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2016年8月19日金曜日

世界中で存在感失う「人民元」 名ばかり「国際通貨」 習氏の野望に暗雲 ―【私の論評】金の切れ目が縁の切れ目、尖閣海上民兵も五輪選手も?

世界中で存在感失う「人民元」 名ばかり「国際通貨」 習氏の野望に暗雲 

中国・江蘇省で人民元紙幣を数える銀行員
 中国当局が人民元を大幅に切り下げた「人民元ショック」から1年が過ぎたが、その後も人民元は下げ止まらない。ドル、ユーロに続く「第3の通貨」にのし上がるのが習近平国家主席の野望だったが、市場で人民元離れが加速し、決済シェアはカナダドルすら下回る6位に。「国際通貨」とは名ばかりの存在になっている。

人民元は2015年8月11日から13日の3日間で約4・6%も切り下げられた。中国経済失速との見方から世界の株価が大幅下落を招いたのも記憶に新しい。

その後、中国当局は断続的に市場に介入し、人民元を買い支えたとみられるが、人民元の下落基調は続いた。今年4~6月期の下げ幅は過去最大を記録している。

人民元は昨年11月、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成銘柄に採用が決まった。習政権にとっては、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と並んで国際金融の世界で存在感を高める大きな成果だったはずが、実態はさびしい限りだ。

銀行間の決済インフラを手がける国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、今年6月時点で決済に使われた人民元のシェアは1・72%と14年10月以来の低水準となった。

習近平
  米ドル(40・97%)、ユーロ(30・82%)、英ポンド(8・73%)、日本円(3・46%)を下回るどころか、カナダドル(1・96%)を下回る6位に低迷している。

15年8月には決済シェアが2・79%と円を上回り、「第4の通貨」となった勢いは完全には失われた。今年10月にはSDRに正式採用される予定だが、「国際通貨」とはとても呼べない状況だ。

経済が減速するなかで、中国当局は人民元安をあえて容認してるフシもあるが、思惑通りに輸出は伸びていない。

7月の輸出は前年同期比4・4%減、内需も振るわず、輸入は12・5%減だった。

1~7月の累計でも輸出は7・4%減、輸入は10・5%減と大きく前年割れしている。一方で各国と貿易摩擦が激化している鋼材は金額ベースで15・5%減少したものの、数量は8・5%増加しており、中国の鋼材が安値で海外市場に流れ込む状況は変わっていない。

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は「中国経済は企業債務によってかろうじて維持されている。不良債権が拡大している金融機関に巨額の公的資金が注入される事態となれば、人民元のさらなる暴落は不可避だ」と指摘している。

【私の論評】金の切れ目が縁の切れ目、尖閣海上民兵も五輪選手も?

人民元の国際通貨化は、最初から絶望的であることは、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】人民元のSDR採用後の中国 一党独裁と社会主義体制で困難抱えて行き詰まる―【私の論評】中間層を創出しない中国の、人民元国際通貨化は絶望的(゚д゚)!
中国人民元のSDR構成通貨入りを発表する
IMFのラガルド専務理事=11月30日、ワシントン
この記事は、昨年12月5日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、以下に元記事の高橋洋一氏による、人民元が国際通貨にはならないであろうとの見解の部分のみ引用します。
中国経済の今後には多くの困難が待っているとみている。まず、人民元の国際化であるが、通貨取引の背後には、貿易取引や資本取引があり、それらが大きく拡大しないと、国際化も限定的だ。 
中国には共産党一党独裁の社会主義体制という問題があるので、国有企業改革や知的所有権の解決は当面難しく、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加も当面難しい。ということは、貿易取引や資本取引にも一定の限界が出てくる可能性がある。 
特に資本取引の自由化は、一党独裁の社会主義体制のままでは基本的には無理である。となると、人民元もこれ以上の国際化はなかなか望めないというわけだ。

中国が、一人当たり国内総生産(GDP)1万ドル前後で経済停滞に陥るという「中進国の罠」にはまりかけているのも懸念材料だ。一般論として、中進国の罠を超えるためには、大きな構造改革が必要であるが、そこでも中国の体制問題がネックになる。 
中国は、当面AIIBによって「人民元通貨圏」のような中国のための経済圏を作りつつ、国有企業改革などを行ってTPPなどの資本主義経済圏への段階的参加を模索するとみられる。しかし、一党独裁体制を捨てきれないことが最後までネックになり、行き詰まるだろう。 
この高橋洋一氏の見解に関して私は、以下のように論評しました。
元が国際通貨として本当に認められるには、人民元相場の柔軟性拡大に加えて、中国金融市場に対するアクセス制限の緩和、取引の自由化推進などが要求されますが、株価急落で金融市場に異例な介入を続ける中国政府は、一段と厳しい局面に立たされることになることでしょう。
中国が資本勘定を完全に自由化し、変動相場制に移行しない限り、投資家は人民元を国際通貨として使用することに引き続き慎重になることでしょう。

ただし、そのためには国内でそれなりの条件を整える必要があります。

中国が今の一党独裁を継続していては、高橋氏がブログ冒頭の記事で、指摘していた、「中所得国の罠」に陥る可能性が大というよりも、もうその罠に完璧に落ち込んでいます。
中所得国の罠の模式図
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいいます。 
この「中所得国の罠 (中進国の罠と同じ)」を突破するのは結構難しいことです。アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれています。ただし、アジアでもマレーシアやタイは未だに、罠にはまっています。 
中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っていて、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいます。 
政治的自由と、経済的自由は、表裏一体であり、経済的自由がないと、IMFのような国際機関の提言は実行できません。経済的自由を保つには、政治的自由が不可欠です。
中国は、すでに中所得国の罠にはまっており、そこからぬけ出すのは至難のわざでしょう。中所得国の通貨が、国際通貨になったことはありません。よって、中国が中所得国の罠にはまっている現状では、人民元の国際通貨化は全く無理です。

それにしても、これに関しては前々から前兆がありました。たとえば、イギリス人の貿易商が中国国内のおもちゃ工場の代金を決済するときに、人民元を使おうにも、中国の工場がドルでないと受け取らないという実体がありました。それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
焦点:中国製おもちゃ調達もドル建て、人民元取引の実態―【私の論評】爆裂中国の元国際通貨化の妄想は潰えたとみるべき(゚д゚)!

欧米輸出向けの中国製ミニオンのぬいぐるみ
この記事は、今年の1月12日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、このようなミニオンのぬいぐるみを製造する小さな町工場ですら、人民元決済をいやがり、ドルで決済することを望むというのですから、いかに人民元に信用がないかが良く理解できます。

このような通貨が国際通貨になるなどのことはありえないです。

さて、中国は従来は不況になると、金融緩和と財政出動を素早く実行して、すぐに景気を回復しました。しかし、もうその手は通用しないようです。

金融緩和をするとキャピタルフライト(通貨、特に外貨の国内から逃避)が始まることを恐れてなかなか出来ないようです。

もし人民元高要因が大きくなれば、韓国はデフレに陥り、かつての日本のような長期不況に陥るでしょう。

逆に人民元安要因が大きくなれば、韓国は通貨アタックを受けて、現状でもキャピタルフライトに見舞われているのに、さらに多くの外貨(ドル)が国外に流出することになり、金融危機に陥るでしょう。しかし、日本を含めて、中国を本気で助けようとする国はもうありません。

この状況は最近の韓国の状況と良く似ています。これについては、このブログにも掲載したので、興味のある方は、その記事をご覧になって下さい。

さて、最近でも、中国の異変が続いています。これらの異変ひよっとすると、国際通貨にもなれない弱い人民元とキャピタルフライトを恐れて金融緩和をしないことと関係あるかもしれません。特に、これらの背景ともなっている中国の経済の低迷と関係があるかもしれません。

まず第一に、リオ五輪の中国のメダルのあまりの少なさです。以下に17日現在のメダルの取得状況を掲載します。


リオデジャネイロ五輪の中国選手の金メダル獲得ペースに、ロンドン大会(2012年)や北京大会(08年)のような勢いがみられません。16日現在、首位の米国に大きく水をあけられ、英国にも及ばず、3位となっています。着実に獲得数を伸ばしてはいるものの、“ゴールドラッシュ”とはいかず、終盤に向けてどれだけペースが上がるかに注目が集まっていました。

金メダル獲得数は同日現在、米国が28個、英国が19個、中国は17個。米英は日程を消化するごとに、ロンドン大会とほぼ同じペースで獲得していますが、中国は約半分のペース。北京大会では参加国の中で最多の51個、ロンドン大会でも米国に次ぐ38個の「金」を獲得した中国にしては、あまりにスローペースといえます。

この変化、やはり中国が中進国の罠にはまっていることを示すものかもしれません。中心国でもスポーツの強い国もありますが、それは特定のいくつかのスポーツが強いのであって、オリンピックなどでのメダルの総数となると、やはり先進国等には及びません。

中国の場合は、経済的には先進国とはいえませんが、それでも、経済の伸び率が驚異的で、そのため将来は米国経済と肩をならべ、いずれは追い抜くのではという憶測が飛び交い、それに期待して、多くの資金が集まりました。その潤沢な資金を利用して、中国はあるゆる方面資金を投下し、経済を伸ばし、国威を発揚することができました。

そうして、経済が伸び国威を発揚することにより、さらにそれが期待を呼び多くの資金が集まるという状況がつくりだされ、それが中国に有利に働いていました。

しかし、その潤沢な資金も、キャピタルフライトによって、底をつきはじめています。そもそも、中国の高級官僚が裸官などになり、かなり前から盛んに海外に資金を逃避させていたのですから、いかにこの国の将来は絶望的なものか、理解できます。

現状がこのような状況ですから、ロンドンオリンピック後に、国威発揚の大きな目玉の一つでもある、スポーツ振興にも、あまり資金を投下できなかったのではないでしょうか。

尖閣諸島付近の中国漁船と中国公船
さらに、もう一つ気になることがあります。それは、尖閣周辺の中国漁船の動向です。以下はの表は、8月19日に外務省が公表した「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について」(海上保安庁)という文書から引用したものです。このように、中国公船と、大量の漁船が尖閣付近の海域に侵入させるということは、示威行為なのですが、これも中国による国威発揚のやり方です。
(平成 28 年8月5日午後0時から 19 日午前8時現在)
                                                                                             ※上記隻数は延べ隻数


この表で、中国漁船に注目して下さい。この表によれば、海上保安庁は8月10日〜19日午前8時現在まで、中国漁船に対して退去警告を発していないということになります。

この公文書の冒頭には、以下のように記されています。
平成 28 年8月5日午後1時 30 分頃、中国漁船に続いて、中国公船(中国政府に所属する船舶)1隻が尖閣諸島周辺領海に侵入した。その後、19 日午前8時までに、最大 15 隻の中国公船が同時に接続水域に入域、延べ 32 隻が領海に侵入した。 
約 200~300 隻の漁船が尖閣諸島周辺の接続水域で操業するなかで、最大 15 隻という多数の中国公船も同じ海域に集結し、中国漁船に続いて領海侵入を繰り返すといった事象が確認されたのは今回が初めてである。 
なお、尖閣諸島周辺の接続水域に通常展開している中国公船(3隻程度)及び南シナ海のスカボロー礁周辺に通常展開している中国公船(4~5隻と言われる)に比しても、現在尖閣諸島周辺には、はるかに多くの中国公船が展開している。
いっときは、300隻もの中国漁船が尖閣諸島周辺領海に侵入したのです。この領域で漁をする事自体は、日中の業業協定で認められた行為ですが、それにしてもこのように多数の漁船が押し寄せ、その漁船には海上民兵が乗っていることは前から明らかにされていました。

武装している中国の海上民兵 女性の海上民兵もいる
しかし、あれだけ周辺領海に侵入していたのですが、10日以降はパタリと海上保安庁は退去警告をしていません。これはどういうことなのか、この表だけからは正確にはうかがい知ることはできません。

類推すると、そもそも中国漁船がほんどいなくなったか、いたにしても少数で、通常の操業をしていたので、海上保安庁としては、退去警告をする必要もなかつたのだと思います。

そうして、退去警告をしたのは、いわゆる通常の操業ではない、いわゆる示威行動をした船であると考えられます。そうして、おそらく、これらの示威行動をした船には、海上民兵が搭乗していたのでしょう。

しかし、10日以降は、海上民兵が搭乗した漁船が姿を消したのでしょう。

これは、何を意味するのでしょう。これも、中国が今や海上民兵による示威行動に対しても、資金を十分に投下できないことを示しているのかもしれません。


さて、産経新聞の記事には、以下のようなことが掲載されていました。
 福建省の漁業関係者によれば、8月上旬に尖閣周辺に集まった漁船には少なくとも100人以上の海上民兵が乗り込み、大半が船長など船を指揮できる立場にいる。彼らの船には中国独自の衛星測位システムが設置され、海警局の公船などと連携を取りながら前進、停泊、撤退などの統一行動をとる。帰国後は政府から燃料の補助や、船の大きさと航行距離、貢献の度合いに応じて数万~十数万元(十数万~約300万円)の手当てがもらえるという。 
 地元の漁民によれば、福建省や浙江省の港から尖閣近くに向かうには約20時間かかり、大量の燃料を使う。また、日本の海上保安庁の船に「作業を妨害される」こともあるため、通常は敬遠する漁民が多いという。
さて、中国側としては、尖閣周辺で海上民兵などに対して、さらに派手に示威行動をさせたかったのかもしれません。しかし、尖閣で示威行動をしたり、あるいは、海上民兵を尖閣諸島に上陸させたとしても、確かに中国内外にかなりのインパクトを与え、ある意味ではかなりの国内外に対して国威発揚にもなります。

とはいいながら、海上民兵に示威行為を繰り返えさせたにしても、尖閣を奪取させたにせよ、これは国威発揚という象徴的な意味があるだけであり、そこから何か富が生まれるかといえば、そのようなことは全くありません。それどころか、海上民兵に多額の報奨金を支払わなければなりません。

南シナ海を埋め立て、軍事基地化したとしても、尖閣を奪取して、そこを軍事拠点にしたとしても、そのことによって富が発生するわけでも、外資が流れ込んでくるわけでもありません。

キャピタルフライトに悩まされ、金融緩和もできない中国にとつて、今や虎の子である資金をこのようなことに金を使うのはためらわれるのでしょう。

現在の中国では、拝金思想が幅を効かせています。海上民兵も金にならなければ、なかなか動かないのでしょう。

将来は官僚になって賄賂をもらいたいと作文に書く小学生の登場など、いわゆる拝金主義の横行を嘆く人が中国で増えている。写真は西安で「9割引きの女性求む」と書かれた横断幕を持つ青年たち。流行りの「拝金女」への反対を表明することが目的だという。2010年10月14日。

だからこそ、10日以降には、海上民兵が搭乗した漁船が尖閣から姿を消したのでしょう。

オリンピックでの中国の金メダル激減も、結局選手に十分な金が行き渡らずやる気をなくしたのでしょう。中国では国内では、金メダル至上主義が転換点をむかえているようです。

中国の「金メダル至上主義」を変えた!天然系の愛されキャラ、競泳女子の傅園慧選手。14日、リオデジャネイロ五輪で一躍「時の人」となったのが、女子競泳の傅園慧選手。彼女の自由で生き生きとした発言が、「多くの中国人の共感を呼んでいる」と米メディアが報じている。
結局、尖閣も五輪も、結局金の切れ目が縁の切れ目ということで、オリンピック選手も、海上民兵も金をくれない政府には従わないということなのでしょう。オリンピック選手などは、政府のための五輪ではなく自分のためということで、政府の干渉を嫌がるようになるでしょう。

キャピタルフライトがとめどなく続く、中国では、人民元が国際通貨にならないのは当然であり、それどころか、いずれ唯一と言っても良い、中国共産党中央政府の統治の正当性の根拠である金が尽きてしまうことでしょう。

そうなれば、人民解放軍も、公安警察も、城管も、人民も中国共産党中央政府のいうことを聴かなくなります。そのとき、中国の現体制は崩壊することでしょう。現中国では、金の切れ目は縁の切れ目なのです。

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2016年7月19日火曜日

【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!


外遊中の中国の習近平国家主席だが、国の威信をかけた鉄道輸出に難問が相次いでいる
中国が国家戦略の柱に掲げる「高速鉄道外交」が次々に頓挫しているニュースを「ビジネス解読」で取り上げたばかりだが、中国の鉄道がらみの失態がまた出てきた。シンガポールに納入した中国製鉄道車両に不具合が相次ぎ、ついに大規模なリコール(回収・無料修理)措置がとられたのだ。中国の鉄道車両メーカーによる海外でのリコールは今回が初めてで、中国まで持ち帰って修理を行うはめに追い込まれた。高速鉄道外交の頓挫に続く今回の大規模リコールは、中国政府が野心的に進める「新シルクロード構想(一帯一路構想)」にも悪影響を与える可能性がありそうだ。



「シンガポールで6月12日、秘密裏に列車の輸送作戦が展開された。厚いグリーンの包装材に包まれた長さ20メートルの列車が大型トレーラーに載せられ、ビシャン車両基地からジュロン港に運ばれた。その後は船で4000キロメートル近く離れた中国・青島まで輸送された」

今回の大規模リコールをこう報じたのは韓国メディアの朝鮮日報(日本語版)だ。

報道によると、大規模リコールの対象になったのはシンガポールの都市鉄道であるMRT(大量輸送交通システム)を運行するSMRTが2011年以降、南北線、東西線で使ってきた「C151A型」。中国の電車メーカー、青島四方機車車輛が納入した。これまで故障が相次ぎ、論議を呼んできたが、結局は大規模な交換、修理が避けられないと判断されたという。

青島四方機車車輛は2009年にSMRTが実施した公開入札で日本の川崎重工業とコンソーシアムを組み、韓国の現代ロテムなどを退け、中国企業としては初めて、シンガポールに鉄道車両を供給することになった。6両編成の35編成を納入し、金額は3億6800万シンガポールドル(約276億円)相当だった。このうち26編成、156両が問題となった。

中国がシンガポールに納入したC151Aは、川崎重工業が1980年代から製造したC151を改良したモデル。従来モデルはトラブルなく運行されたが、改良モデルは多くの欠陥が見つかり、運転中断が相次いだ。

2011年には修理途中に電源を供給するバッテリーが爆発し、中国製バッテリーがすべてドイツ製に交換され、さらに車両や下部連結部分などでひびが見つかったという。朝鮮日報によると、SMRT幹部は「構造的な欠陥が見つかり、メーカーに修理を委ねた。2023年ごろに完了する」と説明した。収束までかなり長い期間がかかりそうな雲行きだ。

中国の鉄道関連の失態といえば、死者40人、負傷者約200人を出した2011年の中国浙江省温州市の高速鉄道による追突脱線事故の記憶が新しい。事故の記憶が残っているのは、無残な事故映像もさることながら、事故後の不適切な処理も大きい。中国当局は事故翌日には事故車両を地面に埋めるなどして撤去し、すぐさま営業運転を再開した。このため、救助活動は短い時間で打ち切られたが、打ち切り後に生存者が発見され、運転再開を優先した当局の姿勢に「人命軽視」「証拠隠滅」などと国際的に非難が集中した。

習近平政権はここ数年、海外への鉄道輸出に力を入れるなど巻返しに懸命だ。だが、足元では中国企業が初めて建設を手掛ける米国の高速鉄道プロジェクトが挫折し、さらにメキシコ、ベネゼエラ、インドネシアの高速鉄道事業も頓挫するなど、苦境にあえいでいる。中国は巨大な資金力、価格競争力で大規模プロジェクトを相次いで受注してきた中国が、安全性やずさんな計画や採算などで弱みを見せたからとの指摘は多い。そんなときに起きた海外初の中国製鉄道車両のリコールは、中国の信頼をさらにおとしめることになりかねない。

東南アジアを中心に繰り広げられている鉄道受注合戦にマイナスに作用するのは避けられず、同時に習政権が打ち出すインフラ建設を通じ欧州までの経済圏を構築する「新シルクロード(一帯一路)構想」にも影を落としそうだ。

【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!

最近の中国の鉄道事業の頓挫続きなのは、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【恐怖の原発大陸中国】南シナ海の洋上で中国製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ―【私の論評】中国の原発輸出は頓挫するが、南シナ海浮体原発は甚大な危機!核兵器持ち込みも(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、最近の最近の中国の海外での頓挫ぶりについての部分のみ以下に引用します。
最近、中国共産党は、内需の不振から外需の取り込みを図ろうとしていました。最近の中国では国内での投資が一巡して、もう有力な投資先がほとんどないことから、投資による内需の拡大が望めない以上、どうしても外需に頼らざるを得ません。

その典型が海外への中国高速鉄道売り込みでした。しかし、その中国高速鉄道の売り込みは頓挫の一歩手前です。以下に4つの失敗事例を掲載します。
バンドン郊外で開かれた高速鉄道の着工式典に出席したジョコ大統領(左から2人目)

と中国鉄道公司の盛光祖社長(中央)ら=1月21日、インドネシア
まずは、インドネシアです。昨2015年、中国はインドネシアで我が国と高速鉄道の受注をめぐって激しい競争を行いました。 
中国は、インドネシアに高速鉄道の建設を事業費55億米ドルの全額融資する、政府の債務保証は求めない等の丸抱えで請け負うという破格の条件で約束しました。ジョコ政権が、中国に建設を依頼しようと考えたのも無理はありません。 
昨年9月、中国がインドネシア高速鉄道敷設(ジャカルタ―バンドンの全長約140km)を受注しました。そうして、2019年の開業を目指していました。
ところが、インドネシア当局は、まず、中国から提出された書類が(英語やインドネシア語ではなく)中国語で記載されていたので、事業契約が調印できませんでした。 
また、中国とインドネシアの合弁会社が、一転して、事業失敗の際の保証をインドネシア政府に求めたのです。そのため、インドネシア側に、将来、負担を押しつけられるのではないかとの懸念が芽生えました。 
今年2月、インドネシア当局は、その合弁会社に対し、地震対策を強化し、鉄道の耐用年数を60年間から100年間にするよう求めました。当局は、もしそれが改善されない限り認可を出さない方針です。 
中国には技術力に限りがあるため、たとえ短い距離であっても、インドネシアで高速鉄道建設が困難に陥っています。
廃墟のようになったベネズエラ・サラサの高速鉄道関連工場
次に、ベネズエラです。同国でも、2009年、中国がティナコ―アナコ間全長400kmで、高速鉄道敷設を手がけました。この建設計画は75億米ドルで契約が交わされ、2012年に完成する予定だったといいます。 
しかし、すでに同国からは中国人スタッフが消え、習政権は、その建設を放棄しました。そして、現場に残された金目の物は、現地住民に持ち去られたと伝えられています。 
もともと、ベネズエラは電力不足に悩まされていたため、同国で高速鉄道を走らせるのには無理があったのです。
タイ国鉄115周年のイメージが華々しく描かれた未来のタイ高速鉄道
3番目は、タイですが、初め、中国の借款で高速鉄道敷設(バンコクを起点に5線。特に、バンコク―ナコーンラーチャシーマー間)を計画していました。ところが、タイ側が急に、一部資金を自前で賄うことにしました。 
タイは、巨額な建設費を理由にして、中国に借款の金利引き下げや投資増額を要求しました。これに対し、中国側はタイの要求をのみ、金利を2%に下げました。 
にもかかわらず、タイは中国の譲歩を受け入れず、自己資金で一部路線の建設を決めました。タイの高速鉄道も、先行きが不透明です。おそらく、これから中国に受注することはないでしょう。
ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道の
建設計画、赤い点線の部分に高速鉄道が走るはずだった
最後に、習近平政権は、米国でも高速鉄道(ロサンジェルス―ラスベガス間全長370㎞)の敷設契約を締結していました。ところが、今月、その契約が破棄され、米高速鉄道は白紙に戻っています。 
同路線は昨年9月、米エクスプレス・ウエスト社と中国の国有企業「中国鉄路総公司」が率いる中国企業連合の合弁事業として、今年9月にも着工予定でした。
しかし、エクスプレス・ウエスト社は6月8日、合弁解消を発表した。その理由として、(1)米国では、中国企業連合による認可取得が難しい、(2)すでに工事に遅れが生じている、(3)米連邦政府が高速鉄道車両は米国内での生産を求めている、などです。 
2日後、中国企業連合は新華社通信を通じて、米国側の一方的な合弁事業解消は、無責任であり、反対するとの声明を発表しました。 
このところ失敗つ次の中国の高速鉄道輸出は、中国の国家戦略です。そうして、中国の経済圏構想である「一帯一路」実現の手段でもあります。そのため、中国は、採算性を度外視しているところがあり、ビジネスとして成立しにくいのです。このような杜撰なビジネス手法では、習近平政権は、おそらく今後も失敗を重ねるだけになることでしょう。

そもそも、高速鉄道の技術は中国にはありませんでした。元々は日本の新幹線の技術のパクリです。技術力がないにもかかわらず、無理をして受注するので、うまくいかないという面も否定できません。

結局、外国で鉄道を建設するにおいても、中国国内でのやり方しか知らず、地元の人民の意向など関係なく自分の都合で押し付けをするため、失敗してしまうのです。中国のアフリカ投資も同じような理由から、ことごとく失敗しています。
そうして、今回の上の記事にもあったように、"シンガポールに納入した中国製鉄道車両に不具合が相次ぎ、ついに大規模なリコール(回収・無料修理)措置がとられた"とられたわけですから、中国の鉄道事業に対する信用は、地に落ちてしまったということです。

2011年の中国浙江省温州市の高速鉄道による追突脱線事故に関する記事に関しても、このブログに記事としていくつか掲載しています。その記事の一つのリンクを以下に掲載します。
事故車両、穴に埋める 「事故原因隠蔽では」「生存者いるかも」…ネットで反発渦巻く―【私の論評】尖閣問題でも露呈された、異質中国大炸裂!
この記事は、2011年7月25日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この事故車両、当時まだ事故が起きてから日が浅いかったにもかかわらず、上の記事にもあったように、破壊されて地中に埋めるという暴挙を行っています。その場面の動画もこの記事には掲載されていますので、それを以下に掲載します。



この動画では遠くから撮影しているので、良くわかりませんが、もっと近くで撮影した写真だと、全部がKOMATSU、KOBELCOなどの外国製の重機でした。これを見た、当時の日本のネットユーザーが、「重機も自分の国で作れないのに、本当にまともな高速鉄道などできるのだろうか」と訝っていたものです。

そうして、この記事では、中国の鉄道事業も以下のように批判しました。
上記(管理人注:上の動画のこと)は、中国で報道された、脱線した高速鉄道を埋めるシーンです。かなり、乱暴にやっています。クレーンでかなり破壊して、埋めています。日本の常識では、ほとんど考えようがない光景です。これは、完璧な隠蔽工作です。

しかし、これじゃ隠蔽にはなりませんね。何か、あまり頭の良い隠蔽方法ではないです。上手に隠蔽するなら、どこかに運びだし、隠すのが順当だと思うのですが、そうではないのですね。このようなやり方をすれば、ますます、疑惑が深まるばかりです。国家の威信をかけた鉄道のようですが、これでは、逆効果です。国民の信頼を裏切り、海外からの不信を招き、国家の威信を地に貶めたようなものです。

中国では、高速鉄道に限らす、普通の列車でも他の国に比較すると非常に事故が多いです。日本では、新幹線は、開業以来一人も死傷者を出していません。それにしても、事故がおきて、2日目で原因追究も十分にしていないうちから、運行を再開するなど、とてもじゃないですが、日本の常識、いや世界の常識では考え及びもつきません。 
日本は、会社がどうだ、政府がどうだ、何がどうだと、批判は厳しいものがありますが、さすがに中国のようなことはしないです。福知山線の脱線事故で、いったい、どれくらいの間電車が走らなかったでしょうか?今回の震災で、甚大な被害を蒙った福島原発に限らず、被害にあわなかったものでも、定期点検で稼動をとめていたものも、すぐには稼動を再開しませんでした。これが、あたり前のことです。とは、いってもこれは、あまりに当たり前の常識的なことです。
日本の福知山線脱線事故
中国では、この事故に限らず、以前から鉄道事故が多すぎてす。中国の鉄道は、日本の技術を盗用したとされていることは、昨年このブログ掲載で掲載したことがあります。この記事では、中国は鉄道事故が多すぎるので、こんな国の鉄道など、まともに考えれば、誰も買わないだろうと、掲載しました。まさにその通りです。こんな事故を起こしたようなシステムなど、どこの国でも買わないでしょう。いくら、安いとはいっても、このようなシステムは安全が第一ですから。
一時、中国の高速鉄道の輸出が華々しく報道されていたので、そんなことは中国の技術水準からとてもできるものではないと思っていた私は、特に安全性に関して非常に懸念していました。 中国にはもともとは、高速鉄道の技術など存在していませんでしたが、中国に高速鉄道を導入するときに、日本の新幹線技術を盗んだとされています。それも、現在のものではなく、一昔前のものです。中国の現在の高速鉄道の技術はそれに枝葉を付け加えたものに過ぎません。

まだ、しっかりと自分のものにもしておらず、事故が起こってもその原因をはっきりと突き詰めそれに対処する技術を新たに開発することもなく、事故が起こっても車両を埋め立てて隠蔽してしまったのです。

これでは、最初から欠陥技術ということであり、そのようなお粗末な技術で外国に無理やり売り込もうとしていたのです。

そんな中国が、外国への高速鉄道の売り込みに成功するはずもありません。これから、どんどんメッキが剥げ、ボロが出て、ことごとく失敗することでしょう。そうして、中国は外国に高速鉄道の売り込みができなくなるでしょう。そうして、安全面から考えれば、そのほうが良いです。実際に、システムが多くの国々に導入されてしまえば、その後の惨禍は、目を覆わんばかりの大惨事になることでしょう。

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2015年12月13日日曜日

消えた中国の富豪…新たなチャイナリスクが露見 当局拘束で「星野リゾートトマム」買収に暗雲―【私の論評】企業買収成功の5つの原則を知らない中国の投資をあてにしても、万に一つも成功する見込みはない(゚д゚)!

消えた中国の富豪…新たなチャイナリスクが露見 当局拘束で「星野リゾートトマム」買収に暗雲

郭広昌氏

中国有数の民間投資会社「復星集団」の会長で、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(85)になぞらえ「中国のバフェット」とも呼ばれる郭広昌氏(48)が、10日から当局の拘束下におかれ、周囲と連絡が取れなくなっている。(SANKEI EXPRESS)

中国メディアが報じたもので、これを受けて関連株が軒並み下落。上海証券取引所では11日に復星傘下企業の上場株が取引停止となった。復星は日本とも関わりが深く、傘下の上海豫園旅游商城が先月、北海道占(しむ)冠(かっぷ)村(むら)にあるスキーリゾート「星野リゾートトマム」の全株式を約183億円で取得したばかり。トマムはどうなるのか? 新たなチャイナリスクが露見した形だ。

トマム・リゾート

■「捜査に協力」火消し

郭会長は中国電子商取引最大手、阿里巴巴(アリババ)集団の馬雲(ジャック・マー)会長(51)と並ぶ中国民営企業のカリスマ実業家として国際的にも有名だ。中国東部、浙江省の農家に生まれ、上海の名門、復旦大学を卒業(哲学専攻)。1992年に大学の同窓生4人と復星の前身会社を設立し、投資、保険、医薬、不動産など幅広い分野に事業を拡大、中国を代表する民営複合企業体に育てた。

中国経済誌「財新」(ウェブ版)などによると、郭氏は拠点とする上海の空港で警察に連れて行かれた。ただ、何らかの嫌疑で自身が捜査対象になっているのか、単に参考人として事情を聴かれているのかは不明で、復星の広報担当者はメディアに「『捜査協力』で警察に呼ばれているだけで、(郭氏は)『適切な手段』を通じて社の主要な決定に関与できている。上海上場の関連株も、14日には取引が再開される」と語った。捜査協力の内容についてはノーコメントとしている。

■無罪に「不公平」

上海市では現在、艾(がい)宝(ほう)俊(しゅん)副市長(55)が「重大な規律違反」をしたとして中国共産党の中央規律検査委員会から取り調べを受けており、これに関連しているとの報道もある。

上海市艾宝俊 上海副市長
 また、郭氏は今年8月、中国国有の光明食品集団の会長だった王宗南氏(60)の親族による不動産取得で便宜を図り、王氏から何らかの見返りを得ていた容疑で警察に事情を聴かれている。この際、贈賄罪に問われた王氏には懲役18年の実刑判決が下ったのに対して、郭氏は無罪放免だったことから、「不公平」との声が国民から上がっていた。

■民間摘発を強化
腐敗追放を掲げる中国の習近平指導部は、これまでは主に党幹部や高級官僚の摘発に力を注いできたが、今年前半の株価暴落を機に、金融業界などを重点に民間分野へも追及の手を伸ばしている。今年後半からは、企業経営者が突然、当局に拘束され姿を消すケースが頻発。個人資産57億ドル(約6900億円)の郭氏の場合は、初の大物拘束であり、摘発強化を示す習指導部のサインとも受け取られている。

だが、本格的な郭氏摘発となれば、影響は甚大だ。復星は最近は国際展開にも積極的で、日本のトマムだけでなく、フランスのリゾート施設運営会社「クラブメッド」を買収したほか、ギリシャのジュエリーブランド「フォリフォリ」、カナダのサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」などにも出資。東京や米ニューヨーク、英ロンドンなどでランドマーク的な大型オフィスビルを相次いで手に入れている。

異形の国「中国」とビジネスでパートナーを組むには、どこまでも慎重さが必要だ。

【私の論評】企業買収成功5つの原則を知らない中国の投資をあてにしても、万に一つも成功する見込みはない(゚д゚)!

中国人の経営者にはもともと、問題がありました。その問題とは、中国は以前は共産主義、その後は国家資本主義体制という体制をとってきたことです。そのため、中国には普通の資本主義国、自由主義国の中での商売を経験するものはほとんどいません。

このブログでも、何度か掲載してきたように、中国では民主化、経済と政治の分離、法治国家化がなされていません。今の中国の体制は、国家が経済に深く関与する、国家資本主義体制にあるといえます。

そうして、中国の現状の個人消費が、GDPに占める割合は35%に過ぎません。これは、日本をはじめとする先進国では60%台が普通です。アメリカに至っては70%台です。先進国では、企業経営というと、顧客を第一に考え、顧客のことが本当に理解できれば、すぐにも経営者になって成功することができます。

しかし、中国は違います。中国のGDPの多くは、政府が国内外から資金を集め、インフラに投資することで得られたものです。そのためでしょうか。中国人の経営者には、顧客が大事とか、事業の本質とは顧客を創造することであるとの認識は希薄です。

そんなことよりも、政府の官僚(中国には選挙がないので、厳密な意味では政治家は存在せず存在するのは官僚のみです)と人脈を築くことのほうが重要です。

実際に、金をばら撒く権限のある権力者と強力な人脈を築くことができれば、顧客など無視しても、事業は大発展します。しかし、せっかく権力者と強力な人脈を築くことができても、その権力者が失脚したり、主流派でなくなってしまえば、事業は破綻したり、伸びなくなったりします。

郭広昌氏も、習近平もしくはそれに連なる人脈を構築できていなかったということが、今回の拘束劇に繋がってるのだと思います。

これでは、日本をはじめとする先進国のように、そもそも、事業というもかのが顧客の創造であるなどというまともなことを考える経営者は育ちません。

だから、中国の経営者は、顧客などあまり重要ではなく、権力者にいつも顔を向けて商売をします。そのため、中国では、先進国で普通と思われているような経営者は、ほとんど存在しません。

そうして、さらに2011年あたりから中国人経営者の異形ぶりが非常に目立つようになっていました。

①高級経営幹部の大量退社が常態の中国

ある大手中国メディアの記者の調査では、2011年7月の1か月間だけで、A株上場会社の高級管理者が合計88名辞職していました。ここでの高級管理者とは、董事長、董事、監事、総経理、副総経理など、会社の重要幹部を指します。

これらの高級管理者には、自社株を保有している者が多く、そして2人以上で一斉に退社したという共通の現象がありました。これらのことから、巷ではこの高級管理者たちの大量退社は、「自社株の売り抜け準備」ではないかと言われていました。

中国では、「自社株を持っている高級管理者は、上場後1年以内にはそれを譲渡することができない」という法律があります。したがって高級管理者が早く自社株を譲渡し、大儲けしようするならば、会社を辞職すること、つまり自分の会社を放り出し、縁を切ることがもっとも手っ取り早いのす。

今に至るまでその傾向が続いています。最近では、事業環境の悪化から、それを最後の金儲けの手段と考えている経営者も多数存在しました。

②経営者の経営意欲の減退とモラルの崩壊
中国の企業の現場では高級管理者が、10年以上前からいわゆる財テクに走っていました。それはあたかもかつての日本がバブル経済のときに、企業の幹部が財テクに血眼になっていたのとまったく同様のようです。

しかし中国では事態はもっと深刻です。なぜならそれは企業が5重苦と呼ばれるような経営環境に置かれており、実業では業績を維持することがきわめて難しくなっているところから、苦肉の策として行われているからです。ちなみに5重苦とは、労働争議の頻発(人手不足)、人件費高、金融難、電力不足、原材料高です。

5重苦の中でも、とりわけ経営者から経営意欲を奪っているものは、労働争議の頻発でした。労働争議が特に頻発するようになったのは、2007年末の労働者絶対有利の新労働契約法の施行に端を発しており、それが人手不足という状況下で起きているため、ひとたび労働争議が生ずれば経営者はほぼ完璧に負ける結果となってしまいました。

そしてその後、経営者は労働者に足下を見透かされ、譲歩に次ぐ譲歩、妥協に次ぐ妥協を余儀なくされるようになりました。そうして、企業内では労働者と経営者の地位が逆転し、労働者は経営者を見下すようになり、経営者の威光も意向も労働者にはまったく通じなくなりました。

一般に中国人は面子を大事にすると言われています。ことに中国人経営者は立派な部屋でふんぞり返っている人が多いです。日本人のように「便所掃除を日課としているような経営者」、つまり「労働者に頭を下げることに抵抗がない経営者」などいません。

それが今では、営々として築いてきた自分の会社で、自分が給料を払っている労働者に頭を下げなければならない事態となっています。これが中国人経営者にとってはもっとも屈辱であり、経営意欲をなくさせている元凶です。

より先鋭化した中国のストライキ
今の中国人経営者は「人を使う実業」を嫌い、「人を使わなくてもよい虚業」に精を出すようになっています。新聞の広告を見ても、一時大流行したMBAの広告は激減し、株やマンションなどの勉強会の広告が目立つようになりました。

真剣に経営を勉強しようとする経営者が減り、手っ取り早く投機で儲けようとする経営者が増えていることを示します。また手持ち資金をなんらかの形で裏金融に回し、巨利をつかもうとしている経営者が多くなっています。今や、中国人経営者は地道に実業で利益を出すことを諦め、企業の存続の道を虚業の世界に追い求めているのです。

先に述べたように、元々、社会主義を標榜してきた中国、現在は国家資本主義である、中国には、本物の経営者は育っていません。なぜなら元来、社会主義社会には資本家や経営者がいなかったからである。皮肉なことに、かつての中国には「資本主義社会は資本家と労働者という2種類の人間で構成されており、それは敵対的階級として存在している」という共産主義思想はあってもその実態は存在せず、したがって労働者の造反という事態もなく、現下のストライキに対処する経営者の思想的準備もありませんでした。

また資本主義社会で「労働者の敵」として生き抜き、その中で培って来た経営者の知恵やモラルは、にわか仕立ての中国の経営者には根付きませんでした。それが、今、中国のすべての経営者を虚業に向かわせてしまうという事態を生じさせています。

今、中国では経営者が経営意欲をなくし、その結果、経営モラルが音を立てて崩壊しています。

郭広昌氏も例外ではありません。そもそも、彼は経営者でも投資家でもなく、投機家とみるべきでしょう。中国のいわゆる、投資家といわれる人々は、他国では単なる投機家とみられる人々がほとんどです。中国の経済発展そのものが、他国のようにかなりの部分が個人消費に向けた実業というのとはかなり異なるものです。

そうした中で、郭広昌氏は、中国民営企業のカリスマ実業家ともてはやされていますが、企業経営者などからは、ほど遠い、単なる規模の大きな投資をする博打打ちにすぎないのだと思います。

そうして、中国の投資は、あらゆる方面で失敗をしています。日本のトマム・リゾートへの投資も、彼にとっては単なる投機の対象に過ぎないのだと思います。

ちなみに、中国の対外投資は、ほとんど成功していません。結局のところ、中国ではインフラ投資一つとってみても、国の発展とか、国民のためというより、政府の都合、あるい政府に連なる人々が儲けるために実施するのであって、明確な目標も目的もないのだと思います。それでは、そもそも、

さて、経営学の大家である、ドラッカー氏は「事業上の目的による企業買収に成功するには5つの原則がある」としています。その意味するところをドラッカー氏の書籍『マネジメント・フロンティア』より抜粋して、以下に掲載します。


事業上の意味のない企業買収は、マネーゲームとしてさえうまくいかない。事業上も金銭上も失敗に終わる。企業買収に成功するには5つの簡単な原則がある。
ドラッカーは、40年にわたる企業観察の結果、すでに1980年代の初めに、企業買収に成功するための5つの原則を「ウォールストリート・ジャーナル」に発表しています。

しかし、当時はよいことを聞いたと喜んでいた米国の企業家たちが、いざとなると、それら5つの原則を守れずに失敗していった。そして、今日も、相変わらず失敗し続けています。

ドラッカーのいう、事業上の目的による企業買収に成功するための5つの原則とは以下の諸原則です。
 第1に、企業買収は、買収される側に大きく貢献できる場合にのみ成功する。問題は、買収される側が買収する側に何を貢献できるかではない。買収する側が貢献できるものは、経営能力、技術力、販売力など、さまざまである。 
 第2に、企業買収は、買収される側と共通の核がある場合にのみ成功する。共通の核となりうるものは、市場であり、技術である。あるいは、共通の文化である。 
 第3に、企業買収は、買収する側が買収される側の製品、市場、顧客に敬意を払っている場合にのみ成功する。やがて、事業上の意思決定が必要になる。そのとき、製品、市場、顧客への敬意がなければ、決定は間違ったものとなる。 
 第4に、企業買収は、買収される側に、1年以内にトップマネジメントを送り込める場合にのみ成功する。マネジメントを買えると思うことは間違いである。社長だった者が、事業部長になって満足し切れるわけがない。 
 第5に、企業買収は、最初の1年間に、買収される側の者と買収する側の者を、多数、境界を越えて昇進させる場合にのみ成功する。買収を、歓迎されるものに仕立て上げなければならない。 
 少なくともニューヨーク株式市場は、60年代のコングロマリット熱から目を覚まして以来、企業買収に関する5つの原則の重要性に気づいている。買収のニュースによって、買収する側の株価が大幅に下落することが、あのように多いのはそのためである。
この原則は今でも変わりありません。多くの投資家が、安易に企業買収を行って、今でも失敗し続けています。成功した買収では以上の原則が貫かれています。中国の郭広昌氏を含む投資家は、上記の5つの原則などそもそも、知らないでしょうし、過去の失敗から学んでいるということもないでしょう。企業をあたかも、モノのようにしか考えていません。

そのためでしょうか、中国の投資は、国内でいっときうまくいったようにも見えましたが、最近ではその不味さが露呈するようになりましたし、中国以外の国々ではほとんど大失敗しています。

そもそも、中国以外の国では、かつて中国がやったような、人民など全く考慮することなく、政府やそれに連なる人たちの都合を再優先した強圧的投資などうまくいかないばかりか、最近では中国国内でも、うまくいかなくなり、不動産バブル崩壊、株式下落、金融の空洞化を招いているです。

トマム・リゾートの冬のイベント。経営者から従業員にいたるまで、
「おもてなしの心」がなければ、リゾート運営などできない
日本のような先進国で、商売の根本を全く理解しない、郭広昌氏が、トマム・リゾートに投資したとしても、結局はうまくいかず、失敗に終わるだけでしょう。

中国の投資をあてにして、日本国内で商売をしようとしても、以上のようなことから、全く無駄であることが良く理解できます。

異形の国「中国」とビジネスでパートナーを組んで、成功できる見込みは万に一つもありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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