為的に買い支えられてきたが、政権のメンツを保つための「パレード相場」も終わりそうだ。

 すでに株価の乱高下をめぐって英ヘッジファンド中国部門の女性トップが拘束されたと報じられた。また、ロイター通信は、規制当局の会合に呼び出されたあるファンドの幹部が、友人に「もし私が戻ってこなかったら、妻の面倒をみてくれ」と伝えたというエピソードを紹介。ロイターは別のコラムで「中国の強権的な手法が投資リスクを大きくしている」と警鐘を鳴らす。

 実体経済も厳しい。中国国家統計局などが公表した製造業の景況感指数は3年ぶりの低水準となった。大気汚染を改善するため、1万2000カ所余りの工場の操業を停止させたことも影響したとされるが、問題がより根深いのはいうまでもない。

 そして中国経済の異変を象徴するのが資金流出だ。「中国のアキレス腱は対外資本収支」とみるのは武者リサーチ代表の武者陵司氏。「2013年末から15年3月末の間の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)だったが、(本来なら経常黒字で増えるはずの)対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になる。消失した金額の巨額さを説明できるのは資本逃避だけだ」と分析している。

 人民元政策が迷走している背景にも資金流出問題がありそうだ。8月に突如人民元を切り下げた習政権だが、今度は一転して人民元の売り規制に転じた。武者氏は「景気対策のためには元安が必要だが、それは中国経済の命綱である資金流出を招く。二律背反に当局が追い込まれている」と指摘している。

 抗日行事直前の2日には、国際通貨基金(IMF)が報告書を公表、「中国の景気減速に伴う金融市場の混乱が収まらず、新興国経済の先行きは厳しさが増している」と指弾した。

 5日までトルコで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも中国経済が主要議題となり、IMFのラガルド専務理事が世界経済の先行きに懸念を表明する見通しだ。

 抗日行事には日本や欧米主要国の首脳が不参加だったが、経済面でも世界の中国離れが加速しているようだ。

【私の論評】中国経済を見れば、貿易・経常収支は黒が良いという認識は非常識であることがよくわかる!

昨日も中国「抗日70周年パレード」について、掲載しました。なぜ、中国がこのパレードを実行しなくてはならなかったのかについて詳しく解説させていただきました。

その答えは、簡単にいえば、現中国政府の統治の正当性が希薄であるということにつきます。まだ、ご覧になっていない方は、是非ご覧になって下さい。

さて、中国経済をよく見ていると、経済に関する知見が深まります。経常収支などという言葉を勘違いする人も大勢いて、まるで家計のように考えて、経常黒字が黒であれば、経済にとって良いことであり、経常収支が赤であれば、経済にとって悪いことと認識している人々が大勢います。

国際収支、およびその要素のいずれかが赤字とか黒字ということ自体は何の意味も持たない


しかし、これは全くの誤りです。これは上の記事からも良く理解できます。その部分を上から引用します。
「中国のアキレス腱は対外資本収支」とみるのは武者リサーチ代表の武者陵司氏。「2013年末から15年3月末の間の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)だったが、(本来なら経常黒字で増えるはずの)対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になる。消失した金額の巨額さを説明できるのは資本逃避だけだ」
これを見ても、たとえ経常収支が真っ黒であっても、対外純資産残高はマイナスということであり、これは現状の中国の経済をみれば、決して良ことではないことを示しています。特に中国においては、対外金融純資産(要するに中国が外国に貸し付けているお金)がかなり減っています。

さらに、対外金融純資産残高(要するに日本国が外国に貸し付けているお金)に関してしは、過去の日本が深刻なデフレのときであっても、大幅な黒字どころか、世界一だったことも留意すべきてす。これをもって、日本政府には借金がありますが、かといって、日本国そのものが借金づけなどということはなく、日本は世界で一番海外にお金を貸し付けていた国ということになります。




しかも、この金額はバブルの頃よりも増えています。では、これが良いことかといえば、そんなこともいえません。なぜ、バブルの頃よりも対外金融純資産が増えているかといえば、日本は深刻なデフレ・円高にみまわれていたため、酷いデフレのために、日本国内ではモノが売れず、日本国内で新たな設備投資や人材投資をしても無意味なので、多くの企業などが海外に投資をしたということです。

さらに、円高ということもあり、日本国内で生産して、海外に輸出しても、無意味になったため、さらに、日本国内に投資するよりも、海外に投資をして、海外でモノを生産して、そこで売るか輸出するほうが良いということになって、海外への投資が増えたのです。

国内のデフレと、円高という二重の重荷から、逃げるため、多くの企業などが、海外に投資をしたため、対外金融純資産がもともと高かったものが、デフレのまっただ中であるにもかかわらず、バブルのときの水準をも上回ったということです。

これは、日本の経済に良いことかといえば、決して良いこととはいえませんでした。本来、日本がデフレ円高でなければ、海外投資に回っていたお金も、もっと日本国内に投資され、この対外金融純資産がバブルの時の水準を上回るなどということはなかったかもしれません。

これと同じように、経常収支や貿易収支などが、黒になったから良いとか、赤になったからダメとか、そんな単純な認識は、完璧な間違いです。赤字や、黒字の内容を分析した上で、初めてそれが日本経済にとって良いことなのか、悪いことなのかを理解することができます。

このような事例は、中国経済をみていると良く理解できる事例があります。そのもう一つの事例として、過去の中国の貿易黒字について述べます。これについては、以前このブログに掲載したことがありますので、その記事のリンクを以下に掲載します。
中国:1月の貿易黒字は過去最高-内需の弱さ浮き彫りに―【私の論評】安倍政権批判のためには何でもする日本の敵マスコミ諸氏! 中国は貿易黒字で大躍進ではないのですか! 嘘つき日本マスコミの実体が良く理解できる記事(゚д゚)!
中国の輸入は激減して、それが過去最高の貿易黒字になっているという。日本は?

この記事は、今年の2月のものです。この当時の中国の状況をみていれば、貿易黒字が過去最大になったとしても、それは中国の経済が良くなったことを意味しているのではなくて、中国の経済がかなり悪化していることを示していました。それに関する部分のみを、以下に引用します。
税関総署(ブログ管理人:無論これは中国の役所です) が8日発表した1月の輸入は前年同月比19.9%減少し、約5年ぶりの大幅減。ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリストの予想は3.2%減だった。輸出は3.3%減少(予想中央値5.9%増加)し、貿易黒字は600億ドルに達した。
原油や鉄鉱石など商品への国内需要が減少する中で、不動産価格下落と製造業の活動縮小は中国政府が景気刺激策を強化する必要がある可能性を示している。また、輸出と輸入が減少し、貿易黒字が過去最高となったことは、政府の為替レート管理を複雑にする。

ブルームバーグのエコノミスト、トム・オーリック氏はリポートで輸出減少に関して、「競争力の低下と外需の弱さへの懸念を浮き彫りにするものだ」と指摘。同氏は輸出入ともに驚くべき数字で「刺激策へのさらなる動きを強めるものだ」と述べた。同氏は1-3月に政策金利が1度引き下げられると予想する。
要するに、この当時の中国の輸入が激減したため、輸出も減少はしているものの、輸入ほどは激減していないため、貿易黒字が過去最高になったということです。

これをご覧いただいても、貿易黒字が、過去最高だとしても、この中国の事例のように、輸入が激減したためにこのようなことになる場合もあるのです。

この事例をみてもわかるように、貿易黒字が大幅に増えたからといって、それが必ずしも経済が良いことの証にはならないのです。

貿易赤字も、単純に赤字だからといって、経済が悪いということにはなりません。たとえば、景気が突然かなり良くなって、消費がかなり増えたとします。そうなれば、国内企業はどんどんものが売れることになります。

しかし、突然消費が上向けば、企業もそれにすぐ対応することはできません。なぜなら、生産を増やすにしても、まずは、製造設備を増やすために、設備投資をして、さらにその設備を動かすために、人を雇わなければなりません。さらに、その人を教育・訓練して、設備を我道できるようにしなければなりません。

そうなると、せっかく消費が上向いているにもかかわらず、企業はすぐには増産することはできません。それでも、消費は上向いていますから、消費者の要望を満たすため、貿易会社は海外からの輸入を増やします。

そうなると、輸出はそのままで、輸入が増えるため、貿易赤字になります。だから、貿易赤字になったからといって、それ自体が即日本経済が悪化しているなどという認識は全くの間違いです。

以上のように経常収支や、貿易収支なとが、黒になったから、即それが経済が良いこと、赤になったから、即それが経済に悪いこととするのは、全く誤った認識です。赤字になろうが、黒字になろうが、その原因を分析してみてはじめて、その意味するところが理解できるものであり、数値そのもが良い悪いを示すものではありません。

こんなことは、企業業績についてもいえることです。皆さんは、Amazonという企業はご存知でしょう。最近もかなり業績が良いようです。しかし、このAmazonも売上は過去最大であるにもかかわらず、純利益は大幅減というときがありました。

なぜそうなっていたかといえば、かなりの額の先行投資をしていたからです。このような、先行投資があったからこそ、現在のAmazonは市場において盤石の地位を築いたのです。


Amazonのプラスデータの変化 

しかし、マスコミは経常収支や、貿易収支に関して、誤った認識で報道することが多いです。企業業績に関しても、見誤ることも多いです。私たちは、そのような報道に騙されるべきではありません。

そうして、中国の経済は、ここでは詳細は掲載しませんが、正しい見方をしても、どうみても悪化しています。そうして、しばらくはこの状態が続きそうです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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